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審決分類 |
審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) G01V |
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管理番号 | 1261386 |
判定請求番号 | 判定2012-600014 |
総通号数 | 153 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許判定公報 |
発行日 | 2012-09-28 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2012-05-17 |
確定日 | 2012-08-10 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第4414465号の判定請求事件について,次のとおり判定する。 |
結論 | イ号カタログおよびイ号写真に示すフロア用センサー(製造発売元:株式会社エクセルエンジニアリング,品番:EFM-52/M。)は,特許第4414465号特許発明の技術的範囲に属しない。 |
理由 |
第1 請求の趣旨 イ号カタログおよびイ号写真に示すフロア用センサー(製造発売元:株式会社エクセルエンジニアリング,品番:EFM-52/M。 以下「イ号物件」という)は,特許第4414465号特許発明(請求項2の発明。以下「本件特許発明」という)の技術的範囲に属する,との判定を求める。 第2 本件特許発明 本件特許発明は,上記請求の趣旨に「特許第4414465号特許発明(請求項2の発明。以下『本件特許発明』という)」と記載され,判定請求書の3頁9?11行に「本件特許発明である『コードレス型荷重検知センサ』は,特許明細書,図面の記載からみて,特許請求の範囲に記載されたつぎのとおりのものである。 請求項2の発明:」と記載されており,明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定されたとおりのものであり,それらの構成,目的及び効果は,以下のとおりである。 1 本件特許発明の構成 本件特許発明を分説すると次のようになる(以下,「構成要件A」などという。)。 【請求項2】 A 柔軟性と耐水性を有し,全周縁は空気が漏洩しないように密閉して,シート状に形成された袋体の内部に, 所定間隙を保持し対向して配置された一対の電極板と, 該電極板に設けられた電極と, 該電極からの接点信号を検出して無線送信する無線送信部とが組込まれたコードレス型荷重検知センサにおいて, B 前記袋体には前記無線送信部を出し入れするために,溶着部分を刃物等で切除して開口し,再び溶着する取出口が設けられており, C 前記取出口は,袋体の側縁の一部を開口したものであり, D 該開口部分を覆着するための閉止板が,前記側縁から延設して溶着されており, 前記無線送信部を開口から袋体内部に挿入した後に,前記開口が閉止板で着脱自在に覆着されている E ことを特徴とするコードレス型荷重検知センサ。 2 本件特許発明の目的及び効果 明細書の記載によれば,本件特許発明は,「コードレス型のパネル式センサは,樹脂製カバーの内部に無線発信器および電池等を収納した構造としている。このような構造にするとケーブルを必要としないため設置場所が自由となり便利である。しかしながら,無線発信器および電池を樹脂製カバーの内部に密閉収納しているため,電池交換ができず,また,無線発信器の故障や破損による修理あるいは交換ができなかった。」(【0004】)という従来技術の課題を解決することを目的とし,「無線送信器が故障や破損したとき,または,電池に不具合が生じたときには,前記袋体の側縁部に取付けられた取出口または開口から,繰り返し無線送信器や電池を取出して修理や交換等のメンテナンスが行えるので,利便性を著しく向上させることができる。」(【0012】) という効果を奏するものである。 第3 イ号物件 請求人の判定請求書におけるイ号物件の説明と,請求人より提出されたイ号物件そのものより,以下のとおりイ号物件を認定する。 「a 柔軟性と耐水性を有し,全周縁は空気が漏洩しないように密閉して,シート状に形成された袋体の内部に, 所定間隙を保持し対向して配置された一対の電極板と, 該電極板に設けられた電極と, 該電極からの接点信号を検出して無線送信する無線送信部とが組込まれたフロア用センサーにおいて, b 前記袋体には前記無線送信部を出し入れするために,スリット状の取出口が設けられており, c 前記取出口は,袋体の隅部近傍の一部を開口したものであり, d 該開口部分を覆着密閉するための密閉板が,前記袋体と別体として設けられており, 前記無線送信部を開口から袋体内部に挿入した後に,裏面全体に粘着材が塗布された密閉板で着脱自在に前記開口が覆着密閉されている e ことを特徴とするフロア用センサー。」 