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審決分類 |
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1262084 |
審判番号 | 不服2011-8925 |
総通号数 | 154 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-10-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-04-26 |
確定日 | 2012-08-23 |
事件の表示 | 特願2007- 24932「計算負荷最適化装置および計算負荷最適化方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 8月21日出願公開、特開2008-191881〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成19年2月3日の出願であって、平成21年10月16日付けで審査請求がなされ、平成22年10月27日付けで拒絶理由通知(同年11月2日発送)がなされ、同年12月28日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされたが、平成23年1月26日付けで拒絶査定(同年2月1日謄本送達)がなされ、これに対して、平成23年4月22日付けで審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされ、平成23年4月26日付けで前記平成23年4月22日付け審判請求を取り下げる旨の請求取下書が提出され、同日付けで新たに審判請求がなされるとともに、手続補正がなされたものである。 そして、平成23年6月3日付けで審査官により特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされ、同年12月12日付けで当審により特許法第134条第4項の規定に基づく審尋(同年12月13日発送)がなされ、平成24年2月9日付けで回答書の提出があったものである。 第2 平成23年4月26日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成23年4月26日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正の内容 平成23年4月26日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の内容は、平成22年12月28日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項3の記載 「 【請求項1】 負荷制御装置と複数の計算機とがネットワークにより接続された計算機システムにおいて、 前記複数の計算機のそれぞれは、 該複数の計算機のそれぞれで実行されるベンチマークプログラムが出力するパフォーマンス値を測定する手段と、 測定された前記パフォーマンス値を前記負荷制御装置に送信する手段と、 を備え、 前記負荷制御装置は、 前記複数の計算機のそれぞれで測定された前記パフォーマンス値を収集する手段と、 ある計算対象について、収集された前記パフォーマンス値をもとに前記複数の計算機のそれぞれで計算する計算範囲を算出し、算出した計算範囲を前記複数の計算機にそれぞれ配分する手段と、 を備えた、 ことを特徴とする計算機システム。 【請求項2】 前記パフォーマンス値に従い計算範囲を各計算機に配分して処理実行時に、メモリ容量が不足する場合には、該当計算機の計算範囲を減少させてメモリ容量不足が生じないようにしたことを特徴とする請求項1記載の計算機システム。 【請求項3】 負荷制御装置と複数の計算機とがネットワークにより接続された計算方法において、 前記複数の計算機それぞれは、 該複数の計算機それぞれで実行されるベンチマークプログラムが出力するパフォーマンス値を測定するステップと、 測定された前記パフォーマンス値を前記負荷制御装置に送信するステップと を実行し、 前記負荷制御装置は、 前記複数の計算機のそれぞれで測定された前記パフォーマンス値を収集するステップと、 ある計算対象について、収集された前記パフォーマンス値をもとに前記複数の計算機のそれぞれで計算する計算範囲を算出し、算出した計算範囲を前記複数の計算機のそれぞれ配分するステップと、 を実行する、 ことを特徴とする計算方法。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正前の請求項」という。) を、 「 【請求項1】 負荷制御装置と複数の計算機とがネットワークにより接続された計算機システムにおいて、 前記複数の計算機のそれぞれは、 該複数の計算機のそれぞれで実行されるベンチマークプログラムが出力するパフォーマンス値を測定する手段と、 測定された前記パフォーマンス値を前記負荷制御装置に送信する手段と、 配分されたインデックスに対応した処理を実行する計算手段と、 を備え、 前記負荷制御装置は、 前記複数の計算機のそれぞれで測定された前記パフォーマンス値を収集する手段と、 ある計算対象について、収集された前記複数の計算機のそれぞれの前記パフォーマンス値をもとに前記複数の計算機のそれぞれで計算する計算範囲を表すインデックスを算出し、算出した計算範囲を表すインデックスを前記複数の計算機にそれぞれ配分して前記計算手段に実行させる手段と、 を備えた、 ことを特徴とする計算機システム。 