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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B21D 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B21D |
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管理番号 | 1261319 |
審判番号 | 不服2011-2379 |
総通号数 | 153 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-09-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-02-01 |
確定日 | 2012-08-08 |
事件の表示 | 特願2000-360323「接続部材の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 5月 8日出願公開、特開2002-126821〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 この出願は、平成12年10月20日の特許出願であって、同22年1月21日付けで拒絶の理由が通知され、同22年4月5日に意見書及び手続補正書が提出され、同22年6月29日付けで再度拒絶の理由が通知され、同22年9月17日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同22年10月8日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、これに対し、同23年2月1日に本件審判の請求と同時に手続補正(以下「本件補正」という。)がされたものである。 第2 本件補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] 1 補正の内容の概要 本件補正は、特許請求の範囲について補正をするものであって、補正前後の請求項1の記載は、補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。 (1) 補正前の請求項1 「アンコイラーからピンチロールにより金属板を引き出し、 次に設置した切断機によりその連続した金属板の途中に打ち抜きや切り込みや切断等の切断加工を加えて連結片を形成し、 その後に設置した複数組み合わせたロールによって構成するロール成形機により接続部材の幅方向の成形を行う、 他の接続部材に連結するための連結片と壁下地に固定された水切受材に差し込む差込片とを持つ接続部材の製造方法に関して、 上記の切断機により連結片を形成する切断加工の際に金属板の連続する部分を一部残して、金属板と次の金属板との重なりを防止してロール成形を行い、その後に一部残した連続する部分の金属板を切り離す重複防止手段か、 上記のピンチロールと切断機との間に他のピンチロールを設置して、 連結片を形成する切断加工の際に、先行する金属板と次の金属板とを切り離すとともに、金属板の送りに対して次の金属板の送りを後者のピンチロールを遅れさせることにより、後者の金属板を前者のピンチロールと後者のピンチロールとの間に形成するループ量の増加として蓄積し、 両者の金属板の間に送間隔を形成する重複防止手段かの、 いずれかの、金属板と次の金属板との重なりを防止する重複防止手段を使用してロール成形を行う事を特徴とする他の接続部材を長手方向に連結するための長手方向の端部に連続して形成する連結片を持つ接続部材の製造方法。」 (2) 補正後の請求項1 「アンコイラーからピンチロールにより金属板を引き出し、 次に設置した切断機によりその連続した金属板の途中に打ち抜きや切り込みや切断等の切断加工を加えて連結片を形成し、 その後に設置した複数組み合わせたロールによって構成するロール成形機により接続部材の幅方向の成形を行い、 建築用パネルと他の建築用バネルとの接続部を覆う被覆面を形成し、 その被覆面を長手方向に延長する形状に切り残して形成する他の接続部材に連結するための連結片と、壁下地に固定された水切受材に差し込む差込片とを持つ接続部材の製造方法に関して、 上記の切断機により連結片を形成する切断加工の際に金属板の連続する部分を一部残して、金属板と次の金属板との重なりを防止してロール成形を行い、その後に一部残した連続する部分の金属板をライン速度に同調する他の切断機により切り離す重複防止手段か、 上記のピンチロールと切断機との間に他のピンチロールを設置して、 その切断機がライン速度に同調する切断機であり 連結片を形成する切断加工の際に、先行する金属板と次の金属板とを切り離すとともに、金属板の送りに対して次の金属板の送りを後者のピンチロールを遅れさせることにより、後者の金属板を前者のピンチロールと後者のピンチロールとの間に形成するループ量の増加として蓄積し、 両者の金属板の間に送間隔を形成する重複防止手段かの、 いずれかの、金属板と次の金属板との重なりを防止する重複防止手段を使用してロール成形を行う事を特徴とする他の接続部材を長手方向に連結するための長手方向の端部に連続して形成する連結片を持つ接続部材の製造方法。」 