• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1261856
審判番号 不服2011-11513  
総通号数 154 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-06-01 
確定日 2012-08-15 
事件の表示 特願2007-243112「パーシャルトランスポートストリーム伝送装置、パーシャルトランスポートストリーム伝送方法、及び、トランスポートストリーム受信装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 3月 6日出願公開、特開2008- 54332〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯、本願発明
本願は、平成10年11月16日(パリ条約による優先権主張1997年11月14日、欧州特許庁)に出願した特願平10-325596号の一部を平成19年9月19日に新たな特許出願としたものであって、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に係る各発明は、平成19年10月19日付け、平成22年11月24日付け、平成23年6月1日付け手続補正書により補正された明細書および図面の記載からみて、請求項1ないし3にそれぞれ記載されたとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明は次のとおりのものである。
「1以上のプログラムを構成要素とするサービスが多重化された第1のトランスポートストリームと、上記第1のトランスポートストリームに関するプログラムスペシフィックインフォメーション(PSI)テーブルと、サービスインフォメーション(SI)テーブルとを受信する受信手段と、
上記受信手段によって受信した第1のトランスポートストリームに含まれるパケットをフィルタリングして、ユーザが選択したサービスに関するパケットを含んだ第2のトランスポートストリームを生成する第2のトランスポートストリーム生成手段と、
上記受信手段によって受信した第1のトランスポートストリームに関するプログラムスペシフィックインフォメーション(PSI)テーブルとして伝送され、上記第1のトランスポートストリームに含まれる複数のサービスを参照するプログラムアソシエーションテーブル(PAT)に基づいて、上記ユーザが選択したサービスを参照する新たなプログラムアソシエーションテーブル(PAT)を生成するプログラムアソシエーションテーブル(PAT)生成手段と、
上記受信手段によって受信した上記サービスインフォメーション(SI)テーブルとして伝送されるサービスディスクリプションテーブル(SDT)及びイベントインフォメーションテーブル(EIT)に基づいて、上記ユーザが選択したサービスに関するパケットを含んだ上記第2のトランスポートストリームに関するセレクションインフォメーションテーブル(SIT)を生成するセレクションインフォメーションテーブル(SIT)生成手段と、
上記プログラムアソシエーションテーブル(PAT)生成手段によって生成した新たなプログラムアソシエーションテーブル(PAT)と、上記セレクションインフォメーションテーブル(SIT)生成手段によって生成したセレクションインフォメーションテーブル(SIT)とを、新たなプログラムスペシフィックインフォメーション(PSI)テーブル及び新たなサービスインフォメーション(SI)テーブルとして、上記第2のトランスポートストリーム生成手段により生成された上記第2のトランスポートストリームとともに伝送する伝送手段とを備えるパーシャルトランスポートストリーム伝送装置。」

2.引用例
ア.引用例1の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用した特開平9-200690号公報(以下「引用例1」という。)には、次のとおりの記載がなされている。
(a)【発明の属する技術分野】
本発明は、マルチチャンネルのディジタル放送を受信するディジタル放送受信端末装置に関する。
【従来の技術】
近年、MPEG(Moving Picture Experts Group)2等の高能率符号化技術の確立によって、画像のディジタル化が進んでおり、テレビジョン放送においてもディジタル化が検討されている。ディジタル放送においては、高能率符号化技術及びディジタル変復調技術等を利用することにより、映像、音声及び各種データ等の種々のサービス形態の信号を多重伝送することができるものと期待されている。
MPEG2においては、PS(Program Stream)とTS(Transport Stream)の2種類の多重信号形式が規定されている。特に、TSシステムは、伝送誤りに対応すると共に、複数のプログラムを多重化して伝送する機能を有し、放送のマルチチャンネル化及び通信又は蓄積メディアにおけるマルチメディア化に対応している。 TSシステムでは、複数の画像、音声及びデータ等の時分割多重を容易にするために、固定長のパケット単位で伝送データを伝送するようになっている。1パケットは同一種類のデータによって構成し、各パケットにデータの種類毎に異なる識別情報をヘッダ中に記載する。このようなディジタル放送信号を受信して復号化処理する受信機は、セットトップ・ボックス又はIRD(Integrated Receiver Decoder)ともいわれる。
図11はこのようなIRDを示すブロック図である。
入力端子1を介して入力されたRF(高周波)放送信号はチューナ2に与えられる。チューナ2は入力された放送信号から所定の伝送周波数帯の信号を選択して復調器3に出力する。復調器3は選局されたチャンネルの信号をA/D変換した後ディジタル復調する。なお、送信側及び受信側における変復調処理としては、例えば、QAM又はQPSK等の変復調方式が採用される。
復調器3によって復調された信号は誤り訂正復号化回路4に与えられる。誤り訂正復号化回路4は復調された信号に含まれる誤り訂正符号を用いて復調された信号を誤り訂正する。誤り訂正符号としては、例えば、ビタビ符号等の畳み込み符号又はRS(リードソロモン)符号等が用いられる。誤り訂正復号化回路4の出力はTS処理回路5に供給される。
上述したように、TSシステムでは、複数のサービス(放送番組)を多重して伝送している。TS処理回路5は、多重された複数のサービスから所定のサービスを選択し、多重分離する。例えば、TS処理回路5は、入力された信号から映像データを分離して映像圧縮復号化回路6に出力し、音声データを分離して音声圧縮復号化回路7に出力する。
TS処理回路5からの映像データ及び音声データは例えばMPEG2規格によって圧縮されている。映像圧縮復号化回路6は、符号化されている映像データを復号化して、ディジタルの輝度データY及び色差データCb,Crを得てコンポーネント信号としてNTSC/PALエンコーダ8に出力する。また、音声データは音声圧縮復号化回路7によって復号化されてPCM及びD/A変換器9に与えられる。
NTSC/PALエンコーダ8によって、復号化された映像データはNTSC方式又はPAL方式のコンポジット映像信号に変換されて出力される。また、PCM及びD/A変換器9によって、復号化された音声データはアナログ音声信号に変換されて出力される。(段落【0001】ないし【0010】)

