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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B
管理番号 1261846
審判番号 不服2010-22150  
総通号数 154 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-10-01 
確定日 2012-08-15 
事件の表示 特願2006-500828「OFDMフォワードリンクおよびCDMAリバースリンクを備えた無線通信システムのためのフォワードリンクハンドオフ」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 7月29日国際公開、WO2004/064294、平成18年 8月 3日国内公表、特表2006-518129〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成16年1月7日(パリ条約に基づく優先権主張 2003年1月7日 米国、2003年12月22日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成22年5月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成22年10月1日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、手続補正がなされたものである。


第2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年10月1日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるものである。

「【請求項1】
下記を具備する、フォワードリンクのためのマルチキャリア変調(MCM)およびリバースリンクのためのCDMAを有した無線通信システムにおいて、端末のためのフォワードリンク上でハンドオフを実行する方法:
前記システム内の複数の基地局から前記端末により受信されるパイロットの信号品質を決定する;
前記複数の基地局のために決定された前記信号品質の違いおよび少なくとも1つの基準に基づいて前記フォワードリンクを介した前記端末への次のデータ送信のために特定の基地局を選択する、なお、前記少なくとも1つの基準は、前記システム内の基地局のための前記フォワードリンク上の負荷に関連する;
前記端末で、現在選択されている基地局と前記選択された特定の基地局が異なるなら特定の基地局にハンドオフされる要求を開始する;および
前記端末で開始されるハンドオフと共に基地局で始まるハンドオフを使用する。」


第3.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1(国際公開第02/073831号)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(a)第9頁第1-5行
「In one embodiment, system 350 comprises a subscriber in a mobile communication system while system 351 comprises a base station. Thus, as shown in Figure 3, OFDM is used for downlink. The use of OFDM for downlink may maximize the spectral efficiency and the bit rate. CDMA is used for uplink to substantially avoid the large peak-to-average ratio problem of OFDM and to offer multiple-access flexibility. 」
(当審訳:一実施形態では、システム350は、移動通信システムの加入者より成り、一方、システム351は、ベースステーションより成る。従って、図3に示すように、OFDMは、ダウンリンクに使用される。OFDMをダウンリンクに使用すると、スペクトル効率及びビットレートが最大にされる。CDMAは、OFDMの大きなピーク対平均比の問題を実質的に回避すると共に、マルチアクセス融通性を与えるために、アップリンクに使用される。)

したがって、刊行物1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「システム350が加入者より成り、システム351がベースステーションより成り、スペクトル効率及びビットレートを最大にするために、OFDMをダウンリンクに使用し、OFDMの大きなピーク対平均比の問題を実質的に回避すると共に、マルチアクセス融通性を与えるために、CDMAをアップリンクに使用した移動通信システム。」


第4.本願発明と引用発明の一致点・相違点

引用発明のOFDMは、マルチキャリア変調(MCM)の一種である。したがって、引用発明のダウンリンクのOFDMは、本願発明の「フォワードリンクのためのマルチキャリア変調(MCM)」に相当する。
引用発明のアップリンクのCDMAは、本願発明の「リバースリンクのためのCDMA」に相当する。
引用発明の加入者は、本願発明の「端末」に相当する。
引用発明の移動通信システムは、本願発明の「無線通信システム」に相当する。
一般に移動通信システムでは、1台のベースステーションが担当する地理的範囲が限られているから、引用発明では、加入者が、あるベースステーションが担当する範囲外へ移動すれば、前記ベースステーション以外のベースステーションに、加入者のためのフォワードリンク上及びリバースリンク上でハンドオフしていることは明らかである。

したがって、本願発明と引用発明の一致点・相違点は、次のとおりである。

[一致点]
「フォワードリンクのためのマルチキャリア変調(MCM)およびリバースリンクのためのCDMAを有した無線通信システムにおいて、端末のためのフォワードリンク上でハンドオフを実行する方法。」

[相違点1]
本願発明は、前記システム内の複数の基地局から前記端末により受信されるパイロットの信号品質を決定するのに対して、引用発明は、ハンドオフの詳細については記載されていない点。

[相違点2]
本願発明は、前記複数の基地局のために決定された前記信号品質の違いおよび少なくとも1つの基準に基づいて前記フォワードリンクを介した前記端末への次のデータ送信のために特定の基地局を選択し、前記少なくとも1つの基準は、前記システム内の基地局のための前記フォワードリンク上の負荷に関連するのに対して、引用発明は、ハンドオフの詳細については記載されていない点。

[相違点3]
本願発明では、前記端末で、現在選択されている基地局と前記選択された特定の基地局が異なるなら特定の基地局にハンドオフされる要求を開始するのに対して、引用発明は、ハンドオフの詳細については記載されていない点。

