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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1261894 |
審判番号 | 不服2011-12860 |
総通号数 | 154 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-10-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-06-15 |
確定日 | 2012-08-16 |
事件の表示 | 特願2006- 65453「電子メール送信プログラム、電子メール送信装置、電子メール送信方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 9月20日出願公開、特開2007-241807〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成18年3月10日の出願であって、平成22年12月17日付けで拒絶理由が通知され、平成23年2月21日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年3月7日付けで拒絶査定がなされたもので、これを不服として、同年6月15日に審判請求がなされるとともに手続補正書が提出されたものである。 第2.補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成23年6月15日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は補正前の特許請求の範囲の請求項7に記載された発明を、 「コンピュータが行う電子メールを送信する電子メール送信方法であって、 電子メールの送信先として送信アドレスを設定する設定ステップと、 前記送信アドレスがアドレス帳に登録されているアドレスとアカウント、ドメインが同一、または同一のスペルを有するアドレスであるか否かを判断する判断ステップと、 前記判断ステップによる判断結果に基づいて電子メール送信の是非に係る通知を出力する出力ステップと を備えてなる電子メール送信方法。」 という発明(以下、「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。 2.補正の目的について 上記補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項7に記載された「所定の関係を有するアドレス」を「アカウント、ドメインが同一、または同一のスペルを有するアドレス」と限定して特許請求の範囲を減縮するものである。 3.独立特許要件について 上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。 (1)補正後の発明 上記「1.補正後の本願発明」の項で認定したとおりである。 (2)引用発明 原審の拒絶理由に引用された特開平11-243412号公報(平成11年9月7日出願公開。以下、「引用例」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。 a.「端末より利用者が注意を要する送信先アドレスに「注意の指定」を付してファイルサーバに登録する段階と、 前記利用者から電子メールが発信されたとき、該電子メールの送信先アドレスに「注意の指定」を付して前記ファイルサーバに登録されているか否かを照合し、前記送信先アドレスに「注意の指定」を付して登録されていない場合、前記電子メールを該送信先アドレスに送信するメール照合段階と、 前記メール照合段階で前記送信先アドレスを照合して「注意の指定」を付して登録されている場合、前記利用者に送信先アドレスの確認と送信してよいかの確認のための問合せを行い、前記電子メールの内容を確認した利用者より「問題なし」の応答があれば、前記電子メールを当該送信先アドレスに送信し、「問題あり」の応答があれば、前記電子メールを廃棄するメール問合せ段階と有する電子メール送信先アドレスの誤り防止方法。」(【請求項1】の記載。) b.「本発明の目的は、送信先を誤った電子メールが相手方に送信され、外部に情報が漏れてしまうおそれのない電子メールの送信先アドレスの誤り防止方法およびシステムを提供することである。」(段落【0005】の記載。) 上記a,bの記載から、引用例には、送信先を誤った電子メールが相手方に送信され、外部に情報が漏れてしまうおそれのない電子メールの送信先アドレスの誤り防止方法およびシステムを提供することを目的とする以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 〈引用発明〉 端末より利用者が注意を要する送信先アドレスに「注意の指定」を付してファイルサーバに登録する段階と、 前記利用者から電子メールが発信されたとき、該電子メールの送信先アドレスに「注意の指定」を付して前記ファイルサーバに登録されているか否かを照合し、前記送信先アドレスに「注意の指定」を付して登録されていない場合、前記電子メールを該送信先アドレスに送信するメール照合段階と、 前記メール照合段階で前記送信先アドレスを照合して「注意の指定」を付して登録されている場合、前記利用者に送信先アドレスの確認と送信してよいかの確認のための問合せを行い、前記電子メールの内容を確認した利用者より「問題なし」の応答があれば、前記電子メールを当該送信先アドレスに送信し、「問題あり」の応答があれば、前記電子メールを廃棄するメール問合せ段階と有する電子メール送信先アドレスの誤り防止方法。 (3)対比 補正後の発明と引用発明とを対比する。 (3-1) 引用発明は、「利用者から電子メールが発信され」るものであり、電子メールが発信される前に、利用者により送信先アドレスを設定することがなされることは、直接的な記載はないものの当然のことであるから、引用発明は、補正後の発明の「電子メールの送信先として送信アドレスを設定する設定ステップ」を備えることは明らかである。 (3-2) 引用発明の「メール照合手段」は、送信アドレスに関して、送信の是非に係る判断を行う点で、補正後の発明の「判断ステップ」と共通している。 (3-3) 引用発明の「送信して良いかの確認のための問合せ」は、補正後の発明の「電子メール送信の是非に係る通知」に相当する。 したがって、両者には以下の一致点と相違点とがある。 〈一致点〉 コンピュータが行う電子メールを送信する電子メール送信方法であって、 電子メールの送信先として送信アドレスを設定する設定ステップと、 送信アドレスに関して、送信の是非に係る判断を行う判断ステップと、 前記判断ステップによる判断結果に基づいて電子メール送信の是非に係る通知を出力する出力ステップと を備えてなる電子メール送信方法。 〈相違点〉 送信の是非に係る判断を行う「判断ステップ」が、補正後の発明では「送信アドレスを設定するステップ」の後に、「前記送信アドレスがアドレス帳に登録されているアドレスとアカウント、ドメインが同一、または同一のスペルを有するアドレスであるか否かを判断する」ものであるのに対し、引用発明では、送信アドレスが設定され、「電子メールが発信されたとき」に判断され、そして、その判断内容は、「電子メールの送信先アドレスが「注意の指定」を付して登録されているか否かを照合」するものである点。 (4)判断 相違点につき検討する。 引用発明においては、送信アドレスが設定され、「電子メールが発信されたとき」に判断されているが、これは、登録、判断処理が、端末ではなく、ファイルサーバにおいて行われていることに起因するものである。そして、ファイルサーバで行っている「注意の指定」の登録処理や判断処理を、端末とファイルサーバとの間で、どのように分担処理させるようにするかは、端末の処理能力、ファイルサーバの処理能力や、複数の端末間で処理を共用するか否か等を考慮し、適宜定める設計的事項であり、引用発明において、判断処理を端末で行うようにし、送信アドレスを設定するステップの後に、判断するようにする点に、格別の点はない。 また、誤送信を防ぐための判断内容については、類似アドレスをアドレス帳から見つけ出すことによって誤送信を防止すること、及び当該類似アドレスの見つけ出しを「アドレス帳に登録されているアドレスとアカウント、ドメインが同一、または同一のスペルを有するアドレス」か否かで行うことは、本願出願前の周知技術であって、引用発明の誤送信を防ぐための判断内容に替えて、当該周知技術を採用し、相違点に係る補正後の発明を構成するに特段の創意を要するものではない。 この周知技術の一例として、以下の文献を提示する。 周知技術に係る文献1:特開2001-230802号公報 c.「【特許請求の範囲】 【請求項1】 メールアドレスを登録しておきメールを送信する際にそこから宛先を選択できるアドレス登録簿を有する電子メールシステムを構成する情報処理装置において、メールアドレスが示す所属名と氏名を抽出するアドレス特徴抽出手段を具備し、アドレス特徴抽出手段によって抽出した宛先アドレスの所属名とあらかじめ指定の所属名とが同一か否かという条件を判別するとともに、宛先アドレスの所属名をあらかじめ指定の所属名に置き換えた文字列と同一または類似の文字列で構成されるアドレスがアドレス登録簿に存在するか否かという条件を判別することによって宛先の指定誤りの有無を検出する宛先アドレス正誤判定手段とを、具備することを特徴とした情報処理装置。 【請求項2】 請求項1に記載のアドレス特徴抽出手段および宛先アドレス正誤判定手段によって、宛先アドレスの所属名があらかじめ指定の所属名と異なる場合に、あらかじめ指定の所属名と同一の所属名で、氏名が宛先アドレスと同一または同姓などの類似の文字列で構成されるアドレスが、アドレス登録簿に存在するならば、宛先の指定誤りの恐れがあると判断し、ユーザーに通知する工程を有することを特徴とした情報処理方法。 【請求項3】 請求項1に記載の情報処理装置において、インターネットメールアドレスが示すドメイン名とユーザーIDを抽出するアドレス特徴抽出手段を具備し、アドレス特徴抽出手段によって抽出した宛先アドレスのドメイン名とあらかじめ指定のドメイン名とが同一か否かという条件を判別するとともに、宛先アドレスのドメイン名をあらかじめ指定のドメイン名に置き換えた文字列と同一または類似の文字列で構成されるアドレスがアドレス登録簿に存在するか否かという条件を判別することによって宛先の指定誤りの有無を検出する宛先アドレス正誤判定手段とを、具備することを特徴とした情報処理装置。 【請求項4】 請求項3に記載のアドレス特徴抽出手段および宛先アドレス正誤判定手段によって、宛先アドレスのドメイン名があらかじめ指定のドメイン名と異なる場合に、あらかじめ指定のドメイン名と同一のドメイン名で、ユーザーIDが宛先アドレスと同名または近似値などの類似の文字列で構成されるアドレスが、アドレス登録簿に存在するならば、宛先の指定誤りの恐れがあると判断し、ユーザーに通知する工程を有することを特徴とした情報処理方法。」 周知技術に係る文献2:特開平9-288634号公報 d.「【0006】本発明は、コンピュータ通信においてアドレスの入力が従来に比べて容易で、しかもアドレスの入力間違いが少ないアドレス管理方法を提供することを目的とする。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明のコンピュータ通信におけるアドレス管理方法は、予めメモリに蓄積されたアドレス群をアドレス入力情報に基づいて検索して、アドレス入力情報と完全一致または部分一致または類似する候補アドレスを抽出し、」 また、補正後の発明の構成を採用することにより奏する作用効果は、引用発明及び当該技術分野における周知技術を採用することにより奏する作用効果からみて格別のものであるともいえない。 以上のとおり、補正後の発明は引用発明及び当該技術分野における周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 4.結語 したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明について 1.本願発明 平成23年6月15日付けの手続補正を上記のとおり却下したので、本願の請求項7に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成23年2月21日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項7に記載された以下のとおりのものと認める。 「コンピュータが行う電子メールを送信する電子メール送信方法であって、 電子メールの送信先として送信アドレスを設定する設定ステップと、 前記送信アドレスがアドレス帳に登録されているアドレスと所定の関係を有するアドレスであるか否かを判断する判断ステップと、 前記判断ステップによる判断結果に基づいて電子メール送信の是非に係る通知を出力する出力ステップと を備えてなる電子メール送信方法。」 2.引用発明及び周知技術 引用発明及び周知技術は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項中の「(2)引用発明」及び「(4)判断」の項に示したとおりである。 3.対比・判断 そこで、本願発明と引用発明とを対比するに、本願発明は上記補正後の発明から当該補正に係る限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成に当該補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項で検討したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由により、容易に発明できたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-06-15 |
結審通知日 | 2012-06-19 |
審決日 | 2012-07-02 |
出願番号 | 特願2006-65453(P2006-65453) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 古河 雅輝 |
特許庁審判長 |
水野 恵雄 |
特許庁審判官 |
衣川 裕史 山田 正文 |
発明の名称 | 電子メール送信プログラム、電子メール送信装置、電子メール送信方法 |
代理人 | 赤澤 日出夫 |