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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  B04C
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  B04C
管理番号 1261733
審判番号 無効2011-800151  
総通号数 154 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-10-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-08-31 
確定日 2012-07-02 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4119298号発明「サイクロン式分離機」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第4119298号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 特許第4119298号の請求項2に係る発明についての審判請求は、成り立たない。 審判費用は、その2分の1を請求人の負担とし、2分の1を被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第4119298号の出願についての手続の概要は、以下のとおりである。

平成15年 4月24日 特許出願(特願2003-120230号)
平成20年 5月 2日 特許権の設定登録(請求項の数2)
平成23年 8月31日 無効審判(無効2011-800151)請求
平成23年11月16日 審判事件答弁書
平成23年12月13日 審理事項通知書
平成24年 1月19日 口頭審理陳述要領書(請求人)
平成24年 1月30日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
平成24年 2月10日 第1回口頭審理、無効理由通知
平成24年 3月12日 意見書(請求人)
平成24年 3月14日 訂正請求書(請求項の数2)、意見書(被請求人)

第2 当事者の主張
1 請求人の主張の概要
請求人は、審判請求書において、「特許第4119298号発明の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、審判請求書及び口頭審理陳述要領書を提出した。そして、口頭審理の結果を総合すると、請求人が主張する無効理由は、概略、次のとおりのものである。
(1)無効理由1(進歩性)
本件の請求項1及び2に係る発明(以下「本件特許発明1」、「本件特許発明2」という。)は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第1ないし6号証に記載された発明(以下「甲第1発明」ないし「甲第6発明」という。)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許が特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
したがって、本件特許は同法第123条第1項第2号に該当し、その特許を無効とすべきである。
そして、その理由を次の通り主張する。
ア 本件特許発明1に対して
本件特許発明1は、甲第1及び2号証に示された周知のサイクロン式分離機に、甲第3及び4発明の集塵管にベーンを設けることを適用することにより当業者が容易になし得たものである。
イ 本件特許発明2に対して
本件特許発明2は、甲第1及び2号証に示された周知のサイクロン式分離機に、甲第3及び4発明の集塵管にベーンを設けること、甲第5発明の上側の仕切板に固定した管台に出口チューブを気密に、かつ、取外し自由に固定すること、及び、甲第6発明の挿入管外壁を受入管内壁に回転可能にリングパッキングで気密にすることを適用することにより当業者が容易になし得たものである。

[証拠方法]
ア 甲第1号証:実願昭55-31857号(実開昭56-137754号)のマイクロフィルム
イ 甲第2号証:実願平3-61989号(実開平5-17326号)のCD-ROM
ウ 甲第3号証:実願平4-84835号(実開平7-7751号)のCD-ROM
エ 甲第4号証:特開平5-131158号公報
オ 甲第5号証:特公昭46-12880号公報
カ 甲第6号証:特開2000-46278号公報

(2)無効理由2(記載要件)
本件特許明細書の発明の詳細な説明の項には、どのようなベーン(9)を集塵管(7)のどの位置にどのように取り付けたのか具体的に記載されていない(審判請求書第19ページ第8?9行を参照。)とともに、仕切板(3)に受管(10)を設けたことの作用効果が何ら記載されていない(同第19ページ第15?19行を参照。)ため、その特許が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。
したがって、本件特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。
そして、その理由は次の通りである。
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、発明が解決しようとする課題に記載されたベーンの最適な取付け位置について、ベーンを集塵管のどの位置にどのように取付けるのかが具体的に記載されていない。
また、同じく、発明の詳細な説明には、仕切板に受管を設けることの作用効果が記載されていない。
したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、当業者が発明の実施をできる程度に明確かつ十分に記載されていない。

2 被請求人の主張の概要
被請求人は、審判事件答弁書において、「審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、審判事件答弁書及び口頭審理陳述要領書を提出した。そして、口頭審理の結果を総合すると被請求人の主張は、概略、次の通りのものである。
(1)無効理由1(進歩性)
本件特許発明1及び2は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第1号証ないし甲第6号証に記載された発明(以下「甲第1発明」ないし「甲第6発明」という。)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでないから、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
したがって、本件特許は同法第123条第1項第2号に該当に該当せず、無効とすべきものでない。
そして、その理由は次の通りである。
ア 本件特許発明1に対して
甲第1及び2号証には、「出口管と集塵管との間にベーンを設ける」ことが記載され、甲第3号証には、「出口管を集塵管に対してその軸心周りに回転可能とした」ことが記載され、甲第4号証には、旋回流を生じさせるベーン(8)が設けられることが記載されているが、甲第1?4号証には、「出口管を集塵管に対してその軸心周りに回転可能とした」点と、「集塵管にベーンを設ける」点を組み合わせたことの記載はない(審判事件答弁書第8ページ第16?17行を参照。)。また、両者の構成を組み合わせる動機(課題)及び組み合わせによる特有な作用効果、すなわち、出口管(8)の交換毎(穴が開く寸前に出口管(8)を回して、摩耗の少ない面を摩耗し易い面に臨ませるようにする毎)にベーン(9)の位置決めをする必要がなくなることは記載されていない(同第2ページ第18?19行、同第10ページ第15?18行)。
イ 本件特許発明2に対して
甲第5号証には、請求人が主張する「マルチサイクロン集塵機において、・・・ガスシールを確実にする」ことが記載されているが、甲第5号証の「管台」は、本件特許発明2の「受管」に相当しない。
何故ならば、本件特許発明2の受管(10)は、出口管(8)を回転可能とするための部材であって、甲第5号証の「管台(12)」のように、確実にガスシールするためだけのものでない。
甲第6号証には、請求人が主張する「挿入管の外径一定の円筒部に円周に沿ってリングパッキングを配して、挿入管の挿入によって、気密に挿入管外壁と受入管内壁を密着させる」ことが記載されているが、「受管(10)と出口管(8)との間に回転可能にパッキン具(11)を介在させる」ことに相当する構成について記載されていない。
何故ならば、甲第6号証は、液体管路のコネクターに関するものであって、本件特許発明2のサイクロン式分離機における「受管(10)と出口管(8)との間」の構成とは明らかに異なるものであって、一方に対して他方がシール性を担保しつつ回転を許容する構成ではない。

(2)無効理由2(記載要件)
ア ベーンの集塵管への取付け
甲第1号証等から、ベーンの態様そのものは、当業者にとって、集塵のために重要なものであって、従来から、流体の流入位置等に応じて適宜に設計しているから、当業者が適宜に設定する設計事項であると考えるのが自然である。
本件特許発明1及び2において、ベーン(9)を集塵管(7)のどの位置にどのように取付けるかは、集塵を効率良く行うために、当業者の技術常識に基づく設計事項の範囲内において行えば良く、少なくとも、ベーン(9)が集塵管(7)に取付けられていればよいのである。
イ 仕切板に受管を設けたことによる作用効果
本件特許発明2の受管(10)は、本件特許明細書の請求項2の「その出口管(8)を上記集塵管(7)に対しその軸心周りに回転可能とした」との記載から、出口管(8)を上記集塵管(7)に対しその軸心周りに回転可能とするため(目的)の具体的な構成であって、その目的がこの仕切板(3)に受管(10)を設けた技術的意義であることは、当業者であれば、自ずと理解する事項である。
ウ 小括
本願は、請求人が主張する特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないものではない。