2 補正の適否 請求項1における補正は、接続部材の構造に関して「建築用パネルと他の建築用バネルとの接続部を覆う被覆面を形成し、その被覆面を長手方向に延長する形状に切り残して形成する」ものであるという限定を付加し、切断機により連結片を形成する切断加工の際に金属板の連続する部分を一部残して、金属板と次の金属板との重なりを防止してロール成形を行い、その後に一部残した連続する部分の金属板を切り離す重複防止手段における後者の切断機を「ライン速度に同調する他の切断機」と限定し、ピンチロールと切断機との間に他のピンチロールを設置する切断機に関して「ライン速度に同調する切断機」であると限定するものであって、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものである。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下検討する。 (1) 認定補正発明 補正発明は、本件補正により補正がされた明細書及び図面の記載からみて、上記1の(2)の補正後の請求項1に記載された事項により特定されるところ、「建築用バネル」につき、本件出願の発明の詳細な説明の記載には、段落【0001】に「この発明は、建築用パネルの切断端部の接続部を覆う、長尺の金属板等を成形した接続部材は、次の目的の為に複数連結して施工する接続部材と、その製造方法に関するものである。」と記載され、段落【0007】に「・・・は、この発明の実施例1を示し、建築用パネル1と他の建築用パネル1とを、それらにより構成される壁の、仮想的な平面である壁面の途中において接続するものである。」と記載され、段落【0014】に「・・・は、この発明の実施例2を示し、建築用パネル1と他の建築用パネル1との出隅部において接続するものである。」と記載され、段落【0021】に「・・・は、この発明の実施例3を示し、建築用パネル1と他の建築用パネル1との入隅部において接続するものである。」と記載され、段落【0028】に「・・・は、この発明の実施例4を示し、建築用パネル1と他の建築用パネル1とを、それらにより構成される壁の、仮想的な平面である壁面の途中において接続するものである。」と記載されていることから、「建築用バネル」は「建築用パネル」の誤記であると認められる。 また、補正発明は、「上記の切断機により連結片を形成する切断加工の際に金属板の連続する部分を一部残して、金属板と次の金属板との重なりを防止してロール成形を行い、その後に一部残した連続する部分の金属板をライン速度に同調する他の切断機により切り離す重複防止手段か、 上記のピンチロールと切断機との間に他のピンチロールを設置して、 その切断機がライン速度に同調する切断機であり 連結片を形成する切断加工の際に、先行する金属板と次の金属板とを切り離すとともに、金属板の送りに対して次の金属板の送りを後者のピンチロールを遅れさせることにより、後者の金属板を前者のピンチロールと後者のピンチロールとの間に形成するループ量の増加として蓄積し、 両者の金属板の間に送間隔を形成する重複防止手段かの、 いずれかの、金属板と次の金属板との重なりを防止する重複防止手段を使用して」という、前者後者のうち、いずれかの重複防止手段を使用するものであると特定している。 したがって、本審決では、補正発明として前者を採用し、さらに「建築用バネル」を「建築用パネル」と変更して認定した次のとおりのものと認める。 「アンコイラーからピンチロールにより金属板を引き出し、 次に設置した切断機によりその連続した金属板の途中に打ち抜きや切り込みや切断等の切断加工を加えて連結片を形成し、 その後に設置した複数組み合わせたロールによって構成するロール成形機により接続部材の幅方向の成形を行い、 建築用パネルと他の建築用パネルとの接続部を覆う被覆面を形成し、 その被覆面を長手方向に延長する形状に切り残して形成する他の接続部材に連結するための連結片と、壁下地に固定された水切受材に差し込む差込片とを持つ接続部材の製造方法に関して、 上記の切断機により連結片を形成する切断加工の際に金属板の連続する部分を一部残して、金属板と次の金属板との重なりを防止してロール成形を行い、その後に一部残した連続する部分の金属板をライン速度に同調する他の切断機により切り離す、金属板と次の金属板との重なりを防止する重複防止手段を使用してロール成形を行う事を特徴とする他の接続部材を長手方向に連結するための長手方向の端部に連続して形成する連結片を持つ接続部材の製造方法。」