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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1261287
審判番号 不服2009-19814  
総通号数 153 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-10-15 
確定日 2012-08-08 
事件の表示 特願2003-530291「新規の配合物及びその使用」拒絶査定不服審判事件〔平成15年4月3日国際公開、WO03/26655、平成17年 2月10日国内公表、特表2005-504094〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成14年9月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 平成13年9月27日 スウェーデン(SE))を国際出願日とする出願であって、平成21年6月1日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月15日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである、
その後、平成23年7月29日付けで、審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行っところ、同年11月16付けで回答書が提出された。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成21年10月15日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容・目的
平成21年10月15日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1を次のように補正しようとする補正事項を含むものである(補正箇所に下線を付した)。
「【請求項1】
チョコレートの一部ではない少なくとも30%(W/W)のココア・パウダーを含み、かつ1以上の脂質成分をさらに含むことを特徴とするニコチン含有組成物。」

上記補正事項は、補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「ココア・パウダー」について「チョコレートの一部ではない」ものに限定し、含有量を「少なくとも30%」に限定するものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

そこで、上記本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか、すなわち、平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たしているか、について以下に検討する。

2 補正の適否の判断(独立特許要件:特許法第29条第2項違反)
(1)刊行物
刊行物1:国際公開第00/30641号パンフレット(拒絶査定における引用文献1)
刊行物2:特表平9-512788号公報(同引用文献6)

原査定の拒絶の理由に引用され、本願優先日前に頒布された刊行物である、刊行物1には、以下の事項が記載されている(( )内は当審訳。)。
(1a)「We have surprisingly found that a rapid buccal absorption of nicotine is achieved through the use of nicotine containing formulations based on heterogeneous apolarpolar components.」(3ページ22行?24行)
(驚くべきことに、本発明者らは、ニコチンの急速頬側吸収が不均質非極性成分に基づくニコチン含有製剤の使用により達成されることを見出した。)
(1b)「It is the primary object of the present invention to provide a tobacco supplement or a tobacco substitute, for use in e.g. smoking cessation and nicotine replacement therapies which provide the user with a satisfactory dose of nicotine so as to reduce to- bacco withdrawal symptoms without causing an unacceptable local irritation. More specifically it is the object of the invention to provide such a nicotine containing tablet, for transmucosal, preferably buccal, delivery, which disintegrates and/or melts at body temperature with or without the aid of salivary fluid or mechanical erosion, or a combination thereof after which the formulation shows adhesiveness towards the body tissue in the oral cavity.」(5ページ2行?10行)
(本発明の主要な目的は、例えば、禁煙およびニコチン代替療法に用いるタバコ補足剤またはタバコ代用品を提供することにあり、それは、満足するニコチン用量を使用者に与え、許容できない局所的刺激を生じることなくタバコ禁断症状を低減する。より詳しくは、本発明の目的は、経粘膜、好ましくは頬側、デリバリー用のそのようなニコチン含有錠剤を提供することにあり、それは唾液もしくは機械的浸食、またはそれらの組合せの援助によるかあるいはよらずに体温にて崩壊および/または融解し、その後、該製剤が口腔内の体組織への接着を示す。)
(1c)「According to the invention nicotine is provided in an apolar-polar vehicle chiefly comprising fat, carbohydrate and/or polyols, and a surface-active substance. Pharmaceutically acceptable apolar components according to the invention include in the broadest sense of the invention any lipid (oil, fat, or wax) such as
- cocoa butter and cocoa butter alternatives (including cocoa butter equivalents (CBE), cocoa butter substitutes (CBS), cocoa butter replacers (CBR), cocoa butter improvers (CBI)) ・・・」(5ページ13行?19行)
(本発明によれば、ニコチンは、主に脂肪、炭水化物および/またはポリオール、および表面活性物質を含む非極性-極性賦形剤中で供給される。
本発明による医薬上許容される非極性成分は、本発明の最も広い意味の脂質(油、脂肪、またはワックス)を含む、例えば
-カカオバターおよび、カカオバター代理品(カカオバター相当品(CBE)、カカオバター代用品(CBS)、カカオバター代替品(CBR)およびカカオバター改良品(CBI)を含む。)・・・)
(1d)「Example1
CBR bases
The influence of nicotine on the melting point range of commercially available cocoa butter replacers was determined using differential scanning calorimetry (DSC Perkin Elmer with scanning rate at 2.5℃). Analyses were performed on samples containing four different CBR's (Akopol E, Akoprime E (a hydrogenated vegetable oil type II NF 18), Akomel S and Akocote RT, all of Karlshamns Sweden AB) with melting point (mp℃) and fatty acid composition according to the manufacturer - see below Table 1.」(7ページ29行?8ページ3行)
(実施例1
CBRベース
商業的に入手可能なカカオバター代替品の融点範囲へのニコチンの影響を示差走査熱量測定(2.5℃の走査速度でのDSC Perkin Elmer)を用いて定量した。分析は、4つの異なるCBR(アコポールE(Akopol E)、アコプリムE(Akoprim E; 水添植物油タイプII NF 8)、アコメルS(Akomel S)およびアココートRT(Akocote RT);全てKarlshamns Sweden AB)を含有する試料につき行い、それらは製造者による融点(mp℃)および脂肪酸組成を有する-以下の表1を参照せよ。)
(1e)「Example 5
Apolar (Akoprime E) and polar (xylitol) components of the invention were mixed according to the composition of below Table 3.


