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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16H
管理番号 1261850
審判番号 不服2011-3235  
総通号数 154 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-02-14 
確定日 2012-08-15 
事件の表示 特願2006-517997「自動車の自動変速機内のギヤブレーキの制御および調整のための方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 1月13日国際公開、WO2005/003601、平成19年 3月22日国内公表、特表2007-506920〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、2004年6月8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2003年7月5日、ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする出願であって、平成22年10月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年2月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2.本願発明の内容

本願の請求項1ないし7に係る発明は、平成22年5月6日付けの手続補正書により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるものと認められ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】
カウンターシャフト変速機として形成される自動変速機のギヤブレーキを制御及び調整するための方法であって、
当該自動変速機は、ギヤ入力軸と、当該ギヤ入力軸によって駆動される少なくとも一つのカウンターシャフトと、ギヤ出力軸と、を備えており、
前記ギヤ入力軸上、前記カウンターシャフト上、および/または、前記ギヤ出力軸上に、可動(遊離)歯車が回転可能に支持され、及び/または、固定歯車が回転しないように配置されており、これらの歯車は少なくとも対になって相互に噛合った状態にあり、
その際、当該可動歯車は、結合装置を使ってギヤの切り換えを行うために、それらのギヤシャフトと滑らずに結合可能であり、
また、前記自動変速機は、ギヤブレーキをも備えており、当該ギヤブレーキで前記カウンターシャフトは制御装置によって、シフトアップ操作の際、カウンターシャフトの回転数が噛合い時点で同期回転数に相当するか、あるいは、所定の間隔まで近づく、というように制御可能であり、
その際、前記ギヤブレーキの停止時点を決定するために、前記カウンターシャフト入力回転数乃至ギヤ入力回転数のブレーキ傾斜度並びにギヤ出力軸回転数の傾斜度が考慮され、
前記ギヤブレーキは、リードタイムを考慮して、決定された停止時点より前に停止される
ことを特徴とする方法。」

3.引用刊行物

原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物及びその記載事項は、次のとおりである。

引用例1:特開2002-130458号公報
引用例2:特開平11-255003号公報

(1)引用例1(特開2002-130458号公報)には、「車両用歯車変速機」に関して、次の事項が図面とともに記載されている。

ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はシンクロレス車両用歯車変速機において、歯車変速機の慣性質量や抵抗、副軸ブレーキの摩擦力変化などによらず、常に最適な時期に、歯車音などが生じない円滑な変速操作が得られるようにした車両用歯車変速機に関するものである。」

イ)「【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明の構成は機関のクランク軸に入力軸を回転結合するクラツチ機構と、前記入力軸と中継歯車を介して連動回転する副軸と、前記入力軸と同軸に配されかつ前記副軸の回転を変速歯車列を介して伝達される主軸と、前記副軸に連結される副軸ブレーキと、該副軸ブレーキの制御と連動するシフトアクチユエータとを有する車両用歯車変速機において、前記副軸に回転数センサを設け、前記副軸の回転数に基づき前記副軸ブレーキの作動時間を可変とすることを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明ではシフトアツプ時の副軸(カウンタシヤフト)の回転減加速度に応じ、上述したa,bの値を変更することにより、歯車変速機の状態に関係なく常に最適な時期に副軸ブレーキとシフトアクチユエータを作動させる。
【0009】副軸ブレーキを作動状態から解除状態へ切り換える時の応答時間や、歯車の噛合せ許可を受けてシフトアクチユエータが実際に歯車を噛み合せるまでの時間は、歯車変速機の状態の影響をあまり受けない。つまり、副軸ブレーキとシフトアクチユエータの作動遅れはほぼ一定と考えられる。したがつて、副軸の回転減加速度が大きい時には、早めに副軸ブレーキを解除してシフトアクチユエータを作動させる一方、副軸の回転減加速度が小さい時には、遅めに副軸ブレーキを解除してシフトアクチユエータを作動させることにより、常に最適な時期に歯車の噛合せを行うことができる。」

