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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01D
管理番号 1261853
審判番号 不服2011-7293  
総通号数 154 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-04-07 
確定日 2012-08-15 
事件の表示 特願2004-328917「ガスタービンロータブレードを修理する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 7月28日出願公開、特開2005-201242〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件出願は、平成16年11月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2003年11月14日、アメリカ合衆国)の出願であって、平成22年3月10日付けの拒絶理由通知に対し、平成22年9月16日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成22年12月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年4月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2.本願発明
本件出願の請求項1ないし5に係る発明は、平成22年9月16日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲並びに出願当初の明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。

「 【請求項1】
第1のブレード側壁(70)及びブレード第2の側壁(72)により定められる元のブレード輪郭を有するガスタービンエンジンロータブレード(50)の一部分(90)を交換する方法であって、
前記第1の側壁と前記第2の側壁との間で前記ブレードの前縁(74)から前記ブレードの後縁(76)まで切れ目(110)が延びるように前記ロータブレードを切断する段階と、
前記切れ目の半径方向外側にある前記ロータブレードの一部分を除去する段階と、
除去される部分と類似の材料からなる鍛造物又は鋳造物である交換ブレード部分(120)を製造する段階と、
新たに形成されるロータブレード(150)が所定の空気力学的輪郭を備えて形成されるように、交換ブレード部分(120)を残りのブレード部分(98)にニッケル合金及びチタン合金のうちの少なくとも1つを含む溶接材料(126)を用いて自動化単一パス溶接で抵抗溶接して切れ目(110)に沿って延びる単一の溶接接合部を形成する段階と、
を含む方法。」

3.引用刊行物の記載事項
(1)原査定の拒絶理由において引用された刊行物である特表2003-517379号公報(2003年5月27日公表。以下、「刊行物」という。)には、例えば、以下の事項が記載されている。

ア)「【請求項1】 支持体(1)の周面(2)に複数の突出した羽根(3、4、5)が配列されたジェットエンジン用一体型羽根付きロータの修理方法であって、
予備の羽根部分(20)に接合するための前面(11、14)を備え、羽根(3、4、5)の一部分を形成する基部部分(10、13)を残して、交換をすべき羽根部分(4'、5')を除く工程と、
基部部分(10、13)の前面(11、14)を囲んで誘導コイル(16)を配置する工程と、
除かれた羽根部分(4'、5')に対応する予備の羽根部分(20)を基部部分(10、13)に配置して、予備の羽根部分(20)の表面(21)と基部部分(10、13)の前面(11、14)を本質的に一列に小さな間隔をおいて向かい合わせる工程と、
予備の羽根部分(20)を基部部分(10、13)と、
保護ガス雰囲気内で、高周波電流で誘導コイル(16)を励磁し、予備の羽根部分(20)と溶融液状にまで軟化した基部部分(10、13)の前面(11、14)と溶融液状にまで軟化した予備の羽根部分(20)の表面(21)を接触させた状態で予備の羽根部分(20)と基部部分(10、13)とを圧縮力により予備の羽根部分(20)を基部部分(10、13)に溶接する工程とからなることを特徴とするジェットエンジン用一体型羽根付きロータの修理方法。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】)

イ)「 【0001】
本発明は、支持体の周面に複数の突出した羽根が配列されたジェットエンジン用一体型羽根付きロータの修理方法並びに支持体の周面に複数の突き出た羽根が配置されており、前記羽根は前面を有し、周面から突き出た基部に溶接されるジェットエンジン用の一体型羽根付きロータの製造方法に関する。」(段落【0001】)