[相違点4]
本願発明では、前記端末で開始されるハンドオフと共に基地局で始まるハンドオフを使用するのに対して、引用発明は、ハンドオフの詳細については記載されていない点。


第5.相違点についての検討

[相違点1について]
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物2(特開2002-300628号公報)の段落番号【0031】-【0033】に、
「【0031】図1及び図10において、移動局MS7がベース局BTS1と通信している時、移動局7はハンドオーバーに備えて、常に周辺セルから送信されているパイロットチャンネルを順次受信し、この受信したパイロットチャンネルのパイロットシンボルから受信レベルと位相情報を測定し、その測定した各受信レベルと移相情報を各周辺セルに対応した受信レベルテーブルと位相情報テーブルとしてメモリに記憶している。
【0032】このとき、ハンドオーバー先のベース局BTS2を含む各周辺ベース局は、それぞれ異なって割り当てられた独自のチャンネルでパイロットチャンネルを生成し、このパイロットチャンネルのパイロットシンボルに自分の通信チャンネルの周波数およびタイムスロットの位相情報を含ませて常時送信している。
【0033】そして、このような状態において、ベース局BTS1とベース局BTS2の受信レベルを判定し、基準以上のレベル差になると移動局MS7でハンドオーバーが起動され、移動局MS7はベース局BTS1にハンドオーバー要求信号を生成し、ハンドオーバー開始要求をベース局BTS1に行う。図2にハンドオーバーの開始と終了の契機を示す。」
と記載されており、「移動局7がハンドオーバーに備えて、常に周辺セルから送信されているパイロットチャンネルを順次受信し、受信レベルを測定すること。」が開示されているから、引用発明において、ハンドオフに備えて、加入者が、複数のベースステーションから送信されているパイロットチャンネルを順次受信し、受信レベルを測定することは、容易に想到できたことである。ここにおいて、パイロットチャンネルの受信レベルを測定することは、本願発明の「パイロットの信号品質を決定する」ことに外ならない。

[相違点2について]
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物3(特開2001-112041号公報)の段落番号【0010】に、
「【0010】図4の例では、ハンドオフ・システムは位置情報を得ることができる。位置情報には、現在とその前の場所56aないし56dを含むことができる。位置情報に、それらの各々の場所56aないし56dの時間、速度、距離および/または方向の他に、サービス中の基地局からのフォワード・チャンネルの信号品質測定値、他の基地局のフォワード・チャンネルの信号品質測定値および/または無線装置からのリバース・チャンネルの信号品質測定値など、場所に対応するあるいは関連する追加情報を持たせることができる。」
と記載(下線は、当審が付した。)され、また段落番号【0012】に、
「別法としては、無線装置52が領域58にある場合、ハンドオフ・システムはMSC59を介して、無線装置52の場所とハンドオフ位置情報に基づいて限定された候補リストにある基地局にロケートを要求することができる。ロケートによる信号品質測定値および/または候補基地局60aと60bの通信負荷および/または他のパラメータあるいは情報に基づいて、ハンドオフ・システムは最適候補を選定することができる。」
と記載(下線は、当審が付した。)されており、「ハンドオフ・システムが、フォワード・チャンネルの信号品質測定値および候補基地局60aと60bの通信負荷に基づいて、ハンドオフ先の基地局の最適候補を選定すること。」が開示されているから、引用発明において、「加入者が複数のベースステーションから送信されているパイロットチャンネルを順次受信し、測定した受信レベル及び候補基地局の通信負荷に基づいて、ハンドオフ先の基地局の最適候補を選定すること。」は、容易に想到できたことである。
なお、候補基地局の通信負荷には、「候補基地局のフォワードリンク上の通信負荷」と「候補基地局のリバースリンク上の通信負荷」とが含まれるから、測定した受信レベル及び候補基地局の通信負荷に基づいて、ハンドオフ先の基地局の最適候補を選定すれば、測定した受信レベル及び候補基地局のフォワードリンク上の通信負荷並びにリバースリンク上の通信負荷に基づいて、ハンドオフ先の基地局の最適候補を選定したことになる。この場合、測定した受信レベル及び候補基地局のフォワードリンク上の通信負荷に基づいて、ハンドオフ先の基地局の最適候補を選定したことに変わりはない。

[相違点3について]
上記「相違点2について」で説明したように、引用発明において、測定した受信レベル及び候補基地局の通信負荷に基づいて、ハンドオフ先の基地局の最適候補を選定したとして、仮に「選定された最適候補のハンドオフ先の基地局」が、「現在接続されている基地局」と同じであれば、ハンドオフを行う必要性が無いことは明らかである。
したがって、相違点3は、上記「相違点2について」で説明した、引用発明において、測定した受信レベル及び候補基地局の通信負荷に基づいて、ハンドオフ先の基地局の最適候補を選定した場合に、自明な事項を記載したものに過ぎない。