Dosage forms with this composition were produced by melting Akoprime E at 40℃ until a clear solution phase was obtained. At 40℃ xylitol and cacao, a flavoring agent, were added in portions and under homogenization until a visually dispersed system was obtained after which nicotine was added. At 40℃ the mixture was further homogenized after which lecithin was added under continued homogenization. The so obtained mixture was dispensed and moulded in blisters and cooled to room temperature resulting in pieces of 0.8 g.」(10ページ7行?18行)
(実施例5
本発明の非極性(アコプリムE)および極性(キシリトール)成分を以下の表3の組成に従って混合した。

表3
成分 重量%
アコプリムE 67.6
カカオ 16.9
キシリトール 10.0
ニコチン遊離塩基 0.5
卵レシチン(精製リン脂質) 5.0
この組成での用量形態は、透明溶液層が得られるまでアコプリムEを40℃にて融解させることによって生成した。40℃にてキシリトールおよびカカオ、香味剤は、目視で分散系が得られるまで均一化しながら部分ごとに添加し、その後ニコチンを添加した。40℃にて、該混合物をさらに均一化し、その後、均一化を継続させながらレシチンを添加した。そのように得られた混合物をブリスターに分配し、成型し、室温まで冷却して0.8gのピースを得た。)

上記記載事項、特に実施例5の記載によれば、刊行物1には、以下の発明が記載されているものと認められる。
「16.9%(W/W)のカカオを含み、かつ非極性成分としてカカオバター代替品(CBR)をさらに含むニコチン含有組成物。」(以下、「刊行物1記載の発明」という。)

