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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1261964
審判番号 不服2010-24610  
総通号数 154 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-11-01 
確定日 2012-08-13 
事件の表示 特願2005-512276号「ボーンプレート」拒絶査定不服審判事件〔平成17年7月7日国際公開、WO2005/060846号、平成19年6月14日国内公表、特表2007-515191号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 本件に係る出願(以下「本願」という。)は、2003年12月22日を国際出願日とする出願であって、平成22年6月30日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年7月2日)、これに対し、同年11月1日に拒絶査定不服の審判の請求がなされるとともに、その審判の請求と同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成22年11月1日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年11月1日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、本件補正前に「上側(8)、骨側の下側(9)、中央部分(2)およびそれに連続する周辺領域(3)を有し、前記周辺領域(3)が「X」の4本のアームを有し、かつ前記周辺領域(3)内に4つのプレート孔(4)が設けられている、「X」の形状を有するボーンプレート(1)であって、少なくとも2つのボーンボルト(10)を有し、前記ボーンボルト(10)にヘッド(11)とシャフト(12)が設けられてなるボーンプレート(1)において、
A)前記プレート孔(4)の少なくとも1つがボーンプレート(1)の骨側の下側(9)へ向かって円錐状に細くなり、あるいは前記プレート孔(4)の少なくとも1つがその内部に内ねじ(14)を備えており、前記ボーンボルト(10)の1つをしっかりと安定した角度で係止させ、かつその場合に前記ボーンボルト(10)の前記ヘッド(11)が、円錐状であるか、あるいは外ねじを有していることを特徴とするボーンプレート(1)。」とあったものを「上側(8)、骨側の下側(9)、中央部分(2)およびそれに連続する周辺領域(3)を有し、前記周辺領域(3)が「X」の4本のアームを有し、かつ前記周辺領域(3)内に4つのプレート孔(4)が設けられている、「X」の形状を有するボーンプレート(1)であって、少なくとも2つのボーンボルト(10)を有し、前記ボーンボルト(10)にヘッド(11)とシャフト(12)が設けられてなるボーンプレート(1)において、
A)前記プレート孔(4)の少なくとも1つがボーンプレート(1)の骨側の下側(9)へ向かって円錐状に細くなり、あるいは前記プレート孔(4)の少なくとも1つがその内部に内ねじ(14)を備えており、前記ボーンボルト(10)の1つをしっかりと安定した角度で係止させ、かつその場合に前記ボーンボルト(10)の前記ヘッド(11)が、
(i)円錐状であるか、
(ii)外ねじを有しているか、
(iii)ボーンプレート(1)よりも固い材料から形成され、
B)前記4つのプレート孔(4)は「X」の4本のアームの端部に配置され、
C)前記「X」の4本のアームの端部は周辺領域によって中央部分(2)に結合され、
D)前記周辺領域の幅は前記「X」の4本のアームの端部よりも小さいことを特徴とするボーンプレート(1)。」と補正することを含むものである。

2 補正の目的について
上記補正について検討する。
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明は、ボーンボルト(10)のヘッド(11)について、「円錐状であるか、あるいは外ねじを有している」とあったものを「(i)円錐状であるか、(ii)外ねじを有しているか、(iii)ボーンプレート(1)よりも固い材料から形成され」るとするとともに、ボーンプレート(1)について、「B)前記4つのプレート孔(4)は「X」の4本のアームの端部に配置され、C)前記「X」の4本のアームの端部は周辺領域によって中央部分(2)に結合され、D)前記周辺領域の幅は前記「X」の4本のアームの端部よりも小さい」と限定するものである。
ここで、ボーンボルト(10)のヘッド(11)について、「円錐状であるか、あるいは外ねじを有している」とあったものを「(i)円錐状であるか、(ii)外ねじを有しているか、(iii)ボーンプレート(1)よりも固い材料から形成され」るとする補正は、ボーンボルト(10)のヘッド(11)の構成についての選択肢を増やすものであって、その構成を限定するものではない。
したがって、上記補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を限定的に減縮するものではないので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しないことが明らかであり、かつ、請求項の削除(同条第4項第1号)、誤記の訂正(同条第4項第3号)、明りょうでない記載の釈明(同条第4項第4号)のいずれにも該当しない。
よって、本件補正は、改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3 独立特許要件について
(1)本件補正発明
本件補正については、上記2で述べたとおりであるが、上記補正が、仮に、ボーンボルト(10)のヘッド(11)の構成を限定するものであり、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとした場合、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かについて、さらに、検討する。

