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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E03B
管理番号 1261899
審判番号 不服2011-15156  
総通号数 154 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-07-13 
確定日 2012-08-16 
事件の表示 特願2007-221253号「雨水取出装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 3月12日出願公開、特開2009- 52327号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成19年8月28日の出願であって、平成23年4月14日付けで拒絶査定がされ、この査定に対し、同年7月13日に本件審判が請求されたものである。

第2 本願発明について
1.本願発明
本件出願の請求項1?2に係る発明は、平成23年3月4日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】
上側縦樋と下側縦樋とを連結する連結筒部と、その横に配置された、雨水の取出口部を有する雨水取出筒部とを備えた雨水取出装置であって、連結筒部は、上側縦樋から流下する雨水を受けて雨水取出筒部へと流通させる溜水底板と、上側に向けて溜水底板に立設された中筒とを有し、雨水取出筒部にはフィルターが内設されているとともに、フィルター上方の開口には着脱可能な蓋が配設され、フィルターの高さ寸法は、雨水取出筒部高さの1/2以上であることを特徴とする雨水取出装置。」

2.引用刊行物とその記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開2005-9155号公報(以下「刊行物1」という。)には、一般住宅等における雨樋の縦樋部に付設する取水器を有する雨樋用集水装置に関し、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。

(ア)「【請求項1】
雨樋の縦樋部を部分的に切断して得る上側縦樋部と下側縦樋部間に接続して取水を行う取水器を有する雨樋用集水装置において、前記取水器を、底板部及び側板部を有し、かつ下部に取水した雨水を外部に排出する取水排出部を設けた容器状の取水ケース部と、この取水ケース部の上端開口を覆うカバー部とにより構成し、前記取水ケース部の底板部に、上下方向に貫通する筒体部を設け、前記底板部の下方に突出する部位を、前記下側縦樋部の開口に挿入する接続筒部とするとともに、前記カバー部に、前記上側縦樋部が挿通する挿通孔部及び前記取水ケース部に係合する外側縁部を設けたことを特徴とする雨樋用集水装置。
【請求項2】
前記取水ケース部は、内部にゴミ類を阻止するゴミ取部を備えることを特徴とする請求項1記載の雨樋用集水装置。
【請求項3】
前記ゴミ取部は、前記取水ケース部の上端開口に係止する吊下部と、この吊下部の下端に支持され、かつ前記取水ケース部の内部に収容するゴミ取面部を備えることを特徴とする請求項1記載の雨樋用集水装置。」
(イ)「【0012】
雨樋用集水装置1は、基本的な構成として、取水器1aと貯水タンク1bを備える。取水器1aは、取水ケース部2,カバー部4及びゴミ取部7を備え、これらは高温,冬季の凍結及び自然風化に強く、錆の生じないステンレス材により形成する。取水ケース部2は、円形(ドーナツ形)の底板部2d及び円筒形の側板部2sを有することにより、全体が上端開口2pの容器状となる。そして、下部となる側板部2sの下端付近には、取水した雨水Wを外部に排出する取水排出部3を設けるとともに、底板部2dの中心には、上下方向に貫通する筒体部5を取付けて一体化する。この場合、底板部2dから上方に突出する筒体部5は、取水ケース部2における一時的な最大取水量を決定するため、所定の長さ(高さ)を確保する。また、底板部2dから下方に突出する筒体部5は、下側縦樋部Ddの開口に挿入する接続筒部5cとなるため、所定の長さを確保するとともに、縦樋部Dに適合する外径を選定する。なお、底板部2d,側板部2s,筒体部5等は、溶接(TiG溶接等)により一体に構成する。」
(ウ)「【0022】
よって、このような本実施例に係る雨樋用集水装置1によれば、上側縦樋部Duから流れ落ちる雨水Wは、取水ケース部2の中に入るとともに、一部が筒体部5と取水ケース部2間の空間に入る。筒体部5と取水ケース部2間の雨水Wは、取水排出部3から排出され、送水ホース41を通り、貯水タンク1bに流入する。・・・」