第3 当審による無効理由通知
当審が平成24年2月10日の第1回口頭審理で通知した無効理由(以下「当審無効理由」という。)は、次の通りである。
[無効理由]
特許第4119298号の請求項1に係る発明(以下本件特許発明1という。)は、審判請求書に提示された甲第1号証、甲第3号証、当審による審理事項通知書により提示された実公昭28-4886号公報の第1ページ左欄下6?下5行、今回新たに提示された実願昭55-94272号(実開昭57-17754号)のマイクロフィルムの第1ページ下3?下2行、及び、特開平11-79764号公報の段落【0022】に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る発明の本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号 に該当し、無効とすべきものである。
刊行物1:実願昭55-31857号(実開昭56-137754号)のマイクロフィルム(甲第1号証)
刊行物2:実願平4-84835号(実開平7-7751号)のCD-ROM(甲第3号証)
刊行物3:実公昭28-4886号公報
刊行物4:実願昭55-94272号(実開昭57-17754号)のマイクロフィルム
刊行物5:特開平11-79764号公報

刊行物1には、本件特許発明1の前提技術について記載されている。刊行物2には、粉塵により部分的な摩耗が生じても集塵機の耐久性を向上させるという、本件特許発明1と共通の課題を解決するために、内筒を適宜回転させてその位置替えを行うサイクロン集塵機についての発明について記載されている。
サイクロン式分離機の技術分野において、集塵管と出口管の下端との間に介在するベーンを集塵管に取付けることは、刊行物3?5に記載されているように本願出願前に周知の技術事項である。
したがって、本件特許発明1は、刊行物1に記載された発明に、刊行物2に記載された発明及び周知の技術事項を適用することにより当業者が容易になし得たものである。」

第4 訂正請求
1 訂正請求の内容
被請求人が行った、平成24年3月12日付けの訂正請求(以下「本件訂正」という。)は、本件特許明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書に記載したとおりに訂正しようとするものであり、その内容は次の通りである。
(1)訂正事項1
発明の詳細な説明の「ベーンは常に位置決めされているため、出口管の交換毎にベーンの位置決めをする必要はなくなる。」(段落【0012】)を「ベーンは常に位置決めされているため、出口管の交換毎(出口管に穴が開く寸前に出口管を回して、摩耗の少ない面を摩耗し易い面に臨ませるようにする毎も含む)にベーンの位置決めをする必要はなくなる。」と訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1の「上記出口管(8)を上記集塵管(7)に対しその軸心周りに回転可能とするとともに、上記ベーン(9)を前記集塵管(7)に取付けたこと」を「上記出口管(8)を上記集塵管(7)に対しその軸心周りに回転可能とするとともに、その出口管(8)が回転しても上記ベーン(9)の位置決めが必要ないようにそのベーン(9)を前記集塵管(7)に取付けたこと」と訂正する。

2 訂正の適否
(1)訂正事項1
本件特許は、「出口管の交換サイクルを長くする」(段落【0007】)という課題を解決するために、実施例として、「ベーン9を集塵管7に取付け、そのベーン9内に出口管8をその軸心周りに回転可能に嵌め」(段落【0013】)る構成を採用するものである。
この記載から、「出口管の交換サイクルを長くする」ために、「出口管8をその軸心周りに回転」させても、「ベーン9」が「集塵管7に取付け」られているため、ベーン9の位置決めをする必要のないことは明らかである。
また、本件特許明細書には、「この発明は、出口管をその軸心周りに回転可能とし、穴が開く寸前に出口管を回して、摩耗の少ない面を摩耗し易い面に臨ませるようにしたのである。」(段落【0008】)ことが記載されている。
そうすると、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載において、「出口管の交換毎」にベーンの位置決めをする必要がないことに加え、「出口管8をその軸心周りに回転させる毎」にベーンの位置決めをする必要がない。
したがって、訂正事項1は、ベーンの位置決めをする必要がないことに「出口管に穴が開く寸前に出口管を回して、摩耗の少ない面を摩耗し易い面に臨ませるようにする毎」も含まれることを限定するものであり、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0007】及び【0013】の記載に基づき訂正するものであって、当該訂正事項は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。

(2)訂正事項2
訂正事項2の「上記出口管(8)を上記集塵管(7)に対しその軸心周りに回転可能とするとともに、その出口管(8)が回転しても上記ベーン(9)の位置決めが必要ないようにそのベーン(9)を前記集塵管(7)に取付けたこと」という技術事項は、上記(1)において検討したように本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0007】?【0008】、及び、【0013】の記載に基づくものであり、かつ、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1のベーン(9)の集塵管(7)への取付け態様を限定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(3)小括
上記訂正事項1及び2は、本件特許明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3 まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第134条の2ただし書き各号に掲げる事項を目的としており、また、同条第5項において準用する特許法第126条第3項、第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

第5 本件訂正発明
訂正後の本件特許の請求項1及び2に係る発明は、訂正後の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである(以下請求項1及び2に係る発明をそれぞれ、「本件訂正発明1」、「本件訂正発明2」という。)。

「【請求項1】
ケーシング(1)内を上下に隔てた2枚の仕切板(2、3)で区画し、その両仕切板(2、3)で挟まれた区画室を固形物(b)を含有する流体(a)の導入室(4)、下側仕切板(2)より下側の区画室を集塵室(5)、上側の仕切板(3)より上側の区画室を清浄空気室(6)とし、前記集塵室(5)に上下方向の集塵管(7)をその上端を前記下側の仕切板(2)に固定して設けるとともに、その集塵管(7)の上端を前記下側の仕切板(2)上面に開口し、前記導入室(4)に設けた上下方向の出口管(8)は、その下端が前記集塵管(7)にその上端入口からベーン(9)を介在して挿入されているとともに、上端が前記上側の仕切板(3)を気密に貫通して前記清浄空気室(6)に開口し、前記導入室(4)内にその導入室(4)側面一方向から前記流体(a)を送り込んで、その流体(a)を、前記集塵管(7)にその上端入口から送り込み、前記ベーン(9)によりその流体(a)に旋回流を生じさせて前記固形物(b)を分離し、その分離物(b)を集塵管(7)の下端出口から前記集塵室(5)に排出するとともに、分離流体(c)を前記出口管(8)の下端入口から導入して上端出口から前記清浄空気室(6)に排出するサイクロン式分離機において、
上記出口管(8)を上記集塵管(7)に対しその軸心周りに回転可能とするとともに、その出口管(8)が回転しても上記ベーン(9)の位置決めが必要ないようにそのベーン(9)を前記集塵管(7)に取付けたことを特徴とするサイクロン式分離機。
【請求項2】
上記上側の仕切板(3)に上記出口管(8)の受管(10)を固定し、その受管(10)に前記出口管(8)をパッキング(11)を介して回転可能に挿通して、その出口管(8)を上記集塵管(7)に対しその軸心周りに回転可能としたことを特徴とする請求項1に記載のサイクロン式集塵機。」

第6 無効理由通知に対する当事者の主張
1 請求人の主張の概要
請求人は、意見書において、証拠方法として甲第7号証ないし甲第9号証を提出し、本件特許発明1について、甲第7及び8号証を用いて、集塵管と出口管との間に介在するベーンを集塵管に取り付けることが本願出願前に周知の技術事項であることの補足を行い、また、本件特許発明2について、甲第9号証を用いて受管にパッキングを介して出口管を挿通してシールすることが本願出願前に周知の技術事項であることの補足を行っている。

[証拠方法]
キ 甲第7号証:実公昭46-11651号公報
ク 甲第8号証:実願昭47-90306号(実開昭49-48276号)のマイクロフィルム
ケ 甲第9号証:実公昭42-11587号公報

