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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A63F
管理番号 1261739
審判番号 無効2010-800003  
総通号数 154 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-10-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-12-28 
確定日 2012-07-17 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3962041号「スロットマシン」の特許無効審判事件についてされた平成22年12月28日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成23年(行ケ)第10030号平成23年12月26日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1.手続の経緯
本件特許の経緯概要は以下のとおりである。

平成16年 7月23日 本件特許出願(特願2004-216217号)
平成19年 4月25日 特許査定
平成19年 5月25日 設定登録(特許第3962041号)
平成21年12月28日 本件無効審判の請求
平成22年 4月20日 答弁書・訂正請求(被請求人)
平成22年 5月26日 弁駁書(請求人)
平成22年 7月 5日 答弁書(被請求人)
平成22年 9月13日 口頭審理陳述要領書(請求人,被請求人)
平成22年 9月27日 口頭審理
平成22年10月27日 上申書(請求人,被請求人)
平成22年12月 9日 審理終結通知
平成22年12月28日 審決(訂正認容。審判請求成り立たない)
平成23年12月26日 判決言渡(審決取消)
平成24年 2月 3日 訂正請求(被請求人)
平成24年 3月14日 弁駁書(請求人)
平成24年 4月27日 補正許否の決定
平成24年 5月11日 審理終結通知


第2.本件審判事件にかかる両当事者の主張
請求人と被請求人の主張は以下のとおりである。

1.請求人の主張
請求人は,平成21年12月28日付けの審判請求書において,「特許第3962041号発明の特許請求の範囲の請求項1から3に記載された発明についての特許を無効にする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め(請求の趣旨),以下の理由により,本件特許発明(訂正前の請求項1?3)は特許を受けることができないものであるから,特許法第123条第1項の規定により無効にされるべきである旨主張し,証拠方法として甲第1?3号証を提出した。
【無効理由1】
本件特許発明(訂正前の請求項1?3)は,甲第1?3号証に記載された発明に基づいて,当業者が容易に成し得たものであり,特許法第29条第2項により特許を受けることができず,無効とすべきである。
【無効理由2】
本件特許発明(訂正前の請求項1?3)は,特許法第36条第4項第1号又は同条第6項第1号若しくは同項第2号に規定する要件を満たしていないから,無効とすべきである。
なお,無効理由2は,後述するとおり,すべて撤回された。
(証拠方法)
甲第1号証:特許第3474804号公報
甲第2号証:特開2001-104544号公報
甲第3号証:特開2004-136101号公報

そして,被請求人による平成22年4月20日付け訂正請求を受けて,同年5月26日付け弁駁書(周知例として甲第4?6号証を添付),同年9月13日付け口頭審理陳述要領書(周知例として甲第7?11号証を添付),同年10月27日付け上申書(周知例として甲第12?14号証を添付)において,該訂正請求は訂正要件違反であって認められないものである旨主張し,訂正が認められるとしても,訂正後の請求項1?3に係る発明について,審判請求書で申し立てた無効理由1は解消していない旨主張している。
上記甲第12号証については,周知例であるか否かについて上申書には明記されていないが,二つの共通フラグについての周知例である甲第13,14号証と同時に提出されたものであり,その内容からみて,共通フラグが周知であることを示すための周知例であると認められる。なお,仮に,甲第12号証が公知文献として提出されたものであれば,これは審判請求理由の要旨を変更する実質的な補正であり,当該時期での補正は審理を不当に遅延させるおそれがあるから,当該補正は許可することができず,甲第12号証は採用できないものである。
また,無効理由2については,平成22年9月13日付け口頭審理陳述要領書(3頁11行)において「無効理由2は,撤回する。」として,撤回された。なお,平成22年9月27日の口頭審理においても,「無効理由2は,すべて撤回する。」と確認された。

甲第4号証:特開2003-256439号公報
甲第5号証:特開2002-66069号公報
甲第6号証:警察六法平成16年版(平成16年8月5日発行,編集 警察 制度研究会),1056乃至1069頁
甲第7号証:特開平5-57050号公報
甲第8号証:特開2000-176120号公報
甲第9号証:警察六法平成16年版(平成16年8月5日発行,編集 警察 制度研究会),926乃至931頁,937頁,961乃至
968頁
甲第10号証:警察六法平成16年版(平成16年8月5日発行,編集 警 察制度研究会),989頁,998乃至1003頁,
1018乃至1024頁
甲第11号証:警察六法平成16年版(平成16年8月5日発行,編集 警 察制度研究会),1067乃至1069頁,1113乃至
1119頁
甲第12号証:特開2002-263263号公報
甲第13号証:特開2000-51433号公報
甲第14号証:特開2002-11151号公報

また,被請求人による平成24年2月3日付けでなされた訂正請求(これにより平成22年4月20日付け訂正請求は取り下げられたものとみなされる。)に対して,請求人は,平成24年3月14日付け弁駁書において,該訂正請求は訂正要件違反であって認められないものである旨主張し,訂正が認められるとしても,訂正後の請求項1?3に係る発明について,証拠方法として,新たに甲第15?18号証を追加して審判請求書で申し立てた無効理由1は解消していない旨主張した。
しかし,該弁駁書で新たに追加された甲第15?17号証により立証しようとする事実に基づく本件審判請求の理由の補正に関しては,平成24年4月27日付けの審判長の補正許否の決定により,許可されないものとなった。

2.被請求人の主張
被請求人は,平成22年4月20日付けで答弁書を提出し,「請求人の主張は理由がないものとする。審判費用は請求人の負担とする。との審決を求め」(答弁の趣旨),訂正発明1?3について,無効理由1,2は理由がない旨,主張した。
さらに,平成22年7月5日付け答弁書,平成22年9月13日付け口頭審理陳述要領書,同年10月27日付け上申書において,平成22年4月20日付けの訂正請求は認められるべきとした上で,請求人の主張している無効理由1,2は理由がない旨,主張した。
また,平成24年2月3日付けの訂正請求書では,訂正請求による訂正は,訂正要件を満たしているので,認められるべき旨を主張している。


第3.訂正請求
1.訂正請求の内容
平成24年2月3日付けの訂正請求(以下,「本件訂正」という。)は,本件設定登録時の特許第3962041号の特許請求の範囲,明細書又は図面(以下,「本件特許明細書等」という。)を,本件訂正請求書に添付した特許請求の範囲,明細書のとおり訂正しようとするものであって,次の事項を訂正内容とするものである。
なお,以下において,訂正前の請求項等とは本件設定登録時の請求項等を,訂正後の請求項等とは平成24年2月3日付け訂正請求による訂正後の請求項等を,それぞれ指す。

・訂正事項1
請求項1及び明細書段落【0009】において,判定値データ記憶手段に関する「前記判定領域に入力された判定用数値データに対して前記事前決定手段が導出を許容する旨を決定することとなる判定値の数を示す判定値データを記憶する手段であって」との記載を訂正前の「数値データ入力手段と,」の後に加入する。
・訂正事項2
請求項1及び明細書段落【0009】において,「いずれか1種類以上の入賞表示結果」とあるのを「前記事前決定手段により導出の許容が決定される確率の調整を行う際に該調整を前記許容段階の種類毎に行うことが不要とされたいずれか1種類以上の入賞表示結果」と訂正する。
・訂正事項3
請求項1及び明細書段落【0009】において,「前記判定領域に入力された判定用数値データに対して前記事前決定手段が導出を許容する旨を決定することとなる判定値の数を示す判定値データを,前記複数種類の許容段階に共通して記憶する」とあるのを「該調整の結果により確定された判定値の数を示す判定値データを,前記複数種類の許容段階に共通して記憶する」と訂正し,「前記判定領域に入力された判定用数値データに対して前記事前決定手段が導出を許容する旨を決定することとなる判定値の数を示す判定値データを,前記許容段階の種類に応じて個別に記憶する」とあるのを「前記調整の結果により確定された判定値の数を示す判定値データを,前記許容段階の種類に応じて個別に記憶し」と訂正する。
・訂正事項4
請求項1及び明細書段落【0009】において,判定値データ記憶手段について「さらに,前記複数種類の許容段階に共通して判定値データが記憶されているか該許容段階の種類に応じて個別に判定値データが記憶されているかを区別するための共通フラグを,前記許容段階の種類に応じて区分することなく,入賞表示結果の種類毎に記憶する」との記載を加入する。
・訂正事項5
請求項1及び明細書段落【0009】において,「前記入賞表示結果の種類に応じて記憶する」とあるのを「前記入賞表示結果の種類を単位として記憶する」と訂正する。
・訂正事項6
請求項1及び明細書段落【0009】において,「前記判定値データ記憶手段に記憶された判定値データに応じて」とあるのを「前記判定値データ記憶手段に記憶された判定値データを入賞表示結果の種類毎に前記共通フラグに従って読み出し,該読み出した判定値データに応じて」と訂正する。
・訂正事項7
請求項2及び明細書段落【0016】において,「判定値データを,入賞表示結果の種類毎に順次前記判定領域に入力された判定用数値データに加算する」とあるのを「判定値データを,入賞表示結果の種類毎に前記共通フラグに従って順次読み出し,該読み出した判定値データを順次前記判定領域に入力された判定用数値データに加算する」と訂正する。
・訂正事項8
請求項3及び明細書等段落【0021】において,判定値データ記憶手段について「前記調整を行う際に該調整を前記許容段階の種類毎に行うことも前記賭数段階の種類毎に行うことも不要とされたいずれか1種類以上の入賞表示結果について,前記判定値データを,前記複数種類の許容段階及び前記複数種類の賭数段階に共通して記憶するとともに,」との記載を加入する。
・訂正事項9
請求項3及び明細書段落【0021】において,「前記許容段階に共通して判定値データが記憶されていない2種類以上の入賞表示結果」とあるのを「前記許容段階及び前記賭数段階に共通して判定値データが記憶されていない2種類以上の入賞表示結果」と訂正する。
・訂正事項10
請求項3及び明細書段落【0021】において,「前記判定領域に入力された判定用数値データに対して前記事前決定手段が導出を許容する旨を決定することとなる判定値の数を示す判定値データを,前記許容段階及び前記賭数段階の種類に応じて個別に記憶し」とあるのを「前記調整の結果により確定された判定値の数を示す判定値データを,前記許容段階及び前記賭数段階の種類に応じて個別に記憶し」と訂正する。
・訂正事項11
請求項3及び明細書段落【0021】において,判定値データ記憶手段について「さらに,前記賭数段階の種類に応じて個別に判定値データが記憶されていることを区別するための共通フラグを,前記賭数段階の種類に応じて区分することなく,入賞表示結果の種類毎に記憶し,」との記載を加入する。
・訂正事項12
請求項3及び明細書段落【0021】において,「前記判定値データ記憶手段に記憶された判定値データに応じて」とあるのを「前記判定値データ記憶手段に記憶された判定値データを入賞表示結果の種類毎に前記共通フラグに従って読み出し,該読み出した判定値データに応じて」と訂正する。
・訂正事項13
請求項3及び明細書段落【0021】において,「前記入賞表示結果の種類に応じて記憶する」とあるのを「前記入賞表示結果の種類を単位として記憶する」と訂正する。

2.訂正の適否
(1)請求人の訂正に関する主張及び判断
請求人は,平成24年3月14日付け弁駁書(以下,日付を表示せず単に「弁駁書」と記載する場合は,この弁駁書を指す。)において,本件訂正は訂正の要件を満たしていない旨主張しているので,当該主張について先ず検討する。

(1-1)訂正事項2について
請求人は,弁駁書において,訂正事項2に係る「いずれか1種類以上の入賞表示結果」を,「前記事前決定手段により導出の許容が決定される確率の調整を行う際に該調整を前記許容段階の種類毎に行うことが不要とされたいずれか1種類以上の入賞表示結果」と訂正することは,本件特許明細書に記載された事項の範囲内のものでない旨主張している。
この点について検討すると,段落【0137】には「遊技状態に応じて定められた各役の当選確率を定める判定値数は,遊技状態別テーブルから参照されるアドレスに格納されている。その格納先のアドレスは,設定値および/または賭け数に応じて異なっている場合もあるが,設定値および/または賭け数に関わらずに当選確率を同一とするものとした役については,格納先のアドレスが共通化しており,すなわち,設定値および/または賭け数に関わらずに判定値数が共通化して格納されるものとなる。このように判定値数を共通化して格納することで,そのために必要な記憶容量が少なくて済むようになる。」と記載され,
また,段落【0139】?【0141】には,
「【0139】 ところで,同じ遊技状態の遊技状態別テーブルから同一の役について設定値および/または賭け数に応じて参照される判定値数を格納したアドレスが異なっていても,異なるアドレスにおいて格納されている判定値数は同じ場合がある。つまり,同一の役について設定値および/または賭け数に応じて判定値数が別々に登録されていても,その判定値数は同じという場合がある。
【0140】 一般に開発段階においては,少なくとも一部の役について設定値および/または賭け数に応じて判定値数を調整しながら(すなわち,内部抽選の当選確率を調整しながら),シミュレーションを行っていくものとしている。当初の判定値数として,設定値および/または賭け数に応じて異なる判定値数を登録しておいたが,シミュレーションにより調整を行った結果として,設定値および/または賭け数が異なる場合の判定値数が同一になる場合もある。当初の判定値数として,設定値および/または賭け数に応じて同一の判定値数を登録しておいたが,シミュレーションの結果により当初から登録してあった判定値数がそのまま用いられる場合もある(シミュレーションの結果により当初とは異なる判定値数すなわち,設定値および/または賭け数に応じて異なる判定値数となる場合もある)。そして,それぞれの場合におけるシミュレーションで適切な結果の得られた判定値数を,量産用の機種に設定する判定値数として選ぶものとしている。
【0141】ここで,シミュレーションにより調整された判定値数が結果として設定値および/または賭け数に関わらずに同じになったとしても,その開発段階でのアドレス割り当てと同じアドレスの割り当てで判定値数をROM113に記憶して,そのまま量産用の機種とすることができる。このため,量産用の機種において判定値数の格納方法を開発用の機種から変更する必要がなく,最初の設計段階から量産用の機種に移行するまでの開発を容易に行うことができるようになる。」と記載されている。
ここで,段落【0137】の記載によれば,各役の判定値数の格納先のアドレスが,設定値および/または賭け数に応じて異なっている場合と,設定値および/または賭け数に関わらずに当選確率を同一とするものとした役については,格納先のアドレスが共通化しており,すなわち,設定値および/または賭け数に関わらずに判定値数が共通化して格納される場合との2つがあることが理解される。
次に,段落【0139】?【0141】の記載によれば,段落【0137】の判定値数の格納先のアドレスが,設定値および/または賭け数に応じて異なっている場合については,シミュレーションによる調整がなされ,調整の結果,さらに,それら異なるアドレスに格納される判定値数が同一になる場合と,格納される判定値数が依然として異なる場合の2つに分かれることが理解される。
これらのことからすると,段落【0137】における設定値および/または賭け数に関わらずに当選確率を同一とするものとした役については,格納先のアドレスが共通化しており,係る設定値および/または賭け数に関わらずに判定値数が共通化して格納されるものは,シミュレーションによる確率の調整を行う前から設定値に関わらずに共通化して格納されたものであることは自明であるから,これが,訂正事項2でいう「該調整を前記許容段階の種類毎に行うことが不要とされたいずれか1種類以上の入賞表示結果について」,該調整の結果により確定された判定値の数を示す判定値データを,前記複数種類の許容段階に共通して記憶するものであるといえる。
したがって,請求人の主張は採用できない。

(1-2)訂正事項4について
請求人は,弁駁書において,訂正事項4の「さらに,前記複数種類の許容段階に共通して判定値データが記憶されているか該許容段階の種類に応じて個別に判定値データが記憶されているかを区別するための共通フラグを,前記許容段階の種類に応じて区分することなく,入賞表示結果の種類毎に記憶する」の追加は,本件特許明細書等に記載された事項内のものではないと主張するので,以下に検討する。
まず,訂正前の段落【0009】の「いずれか1種類以上の入賞表示結果について,前記判定領域に入力された判定用数値データに対して前記事前決定手段が導出を許容する旨を決定することとなる判定値の数を示す判定値データ(判定値数)を,前記複数種類の許容段階に共通して(設定値についての共通フラグが設定)記憶するとともに,前記許容段階に共通して判定値データが記憶されていない2種類以上の入賞表示結果について,前記判定領域に入力された判定用数値データに対して前記事前決定手段が導出を許容する旨を決定することとなる判定値の数を示す判定値データを,前記許容段階の種類に応じて個別に(設定値についての共通フラグが未設定)記憶する判定値データ記憶手段(図3:遊技状態別テーブル,図4:判定値数の記憶領域)とを備え」との記載を参酌すると,
訂正事項4のうち「前記複数種類の許容段階に共通して判定値データが記憶されているか該許容段階の種類に応じて個別に判定値データが記憶されているかを区別するための共通フラグ」における「前記複数種類の許容段階に共通して判定値データが記憶されている」は,設定値(許容段階)についての共通フラグが設定されていることに対応し,また,「該許容段階の種類に応じて個別に判定値データが記憶されている」は,設定値についての共通フラグが未設定であることに対応すると解することができる。
この点は,段落【0013】に「なお,判定値データを許容段階の種類に応じて個別に記憶するとは,必ずしも許容段階の種類の数だけ個別に判定値データを記憶するものだけを意味するものではなく,全ての許容段階の種類に共通して判定値データを記憶するのでなければ,これに含まれるものとなる。例えば,許容段階の種類が6種類(第1段階?第6段階)ある場合,第1?第3段階までは共通,第4?第6段階までは共通といった場合も,判定値データを許容段階の種類に応じて個別に記憶するものとなる。」との記載からも理解される。
これを確認したうえで,段落【0091】をみると,「また,判定値数は,設定値及び賭け数に関わらずに共通となっているものと,設定値および/または賭け数に応じて異なっているものとがある。判定値数が設定値に関わらずに共通である場合には,設定値についての共通フラグが設定され(値が「1」とされ),判定値数が賭け数に関わらずに共通である場合には,賭け数(BET数)についての共通フラグが設定される(値が「1」とされる)。設定値及び賭け数の両方に関わらずに判定値数が共通であれば,両方のフラグが設定されるものとなる。」と記載されており,設定値についての共通フラグ「1」が設定される場合と,未設定の場合があるものと理解される。
したがって,訂正事項4のうち「前記複数種類の許容段階に共通して判定値データが記憶されているか該許容段階の種類に応じて個別に判定値データが記憶されているかを区別するための共通フラグ」が本件特許明細書等に記載されていることは明らかである。
次に,訂正事項4の残りの部分である「共通フラグを,前記許容段階の種類に応じて区分することなく,入賞表示結果の種類毎に記憶する」事項について検討すると,この事項における共通フラグは,1つの入賞表示結果の種類(役)毎に,記憶されている判定値データが前記複数種類の許容段階に共通しているか否かを示すものと解されるから,例えば図3の(c)RTのテーブル中の役「BB」において,「BET1」及び「BET2」では設定値1?6の全設定に対して共通の判定値が与えられ,「BET3」では設定値1?6の設定毎に異なる判定値(正確には,異なるアドレス)が与えられているものについて,役「BB」全体として,設定値についての共通フラグを「1」ではなく「0」としたことは,訂正事項4の上記規定事項と矛盾しない。
図3に関連して,請求人は,弁駁書で,図3は共通フラグとデータとの対応関係を単に示しているものにすぎず,共通フラグのデータが記憶領域において,どのように記憶されているのか不明であり,図3から「共通フラグを,前記許容段階の種類に応じて区分することなく,入賞表示結果の種類毎に記憶する」を導くことができない旨,主張する。
しかし,段落【0090】及び図3の記載によれば,「設定値についての共通フラグ」がROM113に記憶されていることは明らかである。
さらに,段落【0126】には「次に,現在の遊技状態に応じた遊技状態別テーブルに登録された役について順番に処理対象として,共通フラグの設定状態を参照する(ステップS303)。」と記載され,段落【0127】には「一方でも共通フラグが設定されていなければ,当該役についてステップS302で取得した現在の設定値及び賭け数に対応して遊技状態別テーブルに登録されているアドレスに格納されている判定値数を取得し,RAM112の作業領域に一時保存する(ステップS306)。」と記載されている。これらの記載から,共通フラグは役毎(入賞表示結果の種類毎)に参照されるもので,設定値やBET数毎に参照されるものではないから,共通フラグは役毎に一つのデータとして記憶されていることは明らかである。
以上により,「前記複数種類の許容段階に共通して判定値データが記憶されているか該許容段階の種類に応じて個別に判定値データが記憶されているかを区別するための共通フラグを,前記許容段階の種類に応じて区分することなく,入賞表示結果の種類毎に記憶する」ことは,本件特許明細書等に記載された範囲内のものである。

(1-3)訂正事項5,13について
請求人は,「前記入賞表示結果の種類に応じて記憶する」とあるのを「前記入賞表示結果の種類を単位として記憶する」と訂正する事項について,弁駁書で「本件明細書には「応じて」という記載はあるが,「単位として」という記載はないし,それを示唆するような記載はどこにもないから,本件特許明細書に記載された事項の範囲内のものではない」,「「応じて」は,その前後の関係を意味するのに対して,「単位として」という記載の意味するところが頗る不明りょうである」と主張する。
これについて検討する。
まず,広辞苑第六版によれば「単位」は,「一般に,組織・運動などを構成する基本となる要素。「組合?で加入する」」という意味であり,また,三省堂大辞林によれば,「一つの集団・組織などを構成する基本的なひとまとまり。物を量ったり,数値で表したりする時に基準としたひとまとまりの量。」という意味である。
一方,訂正事項5に関連する段落を簡略化して記載すると,「判定値記憶手段は,・・異数判定値データと,・・同数判定値データとを,前記入賞表示結果の種類を単位として記憶する」となる。
そうすると,本件補正発明1は,「許容段階の種類に応じて個別に記憶する」ものである判定値データについてどのようなまとまりにおいて異数か同数かを示すため,許容段階の種類(設定1?6)のまとまりからなる「入賞表示結果の種類」を用いたものであり,判定値記憶手段は入賞表示結果の種類をひとまとまりとする異数判定値データ及び同数判定値データとして記憶するものと解することができる。
上記のように「単位として」が意味することは明確であって,「単位として記憶する」の意味が不明であるとすることはできない。

次に,本件特許明細書等の図3及び図4において,遊技状態が「(c)RT」又は「(d)通常」で入賞表示結果の種類が「チェリー」の設定値1?6の判定値数は,設定値毎に記憶されているから,「前記許容段階の種類に応じて個別に記憶する判定値データ」ということができる。そして,設定値1?6全体を一つの単位としてみるということは一つの入賞表示結果の種類を単位としてみるということができるから,設定値1?6の各判定値数はすべて269で同一のものとなっていることは,「入賞表示結果の種類を単位として」「同一の判定値の数を示す同数判定値データ」が記憶されているということができる。
また,遊技状態が「(c)RT」又は「(d)通常」で入賞表示結果の種類が「BB」,賭数が「3BET」の設定値1?6の判定値数は,設定値毎に記憶されているから,「前記許容段階の種類に応じて個別に記憶する判定値データ」ということができる。そして,設定値1?6の各判定値数は「50,52,・・,60」であり,設定値1?6全体を一つの単位としてみた場合の判定値数は同一になっていないので,「入賞表示結果の種類を単位として」「異なる判定値の数を示す異数判定値データ」が記憶されているということができる。
したがって,「前記入賞表示結果の種類を単位として記憶する」事項は,図3及び図4に記載された事項から自明なことであり,本件特許明細書等に記載された事項内のものではないとする主張は採用できない。

(1-4)訂正事項8について
訂正事項8は,「判定値データ記憶手段」について「前記調整を行う際に該調整を前記許容段階の種類毎に行うことも前記賭数段階の種類毎に行うことも不要とされたいずれか1種類以上の入賞表示結果について,前記判定値データを,前記複数種類の許容段階及び前記複数種類の賭数段階に共通して記憶するとともに」の事項であるところ,
訂正事項8に対する請求人の主張は,訂正事項2についてした主張と同内容である。
しかし,上記(1-1)で示した判断と同様に,訂正事項8の事項は,本件特許明細書にはそれと同じ文言はないものの,段落【0137】及び【0139】?【0141】の記載から自明な事項と認められる。

(1-5)訂正事項11について
訂正事項11に対する請求人の主張は,訂正事項4についてした主張と同内容である。
しかし,上記(1-2)で示した判断と同様に,本件特許明細書等に記載された範囲内のものである。

(2)訂正事項の適否に対する判断
(2-1)訂正事項1について
訂正事項1のうち請求項1に関する訂正は,訂正前の請求項1の「いずれか1種類以上の入賞表示結果について,前記判定領域に入力された判定用数値データに対して前記事前決定手段が導出を許容する旨を決定することとなる判定値の数を示す判定値データを,前記複数種類の許容段階に共通して記憶するとともに,前記許容段階に共通して判定値データが記憶されていない2種類以上の入賞表示結果について,前記判定領域に入力された判定用数値データに対して前記事前決定手段が導出を許容する旨を決定することとなる判定値の数を示す判定値データを,前記許容段階の種類に応じて個別に記憶する判定値データ記憶手段とを備え,」の記載のうち,「前記判定領域に入力された判定用数値データに対して前記事前決定手段が導出を許容する旨を決定することとなる判定値の数を示す判定値データを,・・・記憶するとともに,・・・前記判定領域に入力された判定用数値データに対して前記事前決定手段が導出を許容する旨を決定することとなる判定値の数を示す判定値データを,・・・記憶する」を抜き出し,「前記判定領域に入力された判定用数値データに対して前記事前決定手段が導出を許容する旨を決定することとなる判定値の数を示す判定値データを記憶する手段であって,」として「判定値データ記憶手段」の他の構成の前提として加入したもので,発明の構成をより明確化しようとするもので,明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
そして,上述のとおり当該訂正後の構成は訂正前の請求項1に記載されたものであるから,訂正事項1のうち請求項1に関する訂正は,本件特許明細書等に記載された事項の範囲内で行うものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでない。
また,訂正事項1のうち段落【0009】に関する訂正は,請求項1における訂正に整合させるためであり,明りょうでない記載の釈明を目的とするものであって,本件特許明細書等に記載された事項の範囲内で行うものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでない。

(2-2)訂正事項2について
訂正事項2は,請求項1及び明細書段落【0009】において,「いずれか1種類以上の入賞表示結果」とあるのを「前記事前決定手段により導出の許容が決定される確率の調整を行う際に該調整を前記許容段階の種類毎に行うことが不要とされたいずれか1種類以上の入賞表示結果」と訂正するものであるが,訂正事項2のうち請求項1に関する訂正が構成を限定することは明らかであり,また訂正事項2のうち段落【0009】に関する訂正は請求項1における訂正に整合させるためであり明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
そして,明細書の段落【0137】には「設定値および/または賭け数に関わらずに当選確率を同一とするものとした役については,格納先のアドレスが共通化しており,すなわち,設定値および/または賭け数に関わらずに判定値数が共通化して格納されるものとなる。このように判定値数を共通化して格納することで,そのために必要な記憶容量が少なくて済むようになる。」,段落【0140】には「一般に開発段階においては,少なくとも一部の役について設定値および/または賭け数に応じて判定値数を調整しながら(すなわち,内部抽選の当選確率を調整しながら),シミュレーションを行っていくものとしている。当初の判定値数として,設定値および/または賭け数に応じて異なる判定値数を登録しておいたが,シミュレーションにより調整を行った結果として,設定値および/または賭け数が異なる場合の判定値数が同一になる場合もある。」,段落【0141】には「シミュレーションにより調整された判定値数が結果として設定値および/または賭け数に関わらずに同じになったとしても,その開発段階でのアドレス割り当てと同じアドレスの割り当てで判定値数をROM113に記憶して,そのまま量産用の機種とすることができる。」と記載されており,これらの記載によればシミュレーションによる確率の調整を行う前から設定値に関わらずに共通化して格納した判定値数があり,これが「確率の調整を行う際に該調整を前記許容段階の種類毎に行うことが不要とされた」を意味することは自明である。更に,訂正事項2に関する請求人の主張については,上記(1-1)で検討したとおりである。
そうすると,訂正事項2は,特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするもので,本件特許明細書等に記載された事項の範囲内で行うものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでない。