ウ)「【0010】
【実施例】図1に示すように、歯車変速機21は機関2のクランク軸3の回転をクラツチ機構4を経て入力軸9へ伝達し、主軸22の回転を自在継手51を介して推進軸52へ伝達するようになつており、推進軸52の回転は公知の差動歯車機構を経て左右の車輪へ伝達される。(以下、省略)
【0011】変速機21は入力歯車31を端部に結合する入力軸9と、入力軸9の端部と変速機ケースの後壁とに軸受により支持した出力軸ないし主軸22と、入力歯車31と常時噛み合う歯車41を結合する中間軸ないし副軸40とを備えている。主軸22には歯車32?38が遊転可能に支持され、歯車32?38は公知のクラツチ23?26により主軸22に回転結合可能に構成される。副軸40には各歯車32?38にそれぞれ噛み合う歯車42?48が結合される。歯車47と歯車37とには後進段の歯車47aが噛み合される。
【0012】各クラツチ23?26は主軸22に結合したクラツチハブ70と、クラツチハブ70を挟む両側の歯車に備えたドグ歯と、クラツチハブ70に係合され、かつ両側の歯車に備えたドグ歯の一方に選択的に噛み合うクラツチスリーブ24a(図2を参照)とから構成される。
【0013】(省略)
【0014】本発明によれば例えば4速段からのシフトアツプ変速操作の際に、クラツチ機構4を遮断してクランク軸3と入力軸9の回転結合を解除し、次いでシフトアクチユエータ66により現在の変速段のクラツチ24を図2に示す中立位置へ戻し、シフトアクチユエータ66により現在の変速段のクラツチ24を中立位置から5速段へシフトアツプ変速操作する時、歯車33(副軸40の回転数により決まる)の回転数を主軸22のクラツチハブ70の回転数に近付けるために、つまり副軸40の回転数を低くするために、副軸40の端部に副軸ブレーキ12が配設される。
【0015】(省略)
【0016】例えば4速段から5速段へのシフトアツプ変速操作に際し、クラツチ機構4の遮断後に全てのクラツチ23?26が中立位置(解除位置)にあること、クラツチハブ70と歯車33との回転差がaよりも大きいことを検出した時、副軸ブレーキ12を作動する。次いで、クラツチハブ70と歯車33の回転差がbになつた時に、シフトアクチユエータ66によりシフトロツド24bを駆動し、クラツチ24のクラツチスリーブ24aをクラツチハブ70と歯車33のドグ歯とに係合する。そして、上述のクラツチ23?26とシフトアクチユエータ66とを制御する際に、図7?9に示すように、aとbの値を歯車変速機21のケースに充填される潤滑油の温度すなわち油温に応じて変更する。
【0017】図4,5に示すように、本発明によればクラツチ機構4の遮断後の副軸40(所望の変速歯車)と主軸22(クラツチハブ70)の各回転数を検出し、副軸40と主軸22との回転差がaよりも大きい場合に副軸ブレーキ12を作動し、副軸40と主軸22との回転差がaになつた時副軸ブレーキ12を解除し、次いで副軸40と主軸22との回転差がbになつた時に、その時の歯車変速機21の油温に応じて歯車の噛合せ許可信号を発生し、シフトアクチユエータ66を駆動するものであるから、副軸40の回転数の変化に基づきシフトアクチユエータ66が適時に駆動され、変速操作による円滑な歯車の噛合いが得られる。
【0018】副軸40の回転減加速度が大きい時(油温が低い時)には、早めに副軸ブレーキ12とシフトアクチユエータ66を作動させれば、歯車の同期時期とシフトアクチユエータ66の作動時期を合せることができる。また、副軸40の回転減加速度が小さい時(油温が高い時)には、遅めに副軸ブレーキ12とシフトアクチユエータ66を作動させれば、歯車の同期時期とシフトアクチユエータ66の作動時期を合せることができる。
【0019】図6は上述の制御をマイクロコンピユータからなる電子制御装置により行うための制御プログラムの流れ図である。図6において、p11?p21は制御プログラムの各ステツプを表す。本制御プログラムは所定時間ごとに繰返し実行する。制御プログラムをp11で開始し、p12でクラツチ機構4が遮断された直後のクラツチハブ70と主軸22との回転差から、シフトアツプ変速操作か否かを判別する。シフトダウン変速操作の場合はp21へ進み、シフトアツプ変速操作の場合は、p13で副軸40の回転減加速度を求める。実際には、副軸40に配設した回転数センサの値を微分して求める。
【0020】p14で図7?9に示す制御マツプから副軸40の回転減加速度(または変速機の油温)に対応するa,bの値を求める。p15で副軸40の回転数(または変速機の油温)がaよりも大きいか否かを判別する。副軸40の回転数(または変速機の油温)がaよりも大きい場合は、p16で副軸ブレーキ12を作動し、p18へ進む。副軸40の回転数(または変速機の油温)がaよりも小さい場合は、p17で副軸ブレーキ12を解除し、p18で副軸40の回転数(または変速機の油温)がb(a>b)よりも大きいか否かを判別する。副軸40の回転数(または変速機の油温)がbよりも大きい場合は、p19で歯車の噛合せを禁止し、p21へ進む。副軸40の回転数がbよりも小さい場合は、p20で歯車の噛合せを許可し、シフトアクチユエータ66により変速操作を行い、p21で終了する。」

