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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06Q
管理番号 1261306
審判番号 不服2010-25419  
総通号数 153 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-11-11 
確定日 2012-08-08 
事件の表示 特願2000-525847「携帯用一方向無線財務メッセージングユニット」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 7月 1日国際公開、WO99/33011、平成13年12月25日国内公表、特表2001-527247〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成10年12月4日(優先権主張国:米国、優先日:1997年(平成9年)12月22日)を国際出願日とする出願であって、平成21年12月18日付けの拒絶理由に対し、平成22年3月19日付けで手続補正がなされたが、平成22年7月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年11月11日付けで審判請求がなされ、同日付けで手続補正がなされたものである。また、平成23年7月25日付けの審尋に対して、平成24年1月26日付けの回答書が提出された。

第2 平成22年11月11日付けの手続補正についての補正却下の決定
【補正却下の決定の結論】
平成22年11月11日付けの手続補正を却下する。
【理由】
1.補正の内容
上記手続補正(以下「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項のうち、請求項1の記載は次のとおりである。

「【請求項1】 保安メッセージングシステムであって、
保安メッセージングシステムコントローラを備え、
前記保安メッセージングシステムコントローラは、
複数の財務口座に関連する複数の財務口座事象トリガを格納し、かつ監視する財務口座事象モニタと、
前記複数の財務口座のうちの1つの財務口座に関して前記財務口座事象モニタによる少なくとも1つの財務口座事象トリガの発生の判定に応答して、財務取引を生じさせる少なくとも1つの財務取引メッセージの無線財務メッセージングユニットへの送信をスケジューリングするスケジュールコントローラとを含み、前記無線財務メッセージングユニットは、前記保安メッセージングシステムから離れた位置に存在し、
前記財務取引は、前記少なくとも1つの財務口座事象トリガに関連し、前記少なくとも1つの財務取引メッセージのうちの各財務取引メッセージは、対応する財務取引部分を識別する取引識別子を含むとともに、前記対応する財務取引部分に関連する値を含むことを特徴とする保安メッセージングシステム。」

2.補正の適否
上記請求項1は、「財務メッセージングユニット」が「無線」であることを限定するものであって、この補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものである。
したがって、本件補正は、平成18年法律55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)17条の2第4項2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(平成18年改正前特許法17条の2第5項において準用する126条5項の規定に違反するか否か)について以下に検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記「1.補正の内容」に記載したとおりのものである。

(2)刊行物の記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願の日前に頒布された刊行物である引用文献1(特表平6-501329号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与したものである。