・記載事項(ア)の「容器状の取水ケース部」は、記載事項(イ)の「円形(ドーナツ形)の底板部2d及び円筒形の側板部2sを有することにより、全体が上端開口2pの容器状となる」ものであるので、「円筒形で上端開口の容器状の取水ケース部」といえる。

すると、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が開示されているものということができる。
「雨樋の縦樋部を部分的に切断して得る上側縦樋部と下側縦樋部間に接続して取水を行う取水器であって、
前記取水器を、底板部及び側板部を有し、かつ下部に取水した雨水を外部に排出する取水排出部を設けた、円筒形で上端開口の容器状の取水ケース部と、この取水ケース部の上端開口を覆うカバー部とにより構成し、
前記取水ケース部の底板部に、上下方向に貫通する筒体部を設け、
前記取水ケース部は、内部にゴミ類を阻止するゴミ取部を備え、
前記ゴミ取部は、前記取水ケース部の上端開口に係止する吊下部と、この吊下部の下端に支持され、かつ前記取水ケース部の内部に収容するゴミ取面部を備える
取水器」

(2)原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である登録実用新案第3129492号公報(以下「刊行物2」という。)には、雨水除塵取水装置に関し、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。
(ア)「【0005】
竪樋の雨水流通路14の雨水は受水筒部1に設置された斜流板2により、常に取水筒部4へ流れる構造としており、取水筒部1には取り外し可能なゴミ濾過材7を設置し下面に取水口8を設けているため、ゴミ除去済の雨水を取水する事が出来るが、取水不要な場合は取水口8の開閉コック9を閉めれば雨水は溢出雨水分岐樋5を経てもとの下部竪樋15から排水溝へ排出される。豪雨時、取水筒部4で溢れた雨水も同様に排出される。また貯留槽11の満水位12と本装置内の溢水位13即ち溢出雨水分岐樋5の高さを同一に設置すれば貯留槽から水が溢れる事はない。
【考案を実施するための最良の形態】
【0006】
雨水除塵取水装置17は、耐候性に優れ衝撃に強く軽量な素材、例えばポリカーボネートを使い,コンパクトな構造で取扱いは簡単なものとする。本装置17は雨水取水に適切な竪樋の適切な位置に取り付ける筒状型のもので、竪樋の雨水流通炉14の一部を切断除去した空隙に、はめ込むように設置する。雨水流通路14の切断部を装置17上部の受水筒部1へ入れ込み、装置17下部の溢出雨水分岐樋5は下部竪樋15の中に落とし込んで切断竪樋上下を繋いで固定する。受水筒部1は雨水流通路14からの雨水を取水筒部4へ受け流す機能を持つが、そのため、受水筒部1と直下の溢出雨水分岐樋5の間に斜流板2を取付ける。
取水筒部4にはゴミ濾過材7やゴミ除去網6を内蔵させ、底面には開閉コック9付きの取水口8を取り付け、貯留槽11へつなげてゴミを除去した雨水を貯留する。装置17は受水筒部1と取水筒部4と溢出雨水分岐樋5の三部分を持つ構造で受水筒部1下部は二つの筒となり取水筒部4と溢出雨水分岐樋5になる。取水筒部4と溢出雨水分岐樋5は隣り合わせの構造なので取水筒部4の溢水は溢出雨水分岐樋5に流れて切断された下部竪樋15を経て排水溝16に排出する。装置17上面には、取水筒部4に内蔵された合成繊維等のゴミ濾過材7や、ステンレスのゴミ除去網6の取替えや掃除のための蓋3をつけておく。」(なお、【0006】の「雨水流通炉14」は「雨水流通路14」の誤記と認める。)