エ)図7?9に示された制御マツプから、副軸ブレーキ12を解除する回転差a及び歯車の噛合せ許可信号を発生する回転差bは、副軸40の回転減加速度により変化していることが看取できる。

これらの記載事項及び図面からみて、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「副軸40を備えた車両用歯車変速機21の副軸ブレーキ12を制御及び調整するための方法であって、
当該車両用歯車変速機21は、入力歯車31を端部に結合する入力軸9と、当該入力軸9の入力歯車31と常時噛み合う歯車41を結合する副軸40と、主軸22と、を備えており、
前記主軸22上に、歯車32?38が遊転可能に支持され、及び、前記副軸40上に、歯車42?48が結合されており、これらの歯車は少なくとも対になって相互に噛合った状態にあり、
その際、当該歯車32?38は、クラッチ23?26によりギヤの切り換えを行うために、前記主軸22に回転結合可能であり、
また、前記歯車変速機21は、副軸ブレーキ12をも備えており、当該副軸ブレーキ12で前記副軸40は電子制御装置によって、シフトアップ変速操作の際、副軸40の回転数により決まる歯車32?38の回転数を主軸22のクラッチハブ70の回転数に近づけることが可能であり、
その際、前記副軸ブレーキ12を解除する回転差a及び歯車の噛合せ許可信号を発生する回転差b(b<a)を、副軸40の回転減加速度により値が変化する制御マップから求め、
前記副軸ブレーキ12は、作動遅れを考慮して、クラッチハブ70と歯車33との回転差がaより大きい場合に副軸ブレーキを作動し、前記回転差がaになった時に副軸ブレーキを解除し、次いで、前記回転差がbになった時に、歯車の噛合せ許可信号を発生する方法。」

(2)引用例2(特開平11-255003号公報)には、「車両用変速装置の制御方法」に関して、次の事項が図面とともに記載されている。

カ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、圧縮ブレーキ等のエンジンリターダ或は減速装置を備えたエンジンを有する形式の車両用全自動或は半自動機械式変速装置のシフト操作を制御する制御システム/方法に関する。特に、本発明は、迅速かつスムーズなアップシフト操作を達成するために、リターダ或は減速装置を不作動にするための最適な時間を効果的に決定する上述した形式の制御システム/方法に関する。」

キ)「【0003】このような車両用全自動または半自動機械式変速装置は、マイクロプロセッサベースのコントローラを備えており、所定の出力軸速度及び目標変速ギア比に対して変速機の入力軸を実質的に同期する速度で回転させて、エンジン燃料供給操作及び/またはエンジンブレーキ操作或は入力軸ブレーキ操作を含む、選択された変速機シフトを実行するか、補助する種々のコントローラへ指令出力信号を発信する。
【0004】エンジンブレーキは、一般に、“エンジン圧縮ブレーキ”或は“排気ブレーキ”と呼ばれており、重量車両には“ジェークブレーキ”装置が備えられている。一般的に、これらの装置は手動操作されるが、1つ、2つ或は3つのシリンダ列の作動を手動で選択して減速操作を可変としており、また、最近では、アップシフト中にもっと迅速に同期させるために、エンジン速度/入力軸速度を素早く遅らせて車両を減速させるために使用されている。(以下省略)
【0005】(省略)
【0006】エンジンの回転を選択的に遅らせる他の装置や技術も良く知られている。例えば、空気調整装置等のエンジンで駆動される補機の負荷を増加させることによって、エンジン減速度が増加される。ここで使用されている“エンジンブレーキ”という用語は、このような装置及び/または技術、並びにより一般的なエンジンブレーキを含む技術を包含するものである。」