(b)【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1は本発明に係るディジタル放送受信端末装置の一実施の形態を示すブロック図である。図1において図11と同一の構成要素には同一符号を付してある。
入力端子1には例えば高能率符号化されてMPEG2規格のTS多重方式に基づくストリームに構成され、QAM又はQPSK等の変調方式によって変調されたRF放送信号が入力される。このRF放送信号はチューナ2に与えられる。チューナ2は入力された放送信号から所定の伝送周波数帯の信号を選択して復調器3に出力する。
復調器3は選局されたチャンネルの信号をA/D変換した後、送信側の変調方式に応じたディジタル復調処理によって、放送信号を復調する。復調器3によって復調された信号は誤り訂正復号化回路4に与えられる。誤り訂正復号化回路4は送信側においてプログラムデータに付加された誤り訂正符号を用いて、復調された信号を誤り訂正する。誤り訂正符号としては、例えば、ビタビ符号等の畳みみ符号又はRS(リードソロモン)符号等が用いられる。誤り訂正復号化回路4の出力は番組データのパケット化された符号化データである。この符号化データはディジタル入出力部10に供給されるようになっている。
ディジタル入出力部10は、スイッチSW1 ,SW2 、記録番組選択回路11、TS処理回路12及びディジタルインタフェース13によって構成されている。ディジタル入出力部10は、誤り訂正復号化回路4からの符号化データを図示しない外部機器に出力可能である。ディジタル入出力部10は、誤り訂正復号化回路4からの符号化データ又は外部機器からの符号化データを選択的に処理して視聴することができるようになっている。
即ち、誤り訂正復号化回路4からの符号化データはスイッチSW1 の端子bに供給されると共に、記録番組選択回路11にも供給される。記録番組選択回路11は符号化データに含まれる複数のプログラムから番組番号指定信号に基づくプログラムを選択してディジタルインタフェース13に出力する。ディジタルインタフェース13は記録番組選択回路11の出力を所定のディジタルフォーマットに変換して図示しないバス上に外部出力として出力する。また、ディジタルインタフェース13は、図示しないバスを介して入力された符号化データ及びその制御信号を夫々スイッチSW1 ,SW2 の端子aに供給するようになっている。(段落【0018】ないし【0022】)。

(c)上述したように、TSパケットはマルチプログラムに対応しており、復号化時において時分割で伝送される複数のプログラムの中から所望のプログラムのパケットを選択することができるようになっている。この選択のために、TSパケットは、一般に符号化データや多重分離に必要な情報を伝送するペイロード(Payload )の前にヘッダ(Header)を付加して伝送される。TSパケット188バイトのうち4バイトがヘッダである。なお、数個のTSパケットによってPES(Packetized Elementary Stream)パケットが構成される。
ヘッダは、先頭に同期バイト(sync_byte )が配列され、以後、ビットエラーの有無を示すエラーインジケータ(transport packed error indicator)、PESパケットの開始を示すユニット開始表示(PES packet start indicator)、パケットの重要度を示すTSパケットプライオリティ(transport priority)、パケットの識別情報であるPID(Packet identification )、スクランブルの有無を示すスクランブル制御(stransport scrambling control )、アダプテーションフィールドやペイロードの有無等を示すアダプテーションフィールド制御(adaptation field control)、同一PIDの連続性を示す巡回カウンタ(continuity counter)が順次配列されて構成される。なお、パケットの先頭の8ビットの同期バイトは特定のコードであり、常に16進数で47の値となっている。
TS処理回路12は、順次入力されるパケットからPIDを参照して、同一PIDのパケットを抽出する機能を有しており、これにより、伝送データから所望のプログラムのみを復号化することができる。
また、各パケットのPIDは送信側で一定の管理下の下で任意に設定可能であり、送信時にPIDとこのPIDによって示される種類等の情報との対応を明らかにする必要がある。このため、トランスポートストリームにおいては、PIDのリスト等を記述する識別テーブル(PMT)を所定のTSパケット(プログラムマップテーブル(PMT)伝送パケット)によって伝送すると共に、このPMT伝送パケットのPIDを示すTSパケット(プログラムアソシエーションテーブル(PAT)伝送パケット)を伝送する。このPATパケットのPIDは0に設定されている。なお、PAT,PMT伝送パケットは、所定の間隔毎に伝送されている。TS処理回路12は、PMTを参照することにより、PIDと伝送データの種類との関係を認識する。TS処理回路12はユーザ操作に応じた番組番号指定信号が与えられ、この番組番号指定信号に基づくプログラムを分離すると共に、デパケット化して出力する。(段落【0027】ないし【0030】)