(2-3)訂正事項3について
訂正事項3は,請求項1及び明細書段落【0009】において,「前記判定領域に入力された判定用数値データに対して前記事前決定手段が導出を許容する旨を決定することとなる判定値の数を示す判定値データを,前記複数種類の許容段階に共通して記憶する」とあるのを「該調整の結果により確定された判定値の数を示す判定値データを,前記複数種類の許容段階に共通して記憶する」と訂正し,「前記判定領域に入力された判定用数値データに対して前記事前決定手段が導出を許容する旨を決定することとなる判定値の数を示す判定値データを,前記許容段階の種類に応じて個別に記憶する」とあるのを「前記調整の結果により確定された判定値の数を示す判定値データを,前記許容段階の種類に応じて個別に記憶し」と訂正するものである。
訂正事項3のうち請求項1に関する訂正は,訂正前の構成から「前記判定領域に入力された判定用数値データに対して前記事前決定手段が導出を許容する旨を決定することとなる」を削除するものであるが,当該削除された構成は,訂正事項1について検討したとおり,請求項1における他の箇所に記載されているから,訂正事項3は実質的に構成を削除するものではない。
また,訂正事項3のうち請求項1に関する訂正は,「判定値の数を示す判定値データ」について「該調整の結果により確定された」との限定を付すものであり,また訂正事項3のうち段落【0009】に関する訂正は請求項1における訂正に整合させるためであり明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
そして,明細書の段落【0141】には「シミュレーションにより調整された判定値数が結果として設定値および/または賭け数に関わらずに同じになったとしても,その開発段階でのアドレス割り当てと同じアドレスの割り当てで判定値数をROM113に記憶して,そのまま量産用の機種とすることができる。」と記載されており,この記載によれば判定値データ記憶手段が記憶する判定値データは「前記調整の結果により確定された判定値の数を示す判定値データ」である。
そうすると,訂正事項3は,特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするもので,本件特許明細書等に記載された事項の範囲内で行うものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでない。

(2-4)訂正事項4について
訂正事項4は,請求項1及び明細書段落【0009】において,判定値データ記憶手段について「さらに,前記複数種類の許容段階に共通して判定値データが記憶されているか該許容段階の種類に応じて個別に判定値データが記憶されているかを区別するための共通フラグを,前記許容段階の種類に応じて区分することなく,入賞表示結果の種類毎に記憶する」との記載を加入するものである。
訂正事項4のうち請求項1に関する訂正は,「判定値記憶手段」が「前記複数種類の許容段階に共通して判定値データが記憶されているか該許容段階の種類に応じて個別に判定値データが記憶されているかを区別するための共通フラグを,前記許容段階の種類に応じて区分することなく,入賞表示結果の種類毎に記憶する」ものであることを限定するものであり,また訂正事項4のうち段落【0009】に関する訂正は請求項1における訂正に整合させるためであり明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
そして,明細書の段落【0091】には「判定値数は,設定値及び賭け数に関わらずに共通となっているものと,設定値および/または賭け数に応じて異なっているものとがある。判定値数が設定値に関わらずに共通である場合には,設定値についての共通フラグが設定され(値が「1」とされ),判定値数が賭け数に関わらずに共通である場合には,賭け数(BET数)についての共通フラグが設定される(値が「1」とされる)。設定値及び賭け数の両方に関わらずに判定値数が共通であれば,両方のフラグが設定されるものとなる。」と記載されており,図3には設定値についての共通フラグは設定値に応じて区分することなく役の種類毎に設けられていることが図示されており,当該記載によれば「前記複数種類の許容段階に共通して判定値データが記憶されているか該許容段階の種類に応じて個別に判定値データが記憶されているかを区別するための共通フラグを,前記許容段階の種類に応じて区分することなく,入賞表示結果の種類毎に記憶する」ことは自明な事項である。更に,訂正事項4に関する請求人の主張については,上記(1-2)で検討したとおりである。
そうすると,訂正事項4は,特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするもので,本件特許明細書等に記載された事項の範囲内で行うものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもない。

(2-5)訂正事項5,13について
訂正事項5,13は,請求項1,3及び明細書段落【0009】,【0021】において,「前記入賞表示結果の種類に応じて記憶する」とあるのを「前記入賞表示結果の種類を単位として記憶する」と訂正するものである。
そして,訂正事項5,13のうち請求項1,3に関する訂正は,訂正前の「応じて」を「単位として」と訂正することにより,個別に記憶する判定値データが「異なる判定値の数を示す異数判定値データ」であるか「同一の判定値の数を示す同数判定値データ」であるかが「入賞表示結果の種類」を「単位として」いることを明確化するもので,明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。また,訂正事項5,13のうち段落【0009】,【0021】に関する訂正は請求項1,3における訂正に整合させるためであり明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。更に,訂正事項5,13に関する請求人の主張については,上記(1-3)で検討したとおりである。
そうすると,訂正事項5,13は,明りょうでない記載の釈明を目的とし,本件特許明細書等に記載された事項の範囲内で行うものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでない。

(2-6)訂正事項6,7,12について
訂正事項6,12は,請求項1及び明細書段落【0009】,請求項3及び明細書段落【0021】において,「前記判定値データ記憶手段に記憶された判定値データに応じて」とあるのを「前記判定値データ記憶手段に記憶された判定値データを入賞表示結果の種類毎に前記共通フラグに従って読み出し,該読み出した判定値データに応じて」と訂正するものであり,訂正事項7は,請求項2及び明細書段落【0016】において,「判定値データを,入賞表示結果の種類毎に順次前記判定領域に入力された判定用数値データに加算する」とあるのを「判定値データを,入賞表示結果の種類毎に前記共通フラグに従って順次読み出し,該読み出した判定値データを順次前記判定領域に入力された判定用数値データに加算する」と訂正するものである。
そして,訂正事項6,7,12のうち請求項1?3に関する訂正は,判定手段が判定する基となる判定値データが「入賞表示結果の種類毎に前記区別データに従って読み出し」たものであることを限定するものであり,また訂正事項6,7,12のうち段落【0009】,【0016】,【0021】に関する訂正は請求項1における訂正に整合させるためであり明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
明細書の段落【0126】には「次に,現在の遊技状態に応じた遊技状態別テーブルに登録された役について順番に処理対象として,共通フラグの設定状況を参照する(ステップS303)。その結果,設定値とBET数のいずれについても共通フラグが設定されているかどうかを判定する(ステップS304)。いずれについても共通フラグが設定されていれば,遊技状態別テーブルの当該役について登録されているアドレスに格納されている判定値数を取得し,RAM112の作業領域に一時保存する(ステップS305)。そして,ステップS307の処理に進む。」,段落【0127】には「一方でも共通フラグが設定されていなければ,当該役についてステップS302で取得した現在の設定値及び賭け数に対応して遊技状態別テーブルに登録されているアドレスに格納されている判定値数を取得し,RAM112の作業領域に一時保存する(ステップS306)。そして,ステップS307の処理に進む。」と記載されており,共通フラグに対応する共通フラグに従って判定値データが読み出される旨記載されている。
そうすると,訂正事項6,7,12は,特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするもので,本件特許明細書等に記載された事項の範囲内で行うものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでない。

(2-7)訂正事項8について
訂正事項8は,請求項3及び明細書段落【0021】において,判定値データ記憶手段について「前記調整を行う際に該調整を前記許容段階の種類毎に行うことも前記賭数段階の種類毎に行うことも不要とされたいずれか1種類以上の入賞表示結果について,前記判定値データを,前記複数種類の許容段階及び前記複数種類の賭数段階に共通して記憶するとともに,」との記載を加入するものである。
訂正事項8のうち請求項3に関する訂正は判定値データ記憶手段が当該記載の構成を有することを限定するものであり,訂正事項8のうち段落【0021】に関する訂正は請求項3における訂正に整合させるためであり明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
そして,明細書の段落【0137】には「設定値および/または賭け数に関わらずに当選確率を同一とするものとした役については,格納先のアドレスが共通化しており,すなわち,設定値および/または賭け数に関わらずに判定値数が共通化して格納されるものとなる。このように判定値数を共通化して格納することで,そのために必要な記憶容量が少なくて済むようになる。」,段落【0140】には「一般に開発段階においては,少なくとも一部の役について設定値および/または賭け数に応じて判定値数を調整しながら(すなわち,内部抽選の当選確率を調整しながら),シミュレーションを行っていくものとしている。当初の判定値数として,設定値および/または賭け数に応じて異なる判定値数を登録しておいたが,シミュレーションにより調整を行った結果として,設定値および/または賭け数が異なる場合の判定値数が同一になる場合もある。」,段落【0141】には「シミュレーションにより調整された判定値数が結果として設定値および/または賭け数に関わらずに同じになったとしても,その開発段階でのアドレス割り当てと同じアドレスの割り当てで判定値数をROM113に記憶して,そのまま量産用の機種とすることができる。」と記載されており,これらの記載によればシミュレーションによる確率の調整を行う前から設定値および/または賭け数に関わらずに共通化して格納した判定位置数があることは自明で,これが「前記確率の調整を行う際に該調整を前記許容段階の種類毎に行うことも前記賭数段階の種類毎に行うことも不要とされたいずれか1種類以上の入賞表示結果について,前記判定値データを,前記複数種類の許容段階及び前記複数種類の賭数段階に共通して記憶する」を意味することは自明である。更に,訂正事項8に関する請求人の主張については,上記(1-4)で検討したとおりである。
そうすると,訂正事項8は,特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするもので,本件特許明細書等に記載された事項の範囲内で行うものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでない。

(2-8)訂正事項9について
訂正事項9は,請求項3及び明細書段落【0021】において,「前記許容段階に共通して判定値データが記憶されていない2種類以上の入賞表示結果」とあるのを「前記許容段階及び前記賭数段階に共通して判定値データが記憶されていない2種類以上の入賞表示結果」と訂正するものである。
訂正前の請求項3及び明細書段落【0021】には,「判定値データを,前記許容段階及び前記賭数段階の種類に応じて個別に記憶し,」と記載されており,当該記載は訂正前の「前記許容段階に共通して判定値データが記憶されていない2種類以上の入賞表示結果について」と整合していない。したがって,「前記許容段階及び前記賭数段階に共通して」と記載すべきところ,「前記許容段階に共通して」と誤記したものであることは明らかであって,訂正事項9は誤記の訂正を目的とするものである。
そして,願書に最初に添付された明細書の段落【0137】には「設定値および/または賭け数に関わらずに当選確率を同一とするものとした役については,格納先のアドレスが共通化しており,すなわち,設定値および/または賭け数に関わらずに判定値数が共通化して格納されるものとなる。このように判定値数を共通化して格納することで,そのために必要な記憶容量が少なくて済むようになる。」,段落【0140】には「一般に開発段階においては,少なくとも一部の役について設定値および/または賭け数に応じて判定値数を調整しながら(すなわち,内部抽選の当選確率を調整しながら),シミュレーションを行っていくものとしている。当初の判定値数として,設定値および/または賭け数に応じて異なる判定値数を登録しておいたが,シミュレーションにより調整を行った結果として,設定値および/または賭け数が異なる場合の判定値数が同一になる場合もある。」と記載されており,また,図3には設定値および賭け数に共通して判定値データが記憶するものとして,RB状態におけるJAC役,小役ゲーム状態におけるJACIN役,小役ゲーム状態におけるチェリー役,RT状態におけるリプレイ役,通常状態におけるリプレイ役,通常状態におけるRT役が示されており,これ以外の役は設定値および賭け数に共通して判定値データが記憶されるものでないことが示されている。これらの記載によれば,願書に最初に添付された特許請求の範囲,明細書には「前記許容段階及び前記賭数段階に共通して判定値データが記憶されていない2種類以上の入賞表示結果」が実質的に記載されている。
そうすると,訂正事項9は,誤記の訂正を目的とするもので,願書に最初に添付された特許請求の範囲,明細書又は図面に記載された事項の範囲内で行うものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでない。

(2-9)訂正事項10について
訂正事項10は,請求項3及び明細書段落【0021】において,「前記判定領域に入力された判定用数値データに対して前記事前決定手段が導出を許容する旨を決定することとなる判定値の数を示す判定値データを,前記許容段階及び前記賭数段階の種類に応じて個別に記憶し」を「前記調整の結果により確定された判定値の数を示す判定値データを,前記許容段階及び前記賭数段階の種類に応じて個別に記憶し」と訂正するものである。
訂正事項10のうち請求項3に関する訂正は,訂正前の構成から「前記判定領域に入力された判定用数値データに対して前記事前決定手段が導出を許容する旨を決定することとなる」を削除するものであるが,当該削除された構成は,訂正事項1について検討したとおり,請求項1における他の箇所に記載されているから,訂正事項10は実質的に構成を削除するものではない。
また,訂正事項10のうち請求項3に関する訂正は,「判定値の数を示す判定値データ」について「該調整の結果により確定された」との限定を付すものであり,また訂正事項10のうち段落【0021】に関する訂正は請求項3における訂正に整合させるためであり明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
そして,明細書の段落【0141】には「シミュレーションにより調整された判定値数が結果として設定値および/または賭け数に関わらずに同じになったとしても,その開発段階でのアドレス割り当てと同じアドレスの割り当てで判定値数をROM113に記憶して,そのまま量産用の機種とすることができる。」と記載されており,この記載によれば判定値データ記憶手段が記憶する判定値データは「前記調整の結果により確定された判定値の数を示す判定値データ」である。
そうすると,訂正事項10は,特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするもので,本件特許明細書等に記載された事項の範囲内で行うものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでない。

(2-10)訂正事項11について
訂正事項11は,請求項3及び明細書段落【0021】において,判定値データ記憶手段について「さらに,前記賭数段階の種類に応じて個別に判定値データが記憶されていることを区別するための共通フラグを前記賭数段階の種類に応じて区分することなく,入賞表示結果の種類毎に記憶し,」との記載を加入するものであるが,訂正事項11のうち請求項3に関する訂正は「判定値記憶手段」が「前記賭数段階の種類に応じて個別に判定値データが記憶されていることを区別するための共通フラグを前記賭数段階の種類に応じて区分することなく,入賞表示結果の種類毎に記憶する」ものであることを限定するものであり,また訂正事項11のうち段落【0021】に関する訂正は請求項3における訂正に整合させるためであり明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
そして,明細書の段落【0091】には「判定値数は,設定値及び賭け数に関わらずに共通となっているものと,設定値および/または賭け数に応じて異なっているものとがある。判定値数が設定値に関わらずに共通である場合には,設定値についての共通フラグが設定され(値が「1」とされ),判定値数が賭け数に関わらずに共通である場合には,賭け数(BET数)についての共通フラグが設定される(値が「1」とされる)。設定値及び賭け数の両方に関わらずに判定値数が共通であれば,両方のフラグが設定されるものとなる。」と記載されており,図3には賭数についての共通フラグは賭数に応じて区分することなく役の種類毎に設けられていることが図示されており,当該記載によれば「前記賭数段階の種類に応じて個別に判定値データが記憶されていることを区別するための共通フラグを前記賭数段階の種類に応じて区分することなく,入賞表示結果の種類毎に記憶し,」ことは自明な事項である。更に,訂正事項11に関する請求人の主張については,上記(1-5)で検討したとおりである。
そうすると,訂正事項11は,特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするもので,本件特許明細書等に記載された事項の範囲内で行うものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでない。

3.小括
以上のとおりであるから,平成24年2月3日付けの訂正は,特許請求の範囲の減縮,誤記の訂正,又は明りょうでない記載の釈明を目的とし,特許請求の範囲の減縮又は明りょうでない記載の釈明については特許請求の範囲,明細書又は図面に記載されている事項の範囲内のものであり,誤記の訂正については願書に最初に添付した特許請求の範囲,明細書又は図面に記載されている事項の範囲内のものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでない。
したがって,上記訂正は,特許法第134条の2第1項ただし書き,及び,特許法同条第5項において準用する同法第126条第3項,第4項の規定に適合するので,適法な訂正と認める。


第4.本件訂正発明
上記のとおり訂正を認めるので,本件訂正発明は,本件訂正により訂正された特許請求の範囲,明細書(以下,「訂正明細書」という。)及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1?3に記載された次のとおりのもの(以下,「本件訂正発明1」,「本件訂正発明2」及び「本件訂正発明3」という。)と認める。
「【請求項1】
1ゲームに対して所定数の賭数を設定することによりゲームを開始させることが可能となり,各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示させる可変表示装置に表示結果が導出されることにより1ゲームが終了し,該可変表示装置に導出された表示結果に応じて入賞が発生可能であるとともに,遊技の進行を制御する遊技制御用マイクロコンピュータを備えるスロットマシンにおいて,
前記遊技制御用マイクロコンピュータは,
前記可変表示装置に表示結果が導出される以前に,前記可変表示装置の表示結果として予め定められた複数種類の入賞表示結果をそれぞれ導出させることを許容するか否かを,入賞表示結果の種類毎に決定する事前決定手段と,
前記事前決定手段が入賞表示結果を導出させることを許容する旨を決定する割合が異なる複数種類の許容段階のうちから,いずれかの許容段階を選択して設定する手段であって,前記スロットマシンの内部に設けられた許容段階設定操作手段を操作することにより,いずれかの許容段階を選択して設定する許容段階設定手段と,
前記事前決定手段により決定を行う前に,所定のタイミングで所定の範囲内において更新される数値データを,ゲーム毎に判定用数値データとして前記遊技制御用マイクロコンピュータが備える判定領域に入力する数値データ入力手段と,
前記判定領域に入力された判定用数値データに対して前記事前決定手段が導出を許容する旨を決定することとなる判定値の数を示す判定値データを記憶する手段であって,
前記事前決定手段により導出の許容が決定される確率の調整を行う際に該調整を前記許容段階の種類毎に行うことが不要とされたいずれか1種類以上の入賞表示結果について,該調整の結果により確定された判定値の数を示す判定値データを,前記複数種類の許容段階に共通して記憶するとともに,
前記許容段階に共通して判定値データが記憶されていない2種類以上の入賞表示結果について,前記調整の結果により確定された判定値の数を示す判定値データを,前記許容段階の種類に応じて個別に記憶し,
さらに,前記複数種類の許容段階に共通して判定値データが記憶されているか該許容段階の種類に応じて個別に判定値データが記憶されているかを区別するための共通フラグを,前記許容段階の種類に応じて区分することなく,入賞表示結果の種類毎に記憶する判定値データ記憶手段とを備え,
前記事前決定手段は,前記許容段階設定手段により設定された許容段階に対応して前記判定値データ記憶手段に記憶された判定値データを入賞表示結果の種類毎に前記共通フラグに従って読み出し,該読み出した判定値データに応じて,前記判定領域に入力された判定用数値データが前記入賞表示結果の種類毎に導出を許容する旨を示しているか否かを判定する判定手段を備え,該判定手段により導出を許容する旨を示していると判定された種類の入賞表示結果の導出を許容する旨を決定し,
前記判定値データ記憶手段は,前記許容段階の種類に応じて個別に記憶する判定値データとして異なる判定値の数を示す異数判定値データと,前記許容段階の種類に応じて個別に記憶する判定値データとして同一の判定値の数を示す同数判定値データとを,前記入賞表示結果の種類を単位として記憶する
ことを特徴とするスロットマシン。
【請求項2】
前記事前決定手段は,前記許容段階設定手段により設定された許容段階に対応して前記判定値データ記憶手段に記憶された判定値データを,入賞表示結果の種類毎に前記共通フラグに従って順次読み出し,該読み出した判定値データを順次前記判定領域に入力された判定用数値データに加算する加算手段をさらに備え,
前記判定手段は,前記加算手段の加算結果が前記所定の範囲を越えたか否かを判定し,該判定の結果により前記所定の範囲を越えると判定されたときの加算を行った判定値データに対応した種類の入賞表示結果の導出を許容する旨を示していると判定する
ことを特徴とする請求項1に記載のスロットマシン。
【請求項3】
前記遊技制御用マイクロコンピュータは,前記所定数の賭数として定められた複数種類の賭数段階のうちから,ゲーム毎にいずれかの種類の賭数段階の賭数を設定する賭数設定手段をさらに備え,
前記判定値データ記憶手段は,
前記調整を行う際に該調整を前記許容段階の種類毎に行うことも前記賭数段階の種類毎に行うことも不要とされたいずれか1種類以上の入賞表示結果について,前記判定値データを,前記複数種類の許容段階及び前記複数種類の賭数段階に共通して記憶するとともに,
前記許容段階及び前記賭数段階に共通して判定値データが記憶されていない2種類以上の入賞表示結果について,前記調整の結果により確定された判定値の数を示す判定値データを,前記許容段階及び前記賭数段階の種類に応じて個別に記憶し,
さらに,前記賭数段階の種類に応じて個別に判定値データが記憶されていることを区別するための共通フラグを,前記賭数段階の種類に応じて区分することなく,入賞表示結果の種類毎に記憶し,
前記判定手段は,前記許容段階設定手段により設定された許容段階及び前記賭数設定手段により設定された賭数段階に対応して前記判定値データ記憶手段に記憶された判定値データを入賞表示結果の種類毎に前記共通フラグに従って読み出し,該読み出した判定値データに応じて,前記判定領域に入力された判定用数値データが前記入賞表示結果の種類毎に導出を許容する旨を示しているか否かを判定し,
前記判定値データ記憶手段は,さらに,前記許容段階及び前記賭数段階の種類に応じて個別に記憶する判定値データとして異なる判定値の数を示す第2異数判定値データと,前記許容段階及び前記賭数段階の種類に応じて個別に記憶する判定値データとして同一の判定値の数を示す第2同数判定値データとを,前記入賞表示結果の種類を単位として記憶する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のスロットマシン。」


第5.本件訂正発明にかかる検討
請求人は,訂正が認められるとしても,訂正後の請求項1?3に係る発明について,審判請求書で申し立てた無効理由1(容易想到性)は解消していない旨主張しているので以下に検討する。なお,無効理由2(記載要件)はすべて撤回されている。