ア)「第3図を参照すると、本発明の一実施例に係わる、通信システム(例えば、ページングシステム300)のブロック図が示されている。該ページングシステム300は電話会社機器(例えば、公共交換電話ネットワーク(PSTN)、または構内交換機(PBX)308を介して財務機関のコンピュータシステム306とインタフェースすることができる。典型的には、これらの形式の電話線はダイアル呼出しの回線である(すなわち、発呼パーティが応答パーティに接続するために電話番号をダイアルする)。電話会社機器308のいずれの側にも自動電話インタフェース用機器304を導入することができる。そのような自動インタフェース機器304は、引続きより詳細に説明するように、自動ダイアルイン/ダイアルアウト通信を可能にする。しかしながら、財務機関コンピュータシステム306とページングターミナル302との間の専用のコンピュータ用インタフェース310によれば高いレベルの保安性および信頼性を提供できる。そのようなインタフェースは専用の回線およびシリアルRS-232またはRS-422標準、または他の伝統的なコンピュータ用インタフェースプロトコルにしたがうインタフェース回路310から構成できる。
ベーシングターミナル302は上に述べたインタフェース(304または310)の1つを介して知られた方法で財務機関のコンピュータシステム306からメッセージを受けることができる。好ましくは、該メッセージの少なくとも一部は安全な通信のために暗号化された形式になっている。通常、該メッセージはアドレス情報と結合されて該メッセージの宛先を識別する。該メッセージは続いてローカルページング送受信機312または遠隔ページング送受信機314を介して導かれ、かつ知られた技術を使用して電子ウォレット100の少なくとも1つの選択呼出し受信機200によって受信されかつデコードされる(322)。さらに、いくつかの用途においては、遠隔ページング送受信機314を介するワイヤレスメッセージの通信は知られた技術を使用したマイクロウェーブ通信(例えば、衛星通信)によって行うことができる。 宛先に対して複数の選択呼出し受信機を選択するために、ページングターミナル302は前記財務機関のコンピュータシステム306からのアドレス情報を、各々のアドレスが1つの選択呼出し受信機200を選択する、1群のアドレスに内部的にマツピングすることができる。その結果、ページングシステム300はそのグループ内の各々のかつ全てのアドレスに結合されたメッセージを反復して送信することができる。あるいは、1つのグループにある各々のかつ全ての選択呼出し受信機200は同じ「グループ」アドレスに応答することができる。したがって、1つのグループにある全ての選択呼出し受信機は前記送信された「グループ」のアドレスに結合された1つのメッセージを受信することができる。後者の場合はシステムのスループットの上でより効率がよいが、その理由は1つのアドレス/メッセージ対のみが通常送信されるからである。しかしながら、前者の場合はメンバをグループ内に入れあるいはグループから外す上でかなりの柔軟性を与え、それはページングターミナル302はすでにユーザに分配された複数の電子ウォレット(100)よりもよりアクセスが可能でありかつ編成が容易であるからである。したがって、財務機関はメッセージ(例えば、財務取引に関係する情報を有するメッセージ)を通信しかつそのメッセージにより複数の選択呼出し受信機の各々を更新することができる。
あるいは、選択呼出し受信機200はメッセージを符号化しかつ前記ページング送受信機の1つ(312または314)を介してページングターミナル302に送信することができる(324)。好ましくは、該メッセージの少なくとも一部は保安のため暗号化することができる。送信されたメッセージとともに含まれるアドレスは宛先としてのページングターミナル302を選択することができ、該宛先ページングターミナルは前記メッセージをデコードしかつ該ページングターミナル302に記憶する。続いて、ページングターミナル302は前記メッセージを電話会社機器308を介してあるいは専用のコンピュータ用インタフェース310を介して財務機関のコンピュータシステム306に結合することができる。任意選択的には、第2のアドレスを前記選択呼出し受信機200から送信されたメッセージに含めることができる。この第2のアドレスは前記メッセージの宛先のための財務機関のコンピュータシステム306を選択することができる。その結果、ページングターミナル302は任意選択的な第2のアドレスを確認し、対応する電話番号を識別し、かつ前記メッセージを選択された財務機関のコンピュータシステム306に(すなわち、PSTN 308を通してダイアルアウトすることにより)送ることができる。したがって、通信システム(例えば、ページングシステム300)は複数の財務機関にサービスを行うことかできる。そして、各々の財務機関のコンピュータシステム306は、以下にさらに詳細に説明するように、メッセージを少なくとも1つの電子ウォレット100と通信することができる。」(公報9頁右上欄15行?10頁右上欄3行。)