(イ)【図1】には「本考案実施例1の構造を示す図」、【図2】には「本装置の部品構成を説明する分解図」、【図3】には「本装置を竪樋に取り付けた状態の側面図」が記載されている。
そして、それらの図、特に図1において、
・雨水除塵取水装置17は、受水筒部1から円筒形状の溢出雨水分岐樋5にいたる右側の部分と、その部分に対して左側横側に配置された、蓋3で覆われる開口から取水筒部4を経て取水口8にいたる左側の部分とで構成されている。
・上記右側の部分は、受水筒部1から円筒形状の溢出雨水分岐樋5にいたるものであり、形態は筒といえる。
・上記左側の部分も、蓋3で覆われる開口から取水筒部4を経て取水口8にいたるものであり、形態は筒といえる。
・受水筒部1は、符号14が付された上側の竪樋と連結されている。
・溢出雨水分岐樋5は、下部竪樋15と連結されている。
・上記左側の部分の取水筒部4には、ゴミ濾過材7、ゴミ除去網6を内蔵されている。
・雨水除塵取水装置17の上記左側の部分のゴミ濾過材7上方の上面の開口には、記載事項(ア)の「合成繊維等のゴミ濾過材7や、ステンレスのゴミ除去網6の取替えや掃除のための蓋3」が回動可能に軸支された態様で配設されている。

(ウ)【図4】には「実施例2の構造を示す図」が記載されている。
そして、図において、
・雨水除塵取水装置17は、形状が、図1?3の様な、右側の部分と、左側の部分とで構成されたものではなく、全体が略一つの筒状である。

(3)原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開2005-120714号公報(以下「刊行物3」という。)には、雨水の取水装置に関し、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】
縦樋の途中に設けられる取水器は途中が分断された縦樋の上側部下端に繋がる上端の取水口と縦樋の下側部上端に繋がる下端の排水口とが同一鉛直線上に位置し、この取水口と排水口との間に取水口の真下に位置する取水受け部と、この取水受け部に入らない雨水を排水口に導く排水流路が形成され、取水受け部にはフィルターが上方より脱着可能に設けられ、取水受け部の下端のホース接続口と密閉型の取水タンクの上端側部のホース接続口との間には可撓性のホースが繋がれており、取水器の排水流路と取水タンク内部との間にエアー抜き用チューブが前記可撓性のホース内に挿通されて設けられていることを特徴とする雨水の取水装置。」
(イ)「【0009】・・・フィルター9の取り替えもしくは洗浄の必要性が生じたときは前記取水器2を縦樋4から外して取水器2の上端の取水口5から指を入れて取水受け部7に対しフィルター9を脱着すれば良い。」
(ウ)【図3】には「雨水の取水装置の拡大断面図」が記載されている。
そして、図において、フィルター9は、上下方向の厚みが大きなものとして記載されている。

3.本願発明と引用発明との対比
(1)両発明の対応関係
(a)引用発明の「取水器」は、本願発明の「雨水取出装置」に相当し、以下同様に、底板部を「上下方向に貫通する筒体部」は、「上側に向けて溜水底板に立設された中筒」に相当する。
(b)引用発明の「円筒形で上端開口の容器状の取水ケース部」は、「雨樋の縦樋部を部分的に切断して得る上側縦樋部と下側縦樋部間に接続して取水を行う取水器」を構成するものであるので、本願発明の「上側縦樋と下側縦樋とを連結する連結筒部」に相当する。
(c)引用発明の取水器は、「底板部及び側板部を有し、かつ下部に取水した雨水を外部に排出する取水排出部を設けた、円筒形で上端開口の容器状の取水ケース部と、この取水ケース部の上端開口を覆うカバー部とにより構成」され、「前記取水ケース部の底板部に、上下方向に貫通する筒体部を設け」て、刊行物1記載事項(ウ)の「上側縦樋部Duから流れ落ちる雨水Wは、取水ケース部2の中に入るとともに、一部が筒体部5と取水ケース部2間の空間に入る。筒体部5と取水ケース部2間の雨水Wは、取水排出部3から排出され、送水ホース41を通り、貯水タンク1bに流入する。」動作を行うものであって、上側縦樋部Duから流れ落ちる雨水Wが入る「筒体部5と取水ケース部2間の空間」の底が「底板部」で閉鎖され、雨水Wを受けることで取り出すものであることが自明である。
そうすると、引用発明の「底板部」と、本願発明の「上側縦樋から流下する雨水を受けて雨水取出筒部へと流通させる溜水底板」とは、「上側縦樋から流下する雨水を受けて取出す溜水底板」である点で共通する。