2 被請求人の主張の概要
被請求人は、意見書において、当審による無効理由通知書において指摘した事項のうち、刊行物1及び2に記載された発明の認定について認め、刊行物3ないし5から周知の技術事項であるとしたことは、刊行物5を除く刊行物3及び4から周知の技術事項であることを認め、さらに、刊行物1に記載された発明に刊行物2に記載された発明を適用することに動機付けがあることを認めている。
しかしながら、被請求人は、刊行物1に記載された発明及び周知の技術事項には、「出口管(8)が回転しても上記ベーン(9)の位置決めが必要ないようにするために、ベーン(9)を集塵管(7)に取付ける」という考え(動機)が無いから、刊行物1に記載された発明に、刊行物2に記載された発明及び周知の技術事項を組み合わせて本件訂正発明1に至る論理つけは行えず、本件特許発明は進歩性を有する旨主張する。
そして、その理由は次の通りである。
サイクロン式分離機において、集塵管と出口管の下端との間にベーンを介在する(取り付ける)際、そのベーンを集塵管又は出口管に取り付けることは、本件の出願前から周知事項(刊行物1、3、4等)であって、その集塵管又は出口管の何れに取り付けるかは、作業性等を考慮して、適宜に決定している。
一方、本件訂正発明1において、「ベーン(9)を集塵管(7)に取り付けた」のは、今回の訂正事項2で明確にした「出口管(8)が回転してもベーン(9)の位置決めが必要ないように」するためであり、刊行物3、4等に記載の周知技術のように、単に「ベーン(9)を集塵管(7)に取り付けた」ものではありません。
すなわち、「出口管(8)が回転しても上記ベーン(9)の位置決めが必要ないようにそのベーン(9)を集塵管(7)に取付けた」なる発明特定事項は新規なものです。
また、「出口管(8)が回転しても上記ベーン(9)の位置決めが必要ないように」するために、「ベーン(9)を集塵管(7)に取付ける」ことは、刊行物1ないし5の何れにも記載されておらず、当業者にとって自明な事項でもない。」(意見書第5ページ第13?29行)

第7 各刊行物及び甲各号証
1 刊行物1(甲第1号証)について
刊行物1(実願昭55-31857号(実開昭56-137754号)のマイクロフィルム)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「この考案は複数個のサイクロンが並列に組み合わされて成る集塵器、所謂マルチサイクロンに関するものである。」(第2ページ第4?6行)
イ 「マルチサイクロンは一個のサイクロンが破損しても集塵率が低下すると共に、その一個のサイクロンの破損により全体を取り換える必要があるという問題点があつた。特に鋳物工場等から排出されるコークスダスト、あるいは木クズ、鉄粉等を補集する目的に使用される集塵器は部分的な摩耗が激しく、寿命が短いものとされていた。
この考案は以上のような点に鑑みて成されたものであり、サイクロンの旋回流発生体と浄化ガス導出管を一体とすると共に、サイクロン外筒を、その旋回流発生体と浄化ガス導出管に対し、着脱自在に構成することにより、破損したサイクロン外筒および旋回流発生体を容易に交換し得るように成し、集塵器としての寿命を大きく伸ばすことを目的とするものである。」(第2ページ第12行?第3ページ第6行)
ウ 「上記第2集塵器7は第2図に示すように上方が略方形で下方が角錐状にすぼめられた形状とされており、上部には前記循環パイプ8と接続される循環パイプ接続筒11が形成され、側部には前記ブローダウンパイプ6と接続されるブローダウンパイプ接続筒12が形成されている。・・・一方、上記集塵器7の内部は二枚の仕切板15、16により上下3空間に仕切られており、上部位置空間が浄化ガス流入室17とされ、中部位置空間が含塵ガス導入室18とされ、下部位置空間がガス分離室19とされている。上記含塵ガス導入室18は前記ブローダウンパイプ接続筒12と連通されており、この含塵ガス導入室18の天井板、即ち仕切板15には多数の浄化ガス導出管取付口20が形成され、仕切板16には該浄化ガス導出管取付口20よりやや小径とされるサイクロン外筒取付口21が形成されている。」(第4ページ第12行?第5ページ第12行)
エ 「然して、上記浄化ガス導出管取付口20には旋回流発生体22と一体とされる浄化ガス導出管取付23がそのフランジ部23aを介して着脱自在に固定されており、上記外筒取付口21にはサイクロン外筒24がそのフランジ部24aを介して着脱自在に固定され、これにより集塵器7内には多数のサイクロンが設けられることになる。
詳細には第4図(A),(B)に示すように上記サイクロン外筒24は上部円筒部24bと下端に煤塵排出口24dを有する下部円錐部24cとを有しており、上端外周には、上記サイクロン外筒取付口21より大径で且つ上記浄化ガス導出管取付口20より小径とされるフランジ部24aが形成されている。このフランジ部24aが取付口21の外周部上面にシール材25を介して取付ボルト26により固定されている。更に、上記浄化ガス導出管23の上端外周には、浄化ガス導出管取付口20より大径とされる円盤状のフランジ部23aが取付口20の外周部上面にシール材27を介して取付ボルト28により固定されている。また、上記浄化ガス導出管23における略中間位置、即ち該導出管23の上端から含塵ガス導入室18の上下長さを差し引いた位置には旋回流発生体22が固設されており、この実施例においては浄化ガス導出管23を軸とし、該導出管23を一周回されてなる螺旋羽根が用いられ、その螺旋羽根の外径は前記サイクロン外筒24における上部円筒部24bの内径と略同等とされている。」(第5ページ第18行?第7ページ第5行)
オ 「次に、上記構成による集塵器の作用を説明する。・・・ここで含塵ガスはブローダウンパイプ接続筒12を通つて含塵ガス導入室18に入り、多数の旋回流発生体22により個々のサイクロン外筒24内である遠心分離室24eにおいて旋回せしめられる。こうして含塵ガスは多数のサイクロンにより微細な煤塵に至るまで遠心分離され、遠心分離された煤塵はサイクロン外筒24の煤塵排出孔24dから落下せしめられてダストストツカー13内に留される。一方、ここで遠心分離され、浄化されたガスは浄化ガス導出管23を通つて浄化ガス流入室17→循環ブロア10→循環パイプ8を経て、ふたたび煙突1内に吹き返されることになる。
また、上記サイクロン外筒24内において強力に旋回せしめられる煤塵により、該サイクロン外筒24の内壁は常に擦られ、除(「徐」の誤記と認める。)々に摩滅されることになる。特に、径が小さくなつている円錐部24cの内壁はより旋回流が高速となるので摩耗が激しく、ついには穴が明くことになり、充分な遠心分離効果が得られなくなることがある。
このように、サイクロン外筒24が破損した場合には、まず取付ボルト28を外してフランジ23aを持ち上げると、旋回流発生体22と共に、浄化ガス導出管23がサイクロン外筒24内より抜け出ることになる。・・・従つて、損傷を最も受け易いサイクロン外筒を適時交換するだけで長期に渡つて集塵器としての機能が果たせることになる。」(第7ページ第10行?第9ページ第13行)
カ 「以上説明したようにこの考案によれば、旋回流発生体と浄化ガス導出管を一体とすると共に、サイクロン外筒をその旋回流発生体と浄化ガス導出管に対し、着脱自在に構成したので、破損したサイクロン外筒を容易に交換することができる効果がある。従つて、損傷を最も受け易いサイクロン外筒を適時交換するだけで長期に渡つて集塵器としての機能が果せる集塵器を提供することができる効果がある。
また、この考案によれば、内部の清掃も容易となるので集塵効率を常に高い状態に維持することができる効果がある。」(第10ページ第13行?第11ページ第4行)
キ 上記ウ?オの記載事項及び第2図、第4図の図示内容から、サイクロン外筒24は、ガス分離室19内に上下方向に延在し、その上端がサイクロン外筒取付口21に開口し、含塵ガスがその上端開口から送られること、浄化ガス導出管23は、含塵ガス導入室18内に上下方向に延在し、その上端が浄化ガス流入室17に開口すること、その下端がサイクロン外筒24の上端開口から挿入されること、含塵ガスが、含塵ガス導入室18にブローダウンパイプ接続筒12を通って側部から入ることが示されている。