(以下、「認定補正発明」という。) (2) 刊行物記載事項 (2)-1 刊行物1 原査定の拒絶の理由に引用され、この出願の出願前に頒布された刊行物である特開平4-127924号公報(以下「刊行物1」という。)には、以下のとおり記載されている。 ア 第1ページ左下欄第5行-第9行の特許請求の範囲 「1.フープ材を連続的に供給して製品形状に塑性加工するロールフオーミング方法において、 前記ロールフオーミングの前工程で前記フープ材の所定の長さ寸法の位置に切り欠きを設けたことを特徴とするロールフオーミング方法。」 イ 第1ページ左下欄第11行-第14行 「〔産業上の利用分野〕 本発明は、ロールフオーミングにおいて所定寸法に切断時のばりの発生防止に好適な製作方法に関する。」 ウ 第2ページ左上欄第12行-右上欄第11行 「〔実施例〕 以下、本発明の一実施例を第1図ないし第5図により説明する。第1図はロールフオーミング装置全体を示しており、フープ材1から引き出されたワークは切り欠き加工機2を通過してロールフオーミング装置3に供給して製品形状に塑性加工され、切断機4によりつながつている製品5を分離する。所定の長さ寸法だけワークをフープ材1から引き出されたときに、切り欠き加工機2が動作し、平板状態のワークに第2図に示す切り欠き部6を加工し、ワークは切り欠き部6の残る部分でつながつたままでロールフオーミング装置3の駆動装置付ロールで前進し一定の製品形状に塑性加工される。このとき切り欠き部6をもつ断面図を第3図に示す。切り欠き部6の加工で残る部分でつなかつている製品5は、ロールフオーミング装置3から切断機4に移動し、切断機4は切り欠き部6の位置で動作して切り欠き部6でつながつている製品5を分離するものであり、以上の動作を連続的に行なう。」 エ ここで、図面の第1図を参照すると、ワークはコイル状のフープ材1から引き出されているのが見て取れる。したがって、フープ材1のコイル状の部分がアンコイラーであることは明らかである。 また、第1図において、フープ材1に隣接して切り欠き加工機2が設置され、切り欠き加工機2に隣接してロールフオーミング装置3が設置され、ロールフオーミング装置3に隣接して切断機4が設置されているのが見て取れる。 上記アないしウの摘記事項、及びエの認定事項から、刊行物1には、次の発明が記載されていると認める。 「アンコイラーであるフープ材1からワークを引き出し、 次に設置した切り欠き加工機2によりワークに切り欠き部6を加工するとともに切り欠き部6の残りの部分でつながったままのワークとし、 その後に設置したロールフオーミング装置3によりワークを製品形状に塑性加工を行う製品5の製作方法に関して、 上記の切り欠き加工機2により切り欠き部6を加工する際にワークは切り欠き部6の残る部分でつながったままとし、ロールフォーミング装置3でワークを製品形状に塑性加工を行い、その後に切り欠き部6の残る部分を切断機4で分離する、製品5の製作方法。」(以下「引用発明1」という。) (2)-2 刊行物2 原査定の拒絶の理由に引用され、この出願の出願前に頒布された刊行物である特許第2681355号公報(以下「刊行物2」という。)には、以下のとおり記載されている。 ア 第1欄第2行-第2欄第3行の特許請求の範囲 「1.駆体に固定するための固定部と、該固定部に垂直な差込み溝を有した断面が逆T字状のベースと、可撓性を有した金属板で作り、建築用パネルの接合部分を覆うための天井化粧部と該パネルの接合間(固定された該ベースの差込み溝)に差し込むための垂直な差込み部を持ち、該差込み部は、該天井化粧部の両端縁を内方水平に屈曲し、該天井化粧部中央付近で各々垂直に屈曲し差込み部となるように成形した断面が概ねT字型の目地カバーからなるツーピースタイプの目地ジョイナーにおいて、目地カバーを長さ方向に二本以上連結する際、該天井化粧部の幅寸法以下の幅と、20mm?80mmの長さを有した、該目地ジョイナーと同色の可撓性を有した、概ね六角形で長さ方向の中間で断面へ字状に屈曲した切片を、一方のジョイナー化粧部とその両端から内方に屈曲した水平部との間に長さ方向中間の屈曲部まで差し込み、他の一方のジョイナーを同様に差し込んで連結する目地ジョイナーの連結方法。」 イ 第2欄第5行-第7行 「(1)産業上の利用分野 この発明は、建築用パネルの目地ジョイナーの連結方法に関するものである。」 ウ 第2欄第8行-第14行 「(2)従来の技術 建築用パネルの目地ジョイナーの従来の連結方法を第2図を参考に説明すれば、以下のようであった。 イ. 