原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、刊行物2には、以下の事項が記載されている。
(2a)「1.活性物質をトロキセルチン、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、アルギニンアスパラギン酸、アルギニングルタミン酸、アモキシシリン、炭酸カルシウムと炭酸マグネシウムの配合物および水酸化アルミニウムと水酸化マグネシウムの配合物からなる群から選択する咀嚼可錠剤の製造法であって、該錠剤が有効な割合のココア粉末をマスキング剤および圧縮剤として含むことを特徴とする咀嚼可錠剤の製造法。
2.使用するココア粉末の割合が錠剤の1?50重量%、好ましくは14?30重量%であることを特徴とする請求項1に記載の製造法。」(特許請求の範囲)
(2b)「したがって、本発明の目的は、まず、従来技術の問題を解決して、上記活性物質を基剤として完全に満足できる咀嚼可錠剤を製造できるような方法を提供することである。
今、広範な研究の結果、本出願者らは、問題の活性物質が呈する味および/または不快風味に対するマスキング剤としてココア粉末を使用することによって該目的が達成されることを見出すことに成功した。
本出願者の最大の利得は、問題の活性物質の不快な味および/または風味に対するマスキング剤として使用したココア粉末が、十分な割合で用いられると圧縮剤の役割を有して、従来の圧縮剤の使用を不要にすることを意外にも見出したことである。」(4ページ25行?5ページ6行)
(2c)「[実施例7]
水酸化アルミニウムおよび水酸化マグネシウムを基剤とする咀嚼可錠剤の製造
40重量部の水酸化アルミニウム、40重量部の水酸化マグネシウム、45重量部のココア粉末および3重量部のポリビドンを混合する。
・・・
錠剤の組成
水酸化アルミニウム 400mg
水酸化マグネシウム 400mg
ココア粉末 450mg
ポリビドン 30mg
アスパルテーム 2mg
ハシバミ実香料 14mg
タルク 10mg
ステアリン酸マグネシウム 4mg
1310mg 」
(11ページ19行?12ページ20行)

(2)対比
本件補正発明と上記刊行物1記載の発明とを対比する。
刊行物1記載の発明の「カカオ」は、実施例5によれば、キシリトールと共に香味剤として添加されたものであるから、脂質成分ではなく、本件補正発明の「ココア・パウダー」に相当するものであり、かつ「チョコレートの一部ではない」ことは明らかである(なお、本願明細書には、刊行物1に関して「1つの実施例においてカカオ・パウダーに言及している。」と記載され(段落【0016】)、「カカオ」が「ココア・パウダー」に相当することは請求人も認めている。)。
また、刊行物1記載の発明の「非極性成分としてカカオバター代替品(CBR)」は、本件補正発明の「脂質成分」に相当する。

したがって、両者は、
「チョコレートの一部ではないココア・パウダーを含み、かつ1以上の脂質成分をさらに含むニコチン含有組成物。」である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点]
ココア・パウダーの含有量が、本件補正発明では「少なくとも30%(W/W)」、であるのに対し、刊行物1記載の発明では「16.9%(W/W)」である点。

(3)判断
上記相違点について検討する。
ア 本願明細書には、ココア・パウダーの含有量に関して次のように記載されている(下線は当審付与。)。
「本発明が開示するように、高い比率のカカオ・パウダー(30-50%)及び脂肪分(40-45%)で賦形剤を調製することによって有効なマスク効果が達成される。カカオ・パウダー濃度が高ければ高いほど味マスキング効果が向上する。」(段落【0034】)、
「例1:好ましい実施例の調製
下記の好ましい組成(w/w)を有する約400mgの錠剤を後述する方法によって調製する。
・・・
希釈/充填、味マスキング、円滑化及び風味剤:ココア・パウダー約50%脂質成分:脂肪分約44%
緩衝化剤:炭酸ナトリウム約15mg
甘味料:アスパルテーム約0.6%
乳化剤/可溶化剤:レシチン約1%
任意の風味剤:ペパーミント又はバニラ・風味剤0.5%
脂肪分の一部を融解させる。」(段落【0035】?【0037】)、
「例3:有効濃度範囲
・・・単位投与量中における配合物の成分毎の有効な濃度範囲は下記の通りである:
ニコチン(形態を問わず):塩基として測定して約0.5mg乃至10mg、
希釈/充填、味マスキング、円滑化及び風味剤:約17%乃至約70%(w/w)、
脂質成分:約20%乃至約50%(w/w)、
甘味料緩衝化剤:約0.3%乃至約3%(w/w)、
緩衝化剤:0乃至約10%(w/w)、
乳化剤/可溶化剤:約0.3%乃至約5%(w/w)、及び
風味剤:0乃至約4%(w/w)。」(段落【0045】)。
これらの記載によれば、味マスキング剤としてのココア・パウダーは、濃度が高いほど味マスキング効果が向上するものであって、特に30%以上とすることに臨界的な意義はなく、例3によれば、17%程度でも味マスキングの効果を奏するものと認められる。