そこで、上記ア?カの記載事項、図面の図示内容、及び、上記キの認定事項を総合すると、刊行物1には、次の発明が記載されている。
「部分的な摩耗が激しく破損したサイクロン外筒および旋回流発生体を容易に交換し得るように成し、集塵器としての寿命を大きく伸ばすことを目的として、
集塵器7の内部は二枚の仕切板15、16により上下3空間に仕切られており、中部位置空間を含塵ガス導入室18とし、下部位置空間をガス分離室19とし、上部位置空間を浄化ガス流入室17とし、
ガス分離室19内に上下方向に延在するサイクロン外筒24を、その上端のフランジ部24aを仕切板16に着脱自在に固定するとともに、その上端16に形成されているサイクロン外筒取付口21に開口し、
含塵ガス導入室18内に上下方向に延在する浄化ガス導出管23は、その下端がサイクロン外筒24の上端開口から挿入され、それと一体とされる螺旋羽根22の外径がサイクロン外筒24における上部円筒部24bの内径と略同等とされ、上端のフランジ部23aが仕切板15に形成されている浄化ガス導出管取付口20の外周部上面にシール材27を介して固定され、その上端が浄化ガス流入室17に開口し、
含塵ガス導入室18に、ブローダウンパイプ接続筒12を通って側部から含塵ガスが入り、含塵ガスをサイクロン外筒24にその上端開口から送り、サイクロン外筒24内で旋回流発生体22により旋回せしめられ、微細な煤塵に至るまで遠心分離され、遠心分離された煤塵はサイクロン外筒24の煤塵排出孔24dから落下され、浄化されたガスは浄化ガス導出管23を通って浄化ガス流入室17に導入されるマルチサイクロンにおいて、
浄化ガス導出管23のフランジ部23aを仕切板16に取付ボルト28により固定し、浄化ガス導出管23を螺旋羽根22と一体としたマルチサイクロン。」

2 刊行物2(甲第3号証)
刊行物2(実願平4-84835号(実開平7-7751号)のCD-ROM)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「本考案は、サイクロン集塵機に係り、特にその内筒の耐摩耗性の改良に関する。」(段落【0001】)
イ 「【考案が解決しようとする課題】
ところで、サイクロン集塵機の内部における摩耗は、粉塵の粒度とガス流体の流速を決める断面積との関連で夫々に特徴がある。特に、内筒fに関しては、被処理粉塵ガスhの流速の最も速い導入管eの近くに位置し、またそこは被処理粉塵ガスhに粗粒が最も多く含まれる位置であると共に、流体に対する断面積の変化が最も大きく従って粗粒の偏りも大きい位置でもあるなど、最も局部的な摩耗の進行しやすい位置に置かれている。具体的には、内筒fの導入管eに面した部位とか、あるいは内筒fの上部から斜め下部に向う部位など、内筒fの外周に粉塵の流れに沿って特定のスパイラル状の摩耗痕が刻みこまれる傾向を示す。このような局部的な偏摩耗により内筒の一部に穴があいても、内筒全体を取替えなければならず、その修理の頻度を増加させると共にそのライフを短縮させてコストを上昇させていた。そこで、本考案は、内筒についてその耐久性を向上させる優れたサイクロン集塵機を提供することを目的とする。」(段落【0003】)
ウ 「【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本考案は、サイクロン本体を区画形成する外筒の天板より内部にガス流体を排出するための内筒を挿入すると共に外筒の上部に上記挿入された内筒の外周部に旋回流としての被処理粉塵ガスを導入する導入管を設け、且つ外筒の底部に分離された粉塵を排出する固形物排出口を形成したサイクロン集塵機おいて、上記内筒をその軸方向に沿って分割された複数の分割筒体で形成し、これら分割筒体の上下端部を互いに重ね合わせて軸回りに回転自在に係合させると共に最上部の分割筒体を上記天板に回転自在に係合支持して構成したものである。
【作用】
以上の構成により、その軸方向に複数の筒体に分割され、且つその上下端部の互いに重なり合った係合部において軸回りに自在に回転するサイクロンの内筒は、その内筒が局部的に偏摩耗してもそこが全損する前に、互いに重ね合わせた分割筒体を適宜回転させてその位置替えを行うことにより、そこの全損が回避されるので、その内筒の耐久性を向上させることができる。」(段落【0004】?【0005】)
エ 「流動層ボイラからの被処理粉塵ガス8は、導入管5を介して外筒2に圧入されるとその内周に沿って旋回流となり、この旋回流による遠心力により粉塵10がガス流体から分離されコーン部4の固形物排出口7から排出される。一方、固形物排出口7の断面積は導入管5のそれよりはるかに小さいので、外筒2に圧入された被処理粉塵ガス8はいきばを失い、上記の旋回流の中心に反転流をつくって内筒6に向かいそこからガス流体9として排出される。この内筒6に関しては、被処理粉塵ガス8の流速が最も速い導入管5の近くに位置すること、またそこは被処理粉塵ガス8に粗粒が最も多く含まれる位置であること、あるいは流体に対する断面積の変化が最も大きく従って粗粒の偏りも大きい位置でもあることなど、局部的な摩耗が最も進行しやすい位置に内筒6が置かれている。このため、内筒6はその外周に特定のスパイラル状の摩耗痕が刻みこまれる傾向を示す。従来は、この摩耗により内筒6に部分的に穴があいたときでも、これを全面的に取替えていたため、それだけコストと時間を要していたものである。
そこで、本考案は、この内筒6を上下に2分割し、連絡ダクト20をフランジ23,24を介して上部分割筒体21に固定すると共に、上部分割筒体21をフランジ25を介して外筒2の天板3に回転自在に取り付けた。また、上部分割筒体21の下端内周面に形成される吊設側のフック機構と下部分割筒体22の上端外周面に形成される被吊設側のフック機構を介してこれら上部分割筒体21と下部分割筒体22を相互に連結することにより、下部分割筒体22を天板3に回転自在に取り付けた。こうすることにより、上部分割筒体21と下部分割筒体22は夫々天板3に対して回転自在に係合支持されることになり、軸回りに所定の回転を与えて位置替えをするとその特定部位に穴があいて全損に至ることを防止できるので、内筒のライフを大巾に延長することが出来る。また、下部分割筒体22のライフが尽きて全体を交換させる必要が生じた場合も、内筒6の全体を解体修理する必要はなく、連絡ダクト20を取り外すのみで、ここから使用済み分割筒体21または22を吊り上げて取り外し、代わりに新品を吊り下ろすだけで交換が可能となり、内筒の分解と交換も容易になり、特に大型のサイクロンにおいては顕著に修理コストを低下させることができる。尚、本実施例にあっては、内筒6に係る2分割について例示したが、これを多数分割することはなんら構わないことは勿論である。また、本実施例では、分割された内筒の接続にフック機構の利用を例示したが、本考案はこれに限るものでなく、例えば図2に示すように上下の分割筒体にテーパーをつけてお互いに接続しても構わないし、またピン機構を設けて接続しても構わない。また、本実施例では、最上部の分割筒体にその下部の分割筒体を挿入して回転自在に係合支持させたが、本考案はこれに限るものでなく、即ち、上部の分割筒体をその下部の分割筒体を挿入して回転自在に係合支持させても良いし、この逆でも構わないし、また適宜組み合わせても構わないものである。また、本実施例にあっては、乾式サイクロンについて述べたが、湿式サイクロンにおいても使用できるものである。」(段落【0009】?【0010】)