ク)「【0008】前述の米国特許第5,409,432号のエンジンブレーキを備えた自動機械式変速装置の制御システム/方法によれば、比較的スムーズで、高品質の迅速なアップシフトを提供できるので、従来技術の欠点をいくらか克服できる。アップシフト中にエンジンブレーキを自動的に作動させることによって、エンジンブレーキは、シフトの開始では、最小減速トルクを働かせるように、次に、最大減速トルク値に達するまでは、なだらかに増加する減速トルクを働かせるように、そして、エンジン回転速度(ES)と入力軸回転速度(IS)が、出力軸速度と目標変速ギア比の数値との積(OS*GR_(T) )に等しくなる既定の同期速度(約80?100RPM)の範囲内になることを検知すると、減速トルクをなだらかに減少させるように、システムコントローラによって作動される。好適には、コントローラは、アクチュエータの応答時間、現在のエンジン速度値及び現在の出力軸速度値、及び/またはそれらの変化率を考慮して、これらの事象を開始する。
【0009】いくつかの或は全てのアップシフトを補助するために自動的に制御されるエンジンブレーキを利用する、上述した及び他のシステムに伴う問題は、エンジンブレーキ装置を停止させる時を決定するために、一定のオフセットポイント或は停止ポイントを利用していることである。シフト中に、停止が早過ぎた場合は、変速機の入力軸及び関連する歯車装置が所望するように迅速に減速されないため、アップシフトは非常に長くなってしまう。また、シフト中に、停止が遅過ぎた場合は、入力軸及び歯車装置は、なだらかに連結させるためにはあまりにも急激に減速されてしまい、及び/または、目標変速ギア比に連結することが困難になったり、不可能になる速度まで減速されてしまう。」

ケ)「【0012】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、従来技術の欠点は、アップシフトを補助するエンジンリターダの一部、或は全部の動作を監視して、停止ポイントのオフセット値を実時間測定に基づいて調整する制御システム/方法を提供することによって、最小にされるか、或は克服される。好適な実施の形態では、上述したことは、補助シフトが完了する時、或は完了する直前にエンジンまたは入力軸の加速度を検知することによって達成される。加速度が参照値より大きい場合(即ち、減速度が低過ぎる)は、リターダのターンオフは早過ぎるためオフセット時間は減少される。加速度が参照値より小さい場合(即ち、減速度が高すぎる)は、リターダのターンオフは遅過ぎるためオフセット時間は増加される。最適なオフセット値のオーバーシュートを防止するために、オフセット値をデクリメント及びインクリメントすると、比較的小さい値となる。」