イ)「第4図を参照すると、本発明に係わる、第3図のページングターミナル302のより詳細なブロック図が示されている。自動電話インタフェース304は電話会社機器308(例えば、構内交換機(PBX)、または公共交換電話ネットワーク(PSTN))を介して財務機関のコンピュータのシステムから自動的にメッセージ(すなわち、ページ要求)を受信することができる。あるいは、ローカル財務機関用コンピュータシステム306は、知られた方法で伝統的なRS-232またはRS-422にしたがって、ローカルビデオ表示ターミナル(VDT)またはコンソールインタフェース(すなわち、専用コンピュータインタフェース)310を介してページングターミナル302とインタフェースすることができる。
(略)
メモリ414の領域に記憶されるページ要求情報は典型的には知られたコーディング機構(例えば、POCSAGおよびGSC)を使用して、特定のページ要求の要求に対してフォーマットされたページャアドレスおよびメッセージを具備する。いったんそのページが選択呼出し受信機200に送信する用意ができると、マルチコーディングシンセサイザーモジュール420はメモリモジュール414から(すなわち、出力制御バス418を介して)ページアドレス情報およびフォーマットされたメッセージを受け取る。該ページアドレス情報はマルチコーディングシンセサイザーモジュール420に対しページを選択呼出し受信機200に効率的に送信するにはどのページアドレスおよびどのページャ符号化形式が必要であるかに関し指示する。
ページングターミナルコントローラ410は最終的に送信機制御モジュール430に対しページング送受信機(例えば、ページング送信機のベースステーション)312をターン「オン」しかつページングシステムのチャネルによって送信を開始することを指令する。マルチコーディングシンセサイザモジュール420は典型的には、ページをページングシステムのチャネルによって導く、ページング送受信機312に対し(すなわち、シンセサイザ出力バス422および送信機制御モジュール430を介して)符号化されたページ情報を送信する責務を有する。したがって、ページ要求はページングターミナル302によって受信されかつ受け入れられ、メモリ414の指定された領域に記憶され、そして続いてページングシステムのチャネルの利用可能性にしたがって選択呼出し受信機200に送信することができる。
電子ウォレット100の選択呼出し受信機200はページングシステム300を介して財務機関のコンピュータシステム306にメッセージを送信することができる。送信されたメッセージは、伝統的な技術を使用して、ページング送受信機312により受信されかつページングターミナル302に導くことができる。いったんアドレス情報がページングターミナル302を選択するために決定されると、前記メッセージは財務メッセージデコーダ440によりデコードされかつ次にメモリ414の指定された領域に結合される。任意選択的には、時間スタンプ(416)もまたメモリ414に記憶することができる。通信システムの構成および、前に述べたように、メッセージとともに含めることができる任意選択的な第2のアドレス情報にしたがって、ページングターミナルコントローラ410は自動電話インタフェース304に対応する財務機関のコンピュータシステム306にダイアルアウトするよう指令することができる。最後に、前記メッセージは財務機関のコンピュータシステム306に結合することができる。したがって、電子ウォレット100はページングシステム300を介して財務機関のコンピュータシステム306にメッセージを送信することにより取引(例えば、財務取引)を開始することができる。」(公報10頁右上欄4行?11頁右上欄13行。)

ウ)「第5A図?第5E図を参照すると、本発明の通信システム300のための数多くの例示的な取引が示されている。これらの取引は数多くの可能なシナリオを示し、続いてさらに詳細に説明するように、現金取引、購買取引、および複数電子ウォレット取引を含む。
第5A図においては、財務機関500は取引を行うためにメッセージを電子ウォレット502に送信する。そのような取引または処理のいくつかの例は口座に対する周期的な貸し方への記入(credits)(例えば、給料支払い簿による給料の銀行口座への直接の預金)または口座に対する周期的な借り方への記入(debits)(例えば、銀行口座からの抵当権の支払いおよびカーローンの支払いのような費用の自動支払い)を含む。これらの例では、財務機関500は通常財務機関のコンピュータシステム306(第3図)において口座の残高を更新する。しかしながら、電子ウォレット502のメモリ206(第2A図を参照)における対応する残高を更新するために通信システム300から電子ウォレット502にメッセージが周期的に送信される。このようにして、電子ウォレット502は財務機関500における口座に対し財務取引の残高の概要を含むことができる現在の財務情報を維持することかできる。第5A図に対する他の例示的な取引は通信システムのオペレータによって紛失した電子ウォレット502へのユーザアクセスを制御するために開始できる。これは通常電子ウォレット502によっては開始されず、したがって財務機関500から電子ウォレット502への一方向通信として表わされる。
第5B図においては、電子ウォレット510はメッセージを財務機関512に送信することによって財務機関512と取引を開始する。このメッセージは、以下に説明するように、数多くの方法で財務機関のコンピュータシステム306(第3図を参照)に入力することができる。次に、財務機関512は通信システム300を介して電子ウォレット510にメッセージを送信する。このようにして、取引は電子ウォレット510から始められかつ財務機関512において確認されかつ記録されるようにすることができる。さらに、電子ウォレット510は財務機関512から確認メッセージを受信して電子ウォレット510において該メッセージによる取引を確認し、かつ該メッセージに応じてメモリ206(第2A図を参照)における残高を更新する。そのような取引の例は現金取引を含む(すなわち、電子ウォレット510が財務機関512と通信し、現金を一方の口座残高から他方の口座残高へと転送することなどにより、口座残高の金額を変更する)。さらに、電子ウォレット510は借用口座(borrowing account)残高から現金口座残高へと転送するために取引を開始することができる。したがって、電子ウォレット510のユーザは要求に応じて貸し方の口座から現金を借りることができる(例えば、予め設定されたクレジット限界を有する保証なしの(unsecured)緊急借用ファンドロ座、あるいは同様に予め設定された借用限界を有する変動ホームエクイティローン口座)。 (略)
第5C図においては、電子ウォレット520は財務機関522およびサードパーティ (例えば、会社または2次財務機関)524と該サードパーティ524を介して財務機関524にメッセージを送ることにより取引を開始する。このメッセージは、第5B図について前に述べたように、数多くの方法でサードパーティ524によって入力できる。続いて、財務機関522はメッセージを通信システム300を介して電子ウォレット520に送信できる。このようにして、取引はサードパーティ524を介し電子ウォレット520から開始することができ、かつ財務機関522において認証されかつ記録することができる。さらに、電子ウォレット520は該電子ウォレット520において該メッセージによる取引を認証しかつ該メッセージに応じてメモリ206(第2A図を参照)における残高を更新するために財務機関512から確認メッセージを受信することができる。そのような取引の例は現金取引を含む(すなわち、電子ウォレット520が財務機関522と通信して、前に述べたように、口座の残高の金額を変更する場合)。
(略)
第5E図においては、複数の電子ウォレット(540および546)が財務機関544における1つの口座を共有する。電子ウォレットのいずれか1つ(540)が取引(例えば、サードパーティ542との購買取引)を開始した時、該取引は通信システム300を介して財務機関544により複数の電子ウォレット(540および546)の各々に対し確証されかつ更新される。このようにして、財務機関544と共通の口座を共有する全ての電子ウォレットは現在の財務情報および/またはその口座に対する取引活動の残高の概要によって更新できる。さらに、第1のウォレット540は第2のウォレット546のために財務情報を更新し(すなわち、上に述べた現金取引と同様に)財務機関544および通信システム300を介して第2のウォレット546のために口座限界または他の取引情報を更新することができる。さらに、保安取引(すなわち、通信システム300によりユーザアクセス制御メッセージが送信されることを必要とする紛失した電子ウォレット546)は前記口座を共有する全ての電子ウォレット(540および546)に対し更新することができる。その結果、これによって少なくとも1つの電子ウォレット546が保安され、かつ他のメンバの電子ウォレット(540)は通信システム300の電子ウォレット(540および546)による保安手順の必要に応じて保安取引情報により更新できる。最後に、第1のウォレット546は、第2のウォレット540によって開始された取引に対する残高の概要を含む、第2のウォレット540のための取引活動(購買または他の費用のような財務取引活動)を監視することができる。これは個々の人による取引活動の現在の記録を維持するために強力な管理ツールとなりうる。取引情報を更新しおよび/または複数の電子ウォレット(540および546)の各々に対する残高を更新することに対するここで述べられた数多くの利点および他の利点が理解できるであろう。(公報11頁右上欄14行?13頁右下欄10行)