そこで、上記ア?エの記載事項及び図面の図示内容を総合すると、刊行物2には、次の発明が記載されている。
「サイクロン本体を区画形成する外筒の天板より内部にガス流体を排出するための内筒を挿入すると共に外筒の上部に上記挿入された内筒の外周部に旋回流としての被処理粉塵ガスを導入する導入管を設け、且つ外筒の底部に分離された粉塵を排出する固形物排出口を形成したサイクロン集塵機において、上記内筒をその軸方向に沿って分割された複数の分割筒体で形成し、これら分割筒体の上下端部を互いに重ね合わせて軸回りに回転自在に係合させると共に最上部の分割筒体を上記天板に回転自在に係合支持して構成により、その軸方向に複数の筒体に分割され、且つその上下端部の互いに重なり合った係合部において軸回りに自在に回転するサイクロンの内筒は、その内筒が局部的に偏摩耗してもそこが全損する前に、互いに重ね合わせた分割筒体を適宜回転させてその位置替えを行うことにより、軸回りに所定の回転を与えて位置替えをするとその特定部位に穴があいて全損に至ることを防止できるので、内筒のライフを大巾に延長することが出来、また、内筒の分解と交換も容易になるサイクロン集塵機。」

3 刊行物3について
刊行物3(実公昭28-4886号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「12は内筒にして導入路3を貫通し、其フランヂをボルト締めとなし、下端を外筒8内に挿嵌し、該外筒18の内壁に螺状に固着せる数片の案内板13の下端よりも更に長く垂下突設せるものにして」(第1ページ左欄第21?25行)
イ 「而して本考案は斯如く構成せらるゝが故に、内筒12は導入路3の外壁部より引出して、単位集塵器Cの掃除、修理、並びに取替等を容易に遂行し得るは勿論、帯塵瓦斯は上部円錐筒7より簡易円滑に流動し得べし。」(第1ページ右欄第14?18行)

4 刊行物4
刊行物4(実願昭55-94272号(実開昭57-17754号)のマイクロフィルム)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「この環状路には排ガスを旋回方向に導く案内羽根が外筒の内周に固定して設けられている。」(第1ページ第18?20行)

5 刊行物5
刊行物5(特開平11-79764号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「該集合導入口30からサイクロン体内部に導入された微粒子含有気体Aは、さらに、各々のサイクロンエレメント10,10’,・・・に分配導入される。気体の導入は、サイクロンエレメントの接線方向( これを、接線型サイクロン/渦巻き型ともいう )であってもよいが、好ましくは、図に示したように、サイクロンエレメントの導入管近傍に入口案内羽根( ガイドベーン )60,60’,・・・を設けて( これを軸流式案内羽根サイクロンという )、微粒子含有気体aに案内羽根の作用で下降旋回流を与えるようにしたものが望ましい。」(段落【0022】)

6 甲第2号証
甲第2号証(実願平3-61989号(実開平5-17326号)のCD-ROM)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【実施例】
以下、本考案の一実施例におけるマルチサイクロンを図1に基づき説明する。
このマルチサイクロンは、大形の親サイクロン1のサイクロン本体2内の上部に水平仕切り板3が設けられて、その内部が下方の集塵室4と、上方の清浄ガス取出室5とに区画されている。
この集塵室4側には複数個の小形の子サイクロン6が配置されるとともに、各子サイクロン6のサイクロン本体7内に配置されたガス取出管8の上端部が上記水平仕切り板3に開口されている。
そして、上記各ガス取出管8が開口された水平仕切り板3は、ダストの安息角より大きい傾斜角(Θ)でもって傾斜されるとともに、この傾斜して設けられた水平仕切り板3の上面から滑り落ちるダストを回収するためのダスト回収用ホッパー9が、サイクロン本体2の側部に設けられている。
また、図1中、10は子サイクロン6のサイクロン本体7とガス取出管8との間に配置された複数の排ガス旋回用羽根、11はサイクロン本体2の底部に設けられたダスト取出用の開閉バルブ、12はダスト回収用ホッパー9の底部に設けられたダスト取出用の開閉バルブである。
なお、上記複数個の子マルチサイクロン6の水平面における配置状態は、千鳥状に、または碁盤の目のように配置される。
したがって、親サイクロン1のガス入口部2aから流入した排ガスは、サイクロン本体2内部で旋回させられてダストが分離落下され、その後各子サイクロン6のサイクロン本体7内の旋回空間部内に入り、やはり同様にダストが分離落下される。さらに、その後、それぞれのガス取出管8を経て清浄ガス取出室5内に入り、ガス出口部2bから外部に排出される。
そして、子マルチサイクロン6のガス取出管8から清浄ガス取出室5に取り出された排ガス中に含まれているダストは、水平仕切り板3の上面に落下するが、この水平仕切り板3はダストの安息角よりも大きい角度でもって傾斜されているため、ダストはダスト回収用ホッパー9内に滑り落ち、したがって従来のように、定期的に運転を停止してダストを除去する必要がない。」(段落【0010】?【0015】)
イ 「【考案の効果】
以上のように本考案の構成によると、子サイクロンのガス取出管が開口されている水平仕切り板を、ダストの安息角より大きい角度でもって傾斜させているので、水平仕切り板上面に落下するダストはダスト回収用ホッパー内に滑り落ち、したがって従来のように、定期的に運転を停止してダストを除去する必要がない。」(段落【0016】)

7 甲第4号証
甲第4号証(特開平5-131158号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
「本実施例では、反転流のサイクロン集塵器について説明する。サイクロン集塵器は、薄肉円管の側面3、天板2及び側面4からなる空洞部と、排出管5及び排出口6から構成されており、更に空気吸引装置(図示せず)が排出管5に連結されている。側面3には、薄肉円管の母線方向と略平行にスリット状の開口部7が4つ形成されており、お互いに約90度の等間隔角度で配置される。なお、開口部7の数は、1つ以上あればよいが、必要な集塵性能や空気吸引装置のパワー等に応じて形成することが好ましく、2つから4つの範囲が好ましい。開口部7の片側に位置する側面の一部8は、薄肉円管の内側に曲げられて羽根状に形成されている。なお、開口部7のもう片側に位置する側面の一部も併せて、薄肉円管の外側に曲げても構わない。」(段落【0032】)

8 甲第5号証
甲第5号証(特公昭46-12880号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「・・・多孔管板と出口チユーブ貫通部の完全なガスシールは従来の構造では極めて困難であつた。
本発明は前記従来の欠点を改善することを目的とし、多孔管板に大径の管台をガス密に固定して直立させると共に、同管台と出口チユーブをガス密かつ取外し自在に固定することにより、ガスシールを確実にしようとするものである。」(第2欄第11?18行)
イ 「以下本発明の実施例を図面について説明すると、第4図に於てサイクロン集塵機内の含塵ガス入口側と清浄ガス出口側とを斜めの多孔管板5で区分し、同管板5の各開口部の周辺に同開口よりも大径の管台12を溶接等によりガス密に固定して直立させる。また管台12の上端部にはフランジ13を固定し、管台12の内部には多孔管板5の開口部を貫通する除塵管の出口チユーブ6を貫装し、同出口チユーブ6の上部にはガスシールするためのシーリングフランジ14を溶接により固着するのが、この溶接は現地組立調整後全周溶接するのがよい。ここで管台12と出口チユーブ14(「6」の誤記と認める。)をガス密、かつ取外し自在に固定するには、フランジ13とシーリングフランジ14との間にガスケツト15を介在の上、ボルト16およびナツト17を用いて締付けて固定する。」(第2欄第19?34行)

9 甲第6号証
甲第6号証(特開2000-46278号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【請求項1】・・・該挿入管の外径一定の円筒部に円周にそってリングパッキングを配して、挿入管の挿入によって、気密に挿入管外壁と受入管内壁を密着させるコネクター・・・」(【特許請求の範囲】)

10 甲第7号証
甲第7号証(実公昭46-11651号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「外筒15の上端内壁には旋回羽根16を数本例えば4本固着する。」(第2欄第23?24行)