コ)「【0022】本発明によれば、図2及び図3に示すように、エンジンブレーキ50は、手動操作に加えて、システムコントローラ54の指令出力信号に応答して作動可能であり、指令出力信号は、SAEJ1939プロトコルに従ってデータベースを経由して供給されてもよい。この好適な実施の形態では、本発明の制御方法/装置は、アップシフト中のみエンジンブレーキの手動制御を無効にして、変速機12のシフト操作を迅速で、高品質で、かつスムーズに実行するように、設計された方法でエンジンブレーキを効果的に作動させる。図2を参照すると、コントローラは、エンジン速度が“同期領域”(OS×GR_(T) ±40RPM)内にある時に、エンジンブレーキによる減速トルクを停止するようにエンジンブレーキを効果的に作動させる。次に、変速機アクチュエータ46は、目標変速ギア比で変速機12のジョークラッチ部材を連結させるように指令される。
【0023】エンジンブレーキ装置は、比較的遅い(長い)反応時間を有する傾向があり、エンジンブレーキ装置をターンオフさせる信号は、減速トルクを終了させる200-300ミリセコンド前に発生させなければならない。また、この反応時間(EBターンオフ反応時間;EB_(TURN OFF REACYION TIME))は、種々の車両作動状態を変化させる傾向がある。エンジンブレーキ補助アップシフトを概略的に示している図2を参照すると、エンジンブレーキ反応時間は、この時間の値、並びにエンジン速度(ES)の検知値或は計算値、エンジン速度の変化率(dES/dt)、出力軸速度(OS)、出力軸速度の変化率(dOS/dt)及び目標変速ギア比の数値に基づいて予想され、停止ポイントは、エンジンブレーキをターンオフする指令が出される時に選定される。停止ポイントが選定されると、反応時間の終了時に、エンジンブレーキは停止され、ES=(OS*GR_(T) )±40RPMとなる。エンジンブレーキのターンオフが早過ぎると(即ち、予想反応時間が実際の反応時間より大きい場合、線部分70参照)、エンジン速度は通常の減速率(エンジンブレーキ不作動時のdES/dt)に戻り、ES=(OS*GR_(T) )±40になるためには過剰の時間がかかることとなる。エンジンブレーキのターンオフが遅過ぎると(即ち、実際の反応時間が予想反応時間より大きい場合、線部分72参照)、エンジン速度は、ES=(OS*GR_(T) )±40の値を越えて急速に減少し続けて、シフトがあらくなるか或はシフトを達成できなくなる。」

4.対比

そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、その機能又は構成からみて、後者の「副軸40を備えた車両用歯車変速機21」は前者の「カウンターシャフト変速機として形成される自動変速機」に相当し、以下同様に、「副軸ブレーキ12」は「ギヤブレーキ」に、「入力歯車31を端部に結合する入力軸9」は「ギヤ入力軸」に、「当該入力軸9の入力歯車31と常時噛み合う歯車41を結合する副軸40」は「ギヤ入力軸によって駆動される少なくとも一つのカウンターシャフト」に、「主軸22」は「ギヤ出力軸」に、「歯車32?38」は「可動(遊離)歯車」及び「可動歯車」に、「遊転可能」は「回転可能」に、「歯車42?48」は「固定歯車」に、「結合」は「回転しないように配置」に、「クラッチ23?26」は「結合装置」に、「前記主軸22に回転結合可能」は「それらのギヤシャフトと滑らずに結合可能」に、「電子制御装置」は「制御装置」に、「シフトアップ変速操作」は「シフトアップ操作」に、「副軸40の回転数により決まる歯車32?38の回転数を主軸22のクラッチハブ70の回転数に近づけることが可能」は「カウンターシャフトの回転数が噛合い時点で同期回転数に相当するか、あるいは、所定の間隔まで近づく、というように制御可能」に、「作動遅れ」は「リードタイム」にそれぞれ相当し、「主軸22上」は「ギヤ出力軸上」に相当するから、「主軸22上」は「前記ギヤ入力軸上、前記カウンターシャフト上、および/または、前記ギヤ出力軸上」にも相当し、「前記副軸40上」は「前記カウンターシャフト上」に相当するから、「前記副軸40上」は「前記ギヤ入力軸上、前記カウンターシャフト上、および/または、前記ギヤ出力軸上」にも相当する。
したがって、本願発明の用語を用いて表現すると、両者は、

「カウンターシャフト変速機として形成される自動変速機のギヤブレーキを制御及び調整するための方法であって、
当該自動変速機は、ギヤ入力軸と、当該ギヤ入力軸によって駆動される少なくとも一つのカウンターシャフトと、ギヤ出力軸と、を備えており、
前記ギヤ入力軸上、前記カウンターシャフト上、および/または、前記ギヤ出力軸上に、可動(遊離)歯車が回転可能に支持され、及び/または、固定歯車が回転しないように配置されており、これらの歯車は少なくとも対になって相互に噛合った状態にあり、
その際、当該可動歯車は、結合装置を使ってギヤの切り換えを行うために、それらのギヤシャフトと滑らずに結合可能であり、
また、前記自動変速機は、ギヤブレーキをも備えており、当該ギヤブレーキで前記カウンターシャフトは制御装置によって、シフトアップ操作の際、カウンターシャフトの回転数が噛合い時点で同期回転数に相当するか、あるいは、所定の間隔まで近づく、というように制御可能である方法。」である点で一致し、次の点で相違する。