第2図(a) 連結しようとする目地ジョイナーの一方の端部の天井化粧部の両端部及び差込み部を一部切り欠き、他の一方の切り口へ差し込む。」 エ 第2欄第15行-第3欄第2行 「ロ.第2図(b) 連結しようとする目地ジョイナーの各々の端部どうしを単に突き付ける。」 オ 第3欄第34行-第4欄第11行 「(6)実 施 例 この発明の実施例を、図面を参照しながら説明する。第3図(a)は連結作業にはいる前の壁面の状態を示したもので、4は雌型溝を有し、本体と嵌合して本体の脱落を防止するためのベースであり。5は金属サイディングである。 第3図(b)に示すように20mm?80mmの長さを有し真中でへの字状に折った、本体1及び2と同色の可撓性を有した切片を、既に固定されている本体1の切り口部分に半分付近まで切片の長さ方向に差し込み、次に本体2の切り口に該切片の残りの部分を差込み、その後、本体2をベース4に差し込む。」 カ ここで、図面の第3図(a)及び第3図(b)を参照すると、断面形状が略T字型であるジョイナー本体1の縦壁の部分が金属サイディング5、5の継ぎ目にあるベース4に差し込まれているのが見て取れる。したがって、ジョイナー本体1における略T字型の縦壁の部分が差込片であり、横壁の部分が被覆面であるという構成が理解できる。また、従来例である第2図(b)に記載された目地ジョイナーも、断面形状が略T字型であるのが見て取れることから、第2図(b)において、縦壁の部分がベースに差し込まれる差込片であり、横壁の部分が被覆面であるという構成は明らかである。 以上の構成を前提として、第2図(a)を参照すると、目地ジョイナーには縦壁の部分は見当たらないが、差込片となる縦壁の部分が存在することは明らかである。また、横壁の部分が被覆面であることも明らかである。 そして、摘記事項ウの「連結しようとする目地ジョイナーの一方の端部の天井化粧部の両端部及び差込み部を一部切り欠き、他の一方の切り口へ差し込む」の記載、及び第2図(a)の記載から、第2図(a)に記載の目地ジョイナーの目地カバーは、その端部に他の目地カバーに差し込む連結片を有しているのが見て取れる。 以上、アないしオの記載事項、及びカの認定事項から、刊行物2には、第2図(a)に記載されたものを基本として考えると、以下の発明が記載されていると認める。 「金属サイディングと他の金属サイディングとの継ぎ目を覆う被覆面を有し、他の目地ジョイナーの目地カバーに差し込むための連結片と、差込片とを有する金属板から成る目地ジョイナーの目地カバー。」(以下、「引用発明2」という。) (3) 対比 認定補正発明と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「アンコイラーであるフープ材1」は、認定補正発明の「アンコイラー」に相当し、以下同様に、「ワーク」はフープ材1から塑性加工されるので「金属板」に、「切り欠き加工機2」は切り欠き加工を行うものであるので、「(次に設置した)切断機」に、「ロールフオーミング装置3」は「複数組み合わせたロールによって構成するロール成形機」に、「切断機4」は切り欠き部6の残る部分を切断するものであるので、「他の切断機」にそれぞれ相当している。 引用発明1の「ワークに切り欠き部6を加工するとともに切り欠き部6の残りの部分でつながったままのワークと」することは、認定補正発明の「連続した金属板の途中に打ち抜きや切り込みや切断等の切断加工を加え」、「切断加工の際に金属板の連続する部分を一部残」すことに相当する。 引用発明1の「製品5」は、「金属板からなる製品」という限りで、認定補正発明の「連結片と、壁下地に固定された水切受材に差し込む差込片とを持つ接続部材」と共通する。 引用発明1の「ロールフオーミング装置3によりワークを製品形状に塑性加工を行」うことは、ロールフォーミング装置自体が板状部材の幅方向の成形を行う装置であるので、認定補正発明の「複数組み合わせたロールによって構成するロール成形機により幅方向の成形を行」うことに相当する。 引用発明1の「ロールフォーミング装置3でワークを製品形状に塑性加工を行」うことは、ワークは切り欠き部6の残る部分でつながったままの状態でロールフォーミングするのであるから、認定補正発明の「金属板と次の金属板との重なりを防止してロール成形を行」うことに相当する。 引用発明1の「その後に切り欠き部6の残る部分を切断機4で分離する」ことは、認定補正発明の「その後に一部残した連続する部分の金属板を他の切断機により切り離す」ことに相当する。 引用発明1は、製品5の製造工程の途中において、製品5を重ね合わせる作業を用いていないので、「金属板と次の金属板との重なりを防止する重複防止手段」を有しているものである。 引用発明1の「製作方法」は、「製造方法」とも言い得るものである。 