1.甲第1?14号証の記載事項
甲第1?14号証には,それぞれ以下の記載がある。なお,「/」は原文における改行箇所である。 また,下線は当審で付した。

(1)甲第1号証(特許第3474804号公報)
【特許請求の範囲】/【請求項1】周囲に複数の図柄を表示した回転リールを有するリールユニットと,/メダル投入を条件として前記リールユニットの駆動を開始させるためのスタートスイッチと,/前記リールユニットの駆動を停止させるためのストップスイッチと,/前記スタートスイッチ及び前記ストップスイッチの操作により,前記回転リールの回転及び停止を制御するための遊技制御装置とを備えるようにしたスロットマシンにおいて,/前記遊技制御装置は,入賞か否かの抽選を行う入賞抽選手段を備え,/前記入賞抽選手段は,/入賞抽選用の乱数を所定の領域内で発生させる乱数発生手段と,/前記乱数発生手段が発生する乱数を抽出する入賞抽選用の乱数抽出手段と,/前記乱数発生手段がとる乱数の全領域中,各入賞項目の出現回数となる抽選確率データを有する入賞判定テーブルと,/前記乱数抽出手段が抽出した乱数と,前記入賞判定テーブルの抽選確率データを基に,前記乱数発生手段がとる乱数の全領域中の各入賞項目の入賞領域からなる入賞判定領域データとを照合し,当該乱数が属する入賞領域に対応する入賞を決定する判定手段とを備え,/前記抽選確率データは,前記乱数発生手段がとる乱数の全領域中の予め定めた出現回数からなるものであって,メダル投入枚数と,複数の段階に設定されて,その段階の抽選確率を決定するための設定値と,入賞項目との3つにより決定されるものであり,/前記抽選確率データは,個別データと,共通データとを備え,/前記入賞判定テーブルは,/前記個別データを有する個別データテーブルと,/前記共通データを有する共通データテーブルと,/共通フラグを有する共通フラグデータテーブルとを備え,/前記個別データは,前記メダル投入枚数,前記設定値及び前記入賞項目により区分される前記抽選確率データであって,それぞれ独立した前記抽選確率データであり,/前記共通データは,前記メダル投入枚数,前記設定値及び前記入賞項目により決定される前記抽選確率データの出現回数同士が,同一の場合に,それらを一つにまとめた前記抽選確率データであり,/前記共通フラグは,前記メダル投入枚数,前記設定値及び前記入賞項目により区分される前記抽選確率データが,前記共通データである場合に前記共通フラグが成立し,前記抽選確率データが前記個別データである場合には前記共通フラグが成立しないようにしたものであることを特徴とするスロットマシン。
【0002】/【従来の技術】従来,スロットマシンにおいて,各入賞項目毎の抽選確率データは,メダルの投入枚数と,抽選確率を決定するための設定値と,各入賞項目とにより,複数に区分され,各区分毎に独立した数値が設定されていた。具体的には,例えば,表1にビッグボーナスゲーム(以下,「BBゲーム」という)に移行していない場合の一般遊技の各入賞項目の抽選確率データを示す。なお,この抽選確率データは,一般遊技回数が16384回中の出現回数を示すものであって,表1中の抽選確率データの値を16384で除した値が当該入賞項目の抽選確率となるものである。
【0005】そして,これらの三段階のメダル投入枚数と,六段階の設定値と,六項目の入賞項目とにより,3×6×6の合計108個に区分され,各区分毎に独立した抽選確率データの数値が設定されている。この抽選確率データは,スロットマシンの記憶装置の内部に予め記憶されているものである。一方,近年のスロットマシンは,入賞時の演出や,入賞フラグが立つことを報知するための演出等に関して,大変凝った演出内容のものや,数多くの演出パターンを設定するものがあり,かかる演出のためにスロットマシン内部の記憶装置に予め必要とする記憶容量が増加してきている。
【0019】スロットマシン10は,図5に示すように,四角箱状の筐体11を有する。前記筐体11の中央部及び上部には,遊技者側に向かって臨む四角窓状の表示窓12が形成されている。
【0020】スロットマシン10の内部には,図示していないが,スタートスイッチ30及びストップスイッチ50の操作により,回転リール40の回転及び停止を制御するための遊技制御装置20(図1参照)が内蔵されている。/(遊技制御装置20)/上記遊技制御装置20は,図示しないが,CPUを中心に構成され,ROM,RAM,I/O等を備えている。そして,CPUがROMに記憶されたプログラムを読み込むことで,次の(1)乃至(3)の手段として機能する。
【0021】(1)通常遊技制御手段70/(2)特別遊技制御手段80/(3)入賞抽選手段110/なお,遊技制御装置20としては,上記した(1)?(3)の手段に限定されるものではなく,他の手段を含んでいても良い。また,CPUは,一個に限定されず,二個以上のCPUで制御するようにしても良い。
【0025】そして,各回転リール40の外周面には,複数種類の図柄が表示されている。
【0026】すなわち,メダルの投入を条件に,スタートスイッチ30を操作すると,リールユニット60が駆動され,三個の回転リール40が回転を開始する。その後,ストップスイッチ50の一個を操作すると,当該対応する回転リール40の回転が停止する。そして,ストップスイッチ50を三個全て操作すると,三個の回転リール40の回転が全て停止する。
【0027】このとき,表示窓12の有効ライン上に,予め設定された図柄が停止すると,ホッパーユニット65を介して所定枚数のメダルが払い出される。なお,メダルを払い出す代わりに,クレジットしても良い。入賞には,遊技者に利益を付与する小役入賞と,この小役入賞よりもさらに大きな利益を遊技者に付与する特別入賞とを備えている。
【0033】・・・/(入賞抽選手段110)/上記抽選手段は,予め定めた抽選確率に基づいて入賞か否かの入賞判定の抽選を行うものである。そして,入賞抽選手段110による抽選結果が入賞である場合に入賞フラグが成立する。そして,上述したように,入賞フラグ成立中に,回転リール40の停止図柄の組み合わせが予め定められた入賞図柄と一致したことを条件に遊技者にメダルの払い出しや,特別遊技等の利益が付与されるものである。
【0034】具体的には,入賞抽選手段110は,図1に示すように,大別すると,次の手段を備える。/(1)乱数発生手段120/(2)乱数抽出手段130/(3)入賞判定テーブル140/(4)判定手段150/なお,入賞抽選手段110としては,上記した(1)乃至(4)に限定されるものではない。
【0037】また,メダルの投入枚数は,1乃至3枚の三段階に設定されてあり,抽選確率を決定するための設定値は,1乃至6の六段階に設定されてある。そして,入賞項目としては,「ベル」,「スイカ」,「再遊技(Replay)」,「チェリー」,「BBゲーム」及び「RBゲーム」の合計6項目が設定されている。そして,これらの三段階のメダル投入枚数と,六段階の設定値と,六項目の入賞項目とにより,抽選確率データが決定されるものである。この抽選確率データは,スロットマシンの記憶装置の内部に予め記憶されているものである。
【0039】さらに,具体的には,図2に示すように,通常遊技用入賞判定テーブル141は,大別すると,次のテーブルを備えるものである。/(1)個別データテーブル145/(2)共通データテーブル146/(3)共通フラグデータテーブル147/(個別データテーブル145)/上記個別データテーブル145は,メダル投入枚数,抽選確率を決定するための設定値及び入賞項目により区分され,それぞれに独立した値の個別データを有するものである。この個別データは,表2に示すような抽選確率データにおいては,例えば,メダル投入枚数1枚で,入賞項目「チェリー」の設定値「3?6」に設定されている「14」,「15」,「16」及び「17」に示されるものである。具体的には,表2において,個別データは,合計23個含まれ,これらの個別データから個別データテーブル145が形成されているものである。/(共通データテーブル146)/上記共通データテーブル146は,メダル投入枚数,抽選確率を決定するための設定値及び入賞項目により決定される値が同一の場合に,それらを一つにまとめた共通データを有するものである。この共通データは,表2に示すような抽選確率データにおいては,例えば,メダル投入枚数が1枚で,入賞項目「ベル」の設定値「1?6」に設定されている抽選確率データ「711」や,メダル投入枚数が1枚で,入賞項目「チェリー」の設定値「1」及び「2」に設定されている抽選確率データ「13」や,メダル投入枚数が1?3枚で,入賞項目「再遊技」の設定値「1?6」に設定されている抽選確率データ「2245」等に示されるものである。具体的には,表2において,共通データは,合計17個含まれ,これらの共通データから共通データテーブル146が形成されているものである。/(共通フラグデータテーブル147)/上記共通フラグデータテーブル147は,メダル投入枚数,抽選確率を決定するための設定値及び入賞項目により区分されると共に,共通データである場合に成立する共通フラグを有するものである。そして,この共通フラグデータテーブル147の共通フラグの成立の有無により,個別データテーブル145の個別データ若しくは共通データテーブル146の共通データのいずれかを選択可能にするものである。
【0040】具体的には,例えば,表2及び表5に示すように,抽選確率データが,共通データである場合には,共通フラグには,数値の「1」が設定され,共通フラグが成立中の状態であることを示す。また,抽選確率データが,個別データである場合には,共通フラグには,数値の「0」が設定され,共通フラグが成立していない状態であることを示す。すなわち,メダル投入枚数,設定値及び入賞項目により区分される共通フラグデータテーブル147から共通フラグを取得し,その数値が「1」の場合は,共通データテーブル146から共通データを取得する。また,共通フラグの数値が「0」の場合は,個別データテーブル145から個別データを取得するものである。この共通フラグは,メダル投入枚数,設定値及び入賞項目により区分される全ての領域に設定されている。具体的には,例えば,表2に示すような抽選確率データの場合には,投入枚数3段階,設定値6段階,入賞項目6種類の3×6×6の合計108個の各区分に個別の共通フラグがそれぞれ設定されているものである。このように,全ての区分に共通フラグが必要となるが,共通フラグは,二進数の「0」若しくは「1」の二つのみであって,その記憶装置に占める格納領域は,全ての区分に十進数で4桁からなるそれぞれの抽選確率データを収納する場合と比較して,遙かに小さなものにすることができるものである。
【0046】・・・/(判定手段150)/上記判定手段150は,乱数抽出手段130が抽出した抽出乱数データと,入賞判定テーブル140の抽選確率データを基に,乱数発生手段120がとる乱数の全領域中の各入賞項目の入賞領域からなる入賞判定領域データとを照合し,当該抽出乱数データが属する入賞領域に対応する入賞を決定するものである。
【0052】先ず,図3に示すように,ステップ100において,遊技者によるメダル投入によって,スタートスイッチ30が操作可能な状態となる。そして,図示しないが,遊技制御装置20において,スタートスイッチ30のオン・オフが監視され,スタートスイッチ30が操作されたか否かが判定される。そして,ステップ101に進む。
【0053】ステップ101において,遊技者により,スタートスイッチ30がオンに操作される。そして,次のステップ102に進む。ステップ102において,投入されたメダルを感知するセンサーによりメダルの投入枚数が取得され,また,抽選確率を決定するための設定値が取得される。そして,次のステップ103に進む。
【0054】ステップ103において,入賞抽選手段110の判定手段150によって,通常遊技,BBゲーム又はRBゲームのいずれの遊技状態であるかが判断されて,当該対応する入賞判定テーブル140の共通フラグデータテーブル147が選択される。具体的には,入賞抽選手段110の判定手段150によって,現状遊技に対応して,通常遊技用入賞判定テーブル141,BBゲーム用入賞判定テーブル142又はRBゲーム用入賞判定テーブル143のいずれかの入賞判定テーブル140が選択される。そして,選択した入賞判定テーブル140の共通フラグデータテーブル147から,若しくは入賞判定テーブル140から直接,現状遊技のメダル投入枚数及び設定値に対応する各入賞項目の共通フラグが取得される。なお,RBゲーム用入賞判定テーブル143は,共通データの1個と,共通フラグの1個とだけを有しているため,図2に示すように,特に,共通フラグデータテーブル147を持たずに,直接,RBゲーム用入賞判定テーブル143から共通フラグを取得できるように設定されている。そして,ステップ104に進む。
【0058】ステップ107において,入賞抽選手段110の判定手段150によって,入賞判定領域データが作成される。具体的には,例えば,表5に示すように,全ての入賞項目の抽選確率データが取得された後,各抽選確率データを加算して,乱数発生手段120がとる乱数(例えば0?16383)の全領域中の各入賞項目の入賞領域からなる入賞判定領域データを得ることができるものである。そして,図4に示すように,次のステップ201に進む。
【0059】ステップ201において,乱数発生手段120が所定の領域内(例えば0?16383)で発生した乱数を,乱数抽出手段130によって,引き込んで抽出する。そして,この抽出した乱数を抽出乱数データとする。そして,次のステップ202に進む。ステップ202において,入賞抽選手段110の判定手段150によって,抽出乱数データと入賞判定領域データとの比較が行われる。そして,かかる比較の結果,特定の入賞項目に該当している場合には,その入賞項目の入賞フラグを成立させる。
【0061】ステップ203において,入賞フラグが成立しているか否かが判定される。そして,入賞フラグが成立していると判断した場合,次のステップ204に進む。ステップ204において,入賞フラグが成立している入賞項目の図柄の引き込みが設定される。そして,次のステップ205に進む。なお,「入賞項目の図柄の引き込み」とは,具体的には,ストップスイッチ50を操作した後,所定時間(例えば190ms)以内に回転リール40が停止するように設定されているため,ストップスイッチ50が操作された後,所定時間(例えば190ms)以内に停止可能な回転リール40の円周上の引き込み可能図柄,例えば4個の引き込み可能図柄の中に,入賞フラグが成立している入賞図柄が含まれているような場合,回転リール40を回転させて図柄を滑らせ,有効ライン上に当該入賞図柄を引き込んで停止させるものである。
【0062】ステップ205において,入賞フラグが成立している入賞項目の図柄以外の蹴飛ばしが設定される。そして,次のステップ206に進む。なお,入賞項目の図柄以外の蹴飛ばしとは,具体的には,ストップスイッチ50を操作した後,入賞フラグが成立していない入賞図柄が,有効ライン上に揃わないように,回転リール40を回転させて停止するものである。

従来技術の【表1】は次のとおり。

また,発明の実施の形態の【表2】は次のとおり。

ここで,【表2】には,「入賞項目の抽選確率データ(合計16384回中の出現回数)(表中の値を16384で除した値が抽選確率となる)」と記載されており,入賞項目がRBで投入枚数3枚の場合では設定値1?6の抽選確率データが「25,27,29,31,35,45」となっていることが記載され,入賞項目がBBで投入枚数3枚の場合では設定値1?4の抽選確率データが「56,59,62,66」,設定値5,6の抽選確率データが「68」となっていることが記載され,入賞項目がチェリーで投入枚数3枚の場合では設定値1?6の抽選確率データが「145」となっていることが記載されている。

(2)甲第2号証(特開2001-104544号公報)
【0002】/【従来の技術】従来,回胴装置,例えばスロットマシンにおいて,各入賞項目毎の抽選確率データは,原則として,メダルの投入枚数と,抽選確率を決定するための設定値と,各入賞項目とにより,複数に区分され,各区分毎に独立した数値が設定されていた。具体的には,例えば,表1に,ビッグボーナス(以下,「BB」という)に移行していない場合の通常遊技の「BB」の抽選確率データと,BBゲーム中の入賞項目「ベル」の抽選確率データとを示す。

(3)甲第3号証(特開2004-136101号公報)
【0087】/図10に賞群抽選テーブルTBL1の記憶内容を示す。この図に示すように,賞群抽選テーブルTBL1は,第1?第7記憶領域ADR1?ADR7に抽選区分データを各々記憶している。抽選区分データの値は,各賞群に対応する抽選区分の大きさを示す。例えば,第1記憶領域ADR1に記憶される抽選区分データはハズレに対応しておりその値は「54000」である。また,第7記憶領域ADR7に記憶される抽選区分データはBB賞に対応しており,その値は「300」である。したがって,BB賞に当選する確率はハズレに当選する確率の1/180となる。
【0088】/図11は,賞群抽選テーブルTBL1を用いた内部抽選処理におけるCPU31の動作を示すフローチャートである。まず,CPU31は初期化処理を行う(ステップS1)。具体的には,変数Nの値を「0」にリセットするとともに内部レジスタに記憶している値を「0」にリセットする。
【0089】/次に,CPU31は,第1サンプリングデータSDを内部レジスタに記憶し(ステップS2),これに続いて,変数Nの値をN+1に変更する(ステップS3)。この後,CPU31はN番目の記憶領域から抽選区分データを読み出す(ステップS4)。初期化処理の直後の処理では,変数Nの値が「1」となるので,第1記憶領域ADR1から抽選区分データが読み出される。この場合の値は「54000」となる。
【0090】/次に,CPU31は内部レジスタの記憶内容を読み出し,読み出したデータ値と抽選区分データ値を加算し,加算値を内部レジスタに記憶する(ステップS5)。この結果,内部レジスタの記憶内容は,元のデータ値から加算値に更新されることになる。
【0092】/加算値が基準値未満の場合には,CPU31は処理をステップS3に戻し,加算値が基準値以上になるまでステップS3からステップS6の処理を繰り返す。そして,加算値が基準値以上になると,CPU31は処理をステップS7に進めて,変数Nの値に応じて賞群を決定し,内部抽選データを生成する。具体的にはN=1のときハズレ,N=2のとき再遊技賞,N=3のときチェリー賞,N=4のときベル賞,N=5のときスイカ賞,N=6のときRB賞,N=7のときBB賞に当選したと決定する。この結果,第1サンプリングデータSDと賞群との対応は,図10に示すように,SD=59999?6000でハズレに,SD=5999?4200で再遊技賞に,SD=4199?3000でチェリー賞に,SD=2999?1740でベル賞に,SD=1799?900でスイカ賞に,SD=899?300でRB賞に,SD=299?0でBB賞に各々対応するものとなる。

(4)甲第4号証(特開2003-256439号公報)
【特許請求の範囲】/【請求項1】データベースシステムの自動層別方法であって,開発中の製品に関するデータと開発完了した製品に関するデータとを開発完了を示す状態フラグにより自動層別する自動層別方法。
【0005】本発明によると,状態フラグによって自動的に層別するから,チェックボックス等による人手による入力を必要とせず,漏れやミスのない自動層別が可能である。また,自動層別されたデータを層別に表示すれば,視認性が向上する。さらに,自動層別された開発完了データに対して,他のデータ保管サーバに移動して書庫入れを行えば,よりいっそうデータ記憶領域の節約とデータ検索時間の短縮が可能である。

(5)甲第5号証(特開2002-66069号公報)
【0003】/【発明が解決しようとする課題】ところで,遊技機のバリエーションを増やす上で,基本的な遊技内容は変わらないが入賞に応じて払出される賞球数が異なる遊技機を開発する場合がある。たとえば,始動入賞口,一般入賞口,大入賞口の順で,払出される賞球数が各々6個,15個,15個(このような賞球の払出の設定を6&15という)と,“2系統”で設定されているような遊技機を元にして,始動入賞口,一般入賞口,大入賞口の順で,各々6個,10個,15個(6&10&15という)に賞球数の設定が“3系統”に変更された遊技機を開発する必要が生じる場合がある。
【0011】本発明は,係る実情に鑑み考え出されたものであり,その目的は,入賞に応じて遊技者に付与される遊技結果価値数が異なる遊技機を開発する場合に,簡単にプログラム変更をかけることができる遊技機を提供することである。
【0022】/【発明の実施の形態】・・・図1はパチンコ遊技機1を正面から見た正面図である。なお,ここでは,遊技機の一例としてパチンコ遊技機を示すが,本発明はパチンコ遊技機に限られず,たとえばスロットマシン等であってもよく,複数の入賞態様が予め定められ,入賞に応じて所定の遊技結果価値が遊技者に付与される遊技機であれば,すべての遊技機に適用可能である。
【0081】さらに,上記入賞球処理において特徴的なことは,賞球個数を決定するときに(S223,S226,S229),ROM54におけるデータ領域を参照することである。図7にメモリマップの例を示す。
【0084】このように,大入賞口29への入賞に対して払出される賞球数と,一般入賞口19,24への入賞に対して払出される賞球数とが同一(=15個)であるにもかかわらず,各々の入賞口に対応して,大入賞口用領域104a,始動入賞口用領域104b,一般入賞口用領域104cが設けられている。このため,前述したように,「6&15」の“2系統”に設定されている本実施の形態に示される遊技機をベースにして,その基本的遊技制御内容が同一であって,「6&10&15」の“3系統”で設定された遊技機を開発したい場合には,たとえば,一般入賞口用領域104cの賞球個数データを「15」から「10」に変更することのみで事足りるようになる。

(6)甲第6号証(警察六法平成16年版(平成16年8月5日発行,編集警察制度研究会),1056乃至1069頁)
「遊技機の認定及び型式の検定等に関する規則・・・第5条 公安委員会は,認定に係る遊技機に関し,次の各号に掲げるいずれかの事実が判明したときは,その認定を取り消すことができる。・・・二 認定を受けた遊技機にその構造,材質又は性能に影響を及ぼす改造その他の変更が加えられたこと。・・・第9条 公安委員会は,前条第一項の試験の結果(同条第二項の再試験の結果を含む。次項において同じ。),検定申請書に係る型式が技術上の規格に適合していると認めるときは,その旨の検定を行うものとし,その旨を,別記様式第十六号の検定通知書(甲)により検定申請者に通知するとともに公示するものとする。・・・第十1条 公安委員会は,第9条第1項の検定を受けた型式に属する遊技機の構造,材質又は性能が技術上の規格に適合せず,又は均一性を有していないことが判明したときは,その検定を取り消すことができる。」

(7)甲第7号証(特開平5-57050号公報)
【0001】/【産業上の利用分野】本発明は,パチンコ遊技機等で代表される弾球遊技機に関し,詳しくは,打玉が打込まれる遊技領域に設けられた始動入賞領域と,複数種類の識別情報を可変表示可能な可変表示装置と,前記遊技領域に設けられ,遊技者にとって有利となる第1の状態と遊技者にとって不利となる第2の状態とに変化可能な可変入賞球装置とを含む弾球遊技機に関する。
【0004】一方,弾球遊技機の開発段階において,制御用コンピュータに一旦記憶させた特定の識別情報を他の種類のものに仕様変更したいという場合がある。また,開発された制御プログラムを他の機種の弾球遊技機に転用する際に,特定の識別情報を他の種類に設計変更して用いたい場合もある。このような仕様変更や設計変更に伴い,前記特定の識別情報に関する記憶データを変更する必要性が生じる場合がある。

(8)甲第8号証(特開2000-176120号公報)
【0001】/【発明の属する技術分野】本発明は,遊技者の操作に応じて遊技が行われるパチンコ遊技機やコイン遊技機等の遊技機に関し,特に,遊技盤における遊技領域において遊技者の操作に応じて遊技が行われる遊技機に関する。
【0004】/【発明が解決しようとする課題】ところで,遊技業界の要請などに応じて,基本的な遊技内容は変わらないが入賞に応じて払い出される賞球数が異なる遊技機を開発する場合がある。そのような遊技機の開発は,遊技制御手段を構成するプログラムの変更で対応可能である。しかし,プログラムが変更しやすい構造になっていなければ,変更時に誤りが発生する可能性がある。誤りとして,例えば,賞球個数を決定する部分だけを変更する目的でプログラム変更を行ったときに,別の部分にも影響を与えてしまって,開発者が気づかないまま別の部分が変更されてしまうようなことがある。つまり,賞球数が異なる遊技機を開発する場合,プログラムの変更によって容易に対応できるように見えるものの,元々のプログラムの構造が変更しやすい構造になっていないと,開発者も気づかないうちに変更後のプログラムに不具合が含まれてしまう危険がある。
【0005】本発明は,そのような課題を解決するためのものであって,基本的な遊技内容は変わらないが入賞に応じて払い出される賞球数が異なる遊技機を開発する場合に,安全にプログラム変更をかけることができる遊技機を提供すること目的とする。
【0110】図19(B)に示す例では,ラベルSSで指定されるデータ領域の内容がアキュムレータにロードされ,その後,アキュムレータの内容がラベルDATAで指定される領域に設定されている。このようなプログラム構成によると,賞球個数を変更する場合には,ラベルSSに対応したデータ領域に設定されている数値を変更するだけでよく,プログラム領域の内容を変更しなくてよい。例えば,15の賞球個数を14個に変更するときには,ラベルSSに対応したデータ領域に設定されている数値を14に変更するだけでよい。

(9)甲第9号証(警察六法平成16年版(平成16年8月5日発行,編集 警察制度研究会),926乃至931頁,937頁,961乃至968頁)
「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律・・・第4条・・・4 第2条第1項第7号の営業(ぱちんこ屋その他政令で定めるものに限る。)については,公安委員会は,当該営業に係る営業所に設置される遊技機が著しく客の射幸心をそそるおそれがあるものとして国家公安委員会規則で定める基準に該当するものであるときは,当該営業を許可しないことができる。・・・ 第二十条 第4条第4項に規定する営業を営む風俗営業者は,その営業所に,著しく客の射幸心をそそるおそれがあるものとして同項の国家公安委員会規則で定める基準に該当する遊技機を設置してその営業を営んではならない。/2 前項の風俗営業者は,国家公安委員会規則で定めるところにより,当該営業所における遊技機につき同項に規定する基準に該当しない旨の公安委員会の認定を受けることができる。/3 国家公安委員会は,政令で定める種類の遊技機の型式に関し,国家公安委員会規則で,前項の公安委員会の認定につき必要な技術上の規格を定めることができる。/4 前項の規格が定められた場合においては,遊技機の製造業者(外国において本邦に輸出する遊技機を製造する者を含む。)又は輸入業者は,その製造し,又は輸入する遊技機の型式が同項の規定による技術上の規格に適合しているか否かについて公安委員会の検定を受けることができる。」

(10)甲第10号証(警察六法平成16年版(平成16年8月5日発行,編集 警察制度研究会),989頁,998乃至1003頁,1018乃至1024頁)
「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行規則・・・第7条・・・著しく射幸心をそそるおそれのある遊技機の基準・・・回胴式遊技機・・・一 一分間におおむね四百円の遊技料金に相当する数を超える数の遊技メダル(遊技の用に供するメダルをいう。以下この項において同じ。)又は遊技球(以下この項において「遊技メダル等」という。)を使用して遊技をさせることができる性能を有する遊技機であること。/二 一回の入賞により獲得することができる遊技メダル等の数が遊技メダルにあつては十五枚を,遊技球にあつては七十五個を,それぞれ超え,又は当該入賞に使用した遊技メダル等の数の十五倍を超えることがある性能を有する遊技機であること。/三 四百回にわたり遊技を連続して行つた場合において獲得することができる遊技メダル等の数が使用した遊技メダル等の数の三倍を超えることがある性能を有する遊技機であること,その他短時間に著しく多くの遊技メダル等を獲得することができる性能を有する遊技機であること。/四 六千回にわたり遊技を連続して行つた場合において獲得することができる遊技メダル等の数が使用した遊技メダル等の数の一・五倍を超えることがある性能を有する遊技機であること。/五 一万七千五百回にわたり遊技を連続して行つた場合において獲得することができる遊技メダル等の数が使用した遊技メダル等の数の一・二倍を超えることがあるか,又はその二十分の十一を下回ることがある性能を有する遊技機であること。/六 役物が設けられている遊技機にあつては,役物が作動する場合に入賞させることができる回数が八回を超える性能を有する遊技機であること。」

(11)甲第11号証(警察六法平成16年版(平成16年8月5日発行,編集 警察制度研究会),1067乃至1069頁,1113乃至1119頁)
「遊技機の認定及び型式の検定等に関する規則・・・別表第5 回胴式遊技機に係る技術上の規格(第6条関係)/(1) 性能に関する規格/イ 回胴の回転に係る遊技機の性能に関する規格は,次のとおりとする。/(イ) 規定数は,遊技メダルにあつては3枚を,遊技球にあつては15個を,それぞれ超えるものでないこと。/(ロ) 遊技の結果を得るための回胴の回転は,規定数の遊技メダル等の投入をし,又は再遊技を行うことができることとなる回胴の上の図柄(以下この表において「図柄」という。)の組合せが表示された後において,回胴回転装置を作動させることにより,行われるものであること。/(ハ) 規定数の遊技メダル等の投入をし,又は再遊技を行うことができることとなる図柄の組合せが表示された時から当該遊技メダル等の投入をし,又は当該図柄の組合せが表示されたことにより行われる遊技の結果が得られる時までの間は,新たに遊技メダル等の投入をすることができないものであること。/(ニ) すべての回胴の回転の方向及び速さは一定とし,また,その回転の回数は,1分間に80回転を超えるものでないこと。ただし,回胴回転装置を作動させた後,すべての回胴の回転の速さが一定となるまでの間は,この限りでないこと。/(ホ) 回転停止装置は,回胴回転装置を作動させた後,すべての回胴の回転の速さが一定となるまでの間は作動させることができないものであること。/(ヘ) 回胴の回転は,回転停止装置を作動させる場合を除き,すべての回胴の回転の速さが一定となつた後,30秒以内に停止するものでないこと。/(ト) 回胴の回転は,回転停止装置を作動させるためのボタン,レバーその他の装置(以下この表において「停止ボタン等」という。)を操作した後,190ms以内に停止するものであること。/(チ) 回胴の数は,3個以上とすること。/(リ) 図柄は,回胴回転装置の作動中においても,おおむね識別することができるものであること。/ロ 遊技メダル等の獲得に係る遊技機の性能に関する規格は,次のとおりとする。/(イ) 1回の入賞により獲得することができる遊技メダル等の数は,遊技メダルにあつては15枚を,遊技球にあつては75個を,それぞれ超えるものでなく,かつ,当該入賞に使用した遊技メダル等の数の15倍を超えるものでないこと。/(ロ) 規定数ごとに,入賞に係る図柄の組合せと当該入賞に係る図柄の組合せに対応して獲得することができる遊技メダル等の数があらかじめ定められているものであること。/(ハ) 入賞によらずに遊技メダル等を獲得することができるものでないこと。/(ニ) 入賞に係る条件装置が作動することなく,入賞に係る図柄の組合せが表示されるものでないこと。/(ホ) 設定ごと及び規定数ごとに,回胴回転装置を作動させた後,回転するすべての回胴につき,任意の順序により,任意の時間に回転停止装置を作動させる試験を400回行つた場合において,獲得する遊技メダル等の総数が,投入をした遊技メダル等の総数の3倍に満たないものであること。/(ヘ) 設定ごと及び規定数ごとに,内部抽せんを行い,条件装置が作動した場合には当該条件装置に係る図柄の組合せが表示され,当該図柄の組合せにより獲得することができる遊技メダル等の最大数が獲得されることとしたシミュレーション試験を400回行つた場合において,獲得することとなる遊技メダル等の総数が,投入をしたこととなる遊技メダル等の総数の3倍に満たないものであること。」

(12)甲第12号証(特開2002-263263号公報)
【0001】/【発明の属する技術分野】本発明は,遊技媒体(メダル,玉等)を投入し,複数の種類の絵柄からなるリールを移動(回転)させ,それが停止した際にリール表示窓上に停止した絵柄の組合せから入賞が定められ,所定の遊技媒体の払出しを受けることを楽しむ遊技台(スロットマシン,パチンコ等)に関する。
【0100】(4)入賞ライン上に「Hip-Hip-Hip」が揃う毎に,低確率抽選テーブルと高確率抽選テーブルとが交互に切り換わるようにしてもよい。この場合,遊技者は,高確率遊技の時,「Hip-Hip-Hip」の絵柄が揃わないように,ストップボタンを押下するというゲーム性が発生する。
【0101】(5)例えば,「Hip-Hip-Hip」と「スイカ-スイカ-スイカ」とを共通フラグ(共通の入賞役)とし,「Hip-Hip-Hip」が揃った場合は高確率抽選テーブルを選択するようにし,「スイカ-スイカ-スイカ」が揃った場合は低確率抽選テーブルを選択するようにする。また,「Hip」/「スイカ」の入賞役に内部当選した時に,抽選によりどちらが高確率抽選テーブルを選択する絵柄になるのかを決定してもよい。