第4 対比・判断 1 本件特許発明とイ号物件の各構成要件との対比・判断 (1)構成要件Aについて イ号物件は「柔軟性と耐水性を有し,全周縁は空気が漏洩しないように密閉して,シート状に形成された袋体の内部に, 所定間隙を保持し対向して配置された一対の電極板と, 該電極板に設けられた電極と, 該電極からの接点信号を検出して無線送信する無線送信部とが組込まれたフロア用センサー。」であり,「フロア用センサー」は「電極からの接点信号を検出して無線送信する無線送信部とが組込まれ」ているのであるから本件特許発明の「コードレス型荷重検知センサ」に相当する。 したがって,イ号物件は,構成要件Aを充足する。 (2)構成要件Bについて 構成要件Bは「前記袋体には前記無線送信部を出し入れするために,溶着部分を刃物等で切除して開口し,再び溶着する取出口が設けられており,」であるから,「取出口」は「溶着部分を刃物等で切除して開口し,再び溶着する」ものである。 一方,イ号物件においては,「取出口」は,「スリット状」であり,溶着部分を有していないので,「溶着部分を刃物等で切除して開口し,再び溶着する取出口」を有していないことは明らかである。 したがって,イ号物件は,構成要件Bを充足しない。 (3)構成要件Cについて 構成要件Cは「前記取出口は,袋体の側縁の一部を開口したものであり,」であるから「取出口」として袋体の一部を開口した場所は「側縁」である。 一方,イ号物件は,「前記取出口は,袋体の隅部近傍の一部を開口したものであり,」であるから「取出口」として袋体の一部を開口した場所は「隅部近傍」である。 そして,「隅部」は「側縁」の一部といえないことはないが,「隅部近傍」は「側縁」ではないので,イ号物件は,「前記取出口は,袋体の側縁の一部を開口したものであり,」を有していない。 したがって,イ号物件は,構成要件Cを充足しない。 (4)構成要件Dについて 構成要件Dは「該開口部分を覆着するための閉止板が,前記側縁から延設して溶着されており,前記無線送信部を開口から袋体内部に挿入した後に,前記開口が閉止板で着脱自在に覆着されている」であるから,「閉止板」は「側縁から延設して溶着されて」いる。 本件特許発明の「取出口」は「溶着部分を刃物等で切除して開口し,再び溶着する」のであるから,溶着により密閉するものであるので,「閉止板」の技術的意義は本件特許明細書中に明記されていないものの,「無線送信部の挿入をガイドする」,あるいは「開口部分を保護する」とも考えられるが,少なくとも「開口部分を密閉する」ではないことは明らかである。 また,「側縁から延設して溶着されて」いる本件特許発明の「閉止板」は,「袋体と別体」ではない しかも,閉止板で開口を覆着するための手段は本件特許発明には特定されていないが,本件特許明細書には「【0031】 図7(b)において,閉止板5の片面と,その片面により覆着される袋体16の当接面には,再剥離可能な取付手段41,例えば,面ファスナ,粘着剤または接着剤を用いた両面テープ,等が設けられている。」と記載されており,上記手段が面ファスナを含んでいること,及び,図面においても開口部の周りに粘着材等が描かれていないので単に折り畳んで固定するものが描かれているに過ぎないから,閉止板で開口を覆着するための手段が「密閉」をするものではないことは明らかである。 一方,イ号物件は,「該開口部分を覆着密閉するための密閉板が,前記袋体と別体として設けられており,前記無線送信部を開口から袋体内部に挿入した後に,前記開口が裏面全体に粘着材が塗布された密閉板で着脱自在に覆着密閉されている」のであるから,「密閉板」は開口部分を密閉するものである。 また,「前記袋体と別体として設けられて」いるイ号物件の「密閉板」は,「袋体と別体」である。 以上より,イ号物件の「密閉板」は,本件特許発明の「閉止板」とは技術的意義を全く異にするものであり,イ号物件は本件特許発明の「閉止板」に相当するものを備えておらず,イ号物件は,「該開口部分を覆着するための閉止板が,前記側縁から延設して溶着されており,前記無線送信部を開口から袋体内部に挿入した後に,前記開口が閉止板で着脱自在に覆着されている」を有していない。 したがって,イ号物件は,構成要件Dを充足しない。 (5)構成要件Eについて 構成要件Eは「コードレス型荷重検知センサ」であるが,イ号物件の「フロア用センサー」に相当することは上記「(1)構成要件Aについて」に記載したとおりである。 したがって,イ号物件は,構成要件Eを充足する。 2 まとめ 上記(1)?(5)に示すように,イ号物件は本件特許発明の構成要件A,Eは充足するものの,本件特許発明の構成要件B?Dを充足するものとすることはできない。 3 均等について 均等なものとして,特許発明の技術的範囲に属するための条件は,最高裁判所により以下のとおり判示されている。 「特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等と異なる部分が存する場合であっても,1)上記部分が特許発明の本質的部分ではなく,2)上記部分を対象製品等におけるものと置き換えても,特許発明の目的を達することができ,同一の作用効果を奏するものであって,3)上記のように置き換えることに,当業者が,対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたものであり,4)対象製品等が,特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから上記出願時に容易に推考できたものではなく,かつ,5)対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないときは,上記対象製品等は,特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして,特許発明の技術的範囲に属する。」 そして,特許発明の本質的部については以下のとおり判示されている。 「特許発明の本質的部分とは,特許請求の範囲に記載された特許発明の構成のうちで,当該特許発明特有の課題解決手段を基礎づける特徴的な部分,言い換えれば,上記部分が他の構成に置き換えられるならば,全体として当該特許発明の技術的思想とは別個のものと評価されるような部分をいうものと解される。 そして,本質的部分に当たるかどうかを判断するに当たっては,特許発明を特許出願時における先行技術と対比して課題の解決手段における特徴的原理を確定した上で,対象製品の備える解決手段が特許発明における解決手段の原理と実質的に同一の原理に属するものか,それともこれとは異なる原理に属するものかという点から判断すべきものである。」 上記判示事項に沿って検討すると,「特許発明の構成のうちで,当該特許発明特有の課題解決手段を基礎づける特徴的な部分,言い換えれば,上記部分が他の構成に置き換えられるならば,全体として当該特許発明の技術的思想とは別個のものと評価されるような部分」である本件特許発明の本質的部分は,審査時の引用文献と対比すると課題の解決手段における特徴的原理は「溶着した取出口を閉止板で覆着する構成」であるから構成要件Bと構成要件Dである。 そして,構成要件Bと構成要件Dは,上記「(2)構成要件Bについて」,「(4)構成要件Dについて」で検討したように,共にイ号物件が充足しない。 言い換えれば,本件特許発明の本質的部分がイ号物件と異なるのである。 つまり,本件特許発明は特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等と異なる部分があり,その異なる部分が特許発明の本質的部分であるので,上記判示事項の1)を満たしていない。 したがって,上記判示事項の2)?5)を検討するまでもなく,イ号物件は,本件特許発明の特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして,特許発明の技術的範囲に属するとすることはできない。 第5 むすび したがって,イ号物件は,本件特許発明の技術範囲に属しない。 よって,結論のとおり判定する。 |
別掲 |
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判定日 | 2012-08-02 |
出願番号 | 特願2008-23818(P2008-23818) |
審決分類 |
P
1
2・
1-
ZB
(G01V)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 田中 秀直 |
特許庁審判長 |
岡田 孝博 |
特許庁審判官 |
後藤 時男 信田 昌男 |
登録日 | 2009-11-27 |
登録番号 | 特許第4414465号(P4414465) |
発明の名称 | コードレス型荷重検知センサ |
代理人 | 筒井 大和 |
代理人 | 小塚 善高 |
代理人 | 筒井 章子 |