(d)本実施の形態においてはディジタルインタフェース13としては、例えばP1394規格のシリアルインタフェースを採用する。図4は図1中のディジタルインタフェース13の具体的な構成を示すブロック図であり、P1394の基本的な構成を示している。
P1394は、複数のチャンネルの多重転送が可能であると共に、映像及び音声データ等を一定時間以内で転送することを保証するアイソクロノス(isochronous )転送(以下、同期転送ともいう)機能を有している。また、P1394はディジーチェイン及びツリー状のトポロジを採用することができる。P1394は最大で400Mbps(ビット/秒)の高速転送が可能であり、マルチメディア用途に適した低コストの周辺インタフェースとして注目を集めている。
IEEEにおいては、P1394の仕様として物理層とリンク層とを規定している。物理層ではシリアル信号の符号化方式と電気的仕様を定め、バス使用権の調停を行うバスアービトレーションの実施及びトラフィック状況に関するバス全体への通知等について規定されている。また、リンク層ではデータの読出し及び書込みに関する低レベルのプロトコルが規定されている。
ディジタルインタフェース13は、P1394と同様に、リンク層及び物理層に夫々対応した構成を有する。リンク層はバッファ部21及び変換部22によって構成される。バッファ部21は、非同期転送バッファ23及びアイソクロノス転送バッファ24を有する送信バッファによって構成される。バッファ部21は図示しないデータ処理部に接続され、物理層のケーブルポート33は、図示しないバスを介して他のノードの外部機器に接続される(図示せず)。
送信時には、非同期転送バッファ23又はアイソクロノス転送バッファ24のいずれか一方からの送信データを変換部22のトランスミッタ25に供給する。トランスミッタ25は入力された送信データを所定のフォーマットでパケット化する。CRC回路27は、誤り検出のための32ビットのCRC(Cyc1ic Redundancy Check)符号をパケットのヘッダ及びデータの双方に対して発生する。物理インタフェース28はCRC符号が付加されたパケットデータを物理層に転送する。
リンクインタフェース31は物理インタフェース28からの転送データを転送データエンコーダ32に与える。転送データエンコーダ32にはクロック発生器35からのクロックも与えられる。転送データエンコーダ32は、入力された転送データをエンコードした後、ストローブ信号と共にケーブルポート33に出力する。(段落【0033】ないし【0038】)

(e)次に、このように構成された実施の形態の動作について説明する。
入力端子1を介して入力されたRF放送信号はチューナ2に供給されて、所定のチャンネルの信号が選局される。選局された信号は復調器3に与えられて、送信側の変調方式に対応した復調処理によって復調される。復調器3の出力は例えばMPEG2規格のトランスポートストリームである。復調器3の出力は誤り訂正復号化回路4に供給され、誤り訂正復号化回路4は誤り訂正符号を用いて誤り訂正を行う。こうして、誤り訂正復号化回路4からは誤り訂正符号が除去されたTSパケットがディジタル入出力部10に供給される。(段落【0052】、【0053】)。

(f)次に、図示しないバス上に接続されたディジタルVTR等によって受信データを記録するものとする。誤り訂正復号化回路4からの誤り訂正されたパケットデータは記録番組選択回路11にも供給されている。記録番組選択回路11はユーザに基づく番組番号指定信号によって、入力されたパケットデータから番組番号指定信号に基づくプログラムを構成するパケットのみを抽出してそのままディジタルインタフェース13に出力する。 図示しないディジタルVTRのディジタルインタフェースは、データの転送に先立って、バスアービトレーションを実行する。バス使用権が許諾されると、ディジタルVTRは、データの読出しコマンドを発行する。ディジタルインタフェース13はこの読出しコマンドを受領すると、記録番組選択回路11からのTSパケットデータを取り込む。
TSパケットデータはアイソクロノス転送バッファ24を介してトランスミッタ25に入力される。アイソクロノス転送バッファ24からのTSパケットデータについてはアイソクロノス転送が行われる。即ち、トランスミッタ25はサイクルタイマ26からのサイクル時間を利用して、アイソクロノスサイクル毎のTSパケットデータの転送を確保する。トランスミッタ25はTSパケットデータを所定のフォーマットでパケット化して物理インタフェース28に出力する。物理インタフェース28はパケットデータをリンクインタフェース31を介して転送データエンコーダ32に供給する。転送データエンコーダ32によってパケットデータはエンコード処理され、ケーブルポート33を介して図示しないバス上に送出される。図示しないディジタルVTRは、転送されたパケットデータを記録フォーマットに応じてパケット変換して所定の記録媒体に記録する。(段落【0057】ないし【0059】)

(g)また、記録番組選択回路11を設けているので、外部機器側に番組抽出処理回路を設ける場合に比してTS処理回路12に必要な情報を共用することができることから、構成を簡素化することができると共に、外部機器へのデータ転送量を削減することもできる。(段落【0066】)

イ.引用例1に記載された発明
(ア)上記記載(a)によれば、引用例1には、マルチチャンネルのディジタル放送を受信するディジタル放送受信端末装置が記載されている。

(イ)上記記載(a)、(b)によれば、上記マルチチャンネルのディジタル放送は、高能率符号化されてMPEG2規格のTS多重方式に基づくストリームに構成され、QAM又はQPSK等の変調方式によって変調されたRF放送信号であり、上記MPEG2規格のTS多重方式に基づくストリームは、複数のプログラム(サービス)を多重化して伝送するTS(トランスポートストリーム)であり、複数の画像、音声及びデータ等の時分割多重を容易にするために固定長のパケット単位で構成されることが記載されている。
また、上記記載(c)によれば、上記TS(トランスポートストリーム)においては、PMT(パテントマップテーブル)、PAT(プログラムアソシエーションテーブル)を伝送していることが記載されている。

(ウ)上記記載(b)ないし(f)によれば、
上記ディジタル放送受信端末装置では、
入力端子1には、高能率符号化されてMPEG2規格のTS多重方式に基づくストリームに構成され、QAM又はQPSK等の変調方式によって変調されたRF放送信号が入力され、チューナ2に与えられる。チューナ2は入力された放送信号から所定の伝送周波数帯の信号を選択して復調器3に出力すること、
復調器3は選局されたチャンネルの信号をA/D変換した後、送信側の変調方式に応じたディジタル復調処理によって、放送信号を復調する。復調器3の出力はMPEG2規格のトランスポートストリームであること、
復調器3によって復調された信号は誤り訂正復号化回路4に与えられる。誤り訂正復号化回路4は送信側においてプログラムデータに付加された誤り訂正符号を用いて、復調された信号を誤り訂正する。誤り訂正復号化回路4からの誤り訂正符号が除去されたTSパケットがディジタル入出力部10に供給されること、
ディジタル入出力部10は、スイッチSW1 ,SW2 、記録番組選択回路11、TS処理回路12及びディジタルインタフェース13によって構成されていること、
誤り訂正復号化回路4からの誤り訂正された上記TSパケットデータはスイッチSW1 の端子bに供給されると共に、記録番組選択回路11にも供給される。記録番組選択回路11は、ユーザに基づく番組番号指定信号によって、入力されたパケットデータに含まれる複数のプログラムから番組番号指定信号に基づくプログラムを構成するパケットを選択してディジタルインタフェース13に出力すること、
ディジタルインタフェース13は記録番組選択回路11からのTSパケットデータを所定のディジタルフォーマットに変換して図示しないバス上に外部出力として出力し、バス上に接続されたディジタルVTR等によって受信データを記録することが記載されている。