以上のとおりであるので、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「アンコイラーから金属板を引き出し、 次に設置した切断機によりその連続した金属板の途中に打ち抜きや切り込みや切断等の切断加工を加え、 その後に設置した複数組み合わせたロールによって構成するロール成形機により金属板からなる製品の幅方向の成形を行う金属板からなる製品の製造方法に関して、 上記の切断機により切断加工の際に金属板の連続する部分を一部残して、金属板と次の金属板との重なりを防止してロール成形を行い、その後に一部残した連続する部分の金属板を他の切断機により切り離す、金属板と次の金属板との重なりを防止する重複防止手段を使用してロール成形を行う金属板からなる製品の製造方法。」 <相違点1> アンコイラーから金属板を引き出す際に、認定補正発明では「ピンチロール」を用いているのに対して、引用発明1では、そのような手段を用いていない点。 <相違点2> 金属板からなる製品に関し、認定補正発明では、「建築用パネルと他の建築用パネルとの接続部を覆う被覆面を形成し、その被覆面を長手方向に延長する形状に切り残して形成する他の接続部材に連結するための連結片と、壁下地に固定された水切受材に差し込む差込片とを持つ接続部材」であって、「他の接続部材を長手方向に連結するための長手方向の端部に連続して形成する連結片を持つ接続部材」であるとし、そのため、切断機によりその連続した金属板の途中に打ち抜きや切り込みや切断等の切断加工を加える際に「連結片を形成」するものであるのに対して、引用発明1は、ロールフオーミング装置3によりワークを製品形状に塑性加工を行う製品5であって、認定補正発明のような連結片と差込片とを持つ接続部材ではない点。 <相違点3> 金属板を他の切断機により切断する作業を、認定補正発明では、「ライン速度に同調する」切断機により行うと特定しているのに対して、引用発明1では、切断機4がライン速度に同調するものであるのかどうか不明な点。 (4) 相違点についての判断 上記相違点について、検討する。 ア <相違点1>について アンコイラーから金属板を引き出す際にピンチロールを用いることは、例えば、特開平11-300433号公報(段落【0026】及び図1参照。)や特公平6-84232号公報(第6欄第1行?第10行及び第1図参照。)に記載されているように従来周知の事項であり、また、引用発明1において、フープ材1からワークを引き出す際にピンチロールを使えないとする特段の阻害要因もないことからすれば、引用発明において、ワークの引き出しにピンチロールを用いることは、当業者にとって格別困難なことではない。 イ <相違点2>について 引用発明2は、「金属サイディングと他の金属サイディングとの継ぎ目を覆う被覆面を有し、他の目地ジョイナーの目地カバーに差し込むための連結片と、差込片とを有する金属板から成る目地ジョイナーの目地カバー。」である。ここで、引用発明2における「目地ジョイナーの目地カバー」及び「金属サイディング」は、それぞれ、認定補正発明の「接続部材」、「建築用パネル」に相当する。また、引用発明2の「被覆面を有し」ていることは、認定補正発明の「被覆面を形成し」ていることに相当し、引用発明2の「他の目地ジョイナーの目地カバーに差し込むため」は、認定補正発明の「他の接続部材に連結するため」に相当する。さらに、引用発明2の「差込片」は、「壁下地に固定された水切受材に差し込む」ものであることは明らかである。そして、引用発明2の「有する」ことは「持つ」と言えるものである。 そうすると、引用発明2は、「建築用パネルと他の建築用パネルとの接続部を覆う被覆面を形成し、他の接続部材に連結するための連結片と、壁下地に固定された水切受材に差し込む差込片とを持つ金属板から成る接続部材」と言い換えることができる。さらに、引用発明2は、「他の接続部材を長手方向に連結するための長手方向の端部に連続して形成する連結片を持つ接続部材」とも言い得るものであることも明らかである。 そして、引用発明1も引用発明2も、ともに金属板から構成されるものであること、そして、引用発明1の製造方法を引用発明2の目地カバーの製造に適用できないとする阻害要因も格別見当たらないことからすれば、引用発明1において製造される製品5を、引用発明2における目地ジョイナーの目地カバーとすることは、当業者が容易になし得たものと考えざるをえない。 ここで、認定補正発明は、さらに、「切断機」による「切断加工により」連結片を形成すると特定し、連結片の形成を「その被覆面を長手方向に延長する形状に切り残して形成する」ものであると特定している。 しかしながら、刊行物2における第2図(a)を参照すると、目地ジョイナーの目地カバーは、略T字形状の横壁の部分が延長されて差し込み部となっているのが見て取れることから、連結片となる差し込み部は、「被覆面を長手方向に延長する形状」と言い得るものである。