(2)刊行物に記載された発明
原査定の拒絶理由において提示された、本願の出願前に頒布された刊行物である独国特許出願公開第10003968号明細書(以下「刊行物」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
ア 「Ausgehends von den Maengeln des Standes der Technik liegt der Erfindung liegt deshalb die Aufgabe zugrunde, eine Osteosynthese-Platte der vorstehend genannten Gattung anzugeben, welche sich besonders einfach im Bereich der menschlichen Wirbelsaeule zwecks Stabilisierung benachbarter Wirbelkoerper positionieren und fixieren laesst.
Die Aufgabe wird durch eine Osteosynthese-Platte der eingangs genannten Art geloest, welche an ihren mit der Knochenoberflaeche der Wirbelkoerper in Kontakt stehenden Bereichen jeweils eine Ausformung aufweist, die eine bezueglich der Woelbungen entgegengesetzt gerichtete, konvexe Gegenwoelbung bildet. Diese Kontaktbereiche befinden sich im wesentlichen an den Endabschnitten der erfindungsgemaessen Osteosynthese-Platte.(仮訳:本発明は、上記タイプの骨接合プレートに示された先行技術の欠点から出発し、人間の背骨の分野で、特に簡単に隣接する脊椎骨を安定して位置決め固定するという課題に基づく。
この課題は、上記タイプの骨接合プレートに、脊椎骨との接触領域を形成することによって解決される。各々の接触領域は、湾曲と逆方向の曲率の関係となるようにほぼ凸形湾曲に形成される。これらの接触領域は、本発明の骨接合プレートの端部に実質的に配置される。)」(第1欄第32?45行。仮訳は当審による。以下同様。)
イ 「Die in den Fig.1, 2, 3 und 4 gezeigte Osteosynthese-Platte 1 dient zur mechanischen Stabilisierung benachbarter Wirbelkoerper 2, 3.
Die Platte 1 ist - wie in Fig.1 und 3 dargestellt - schmetterlingsfoermig ausgebildet und weist ein Mittelbereich 4 auf, welcher sowohl in Laengsrichtung als auch in Querrichtung der Platte 1 gewoelbt ist. Die entsprechenden Woelbungsradien sind mit R_(1) und R_(2) bezeichnet. Die Woelbungen sind in der gleichen Richtung konkav ausgebildet und mit 4.1 bzw. 4.2 bezeichnet.
Die vier Kontaktbereiche 5, in welche der Mittelbereich 4 der Osteosynthese-Platte 1 auslaeuft, sind jeweils unter Bildung einer in Bezug auf die beiden Woelbungen 4.1 und 4.2 entgegengesetzt gerichteten konvexen Woelbung 6 ausgeformt. Der Radius dieser Gegenwoelbung 6 ist mit R_(3) bezeichnet. Die Endbereiche 5 liegen bei der Stabilisierung der Wirbelknochen 2, 3 auf der Knochenoberflaeche und weisen zwecks Verschraubung jeweils eine mit einer Konussenkung 7 versehene Bohrung 8 auf.(仮訳:Fig.1?4に示された骨接合プレート1の実施形態は、隣接する脊椎骨2,3の機械的安定化のためにもちいられる。