(エ)上記(ア)ないし(ウ)によれば、引用例1には、
「マルチチャンネルのディジタル放送を受信するディジタル放送受信端末装置であって、
複数のプログラム(サービス)を多重化して伝送するMPEG2規格のTS(トランスポートストリーム)で構成され、前記TS(トランスポートストリーム)においては、PMT(パテントマップテーブル)、PAT(プログラムアソシエーションテーブル)等も伝送する前記マルチチャンネルのディジタル放送を選局、受信し、復調、復号し、誤り訂正されたTSパケットを出力するチューナー2、復調器3、誤り訂正復号化回路4と、
前記誤り訂正復号化回路4からの誤り訂正されたTSパケットが供給され、当該TSパケットに含まれる複数のプログラムから、ユーザによる番組番号指定信号に基づくプログラムを構成するパケットを選択してディジタルインタフェース13に出力する記録番組選択回路11と、
前記記録番組選択回路11からのTSパケットデータを所定のディジタルフォーマットに変換して、ディジタルVTR等が接続されたバス上に送出するディジタルインターフェース13とを備えるディジタル放送受信端末装置」の発明(以下「引用発明」という。)が開示されているものと認められる。

ウ.引用例2の記載事項
また、原査定の拒絶の理由に引用された、Digital Video Broadcasting(DVB); Guidelines on implementation and usage of Service Information(SI),ETSI,1997年8月,ETR 211, Second Edition,p.38-39,URL,http://www.etsi.org/deliver/etsi_etr/200_299/211/02_60/etr_211e02p.pdf(以下「引用例2」という。)には、次のことが記載されている。(翻訳は当審による仮訳である。)

(h)6 Storage media
A partial bitstream from the DVB TS does not carry any DVB SI data other than the Selection Information Table (SIT) described in EN 300 468 [1]. The SIT contains a summary of all SI information in the broadcast stream relevant for storage media. All relevant MPEG-2 PSI information should be coded to correctly describe the partial MPEG-2 TS.
The presence of the SIT in a bitstream flags the bitstream as a partial bitstream coming from the digital interface. This allows the IRD to ignore the absence of any mandatory SI tables and only use information coded into the SIT.
In addition to the SIT table, a second table, called Discontinuity Information Table (DIT), is defined in EN 300 468 [1]. This table is to be inserted at transition points at which SI information may be discontinuous.(第38頁7行ないし17行)
《翻訳》
「6 媒体記憶
ディジタルビデオ放送トランスポートストリーム(DVB TS)からの部分ビットストリームは、EN 300 468[1]に記述(説明)されているセレクション・インフォメーション・テーブル(SIT)以外のいかなるDVB SIデータのディジタルビデオ放送のサービス・インフォメーション(SI)を運ばない。セレクション・インフォメーション・テーブル(SIT)は媒体記憶に関連する放送ストリーム内のすべてのSI情報の概要を含む。前記媒体記憶に関連する全てのMPEG-2プログラム・スペシフィック・インフォメーション(MPEG-2 PSI)は、部分MPEG-2トランスポートストリーム(部分MPEG-2 TS)を正確に記述するようにコード化される必要がある。
1つのビットストリーム中のSITの存在は、そのビットストリームがディジタルインターフェイスからの部分ビットストリームであることを知らせる。このことが、インテグレーティッド・レシーバ・デコーダ(IRD)をして、必須であるSIテーブルがないことを無視して、SITの中にコード化された情報のみを用いることができるように許容している。
SITテーブルに加えて、不連続情報テーブル(DIT)と呼ばれる1つの2番目のテーブルが、EN 300 468[1]で定義される。このテーブルは、SI情報が不連続となる変化点に挿入されることになっている。」

(i)6.1 Program Association Table (PAT)
The PAT only lists selected services. In addition, the network_PID reference should take the value of the SIT_PID instead of the NIT_PID. The references to non-selected programs/services should be removed.The PAT should not violate the MPEG-2 Systems rules.(第38頁18行ないし21行)
《翻訳》
「6.1 プログラム・アソシエーション・テーブル(PAT)
プログラム・アソシエーション・テーブル(PAT)は、選択されたサービスのみをリストする。加えて、ネットワーク・パケットID(PID)参照は、NIT PIDの代わりにSIT PIDの値を使う。選択されていないプログラム/サービスの参照は除かれる。PATは、MPEG-2システムの規則を破るものではない。」

(j)6.2 Program Map Table (PMT)
The PMT should not violate the MPEG-2 Systems requirements.
For selected services, the corresponding PMT section may remain unchanged only if all elementary streams referenced from it are selected and kept unchanged. In case any of the referenced elementary streams of the service is removed or changed, the PMT section should be modified to reflect this.
For non selected services the obsolete PMT sections may remain in the stream only if they are in the same PID as a PMT section of any selected service. In all other cases they should be removed.(第38頁22行ないし28行)
《翻訳》
「6.2 プログラム・マップ・テーブル(PMT)
プログラム・マップ・テーブル(PMT)は、MPEG-2システムの必要条件を破るものではない。
選択されたサービスのため、もし、そのPMTから参照されるエレメンタリーストリームのすべてが選択され変更されないときだけ、対応するPMTセクションは変更されずにそのまま残る。そのサービスの参照されるエレメンタリーストリームのいくつかでも除かれたり、変更された場合は、対応するPMTセクションは、そのことを反映するように修正される。
選択されなかったサービスのため、選択されたサービスのPMTセクションと同じPIDのPMTセクションのみがストリームに残る。
その他の場合は、PMTセクションは全て除かれる。」