ウ)「 【0015】
図1は円板として形成された支持体1を有し、支持体の周面2には多数の羽根3が一体に配列され、外方へ突き出ているジェットエンジン用ロータの斜視図を示す。羽根3は概して、等しい間隔をおいて支持体1の周面2に設けられている。多数の損傷のない羽根3と並ぶ2つの羽根4及び5はそれらの羽根の前側縁6に損傷を有する。
【0016】
図2の部分切取り図に詳細に示すように、羽根4、5の損傷は羽根の前側縁6に発生しており、一方相対する羽根の後側縁7には本質的な損傷はない。・・・(中略)・・・
【0017】
羽根5の損傷は羽根の先端8と支持体1の周面2の間の中間の領域にあるステープル軸(Stapelachse)の方向に発生している。このような場合損傷した羽根5については本発明の別の修理方法の構成によって羽根部分5'は分離面12に沿って殆ど完全に除かれ、その結果支持体1の周面2からほぼ2乃至3mm突き出た前面14を有する基部13が残される。羽根4の分離面9が横断面に対して斜めに羽根の先端8まで伸びているのに対して羽根5の場合分離面12は羽根5の横断面に対して平行となっている。羽根4及び5の前面11及び14は必ずしもに平らに形成される必要はなく、利用例に応じて湾曲されていても良い。
【0018】
本発明の補修方法は次の工程からなる。基部13の前面14の周囲15を囲んだ領域に電源17と電気的に接続された誘導コイル16が配置される。図3の平面図からわかるように、誘導コイル16と基部13の間の距離は、次の溶接工程において、基部13の前面14により形成される溶接部の均一な加熱が得られるように、中央領域18よりも羽根の前側縁及び後側縁6及び7の領域の方が大きくなっている。誘電コイル16の切欠き部19の形状は、利用例に応じて、溶接部、即ち基部13の前面14が溶融液状に軟化され、短時間の溶接工程が可能になり、溶接工程後の溶接部の結合のための後加工が回避される。
【0019】
図4に本発明の修理方法の次の工程を示す。この工程において切欠き19を有する誘電コイル16は、支持体1の周面2から突き出た基部13の前面14の周囲15を囲んで配置される。表面21を有する予備の羽根20は二つに分割されたカセット22内に合成樹脂ブロック23で確実に保持される。カセット22はマシンキャリッジ(Maschinenschlitten)に固定される。予備の羽根20の表面21は基部13の前面14の形状及び湾曲に相応している。次の溶接工程のために予備の羽根20を配置するためにマシンキャリッジは、予備の羽根20の表面21が合同に乃至は一列に基部13の前面14に向かい合うように操作される。検査のために予備の羽根20は、その表面21を前面14に接触させた状態で圧力が加えられる。その場合その後に前記予備の羽根の表面と前面は再び別々に離され、次の溶接工程の前に約2mmの間隔を互いにとる。
【0020】
次の溶接工程は保護ガスの雰囲気内で行われる。その際、誘導コイル16は高周波電流によって約1秒間励磁される。高周波電流による励磁及びそれによる加熱は交換すべき材料に依存して極力短時間とし、基部13及び予備の羽根20の材料は、基部13の前面14及び予備の羽根20の表面21により形成される溶接部の領域だけが、溶融液状に軟化される。加熱後、予備の羽根20にはその表面21を基部13の前面14と接触させた状態で据え込みにより、圧縮制御されて(weggesteuert)、約1mmの圧縮工程がなされる。択一的に部品の結合はかかる圧力制御によって(druckgesteuert)行うことができる。
【0021】
図4は高周波溶接によって基部13'と接合される予備の羽根20'を示す。その場合溶接部24の領域にほんの僅かの厚膜化が見られる。この厚膜化の程度は、圧縮工程と共に基部13、13'及び予備の羽根20、20'の材料に依存し、場合により最終の(abschliessenden)後加工で除かれる。多くの場合、溶接部の厚膜化は少なくそれは空気力学的見地から許容され、後加工の必要がない。」(段落【0015】ないし【0021】)

(2)ここで、上記(1)のア)ないしウ)及び図面の記載からみて、次のことが分かる。

エ)上記ア)ないしウ)及び図面の記載から、羽根5は、凸面形の側壁(以下、「第1の側壁」という。)及び凹面形の側壁(以下、「第2の側壁」という。)を有し、該第1の側壁及び該第2の側壁により定められる元の輪郭を有しているといえる。