(13)甲第13号証(特開2000-51433号公報)
【0059】・・・遊技状態は図32(a)に示す遊技状態ステータス(GMLVSTS)格納領域を参照することによって判明する。このGMLVSTS格納領域はRAM33中に1バイトのデータとして記憶されている。ビット0?4には遊技状態が記憶されており,データが1にセットされてオンになっている遊技状態がその時の遊技状態である。
【0060】遊技状態の種類にはGMLVSTSに示されるように「RB作動中」,「BB作動中」,「一般遊技中」,「RB内部当たり中」および「BB内部当たり中」の5種類がある。RBは前述したレギュラー・ボーナス・ゲームを意味しており,このRBゲームでは複数回の高配当ゲームが一組となったボーナスゲームが1回行える。「RB作動中」はこのRBゲーム中の遊技状態を表しており,ハズレまたはJAC当選のいずれかが生じる。また,BBは前述したビッグ・ボーナス・ゲームを意味しており,このBBゲームでは一般遊技および上記のボーナスゲームのセットを複数回行うことが出来る。「BB作動中」はBBゲーム中の遊技状態を表している。また,「一般遊技中」はいずれの入賞も生じていない遊技状態である。「RB内部当たり中」,「BB内部当たり中」は,RB当選フラグ,BB当選フラグは立っているが,各リール3?5に所定の入賞シンボル組合せが停止表示されず,未だRBゲーム,BBゲームに突入していない一般遊技状態のことを表している。
【0061】当選フラグは図32(b)に示すフラグカウンタ(FLGCTR)格納領域を参照することによって判明する。このFLGCTR格納領域もRAM33中に1バイトのデータとして記憶されている。16進数の00?07の1バイトデータにより,その時の当選フラグが示されている。
【0062】例えば,GMLVSTSのビット2のデータが1にセットされ,FLGCTRのデータが07Hであれば,遊技状態は一般遊技中で当選フラグはBBになる。従って,その時のデモ抽選テーブルは,デモ抽選テーブル選択テーブルからNo.7のデモ抽選テーブルになる。

(14)甲第14号証(特開2002-11151号公報)
【0091】次に,当選番号に応じた当たり要求フラグがセットされる(ステップ150)。当たり要求フラグの種類には,「2枚チェリー」,「4枚チェリー」,「再遊技」,「BAR」,「青7」,「赤7」,「スイカ・ベル」,および「RB」の8種類があり,この中のいずれか1つの当たり要求フラグがRAM66の所定領域にセットされる。いずれの当たり要求フラグも立っていない場合には「ハズレ」になる。ここで当たり要求フラグがセットされているとは,その入賞態様に内部当選しているということである。
【0092】当たり要求フラグは,RAM66中に確保された1バイトの当たり要求フラグ格納領域に,図21(b)に示すように記憶されている。例えば,この記憶領域のビット8に1が立っているときは当たり要求フラグが「RB」であることを意味し,ビット7に1が立っているときは当たり要求フラグが「スイカ・ベル」であることを意味している。「RB」の当たり要求フラグは他の当たり要求フラグと同時に2種類のものが立つことがある。つまり,RB当たり要求フラグが立った場合には,この当たり要求フラグは,その回の遊技で「RB」に対応するシンボル組合せが各リール2?4に停止表示されないと,次回の遊技にも持ち越される。このため,「RB内部当たり中」の次回の遊技のときに,入賞態様決定手段によって小当たり入賞態様が決定されれば,小当たり入賞の当たり要求フラグが立つ。よって,「RB」の当たり要求フラグと,小当たり入賞の当たり要求フラグとが同時に立つことになる。

2.甲1発明について
甲第1号証の上記記載事項を参酌すれば,甲第1号証には以下の発明(以下,「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「遊技者によるメダル投入によってスタートスイッチ30が操作可能な状態となり,スタートスイッチ30がオンに操作されると,メダルの投入枚数が取得され,外周面に複数種類の図柄が表示された三個の回転リール40が回転を開始し,その後ストップスイッチ50が操作されて回転リール40の回転が停止して表示窓12の有効ライン上に図柄が停止し,全て停止した図柄が予め設定されたものであると所定枚数のメダルが払い出されるとともに,通常遊技制御手段70,特別遊技制御手段80及び入賞抽選手段110として機能するCPUを備えるスロットマシンにおいて,
「ベル」,「スイカ」,「再遊技(Replay)」,「チェリー」,「BBゲーム」及び「RBゲーム」の6項目の入賞判定領域データと抽出乱数データとの比較を行って,特定の入賞項目に入賞か否かの入賞判定の抽選を行い,入賞抽選手段110による抽選結果が特定の入賞項目に入賞である場合にその入賞項目の入賞フラグが成立させ,ストップスイッチ50が操作された後所定時間(例えば190ms)以内に停止可能な回転リール40の円周上の引き込み可能図柄(例えば4個の引き込み可能図柄)の中に入賞フラグが成立している入賞図柄が含まれているような場合には回転リール40を回転させて図柄を滑らせて有効ライン上に当該入賞図柄を引き込んで停止させるとともに,ストップスイッチ50を操作した後入賞フラグが成立していない入賞図柄が有効ライン上に揃わないように回転リール40を回転させて停止させ,
抽選確率を決定するための設定値は1乃至6の六段階に設定してあり,
所定の領域内(例えば0?16383)で発生した乱数を引き込んで抽出して抽出乱数データとする乱数発生手段と,
抽出乱数データと,入賞判定テーブルから特定のメダル投入枚数及び設定値における全ての入賞項目の抽選確率データを取得して作成した,各入賞項目の入賞領域からなる入賞判定領域データとを照合し,特定の入賞項目に該当している場合には,その入賞項目の入賞フラグを成立させる判定手段と,
抽選確率データは,記憶装置の内部に予め記憶されているものであって,個別データと共通データとを備え,入賞判定テーブル141は,個別データを有する個別データテーブル145と共通データを有する共通データテーブル146と共通フラグを有する共通フラグデータテーブル147とを備え,
個別データは,メダル投入枚数,設定値及び入賞項目により区分される抽選確率データであって,それぞれ独立した抽選確率データであり,共通データは,メダル投入枚数,設定値及び入賞項目により決定される抽選確率データの出現回数同士が,同一の場合に,それらを一つにまとめた抽選確率データであり,共通フラグは,メダル投入枚数,設定値及び入賞項目により区分される抽選確率データが,共通データである場合に共通フラグの数値を「1」とし,抽選確率データが個別データである場合には共通フラグの数値を「0」としたものであり,
入賞項目がチェリーで投入枚数3枚の場合では設定値1?6の抽選確率データが「145」であり,
入賞項目がRBで投入枚数3枚の場合では設定値1?6の抽選確率データが「25,27,29,31,35,45」であり,入賞項目がBBで投入枚数3枚の場合では設定値1?4の抽選確率データが「56,59,62,66」,設定値5,6の抽選確率データが「68」であり,
抽選確率データの取得に際しては,メダル投入枚数,設定値及び入賞項目により区分される共通フラグデータテーブル147から共通フラグを取得し,その数値が「1」の場合は,共通データテーブル146から共通データを取得し,また,共通フラグの数値が「0」の場合は,個別データテーブル145から個別データを取得する,スロットマシン。」

3.対比
甲1発明と本件訂正発明1を対比すると,甲1発明の「外周面に複数種類の図柄が表示された三個の回転リール40」は本件訂正発明1の「各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示させる可変表示装置」に相当し,以下同様に,「表示窓12の有効ライン上に図柄が停止し」は「表示結果が導出される」に,「入賞項目」は「入賞表示結果」に,「設定値」は「許容段階」に,「所定の領域内(例えば0?16383)で発生した乱数」は「所定の範囲内において更新される数値データ」に,「抽出乱数データ」は「判定用数値データ」に,それぞれ相当する。
そして,以下のことがいえる。
(1)「入賞」という語について,甲1発明と本件訂正発明1では技術的意義が相違するので,先ず整理を行う。
通常,スロットマシンにおいては,スタートスイッチの操作を契機として乱数抽選を行って特定の役に当たっているか判定し,当たっている場合(「内部当り」ということが多い)であって,ストップボタンのON操作が行われたときに特定の役に対応する図柄が停止できる範囲内にあれば当該図柄を停止させ,コインの払出しや遊技状態の移行等,遊技者へ利益を与える(「入賞」ということが多い)。すなわち,抽選結果とストップボタンの操作タイミングによって,遊技者へ利益が与えられるか否かが決まるものである。
ところで,甲1発明においては,例えば請求項1に「前記遊技制御手段は,入賞か否かの抽選を行う入賞抽選手段を備え」とあるように,「入賞」は上記「内部当り」の意味で使われている。
一方,本件訂正発明1においては,例えば請求項1に「可変表示装置に導出表示された表示結果に応じて入賞が発生可能である」とあるように,「入賞」は通常用いられている「入賞」の意味で使われている。
このように甲1発明と本件訂正発明1では「入賞」の技術的意義が相違しているが,以下の検討においてはこれを踏まえて「入賞」の語をそのまま用いる。
(2)「遊技者によるメダル投入によってスタートスイッチ30が操作可能な状態となり,スタートスイッチ30がオンに操作されると,メダルの投入枚数が取得され,外周面に複数種類の図柄が表示された三個の回転リール40が回転を開始し,その後ストップスイッチ50が操作されて回転リール40の回転が停止して表示窓12の有効ライン上に図柄が停止し」について
甲1発明では,スタートスイッチ30のオン操作がされると,メダルの投入枚数が取得されて,当該投入枚数等に基づいて抽選確率データが取得され,その後一連の遊技が行われるものであり,スタートスイッチ30のON操作から全ての回転リール40が停止して表示窓12の有効ライン上に図柄が停止するまでを1ゲームということができる。
そうすると,甲1発明は,本件訂正発明1の「1ゲームに対して所定数の賭数を設定することによりゲームを開始させることが可能となり,各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示させる可変表示装置に表示結果が導出されることにより1ゲームが終了」に相当する構成を実質的に具備する。
(3)「全て停止した図柄が予め設定されたものであると所定枚数のメダルが払い出されるとともに,通常遊技制御手段70,特別遊技制御手段80及び入賞抽選手段110として機能するCPUを備えるスロットマシンにおいて」について
甲1発明では,「ベル」,「スイカ」,「再遊技(Replay)」,「チェリー」,「BBゲーム」及び「RBゲーム」の入賞項目に対応した図柄があり,特定の入賞項目に対応した図柄が有効ライン上に停止した場合に特定の入賞項目の入賞が発生することは自明な事項である。そして,「通常遊技制御手段70,特別遊技制御手段80及び入賞抽選手段110として機能するCPU」は,遊技の進行を制御するものであり,スロットマシンに用いられるものである以上,技術常識に照らして,マイクロコンピュータということができる。
そうすると,甲1発明は,本件訂正発明1の「該可変表示装置に導出された表示結果に応じて入賞が発生可能であるとともに,遊技の進行を制御する遊技制御用マイクロコンピュータを備えるスロットマシンにおいて」に相当する構成を実質的に具備する。
(4)「「ベル」,「スイカ」,「再遊技(Replay)」,「チェリー」,「BBゲーム」及び「RBゲーム」の6項目の入賞判定領域データと抽出乱数データとの比較を行って,特定の入賞項目に入賞か否かの入賞判定の抽選を行い,入賞抽選手段110による抽選結果が特定の入賞項目に入賞である場合にその入賞項目の入賞フラグが成立させ,ストップスイッチ50が操作された後所定時間(例えば190ms)以内に停止可能な回転リール40の円周上の引き込み可能図柄(例えば4個の引き込み可能図柄)の中に入賞フラグが成立している入賞図柄が含まれているような場合には回転リール40を回転させて図柄を滑らせて有効ライン上に当該入賞図柄を引き込んで停止させるとともに,ストップスイッチ50を操作した後入賞フラグが成立していない入賞図柄が有効ライン上に揃わないように回転リール40を回転させて停止させ」について
甲1発明において,「ベル」等の6項目の入賞項目は予め決められていることは自明である。
また,甲1発明において,入賞判定の抽選を行い特定の入賞項目に入賞となって入賞フラグが成立した場合は,引き込み可能図柄の中に入賞フラグが成立している入賞図柄が含まれていれば図柄を滑らせて有効ライン上に当該入賞図柄を引き込んで停止させる一方,入賞フラグが成立していない入賞図柄が有効ライン上に揃わないように回転リール40を回転させて停止させているが,これは「予め定められた複数種類の入賞表示結果をそれぞれ導出させることを許容するか否かを,決定する」ものといえる。また,その決定は,6項目の入賞判定領域データと抽出乱数データとの比較を行って抽選しているから「入賞表示結果の種類毎に決定する」ものといえ,図柄の停止前に行っているから「可変表示装置に表示結果が導出される以前に」行っているもの,すなわち「事前決定している」ものといえる。そして,このような制御を行う手段を事前決定手段ということができるとともに,このような制御を遊技の進行を制御するCPUが行っていることは自明である。
そうすると,甲1発明は,本件訂正発明1の「前記遊技制御用マイクロコンピュータは,前記可変表示装置に表示結果が導出される以前に,前記可変表示装置の表示結果として予め定められた複数種類の入賞表示結果をそれぞれ導出させることを許容するか否かを,入賞表示結果の種類毎に決定する事前決定手段とを備え」に相当する構成を実質的に具備する。
(5)「抽選確率を決定するための設定値は1乃至6の六段階に設定してあり」について
従来より,スロットマシンにおいては,抽選確率を異ならせた複数段階の設定値のうち,いずれかの設定値をスロットマシン内部に設けた設定値操作手段の操作により選択して設定する設定値設定手段を設けることは常套手段である。
そして,甲1発明が六段階の設定値を有するスロットマシンである以上,上記の設定値設定手段を具備することは自明であって,このような設定値の設定を,許容段階設定手段ということができるとともに,遊技の進行を制御するCPUが行っていることは自明である。
そうすると,甲1発明は,本件訂正発明1の「前記遊技制御用マイクロコンピュータは,前記事前決定手段が入賞表示結果を導出させることを許容する旨を決定する割合が異なる複数種類の許容段階のうちから,いずれかの許容段階を選択して設定する手段であって,前記スロットマシンの内部に設けられた許容段階設定操作手段を操作することにより,いずれかの許容段階を選択して設定する許容段階設定手段とを備え」に相当する構成を実質的に具備する。
(6)「所定の領域内(例えば0?16383)で発生した乱数を引き込んで抽出して抽出乱数データとする乱数発生手段」について
甲1発明の「所定の領域内(例えば0?16383)で発生した乱数」は本件訂正発明1の「所定の範囲内において更新される数値データ」に相当するが,このような乱数が所定のタイミングで更新されることはスロットマシンにおける常識であって,甲1発明において,ゲーム毎に抽出した抽出乱数データを何れかの領域に入力して一時的に記憶していることはマイクロコンピュータに関する常識から自明であり,その領域で判定を行うのでその領域を判定領域と呼称することができる。そして,このような数値データの入力は,抽出乱数データが入賞判定の抽選に用いられるものであるから,このような数値データの入力は入賞判定の抽選すなわち事前決定手段により決定を行う前に行われるものであって,このような制御を行う手段を,数値データ入力手段ということができるとともに,遊技の進行を制御するCPUが行っていることは自明である。
そうすると,甲1発明は,本件訂正発明1の「前記遊技制御用マイクロコンピュータは,前記事前決定手段により決定を行う前に,所定のタイミングで所定の範囲内において更新される数値データを,ゲーム毎に判定用数値データとして前記遊技制御用マイクロコンピュータが備える判定領域に入力する数値データ入力手段とを備え,」に相当する構成を実質的に具備する。
(7)「抽出乱数データと,入賞判定テーブルから特定のメダル投入枚数及び設定値における全ての入賞項目の抽選確率データを取得して作成した,各入賞項目の入賞領域からなる入賞判定領域データとを照合し,特定の入賞項目に該当している場合には,その入賞項目の入賞フラグを成立させる判定手段」,「共通フラグは,メダル投入枚数,設定値及び入賞項目により区分される抽選確率データが,共通データである場合に共通フラグの数値を「1」とし,抽選確率データが個別データである場合には共通フラグの数値を「0」としたもの」及び「抽選確率データの取得に際しては,メダル投入枚数,設定値及び入賞項目により区分される共通フラグデータテーブル147から共通フラグを取得し,その数値が「1」の場合は,共通データテーブル146から共通データを取得し,また,共通フラグの数値が「0」の場合は,個別データテーブル145から個別データを取得する」について
(7-1)甲1発明では,入賞判定テーブルから特定のメダル投入枚数及び設定値における全ての入賞項目の抽選確率データを取得して入賞判定領域データを作成し,抽出乱数データが入賞判定領域データの特定の入賞項目に該当していれば入賞フラグを成立させるものであるから,「抽選確率データ」は本件訂正発明1の「判定値データ」に相当するものであり,甲1発明は当然それを記憶する手段を有するとともに,当該手段は遊技の進行を制御するCPUが備えることは自明である。
そうすると,甲1発明は,本件訂正発明1の「前記遊技制御用マイクロコンピュータは,前記判定領域に入力された判定用数値データに対して前記事前決定手段が導出を許容する旨を決定することとなる判定値の数を示す判定値データを記憶する手段とを備え」に相当する構成を実質的に具備する。
(7-2)甲1発明の「共通フラグ」は,メダル投入枚数,設定値及び入賞項目により区分される抽選確率データが共通データである場合に共通フラグの数値を「1」とするものであるから,複数種類の許容段階に共通して判定値データが記憶されているか複数種類の許容段階の種類に応じて個別に判定値データが記憶されているかを区別するためのものである点において,本件訂正発明1の「共通フラグ」に相当する。そして,共通フラグは個別データ及び共通データとともに遊技用入賞テーブルに属するものであるから,判定値データを記憶する手段である判定値データ記憶手段が記憶するものといえる。
そうすると,甲1発明と本件訂正発明1は,「前記遊技制御用マイクロコンピュータは,前記複数種類の許容段階に共通して判定値データが記憶されているか該許容段階の種類に応じて個別に判定値データが記憶されているかを区別するための共通フラグを,記憶する判定値データ記憶手段とを備え」た点で共通している。
(7-3)甲1発明において,判定手段は,抽選確率データを取得する際には,共通フラグデータテーブル147から共通フラグを取得し,その数値が「1」の場合は,共通データテーブル146から抽選確率データである共通データを取得し,また,共通フラグの数値が「0」の場合は,個別データテーブル145から抽選確率データである個別データを取得し,当該抽選確率データによって,入賞判定領域データを作成するものであり,その抽選確率データの取得は入賞項目毎に行われるから,判定値データを入賞表示結果の種類毎に共通フラグに従って読み出しているものといえる。そして,判定して決定するのであるから,判定手段が上記(4)で検討した事前決定手段の一部であることは自明である。
そうすると,甲1発明と本件訂正発明は,「前記事前決定手段は,前記許容段階設定手段により設定された許容段階に対応して前記判定値データ記憶手段に記憶された判定値データを入賞表示結果の種類毎に前記共通フラグに従って読み出し,該読み出した判定値データに応じて,前記判定領域に入力された判定用数値データが前記入賞表示結果の種類毎に導出を許容する旨を示しているか否かを判定する判定手段を備え,該判定手段により導出を許容する旨を示していると判定された種類の入賞表示結果の導出を許容する旨を決定」する点で共通している。
(8)「抽選確率データは,記憶装置の内部に予め記憶されているものであって,個別データと共通データとを備え,入賞判定テーブル141は,個別データを有する個別データテーブル145と共通データを有する共通データテーブル146と共通フラグを有する共通フラグデータテーブル147とを備え,個別データは,メダル投入枚数,設定値及び入賞項目により区分される抽選確率データであって,それぞれ独立した抽選確率データであり,共通データは,メダル投入枚数,設定値及び入賞項目により決定される抽選確率データの出現回数同士が,同一の場合に,それらを一つにまとめた抽選確率データであり」及び入賞項目がチェリーで投入枚数3枚の場合では設定値1?6の抽選確率データが「145」であり,入賞項目がRBで投入枚数3枚の場合では設定値1?6の抽選確率データが「25,27,29,31,35,45」であり,入賞項目がBBで投入枚数3枚の場合では設定値1?4の抽選確率データが「56,59,62,66」,設定値5,6の抽選確率データが「68」であり」について
甲1発明において,抽選確率データは個別データと共通データからなるものであって,入賞項目(入賞表示結果)の一つであるチェリーで投入枚数3枚の場合では設定値1?6の抽選確率データが一つにまとめて「145」となっており,これは「いずれか1種類以上の入賞表示結果について判定値の数を示す判定値データを前記複数種類の許容段階に共通して記憶する」ものといえる。また,入賞項目がRBで投入枚数3枚の場合では設定値1?6の抽選確率データが「25,27,29,31,35,45」であり,入賞項目がBBで投入枚数3枚の場合では設定値1?4の抽選確率データが「56,59,62,66」,設定値5,6の抽選確率データが「68」であり,これは「前記許容段階に共通して判定値データが記憶されていない2種類以上の入賞表示結果について,判定値の数を示す判定値データを,前記許容段階の種類に応じて個別に記憶」するものといえ,また,その判定値の数は入賞項目を一つの単位としてみてその中で異なるものであるから,「前記許容段階の種類に応じて個別に記憶する判定値データとして異なる判定値の数を示す異数判定値データを前記入賞表示結果の種類を単位として記憶する」ものといえる。そして,このようなデータは判定値データ記憶手段が記憶することは自明である。
なお,甲第1号証の記載全体を総合すると,表2の抽選確率データは完成したスロットマシンにおけるものであり,設定値1?6で共通して同じ数が記憶されるものが,完成する前の開発段階でどのような区分で判定値の数が記憶されるのかは不明である。そして,甲1発明において表2の設定値1?6で共通して同じ数が記憶されるものが,開発段階において,共通して同じ数が記憶されているものかは不明で,「該調整を前記許容段階の種類毎に行うことが不要」となっているかは不明である。
そうすると,甲1発明と本件訂正発明1とは,「前記遊技制御用マイクロコンピュータは,いずれか1種類以上の入賞表示結果について,判定値の数を示す判定値データを,前記複数種類の許容段階に共通して記憶するとともに,前記許容段階に共通して判定値データが記憶されていない2種類以上の入賞表示結果について,判定値の数を示す判定値データを,前記許容段階の種類に応じて個別に記憶する判定値データ記憶手段とを備え,前記判定値データ記憶手段は,前記許容段階の種類に応じて個別に記憶する判定値データとして異なる判定値の数を示す異数判定値データを前記入賞表示結果の種類を単位として記憶する」という点で共通している。

よって,本件訂正発明1と甲1発明とは
「1ゲームに対して所定数の賭数を設定することによりゲームを開始させることが可能となり,各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示させる可変表示装置に表示結果が導出されることにより1ゲームが終了し,該可変表示装置に導出された表示結果に応じて入賞が発生可能であるとともに,遊技の進行を制御する遊技制御用マイクロコンピュータを備えるスロットマシンにおいて,
前記遊技制御用マイクロコンピュータは,
前記可変表示装置に表示結果が導出される以前に,前記可変表示装置の表示結果として予め定められた複数種類の入賞表示結果をそれぞれ導出させることを許容するか否かを,入賞表示結果の種類毎に決定する事前決定手段と,
前記事前決定手段が入賞表示結果を導出させることを許容する旨を決定する割合が異なる複数種類の許容段階のうちから,いずれかの許容段階を選択して設定する手段であって,前記スロットマシンの内部に設けられた許容段階設定操作手段を操作することにより,いずれかの許容段階を選択して設定する許容段階設定手段と,
前記事前決定手段により決定を行う前に,所定のタイミングで所定の範囲内において更新される数値データを,ゲーム毎に判定用数値データとして前記遊技制御用マイクロコンピュータが備える判定領域に入力する数値データ入力手段と,
前記判定領域に入力された判定用数値データに対して前記事前決定手段が導出を許容する旨を決定することとなる判定値の数を示す判定値データを記憶する手段であって,
いずれか1種類以上の入賞表示結果について,判定値の数を示す判定値データを,前記複数種類の許容段階に共通して記憶するとともに,
前記許容段階に共通して判定値データが記憶されていない2種類以上の入賞表示結果について,判定値の数を示す判定値データを,前記許容段階の種類に応じて個別に記憶し,
さらに,前記複数種類の許容段階に共通して判定値データが記憶されているか該許容段階の種類に応じて個別に判定値データが記憶されているかを区別するための共通フラグを,記憶する判定値データ記憶手段とを備え,
前記事前決定手段は,前記許容段階設定手段により設定された許容段階に対応して前記判定値データ記憶手段に記憶された判定値データを入賞表示結果の種類毎に前記共通フラグに従って読み出し,該読み出した判定値データに応じて,前記判定領域に入力された判定用数値データが前記入賞表示結果の種類毎に導出を許容する旨を示しているか否かを判定する判定手段を備え,該判定手段により導出を許容する旨を示していると判定された種類の入賞表示結果の導出を許容する旨を決定し,
前記判定値データ記憶手段は,前記許容段階の種類に応じて個別に記憶する判定値データとして異なる判定値の数を示す異数判定値データを前記入賞表示結果の種類を単位として記憶する,スロットマシン。」の点で一致し,以下の点で相違している。

[相違点1]
本件訂正発明1は,「事前決定手段により導出の許容が決定される確率の調整を行う」ものであり,判定値データの判定値の数は「調整の結果により確定された」ものであるのに対し,甲1発明ではそのような調整を行うか不明である点。
[相違点2]
いずれか1種類以上の入賞表示結果について,複数種類の許容段階に共通して記憶された判定値データの判定値の数は,本件訂正発明1では「調整を行う際に該調整を前記許容段階の種類毎に行うことが不要とされた」ものであるのに対し,甲1発明ではそのような構成か不明である点。
[相違点3]
共通フラグは,本件訂正発明1では「前記許容段階の種類に応じて区分することなく,入賞表示結果の種類毎に記憶」されたものであるのに対し,甲1発明では設定値により区分すなわち許容段階の種類に応じて区分されたものである点。
[相違点4]
判定値データ記憶手段は,許容段階の種類に応じて個別に記憶する判定値データとして,本件訂正発明1では,異なる判定値の数を示す異数判定値データに加えて,同一の判定値の数を示す同数判定値データを,前記入賞表示結果の種類を単位として記憶するのに対し,甲1発明ではそのような構成でない点。

4.相違点についての検討
各相違点について検討する。

[相違点1]について
周知例として提出された甲第4号証(特開2003-256439号公報)には,開発中の製品のデータと開発完了した製品のデータとを層別することが記載されている。また,各種製品において,設計後製品化するまでの間に試作品を作り,当該試作品について試験,各種改良等を行って不具合の発見,性能の向上を図ることは,例を挙げるまでもなく,一般常識である。
そして,本件特許明細書の段落【0006】【0007】には,従来技術として特許文献1(すなわち甲第1号証)のスロットマシンを挙げ,次に,開発用の機種において確率の調整を行うことが記載されていることや,製品化における上記一般常識を含めて総合判断すると,出願当時の技術水準として,一般にスロットマシンの開発において確率の調整が行われていたといえる。
そうすると,甲1発明においても,かかる調整が行われていると推認される。すなわち,甲第1号証の表1,表2に記載の抽選確率データは,確率の調整がなされた結果を示しているといえる。
仮に,甲1発明において確率の調整が行われていなかったとしても,スロットマシン開発において確率の調整が一般的になされていることや,上記一般常識を考慮すれば,甲1発明においてスロットマシンにとって重要な事項である確率について開発段階で調整を行うことは,当業者にとって容易になし得る事項に過ぎない。
したがって,相違点1に係る「事前決定手段により導出の許容が決定される確率の調整を行う」こと,及び判定値データの判定値の数を「調整の結果により確定された」ものとすることは,両発明における実質的な相違点でないか,あるいは,当業者が甲1発明において容易になし得る事項に過ぎない。
なお,請求人は,甲第6号証,甲第9?11号証を提出して,「遊技機の認定を受ける前の開発段階ではデータの調整等の変更が行われることを前提に,認定後はそれを禁止することを定めているのである。」(平成22年5月26日付け弁駁書12頁16?18行)と主張している。確かに,甲第6号証,甲第9?11号証によれば,遊技機の認定,型式の検定に係る遊技機に関し,改造その他の変更が加えられたときには認定,検定を取り消すこととし,改造その他の変更を禁止していること,開発中は確率の調整を含め改造その他の変更を行うことが可能であることについては認めることができるが,これだけをもってスロットマシンの開発において確率の調整が行われていると理解することはできない。