(k)6.3 SI tables (NIT, SDT, EIT, BAT, RST, TDT, TOT)
These tables should be removed after selection.(第38頁29行ないし30行)
《翻訳》
「6.3 サービス・インフォメーション(SI)テーブル(NIT, SDT, EIT, BAT, RST, TDT, TOT)
選択の後、これらのテーブルは除かれる。」

(l)6.4 Selection Information Table (SIT)
The SIT should be packetized in TS packets starting from the beginning of the payload, i.e. in a packet with payload_unit_start_indicator in the TS packet header set to "1" and with the pointer_field set to "0x00". Furthermore, it is recommended that the SIT is packetized in a single TS packet (if possible).
The transmission_info_loop in SIT should contain the partial_transport_stream_descriptor.
The following loop should contain all the service_ids of the selected services. The service_loop may contain descriptors from the original EIT and SDT.(第38頁31行ないし37行)
《翻訳》
「6.4 セレクション・インフォメーション・テーブル(SIT)
セレクション・インフォメーション・テーブル(SIT)は、そのペイロードの最初、すなわち、TSパケットヘッダー中のペイロードユニットスタート指標を“1”にセットし、そしてポインターフィールドを“0x00”にセットした1つのパケットから開始するTSパケットにパケット化されるべきである。さらに、(可能であれば)SITは、1つのTSパケットにパケット化されることが望ましい。
セレクション・インフォメーション・テーブル(SIT)中の伝送情報ループは、部分トランスポートストリームの記述子を含む。続くループは選択されたサービスの全てのサービスidを含む。サービスループは元のEIT(イベント・インフォメーション・テーブル)と、SDT(サービス・デスクリプション・テーブル)からの記述子を含んでいる。」

(m)6.5 Discontinuity Information Table (DIT)
At a transition, the bitstream may be discontinuous with respect to any of the SI information (including PAT and PMT). The DIT table shall be inserted at this transition point.
Whenevera partial bitstream discontinuity occurs, two transport packets belonging to PID 0x001E shall be inserted directly at the transition point, with no other packets in between. The first one shall have 184 bytes of adaptation field stuffing with discontinuity_flag set to "1" (in order to ensure compliance to MPEG-2 continuity counting constraints for successions of transitions introduced at independent transmisssion/storage stages). The second of these transport packets shall contain the "DIT" and shall not have such a flag set to "1".
《翻訳略》

3.対比
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)と引用発明とを対比すると次のことが認められる。

(イ)本願発明は、「パーシャルトランスポートストリーム伝送装置」に係るものであり、当該パーシャルトランスポートストリーム伝送装置は、明細書での説明に照らすと、受信したMPEG2トランスポートストリーム(TS)をフィルタリングして所定のサービスに関わるパケットを選択し、また、所定のサービスのための新しいプログラムスペシフィックインフォメーション/サービスインフォメーション(PSI/SI)を生成し、前記フィルタリング処理が施されたMPEG2トランスポートストリーム(TS)に、前記新たに生成されたプログラムスペシフィックインフォメーション/サービスインフォメーション(PSI/SI)を挿入してパーシャルトランスポートストリームとして、伝送する装置であるところ、
引用発明のマルチチャンネルのディジタル放送を受信するディジタル放送受信端末装置は、受信、復号等したMPEG2規格のTS(トランスポートストリーム)から、ユーザによる番組番号指定信号に基づくプログラムを構成するパケットを選択して、ディジタルインタフェース13に選択したTSパケットデータを出力し、ディジタルインターフェース13は当該TSパケットデータをバス上に送出するものであることから、両者はいずれも「選択したTSパケットデータ伝送装置」に係るものであるといえる。
もっとも、選択したTSパケットデータが、本願発明では、パーシャルトランスポートストリーム(フィルタリング処理が施されたMPEG2トランスポートストリーム(TS)に、新たに生成されたプログラムスペシフィックインフォメーション/サービスインフォメーション(PSI/SI)を挿入したトランスポートストリーム)であるのに対し、引用発明では、そのようなパーシャルトランスポートストリームではない点で異なる。

(ロ)引用発明のディジタル放送受信端末装置は、複数のプログラム(サービス)を多重化して伝送するMPEG2規格のTS(トランスポートストリーム)で構成されるマルチチャンネルのディジタル放送を受信するものであり、また、MPEG2規格のTSで構成されるマルチチャンネルのディジタル放送のTSには、所望のチャンネルのTSの受信や所望プログラムのビデオデータ及びオーディオデータの分離ができるようにするため、PMT(パテントマップテーブル)、PAT(プログラムアソシエーションテーブル)等を含むTSに関するプログラムスペシフィックインフォメーション(PSI)テーブルと、サービスインフォメーション(SI)テーブルが挿入されていることは、「ARIB STD-B10 1.0版“デジタル放送に使用する番組配列情報”平成9年6月 社団法人電波産業会 発行」等に記載されているように周知な事項であることから、
引用発明のディジタル放送受信端末装置は、本願発明でいうのと同様「1以上のプログラムを構成要素とするサービスが多重化された第1のトランスポートストリーム(引用発明でいう「マルチチャンネルのデジタル放送のTS」)と、上記第1のトランスポートストリームに関するプログラムスペシフィックインフォメーション(PSI)テーブルと、サービスインフォメーション(SI)テーブルとを受信する受信手段」を備えているといえる。