以上の記載から、引用文献1には次の発明が開示されている。
「ページングシステム300であって、財務機関コンピュータシステム306とページングターミナル302との間は保安性を持ち、
前記ページングターミナル302は、
電子ウォレット510が財務機関512と通信し、現金を一方の口座残高から他方の口座残高へと転送することなどにより、口座残高の金額を変更する財務取引を生じさせるものであって、
電子ウォレット510はメッセージを財務機関512に送信することによって財務機関512と取引を開始し、財務取引の確認メッセージは財務機関512から電子ウォレット510に送信され取引を確認し、
ページングターミナルコントローラ410は最終的に送信機制御モジュール430に対しページング送受信機(例えば、ページング送信機のベースステーション)312をターン「オン」しかつページングシステムのチャネルによって送信を開始することを指令するものであって、
電子ウォレット100の選択呼出し受信機200はページングシステム300を介して財務機関のコンピュータシステム306にメッセージを送信することができ、
選択呼出し受信機200はメッセージを符号化しかつ前記ページング送受信機の1つ(312または314)を介してページングターミナル302に送信することができる(324)ものであり、
財務取引の確認メッセージはアドレス情報と結合されて該メッセージの宛先を識別し、該メッセージは続いてローカルページング送受信機312または遠隔ページング送受信機314を介して導かれ、かつ知られた技術を使用して電子ウォレット100の少なくとも1つの選択呼出し受信機200によって受信されかつデコードされる(322)、ページングシステム300。」(以下、引用発明1とする。)

(3)本願補正発明と引用発明1との対比・判断
ア)引用発明1の「ページングシステム300」は、財務取引に関するメッセージを送受信するシステムであって、そのメッセージは符号化して保安性を保つものであるから、本願補正発明の「保安メッセージングシステム」に相当している。