[相違点4について]
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物4(国際公開第01/018991号)の第4頁第3-7行に
「For example, the forward channel packet data channels can be determined by the reverse link signal to noise ratio (SNR) which each of the base station transceivers 102-104 obtains from the reverse link signal received from mobile station 108 and the overall interference plus noise power (RSSI) measured.」
(当審訳:例えば、基地局トランシーバ102?104の各々が移動局108から受信されたリバースリンク信号から得られるリバースリンク信号/ノイズ比(SNR)と、測定された全体的干渉+ノイズ出力(RSSI)とによって、フォワードチャネルパケットデータチャネルを決定することが可能である。)
と記載されており、「基地局トランシーバ102?104の各々が移動局108から受信したリバースリンク信号から得られるSNRとRSSIに基づいて、フォワードチャネルパケットデータチャネルを決定すること。」が開示されている。引用発明におけるハンドオフも、「フォワードチャネルパケットデータチャネルを決定する」点については、刊行物4と共通であるから、引用発明において、「ベースステーションの各々が、加入者から受信したリバースリンク信号から得られるSNRとRSSIに基づいて、どのベースステーションをフォワードリンクのハンドオフ先とするか決定すること。」は、容易に想到できたことである。
ここにおいて、「ベースステーションの各々が、加入者から受信したリバースリンク信号から得られるSNRとRSSIに基づいて、どのベースステーションをフォワードリンクのハンドオフ先とするか決定すること。」は、本願発明の「基地局で始まるハンドオフ」に外ならない。

そして、本願発明の作用効果も、刊行物1-4に記載された発明から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明は、刊行物1-4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、審判請求人は、平成23年11月21日付けの回答書において、本願の特許請求の範囲の請求項1を、
「【請求項1】
下記を具備する、フォワードリンクのためのマルチキャリア変調(MCM)およびリバースリンクのためのCDMAを有した無線通信システムにおいて、端末のためのフォワードリンク上でハンドオフを実行する方法:
前記システム内の複数の基地局から前記端末により受信されるパイロットの信号品質を決定する;
前記複数の基地局のために決定された前記信号品質の違いおよび少なくとも1つの基準に基づいて前記フォワードリンクを介した前記端末への次のデータ送信のために特定の基地局を選択する、なお、前記少なくとも1つの基準は、前記システム内の基地局のための前記フォワードリンク上のみの負荷に関連する;
前記端末で、現在選択されている基地局と前記選択された特定の基地局が異なるなら特定の基地局にフォワードリンクのみをハンドオフする要求を開始する;および
前記フォワードリンクの前記端末で開始されるハンドオフと共に前記リバースリンクのソフトハンドオフを使用する。」
と補正する補正案を提示している。(下線は、当審が付した。)

しかし、特表平6-508492号公報の特許請求の範囲の請求項1に、
「1.複数のセルおよび各セルに対して一つの基地局を有するセルラー移動電気通信システムの双方向通信方法において、移動局を伴う双方向接続のダウンリンクに使用される基地局は双方向接続のアップリンクに使用される基地局とは異なることがある双方向通信方法。」と記載され、
また、特表平9-508250号公報の第31頁第24-26行に、
「移動ユニット30がある領域では、フォワードリンク性質が基地局40との間で最良であるが、リバースリンク性能は移動ユニット30が基地局10と通信していた方が良いであろう。」と記載されているように、ダウンリンクは、新しく選択された基地局と接続されるが、アップリンクはこれまでの基地局に接続されたままというハンドオフは周知であるから、「ハンドオフされる要求」を「フォワードリンクのみをハンドオフする要求」と補正しても、そのことにより進歩性が生ずるわけではない。


第6.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1-4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-03-14 
結審通知日 2012-03-21 
審決日 2012-04-04 
出願番号 特願2006-500828(P2006-500828)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲高▼須 甲斐  
特許庁審判長 江口 能弘
特許庁審判官 近藤 聡
安島 智也
発明の名称 OFDMフォワードリンクおよびCDMAリバースリンクを備えた無線通信システムのためのフォワードリンクハンドオフ  
代理人 砂川 克  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 河野 直樹  
代理人 山下 元  
代理人 市原 卓三  
代理人 佐藤 立志  
代理人 村松 貞男  
代理人 竹内 将訓  
代理人 堀内 美保子  
代理人 岡田 貴志  
代理人 幸長 保次郎  
代理人 福原 淑弘  
代理人 河野 哲  
代理人 勝村 紘  
代理人 白根 俊郎  
代理人 中村 誠  
代理人 野河 信久  
代理人 峰 隆司  

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