イ そして,刊行物1記載の発明において「ココア・パウダー(カカオ)」は「香味剤」として含まれているものであるが(記載事項(1e)参照)、ほぼ17%近い量含有されていることから、味のマスキング作用も有していると認められる。

ウ また、ココア・パウダーが不快な味のマスキング作用を有することは、刊行物2に記載されている他、特開2000-95710号公報、特開2001-114668号公報にも記載されているように周知であり、刊行物2には、ニコチンに対するものではないが、実施例7に、マスキング剤として、ココア・パウダーを30重量%(450mg/1310mg)以上含有させるものが記載されている。
そうすると、刊行物1記載の発明において、ニコチンや緩衝化剤の不快な味をマスキングすることを目的として、他の風味料や甘味料の種類や量に応じてココア・パウダーの含有量を調整し、30%以上とすることは当業者が適宜なしうることである。

したがって、本件補正発明は、刊行物1、2記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3 補正の却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たしていないものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明
1 本願発明
平成21年10月15日付けの手続補正は却下されたので、本願の請求項1ないし15に係る発明は、平成20年9月3日付け誤訳訂正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち、請求項1に係る発明は、次のとおりである。
「【請求項1】
少なくとも17%(W/W)のココア・パウダーを含み、かつ1以上の脂質成分をさらに含むことを特徴とするニコチン含有組成物。」

2 引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された、上記刊行物1、2に記載された事項及び発明は、「第2 2(1)」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願の請求項1に係る発明は、前記「第2」で検討した本件補正発明から、「チョコレートの一部ではない」との限定を省略し、ココア・パウダーの含有量の範囲を「少なくとも17%(W/W)」に拡大したものに相当する。
そうすると、本願の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項を全て含み、さらに他の限定を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「第2 2(3)」に記載したとおり、刊行物1、2記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願の請求項1に係る発明も、同様の理由により、刊行物1、2記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。


〈付言〉
なお、請求人は、平成23年11月16付け回答書において補正案を提示しており、その請求項1は次のとおりである。
「〔請求項1〕 単位投与量が、以下の:
ニコチン(形態を問わず):塩基として測定して0.5mg?10mg、
ココア・パウダーであるもの:17%?70%(w/w)、
脂質成分:20%?50%(w/w)、
甘味料:0.3%?3%(w/w)、
緩衝化剤:0?10%(w/w)、
乳化剤/可溶化剤:0.3%?5%(w/w)、及び
風味剤:0?4%(w/w)
を含むことを特徴とするニコチン含有組成物。」

しかし、上記刊行物1の実施例5には、上記「第2 (1)」に示すとおり、ニコチン遊離塩基、カカオ(ココア・パウダー)、脂質成分(アプリコムE)、甘味料(キシリトール)、乳化剤/可溶化剤(卵レシチン)を含むニコチン含有組成物が記載されており、脂質成分と甘味料が、補正案の請求項1に係る発明より多いが、補正案において、脂質成分と甘味料の含有量を限定した点に格別の意義は認められず、刊行物1記載の発明において、各成分の含有量を補正案のような範囲に調整することは、当業者が適宜なしうることであり、補正案の請求項1に係る発明も、特許を受けることができない。
 
審理終結日 2012-03-09 
結審通知日 2012-03-13 
審決日 2012-03-26 
出願番号 特願2003-530291(P2003-530291)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61K)
P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安藤 倫世  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 穴吹 智子
内田 淳子
発明の名称 新規の配合物及びその使用  
代理人 福本 積  
代理人 武居 良太郎  
代理人 中村 和広  
代理人 渡辺 陽一  
代理人 石田 敬  
代理人 青木 篤  
代理人 古賀 哲次  

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