(ハ)引用発明のディジタル放送受信端末装置は、誤り訂正復号化回路4からの誤り訂正されたTSパケットが供給され、当該TSパケットに含まれる複数のプログラムから、ユーザによる番組番号指定信号に基づくプログラムを構成するパケットを選択してディジタルインタフェース13に出力する記録番組選択回路11と、前記記録番組選択回路11からのTSパケットデータを所定のディジタルフォーマットに変換して、ディジタルVTR等が接続されたバス上に送出するディジタルインターフェース13とを備えており、上記のTSパケットに含まれる複数のプログラムから、ユーザによる番組番号指定信号に基づくプログラムを構成するパケットを選択してディジタルインタフェース13に出力することはフィルタリングといえることから、引用発明は、本願発明でいうのと同様「受信手段によって受信した第1のトランスポートストリームに含まれるパケットをフィルタリングして、ユーザが選択したサービスに関するパケットを含んだ第2のトランスポートストリーム(引用発明でいう「記録番組選択回路11からのTSパケットデータ」)を生成する第2のトランスポートストリーム生成手段」を備えているといえる。

(ニ)本願発明は、受信手段によって受信した第1のトランスポートストリームに関するプログラムスペシフィックインフォメーション(PSI)テーブルとして伝送され、上記第1のトランスポートストリームに含まれる複数のサービスを参照するプログラムアソシエーションテーブル(PAT)に基づいて、上記ユーザが選択したサービスを参照する新たなプログラムアソシエーションテーブル(PAT)を生成するプログラムアソシエーションテーブル(PAT)生成手段と、
受信手段によって受信した上記サービスインフォメーション(SI)テーブルとして伝送されるサービスディスクリプションテーブル(SDT)及びイベントインフォメーションテーブル(EIT)に基づいて、上記ユーザが選択したサービスに関するパケットを含んだ上記第2のトランスポートストリームに関するセレクションインフォメーションテーブル(SIT)を生成するセレクションインフォメーションテーブル(SIT)生成手段とを備えているのに対し、
引用発明は、このようなプログラムアソシエーションテーブル(PAT)生成手段、セレクションインフォメーションテーブル(SIT)生成手段を備えていない点で相違する。

また、本願発明は、上記プログラムアソシエーションテーブル(PAT)生成手段によって生成した新たなプログラムアソシエーションテーブル(PAT)と、上記セレクションインフォメーションテーブル(SIT)生成手段によって生成したセレクションインフォメーションテーブル(SIT)とを、新たなプログラムスペシフィックインフォメーション(PSI)テーブル及び新たなサービスインフォメーション(SI)テーブルとして、上記第2のトランスポートストリーム生成手段により生成された上記第2のトランスポートストリームとともに伝送する伝送手段を備えているところ、
引用発明のディジタル放送受信端末装置は、記録番組選択回路11からのTSパケットデータを所定のディジタルフォーマットに変換して、ディジタルVTR等が接続されたバス上に送出するディジタルインターフェース13とを備えていることから、
引用発明と本願発明とは、ともに「第2のトランスポートストリーム(引用発明でいう「記録番組選択回路11からのTSパケットデータ」)を伝送する伝送手段」を備えているといえる。
しかしながら、上記伝送手段が、本願発明では、プログラムアソシエーションテーブル(PAT)生成手段によって生成した新たなプログラムアソシエーションテーブル(PAT)と、セレクションインフォメーションテーブル(SIT)生成手段によって生成したセレクションインフォメーションテーブル(SIT)とを、新たなプログラムスペシフィックインフォメーション(PSI)テーブル及び新たなサービスインフォメーション(SI)テーブルとして、上記第2のトランスポートストリーム生成手段により生成された上記第2のトランスポートストリームとともに伝送する伝送手段であるのに対し、引用発明では、そのような伝送手段ではない点で相違する。

以上の対比結果によれば、本願発明と引用発明との一致点、相違点は次のとおりであると認めることができる。
[一致点]
両者は、いずれも
「1以上のプログラムを構成要素とするサービスが多重化された第1のトランスポートストリームと、上記第1のトランスポートストリームに関するプログラムスペシフィックインフォメーション(PSI)テーブルと、サービスインフォメーション(SI)テーブルとを受信する受信手段と、
上記受信手段によって受信した第1のトランスポートストリームに含まれるパケットをフィルタリングして、ユーザが選択したサービスに関するパケットを含んだ第2のトランスポートストリームを生成する第2のトランスポートストリーム生成手段と、
上記第2のトランスポートストリームを伝送する伝送手段を備える、選択したTSパケットデータを伝送する伝送装置」である点で一致する。

[相違点]
本願発明は、
「上記受信手段によって受信した第1のトランスポートストリームに関するプログラムスペシフィックインフォメーション(PSI)テーブルとして伝送され、上記第1のトランスポートストリームに含まれる複数のサービスを参照するプログラムアソシエーションテーブル(PAT)に基づいて、上記ユーザが選択したサービスを参照する新たなプログラムアソシエーションテーブル(PAT)を生成するプログラムアソシエーションテーブル(PAT)生成手段」と、
「上記受信手段によって受信した上記サービスインフォメーション(SI)テーブルとして伝送されるサービスディスクリプションテーブル(SDT)及びイベントインフォメーションテーブル(EIT)に基づいて、上記ユーザが選択したサービスに関するパケットを含んだ上記第2のトランスポートストリームに関するセレクションインフォメーションテーブル(SIT)を生成するセレクションインフォメーションテーブル(SIT)生成手段」とを備えているのに対し、
引用発明は、このようなプログラムアソシエーションテーブル(PAT)生成手段、セレクションインフォメーションテーブル(SIT)生成手段を備えておらず、
また、本願発明は、伝送手段が、「上記プログラムアソシエーションテーブル(PAT)生成手段によって生成した新たなプログラムアソシエーションテーブル(PAT)と、上記セレクションインフォメーションテーブル(SIT)生成手段によって生成したセレクションインフォメーションテーブル(SIT)とを、新たなプログラムスペシフィックインフォメーション(PSI)テーブル及び新たなサービスインフォメーション(SI)テーブルとして、上記第2のトランスポートストリーム生成手段により生成された上記第2のトランスポートストリームとともに伝送する伝送手段」であり、
パーシャルトランスポートストリーム(フィルタリング処理が施されたトランスポートストリーム(TS)に、新たに生成されたプログラムスペシフィックインフォメーション/サービスインフォメーション(PSI/SI)を挿入したトランスポートストリーム)伝送装置であるのに対し、
引用発明は、伝送手段がそのような伝送手段ではなく、パーシャルトランスポートストリーム伝送装置ではない点。