11 甲第8号証
甲第8号証(甲第8号証:実願昭47-90306号(実開昭49-48276号)のマイクロフィルム)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「このサイクロン6内に螺旋状の羽根を有するガイドベーン7を挿入し、ガイドベーン7の上部の鍔8をサイクロン6の上端面に載置する。」(第2ページ第7?9行)

12 甲第9号証
甲第9号証(実公昭42-11587号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「13は含塵ガス流体が漏れないように、且つ内筒7の上下摺動を自在にパッキング14をはさみ込んでなるブツシユで上管板8に固定し更に内筒7の横振れを防ぐものである。」(第1ページ右欄第20?23行)

第8 当審における判断
1 無効理由1(進歩性)について
(1)本件訂正発明1
ア 対比
本件訂正発明1と刊行物1に記載された発明とを対比する。
刊行物1に記載された発明の「集塵器7の内部は二枚の仕切板15、16により上下3空間に仕切られ」ることは、その構成及び機能からみて、本件訂正発明1の「ケーシング(1)内を上下に隔てた2枚の仕切板(2、3)で区画」することに相当し、以下同様に、
「中部位置空間を含塵ガス導入室18」とすることは、「両仕切板(2、3)で挟まれた区画室を固形物(b)を含有する流体(a)の導入室(4)」とすることに、
「下部位置空間をガス分離室19」とすることは、「下側仕切板(2)より下側の区画室を集塵室(5)」とすることに、
「上部位置空間を浄化ガス流入室17」とすることは、「上側の仕切板(3)より上側の区画室を清浄空気室(6)」とすることに、
「ガス分離室19内に上下方向に延在するサイクロン外筒24を、その上端のフランジ部24aを仕切板16に着脱自在に固定するとともに、その上端16に形成されているサイクロン外筒取付口21に開口」することは、「集塵室(5)に上下方向の集塵管(7)をその上端を下側の仕切板(2)に固定して設けるとともに、その集塵管(7)の上端を下側の仕切板(2)上面に開口」することに、
「含塵ガス導入室18内に上下方向に延在する浄化ガス導出管23は、その下端がサイクロン外筒24の上端開口から挿入され、それと一体とされる螺旋羽根22の外径がサイクロン外筒24における上部円筒部24bの内径と略同等とされ、上端のフランジ部23aが仕切板15に形成されている浄化ガス導出管取付口20の外周部上面にシール材27を介して固定され、その上端が浄化ガス流入室17に開口」することは、「螺旋羽根22」が浄化ガス導出管23とサイクロン外筒24における上部円筒部24bとの間にはさまり、介在しているといえるから、「導入室(4)に設けた上下方向の出口管(8)は、その下端が集塵管(7)にその上端入口からベーン(9)を介在して挿入されているとともに、上端が上側の仕切板(3)を気密に貫通して清浄空気室(6)に開口」することに、
「含塵ガス導入室18に、ブローダウンパイプ接続筒12を通って側部から含塵ガスが入り、含塵ガスをサイクロン外筒24にその上端開口から送り、サイクロン外筒24内で旋回流発生体22により旋回せしめられ、微細な煤塵に至るまで遠心分離され、遠心分離された煤塵はサイクロン外筒24の煤塵排出孔24dから落下され、浄化されたガスは浄化ガス導出管23を通って浄化ガス流入室17に導入される」ことは、「導入室(4)内にその導入室(4)側面一方向から流体(a)を送り込んで、その流体(a)を、集塵管(7)にその上端入口から送り込み、ベーン(9)によりその流体(a)に旋回流を生じさせて固形物(b)を分離し、その分離物(b)を集塵管(7)の下端出口から集塵室(5)に排出するとともに、分離流体(c)を出口管(8)の下端入口から導入して上端出口から清浄空気室(6)に排出する」ことに、
「マルチサイクロン」は、「サイクロン式分離機」に、
それぞれ相当する。

したがって、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「ケーシング内を上下に隔てた2枚の仕切板で区画し、その両仕切板で挟まれた区画室を固形物を含有する流体の導入室、下側仕切板より下側の区画室を集塵室、上側の仕切板より上側の区画室を清浄空気室とし、前記集塵室に上下方向の集塵管をその上端を前記下側の仕切板に固定して設けるとともに、その集塵管の上端を前記下側の仕切板上面に開口し、前記導入室に設けた上下方向の出口管は、その下端が前記集塵管にその上端入口からベーンを介在して挿入されているとともに、上端が前記上側の仕切板を気密に貫通して前記清浄空気室に開口し、前記導入室内にその導入室側面一方向から前記流体を送り込んで、その流体を、前記集塵管にその上端入口から送り込み、前記ベーンによりその流体に旋回流を生じさせて前記固形物を分離し、その分離物を集塵管の下端出口から前記集塵室に排出するとともに、分離流体を前記出口管の下端入口から導入して上端出口から前記清浄空気室に排出するサイクロン式分離機。」

[相違点1]
本件訂正発明1では、出口管(8)を集塵管(7)に対しその軸心周りに回転可能とするとともに、その出口管(8)が回転してもベーン(9)の位置決めが必要ないようにそのベーン(9)を集塵管(7)に取付けたのに対して、刊行物1に記載された発明では、浄化ガス導出管23のフランジ部23aを仕切板16に取付ボルト28により固定し、浄化ガス導出管23を螺旋羽根22と一体とした点。

イ 判断
上記相違点1について検討する。
刊行物1に記載された発明は、部分的な摩耗が激しく破損する恐れのあるサイクロン外筒及び旋回流発生体といったマルチサイクロン構成要素を容易に交換し得るように成し、集塵器としての寿命を大きく伸ばすことを目的とする発明である。
一方、刊行物2に「内筒fに関しては、被処理粉塵ガスhの流速の最も速い導入管eの近くに位置し、またそこは被処理粉塵ガスhに粗粒が最も多く含まれる位置であると共に、流体に対する断面積の変化が最も大きく従って粗粒の偏りも大きい位置でもあるなど、最も局部的な摩耗の進行しやすい位置に置かれている。」(前記第7 2 イ)と記載されているように、サイクロン式集塵機において、サイクロン式集塵機構成要素としての内筒fは局部的な摩耗の進行しやすい箇所に置かれていることが知られている。
そうすると、刊行物1に記載された発明において、マルチサイクロンの構成要素である浄化ガス導出管23にも局部的な摩耗が進行し、その交換の必要性が生じるものであるとともに、取付ボルト28を外すことにより浄化ガス導出管23を交換するに際して、螺旋羽根22をサイクロン外筒24側に設けると、浄化ガス導出管23交換後の螺旋羽根22の位置決め作業工程を省略でき、作業効率が向上することは当業者にとって自明である。
また、刊行物2に記載された発明は、内筒に軸回りに所定の回転を与えて内筒の位置替えをすることにより、内筒の特定部位に穴があいて全損に至ることを防止でき、内筒のライフを大巾に延長することができ、また、内筒の分解と交換も容易になるという課題を解決するものである。
このように、刊行物1及び2に記載された発明は、部分的に摩耗し破損の恐れのある出口管を含んだサイクロン式分離機構成要素を容易に交換でき、寿命を延ばすという共通の課題を解決するものである。
さらに、サイクロン式分離機の技術分野において、サイクロン式分離機の構成要素を交換する際の作業性、清掃性等を考慮して集塵管と出口管の下端との間に介在するベーンを集塵管に取付けることは、刊行物3及び4や、甲第7号証の旋回羽根16に示されているように本願出願前に周知の技術事項である。この点については、被請求人は、意見書において、「本件特許発明1の出願前から、刊行物1、3、4等からサイクロン式分離機において、集塵管と出口管の下端との間にベーンを介在する(取り付ける)際、そのベーンを集塵管又は出口管に取り付けることは、周知事項であって、その集塵管又は出口管の何れに取り付けるかは、作業性等を考慮して、適宜に決定しているものです。」と、作業性等を考慮したベーンの集塵管への取付けが本願出願前に周知の技術事項であることを肯定する主張を行っている。
してみると、刊行物1に記載された発明に共通の課題を解決する刊行物2に記載された発明を適用して、浄化ガス導出管23をサイクロン外筒24に対しその軸心周りに回転可能とすると共に、上記周知の技術事項に倣ってベーンを集塵管に取付けることは当業者が必要に応じてなし得たものである。
そして、本件訂正発明1の奏する効果についてみても、刊行物1及び2に記載された発明及び周知の技術事項から当業者が予測できる効果の範囲内のものである。
よって、本件訂正発明1は、刊行物1及び2に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(2)本件訂正発明2
本件訂正発明2のうち、請求項2により特定される事項と刊行物1に記載された発明とを対比する。
刊行物1に記載された発明の「浄化ガス導出管23は」「上端のフランジ部23aが仕切板15に形成されている浄化ガス導出管取付口20の外周部上面にシール材27を介して固定され」ることと、本件訂正発明2の「上側の仕切板(3)に出口管(8)の受管(10)を固定し、その受管(10)に出口管(8)をパッキング(11)を介して回転可能に挿通して、その出口管(8)を集塵管(7)に対しその軸心周りに回転可能としたこと」とは、「上側の仕切板に出口管をパッキングを介して固定したこと」で共通する。
したがって、両者は、上記(1)で検討した[一致点]において一致すると共に、[相違点1]において相違することに加えて、次の点で相違点する。