(2)両発明の一致点
「上側縦樋と下側縦樋とを連結する連結筒部を備えた雨水取出装置であって、連結筒部は、上側縦樋から流下する雨水を受けて取出す溜水底板と、上側に向けて溜水底板に立設された中筒とを有する雨水取出装置。」

(3)両発明の相違点
溜水底板で雨水を取出すために、本願発明の雨水取出装置は、連結筒部「の横に配置された、雨水の取出口部を有する雨水取出筒部を備え」、溜水底板が「側縦樋から流下する雨水を受けて雨水取出筒部へと流通させる」もので、「雨水取出筒部にはフィルターが内設されているとともに、フィルター上方の開口には着脱可能な蓋が配設され、フィルターの高さ寸法は、雨水取出筒部高さの1/2以上である」のに対して、引用発明は、連結筒部「の横に配置された、雨水の取出口部を有する雨水取出筒部」を有しておらず、底板部(本願発明「溜水底板」に相当するもの)は、「雨水取出筒部へと流通させる」ものではなく、「雨水取出筒部にはフィルターが内設されているとともに、フィルター上方の開口には着脱可能な蓋が配設され」たものではない点。

4.本願発明の容易推考性の検討
ア.本願発明と刊行物2記載の構成との対応関係
(a)刊行物2記載事項(ア)?(ウ)の「符号14が付された上側の竪樋」は、本願発明の「上側縦樋」に相当し、以下同様に、
「下部竪樋15」は、「下側縦樋」に、
「取水口8」は、「雨水の取出口部」に、
「ゴミ濾過材7」を「内蔵」することは、「フィルターが内設」に、
「雨水除塵取水装置17」は「雨水取出装置」に相当する。
(b)刊行物2記載事項(イ)の雨水除塵取水装置17の「受水筒部1から円筒形状の溢出雨水分岐樋5にいたる右側の部分」は、その受水筒部1が「符号14が付された上側の竪樋と連結され」、溢出雨水分岐樋5が「下部竪樋15と連結され」、「形態は筒といえ」るのものであるので、本願発明の「上側縦樋と下側縦樋とを連結する連結筒部」に相当する。
(c)刊行物2記載事項(イ)の雨水除塵取水装置17の「(右側の部分)に対して左側横側に配置された、蓋3で覆われる開口から取水筒部4を経て取水口8にいたる左側の部分」は、「形態は筒といえ」るのものであるので、本願発明の「(連結筒部)の横に配置された、雨水の取出口部を有する雨水取出筒部」に相当する。
(d)刊行物2記載事項(ア)?(イ)の「蓋3」と、本願発明の「着脱可能な蓋」とは、「蓋」である点で共通する。
(e)そして、刊行物2記載事項(イ)の雨水除塵取水装置17の「左側の部分の取水筒部4には、ゴミ濾過材7、ゴミ除去網6を内蔵され」、「左側の部分のゴミ濾過材7上方の上面の開口には、合成繊維等のゴミ濾過材7や、ステンレスのゴミ除去網6の取替えや掃除のための蓋3が回動可能に軸支された態様で配設されている」構成と、本願発明の「雨水取出筒部にはフィルターが内設されているとともに、フィルター上方の開口には着脱可能な蓋が配設され」る構成とは、上記(c)に記載したように、前者の「左側の部分」が、本願発明の「雨水取出筒部」に相当するものであるので、両者は、「雨水取出筒部にはフィルターが内設されているとともに、フィルター上方の開口には蓋が配設され」る構成である点で共通する。