4.判断
そこで上記相違点について検討する。
ア.上記引用例2の記載事項(h)ないし(m)によれば、上記引用例2には、
ディジタルビデオ放送トランスポートストリーム(DVB TS)から選択された部分ビットストリーム、すなわち、部分トランスポートストリームの媒体記憶に関し、
(ア)媒体記憶に関連する全てのMPEG-2プログラム・スペシフィック・インフォメーション(PSI)は、部分MPEG-2トランスポートストリームを正確に記述するためにコード化される必要があること、
プログラム・アソシエーション・テーブル(PAT)は、選択されたサービスのみをリストすること、加えて、ネットワーク・パケットID(PID)参照は、NIT PID の代わりにSIT PIDの値を使うこと、選択されていないプログラム/サービスの参照は除かれることが開示されているといえる。
(イ)前記ディジタルビデオ放送トランスポートストリーム(DVB TS)から選択された部分トランスポートストリーム(部分ビットストリーム)は、セレクション・インフォメーション・テーブル(SIT)以外のディジタルビデオ放送サービス・インフォメーション(SI)を含まないこと、
セレクション・インフォメーション・テーブル(SIT)は、媒体記憶に関連する放送ストリーム内のすべてのサービス・インフォメーション(SI)情報の概要を含むこと、
1つのビットストリーム中のSITの存在は、そのビットストリームがディジタルインターフェイスからの部分ビットストリームであることを知らせること、サービス・インフォメーション(SI)テーブル(NIT, SDT, EIT, BAT, RST, TDT, TOT)は、選択の後、除かれること、
セレクション・インフォメーション・テーブル(SIT)の伝送情報ループは、部分トランスポートストリームの記述子を含むこと、続くループは選択されたサービスの全てのサービスidを含むこと、サービスループは元のEIT(イベント・インフォメーション・テーブル)と、SDT(サービス・デスクリプション・テーブル)からの記述子を含んでいることが開示されているといえる。

イ.また、プログラム・スペシフィック・インフォメーション(PSI)は、プログラム・アソシエーション・テーブル(PAT)、プログラム・マップ・テーブル(PMT)、コンディショナル・アクセス・テーブル(CAT)、ネットワーク・インフォメーション・テーブル(NIT)を含むこと、また、サービス・インフォメーション(SI)は、イベント・インフォメーション・テーブル(EIT)、サービス・デスクリプション・テーブル(SDT)、タイム・デイト・テーブル(TDT)等のテーブルを含むことは、「ARIB STD-B10 1.0版“デジタル放送に使用する番組配列情報”平成9年6月 社団法人電波産業会 発行」等に記載されているように周知の事項である。

ウ.そうすると、引用例2には、
デジタルビデオ放送トランスポートストリーム(DVB TS)から選択された部分トランスポートストリームの媒体の記憶に関し、
前記選択前の元のデジタルビデオ放送トランスポートストリームに係るプログラム・スペシフィック・インフォメーション(PSI)に含まれ、元のデジタルビデオ放送トランスポートストリームに含まれる複数のサービスを参照するプログラム・アソシエーション・テーブル(PAT)に基づいて、選択されたサービスを参照するプログラム・アソシエーション・テーブル(PAT)が作成され、前記部分トランスポートストリームは、当該作成されたプログラム・アソシエーション・テーブル(PAT)を含むプログラム・スペシフィック・インフォメーション(PSI)を含むこと、
前記選択前の元のデジタルビデオ放送トランスポートストリームに係るサービス・インフォメーション(SI)に含まれるサービス・デスクリプション・テーブル(SDT)及びイベント・インフォメーション・テーブル(EIT)に基づいて、選択された部分トランスポートストリーム(すなわち、媒体記憶する全てのトランスポートストリーム)に関するセレクション・インフォメーション・テーブル(SIT)が生成され、前記部分トランスポートストリームは当該セレクション・インフォメーション・テーブル(SIT)を含み、前記元のデジタルビデオ放送トランスポートストリームに係るサービス・インフォメーション(SI)は含まない
という技術事項が開示されているといえる。

エ.ここで、媒体記憶において、引用例2に開示されるような構成、すなわち、選択された部分トランスポートストリームを媒体に記憶するにあたり、挿入されるプログラム・アソシエーション・テーブル(PAT)を選択されたサービスを参照するプログラム・アソシエーション・テーブル(PAT)とし、また、元のデジタルビデオ放送トランスポートストリームに係るサービス・インフォメーション(SI)は含まず、選択された部分トランスポートストリームに関するセレクション・インフォメーション・テーブル(SIT)を挿入するという構成を採用することにより、
選択された部分トランスポートストリームを媒体に記憶するにあたり、挿入されるプログラム・アソシエーション・テーブル(PAT)が元のデジタルビデオ放送トランスポートストリームに含まれる複数のサービスを参照するプログラム・アソシエーション・テーブル(PAT)であり、また、元のデジタルビデオ放送トランスポートストリームに係るサービス・インフォメーション(SI)を挿入する場合と比較して、媒体記憶するデータ量をより削減されたものとすることができることは明らかである。