Fig.1及び3に示すように、骨接合プレート1は、チョウ形状に形成され、中央領域4を有し、骨接合プレート1の縦方向と横方向の両方に湾曲する。この縦方向と横方向に対応する湾曲半径は、R_(1)とR_(2)で示される。湾曲は、同じ方向に凹状に形成され、4.1と4.2で示される。
4つの接触領域5は、それぞれ、骨接合プレー1の中央領域4から張り出され、それぞれの湾曲4.1と4.2を基準にして逆方向の凸形湾曲6が形成される。この凸形湾曲6の半径はR_(3)で示される。端部領域5は、安定して脊椎骨2,3表面上へネジで締め付けれるように、孔8に下向き円錐7を設ける。)」(第4欄第15?33行)
ウ 「Figuren 6 bis 8 zeigen eine aus Titan gegossene Ausfuehrungsform der Osteosynthese-Platte 20, welche sich im Vergleich mit den vorstehend beschriebenen Ausfuehrungsformen der Osteosynthese-Platten 1 und 10 durch die im Verhaeltnis zu dem Mittelbereich 24 verdickten Endbereiche 25 unterscheidet. Die relativ grosse Materialstaerke der an den Plattenenden befindlichen Kontaktbereichen gestattet eine hoehere mechanische Belastung und den Einsatz von Knochenschrauben mit groesserem Durchmesser beim Fixieren der Osteosynthese-Platte 20. Die in der als Seitenansicht gezeigte Teilschnittdarstellung (Fig.7) und in der Ansicht des Schnittes laengs der Linie B...B gemaess Fig.6 (Fig.8) dargestellten Woelbungen sind mit 24.1, 24.2 bzw. 26 bezeichnet. Die mit einer Senkung 27 versehenen Bohrungen 28 in den Kontaktbereichen sind entsprechend Fig.3 angeordnet.(仮訳:Fig.6?8には、鋳造チタンでできた骨接合プレート20の実施形態を示す。上記した骨接合プレート1,10の実施例と比較して、端部領域25は、中央領域24より厚くされる。平たく延ばされた接触領域の比較的大きな材料厚さは、高い機械的負荷と、骨接合プレート20の固定時に大径の骨ネジの使用とを許容できる。部分断面図によりFig.7に示した側面図と、B線に沿った縦断面図としたFig.6(Fig.8)に、記号24.1,24.2または26の付された曲線が示される。下向き傾斜27を設けた孔28は、接触領域にFig.3と同様に配置される。)」(第5欄第3?17行)
エ 上記ウの記載事項及びFig.4?6の図示内容によると、骨接合プレート20は、骨接合プレート1,10との関係において、端部領域25が中央領域24より厚くされている点のみが異なるものであるから、骨接合プレート1,10と同様に、一つの孔28を設けた四つの端部領域25が、中央領域24の周辺に略X字を形成するように略腕状に配置されることによりチョウ形状に形成されるものであることがしめされている。
そして、骨接合プレート20は、縦方向と横方向とに湾曲するものであるから、骨接合プレート20に備えられた端部領域25に設けられる、四つの孔28の中心軸は互いに対して非平行に配置されるといえる。
また、端部領域25は、孔28を介して骨ネジを用いて締め付けられることが示されている。