そうすると、刊行物2記載事項(イ)のものは、本願発明の以下の構成に相当する構成を有している。
「上側縦樋と下側縦樋とを連結する連結筒部と、その横に配置された、雨水の取出口部を有する雨水取出筒部とを備えた雨水取出装置であって、雨水取出筒部にはフィルターが内設されているとともに、フィルター上方の開口には蓋が配設される雨水取出装置。」

イ.引用発明に刊行物2記載の構成を適用することに関して、
刊行物2の記載事項(ウ)には、「実施例2」として、記載事項(イ)の「受水筒部1から円筒形状の溢出雨水分岐樋5にいたる右側の部分と、その部分に対して左側横側に配置された、蓋3で覆われる開口から取水筒部4を経て取水口8にいたる左側の部分とで構成されている」ものとは異なる、「全体が略一つの筒状」の雨水除塵取水装置が記載されており、それは、連結筒部の横に配置された雨水取出筒部を有していない点で、引用発明と共通する形式のものである。

そして、刊行物2記載事項(イ)に図示された雨水除塵取水装置は、雨水取出装置である点において引用発明と共通する技術分野に属するものであり、さらにそれは、引用発明と共通する形式の実施例2と並記する形式で記載されたものであって、連結筒部の横に配置された雨水取出筒部を有している形式と、いない形式との置換に特段の困難性も存在しないものである。

そうすると、引用発明の、連結筒部「の横に配置された、雨水の取出口部を有する雨水取出筒部」を有しておらず、「雨水取出筒部にはフィルターが内設されているとともに、フィルター上方の開口には着脱可能な蓋が配設され」たものではない構成を、刊行物2記載事項(イ)に図示された構成の様な「受水筒部1から円筒形状の溢出雨水分岐樋5にいたる右側の部分と、その部分に対して左側横側に配置された、蓋3で覆われる開口から取水筒部4を経て取水口8にいたる左側の部分とで構成され」(すなわち、上記ア.の一致点の表現を用いると「上側縦樋と下側縦樋とを連結する連結筒部と、その横に配置された、雨水の取出口部を有する雨水取出筒部とを備え」)、「取水筒部4には、ゴミ濾過材7、ゴミ除去網6を内蔵されている」(すなわち、上記ア.の一致点の表現を用いると「雨水取出筒部にはフィルターが内設されている」)構成に変更することは、当業者が容易になし得ることである。

ウ.「側縦樋から流下する雨水を受けて雨水取出筒部へと流通させる」溜水底板に関して、
刊行物2記載事項(イ)に図示された雨水除塵取水装置は、雨水が取水筒部4を流れて、取水口8にいたるものであるので、上記イ.の構成変更にともない、引用発明の底板部(本願発明「溜水底板」に相当するもの)を、刊行物2記載事項(イ)に図示された雨水除塵取水装置の雨水を取水筒部4を経て取水口8にいたる左側の部分(本願発明「雨水取出筒部」に相当する部分)へ流通させるものとすることも、当業者が容易に想到し得たことである。