オ.引用発明では、上記のとおり、受信、復号等したMPEG2規格のトランスポートストリーム(本願発明でいう、第1のトランスポートストリーム)から、ユーザによる番組番号指定信号に基づくプログラムを構成するパケットを選択して、ディジタルインタフェース13に選択したTSパケットデータ(本願発明でいう、第2のトランスポートストリーム)を出力し、ディジタルインターフェース13は当該選択したTSパケットデータをディジタルVTR等が接続されたバス上に送出するものであるところ、
引用発明や本願発明でいうトランスポートストリームは、データの伝送の場合と同様にデータの記憶の場合においても普通に採用されているデータ形式であり、また、トランスポートストリームの伝送、あるいは記憶に際し、伝送あるいは記憶するデータを削減すれば、伝送、記憶に必要な帯域をより減少させることができ、伝送、記憶のいずれにおいても同様に有利であることは、当業者に明らかであり、引用発明でも、デジタルインタフェース13を介して伝送されるデータの量を削減することが望まれていて、選択することで伝送するデータ量は削減されていることからすると、引用発明に引用例2開示の上記技術事項を適用する動機付けはあるというべきである。

そうすると、引用発明の
受信手段によって受信した第1のトランスポートストリームに含まれるパケットをフィルタリングして、ユーザが選択したサービスに関するパケットを含んだ第2のトランスポートストリームの生成、伝送において、
伝送するデータを削減して、伝送に必要な帯域を減少させるために、
上記引用例2に開示された
デジタルビデオ放送トランスポートストリーム(DVB TS)から選択された部分トランスポートストリームの媒体記憶における、
前記選択前の元のデジタルビデオ放送トランスポートストリームに係るプログラム・スペシフィック・インフォメーション(PSI)に含まれ、元のデジタルビデオ放送トランスポートストリームに含まれる複数のサービスを参照するプログラム・アソシエーション・テーブル(PAT)に基づいて、選択されたサービスを参照するプログラム・アソシエーション・テーブル(PAT)が作成され、前記部分トランスポートストリームは、当該作成されたプログラム・アソシエーション・テーブル(PAT)を含むプログラム・スペシフィック・インフォメーション(PSI)を含むという部分トランスポートストリームの生成、記憶に関する技術事項、及び、
選択前の元のデジタルビデオ放送トランスポートストリームに係るサービス・インフォメーション(SI)に含まれるサービス・デスクリプション・テーブル(SDT)及びイベント・インフォメーション・テーブル(EIT)に基づいて、選択された部分トランスポートストリーム(すなわち、媒体記憶する全てのストリーム)に関するセレクション・インフォメーション・テーブル(SIT)が生成され、前記部分トランスポートストリームは当該セレクション・インフォメーション・テーブル(SIT)を含み、前記元のデジタルビデオ放送トランスポートストリームに係るサービス・インフォメーション(SI)は含まないという部分トランスポートストリームの生成、記憶に関する技術事項を適用して、
本願発明のように、
上記受信手段によって受信した第1のトランスポートストリームに関するプログラムスペシフィックインフォメーション(PSI)テーブルとして伝送され、上記第1のトランスポートストリームに含まれる複数のサービスを参照するプログラムアソシエーションテーブル(PAT)に基づいて、上記ユーザが選択したサービスを参照する新たなプログラムアソシエーションテーブル(PAT)を生成するプログラムアソシエーションテーブル(PAT)生成手段と、
上記受信手段によって受信した上記サービスインフォメーション(SI)テーブルとして伝送されるサービスディスクリプションテーブル(SDT)及びイベントインフォメーションテーブル(EIT)に基づいて、上記ユーザが選択したサービスに関するパケットを含んだ上記第2のトランスポートストリームに関するセレクションインフォメーションテーブル(SIT)を生成するセレクションインフォメーションテーブル(SIT)生成手段と、を備え、
さらに、上記伝送手段を
前記伝送する選択したTSパケットデータを、前記各生成手段で生成した新たなプログラムアソシエーションテーブル(PAT)と、セレクションインフォメーションテーブル(SIT)とを前記伝送する選択したTSパケットデータとともに伝送する伝送手段とすること、
すなわち、
上記伝送手段を、上記プログラムアソシエーションテーブル(PAT)生成手段によって生成した新たなプログラムアソシエーションテーブル(PAT)と、上記セレクションインフォメーションテーブル(SIT)生成手段によって生成したセレクションインフォメーションテーブル(SIT)とを、新たなプログラムスペシフィックインフォメーション(PSI)テーブル及び新たなサービスインフォメーション(SI)テーブルとして、上記第2のトランスポートストリーム生成手段により生成された上記第2のトランスポートストリームとともに伝送する伝送手段とすることにより、引用発明のディジタル放送受信端末装置をパーシャルトランスポートストリーム伝送装置とすることは、当業者が容易に想到し得たことであると認められる。

また、本願発明の効果についてみても、上記相違点に係る構成の採用に伴って当業者が当然に予測し得る程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるとはいえない。

5.むすび
以上のとおり、請求項1に係る本願発明は、引用例1、2に記載された発明、周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は他の請求項に係る発明について特に検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-03-15 
結審通知日 2012-03-21 
審決日 2012-04-04 
出願番号 特願2007-243112(P2007-243112)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 後藤 嘉宏  
特許庁審判長 藤内 光武
特許庁審判官 梅本 達雄
乾 雅浩
発明の名称 パーシャルトランスポートストリーム伝送装置、パーシャルトランスポートストリーム伝送方法、及び、トランスポートストリーム受信装置  
代理人 伊賀 誠司  
代理人 野口 信博  
代理人 藤井 稔也  
代理人 小池 晃  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