[相違点2]について
甲第2号証に記載された技術事項について検討すると,甲第2号証の表1?4において,例えば,表1のBB,投入枚数1枚の場合に示されるように,「いずれか1種類以上の入賞表示結果について,判定値の数を示す判定値データを,前記複数種類の許容段階に共通して記憶する」ことが記載されている。
しかし,甲第2号証の記載全体を総合すると,甲第2号証は完成したスロットマシンに関するものであり,表1?4において設定値1?6で共通して同じ数が記憶されるものがあったとしても,それが開発段階でどのような区分で判定値の数が記憶されるのかは不明である。そして,表1?4において設定値1?6で共通して同じ数が記憶されるものが,開発段階において,共通して同じ数が記憶されているかは不明で,「該調整を前記許容段階の種類毎に行うことが不要」となっているかは不明である。
したがって,甲第2号証に記載された技術事項によって,相違点2に係る本件訂正発明1の構成を容易に想到したものとすることはできない。
その他,甲第3?14号証には,相違点2に関する本件訂正発明1の構成とすることが容易であるとすべき記載及び示唆はない。
ここで,甲第1号証に戻るが,甲第1号証の表2に示される判定テーブルでは,役である再遊技について,設置値やメダル投入枚数値にかかわらず,全て同じ抽選確率データ(2245)が与えられている。しかし,この抽選確率データ(2245)が,最初は共通データでなかったが調整により共通データとなったものであるのか,それとも,「調整を行う際に該調整を設定段階の種類毎に行うことが不要」とされたもの(つまり,最初から共通データであり,調整の対象外であったもの)なのかは,明らかでない。
また,一般に,再遊技等の特定の役についての抽選確率データは,調整の対象にしないことが,技術常識であるとまでいえないし,逆に,再遊技等の特定の役についての抽選確率データは,調整後に同じ値になることを条件として調整対象にすることが,普通に行われている可能性を否定することもできない。
そして,甲1発明における抽選確率データである共通データを,「調整を行う際に該調整を設定段階の種類毎に行うことが不要」とされたものとする動機付けを見出すことができない。
したがって,甲1発明において,いずれか1種類以上の入賞表示結果について,複数種類の許容段階に共通して記憶された判定値データの判定値の数を,「調整を行う際に該調整を前記許容段階の種類毎に行うことが不要とされた」ものとすることは,当業者が容易に想到し得たことではない。

[相違点4]について
[相違点3]を検討する前に,[相違点4]を先に検討しておく。
甲1発明において開発段階で確率の調整を行う点については,「[相違点1]について」で検討したとおりであるが,スロットマシンのメダル払い出し率が適当なものとなるように確率の調整を行った結果として,許容段階の種類に応じて個別に記憶する判定値データの判定値の数が,入賞表示結果の種類を単位としてみると,異なる判定値の数(異数判定値データ)になることだけでなく,同一の判定値の数になることも十分想定される。また,それを「同数判定値データ」と表現することに格別の意味はなく,単なる呼称に過ぎない。
しかし,甲1発明では,「同数判定値データ」は,共通データとして扱われるから,「許容段階の種類に応じて個別に記憶する判定値データ」とされることはない。甲1発明で,「許容段階の種類に応じて個別に記憶する判定値データ」とされるのは,個別データである「異数判定値データ」だけである。
弁駁書で,請求人は,甲第1号証の従来技術である表1の判定テーブルを根拠として,「同数判定値データ」を「許容段階の種類に応じて個別に記憶する判定値データ」にすることは容易と主張している。確かに,表1では「同数判定値データ」は「許容段階の種類に応じて個別に記憶する判定値データ」の位置付けである。しかし,甲第1号証は,表1の従来技術では全ての抽選確率データ(判定値データ)が個別データになっており問題があるとして,表2等に示される個別データ,共通データ,共通フラグデータからなる甲1発明をしたものであるから,当業者は明確な理由がない限り従来技術に戻る発想をすることはない。
つまり,本件訂正発明1は,調整不要な役と,設定値等に応じて調整する役を区別して,後者の役については,甲第1号証の従来技術の表1と同様,調整後の数値によらず,共通データ化しないものといえるが,そのような発想を示す証拠は提出されていない。
したがって,甲1発明において,相違点4に係る構成,すなわち,許容段階の種類に応じて個別に記憶する判定値データとして,異なる判定値の数を示す異数判定値データに加えて,同一の判定値の数を示す同数判定値データを,前記入賞表示結果の種類を単位として記憶することは,当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

[相違点3]について
(a)まず,相違点3に係る本件訂正発明1の構成を確認しておくと,文言上は「前記許容段階に共通して判定値データが記憶されているか該許容段階の種類に応じて個別に判定値データが記憶されているかを区別するための共通フラグを,前記許容段階の種類に応じて区分することなく,入賞結果の種類毎に記憶する」というものであるが,このうち,「前記許容段階に共通して判定値データが記憶されている」の「判定値データ」の実体は,本件訂正発明1の他の規定(相違点2に係る規定)によれば,確率の調整を許容段階の種類毎に行うことが不要とされたものである。また,「該許容段階の種類に応じて個別に判定値データが記憶されている」の「判定データ」の実体は,同じく本件訂正発明1の他の規定(相違点4に係る規定等)によれば,許容段階の種類毎に確率の調整がなされたものであって,「前記許容段階の種類に応じて個別に記憶する判定値データとして異なる判定値の数を示す異数判定値データ」と「前記許容段階の種類に応じて個別に記憶する判定値データとして同一の判定値の数を示す同数判定値データ」からなるものである。

(b)次に,甲第12?14号証をみる。
甲第12号証には,「例えば,「Hip-Hip-Hip」と「スイカ-スイカ-スイカ」とを共通フラグ(共通の入賞役)とし,「Hip-Hip-Hip」が揃った場合は高確率抽選テーブルを選択するようにし,」との記載によれば,スロットマシン等の遊技機において,共通の入賞役を設定するために共通のフラグを用いて,それにより高確率抽選テーブル又は低確率抽選テーブルを選択することが記載されている。
甲第13号証には,「遊技状態は図32(a)に示す遊技状態ステータス(GMLVSTS)格納領域を参照することによって判明する。このGMLVSTS格納領域はRAM33中に1バイトのデータとして記憶されている。ビット0?4には遊技状態が記憶されており,データが1にセットされてオンになっている遊技状態がその時の遊技状態である。」との記載によれば,BBゲーム中にRBゲームに入った場合には,「bit0」のRB作動中フラグと「bit1」のBB作動中フラグの両者が共に1となることが記載されている。また,「例えば,GMLVSTSのビット2のデータが1にセットされ,FLGCTRのデータが07Hであれば,遊技状態は一般遊技中で当選フラグはBBになる。従って,その時のデモ抽選テーブルは,デモ抽選テーブル選択テーブルからNo.7のデモ抽選テーブルになる。」との記載によれば,図32(a)に示された「bit0」から「bit4」に示されたデータ(フラグ),及び図32(b)に示されたデータ(フラグ)の組み合わせにより,デモ抽選テーブルを選択していることが記載されている。
甲第14号証には,「当たり要求フラグは,RAM66中に確保された1バイトの当たり要求フラグ格納領域に,図21(b)に示すように記憶されている。例えば,この記憶領域のビット8に1が立っているときは当たり要求フラグが「RB」であることを意味し,ビット7に1が立っているときは当たり要求フラグが「スイカ・ベル」であることを意味している。「RB」の当たり要求フラグは他の当たり要求フラグと同時に2種類のものが立つことがある。つまり,RB当たり要求フラグが立った場合には,この当たり要求フラグは,その回の遊技で「RB」に対応するシンボル組合せが各リール2?4に停止表示されないと,次回の遊技にも持ち越される。このため,「RB内部当たり中」の次回の遊技のときに,入賞態様決定手段によって小当たり入賞態様が決定されれば,小当たり入賞の当たり要求フラグが立つ。よって,「RB」の当たり要求フラグと,小当たり入賞の当たり要求フラグとが同時に立つことになる。」との記載によれば,要求フラグの組み合わせにより,内部当選した入賞態様を識別することが記載されている。
そして,上記甲第12?14号証によれば,スロットマシンにおいて,特定の条件の時にフラグをセットし,当該フラグを用いて遊技の制御を行うことは,従来周知であったとは認められる。しかし,甲第12?14号証のフラグは,「フラグ」である点で本件訂正発明1の「共通フラグ」と共通するものの,いずれも「前記複数種類の許容段階に共通して判定値データが記憶されているか該許容段階の種類に応じて個別に判定値データが記憶されているかを区別するための」ものではなく,「前記許容段階の種類に応じて区分することなく,入賞表示結果の種類毎に記憶する」ものではないから,本件訂正発明1の「共通フラグ」に相当するものでない。
したがって,甲1発明に上記周知技術を適用しても,「前記許容段階の種類に応じて区分することなく,入賞表示結果の種類毎に記憶」するという,相違点3に係る本件訂正発明の構成となることはなく,相違点3に係る本件訂正発明1の構成を容易に想到したものとすることはできない。
その他,甲第2?11号証には,相違点3に係る本件訂正発明1の構成とすることが容易であるとすべき記載または示唆がない。

(c)また,請求人は,弁駁書で次のように主張する。
『甲1の段落0014には,次の記載がある。なお,下線は請求人が付したものである。
・「本発明によれば,入賞判定テーブル(140)の抽選確率データは,メダル投入枚数,設定値及び入賞項目により区分される個別データのみならず,メダル投入枚数,設定値及び入賞項目により決定される値が同一の場合に,それらを一つにまとめた共通データを備えている。このため,入賞判定テーブル(140)の抽選確率データが,メダル投入枚数,設定値及び入賞項目により独立して区分される個別データのみから形成されるような場合と比較して,予め記憶させておかなければならない抽選確率データの合計の数を減らすことができ,抽選確率データを圧縮することができる。これにより,入賞判定テーブル(140)の抽選確率データを記憶させておくために必要な記憶容量を小さなものにすることができ,内部記憶装置の記憶容量を節約することができる。」(段落0014)』
『甲1には,共通フラグを共通化して記憶することについては何も記載されていないが,その理由は,共通フラグは,抽選確率データと比較して,データ量がはるかに小さく,共通化して記憶することによって生ずる作業負担に見合うだけの記憶容量の節約効果がないからである。
しかし,仮に共通フラグのデータ量が増大し,コスト的に有利である場合には,当業者には,データを共通化して記憶容量を節約することの一般的な動機付けは存在するのである。』
これについて検討すると,甲第1号証には,記憶容量の節約の観点から,抽選確率データを共通化して記憶することが記載されているが,共通フラグを共通化して入賞表示結果の種類毎に記憶することについては記載がない。 それでも,当業者ならば,甲第1号証の抽選確率データを共通化して記憶するとの記載から,一般にデータを共通化して記憶する発想を得るかもしれない。
そして,具体的に,当業者ならば,甲第1号証の共通フラグデータテーブル147(投入枚数3段階,設定値6段階,入賞項目6種類の合計108個の区分に個別の共通フラグがそれぞれ設定されていた)について,個別の共通フラグを基にしてさらにデータの共通化を図ることを発想するかもしれない。その際,当業者が,入賞項目を単位として設定値全体に共通するデータを調べ,これに共通フラグ「1」を設定することを考えた場合に,本件訂正発明1の「前記許容段階の種類に応じて個別に記憶する判定値データとして同一の判定値の数を示す同数判定値データ」(相違点4に係る本件訂正発明1の構成)が仮に存在したら,この同数判定値データに対して,当業者は,本件訂正発明1とは異なる設定である,共通フラグ「1」の設定を発想するであろう。何故なら,本件訂正発明1では,「前記許容段階に共通して判定値データが記憶されている」の「判定値データ」(確率の調整を許容段階の種類毎に行うことが不要とされたもの)と,「前記許容段階の種類に応じて個別に記憶する判定値データとして同一の判定値の数を示す同数判定値データ」とは,異なる共通フラグが設定されるものであるが,甲第1号証では,これら2種の判定値データは区別されないから,上記の例では,同じ共通フラグ「1」が設定されることになり,相違点3に係る本件訂正発明1の構成にはならないのである。
また,そもそも,相違点3に係る本件訂正発明1の構成事項の実体は,上記(a)で確認したとおり,相違点2,4に係る構成が前提とされるところ,相違点2,4に係る構成の採用が困難である以上,相違点3の容易想到性がいえるはずもない。また,仮に相違点2,4の容易想到性が論理付けられたとしても,相違点2,4に係る構成が容易想到であることを論理付けた上で,さらに相違点3に係る構成が容易想到であることを論理付けることになるが,これでは無理やり進歩性を否定するものとなってしまい,不適当である。
要するに,本件訂正発明1は,調整不要な役については共通フラグ「1」を付与し,設定値等に応じて調整する役については共通フラグ「0」を付与するものといえるが,そのような発想を示す証拠は提出されていない。
よって,請求人の主張を採用することができない。

(d)したがって,甲1発明において,相違点3に係る本件訂正発明1の構成を採用することは,当業者が容易に想到し得たことではない。

5.小括
以上によれば,[相違点2][相違点3][相違点4]について容易想到とすることができないから,本件訂正発明1は,甲1発明及び甲第2?14号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に想到できたものとすることはできず,本件訂正発明1の本件特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでない。
また,本件訂正発明2,3は,本件訂正発明1に限定を付したものであるから,限定を付した事項を検討するまでもなく,当業者が容易に想到できたものとすることはできず,本件訂正発明2,3の本件特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでない。
したがって,無効理由1は理由がない。