また、引用発明1における製造方法により引用発明2の目地ジョイナーの目地カバーを製造するとした場合には、目地カバーの連結片は、切断機としての「切り欠き加工機2」による切断で形成されるべきものとなることは明らかである。 したがって、引用発明1の製造方法を引用発明2の目地カバーの製造に適用した場合には、その目地カバーの連結片は切り欠き加工機2で切断加工により形成されるものであり、目地カバーの連結片は被覆面を長手方向に延長する形状に切り残して形成されるものとすることは明らかである。 ウ <相違点3>について 刊行物1における上記摘記事項ウに「切断機4は切り欠き部6の位置で動作して切り欠き部6でつながつている製品5を分離するものであり、以上の動作を連続的に行なう」と記載されているように、引用発明1における切断機4は、ワークの切り欠き部6のある位置で切り欠き部6の残る部分を分離するものであるから、切断位置が決められているものであり、その作動がワークの移動に同調していることは明らかである。そして、一般に、切断機において、切断機をライン速度に同調させて作動させること自体、例えば特開平11-197939号公報(要約参照。)に記載されているように従来周知の事項である。したがって、引用発明1においては、切断機4はライン速度に同調したものであると認められ、例え同調したものであるとは認められなかったとしても、切断機4の作動をライン速度に同調させることは、当業者が容易になし得たものである。 エ <作用ないし効果>について 引用発明1においても、長尺のワークをバレタイジング、及びデパレタイジング作業を経ることなく製品5を製造するものであることからすれば、認定補正発明によってもたらされる作用ないし効果についても、引用発明1、引用発明2及び従来周知の事項から予測されるものでしかない。 オ 相違点の判断についてのまとめ したがって、認定補正発明は、引用発明1、引用発明2、及び上記従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、補正発明も同様に、引用発明1、引用発明2、及び上記従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 むすび 以上のとおりであるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、この出願の請求項1に係る発明は、平成22年9月17日付け手続補正書によって補正された明細書及び願書に添付された図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認めるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の1の(1)の補正前の請求項1に示したとおりである。 2 刊行物記載事項 これに対して、原査定の拒絶の理由に上記刊行物1、刊行物2が引用されており、その記載事項は、上記第2の2の(2)に示したとおりである。 3 対比・判断 本願発明は、上記第2の2で述べたとおり、補正発明の発明特定事項から、上記限定事項が省かれたものと見ることができる。 そうすると、上記第2の2の(4)で検討したとおり、補正発明は、引用発明1、引用発明2、及び上記従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、補正発明の発明特定事項から上記限定事項が省かれた本願発明についても、同様の理由により、引用発明1、引用発明2、及び上記従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 むすび 以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された引用発明1、刊行物2に記載された引用発明2、及び上記従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、この出願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-04-19 |
結審通知日 | 2012-05-15 |
審決日 | 2012-06-04 |
出願番号 | 特願2000-360323(P2000-360323) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B21D)
P 1 8・ 575- Z (B21D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 川村 健一、西山 智宏 |
特許庁審判長 |
野村 亨 |
特許庁審判官 |
刈間 宏信 菅澤 洋二 |
発明の名称 | 接続部材の製造方法 |