[相違点2]
上側の仕切板への出口管の固定が、本件訂正発明2では、上側の仕切板(3)に出口管(8)の受管(10)を固定し、その受管(10)に出口管(8)をパッキング(11)を介して回転可能に挿通して、その出口管(8)を集塵管(7)に対しその軸心周りに回転可能としたのに対して、刊行物1に記載された発明では、浄化ガス導出管23は、上端のフランジ部23aが仕切板15に形成されている浄化ガス導出管取付口20の外周部上面にシール材27を介して固定されるが、回転可能でない点。

以下上記相違点2について検討する。
刊行物1ないし5には、出口管を回転可能に固定する受管を上側の仕切板に固定する構成について、記載も示唆もされていない。
そして、甲第5号証には、フランジ13とシーリングフランジ14との間にガスケツト15を介在させて、ボルト16およびナツト17を用いて締付けて固定することにより、管台12と出口チユーブ6をガス密、かつ取外し自在に固定することは記載されているが、出口チューブ6を管台12に回転可能に固定させることは記載も示唆もされていない。
また、甲第6号証には、挿入管の挿入によって、気密に挿入管外壁と受入管内壁を密着させることは記載されているが、コネクターに関する技術であて、サイクロン式分離機とは技術分野が異なるとともに、挿入管外壁を受入管内壁に対して、回転可能に固定すること、及び、受管を具備することは記載も示唆もされていない。
さらに、甲第9号証には、内筒7の上下摺動を自在にパッキン具14をはさみ込んでなるブツシユで上管板8に固定することは記載されているが、内筒7をブツシユ13に対して、回転可能に固定すること、及び、内筒7を回転可能に支持固定するための受管を具備することは記載も示唆もされていない。
そうすると、各刊行物及び甲各号証には、本件訂正発明2の「上側の仕切板に出口管の受管を固定し、その受管に出口管をパッキングを介して回転可能に挿通して、その出口管を集塵管に対しその軸心周りに回転可能とした」ことが、記載も示唆もされていない。
そして、本件訂正発明2は、当該発明特定事項を具備することにより、「出口管の寿命を延すことができ、そのため、出口管の交換時の溶接・切断などの煩わしい作業もなくなる等のメンテナンス効率が向上するとともに、ランニングコストの削減を図ることができる。」という作用効果を奏するものである(本件訂正明細書段落【0018】を参照。)。
よって、本件訂正発明2は、各刊行物及び甲各号証に記載された発明あるいは技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 無効理由2(記載要件)
本件訂正明細書には、ベーンに関して、「ベーン9を集塵管7に取付け、そのベーン9内に出口管8をその軸心周りに回転可能に嵌め」(段落【0013】)たこと、「ベーン9は集塵管7に取付けているため、出口管8の交換に関係なく、その位置は当初の最適な位置にあり、出口管8の交換と同時に円滑な集塵を行うことができる。」(段落【0015】)こと、及び、その【図1】には、仕切板2面と、ベーン9の上面とを同一面としたことが図示されている。
このように、本件訂正明細書には、ベーンを集塵管のどの位置にどのように取付けるかについて記載ないし、示唆されているといえる。
また、本件訂正明細書において、「受管」は、出口管をその軸心周りに回転可能にするために必要な構成であり、「受管」を設けることにより段落【00018】に記載された作用効果を奏するものである。
したがって、本願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしている。