オ)上記ア)ないしウ)及び図面の記載から、ジェットエンジン用一体型羽根付きロータの修理方法には、第1の側壁と第2の側壁との間で羽根5の前側縁6から羽根5の後側縁7まで分離面12が延びるように羽根5を切断する工程が含まれていることが分かる。

カ)上記ア)ないしウ)及び図面の記載から、ジェットエンジン用一体型羽根付きロータの修理方法には、分離面12の半径方向外側にある羽根5の一部分を除去する工程が含まれていることが分かる。

キ)上記ア)ないしウ)及び図面の記載から、新たに形成される羽根は、所定の空気力学的輪郭を備えて形成されるものであるといえる。

ク)上記ア)ないしウ)及び図面の記載から、溶接工程は、「高周波電流で誘導コイル(16)を励磁し、予備の羽根部分(20)と溶融液状にまで軟化した基部部分(10、13)の前面(11、14)と溶融液状にまで軟化した予備の羽根部分(20)の表面(21)を接触させた状態で予備の羽根部分(20)と基部部分(10、13)とを圧縮力により予備の羽根部分(20)を基部部分(10、13)に溶接する」(上記ア))ものであり、このような溶接は、抵抗溶接の一種であるので、予備の羽根部分20を基部部分13に抵抗溶接して分離面12に沿って延びる単一の溶接部24を形成する工程が含まれていることが分かる。

(3)上記(1)及び(2)を総合すると、刊行物には、次の発明(以下、「刊行物に記載された発明」という。)が記載されていると認められる。

「第1の側壁及び第2の側壁により定められる元の輪郭を有するジェットエンジン用一体型羽根付きロータの修理方法であって、
前記第1の側壁と前記第2の側壁との間で羽根5の前側縁6から前記羽根5の後側縁7まで分離面12が延びるように前記羽根5を切断する工程と、
前記分離面12の半径方向外側にある羽根5の一部分を除去する工程と、
新たに形成される羽根が所定の空気力学的輪郭を備えて形成されるように、予備の羽根部分20を基部部分13に抵抗溶接して分離面12に沿って延びる単一の溶接部24を形成する工程と、
を含む方法。」

4.対比・判断
本願発明と刊行物に記載された発明とを対比すると、その構造または技術的意義からみて、刊行物に記載された発明における「第1の側壁」は、本願発明における「第1のブレード側壁」及び「第1の側壁」に相当し、以下同様に、「第2の側壁」は「ブレード第2の側壁」及び「第2の側壁」に、「元の輪郭」は「元のブレード輪郭」に、「ジェットエンジン用一体型羽根付きロータの修理方法」は「ガスタービンエンジンロータブレードの一部分を交換する方法」に、「羽根5」は「ブレード」に、「前側縁6」は「前縁」に、「後側縁7」は「後縁」に、「分離面12」は「切れ目」に、「工程」は「段階」に、「予備の羽根部分20」は「交換ブレード部分」に、「基部部分13」は「残りのブレード部分」に、「溶接部24」は「溶接接合部」に、それぞれ相当する。

また、刊行物に記載された発明における「予備の羽根部分20を基部部分13に抵抗溶接して分離面12に沿って延びる溶接部24を形成する」は、本願発明における「交換ブレード部分(120)を残りのブレード部分(98)にニッケル合金及びチタン合金のうちの少なくとも1つを含む溶接材料(126)を用いて自動化単一パス溶接で抵抗溶接して切れ目(110)に沿って延びる単一の溶接接合部を形成する」に、「交換ブレード部分を残りのブレード部分に抵抗溶接して切れ目に沿って延びる単一の溶接接合部を形成する」という限りにおいて相当する。