イ)引用発明1の「ページングターミナルコントローラ410」は、財務取引に関するメッセージに関して、送信機制御モジュール430に対して、ページング送受信機(例えば、ページング送信機のベースステーション)312をターン「オン」し、かつ、ページングシステムのチャネルによって送信を開始することを指令していることから、本願補正発明において財務取引メッセージの送信をスケジューリングする「スケジュールコントローラ1750」に相当している。

ウ)引用発明1の「ページングターミナル302」は、「ページングシステム300」に備えられ、財務取引に関するメッセージを指令する「ページングターミナルコントローラ410」を含んでいることから、本願補正発明の「保安メッセージングシステムコントローラ1702」に相当している。

エ)引用発明1において、「財務取引の確認メッセージはアドレス情報と結合されて該メッセージの宛先を識別し、該メッセージは続いてローカルページング送受信機312または遠隔ページング送受信機314を介して導かれ、かつ知られた技術を使用して電子ウォレット100の少なくとも1つの選択呼出し受信機200によって受信されかつデコードされ」ており、また、明細書には、「電子ウォレット510は財務機関512から確認メッセージを受信して電子ウォレット510において該メッセージによる取引を確認し、かつ該メッセージに応じてメモリ206(第2A図を参照)における残高を更新する。」とあることから、引用発明1の財務取引に関するメッセージは、対応する財務取引を識別するとともに、対応する財務取引の値の情報を含むものであることから、本願補正発明における「取引識別子」に相当するものを含むと言える。

以上のことから、本願補正発明と引用発明1の一致点、相違点は以下のとおりである。

【一致点】
「保安メッセージングシステムであって、
保安メッセージングシステムコントローラを備え、
前記保安メッセージングシステムコントローラは、
複数の財務口座のうちの1つの財務口座に関して少なくとも1つの財務取引メッセージの無線財務メッセージングユニットへの送信をスケジューリングするスケジュールコントローラを含み、前記無線財務メッセージングユニットは、前記保安メッセージングシステムから離れた位置に存在し、
前記財務取引は、前記少なくとも1つの財務取引メッセージのうちの各財務取引メッセージは、対応する財務取引部分を識別する取引識別子を含むとともに、前記対応する財務取引部分に関連する値を含むことを特徴とする保安メッセージングシステム。」

【相違点】
本願補正発明の保安メッセージングシステムは、「複数の財務口座に関連する複数の財務口座事象トリガを格納し、かつ監視する財務口座事象モニタ」を備え、「財務口座事象トリガの発生の判定に応答して、取引識別子を含む財務取引を生じさせる」のに対して、引用発明1においては、電子ウォレットはメッセージを財務機関に送信することによって取引識別子を含む財務取引を開始している点で相違している。

(4)相違点についての判断
・特開平6-52211号公報(拒絶査定における参考文献1)に開示の技術的事項
「【0002】
【従来の技術】現在、銀行では、総合口座という定期預金口座と普通預金口座をリンクさせた口座を取扱っている。この総合口座によれば、顧客の普通預金の口座の残高が不足したときに、事前に登録してある定期預金口座を担保に、顧客に一定額を自動融資することができる。
【0003】最近では、上記総合口座に、資金の自動運用機能が付いた資金自動運用口座がある。資金の自動運用機能とは、事前に総合口座に対して、どれだけの金額を、どのくらいの期間、どの種類の定期にて運用するかを登録しておき、登録日(通常毎月1回)には普通預金口座に登録した金額がたまっているかを調べ、たまっていたらその金額を普通預金口座から登録した種類の定期預金口座へと自動的に振替る機能である。」