上記ア?ウの記載事項、上記エの認定事項、及び、図面の図示内容を総合すると、刊行物には、次の発明が記載されていると認められる。
「中央領域24と、中央領域24から張り出される4つの端部領域25とを備え、端部領域25が中央領域24の周辺に略X字を形成するように略腕状に配置され、端部領域25には一つの孔28が設けられるチョウ形状に形成された骨接合プレート20であって、
四つの孔28が設けられ、骨ネジを用いる骨接合プレート20において、
孔28に下向き円錐7を設け、四つの孔28の中心軸は互いに対して非平行に配置され、
端部領域25は、脊椎2,3表面上へ接触し、孔28を介して骨ネジで締め付けられる隣接する脊椎2,3を安定して位置決め固定する骨接合プレート20。」

(3)対比
本件補正発明と刊行物に記載された発明とを対比する。
刊行物に記載された発明の「骨接合プレート20」は、チョウ形状に形成されるものであり、骨に接触する面である下側部分と、反対面の上側部分を有するものであるから、本件補正発明の「上側(8)、骨側の下側(9)」を有する「ボーンプレート(1)」に相当し、以下同様に、
「中央領域24」は、「中央部分(2)」に、
「中央領域24から張り出される4つの端部領域25」は、中央部分(2)「に連続する周辺領域(3)」に、
「端部領域25が中央領域24の周辺に略X字を形成するように略腕状に配置され」ることは、四つの端部領域25が併せて、骨接合プレート20の端部の領域を占めるものであることから、「周辺領域(3)が「X」の4本のアームを有」することに、
「端部領域25には一つの孔28が設けられる」ことは、「周辺領域(3)内に4つのプレート孔(4)が設けられている」ことに、
「チョウ形状に形成され」ることは、中央領域24の周辺に略X字を形成することにより形成されるものであるから、「「X」の形状を有する」ことに、
「四つの孔28が設けられ」ることは、「少なくとも2つのボーンボルト(10)を有」することに、
「骨ネジを用いる」ことは、「骨ネジ」が頭部とシャフト部とからなることは明らかであるから、「ボーンボルト(10)にヘッド(11)とシャフト(12)が設けられてなる」ことに、
「孔28に下向き円錐7を設け」ることは、「プレート孔(4)の少なくとも1つがボーンプレート(1)の骨側の下側(9)へ向かって円錐状に細くな」ることに、
「四つの孔28の中心軸は互いに対して非平行に配置され」ることは、本願明細書において、「プレート孔は、互いに対して非平行に延びる中心軸を有している。それが、切骨、骨折または関節を横切るために、プレート孔へ曲がった角度で挿入されたボルトを使用することができるので、ボーンボルトと結合されたボーンプレートによってだけでなく、ボーンボルト自体によっても安定性が得られる、という利点を有する。」(段落【0011】)と記載され、「プレート孔」が「互いに対して非平行に延びる中心軸を有している。」ことが、「プレート孔へ曲がった角度で挿入され」、「ボーンボルト自体によっても安定性が得られる」ことであると定義されていることから、「ボーンボルト(10)の1つを」「安定した角度で係止させ」ることに、
それぞれ相当する。

したがって、両者の一致点および相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「上側、骨側の下側、中央部分およびそれに連続する周辺領域を有し、前記周辺領域が「X」の4本のアームを有し、かつ前記周辺領域内に4つのプレート孔が設けられている、「X」の形状を有するボーンプレートであって、少なくとも2つのボーンボルトを有し、前記ボーンボルトにヘッドとシャフトが設けられてなるボーンプレートにおいて、
前記プレート孔の少なくとも1つがボーンプレートの骨側の下側へ向かって円錐状に細くなり、前記ボーンボルトの1つを安定した角度で係止させるボーンプレート。」

[相違点1]
本件補正発明では、プレート孔(4)が、ボーンボルト(10)の1つをしっかりと安定した角度で係止させ、その場合にボーンボルト(10)のヘッド(11)が、円錐状であるか、または、外ねじを有しているか、あるいは、ボーンプレート(1)よりも固い材料から形成されるのに対して、刊行物に記載された発明においては、4つの孔28が、その中心軸は互いに対して非平行に配置されるが、孔28に、骨ネジをしっかりと係止させる構成を具備するか否か不明である点。

[相違点2]
本件補正発明では、4つのプレート孔(4)は「X」の4本のアームの端部に配置され、「X」の4本のアームの端部は周辺領域によって中央部分(2)に結合され、かつ、周辺領域の幅は前記「X」の4本のアームの端部よりも小さいのに対して、刊行物に記載された発明では、当該発明特定事項を具備しない点。