したがって、本願発明と刊行物に記載された発明とは、
「第1のブレード側壁及びブレード第2の側壁により定められる元のブレード輪郭を有するガスタービンエンジンロータブレードの一部分を交換する方法であって、
前記第1の側壁と前記第2の側壁との間で前記ブレードの前縁から前記ブレードの後縁まで切れ目が延びるように前記ロータブレードを切断する段階と、
前記切れ目の半径方向外側にある前記ロータブレードの一部分を除去する段階と、
新たに形成されるロータブレードが所定の空気力学的輪郭を備えて形成されるように、交換ブレード部分を残りのブレード部分に抵抗溶接して切れ目に沿って延びる単一の溶接接合部を形成する段階と、
を含む方法。」
である点で一致し、次の2点で相違する。

[相違点1]
本願発明は、「除去される部分と類似の材料からなる鍛造物又は鋳造物である交換ブレード部分を製造する段階」を含むのに対し、刊行物に記載された発明は、そのような段階を含むかどうか明らかでない点(以下、「相違点1」という。)。

[相違点2]
交換ブレード部分を残りのブレード部分に抵抗溶接して切れ目に沿って延びる単一の溶接接合部を形成することに関し、本願発明では、「ニッケル合金及びチタン合金のうちの少なくとも1つを含む溶接材料を用いて自動化単一パス溶接で」抵抗溶接するのに対し、刊行物に記載された発明では、「ニッケル合金及びチタン合金のうちの少なくとも1つを含む溶接材料を用いて自動化単一パス溶接で」抵抗溶接するかどうか明らかでない点(以下、「相違点2」という。)

上記相違点について判断する。
[相違点1について]
ガスタービンエンジンロータブレードの一部分を交換する方法において、交換ブレード部分を、除去される部分と類似の材料とすることは、本願の優先日前において周知の技術であり(例えば、特開2000-263247号公報[特に、段落【0012】]及び特開平1-294901号公報[特に、第7ページ右下欄第17行ないし第8ページ右上欄第19行]参照。以下、「周知技術1」という。)、交換ブレード部分を鋳造物とすることも周知の技術である(例えば、特開2002-303155号公報及び特開昭56-154104号公報[特に、第3ページ左下欄第17ないし20行]参照。以下、「周知技術2」という。)。
また、刊行物の段落【0006】には、「新しく製造するとき鋳造した羽根を鍛造したロータ(円板/リング)に接合することができる。」と記載されており、接合すべきブレード部分を鋳造物とすることが示唆されている。
そうすると、刊行物に記載された発明において、周知技術1及び2を適用することで、予備の羽根部分20(本願発明における「交換ブレード部分」に相当。)を、交換をすべき羽根部分5'(本願発明における「除去される部分」に相当。)と類似の材料からなる鍛造物又は鋳造物で構成することは、当業者であれば容易に想到し得ることであり、そのような予備の羽根部分20を製造する工程を含むようにして、相違点1に係る本願発明の発明特定事項のようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

[相違点2について]
抵抗溶接を行う際、ニッケル合金等を含む溶接材料を用いることは、本願の優先日前において周知の技術である(例えば、特開平3-204183号公報参照。以下、「周知技術3」という。)。
また、溶接を自動で行うこと、及び、単一パスで行うことは、いずれも慣用技術である。
そうすると、刊行物に記載された発明において、周知技術3及び慣用技術を適用することで、ニッケル合金及びチタン合金のうちの少なくとも1つを含む溶接材料を用いて自動化単一パス溶接で抵抗溶接するようにして、相違点2に係る本願発明の発明特定事項のようすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

また、本願発明の効果も、刊行物に記載された発明並びに周知技術1ないし3及び慣用技術から当業者が予測し得る範囲のものであって、格別なものとはいえない。

したがって、本願発明は、刊行物に記載された発明並びに周知技術1ないし3及び慣用技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物に記載された発明並びに周知技術1ないし3及び慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-03-14 
結審通知日 2012-03-21 
審決日 2012-04-04 
出願番号 特願2004-328917(P2004-328917)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 後藤 泰輔  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 中川 隆司
安井 寿儀
発明の名称 ガスタービンロータブレードを修理する方法  
代理人 荒川 聡志  
代理人 黒川 俊久  
代理人 小倉 博  

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