第9 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、その特許は無効とされるべきものである。
そして、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件訂正発明2の特許を無効とすることはできない。
また、他に、本件訂正発明2を無効とすべき理由を発見しない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第64条の規定により、請求人が2分の1、被請求人が2分の1を負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
サイクロン式分離機
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング(1)内を上下に隔てた2枚の仕切板(2、3)で区画し、その両仕切板(2、3)で挟まれた区画室を固形物(b)を含有する流体(a)の導入室(4)、下側仕切板(2)より下側の区画室を集塵室(5)、上側の仕切板(3)より上側の区画室を清浄空気室(6)とし、前記集塵室(5)に上下方向の集塵管(7)をその上端を前記下側の仕切板(2)に固定して設けるとともに、その集塵管(7)の上端を前記下側の仕切板(2)上面に開口し、前記導入室(4)に設けた上下方向の出口管(8)は、その下端が前記集塵管(7)にその上端入口からベーン(9)を介在して挿入されているとともに、上端が前記上側の仕切板(3)を気密に貫通して前記清浄空気室(6)に開口し、前記導入室(4)内にその導入室(4)側面一方向から前記流体(a)を送り込んで、その流体(a)を、前記集塵管(7)にその上端入口から送り込み、前記ベーン(9)によりその流体(a)に旋回流を生じさせて前記固形物(b)を分離し、その分離物(b)を集塵管(7)の下端出口から前記集塵室(5)に排出するとともに、分離流体(c)を前記出口管(8)の下端入口から導入して上端出口から前記清浄空気室(6)に排出するサイクロン式分離機において、
上記出口管(8)を上記集塵管(7)に対しその軸心周りに回転可能とするとともに、その出口管(8)が回転しても上記ベーン(9)の位置決めが必要ないようにそのベーン(9)を前記集塵管(7)に取付けたことを特徴とするサイクロン式分離機。
【請求項2】
上記上側の仕切板(3)に上記出口管(8)の受管(10)を固定し、その受管(10)に前記出口管(8)をパッキング(11)を介して回転可能に挿通して、その出口管(8)を上記集塵管(7)に対しその軸心周りに回転可能としたことを特徴とする請求項1に記載のサイクロン式集塵機。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば、工場で発生する含塵ガス(粉塵ガス)を清浄空気と粉塵に分離するサイクロン式分離機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種のサイクロン式分離機にマルチサイクロンがあり、そのマルチサイクロンは、図3乃至図5に示すように、ケーシング1内を上下に隔てた2枚の仕切板2、3で区画し、その両仕切板2、3で挟まれた区画室を含塵ガスの導入室4、下側仕切板2より下側の区画室を集塵室5、上側の仕切板3より上側の区画室を清浄空気室6としたものである。集塵室5に上下方向の集塵管7がその上端を下側の仕切板2に固定して設けられているとともに、その集塵管7の上端が下側仕切板2上面に開口し、導入室4には上下方向の出口管8が設けられ、その下端が集塵管7の上端入口からベーン9を介在して挿入され、その出口管8の上端は仕切板3を気密に貫通して清浄空気室6に開口している。
【0003】
このマルチサイクロンは、セメント工場、製鉄所等で発生する含塵ガス(粉塵ガス)aが、空気輸送などにより、矢印のごとく、ケーシング1側面の一方向から導入室4に送り込まれ、その含塵ガスaは、集塵管7にベーン9を介して入り込み、そのベーン9の通過により旋回流となって集塵管7内で塵bを分離し、その分離塵bは集塵管7の出口から集塵室5に排出されるとともに、塵bの分離されたガス(空気)cは出口管8にその下端入口から入り込んで上端出口から清浄空気室6に至り、必要な処理がされた後、大気に排出される。集塵室5の集塵は適宜に排出される(特許文献1、2参照)。
【0004】
【特許文献1】
実開平5-17326号公報
【特許文献2】
実開平5-22046号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このマルチサイクロンなどのサイクロン式分離機において、図5に示すように、出口管8は導入室4内に露出して含塵ガスaに晒されるため、摩耗が激しい。特に、導入室4の入口に臨む面はその含塵ガスaをまともに受けるため、その摩耗は激しく、その摩耗はその面に局部的に生じて穴が早期に開く。
【0006】
従来では、出口管8は仕切板3に溶接などにより固定されているため、出口管8は摩耗により穴が開くまで使用し、穴が一個所でも開けば、その出口管8を溶接部の除去及び切断などにより取外して新しい出口管8に交換している。この一部の欠陥で出口管8を交換するのは無駄であり、コスト的に問題である。また、このとき、ベーン9は出口管8に取付けているため、出口管8の交換毎に、そのベーン9を最適な位置にセットしなければならず、その作業は煩雑となっている。因みに、ベーン9が所要の位置(最適な位置)にないと、有効に旋回流が生じず、円滑な集塵(分離)ができない。
【0007】
この発明は、上記実情に鑑み、出口管の交換サイクルを長くすることを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、この発明は、出口管をその軸心周りに回転可能とし、穴が開く寸前に出口管を回して、摩耗の少ない面を摩耗し易い面に臨ませるようにしたのである。
【0009】
このようにすれば、最大限、出口管の全周面に穴が開く寸前まで一つの出口管を使用でき、交換回数が少なくなる(交換サイクルが長くなる)などコスト面において有利となる。
【0010】
【発明の実施の形態】
この発明の実施の形態としては、上下方向の集塵管にその上端から出口管をベーンを介在して挿入し、前記集塵管にその上端入口から流体を送り込み、前記ベーンによりその流体に旋回流を生じさせて固形物を分離し、その分離物を集塵管の出口から排出するとともに、分離流体を出口管の下端入口から導入して上端出口から排出するサイクロン式分離機において、前記出口管を集塵管に対しその軸心周りに回転可能とした構成を採用し得る。
【0011】
このサイクロン式分離機は、通常、ケーシング内に設けられ、その場合、上記ケーシング内は出口管の出口と集塵管の入口と集塵管の出口がそれぞれ仕切板により区画されており、前記出口管の出口と集塵管の入口の仕切板に出口管の受管を固定し、その受管に出口管を回転可能に挿通するとともに、出口管を前記集塵管の入口と集塵管の出口の仕切板に挿通して、出口管を集塵管に対しその軸心周りに回転可能とした構成を採用することができる。
【0012】
これらの構成において、上記ベーンは集塵管に取付ければ、出口管の取付位置には関係なく、ベーンは常に位置決めされているため、出口管の交換毎(出口管に穴が開く寸前に出口管を回して、摩耗の少ない面を摩耗し易い面に臨ませるようにする毎も含む)にベーンの位置決めをする必要はなくなる。
【0013】
【実施例】
一実施例を図1及び図2に示し、この実施例は、図3、4に示したマルチサイクロンに係わり、同一の符号は同一物を示し、その特徴は、ベーン9を集塵管7に取付け、そのベーン9内に出口管8をその軸心周りに回転可能に嵌め、その出口管8の上端部を仕切板3に貫通し、その上端部を仕切板3に固定の受管10にパッキング11を介して回転可能に支持した点である。受管10は止め板12を介して溶接などにより仕切板3に固定されており、その上端全周にはフランジ10aを有する。このフランジ10aにパッキング押え13をねじ止めしてパッキング11を押えて受管10と出口管8の間の気密性を保つ。
【0014】
出口管8の上端部にはピン14がその両端を突出させて取付けられており、そのピン14の両端がフランジ10a(パッキング押え13)に当接することにより受管10に出口管8がその軸心周りに回転可能に支持される。このため、含塵ガスaに晒されることにより摩耗した面に穴が開く寸前に、ピン14で持って出口管8を適宜に回して、その摩耗した面を含塵ガスaに晒される個所から退避させ、新たな面をその含塵ガスaに晒される個所に臨ませることにより、出口管8のほぼ全周囲が摩耗により穴が開く直前まで使用することができ、出口管8の交換サイクルはすこぶる長くなる。出口管8の回転角度は摩耗面積に応じて適宜に設定すればよいが、例えば、120度とすれば、三方向の面(摩耗面)を使用でき、一面のみの従来に比べて3倍の寿命となる。なお、出口管8、集塵管7にはクロム鋳鉄などの耐摩耗性の材質を使用すると良い。摩耗度(交換時期)は、一定期間毎、目視などによって適宜に選定する。図中、15はバックアップリングである。
【0015】
出口管8がその全周囲が摩耗して交換が必要となれば、受管10からその摩耗した出口管8を外して新しい出口管8に交換する。このとき、ベーン9は集塵管7に取付けているため、出口管8の交換に関係なく、その位置は当初の最適な位置にあり、出口管8の交換と同時に円滑な集塵を行うことができる。
【0016】
なお、集塵管7も図示のごとく、上下に分割すれば、摩耗した管7a又は7bのみを取り替えるだけで良い。
【0017】
この発明のサイクロン式分離機は、マルチサイクロンに限らず、すべてのこの種の出口管8と集塵管7とからなる構成のものに採用することができ、その分離流体も、セメント工場、製鉄所などにおける含塵ガス(粉塵ガス)に限らず、種々の分離、例えば、砂、砂利などの分離に採用できる。砂などは水輸送となる。
【0018】
【発明の効果】
この発明は、以上のように、出口管をその軸心周りに回転可能としたので、出口管の寿命を延すことができ、そのため、出口管の交換時の溶接・切断などの煩わしい作業もなくなる等のメンテナンス効率が向上するとともに、ランニングコストの削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施例の要部断面図
【図2】図1の要部拡大図
【図3】マルチサイクロンの一部切欠き斜視図
【図4】図3の要部断面図
【図5】従来例の要部断面図
【符号の説明】
a 含塵ガス
b 分離塵
c 清浄空気
1 ケーシング
2 下側仕切板
3 上側仕切板
4 含塵ガス導入室
5 集塵室
6 清浄空気室
7 集塵管
8 出口管
9 ベーン
10 受管
10a 受管フランジ
11 パッキング
12 止め板
13 パッキング押え
14 出口管用ピン
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2012-05-08 
結審通知日 2012-05-10 
審決日 2012-05-23 
出願番号 特願2003-120230(P2003-120230)
審決分類 P 1 113・ 536- ZD (B04C)
P 1 113・ 121- ZD (B04C)
最終処分 一部成立  
前審関与審査官 中澤 登  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 長崎 洋一
松下 聡
登録日 2008-05-02 
登録番号 特許第4119298号(P4119298)
発明の名称 サイクロン式分離機  
代理人 東尾 正博  
代理人 内藤 俊太  
代理人 田川 孝由  
代理人 鎌田 文二  
代理人 鎌田 文二  
代理人 田中 久喬  
代理人 田川 孝由  
代理人 東尾 正博  

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