第6.むすび
以上のとおりであるから,本件特許は,無効理由1に理由がないから,請求人の主張及び証拠方法によっては,無効とすることができない。
審判に関する費用については,特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により,全額を請求人が負担すべきものとする。 よって,結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
スロットマシン
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロットマシンに関し、特に入賞表示結果の導出を許容するか否かの決定(いわゆる内部抽選)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スロットマシンは、一般に、外周部に識別情報としての複数種類の図柄が描かれた複数(通常は3つ)のリールを有する可変表示装置を備えており、各リールは、遊技者がスタートレバーを操作することにより回転を開始し、また、遊技者が各リールに対応して設けられた停止ボタンを操作することにより、その操作タイミングから予め定められた最大遅延時間の範囲内で回転を停止する。そして、全てのリールの回転を停止したときに導出された表示態様に従って入賞が発生する。
【0003】
スロットマシン毎に定められた各役の入賞が発生するためには、一般的には、事前(通常はスタートレバー操作時)に行われる内部抽選に当選して当選フラグが設定されていなければならない。内部抽選では、ハードウェアまたはソフトウェアにより定期的に更新される内部抽選用の乱数を抽出し、抽出した乱数の値を、設定値、賭け数及び遊技状態に応じて用意された当選判定用テーブルを比較することによって、遊技状態に応じて定められた各役に当選したかどうかを判定するものとしている。
【0004】
内部抽選における各役の当選確率は、設定値や賭け数によって異なっている場合もあるが、設定値や賭け数が異なっていても同じである場合もある。後者の場合において、全ての役の判定値を設定値や賭け数別に予め当選判定用テーブルに登録しておくとなると、そのデータ量が多くなってしまう。そこで、各役について当選と判定される判定値数を、設定値や賭け数に関わらずに同じであるものは共通化して記憶しておくものとしたスロットマシンが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特許第3474804号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のスロットマシンでは、設定値や賭け数に関わらずに判定値数が同じである場合には、必ず共通化して登録しているものとしている。これに対して、スロットマシンを開発する場合においては、各役の当選確率を設定値や賭け数に応じて各役の当選と判定される判定値数を微妙に調整しながらシミュレーションを行い、その結果に基づいてメダルの払い出し率が適切な範囲となるものを最終的な判定値数として決めるものとしている。
【0007】
ここで判定値数を調整しながらシミュレーションを行ったものの、その結果として決められた最終的な判定値数が設定値及び賭け数に関わらずに同一となる場合も生じ得る。このような場合において、特許文献1に記載のスロットマシンのように、設定値や賭け数に関わらずに判定値数が同じであれば共通して登録するものとすると、量産機種では開発用の機種とは、判定値数の記憶方式を変えなければならない。これでは、開発工数を余計に経ることとなってしまい、開発コストの増大を招くものとなってしまっていた。
【0008】
本発明は、入賞表示結果の導出を許容するか否かの決定(いわゆる内部抽選)のために必要な判定値データのデータ量を抑えると共に、量産機種までの開発が容易なスロットマシンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点にかかるスロットマシンは、
1ゲームに対して所定数の賭数を設定することによりゲームを開始させることが可能となり、各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示させる可変表示装置(可変表示装置2)に表示結果が導出されることにより1ゲームが終了し、該可変表示装置に導出された表示結果に応じて入賞が発生可能であるとともに、遊技の進行を制御する遊技制御用マイクロコンピュータ(遊技制御基板101の制御部110)を備えるスロットマシンにおいて、
前記遊技制御用マイクロコンピュータは、
前記可変表示装置に表示結果が導出される以前に、前記可変表示装置の表示結果として予め定められた複数種類の入賞表示結果をそれぞれ導出させることを許容するか否かを、入賞表示結果の種類毎に決定する事前決定手段(ステップS203)と、
前記事前決定手段が入賞表示結果を導出させることを許容する旨を決定する割合が異なる複数種類の許容段階(設定値1?6)のうちから、いずれかの許容段階を選択して設定する手段であって、前記スロットマシンの内部に設けられた許容段階設定操作手段(設定スイッチ91)を操作することにより、いずれかの許容段階を選択して設定する許容段階設定手段と、
前記事前決定手段により決定を行う前に、所定のタイミングで所定の範囲内において更新される数値データを、ゲーム毎に判定用数値データ(内部抽選用の乱数)として前記遊技制御用マイクロコンピュータが備える判定領域に入力する数値データ入力手段(ステップS301)と、
前記判定領域に入力された判定用数値データに対して前記事前決定手段が導出を許容する旨を決定することとなる判定値の数を示す判定値データ(判定値数)を記憶する手段であって、
前記事前決定手段により導出の許容が決定される確率の調整を行う際に該調整を前記許容段階の種類毎に行うことが不要とされたいずれか1種類以上の入賞表示結果について、該調整の結果により確定された判定値の数を示す判定値データを、前記複数種類の許容段階に共通して(設定値についての共通フラグが設定)記憶するとともに、
前記許容段階に共通して判定値データが記憶されていない2種類以上の入賞表示結果について、前記調整の結果により確定された判定値の数を示す判定値データを、前記許容段階の種類に応じて個別に(設定値についての共通フラグが未設定)記憶し、
さらに、前記複数種類の許容段階に共通して判定値データが記憶されているか該許容段階の種類に応じて個別に判定値データが記憶されているかを区別するための共通フラグを、前記許容段階の種類に応じて区分することなく、入賞表示結果の種類毎に記憶する判定値データ記憶手段(図3:遊技状態別テーブル、図4:判定値数の記憶領域)とを備え、
前記事前決定手段は、前記許容段階設定手段により設定された許容段階に対応して前記判定値データ記憶手段に記憶された判定値データを入賞表示結果の種類毎に前記共通フラグに従って読み出し、該読み出した判定値データに応じて、前記判定領域に入力された判定用数値データが前記入賞表示結果の種類毎に導出を許容する旨を示しているか否かを判定する判定手段(ステップS310、S311、S507、S508)を備え、該判定手段により導出を許容する旨を示していると判定された種類の入賞表示結果の導出を許容する旨を決定し、
前記判定値データ記憶手段は、前記許容段階の種類に応じて個別に記憶する判定値データとして異なる判定値の数を示す異数判定値データ(図4(RTまたは通常の遊技状態で3BETのときにおける「ビッグボーナス」など))と、前記許容段階の種類に応じて個別に記憶する判定値データとして同一の判定値の数を示す同数判定値データ(図4(RTまたは通常の遊技状態における「チェリー」など))とを、前記入賞表示結果の種類を単位として記憶する
ことを特徴とする。
【0010】
上記第1の観点にかかるスロットマシンでは、判定値データ記憶手段は、いずれか1種類以上の入賞表示結果について複数種類の許容段階に共通して判定値データを記憶している。このように複数種類の許容段階に共通して判定値データが記憶される1種類以上の入賞表示結果については、判定値データの記憶に必要な記憶容量が少なくて済む。
【0011】
その一方で、判定値データ記憶手段には、他の2種類以上の入賞表示結果について許容段階の種類に応じて個別に判定値データを記憶している。この中には、許容段階の種類に応じて個別に記憶する判定値データとして同一の判定値の数を示す同数判定値データも含まれている。判定値データは、許容段階に応じて事前決定手段が各々の入賞表示結果の導出を許容する旨を決定する確率を決定するものとなるが、開発用の機種においては、この判定値データを微妙に調整しながらシミュレーションを行っていくのが通常である(当初の判定値データを異なるものとしておく場合と、同じものとしておく場合とがあり得る)。そして、シミュレーションの結果で得られた適切な判定値データを量産用の機種に適用するものとしている。
【0012】
ここで、許容段階に応じて判定値データを変化させながらシミュレーションを行った結果として許容段階に関わらずに判定値データが同じものとなったとしても、そのような種類の入賞表示結果は、そのまま許容段階の種類に応じて個別に判定値データを記憶させておけばよい。また、当初は許容段階の種類に応じて個別に同一の判定値を示す同数判定値データとして判定値データを記憶させておいた場合、シミュレーションの結果により当初登録しておいた判定値データのままでよければ、そのまま同数判定値データとして判定値データ記憶手段に記憶させておくことができる。シミュレーションの結果として当初登録しておいた判定値データで問題があったときには、許容段階に応じて判定値データを変化させ、異数判定値データとして判定値データ記憶手段に記憶させることができる。このため、開発用の機種における判定値データの記憶態様を量産用の機種においてそのまま転用することができるので、最初の設計段階から量産用の機種に至るまでの開発を容易に行うことができる。
【0013】
なお、判定値データを許容段階の種類に応じて個別に記憶するとは、必ずしも許容段階の種類の数だけ個別に判定値データを記憶するものだけを意味するものではなく、全ての許容段階の種類に共通して判定値データを記憶するのでなければ、これに含まれるものとなる。例えば、許容段階の種類が6種類(第1段階?第6段階)ある場合、第1?第3段階までは共通、第4?第6段階までは共通といった場合も、判定値データを許容段階の種類に応じて個別に記憶するものとなる。
【0014】
また、複数の遊技状態のうちのいずれかの遊技状態に制御する遊技状態制御手段を備え、遊技状態毎に入賞表示結果の種類が定められている場合には、前記判定手段は、許容段階設定手段により設定された許容段階に対応して前記判定値データ記憶手段に記憶された判定値データに応じて、前記判定領域に入力された判定用数値データが前記遊技状態制御手段により制御されている遊技状態に対して定められた入賞表示結果の種類毎に導出を許容する旨を示しているか否かを判定するものとすることができる。
【0015】
上記第1の観点にかかるスロットマシンにおいて、前記許容段階設定手段により設定可能な複数種類の許容段階は、前記事前決定手段が入賞表示結果を導出させることを許容する割合がその全ての種類において互いに異なっていなければならないというものではなく、一部の種類における前記許容する割合が他の種類における前記許容する割合と異なっていればよい。もっとも、全ての種類において異なっていることを妨げるものではない。
【0016】
上記第1の観点にかかるスロットマシンにおいて、
前記事前決定手段は、前記許容段階設定手段により設定された許容段階に対応して前記判定値データ記憶手段に記憶された判定値データを、入賞表示結果の種類毎に前記共通フラグに従って順次読み出し、該読み出した判定値データを順次前記判定領域に入力された判定用数値データに加算する加算手段(ステップS507)をさらに備えていてもよい。この場合において、
前記判定手段は、前記加算手段の加算結果が前記所定の範囲を越えた(オーバーフローした)か否かを判定し(ステップS508)、該判定の結果により前記所定の範囲を越えると判定されたときの加算を行った判定値データに対応した種類の入賞表示結果の導出を許容する旨を示していると判定するものとすることができる(ステップS508(YES))。
【0017】
ここで、前記判定値データ記憶手段は、前記入賞表示結果の種類毎に、複数種類の許容段階に共通して、または許容段階の種類に応じて個別に判定値データの記憶位置を記憶する第1領域(図3:遊技状態別テーブル)と、該第1領域に記憶された記憶位置に各々の判定値データを記憶する第2領域(図4:判定値数の記憶領域)とを含むものであってもよい。この場合において、
前記事前決定手段は、前記許容段階設定手段により設定された許容段階に対応して前記第1領域に記憶された記憶位置を入賞表示結果の種類毎に読み出し、該読み出した記憶位置に記憶されている判定値データを、前記判定用数値データに順次加算するものとすることができる。
【0018】
この場合には、入賞表示結果の種類毎に判定値データ記憶手段から判定値データを取り出した後、これに判定値用数値データを加算することで、そのまま当該種類の入賞表示結果の導出を許容するか否かを判定することができる。つまり、判定値データに基づいて入賞表示結果毎の判定値を許容判定値登録手段に登録するといった処理が必要ないので、処理効率が高いものとなる。
【0019】
なお、前記事前決定手段は、前記加算手段の代わりに、前記許容段階設定手段により設定された許容段階の種類に対応して前記判定値データ記憶手段に記憶された判定値データを、入賞表示結果の種類毎に順次前記判定領域に入力された判定用数値データから減算する減算手段を備えるものとしてもよい。この場合、
前記判定手段は、前記減算手段の減算結果が前記所定の範囲よりも小さくなったか否かを判定し、該判定の結果により前記所定の範囲よりも小さくなったと判定されたときの減算を行った判定値データに対応した種類の入賞表示結果の導出を許容する旨を示していると判定するものとすることができる。
【0020】
上記第1の観点にかかるスロットマシンは、
前記事前決定手段により決定を行う前に、前記許容段階設定手段により設定された許容段階に対応して前記判定値データ記憶手段に記憶された判定値データに基づいて、前記判定領域に入力された判定用数値データに対して前記事前決定手段が入賞表示結果の種類毎に導出を許容する旨を決定する判定値を、許容判定値登録手段(図5:当選判定用テーブル)に登録する許容判定値登録制御手段(ステップS303?S308)をさらに備えていてもよい。この場合において、
前記判定手段は、前記判定領域に入力された判定用数値データを入賞表示結果の種類毎に前記許容判定値登録手段に登録された判定値と比較し(ステップS310、S311)、該比較の結果により前記判定用数値データと一致する判定値に対応した種類の入賞表示結果の導出を許容する旨を示していると判定するものとすることができる(ステップS311(YES))。
【0021】
上記第1の観点にかかるスロットマシンにおいて、
前記遊技制御用マイクロコンピュータは、前記所定数の賭数として定められた複数種類の賭数段階(1、2、または3)のうちから、ゲーム毎にいずれかの種類の賭数段階の賭数を設定する賭数設定手段(ステップS202)をさらに備えていてもよい。この場合において、
前記判定値データ記憶手段は、
前記調整を行う際に該調整を前記許容段階の種類毎に行うことも前記賭数段階の種類毎に行うことも不要とされたいずれか1種類以上の入賞表示結果について、前記判定値データを、前記複数種類の許容段階及び前記複数種類の賭数段階に共通して記憶するとともに、
前記許容段階及び前記賭数段階に共通して判定値データが記憶されていない2種類以上の入賞表示結果について、前記調整の結果により確定された判定値の数を示す判定値データを、前記許容段階及び前記賭数段階の種類に応じて個別に(BET数についての共通フラグが未設定)記憶し、
さらに、前記賭数段階の種類に応じて個別に判定値データが記憶されていることを区別するための共通フラグを、前記賭数段階の種類に応じて区分することなく、入賞表示結果の種類毎に記憶し、
前記判定手段は、前記許容段階設定手段により設定された許容段階及び前記賭数設定手段により設定された賭数段階に対応して前記判定値データ記憶手段に記憶された判定値データを入賞表示結果の種類毎に前記共通フラグに従って読み出し、該読み出した判定値データに応じて、前記判定領域に入力された判定用数値データが前記入賞表示結果の種類毎に導出を許容する旨を示しているか否かを判定することができ、
前記判定値データ記憶手段は、さらに、前記許容段階及び前記賭数段階の種類に応じて個別に記憶する判定値データとして異なる判定値の数を示す第2異数判定値データと、前記許容段階及び前記賭数段階の種類に応じて個別に記憶する判定値データとして同一の判定値の数を示す第2同数判定値データとを、前記入賞表示結果の種類を単位として記憶するものとすることができる(図4(ビッグボーナス、及びRTまたは通常の遊技状態における「スイカ」))。
【0022】
この場合には、設定された賭数段階の種類によっても導出の許容が決定される確率が異なる入賞表示結果もあるが、判定値データ記憶手段は、このような入賞表示結果の判定値データを許容段階及び前記賭数段階の種類に応じて個別に記憶するものとしている。賭数段階の種類に関わらずに導出の許容が決定される入賞表示結果の判定値データは、判定値データ記憶手段において共通化して記憶させればよいので、判定値データ記憶手段に必要な記憶容量が少なくて済む。
【0023】
その一方で、開発用の機種において賭数段階の種類に応じても判定値データを微妙に調整しながらシミュレーションを行っていくのが通常である(当初の判定値データを異なるものとしておく場合と、同じものとしておく場合とがあり得る)。ここで、賭数段階の種類に応じて判定値データを変化させ得るものとした入賞表示結果の判定値データが、シミュレーションを行った後に賭数段階に関わらずに同じものとなったとしても(当初から同じ場合と、当初は異なっていた場合とがあり得る)、そのような種類の入賞表示結果は、そのまま許容段階の種類に応じて個別に判定値データを記憶させておけばよい。このため、開発用の機種における判定値データの記憶態様を量産用の機種においてそのまま転用することができるので、最初の設計段階から量産用の機種に至るまでの開発を容易に行うことができる。
【0024】
なお、この場合においては、前記許容判定値登録制御手段は、前記許容段階設定手段により設定された許容段階の種類及び前記賭数設定手段により設定された賭数の種類に対応して前記判定値データ記憶手段に記憶された判定値データに基づいて、判定値を許容判定値登録手段に登録するものとすることができる。
前記加算手段(減算手段)は、前記許容判定値登録制御手段は、前記許容段階設定手段により設定された許容段階の種類及び前記賭数設定手段により設定された賭数の種類に対応して前記判定値データ記憶手段に記憶された判定値データを、入賞表示結果の種類毎に順次前記判定領域に入力された判定用数値データに加算する(減算する)ものとすることができる。
【0025】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点にかかるスロットマシンは、
1ゲームに対して所定数の賭数を設定することによりゲームを開始させることが可能となり、各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示させる可変表示装置(可変表示装置2)に表示結果が導出されることにより1ゲームが終了し、該可変表示装置に導出された表示結果に応じて入賞が発生可能であるとともに、遊技の進行を制御する遊技制御用マイクロコンピュータ(遊技制御基板101の制御部110)を備えるスロットマシンにおいて、
前記遊技制御用マイクロコンピュータは、
前記所定数の賭数として定められた複数種類の賭数段階(1、2、または3)のうちから、ゲーム毎にいずれかの種類の賭数段階の賭数を設定する賭数設定手段(ステップS202)と、
前記可変表示装置に表示結果が導出される以前に、前記可変表示装置の表示結果として予め定められた複数種類の入賞表示結果をそれぞれ導出させることを許容するか否かを、入賞表示結果の種類毎に決定する事前決定手段(ステップS203)と、
前記事前決定手段により決定を行う前に、所定のタイミングで所定の範囲内において更新される数値データを、ゲーム毎に判定用数値データ(内部抽選用の乱数)として前記遊技制御用マイクロコンピュータが備える判定領域に入力する数値データ入力手段(ステップS301)と、
いずれか1種類以上の入賞表示結果について、前記判定領域に入力された判定用数値データに対して前記事前決定手段が導出を許容する旨を決定することとなる判定値の数を示す判定値データを、前記複数種類の賭数段階に共通して(BET数についての共通フラグが設定)記憶するとともに、
前記賭数段階に共通して判定値データが記憶されていない2種類以上の入賞表示結果について、前記判定領域に入力された判定用数値データに対して前記事前決定手段が導出を許容する旨を決定することとなる判定値の数を示す判定値データを、前記賭数段階の種類に応じて個別に(BET数についての共通フラグが設定)記憶する判定値データ記憶手段(図3:遊技状態別テーブル、図4:判定値数の記憶領域)とを備え、
前記事前決定手段は、前記賭数設定手段により設定された賭数段階に対応して前記判定値データ記憶手段に記憶された判定値データに応じて、前記判定領域に入力された判定用数値データが前記入賞表示結果の種類毎に導出を許容する旨を示しているか否かを判定する判定手段(ステップS310、S311、S507、S508)を備え、該判定手段により導出を許容する旨を示していると判定された種類の入賞表示結果の導出を許容する旨を決定し、
前記判定値データ記憶手段は、前記賭数段階の種類に応じて個別に記憶する判定値データとして異なる判定値の数を示す異数判定値データ(図4(ビッグボーナスにおける「スイカ」など))と、前記賭数段階の種類に応じて個別に記憶する判定値データとして同一の判定値の数を示す同数判定値データ(図4(RTまたは通常の遊技状態で3BETのときにおける「スイカ」など))とを、前記入賞表示結果の種類に応じて記憶する
ことを特徴とする。
【0026】
上記第2の観点にかかるスロットマシンでは、判定値データ記憶手段は、いずれか1種類以上の入賞表示結果について複数種類の賭数段階に共通して判定値データを記憶している。このように複数種類の賭数段階に共通して判定値データが記憶される1種類以上の入賞表示結果については、判定値データの記憶に必要な記憶容量が少なくて済む。
【0027】
その一方で、判定値データ記憶手段には、他の2種類以上の入賞表示結果について賭数段階の種類に応じて個別に判定値データを記憶している。この中には、賭数段階の種類に応じて個別に記憶する判定値データとして同一の判定値の数を示す同数判定値データも含まれている。判定値データは、賭数段階に応じて事前決定手段が各々の入賞表示結果の導出を許容する旨を決定する確率を決定するものとなるが、開発用の機種においては、この判定値データを微妙に調整しながらシミュレーションを行っていくのが通常である(当初の判定値データを異なるものとしておく場合と、同じものとしておく場合とがあり得る)。そして、シミュレーションの結果で得られた適切な判定値データを量産用の機種に適用するものとしている。
【0028】
ここで、賭数段階に応じて判定値データを変化させながらシミュレーションを行った結果として賭数段階に関わらずに判定値データが同じものとなったとしても、そのような種類の入賞表示結果は、そのまま賭数段階の種類に応じて個別に判定値データを記憶させておけばよい。また、当初は賭数段階の種類に応じて個別に同一の判定値を示す同数判定値データとして判定値データを記憶させておいた場合、シミュレーションの結果により当初登録しておいた判定値データのままでよければ、そのまま同数判定値データとして判定値データ記憶手段に記憶させておくことができる。シミュレーションの結果として当初登録しておいた判定値データで問題があったときには、賭数段階に応じて判定値データを変化させ、異数判定値データとして判定値データ記憶手段に記憶させることができる。このため、開発用の機種における判定値データの記憶態様を量産用の機種においてそのまま転用することができるので、最初の設計段階から量産用の機種に至るまでの開発を容易に行うことができる。
【0029】
なお、判定値データを賭数段階の種類に応じて個別に記憶するとは、必ずしも賭数段階の種類の数だけ個別に判定値データを記憶するものだけを意味するものではなく、全ての賭数段階の種類に共通して判定値データを記憶するのでなければ、これに含まれるものとなる。例えば、賭数段階の種類が3種類(1、2または3)ある場合、賭数段階が1と2とでは共通、3では個別といった場合も、判定値データを賭数段階の種類に応じて個別に記憶するものとなる。
【0030】
また、複数の遊技状態のうちのいずれかの遊技状態に制御する遊技状態制御手段を備え、遊技状態毎に入賞表示結果の種類が定められている場合には、前記判定手段は、賭数段階設定手段により設定された賭数段階に対応して前記判定値データ記憶手段に記憶された判定値データに応じて、前記判定領域に入力された判定用数値データが前記遊技状態制御手段により制御されている遊技状態に対して定められた入賞表示結果の種類毎に導出を許容する旨を示しているか否かを判定するものとすることができる。
【0031】
上記第2の観点にかかるスロットマシンにおいて、
前記事前決定手段は、前記賭数設定手段により設定された賭数の種類に対応して前記判定値データ記憶手段に記憶された判定値データを、入賞表示結果の種類毎に順次前記判定領域に入力された判定用数値データに加算する加算手段(ステップS507)をさらに備えていてもよい。この場合において、
前記判定手段は、前記加算手段の加算結果が前記所定の範囲を越えた(オーバーフローした)か否かを判定し(ステップS508)、該判定の結果により前記所定の範囲を越えると判定されたときの加算を行った判定値データに対応した種類の入賞表示結果の導出を許容する旨を示していると判定するものとすることができる(ステップS508(YES))。
【0032】
なお、前記事前決定手段は、前記加算手段の代わりに、前記賭数設定手段により設定された賭数の種類に対応して前記判定値データ記憶手段に記憶された判定値データを、入賞表示結果の種類毎に順次前記判定領域に入力された判定用数値データから減算する減算手段を備えるものとしてもよい。この場合、
前記判定手段は、前記減算手段の減算結果が前記所定の範囲よりも小さくなったか否かを判定し、該判定の結果により前記所定の範囲よりも小さくなったと判定されたときの減算を行った判定値データに対応した種類の入賞表示結果の導出を許容する旨を示していると判定するものとすることができる。
【0033】
上記第2の観点にかかるスロットマシンは、
前記事前決定手段により決定を行う前に、前記賭数設定手段により設定された賭数の種類に対応して前記判定値データ記憶手段に記憶された判定値データに基づいて、前記判定領域に入力された判定用数値データに対して前記事前決定手段が入賞表示結果の種類毎に導出を許容する旨を決定する判定値を、許容判定値登録手段(図5:当選判定用テーブル)に登録する許容判定値登録制御手段(ステップS303?S308)をさらに備えていてもよい。この場合において、
前記判定手段は、前記判定領域に入力された判定用数値データを入賞表示結果の種類毎に前記許容判定値登録手段に登録された判定値と比較し(ステップS310、S311)、該比較の結果により前記判定用数値データと一致する判定値に対応した種類の入賞表示結果の導出を許容する旨を示していると判定するものとすることができる(ステップS311(YES))。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0049】
図1は、この実施の形態にかかるスロットマシンの全体構造を示す正面図である。スロットマシン1の前面扉は、施錠装置19にキーを差し込み、時計回り方向に回動操作することにより開放状態とすることができる。このスロットマシン1の上部前面側には、可変表示装置2が設けられている。可変表示装置2の内部には、3つのリール3L、3C、3Rから構成されるリールユニット3が設けられている。リール3L、3C、3Rは、それぞれリールモータ3ML、3MC、3MR(図2参照)の駆動によって回転/停止させられる。
【0050】
リール3L、3C、3Rの外周部には、それぞれ「赤7」、「青7」、「BAR」、「JAC」、「スイカ」、「チェリー」、「ベル」といった互いに識別可能な複数種類の図柄が所定の順序で、それぞれ21個ずつ描かれている。左のリール3Lにおいては、「赤7」、「青7」、「BAR」が1つずつ等間隔で配置されている。リール3L、3C、3Rの外周部に描かれた図柄は、可変表示装置2において上中下三段に表示される。また、リールユニット3内には、リール3L、3C、3Rのそれぞれに対して、その基準位置を検出するリールセンサ3SL、3SC、3SR(図2参照)と、背面から光を照射するリールランプ3LPとが設けられている。
【0051】
また、可変表示装置2の周囲には、各種表示部が設けられている。可変表示装置2の下側には、ゲーム回数表示部21と、クレジット表示部22と、ペイアウト表示部23とが設けられている。ゲーム回数表示部21は、7セグメント表示器によるゲーム回数表示器51(図2参照)によって構成され、後述するビッグボーナス、レギュラーボーナス、RT時のゲーム数、入賞数、或いは払出メダル総数を表示する。
【0052】
クレジット表示部22は、7セグメント表示器によるクレジット表示器52(図2参照)によって構成され、後述するようにメダルの投入枚数及び払い出し枚数に応じてデータとして蓄積されたクレジットの数を表示する。ペイアウト表示部23は、7セグメント表示器によるペイアウト表示器53(図2参照)によって構成され、入賞が成立した場合に払い出されるメダルの枚数を表示する。
【0053】
可変表示装置2の左側には、1枚賭け表示部24、2枚賭け表示部25、26、及び3枚賭け表示部27、28が設けられている。1枚、2枚、3枚賭け表示部24?28は、賭け数(1、2または3)に応じて有効化されたライン(以下、有効ラインという)に対応してそれぞれ1枚、2枚、3枚賭けランプ54?58(図2参照)が点灯状態となることで、各ゲームにおける有効ラインを遊技者に示す。1枚、2枚、3枚賭け表示部24?28は、また、後述する役への入賞があった場合に1枚、2枚、3枚賭けランプ54?58が点滅状態となることで、後述する役に入賞した有効ラインを遊技者に示す。
【0054】
可変表示装置2の右側には、投入指示表示部29と、スタート表示部30と、ウェイト表示部31と、リプレイ表示部32と、ゲームオーバー表示部33とが設けられている。投入指示表示部29は、投入指示ランプ59(図2参照)が点灯状態となることで、メダルが投入可能なことを示す。スタート表示部30は、スタートランプ60(図2参照)が点灯状態となることで、スタート可能、すなわちスタートレバー11の操作受付可能であることを示す。ウェイト表示部31は、ウェイトランプ61(図2参照)が点灯状態となることで、後述するウェイトがかかっていることを示す。リプレイ表示部32は、リプレイランプ62(図2参照)が点灯状態となることで、後述するリプレイ入賞をしたことを示す。ゲームオーバー表示部33は、ゲームオーバーランプ63(図2参照)が点灯状態となることで、スロットマシン1が打ち止めになったことを示す。
【0055】
可変表示装置2の上側には、液晶表示器4が設けられている。液晶表示器4は、遊技状態に応じた様々な演出用の画像を表示する。また、液晶表示器4には、遊技に直接的または間接的に関わる様々な情報を表示することが可能である。
【0056】
また、可変表示装置2の下方に設けられた台状部分の水平面には、メダル投入口13と、1枚BETボタン14と、MAXBETボタン15と、精算ボタン16とが設けられている。1枚BETボタン14及びMAXBETボタン15には、データとして蓄積されたクレジット(最大50)から賭け数の設定を可能としているときに点灯するBETボタンランプ70a、70b(図2参照)が内部に配されている。
【0057】
メダル投入口13は、遊技者がここからメダルを投入するものであり、投入指示部29が点灯しているときにメダルの投入が投入メダルセンサ44(図2参照)によって検出されると、賭け数が設定され、或いはクレジットがデータとして蓄積される。1枚BETボタン14及びMAXBETボタン15は、データとして蓄積されているクレジットから賭け数(それぞれ1、3)を設定する際に遊技者が操作するボタンであり、遊技者によって操作されたことが1枚BETスイッチ45(図2参照)またはMAXBETスイッチ46(図2参照)によって検出されると、クレジットからの賭け数の設定が行われる。精算ボタン16は、クレジットの払い出しを指示するためのボタンであり、精算スイッチ47(図2参照)によって操作が検出されると、データとして蓄積されたクレジットに応じたメダルが払い出される。
【0058】
その台状部分の垂直面には、スタートレバー11と、停止ボタン12L、12C、12Rとが設けられている。スタートレバー11は、ゲームを開始する際に遊技者が操作するもので、その操作がスタートスイッチ41(図2参照)によって検出されると、リール駆動モータ3ML、3MC、3MRが駆動開始され、リール3L、3C、3Rが回転開始する。
【0059】
停止ボタン12L、12C、12Rは、それぞれ遊技者が所望のタイミングでリール3L、3C、3Rの回転を停止させるべく操作するボタンであり、その操作がストップスイッチ42L、42C、42R(図2参照)で検出されると、リール3L、3C、3Rの回転が停止される。停止ボタン12L、12C、12Rの操作が可能となっていることを、その内部に備えられた操作有効ランプ63L、63C、63R(図2参照)が点灯状態となることにより、遊技者に示す。
【0060】
さらに、停止ボタン12L、12C、12Rを覆うパネルが、ボーナス告知部36として適用されている。ボーナス告知部36は、ボーナス告知ランプ66(図2参照)が点灯状態となることで、後述するボーナス入賞が可能となっていることを遊技者に告知する。また、停止ボタン12Rの右側には、メダルが詰まったときなどにおいてスロットマシン1に機械的に振動を与えるメダル詰まり解消ボタン18が設けられている。
【0061】