・特開平5-242132号公報(拒絶査定における参考文献2)に開示の技術的事項
「【0032】図7はアクセスする口座番号を選定する他の実施例の画面(入力手段)を示したものであり、従来通り4桁の暗証番号を入力した後に本画面に切り替わる。この実施例では口座Aは給料明細書(すなわち、預金専用)の口座であり、口座Bは生活費(すなわち日常の生活に関わる費用の入出金専用)の口座であり、口座Cは電気、ガス、水道、電話などの公共料金の自動振り替え口座、口座Dはローンの返済専用の口座、口座Eは自動融資カードローン(すなわち、口座B?Dの残高が不足した場合に、自動的に口座Aから不足の口座に資金を振り込んでもまだ不足の場合、登録した金融機関が自動的に融資を行うことのできる口座であり、融資残高が記録される)である。その他、教育費専用口座、財テク専用口座なども考えられるが、図示は割愛した。これらの各口座を金融機関に申請して登録した場合、各口座ごとに預金通帳が発行されるのが普通であり、これは各口座ごとに取引実績を記録するのに便利なためである。」
「【0042】また、図7において説明したように、自動融資カードローンは例えば口座Bの残高が不足した場合に、自動的に口座Aから不足の口座Bに資金を振り込んでもまだ不足の場合、登録した金融機関が自動的に融資を行うことのできる口座である。しかし、一般に融資ローンに対しては利息を払う義務が生じるため、もし、他の口座C、Dに残高がある場合はその残高を不足の口座Bに振り替えるとよい。このような目的に対しても図10、図11の操作方式を利用すれば容易に振替えができる。」

これらの文献には、複数の財務口座に関連して、普通預金口座に登録した金額が貯まっているかどうかを監視、モニタし、貯まっていたらそのことを財務口座の事象トリガとして、その金額を、別の定期預金口座に自動的に振り替えること(参考文献1)、及び、口座Bの残高が不足しているかどうかを監視して、不足したことを財務口座の事象トリガとして、自動的に口座Aから不足の当該口座に資金を振り込む財務取引を生じさせること、さらに不足する場合は、口座C、Dに残高がある場合はその残高を口座Bに振り替えること(参考文献2)が技術的事項として記載されており、これらの文献から「複数の財務口座に関連する複数の財務口座事象トリガを格納し、かつ監視する財務口座事象モニタを備え、財務口座に関して前記財務口座事象モニタによる少なくとも1つの財務口座事象トリガの発生の判定に応答して、財務取引を生じさせる」ことは、周知技術であると認められる。

引用発明1は、ユーザーからのメッセージを財務機関512に送信することによって財務口座の取引を開始するものであるから、ユーザーからのメッセージに代えて自動化を図るべく当該周知技術を適用して、本願補正発明のように、「複数の財務口座に関連する複数の財務口座事象トリガを格納し、かつ監視する財務口座事象モニタ、前記複数の財務口座のうち1つの財務口座に関して前記財務口座事象モニタによる少なくとも1つの財務口座事象トリガの発生の判定に応答して、財務取引を生じさせる」ことは、当業者が容易になし得ることにすぎない。
また、そのように構成したことによる効果にも格別のものはない。

したがって、本願補正発明は、引用発明1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

よって、本件補正は、平成18年改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に違反してなされたものであるから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成22年11月11日付けの手続補正は上記の通り却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成22年3月19日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし22に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「【請求項1】 保安メッセージングシステムであって、
保安メッセージングシステムコントローラを備え、
前記保安メッセージングシステムコントローラは、
複数の財務口座に関連する複数の財務口座事象トリガを格納し、かつ監視する財務口座事象モニタと、
前記複数の財務口座のうちの1つの財務口座に関して前記財務口座事象モニタによる少なくとも1つの財務口座事象トリガの発生の判定に応答して、財務取引を生じさせる少なくとも1つの財務取引メッセージの財務メッセージングユニットへの送信をスケジューリングするスケジュールコントローラとを含み、前記財務メッセージングユニットは、前記保安メッセージングシステムから離れた位置に存在し、
前記財務取引は、前記少なくとも1つの財務口座事象トリガに関連し、前記少なくとも1つの財務取引メッセージのうちの各財務取引メッセージは、対応する財務取引部分を識別する取引識別子を含むとともに、前記対応する財務取引部分に関連する値を含むことを特徴とする保安メッセージングシステム。」

2.刊行物
原査定の拒絶の理由で引用された刊行物、及び、その記載事項は、前記「第2 2.(2)」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記「第2 2.」で検討した本願補正発明における財務財務メッセージングユニットが「無線」であることの限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が前記「第2 2.」に記載したとおり、引用発明1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願はその余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-03-12 
結審通知日 2012-03-13 
審決日 2012-03-28 
出願番号 特願2000-525847(P2000-525847)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山本 雅士  
特許庁審判長 吉村 和彦
特許庁審判官 須田 勝巳
松尾 俊介
発明の名称 携帯用一方向無線財務メッセージングユニット  
代理人 本田 淳  

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