・相違点
本願発明は、「前記ギヤブレーキの停止時点を決定するために、前記カウンターシャフト入力回転数乃至ギヤ入力回転数のブレーキ傾斜度並びにギヤ出力軸回転数の傾斜度が考慮され、
前記ギヤブレーキは、リードタイムを考慮して、決定された停止時点より前に停止される」のに対して、
引用発明は、「前記副軸ブレーキ12を解除する回転差a及び歯車の噛合せ許可信号を発生する回転差b(b<a)を、副軸40の回転減加速度により値が変化する制御マップから求め、
前記副軸ブレーキ12は、作動遅れを考慮して、クラッチハブ70と歯車33との回転差がaより大きい場合に副軸ブレーキを作動し、前記回転差がaになった時に副軸ブレーキを解除し、次いで、前記回転差がbになった時に、歯車の噛合せ許可信号を発生する」点。

5.判断

・相違点の検討
引用発明は、上記「3.引用刊行物」(1)イ)に摘記した段落【0009】に記載されているように、副軸ブレーキを作動状態から解除状態へ切り換える時のほぼ一定時間である作動遅れを考慮しているものであり、図4に示されているように副軸の回転数の変化率が略一定であるとして、その作動遅れを考慮した上で、「副軸ブレーキ12を解除する回転差a」を決めているものであるから、作動遅れが経過して、副軸ブレーキ12の制動トルクが0の解除状態となる時点(停止時点)は前もって設定ないし決定されているものである。そして、引用発明の「副軸ブレーキ12を解除する回転差a」は、「副軸40の回転減加速度により値が変化する制御マップから求め」るものであるから、本願発明の用語でいうと、引用発明は、カウンターシャフト入力回転数のブレーキ傾斜度が考慮されているものである。また、引用発明において、「副軸ブレーキ12を解除する回転差a」との比較を、「クラッチハブ70と歯車32?38との回転差」としているから、少なくとも副軸ブレーキ12の解除に歯車32?38の回転数だけでなく、クラッチハブ70の回転数(本願発明の「ギヤ出力軸回転数」に相当。)が影響していることは認識されているものである。
引用例2には、車両用変速装置の入力軸側の減速に、エンジンブレーキ装置を用いるものではあるものの、上記「3.引用刊行物」(2)コ)に摘記した段落【0022】に、「コントローラは、エンジン速度が“同期領域”(OS×GR_(T) ±40RPM)内にある時に、エンジンブレーキによる減速トルクを停止するようにエンジンブレーキを効果的に作動させる」こと、つまり、エンジンブレーキの停止時点を決定することが記載され、同段落【0023】に、「エンジンブレーキ装置は、比較的遅い(長い)反応時間を有する傾向があり、エンジンブレーキ装置をターンオフさせる信号は、減速トルクを終了させる200-300ミリセコンド前に発生させなければならない」こと、つまり、エンジンブレーキは、リードタイムを考慮して、決定された停止時点より前にエンジンブレーキの停止ポイントをおくことが記載され、同段落【0023】には、「エンジンブレーキ反応時間は、この時間の値、並びにエンジン速度(ES)の検知値或は計算値、エンジン速度の変化率(dES/dt)、出力軸速度(OS)、出力軸速度の変化率(dOS/dt)及び目標変速ギア比の数値に基づいて予想され」ること、つまり、エンジンブレーキの停止時点を決定するために、エンジン速度の変化率(dES/dt)と出力軸速度の変化率(dOS/dt)を考慮することが記載されている。
そして、引用発明と引用例2に記載された発明とは、変速機のシフトアップ時に入力軸側にブレーキをかけて出力軸と同期させる方法である点で技術が共通し、引用例2の図2に「ES(=IS)」と記載されているように、引用例2において、「エンジンの回転速度」は、「入力軸回転速度」に等しいものであり、引用発明において、「入力軸9」の「入力歯車31」と「副軸40」の「歯車41」とは常時噛み合っており、「入力軸9」の回転速度と「副軸40」の回転速度とは比例関係にあるから、引用発明に記載された副軸ブレーキ12の制御方法として、引用例2に記載された上記事項を採用することにより、相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