エ.「着脱可能な蓋」に関して、
また、刊行物2記載事項(ア)に記載されている様に、刊行物2の「蓋」は「取水筒部4に内蔵された合成繊維等のゴミ濾過材7や、ステンレスのゴミ除去網6の取替えや掃除のため」に設けられているものである。
そうすると、刊行物2記載事項(イ)に図示されたものは、蓋が雨水除塵取水装置17に回動可能に軸支された態様のものであるとしても、その蓋の具体的構成は、上記機能が発揮できることを前提として、当業者が適宜選択し得るものである。
一方、例えば、特開2001-303625号公報【0018】に「蓋20を外すことで内部の掃除ができる。」と、実開平2-143426号公報に係る全文明細書の第6頁に「蓋体2を管本体1から外すことができるので、ゴミが詰まった場合等、簡単に掃除口11を開けて掃除ができる。」と記載されているように、蓋として、「着脱可能な蓋」は周知慣用のものである。
さらに、該「着脱可能な蓋」が、構成が簡単であることや、取り外しできること等の「着脱可能な蓋」特有の性質、及び、開口を閉鎖するという基本機能において、刊行物2記載事項(イ)に図示された様な回動可能に軸支された蓋と、互換性を有するものであることも広く知られていることである。
そうすると、刊行物2記載事項(イ)の図示された構成において蓋を、周知慣用の「着脱可能な蓋」として構成する事は、当業者が適宜選択し得た設計上の事項と言える。

オ.「フィルターの高さ寸法」に関して、
また、刊行物3記載事項(イ)に、「取水口5から指を入れて取水受け部7に対しフィルター9を脱着すれば良い」と記載されているように、フィルターの脱着が開口部を通してアクセスされる手で行われることが既知であることを前提とすると、刊行物2記載事項(ア)に「取水筒部4に内蔵された合成繊維等のゴミ濾過材7や、ステンレスのゴミ除去網6の取替えや掃除のための蓋3をつけておく」と記載された、刊行物2の「ゴミ濾過材7」の「取替えや掃除」においても、それが取水筒部4上方の開口を通してアクセスされる手で行われることは、容易に想像できる。
そうすると、刊行物2の「取水筒部4上方の開口」と「ゴミ濾過材7」との距離を、当該アクセスが可能な短い距離にすることは、当業者が設計上適宜設定なし得る事項である。
さらに、刊行物3にも、上下方向の厚みが大きなフィルター9が記載され、他にも、特開平9-3983号公報【図3】に【0011】のスポンジ製のフィルター12が厚みが大きな形状で記載されている様に、フィルターとして厚みが大きなものは、周知慣用であり、濾過性能確保の為にもフィルターに十分な厚みが必要なことも周知である。
そうすると、刊行物2の「取水筒部4上方の開口」と「ゴミ濾過材7」との距離を、当該アクセスが可能な短い距離に設計しつつ、刊行物2の「ゴミ濾過材7」として、該周知慣用の厚みが大きなものを採用して、結果として「フィルターの高さ寸法は、雨水取出筒部高さの1/2以上である」構成とすることは当業者が容易に想到し得た事項である。

カ.総合判断
まとめると、上記イ.記載の様に、引用発明の連結筒部の横に配置された雨水取出筒部を有しない構成を、刊行物2記載の様な「受水筒部1から円筒形状の溢出雨水分岐樋5にいたる右側の部分と、その部分に対して左側横側に配置された、蓋3で覆われる開口から取水筒部4を経て取水口8にいたる左側の部分とで構成され」、「取水筒部4には、ゴミ濾過材7、ゴミ除去網6を内蔵されている」構成に変更するとともに、上記ウ.記載の様に、底板部を、刊行物2記載事項(イ)に図示された「雨水除塵取水装置の雨水を取水筒部4を経て取水口8にいたる左側の部分へ流通させるもの」とし、上記エ.記載の様に、周知慣用の「着脱可能な蓋」を用いて構成し、上記オ.記載の様なゴミ濾過材選択、設計上の寸法設定を行って、相違点に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願発明の作用効果は、引用発明、刊行物2?3記載の構成、及び周知技術から当業者であれば予測できた範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用発明、刊行物2?3記載の構成、及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、刊行物2?3記載の構成、及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-06-06 
結審通知日 2012-06-12 
審決日 2012-07-02 
出願番号 特願2007-221253(P2007-221253)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 瓦井 秀憲  
特許庁審判長 高橋 三成
特許庁審判官 鈴野 幹夫
中川 真一
発明の名称 雨水取出装置  
代理人 西澤 利夫  

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