スロットマシン1の下部前面側には、メダル払い出し口71と、メダル貯留皿72とが設けられている。メダル払い出し口71は、ホッパー80(図2参照)によって払い出しが行われたメダルを外部に排出するものである。メダル貯留皿72は、払い出されたメダルを貯めておくためのものである。メダル貯留皿72の上の前面パネルには、内部に設置された蛍光灯6(図2参照)が発した光が照射される。
【0062】
スロットマシン1の下部前面側と、上部前面側の左右とには、それぞれ演出手段としてのスピーカ7U、7L、7Rが設けられている。スピーカ7U、7L、7Rは、入賞時及びボーナス突入時の効果音の出力や、異常時における警報音の出力を行うと共に、遊技状態に応じた様々な演出用の音声の出力を行う。
【0063】
さらに、スロットマシン1の前面側には、可変表示装置2及び液晶表示器4の周囲を取り囲むように、演出手段としての遊技効果ランプ75A?75M(図2参照)の発光により光による演出を行う遊技効果表示部5A?5Mが設けられている。遊技効果表示部5A?5Mは、遊技の進行状況に応じた様々なパターンで光による演出を行うものである。なお、遊技効果表示部5A?5Mの発光色は、単色からなるものであっても、複数色からなるものであっても構わない。
【0064】
図2は、このスロットマシン1の制御回路の構成を示す図である。図示するように、このスロットマシン1の制御回路は、電源基板100、遊技制御基板101、演出制御基板102、リール中継基板103、リールランプ中継基板104及び外部出力基板105に大きく分けて構成される。
【0065】
電源基板100は、AC100Vの外部電源電圧を変圧し、遊技制御基板101その他のスロットマシン1の各部に動作電力を供給する。図2では、遊技制御基板101、ホッパー80、各スイッチ91?94にのみ接続されているように示しているが、電源基板100は、他の各部への電力の供給も行っている。電源基板100は、スロットマシン1の内部に設けられ、メダルの払い出し動作を行うホッパーモータ82と、メダルの払い出しを検知する払い出しセンサ81とから構成されるホッパー80に接続されている。
【0066】
電源基板100は、後述する内部抽選への当選確率を設定し、これに基づいて算出されるメダルの払出率の設定値(設定1?設定6)を変更するための設定スイッチ91、設定スイッチ91を操作有効とする設定キースイッチ92、内部状態(RAM112)をリセットする第2リセットスイッチ93、及び電源のON/OFF切り替えを行うメインスイッチ94にもそれぞれ接続されてており、これらのスイッチの検出信号を遊技制御基板101へと送る。これらのスイッチ91?94は、スロットマシン1の内部に設けられている。
【0067】
遊技制御基板101は、スロットマシン1における遊技の進行全体の流れを制御するメイン側の制御基板であり、CPU111、RAM112、ROM113及びI/Oポート114を含む1チップマイクロコンピュータからなる制御部110を搭載している。また、乱数発生回路115、サンプリング回路116その他の回路を搭載している。
【0068】
CPU111は、計時機能、タイマ割り込みなどの割り込み機能(割り込み禁止機能を含む)を備え、ROM113に記憶されたプログラム(後述)を実行して、遊技の進行に関する処理を行うと共に、スロットマシン1内の制御回路の各部を直接的または間接的に制御する。CPU111は、8ビット(1バイト)を1として処理を行うものである。RAM112は、CPU111がプログラムを実行する際のワーク領域として使用される。ROM113は、CPU111が実行するプログラムや固定的なデータを記憶する。I/Oポート114は、遊技制御基板101に接続された各回路との間で制御信号を入出力する。
【0069】
RAM112は、DRAM(Dynamic RAM)が使用されており、記憶しているデータ内容を維持するためのリフレッシュ動作が必要となる。CPU111には、このリフレッシュ動作を行うためのリフレッシュレジスタが設けられている。リフレッシュレジスタは、8ビットからなり、そのうちの下位7ビットがCPU111がROM113から命令をフェッチする度に自動的にインクリメントされるもので、その値の更新は、1命令の実行時間毎に行われる。
【0070】
乱数発生回路115は、後述するように所定数のパルスを発生する度にカウントアップして値を更新するカウンタによって構成され、サンプリング回路116は、乱数発生回路115がカウントしている数値を取得する。乱数発生回路115は、遊技の進行に使用される乱数の種類毎に設けられていて、乱数の種類毎にカウントする数値の範囲が定められている。CPU111は、その処理に応じてサンプリング回路116に指示を送ることで、乱数発生回路115が示している数値を乱数として取得する(以下、この機能をハードウェア乱数機能という)。後述する内部抽選用の乱数は、ハードウェア乱数機能により抽出した乱数をそのまま使用するのではなく、ソフトウェアにより加工して使用するが、その詳細については詳しく説明する。
【0071】
CPU111は、また、タイマ割り込み処理により、RAM112の特定アドレスの数値を更新し、こうして更新された数値を乱数として取得する機能も有する(以下、この機能をソフトウェア乱数機能という)。CPU111は、I/Oポート114を介して演出制御基板102に、各種のコマンドを送信する。これらのコマンドは、それぞれ8ビットで構成される。なお、遊技制御基板101から演出制御基板102へ情報(コマンド)は一方向のみで送られ、演出制御基板102から遊技制御基板101へ向けて情報(コマンド)が送られることはない。
【0072】
遊技制御基板101には、1枚BETスイッチ45、MAXBETスイッチ46、スタートスイッチ41、ストップスイッチ42L、42C、42R、精算スイッチ47、第1リセットスイッチ48、投入メダルセンサ44が接続されており、これらのスイッチ/センサ類の検出信号が入力される。また、リール中継基板103を介して、リールセンサ3SL、3SC、3SRの検出信号が入力される。I/Oポート114を介して入力されるこれらスイッチ/センサ類の検出信号、或いは前述したように電源基板100を介して入力される各種スイッチの検出信号に従って、遊技制御基板101上のCPU111は、処理を行っている。
【0073】
遊技制御基板101には、また、流路切り替えソレノイド49、ゲーム回数表示器51、クレジット表示器52、ペイアウト表示器53、投入指示ランプ59、1枚賭けランプ54、2枚賭けランプ55、56、3枚賭けランプ57、58、ゲームオーバーランプ63、スタートランプ60、リプレイランプ62、BETボタンランプ70a、70b、操作有効ランプ63L、63C、63Rが接続されており、CPU111は、遊技の進行状況に従ってこれらの動作を制御している。
【0074】
また、遊技制御基板101には、リール中継基板103を介してリールモータ3ML、3MC、3MRが接続されている。CPU111は、ROM113内の遊技状態に対応したリール制御テーブルを参照して、リール中継基板103を介してリールモータ3ML、3MC、3MLを制御して、リール3L、3C、3Rを停止させる。
【0075】
演出制御基板102は、スロットマシン1における演出の実行を制御するサブ側の制御基板であり、CPU121、RAM122、ROM123及びI/Oポート124を含む1チップマイクロコンピュータからなる制御部120を搭載している。また、乱数発生回路125及びサンプリング回路126を搭載しており、CPU121は、サンプリング回路126により乱数発生回路125がカウントしている値を取得することにより、遊技制御基板101と同様のハードウェア乱数機能を形成している。割り込み処理によるソフトウェア乱数機能も有している。
【0076】
CPU121は、ROM123に記憶されたプログラム(後述)を実行して、演出の実行に関する処理を行うと共に、演出制御基板102内の各回路及びこれに接続された各回路を制御する。演出の実行は、I/Oポート124を介して遊技制御基板101から受信したコマンドに基づいて行われる。RAM122は、CPU121がプログラムを実行する際のワーク領域として使用される。ROM123は、CPU121が実行するプログラムや固定的なデータを記憶する。RAM112とROM113のアドレスの割り当ては、メーカにおける開発用機種とホールに納入される量産機種とで異なる。I/Oポート124は、演出制御基板102に接続された各回路との間で制御信号を入出力する。
【0077】
演出制御基板102には、遊技効果ランプ75A?75M、液晶表示器4、スピーカ7L、7R、7U、蛍光灯6、ウェイトランプ61、ボーナス告知ランプ66が接続されている。また、リールランプ中継基板104を介してリールランプ3LPが接続されている。演出制御基板102の制御部は、これら各部をそれぞれ制御して、演出を行っている。
【0078】
リール中継基板103は、遊技制御基板101と外部出力基板105及びリールユニット3との間を中継している。リール中継基板103には、また、満タンセンサ90が接続されており、その検出信号が入力される。満タンセンサ90は、スロットマシン1の内部に設けられ、ホッパー80からオーバーフローしたメダルを貯留するオーバーフロータンク内のメダルが満タンになったことを検知するものである。
【0079】
リールランプ中継基板104は、演出制御基板102とリールユニット3との間を中継している。外部出力基板105は、ホールの管理コンピュータなどの外部装置に接続されており、遊技制御基板101からリール中継基板103を介して入力されたビッグボーナス中信号、レギュラーボーナス中信号、RT中信号、リール制御信号、ストップスイッチ信号、メダルIN信号、メダルOUT信号を、当該外部装置に出力する。
【0080】
上記スロットマシン1においては、設定値に応じてメダルの払出率が変わるものであり、後述する内部抽選の当選確率は、設定値に応じて定まるものとなる。以下、設定スイッチ91による設定値の変更操作について説明する。
【0081】
設定値を変更するためには、設定キースイッチ92をON状態としてからメインスイッチ94によりスロットマシン1の電源をONする必要がある。設定キースイッチ92をON状態として電源をONすると、設定値の変更操作が可能となる。設定値の変更操作が可能な期間において、設定スイッチ91が操作されると、設定値が1ずつ更新されていく(設定6からさらに操作されたときは、設定1に戻る)。そして、スタートレバー11が操作されてから設定キースイッチ92がOFFされると、変更後の確定した設定値が設定値の保存領域に記憶される。
【0082】
上記スロットマシン1においては、可変表示装置2の賭け数に応じて設定された有効ライン上に役図柄が揃うと、入賞となる。入賞が発生するためには、当該役の内部当選フラグが設定されている必要があるが、その詳細については後述する。入賞の際には、メダルの払い出しが行われ、また、入賞に伴って遊技状態が変化させられる。以下、これらの入賞と判定される“役”について説明する。
【0083】
通常の遊技状態において、賭け数に応じた有効ライン上に、例えば「BAR」が3つ揃った場合、レギュラーボーナス入賞となり、遊技状態がレギュラーボーナスに移行する。レギュラーボーナスは、レギュラーボーナスゲーム(JACゲーム)と称されるゲームを所定回(例えば、12回)だけ行うこと、または所定回(例えば、8回)だけ入賞する(有効ライン上に「JAC」が揃う:JAC入賞)ことにより終了する。遊技状態がレギュラーボーナスにある間は、レギュラーボーナス中フラグがRAM112に設定される(次に説明するビッグボーナス中に提供された場合を含む)。
【0084】
賭け数に応じた有効ライン上に、例えば「赤7」が3つ揃った場合には、ビッグボーナス入賞となり、遊技状態がビッグボーナスに移行する。ビッグボーナスにおいては、小役ゲームと称されるゲームを行うことができる。この小役ゲームでは、比較的高い確率で有効ライン上に「JAC」が揃い(JACIN入賞)、JACIN入賞すると、前述したレギュラーボーナス(JACゲーム)が提供される。ビッグボーナスは、当該期間において遊技者に払い出したメダルの枚数が規定枚数に達したときに終了する。遊技状態がビッグボーナスにある間は、ビッグボーナス中フラグがRAM112に設定される。
【0085】
賭け数に応じた有効ライン上に、例えば「青7」が3つ揃った場合には、RT入賞となり、遊技状態がRT(Replay Time)に移行する。RTでは、内部抽選におけるリプレイの当選確率が通常の遊技状態よりも高くなるが、他の役の当選確率は通常の遊技状態と変わらない。RTは、所定ゲーム数を消化することによって終了する。遊技状態がRTにある間は、RT中フラグがRAM112に設定される。なお、以下の説明において単に「ボーナス」といった場合は、特に断りがない限り、ビッグボーナス、レギュラーボーナス及びRTを含むものとする。
【0086】
また、レギュラーボーナスゲーム以外のゲームで、有効ライン上に「スイカ」または「ベル」が揃った場合、或いは左のリール3Lについて「チェリー」が現れた場合には、小役入賞となる。ビッグボーナス期間中において提供される小役ゲーム及びレギュラーボーナスゲーム(ビッグボーナス中を含む)を除き、有効ライン上に「JAC」が揃った場合には、リプレイ入賞となる。なお、以下の説明において小役といった場合には、特に断りがない限り、リプレイ、JAC、JACINのボーナス以外の役を全て含むものとする。それ以外の表示態様が可変表示装置2に導出表示された場合には、いずれの役にも入賞しなかったこと、すなわちハズレとなる。
【0087】
以上説明した役への入賞があった場合には、リプレイ入賞であった場合を除いて、それぞれの役に応じた枚数のメダルが払い出される(但し、クレジット数が50に達するまでは、役に応じた数のクレジットがデータとして蓄積され、この場合もメダルと同様に有価価値を払い出したこととなる)。また、メダルの払い出しの枚数は、ベルの小役が8枚、チェリーの小役が2枚である他は、全て15枚である。
【0088】
次に、内部抽選について説明する。内部抽選は、後述する各役への入賞を許容するかどうかを、可変表示装置2の表示結果が導出表示される以前に(実際には、スタートレバー11の操作時)、決定するものであり、ゲーム毎に取得した内部抽選用の乱数(0?16383の整数)、設定スイッチ91により設定された設定値、遊技者が設定した賭け数、及び現在の遊技状態に基づいて生成された当選判定用テーブルを参照することによって、CPU111が行うものである。内部抽選における当選は、排他的なものであり、1ゲームにおいて複数が同時に当選することはない。
【0089】
まず、内部抽選において用いられる当選判定用テーブルについて説明する。この実施の形態にかかるスロットマシン1では、当選判定用テーブルは、設定値、賭け数及び遊技状態別に予め用意されているのではなく、設定値、賭け数及び遊技状態(これらをまとめて遊技状況という)に応じてゲーム毎に生成される。もっとも、役の種類は遊技状態に応じて異なるので、役の種類と、役毎に当選とされる判定値の数を示す判定値数の格納場所を登録した遊技状態別テーブルが予め用意されている。
【0090】
図3は、遊技状態別テーブルの例を示す図である。図3に示す遊技状態別テーブルは、ROM113に予め格納されている。遊技状態別テーブルは、遊技状態に応じて定められている役と、それぞれの役に対応する判定値数の記憶されたアドレスとを登録したテーブルである。判定値数は、その値が256以上のものとなるものもあり、1ワード分では記憶できないので、判定値数毎に2ワード分の記憶領域を用いて登録されるものとなる。
【0091】
また、判定値数は、設定値及び賭け数に関わらずに共通となっているものと、設定値および/または賭け数に応じて異なっているものとがある。判定値数が設定値に関わらずに共通である場合には、設定値についての共通フラグが設定され(値が「1」とされ)、判定値数が賭け数に関わらずに共通である場合には、賭け数(BET数)についての共通フラグが設定される(値が「1」とされる)。設定値及び賭け数の両方に関わらずに判定値数が共通であれば、両方のフラグが設定されるものとなる。
【0092】
図3(a)は、レギュラーボーナス(ビッグボーナス中を含む)の遊技状態にあるときに参照される遊技状態別テーブルを示す。レギュラーボーナスにおいては、内部抽選の対象となる役としてJACのみが登録されている。レギュラーボーナスにおいては、1枚賭けのみが可能となるので、判定値数は、賭け数に関わらずに共通であり、また、この実施の形態にかかるスロットマシン1では、設定値にも関わらずに共通なものとなっている。
【0093】
図3(b)は、ビッグボーナス中の小役ゲームの遊技状態にあるときに参照される遊技状態別テーブルを示す。ビッグボーナスにおいては、内部抽選の対象となる役としてJACIN、「スイカ」の小役、「ベル」の小役、「チェリー」の小役の4種類が登録されている。いずれの役の判定値数も、設定値に関わらず共通なものとなっているが、「スイカ」の小役及び「ベル」の小役については、設定値の違いにより判定値数は変わらないが、賭け数に応じて判定値数が異なっている。
【0094】
図3(c)は、RTの遊技状態にあるときに参照される遊技状態別テーブルを示す。RTにおいては、内部抽選の対象となる役として、ビッグボーナス、レギュラーボーナス、「スイカ」の小役、「ベル」の小役、「チェリー」の小役、リプレイの6種類が登録されている。ビッグボーナス及びレギュラーボーナスについては、設定値及び賭け数に応じて判定値数が異なっている。もっとも、賭け数が1または2の場合には、設定値に関わらず判定値数が共通となっている。
【0095】
「スイカ」の小役及び「ベル」の小役については、設定値の違いにより判定値数は変わらないが、賭け数に応じて判定値数が異なっている。「チェリー」の小役については、賭け数に応じて判定値数は変わらないが、設定値に応じて賭け数が異なっている。リプレイの判定値数は、設定値及び賭け数に関わらずに共通なものとなっている。
【0096】
図3(d)は、通常の遊技状態にあるときに参照される遊技状態別テーブルを示す。通常の遊技状態においては、内部抽選の対象となる役として、ビッグボーナス、レギュラーボーナス、「スイカ」の小役、「ベル」の小役、「チェリー」の小役、リプレイ、RTの7種類が登録されている。ビッグボーナス及びレギュラーボーナスについては、設定値及び賭け数に応じて判定値数が異なっている。もっとも、賭け数が1または2の場合には、設定値に関わらず判定値数が共通となっている。
【0097】
「スイカ」の小役及び「ベル」の小役については、設定値の違いにより判定値数は変わらないが、賭け数に応じて判定値数が異なっている。「チェリー」の小役については、賭け数に応じて判定値数は変わらないが、設定値に応じて賭け数が異なっている。リプレイの判定値数は、設定値及び賭け数に関わらずに共通なものとなっている。RTの判定値数も、設定値及び賭け数に関わらずに共通なものとなっている。
【0098】
なお、遊技状態がRTにあるときは、重ねてRTに当選しないことと、リプレイ当選確率が高くなる以外、内部抽選における他の役の当選確率は、通常の遊技状態の場合と同じである。このため、RTにあるときに参照される遊技状態別テーブルに登録されている判定値数のアドレスは、リプレイを除いて設定値及び賭け数が同じであれば、通常の遊技状態にあるときに参照される遊技状態別テーブルに登録されている判定値数のアドレスと同じになっている。
【0099】
図4は、遊技状態別テーブルに登録されたアドレスに基づいて取得される判定値数の記憶領域を示す図である。この判定値数の記憶領域は、開発用の機種ではRAM112に、量産機種ではROM113に割り当てられたアドレス領域に設けられている。例えばアドレスADDは、レギュラーボーナスの遊技状態別テーブルによりJACの役について参照されるアドレスであるが、ここに格納された判定値数が16375であるので、レギュラーボーナスにあるときにはJACの当選を判定するための判定値数として16375が取得される。
【0100】
また、例えばアドレスADD+32は、通常の遊技状態またはRTで賭け数が3、設定値が6であるときにビッグボーナスについて参照されるアドレスであるが、ここに格納された判定値数が60であるので、通常の遊技状態またはRTで賭け数が3、設定値が6のときにはビッグボーナスの当選を判定するための判定値数として60が取得される。なお、アドレスADD+74、ADD+76は、それぞれRT、通常の遊技状態においてリプレイ当選を判定するための判定値数を格納したアドレスであるが、それぞれに格納された判定値数が5120、2245と異なっていることから、通常の遊技状態におけるリプレイ当選確率とRTにおけるリプレイ当選確率とが異なるものとなる。
【0101】
図5は、設定値、賭け数及び遊技状態に応じて生成される当選判定用テーブルの例を示す図である。図5の当選判定用テーブルは、通常の遊技状態で、賭け数が3、設定値が6の場合に生成されるものを示している。ここでの役の種類は、ビッグボーナス、レギュラーボーナス、「スイカ」の小役、「ベル」の小役、「チェリー」の小役、リプレイ、及びRTであり、それぞれの判定値数として60、30、68、3562、269、2245、16が取得される。
【0102】
取得された判定値数に応じて、それぞれの役に当選したものと判定される判定値が割り当てられる。ここでは、ビッグボーナス、レギュラーボーナス、「スイカ」の小役、「ベル」の小役、「チェリー」の小役、リプレイ、及びRTのそれぞれについて、0?59、60?89、90?157、158?3719、3720?3988、3989?6233、6234?6249が割り当てられる。6250?16383には、内部抽選の結果としてハズレが割り当てられるものとなる。
【0103】
この判定値の割り当てに基づいて算出される各役のおおよその当選確率は、ビッグボーナス、レギュラーボーナス、「スイカ」の小役、「ベル」の小役、「チェリー」の小役、リプレイ、及びRTのそれぞれについて、1/273.1、1/546.1、1/240.9、1/4.6、1/60.9、1/7.3、1/1024.0(小数第2以下四捨五入)となる。なお、当選判定用テーブルは、RAM112の作業領域に記憶されるものとなる。
【0104】
次に、内部抽選用の乱数の取得について、詳しく説明する。内部抽選用の乱数は、ハードウェア乱数機能により乱数発生回路115から乱数を抽出し、これをCPU111がソフトウェアによって加工することによって取得されるものとなる。内部抽選用の乱数を取得するときには、ボーナス告知ランプ66を点灯するか否かを決定する告知決定用の乱数も取得される。なお、乱数発生回路115から抽出した、或いはこれを加工した乱数の最下位ビットを第0ビット、最上位ビットを第15ビットと呼ぶものとする。
【0105】
まず、乱数発生回路115からの乱数の抽出について説明する。図6(a)は、乱数発生回路115の構成を詳細に示すブロック図である。図示するように、乱数発生回路115は、パルス発生回路115aと、下位カウンタ115bと、上位カウンタ115cとから構成されている。下位カウンタ115b及び上位カウンタ115cは、いずれも8ビット(1バイト)のカウンタであり、下位カウンタ115bが第0ビット?第7ビット、上位カウンタ115cが第8ビット?第15ビットの合計で16ビットのデータ信号を出力する。
【0106】
パルス発生回路115aは、CPU111の動作クロックの周波数よりも高く、その整数倍とはならない周波数(互いに素とすることが好ましい)でパルス信号を出力する。パルス発生回路115aの出力するパルス信号が下位カウンタ115bにクロック入力される。
【0107】
下位カウンタ115bは、パルス発生回路115aからパルス信号が入力される度に第0ビットのデータ信号をHレベルとLレベルとで交互に反転させる。正論理を適用するものとすると、Hレベルの論理値が1でLレベルの論理値が0に対応する。負論理の場合は、論理値が1の場合をLレベル、論理値が0の場合をHレベルと読み替えればよい。第0ビットのデータ信号のレベルがHレベルからLレベルに反転するとき、すなわち第0ビットのデータ信号の論理値が1から0に変化する度に第1ビットのデータ信号のレベルをHレベルとLレベルとで交互に反転させる。
【0108】
同様に、第m-1ビットのデータ信号のレベルがHレベルからLレベルに反転するとき、すなわち第m-1ビットのデータ信号の論理値が1から0に変化する度に第mビットのデータ信号のレベルをHレベルとLレベルとで交互に反転させる。また、第7ビットのデータ信号のレベルがHレベルからすなわち第7ビットのデータ信号の論理値が1から0に変化する度に桁上げ信号を出力する。下位カウンタ115bの出力する桁上げ信号が上位カウンタ115cにクロック入力される。
【0109】
上位カウンタ115cは、下位カウンタ115bから桁上げ信号が入力される度に第8ビットのデータ信号をHレベルとLレベルとで交互に反転させる。第8ビットのデータ信号のレベルがHレベルからLレベルに反転する度に第9ビットのデータ信号のレベルをHレベルとLレベルとで交互に反転させる。同様に、第m-1ビットのデータ信号のレベルがHレベルからLレベルに反転する度に第mビットのデータ信号のレベルをHレベルとLレベルとで交互に反転させる。
【0110】
下位カウンタ115bのデータ信号を下位8ビットとし、上位カウンタ115cのデータ信号を上位8ビットとした16ビットのデータ信号の論理値は、パルス発生回路115aがパルス信号を出力する度に、0(0000h)→1(0001h)→2(0002h)→…→65535(FFFFh)と値が更新毎に連続するように更新され、最大値の65535(FFFFh)の次は初期値の0(0000h)へと値が循環して、乱数発生回路115から出力されるものとなる。
【0111】
サンプリング回路116は、ラッチ回路から構成され、CPU111からのサンプリング指令に基づいて、乱数発生回路115からそのときに出力されている16ビットのデータ信号をラッチし、ラッチしたデータ信号を出力する。CPU111は、I/Oポート114を介してサンプリング回路116から入力されたデータ信号に対応した数値データを、乱数発生回路115が発生する乱数として抽出するものとなる。なお、以下では、乱数発生回路115から出力されるデータ信号は、その論理値に応じた乱数として説明するものとする。
【0112】
次に、乱数発生回路115から抽出した乱数のソフトウェアによる加工について説明する。図6(b)は、乱数発生回路115から抽出した乱数をCPU111がソフトウェアにより内部抽選用の乱数に加工するまでの説明図である。乱数発生回路115から抽出された乱数は、CPU111が有する16ビットの汎用レジスタ111GRに格納されるものとなる。
【0113】
乱数発生回路115から抽出された乱数が汎用レジスタ111GRに格納されると、CPU111は、他の汎用レジスタまたはRAM112の作業領域を用いて、汎用レジスタ111GRの下位バイト(下位カウンタ115bから抽出した値)と、上位バイトの値(上位カウンタ115cから抽出した値)とを入れ替える。
【0114】
次に、CPU111は、抽出された乱数に対して上位バイトと下位バイトとが入れ替えられた乱数の値を、8080hと論理積演算をする。CPU111の処理ワードは1バイトなので、実際には上位バイトと下位バイトとについて順次論理積演算を行うものとなる。この論理積演算によって第15ビットと第7ビットは常に1となる。さらに、CPU111は、上位1バイト(第8ビット?第15ビット)までを1ビットずつ下位にシフトし、これによって空いた第15ビットに1を挿入する。
【0115】
CPU111は、このときに汎用レジスタ111GRに格納されている値を、内部抽選用の乱数として取得してRAM112の所定の領域に記憶させ、当選判定用テーブルに登録された各役の判定値(実際には、上限の判定値のみ)と順次比較するものとなる。内部抽選用の乱数の第15ビットと第14ビットは常に1となるので、内部抽選用の乱数は、14ビット(16384)の大きさを有する乱数ということになり、実質的に0?16383の値をとるものとなる。
【0116】
なお、乱数発生回路115からの乱数の抽出から加工を終了するまでの間は、CPU111に対する割り込みが禁止される。CPU111に対して割り込みが発生することによって、当該割り込み処理ルーチンで汎用レジスタ111GRの内容が書き換えられてしまうのを防ぐためである。
【0117】
以下、この実施の形態にかかるスロットマシン1における遊技動作について説明する。なお、以下の説明において“ゲーム”といった場合には、狭義には、スタートレバー11の操作からリール3L、3C、3Rを停止するまでをいうものとする。もっとも、ゲームを行う際には、スタートレバー11の操作前の賭け数の設定や、リール3L、3C、3Rの停止後にメダルの払い出しや遊技状態の移行も行われるので、これらの付随的な処理も広義には“ゲーム”に含まれるものとする。なお、遊技制御基板101から演出制御基板102へのコマンドの送信は、本発明に直接関わるものではないため、説明を省略する。
【0118】
図7は、遊技制御基板101のCPU111が実行する1ゲーム分の処理を示すフローチャートである。この処理は、電源を投入し、所定のブート処理を行った後、または設定スイッチ91の操作により設定変更を行った直後にも実行される。1ゲームの処理が開始すると、まず、RAM112の所定の領域をクリアする処理を含む初期処理が行われる(ステップS201)。
【0119】
次に、1枚BETボタン14またはMAXBETボタン15を操作することにより、或いはメダル投入口13からメダルを投入することにより賭け数を設定し、スタートレバー11を操作することにより当該ゲームの実質的な開始を指示するBET処理を行う(ステップS202)。もっとも、前のゲームでリプレイ入賞していた場合には、リプレイフラグにより前のゲームと同じ賭け数が自動設定される(この段階でリプレイフラグが消去される)ので、そのままスタートレバー11を操作してゲームの開始を指示すればよい。
【0120】
BET処理により賭け数が設定され、スタートレバー11が操作されると、内部抽選用の乱数を抽出し、抽出した乱数の値に基づいて上記した各役への入賞を許容するかどうかを決定する抽選処理を行う(ステップS203)。この抽選処理では、それぞれの抽選結果に基づいて、RAM112に当選フラグが設定される。なお、抽選処理の詳細については後述する。
【0121】
抽選処理が終了すると、次にリール変動開始処理が行われる(ステップS204)。リール変動開始処理では、前回のゲームでのリール3L、3C、3Rの回転開始から1ゲームタイマが計時する時間が所定時間(例えば、4.1秒)が経過していることを条件に、リールモータ3ML、3MC、3MRを駆動させ、左、中、右の全てのリール3L、3C、3Rを回転開始させる。これにより、可変表示装置2において図柄が変動表示される。ここで、前回のゲームでの回転開始から所定時間が経過していない場合、回転開始待ちとなり、ウェイトランプ61を点灯させることによりその旨をウェイト表示部31で報知する。また、次回のゲームのための1ゲームタイマの計時を開始する。
【0122】
その後、リール変動停止処理が行われる(ステップS205)。リール変動停止処理では、リールの回転開始から所定の条件(回転速度が一定速度に達した後、リールセンサ3SL、3SC、3SRにより基準位置を検出すること)が成立した後、停止ボタン12L、12C、12Rを操作有効とし、それぞれ遊技者によって操作されることにより、当選フラグの設定状況に応じて、リールモータ3ML、3MC、3MRを駆動停止させ、リール3L、3C、3Rの回転を停止させる。これとともに、リール停止コマンドを演出制御基板102に送信する。また、所定の条件が成立してからの経過時間が所定時間(例えば、30秒)となったときに、リール3L、3C、3Rの駆動を強制的に停止させる。
【0123】
リール3L、3C、3Rの駆動がそれぞれ停止すると、その停止時における表示態様において、ステップS202のBET処理で設定した賭け数に応じた有効ライン上に上記したいずれかの役図柄が導出表示されたかどうかを判定する入賞判定処理が行われる(ステップS206)。この入賞判定処理でいずれかの役に入賞したと判定されると、遊技制御基板101において発生した入賞に応じた各種の処理(払い出し予定数の設定やボーナスの開始の処理を含む)が行われる。
【0124】
入賞判定処理が終了すると、払出処理が行われる(ステップS207)。払出処理では、入賞判定処理において設定した払い出し予定数だけクレジットを増加させる。但し、データとして蓄積されているクレジットの数が50に達した場合は、ホッパーモータ82を駆動させることにより、超過した枚数のメダルをメダル払い出し口71から払い出させる。また、入賞に関わらない各種の処理(ボーナス当選フラグ以外の当選フラグの消去やボーナスの終了に関する処理を含む)も行われる。そして、1ゲーム分の処理が終了し、次の1ゲーム分の処理が開始する。
【0125】
次に、上記したステップS203の抽選処理について詳しく説明する。図8は、CPU111がステップS203で実行する抽選処理を詳細に示すフローチャートである。抽選処理では、まず、詳細を後述する乱数取得処理を行う。この乱数取得処理においては、乱数発生回路115が発生する乱数に基づいて、内部抽選用の乱数の値が取得されることとなる(ステップS301)。さらに、今回のゲームの遊技状況として、ビッグボーナス中フラグ、レギュラーボーナス中フラグ、またはRT中フラグの設定の有無により区別される現在の遊技状態と、ステップS202のBET処理で設定された賭け数と、現在設定されている設定値とを取得して、RAM112の作業領域に保存する(ステップS302)。
【0126】
次に、現在の遊技状態に応じた遊技状態別テーブルに登録された役について順番に処理対象として、共通フラグの設定状態を参照する(ステップS303)。その結果、設定値とBET数のいずれについても共通フラグが設定されているかどうかを判定する(ステップS304)。いずれについても共通フラグが設定されていれば、遊技状態別テーブルの当該役について登録されているアドレスに格納されている判定値数を取得し、RAM112の作業領域に一時保存する(ステップS305)。そして、ステップS307の処理に進む。
【0127】
一方でも共通フラグが設定されていなければ、当該役についてステップS302で取得した現在の設定値及び賭け数に対応して遊技状態別テーブルに登録されているアドレスに格納されている判定値数を取得し、RAM112の作業領域に一時保存する(ステップS306)。そして、ステップS307の処理に進む。