・本願発明の作用効果は、引用例1に記載された発明及び引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が予測し得た程度のものである。

なお、審判請求人は、審判請求の理由の「(3)本願発明が特許されるべき理由」の「(c)本願発明と引用文献との対比」において、
「引用文献1には、前記のように、副軸ブレーキ(12)を所定の条件に従って早めに作動させたり遅めに作動させたりすることが記載されている。
しかしながら、引用文献1には、副軸ブレーキ(12)の作動を停止させることについては、何らの記載も示唆もない。すなわち、引用文献1には、前記特徴(i)を示唆するような記載はない。
引用文献1の段落0018における『早めに副軸ブレーキ12・・・を作動させれば』及び『遅めに副軸ブレーキ12・・・を作動させれば』との記載が、副軸ブレーキを早めに(遅めに)作動させることを意味することは明らかであるが、当該記載が副軸ブレーキを早めに(遅めに)解除することを示唆しているとの解釈は、その前後の段落の記載を参酌したとしても、失当というほかない。」(審決注:審判請求書の「引用文献1」は、本審決の「引用例1」と同じ。)と、主張している。
しかし、引用例1の段落【0018】には、上記「3.引用刊行物」(1)のウ)に摘記したように、「副軸40の回転減加速度が大きい時(油温が低い時)には、早めに副軸ブレーキ12とシフトアクチユエータ66を作動させれば」及び「副軸40の回転減加速度が小さい時(油温が高い時)には、遅めに副軸ブレーキ12とシフトアクチユエータ66を作動させれば」と記載されており、「副軸ブレーキ12」について単独で「作動させれば」と記載しているものではなく、上記イ)に摘記した段落【0009】には、同様のことについて、「副軸の回転減加速度が大きい時には、早めに副軸ブレーキを解除してシフトアクチユエータを作動させる一方、副軸の回転減加速度が小さい時には、遅めに副軸ブレーキを解除してシフトアクチユエータを作動させる」と記載されていること、及び段落【0018】に続く段落【0020】には、「副軸40の回転数(または変速機の油温)がaよりも小さい場合は、p17で副軸ブレーキ12を解除し、p18で副軸40の回転数(または変速機の油温)がb(a>b)よりも大きいか否かを判別する。副軸40の回転数(または変速機の油温)がbよりも大きい場合は、p19で歯車の噛合せを禁止し、p21へ進む。副軸40の回転数がbよりも小さい場合は、p20で歯車の噛合せを許可し、シフトアクチユエータ66により変速操作を行い、p21で終了する。」と記載されていることからすれば、段落【0018】の「早めに副軸ブレーキ12とシフトアクチユエータ66を作動させれば」は、「早めに副軸ブレーキ12を解除して、早めにシフトアクチユエータ66を作動させれば」を省略して記載したものと認められるから、「引用文献1には、副軸ブレーキ(12)の作動を停止させることについては、何らの記載も示唆もない。」との主張は採用できない。

6.むすび

以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

そして、本願発明(請求項1に係る発明)が特許を受けることができないものである以上、請求項2?7に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-03-07 
結審通知日 2012-03-13 
審決日 2012-03-30 
出願番号 特願2006-517997(P2006-517997)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小川 克久  
特許庁審判長 山岸 利治
特許庁審判官 冨岡 和人
倉田 和博
発明の名称 自動車の自動変速機内のギヤブレーキの制御および調整のための方法  
代理人 荒木 淳  
代理人 名塚 聡  
代理人 磯貝 克臣  
代理人 勝沼 宏仁  
代理人 坪内 伸  
代理人 吉澤 雄郎  
代理人 堀田 幸裕  
代理人 森 秀行  
代理人 永井 浩之  
代理人 田中 達也  
代理人 岡田 淳平  
代理人 上村 欣浩  
代理人 岡野 大和  
代理人 大倉 昭人  
代理人 澤田 達也  
代理人 山崎 孝博  
代理人 杉村 憲司  
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