(4)当審における判断
ア 上記相違点1について
ボーンプレートの技術分野において、プレート孔が、ボーンボルトの1つをしっかりと安定した角度で係止させ、その場合にボーンボルトのヘッドが、円錐状であるか、または、外ねじを有しているか、あるいは、ボーンプレートよりも固い材料から形成されることは、本願出願前に周知の技術事項である(例えば、特表平11-512004号公報の第4ページ第21行?第5ページ第26行及びFig1?3には、骨板1に含まれる骨スクリュー4が、円錐板孔3に挿入される側部表面構造7を有する円錐ヘッド5により形成され、円錐ヘッド5の側部表面構造7は、骨板中の板孔3附近の材料より大きな硬度を有することが示され、特開平7-178115号公報の段落【0041】?【0045】及び【図1】?【図6】には、円錐形頭部3が骨接合板20のねじ孔13内に嵌合し、咬合帯域16において円錐台形状のねじ孔と相互にかみ合っている骨接合用ねじ10が示され、原査定において提示された実願平1-138193号(実開平3-75717号)のマイクロフィルムの第6?8ページ及び図面には、頭部に大径の螺合ねじ部を有し、チタン系合金からなる固定ねじ20を円錐形状のねじ孔14、15に螺合させることが示されている。)。
また、固着一般の技術分野において、板に設けた孔に、頭部を円錐形状とし、その頭部に外ねじを設けたネジを用いて螺合させることにより板を部材に固定することも本願出願前に周知の技術事項である(例えば、実公昭47-36217号公報を参照。)。
してみると、刊行物に記載された発明において、骨接合プレート20を用いて隣接する脊柱を安定して位置決め固定させるに際して、孔28に、骨ネジの1つをしっかりと安定した角度で係止させるために、上記周知の技術事項を適用して、骨ネジの頭部が、円錐状であるか、または、外ねじを有しているか、あるいは、骨接合プレート20よりも固い材料から形成されることは、当業者が容易になし得たものである。

イ 上記相違点2について
同じく、ボーンプレートの技術分野において、4つのプレート孔(4)を「X」の4本のアームの端部に配置し、かつ、「X」の4本のアームの端部は周辺領域によって中央部分(2)に結合し、かつ、周辺領域の幅は「X」の4本のアームの端部よりも小さくすることは、本願出願前に周知の技術事項である(例えば、独国特許出願公開第4201043号明細書や、米国特許第6315852号明細書や、米国特許7771457号明細書等を参照。)。
してみると、刊行物に記載された発明に上記周知の技術事項を適用して、4つの孔28を「X」の4本のアームの端部に配置し、「略X字」を形成する「端部領域25の端部」は「周辺領域」によって中央領域24に結合し、かつ、「周辺領域」の幅は「端部領域25の端部」よりも小さくすることは、当業者が容易になし得たものである。

ウ 小括
本件補正発明の奏する効果は、刊行物に記載された発明及び周知の技術事項から当業者が予測できた効果の範囲内のものである。
したがって、本件補正発明は、刊行物に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)まとめ
以上のとおりであるから、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成22年3月1日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「上側(8)、骨側の下側(9)、中央部分(2)およびそれに連続する周辺領域(3)を有し、前記周辺領域(3)が「X」の4本のアームを有し、かつ前記周辺領域(3)内に4つのプレート孔(4)が設けられている、「X」の形状を有するボーンプレート(1)であって、少なくとも2つのボーンボルト(10)を有し、前記ボーンボルト(10)にヘッド(11)とシャフト(12)が設けられてなるボーンプレート(1)において、
A)前記プレート孔(4)の少なくとも1つがボーンプレート(1)の骨側の下側(9)へ向かって円錐状に細くなり、あるいは前記プレート孔(4)の少なくとも1つがその内部に内ねじ(14)を備えており、前記ボーンボルト(10)の1つをしっかりと安定した角度で係止させ、かつその場合に前記ボーンボルト(10)の前記ヘッド(11)が、円錐状であるか、あるいは外ねじを有していることを特徴とするボーンプレート(1)。」

2 刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用した刊行物、刊行物の記載事項、及び、刊行物に記載された発明は、前記「第2[理由]3(2)刊行物に記載された発明」に記載したとおりである。

3 対比および判断
本願発明は、前記「第2[理由]」において検討した本件補正発明において、「ボーンボルト(10)のヘッド(11)」及び「ボーンプレート(1)」についての限定を省くものである。
そうすると、実質的に本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「第2[理由]3(3)対比、及び、3(4)当審における判断」に記載したとおり、刊行物に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様に、刊行物に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-03-21 
結審通知日 2012-03-23 
審決日 2012-04-03 
出願番号 特願2005-512276(P2005-512276)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61B)
P 1 8・ 121- Z (A61B)
P 1 8・ 572- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 菅家 裕輔沖田 孝裕  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 長崎 洋一
青木 良憲
発明の名称 ボーンプレート  
代理人 浜田 治雄  

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