【0128】
ステップS307では、遊技状態別テーブルに登録された役のうちで未だ処理対象としていない役があるかどうかを判定する。未だ処理対象としていない役があれば、ステップS303の処理に戻り、処理対象を次の役として処理を継続する。処理対象としていない役がなければ、遊技状態テーブルに登録された各役について取得し、RAM112に一時保存した判定値数に基づいて各役に当選となる判定値を割り当て、図5に示したような当選判定用テーブルを生成する(ステップS308)。
【0129】
次に、ステップS308で生成した当選判定用テーブルに登録された役について順番に処理対象として、その上限の判定値を取得する(ステップS309)。取得した上限の判定値を、ステップS301の乱数取得処理で取得した内部抽選用の乱数の値と比較する(ステップS310)。比較の結果、内部抽選用の乱数の値が上限の判定値以下であるかどうかを判定する(ステップS311)。
【0130】
上限の判定値以下であれば、処理対象としている役がビッグボーナス、レギュラーボーナス、またはRTのいずれかであるかを判定する(ステップS312)。いずれかであった場合には、前回以前のゲームにおいて既にRAM112にビッグボーナス当選フラグ、レギュラーボーナス当選フラグ、またはRT当選フラグ(処理対処としている役と異なってもよい)が設定されているかどうかを判定する(ステップS313)。ビッグボーナス当選フラグ、レギュラーボーナス当選フラグ、またはRT当選フラグが設定されていれば、そのまま抽選処理を終了して、図7のフローチャートに復帰する。
【0131】
ステップS312で処理対象としている役がビッグボーナス、レギュラーボーナス、RTのいずれでもなかった場合、或いはステップS313でビッグボーナス当選フラグ、レギュラーボーナス当選フラグ、RT当選フラグのいずれも設定されていなければ、処理対象としている役の当選フラグをRAM112に設定する(ステップS314)。そして、抽選処理を終了して、図7のフローチャートに復帰する。
【0132】
また、ステップS311で内部抽選用の乱数の値が上限の判定値よりも大きいと判定された場合には、当選判定用テーブルに登録された役のうちで未だ処理対象としていない役があるかどうかを判定する(ステップS315)。未だ処理対象としていない役があれば、ステップS309の処理に戻り、処理対象を次の役として処理を継続する。処理対象としていない役がなければ、抽選処理を終了して、図7のフローチャートに復帰する。
【0133】
なお、抽選処理において設定された当選フラグのうちでビッグボーナス当選フラグ、レギュラーボーナス当選フラグ、RT当選フラグは、当該ゲームで入賞すれば消去されるが、そうでなければ次ゲーム以降に持ち越される。小役当選フラグ、リプレイ当選フラグ、JAC当選フラグ、JACIN当選フラグは、当該ゲームで入賞したか否かに関わらず、当該ゲームの終了時に消去される。
【0134】
次に、ステップS301の乱数取得処理について詳しく説明する。図9は、CPU111がステップS301で実行する乱数取得処理を詳細に示すフローチャートである。乱数取得処理では、まず、CPU111に対する割り込みを禁止する(ステップS401)。次に、サンプリング回路116にサンプリング指令を出力し、乱数発生回路115が発生している乱数をラッチさせ、ラッチさせた乱数の値をI/Oポート114から入力して、これを抽出する。乱数発生回路115から抽出された乱数の値は、汎用レジスタ111GRに格納される(ステップS402)。
【0135】
次に、汎用レジスタ111GRに格納された乱数の下位バイトの値と上位バイトの値を、RAM112の作業領域を用いて互いに入れ替える(ステップS403)。次に、汎用レジスタ111GRに格納された乱数の値を8080hと論理積演算する(ステップS404)。さらに上位バイト(第15?第8ビット)を1ビットずつ下位にシフトし、これによって空いた第15ビットに1を挿入する。このときに汎用レジスタ111GRに格納された値が内部抽選用の乱数として取得され、RAM112の所定の領域に保存される(ステップS405)。そして、ステップS401で禁止した割り込みを許可してから(ステップS406)、乱数取得処理を終了して、図8のフローチャートに復帰する。
【0136】
以上のようなゲームの繰り返しにおいて、遊技制御基板101のCPU111は、通常の遊技状態、RT、レギュラーボーナス及びビッグボーナスの間で遊技状態の移行を行っており、遊技の進行状況に応じてコマンドを演出制御基板102に送信している。これに対して、演出制御基板102のCPU121は、遊技制御基板101から受信したコマンドに基づいて、独自の演出を行っている。演出制御基板102のCPU121が行う演出については、本発明と直接の関わりがないため、詳細な説明を省略する。
【0137】
以上説明したように、この実施の形態にかかるスロットマシン1では、遊技状態に応じて定められた各役の当選確率を定める判定値数は、遊技状態別テーブルから参照されるアドレスに格納されている。その格納先のアドレスは、設定値および/または賭け数に応じて異なっている場合もあるが、設定値および/または賭け数に関わらずに当選確率を同一とするものとした役については、格納先のアドレスが共通化しており、すなわち、設定値および/または賭け数に関わらずに判定値数が共通化して格納されるものとなる。このように判定値数を共通化して格納することで、そのために必要な記憶容量が少なくて済むようになる。
【0138】
また、内部抽選の際には、当該ゲームにおける遊技状態に対応した遊技状態別テーブルに登録された各役について、当該ゲームにおける設定値及び賭け数に応じて判定値数を取得して、当該ゲームで適用される当選判定用テーブルを生成するものとしている。そして、生成された当選判定用テーブルに登録された判定値を内部抽選用の乱数と比較して、内部抽選を行うものとなる。
【0139】
ところで、同じ遊技状態の遊技状態別テーブルから同一の役について設定値および/または賭け数に応じて参照される判定値数を格納したアドレスが異なっていても、異なるアドレスにおいて格納されている判定値数は同じ場合がある。つまり、同一の役について設定値および/または賭け数に応じて判定値数が別々に登録されていても、その判定値数は同じという場合がある。
【0140】
一般に開発段階においては、少なくとも一部の役について設定値および/または賭け数に応じて判定値数を調整しながら(すなわち、内部抽選の当選確率を調整しながら)、シミュレーションを行っていくものとしている。当初の判定値数として、設定値および/または賭け数に応じて異なる判定値数を登録しておいたが、シミュレーションにより調整を行った結果として、設定値および/または賭け数が異なる場合の判定値数が同一になる場合もある。当初の判定値数として、設定値および/または賭け数に応じて同一の判定値数を登録しておいたが、シミュレーションの結果により当初から登録してあった判定値数がそのまま用いられる場合もある(シミュレーションの結果により当初とは異なる判定値数すなわち、設定値および/または賭け数に応じて異なる判定値数となる場合もある)。そして、それぞれの場合におけるシミュレーションで適切な結果の得られた判定値数を、量産用の機種に設定する判定値数として選ぶものとしている。
【0141】
ここで、シミュレーションにより調整された判定値数が結果として設定値および/または賭け数に関わらずに同じになったとしても、その開発段階でのアドレス割り当てと同じアドレスの割り当てで判定値数をROM113に記憶して、そのまま量産用の機種とすることができる。このため、量産用の機種において判定値数の格納方法を開発用の機種から変更する必要がなく、最初の設計段階から量産用の機種に移行するまでの開発を容易に行うことができるようになる。
【0142】
また、乱数取得処理によって取得される内部抽選用の乱数は、サンプリング回路116により乱数発生回路115から抽出した乱数をそのまま使用するのではなく、ソフトウェアにより加工してから使用するものとしている。乱数発生回路115は、パルス発生回路115aのパルス信号の周波数で高速に更新して乱数を発生しているが、ソフトウェアにより加工した後の内部抽選用の乱数では、その加工によって更新の周期性が失われるものとなる。
【0143】
これに対して、設定値及び賭け数に応じて遊技状態別テーブルに登録されたアドレスから読み出した判定値数から入賞の役毎に判定値をバラつかせるのは処理効率上よくないので、図5に示したように当選判定用テーブルに登録される各役を当選と判定する判定値は、その値が固まったものとしている。もっとも、この当選判定用テーブルに登録された判定値と比較される内部抽選用の乱数に周期性を失わせ、その値をバラつかせることによって、遊技者による狙い打ちを可能な限り防ぐことができる。
【0144】
しかも、乱数発生回路115のカウンタ115b、115cの値を更新させるためにパルス発生回路115aが発生するパルス信号の周波数は、CPU111の動作クロックの周波数よりも高く、整数倍ともなっていない。このため、乱数発生回路115が発生する乱数の更新が、CPU111が行う処理と同期しにくくなる。しかも、パルス発生回路115aのパルス信号の周波数の方を高くすることで、乱数発生回路115が発生する乱数の更新速度を非常に速いものとすることができる。
【0145】
一方、ソフトウェアによる乱数の加工は、サンプリング回路116により乱数発生回路115から抽出した乱数の上位バイトと下位バイトとを入れ替え、第15、第7ビットをマスクした後、上位バイトをビットシフトするだけでよい。従って、16ビット(実際にはマスクされて14ビット)という比較的大きな乱数であっても、周期性を失わせるために必要な加工の処理に要する負荷がそれほど大きくならず、容易に取得することができる。このように大きな乱数が取得できることで、内部抽選における確率設定を細かく行うことができるようになる。
【0146】
本発明は、上記の実施の形態に限られず、種々の変形、応用が可能である。以下、本発明に適用可能な上記の実施の形態の変形態様について説明する。
【0147】
上記の実施の形態では、判定値数は、設定値1?6の全体に共通して記憶されているか、設定値1?6のそれぞれに対して個別に記憶されているかであった。もっとも、設定値1?6の全体に共通して判定値数が記憶されない(設定値についての共通フラグが設定されない)ものとして、例えば、設定値1?3については判定値数が共通、設定値4?6については判定値数が共通のものとすることもできる。賭け数についての判定値数についても同様で、例えば賭け数1と2については共通、賭け数3では個別とすることもできる。
【0148】
上記の実施の形態では、レギュラーボーナス以外では、1、2、3のいずれかの賭け数を設定してゲームを行うことができるものとなっていた。これに対して、レギュラーボーナスでは1枚賭けでゲームを行うが、それ以外のゲームでは必ず3枚賭けでゲームを行うものとした3枚賭け専用機もある。3枚賭け専用機では、設定値の変更操作がされたときか、遊技状態が変化されたときにしか、内部抽選に用いられる当選判定用テーブルが前のゲームと異なることがない。そこで、1ゲーム毎に遊技状況を取得して当選判定用テーブルを生成するのではなく、設定値の変更操作がなされた後か、遊技状態に変化があったときのゲームにおいてのみ、当選判定用テーブルを生成するものとしてもよい。
【0149】
上記の実施の形態では、判定値数記憶領域は、2バイトの領域を用いて、それぞれの場合における判定値数を記憶するものとしていた。もっとも、一般的なスロットマシンでは、ビッグボーナス、レギュラーボーナス、或いはRTといった役の判定値数は、いずれの遊技状況においても255を超えるものが設定されることはあり得ない。このように255を超える判定値数を設定する必要がないものについては、1バイトの領域だけを用いて、判定値数を記憶するものとしてもよい。
【0150】
上記の実施の形態では、遊技状況に応じた遊技状態別テーブルから判定値数を取得して当選判定用テーブルを生成してから、内部抽選用の乱数を生成した当選判定用テーブルと比較することによって、内部抽選を行うものとしていた。しかしながら、以下のような処理を行うことによって、遊技状況に応じた遊技状態別テーブルから取得した判定値数に基づいて、当選判定用テーブルを生成することなくそのまま、内部抽選を行うものとすることもできる。
【0151】
図10は、ステップS203の抽選処理の変形例を示すフローチャートである。この変形例でも、まず図9に示した乱数取得処理により、乱数発生回路115が発生する乱数に基づいて内部抽選用の乱数を取得する(ステップS501)。さらに、今回のゲームにおける遊技状況(遊技状態、賭け数、設定値)を取得して、RAM112の作業領域に保存する(ステップS502)。
【0152】
次に、現在の遊技状態に応じた遊技状態別テーブルに登録された役について順番に処理対象として、共通フラグの設定状態を参照する(ステップS503)。その結果、設定値とBET数のいずれについても共通フラグが設定されているかどうかを判定する(ステップS504)。いずれについても共通フラグが設定されていれば、遊技状態別テーブルの当該役について登録されているアドレスに格納されている判定値数を取得する(ステップS505)。そして、ステップS507の処理に進む。
【0153】
一方でも共通フラグが設定されていなければ、当該役についてステップS302で取得した現在の設定値及び賭け数に対応して遊技状態別テーブルに登録されているアドレスに格納されている判定値数を取得する(ステップS506)。そして、ステップS507の処理に進む。ステップS507では、ステップS505またはS506で取得した判定値数を内部抽選用の乱数の値に加算し、加算の結果を新たな内部抽選用の乱数の値とする。ここで、判定値数を内部抽選用の乱数の値に加算したときにオーバーフローが生じたかどうかを判定する(ステップS508)。
【0154】
オーバーフローが生じた場合には、処理対象としている役がビッグボーナス、レギュラーボーナス、またはRTのいずれかであるかを判定する(ステップS509)。いずれかであった場合には、前回以前のゲームにおいて既にRAM112にビッグボーナス当選フラグ、レギュラーボーナス当選フラグ、またはRT当選フラグ(処理対処としている役と異なってもよい)が設定されているかどうかを判定する(ステップS510)。ビッグボーナス当選フラグ、レギュラーボーナス当選フラグ、またはRT当選フラグが設定されていれば、そのまま抽選処理を終了して、図7のフローチャートに復帰する。
【0155】
ステップS509で処理対象としている役がビッグボーナス、レギュラーボーナス、RTのいずれでもなかった場合、或いはステップS510でビッグボーナス当選フラグ、レギュラーボーナス当選フラグ、RT当選フラグのいずれも設定されていなければ、処理対象としている役の当選フラグをRAM112に設定する(ステップS511)。そして、抽選処理を終了して、図7のフローチャートに復帰する。
【0156】
また、ステップS508でオーバーフローしていないと判定された場合には、遊技状態別テーブルに登録された役のうちで未だ処理対象としていない役があるかどうかを判定する(ステップS512)。未だ処理対象としていない役があれば、ステップS503の処理に戻り、処理対象を次の役として処理を継続する。処理対象としていない役がなければ、抽選処理を終了して、図7のフローチャートに復帰する。
【0157】
この変形例によれば、取得した内部抽選用の乱数に、遊技状態別テーブルに登録された各役の判定値数を加算していき、その加算の結果がオーバーフローしたか否かによって、それぞれの役の当選の有無を判定することができる。すなわち、実際の当選判定を行う前に、当選判定用テーブルを生成するといった処理が必要なく、抽選処理におけるループ処理が1回で済むようになり、抽選処理全体での処理効率が高いものとなる。
【0158】
なお、ステップS507では取得した判定値数を内部抽選用の乱数の値に加算していたが、取得した判定値数を取得した内部抽選用の乱数の値から減算して、減算の結果を新たな内部抽選用の乱数の値とするものとしてもよい。判定値数を内部抽選用の乱数の値から減算するときには、内部抽選用の乱数の第15ビットと第14ビットとを「0」として、減算の結果にオーバーフローが生じたかどうかを判定するものとすることができる。
【0159】
上記の実施の形態では、ビッグボーナス当選フラグ、レギュラーボーナス当選フラグ或いはRT当選フラグが設定されているか否かに関わらず、遊技状態が通常またはRTにあるときにはビッグボーナス及びレギュラーボーナス(並びにRT(通常の遊技状態にあるとき)の判定値を登録した当選判定用テーブルを生成するものとしていた。図10の変形例でも、ビッグボーナス及びレギュラーボーナス(並びにRT(通常の遊技状態にあるとき)の判定値数を取得して、これらの役の当選の有無を判定するものとしていた。但し、ビッグボーナス当選フラグ、レギュラーボーナス当選フラグ或いはRT当選フラグが設定されているときには、これらの役に当選したものと判定されても、対応する当選フラグを設定しないものとしていた。
【0160】
これに対して、ビッグボーナス当選フラグ、レギュラーボーナス当選フラグ或いはRT当選フラグが既に設定されているときには、これらの役の抽選自体を行わないものとしてもよい。すなわち、ビッグボーナス当選フラグ、レギュラーボーナス当選フラグ或いはRT当選フラグが設定されているときには、これらの役の判定値を登録していない当選判定用テーブルを生成するものとしたり、これらの役に対応した判定値数を内部抽選用の乱数に加算したりしないものとしてもよい。この場合には、内部抽選用の乱数と判定値との大小判定や、判定値数を内部抽選用の乱数に加算した結果のオーバーフロー判定を行う回数が少なくて済むようになる。
【0161】
上記の実施の形態では、通常の遊技状態とRTとで、別々の遊技状態別テーブルが用いられていた。もっとも、通常の遊技状態とRTとで適用される判定値数の異なる役は、リプレイと、RT(通常の遊技状態のみの役である)だけである。このため、通常の遊技状態とRTとで遊技状態別テーブルを共通化し、リプレイとRTについては、設定値と賭け数に応じて判定値数が格納されていることを示す共通フラグと同様の共通フラグを用いて、異なる判定値数が適用させるようにすることができる。
【0162】
上記の実施の形態では、乱数発生回路115から抽出した乱数の上位バイト全体を下位バイトで置換し、下位バイト全体を上位バイトで置換するという入れ替えを行っていた。これに対して、乱数発生回路115から抽出した乱数のビットのうちの特定のビットのデータを他のビットのデータ(但し、マスクされる第7、第15ビット以外)で置換するだけであってもよい。また、乱数発生回路115から抽出した乱数の値を、そのまま内部抽選用の乱数として当選判定用テーブルと比較するものとしてもよい。図10の変形例では、乱数発生回路115から抽出した乱数の値に、順次判定値数を加算していくものとすることができる。さらに、上記の実施の形態とは異なる方法により内部抽選用の乱数に加工するものとしてもよい。
【0163】
図11は、乱数発生回路115から抽出した乱数をCPU111がソフトウェアにより内部抽選用の乱数に加工するまでの処理(ステップS301)の第1の変形例の説明図である。この第1の変形例でも、乱数発生回路115から抽出された乱数は、CPU111が有する16ビットの汎用レジスタ111GRに格納されるものとなる。
【0164】
乱数発生回路115から抽出された乱数が汎用レジスタ111GRに格納されると、CPU111は、さらに内部のリフレッシュレジスタ111Rの値を加工用の乱数として抽出する。CPU111は、汎用レジスタ111GRの上位バイトの値(上位カウンタ115cから抽出した値)にリフレッシュレジスタ111Rから抽出した加工用の乱数を加算する。汎用レジスタ111GRの下位バイトの値(下位カウンタ115bから抽出した値)は、そのままにしておく。
【0165】
次に、CPU111は、汎用レジスタ111GRの値、すなわち上位バイトに加工用の乱数を加算した値を、8080hと論理積演算をする。さらに、CPU111は、上位1バイト(第8ビット?第15ビット)までを1ビットずつ下位にシフトし、これによって空いた第15ビットに1を挿入する。CPU111は、このときに汎用レジスタ111GRに格納されている値を、内部抽選用の乱数として取得し、当選判定用テーブルに登録された判定値と比較するものとなる。
【0166】
図12は、乱数発生回路115から抽出した乱数をCPU111がソフトウェアにより内部抽選用の乱数に加工するまでの処理(ステップS301)の第2の変形例の説明図である。この例でも、乱数発生回路115から抽出された乱数は、CPU111が有する16ビットの汎用レジスタ111GRに格納されるものとなる。
【0167】
乱数発生回路115から抽出された乱数が汎用レジスタ111GRに格納されると、CPU111は、さらに内部のリフレッシュレジスタ111Rの値を加工用の乱数として抽出する。CPU111は、汎用レジスタ111GRの上位バイトの値(上位カウンタ115cから抽出した値)にリフレッシュレジスタ111Rから抽出した加工用の乱数を加算する。また、汎用レジスタ111GRの下位バイトの値(下位カウンタ115bから抽出した値)にもリフレッシュレジスタ111Rから抽出した加工用の乱数を加算する。
【0168】
次に、CPU111は、汎用レジスタ111GRの値、すなわち上位バイト及び下位バイトにそれぞれ加工用の乱数を加算した値を、8080hと論理積演算をする。さらに、CPU111は、上位1バイト(第8ビット?第15ビット)までを1ビットずつ下位にシフトし、これによって空いた第15ビットに1を挿入する。CPU111は、このときに汎用レジスタ111GRに格納されている値を、内部抽選用の乱数として取得し、当選判定用テーブルに登録された判定値と比較するものとなる。
【0169】
以上説明した第1、第2の変形例では、リフレッシュレジスタ111Rの値を加工用の乱数として抽出し、これを乱数発生回路115から抽出した乱数の上位バイト(第2変形例では、さらに下位バイト)に加算して、乱数の加工を行うものとしている。ここで適用した乱数の加工には、少なくとも加工用の乱数を上位バイトに加算する処理を含んでいる。これにより、内部抽選用の乱数のバラツキを大きくすることができ、遊技者による狙い打ちを可能な限り防ぐことができる。
【0170】
また、加工用の乱数をリフレッシュレジスタ111Rから抽出するものとしたことで、加工用の乱数を生成する手段として特別な構成が必要ない。しかも、リフレッシュレジスタ111Rの値は、CPU111の命令フェッチ毎に更新されるもので、その更新間隔は一定しないので、ランダム性の高い乱数を加工用の乱数として抽出することができる。そして、加工用の乱数のランダム性が高いことから、これを用いて生成される内部抽選用の乱数のランダム性も高くなる。
【0171】
なお、上記第1、第2の変形例において、乱数発生回路115から抽出した乱数の上位バイト(及び下位バイト)にリフレッシュレジスタ111Rから抽出した値を加算していたが、リフレッシュレジスタ111R以外でハードウェアまたはソフトウェアにより周期的に更新される値を加算してもよい。また、リフレッシュレジスタ111Rから抽出した値(或いは、リフレッシュレジスタ111Rに代わるものの値)を加算するのではなく、減算や、論理和、論理積などの論理演算を行ってもよい。
【0172】
また、上記の実施の形態で示した上位バイトと下位バイトとの入れ替えのようなビットの置換を、第1、第2の変形例に併用するものとしてもよい。上記第1、第2の変形例においても、乱数発生回路115からの乱数の抽出から加工を終了するまでの間は、汎用レジスタ111GRの内容が書き換えられてしまうのを防ぐため、CPU111に対する割り込みが禁止されるものとなる。
【0173】
また、第2の変形例においては、乱数発生回路115から抽出した乱数の上位バイトと下位バイトにそれぞれ加算する加工用の乱数を、リフレッシュレジスタ111Rから異なるタイミングで別々に抽出してもよい。上位バイトに加算する加工用の乱数を更新する手段と、下位バイトに加算する加工用の乱数を更新する手段とを別々に用意し、それぞれから上位バイト用、下位バイト用の加工用の乱数を抽出する手段を設けるものとしてもよい。この場合において、上位バイト用の加工用の乱数を更新する手段と下位バイト用の加工用の乱数を更新する手段の一方をリフレッシュレジスタ111Rによって構成するものとすることができる。
【0174】
上記の実施の形態では、乱数発生回路115が発生する乱数、すなわちハードウェア乱数機能により抽出した乱数をソフトウェアにより加工する場合に本発明を適用した場合について説明した。しかしながら、上記したソフトウェアによる乱数の加工は、ソフトウェアにより周期的に更新される乱数に適用してもよい。例えば、制御部110を構成するマイクロコンピュータとは第1のマイクロコンピュータにおいてタイマ割り込みなどにより周期的に更新される乱数を、CPU111が第2のマイクロコンピュータに指示を送って抽出させ、I/Oポート114を介してCPU111に入力して、汎用レジスタ111GRに格納するものとすることができる。第2のマイクロコンピュータの機能は、制御部110を構成するマイクロコンピュータに含まれていてもよい。この場合にも、加工後に取得される乱数の値をバラつかせることができるようになり、遊技者による狙い打ちの防止の効果を図ることができる。
【0175】
上記の実施の形態では、可変表示装置2は、外周部に複数の図柄を所定順に配した3つのリール3L、3C、3Rを備えるものとし、これらのリール3L、3C、3Rの回転駆動によって図柄を可変表示させるものとしていた。しかしながら、液晶表示装置などの表示装置上で仮想的に図柄を可変表示させるものを、上記のような可変表示装置2の代わりに用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0176】
【図1】
本発明の実施の形態にかかるスロットマシンの全体構造を示す正面図である。
【図2】
図1のスロットマシンの制御回路の全体構成を示すブロック図である。
【図3】
遊技状態別テーブルの例を示す図である。
【図4】
判定値数の記憶領域の例を示す図である。
【図5】
当選判定用テーブルの例を示す図である。
【図6】
(a)は、乱数発生回路の構成を示すブロック図であり、(b)は、乱数発生回路から抽出した乱数をソフトウェアにより内部抽選用の乱数に加工するまでの説明図である。
【図7】
遊技制御基板内の制御部が、1ゲーム毎に実行する処理を示すフローチャートである。
【図8】
図7の抽選処理を詳細に示すフローチャートである。
【図9】
図8の乱数取得処理を詳細に示すフローチャートである。
【図10】
図7の抽選処理の変形例を示すフローチャートである。
【図11】
乱数発生回路から抽出した乱数をソフトウェアにより内部抽選用の乱数に加工するまでの第1変形例の説明図である。
【図12】
乱数発生回路から抽出した乱数をソフトウェアにより内部抽選用の乱数に加工するまでの第2変形例の説明図である。
【符号の説明】
【0177】
1 スロットマシン
2 可変表示装置
101 遊技制御基板
111 CPU
111R リフレッシュレジスタ
111GR 汎用レジスタ
112 RAM
115 乱数発生回路
116 サンプリング回路
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1ゲームに対して所定数の賭数を設定することによりゲームを開始させることが可能となり、各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示させる可変表示装置に表示結果が導出されることにより1ゲームが終了し、該可変表示装置に導出された表示結果に応じて入賞が発生可能であるとともに、遊技の進行を制御する遊技制御用マイクロコンピュータを備えるスロットマシンにおいて、
前記遊技制御用マイクロコンピュータは、
前記可変表示装置に表示結果が導出される以前に、前記可変表示装置の表示結果として予め定められた複数種類の入賞表示結果をそれぞれ導出させることを許容するか否かを、入賞表示結果の種類毎に決定する事前決定手段と、
前記事前決定手段が入賞表示結果を導出させることを許容する旨を決定する割合が異なる複数種類の許容段階のうちから、いずれかの許容段階を選択して設定する手段であって、前記スロットマシンの内部に設けられた許容段階設定操作手段を操作することにより、いずれかの許容段階を選択して設定する許容段階設定手段と、
前記事前決定手段により決定を行う前に、所定のタイミングで所定の範囲内において更新される数値データを、ゲーム毎に判定用数値データとして前記遊技制御用マイクロコンピュータが備える判定領域に入力する数値データ入力手段と、
前記判定領域に入力された判定用数値データに対して前記事前決定手段が導出を許容する旨を決定することとなる判定値の数を示す判定値データを記憶する手段であって、
前記事前決定手段により導出の許容が決定される確率の調整を行う際に該調整を前記許容段階の種類毎に行うことが不要とされたいずれか1種類以上の入賞表示結果について、該調整の結果により確定された判定値の数を示す判定値データを、前記複数種類の許容段階に共通して記憶するとともに、
前記許容段階に共通して判定値データが記憶されていない2種類以上の入賞表示結果について、前記調整の結果により確定された判定値の数を示す判定値データを、前記許容段階の種類に応じて個別に記憶し、
さらに、前記複数種類の許容段階に共通して判定値データが記憶されているか該許容段階の種類に応じて個別に判定値データが記憶されているかを区別するための共通フラグを、前記許容段階の種類に応じて区分することなく、入賞表示結果の種類毎に記憶する判定値データ記憶手段とを備え、
前記事前決定手段は、前記許容段階設定手段により設定された許容段階に対応して前記判定値データ記憶手段に記憶された判定値データを入賞表示結果の種類毎に前記共通フラグに従って読み出し、該読み出した判定値データに応じて、前記判定領域に入力された判定用数値データが前記入賞表示結果の種類毎に導出を許容する旨を示しているか否かを判定する判定手段を備え、該判定手段により導出を許容する旨を示していると判定された種類の入賞表示結果の導出を許容する旨を決定し、
前記判定値データ記憶手段は、前記許容段階の種類に応じて個別に記憶する判定値データとして異なる判定値の数を示す異数判定値データと、前記許容段階の種類に応じて個別に記憶する判定値データとして同一の判定値の数を示す同数判定値データとを、前記入賞表示結果の種類を単位として記憶する
ことを特徴とするスロットマシン。
【請求項2】
前記事前決定手段は、前記許容段階設定手段により設定された許容段階に対応して前記判定値データ記憶手段に記憶された判定値データを、入賞表示結果の種類毎に前記共通フラグに従って順次読み出し、該読み出した判定値データを順次前記判定領域に入力された判定用数値データに加算する加算手段をさらに備え、
前記判定手段は、前記加算手段の加算結果が前記所定の範囲を越えたか否かを判定し、該判定の結果により前記所定の範囲を越えると判定されたときの加算を行った判定値データに対応した種類の入賞表示結果の導出を許容する旨を示していると判定する
ことを特徴とする請求項1に記載のスロットマシン。
【請求項3】
前記遊技制御用マイクロコンピュータは、前記所定数の賭数として定められた複数種類の賭数段階のうちから、ゲーム毎にいずれかの種類の賭数段階の賭数を設定する賭数設定手段をさらに備え、
前記判定値データ記憶手段は、
前記調整を行う際に該調整を前記許容段階の種類毎に行うことも前記賭数段階の種類毎に行うことも不要とされたいずれか1種類以上の入賞表示結果について、前記判定値データを、前記複数種類の許容段階及び前記複数種類の賭数段階に共通して記憶するとともに、
前記許容段階及び前記賭数段階に共通して判定値データが記憶されていない2種類以上の入賞表示結果について、前記調整の結果により確定された判定値の数を示す判定値データを、前記許容段階及び前記賭数段階の種類に応じて個別に記憶し、
さらに、前記賭数段階の種類に応じて個別に判定値データが記憶されていることを区別するための共通フラグを、前記賭数段階の種類に応じて区分することなく、入賞表示結果の種類毎に記憶し、
前記判定手段は、前記許容段階設定手段により設定された許容段階及び前記賭数設定手段により設定された賭数段階に対応して前記判定値データ記憶手段に記憶された判定値データを入賞表示結果の種類毎に前記共通フラグに従って読み出し、該読み出した判定値データに応じて、前記判定領域に入力された判定用数値データが前記入賞表示結果の種類毎に導出を許容する旨を示しているか否かを判定し、
前記判定値データ記憶手段は、さらに、前記許容段階及び前記賭数段階の種類に応じて個別に記憶する判定値データとして異なる判定値の数を示す第2異数判定値データと、前記許容段階及び前記賭数段階の種類に応じて個別に記憶する判定値データとして同一の判定値の数を示す第2同数判定値データとを、前記入賞表示結果の種類を単位として記憶する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のスロットマシン。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2012-05-11 
結審通知日 2012-05-15 
審決日 2012-06-07 
出願番号 特願2004-216217(P2004-216217)
審決分類 P 1 113・ 121- YA (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 酒井 保  
特許庁審判長 木村 史郎
特許庁審判官 吉村 尚
瀬津 太朗
登録日 2007-05-25 
登録番号 特許第3962041号(P3962041)
発明の名称 スロットマシン  
代理人 深見 久郎  
代理人 塚本 豊  
代理人 中田 雅彦  
代理人 橋本 康重  
代理人 白井 宏紀  
代理人 白井 宏紀  
代理人 森田 俊雄  
代理人 平木 祐輔  
代理人 中田 雅彦  
代理人 関谷 三男  
代理人 深見 久郎  
代理人 塚本 豊  
代理人 森田 俊雄  

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