【請求項2】 前記複数の計算機それぞれは、 前記パフォーマンス値に従い計算範囲を表すインデックスを各計算機に配分して処理実行時に、メモリ容量が不足する場合には、該当計算機の計算範囲を減少させてメモリ容量不足が生じないようにしたことを特徴とする請求項1記載の計算機システム。 【請求項3】 負荷制御装置と複数の計算機とがネットワークにより接続された計算方法において、 前記複数の計算機それぞれは、 該複数の計算機それぞれで実行されるベンチマークプログラムが出力するパフォーマンス値を測定するステップと、 測定された前記パフォーマンス値を前記負荷制御装置に送信するステップと、 配分されたインデックスに対応した処理を実行するステップと を実行し、 前記負荷制御装置は、 前記複数の計算機のそれぞれで測定された前記パフォーマンス値を収集するステップと、 ある計算対象について、収集された前記複数の計算機のそれぞれの前記パフォーマンス値をもとに前記複数の計算機のそれぞれで計算する計算範囲を表すインデックスを算出し、算出した計算範囲を表すインデックスを前記複数の計算機のそれぞれ配分して前記複数の計算機に実行させるステップと、 を実行する、 ことを特徴とする計算方法。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正後の請求項」という。) に補正するものである。 2.新規事項の有無、補正の目的要件 2-1.特許法第17条の2第3項に規定する要件についての検討 本件補正が、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定を満たすものであるか否か、即ち、本件補正が願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、これを「当初明細書等」という。)の範囲内でなされたものであるかについて、以下に検討する。 (1)請求項1について 本件補正は、補正前の請求項1に記載された 「前記負荷制御装置は、」 「ある計算対象について、収集された前記パフォーマンス値をもとに前記複数の計算機のそれぞれで計算する計算範囲を算出」 を、補正後の請求項1に記載された 「前記負荷制御装置は、」 「ある計算対象について、収集された前記複数の計算機のそれぞれの前記パフォーマンス値をもとに前記複数の計算機のそれぞれで計算する計算範囲を表すインデックスを算出」 に補正することを含むものである。 ここで、補正後の請求項1に記載された前記「前記負荷制御装置は、」「ある計算対象について、収集された前記複数の計算機のそれぞれの前記パフォーマンス値をもとに前記複数の計算機のそれぞれで計算する計算範囲を表すインデックスを算出し」は、その記載からして、 (a)「負荷制御装置は、」「インデックスを算出」する態様 を含んでいるといえる。 しかしながら、当初明細書等には、全体を統括制御するマスタのPC0(補正後の請求項1記載の「負荷制御装置」に相当)に関して、 「【0038】 インデックス通知手段44は、計算量算出手段43で算出した計算量に対応したインデックス(処理量)を、各CPU0?CPU5・・・に通知するものである。」、 「【0039】 メモリ量算出・チェック手段45は、インデックスからメモリ量を算出するものである。」、 「【0055】 S35は、インデックスの通知を行う。これは、S34でPC0、PC1?にパフォーマンス値に対応した計算量をもとに、計算範囲を表すインデックスをPC0,PC1?にそれぞれ通知する。」、 「【0056】 S36は、インデックスから必要メモリ量を算出する。…(後略)」、 と記載されているように、 「インデックス通知手段」が、「インデックスの通知を行う」態様、 「メモリ量算出・チェック手段」が、「インデックスから必要メモリ量を算出する」態様、 が記載されているにすぎず、「インデックスを算出」する態様は記載されていない。 なお、段落【0038】に「計算量算出手段43で算出した計算量に対応したインデックス(処理量)」と記載され、段落【0055】に「パフォーマンス値に対応した計算量をもとに、計算範囲を表すインデックス」と記載されているが、「計算量に対応したインデックス」及び「計算量をもとに、計算範囲を表すインデックス」との記載から、「インデックスを算出」する態様までもが記載されているとは認められない。 そして、当初明細書等のいずれの箇所を見ても、「負荷制御装置は、」「インデックスを算出」する態様は、記載も示唆もされていない事項であり、また、このことは、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであると認められる。 以上のように、補正後の請求項1に記載された前記(a)の含む態様(すなわち、「負荷制御装置は、」「インデックスを算出」する態様)は、当初明細書等には、記載も示唆もなく、また自明な事項でもないから、上記事項を追加する本件補正は、当初明細書等に記載した範囲内でしたものではない。 (2)請求項2について 本件補正は、補正前の請求項2に記載された 「前記パフォーマンス値に従い計算範囲を各計算機に配分」 を、補正後の請求項2に記載された 「前記複数の計算機それぞれは、 前記パフォーマンス値に従い計算範囲を表すインデックスを各計算機に配分」 に補正することを含むものである。 ここで、補正後の請求項2に記載された前記「前記複数の計算機それぞれは、」「前記パフォーマンス値に従い計算範囲を表すインデックスを各計算機に配分」は、その記載からして、 (b)「複数の計算機それぞれは、」「計算範囲を表すインデックスを各計算機に配分」する態様 を含んでいるといえる。 しかしながら、当初明細書等には、全体を統括制御するマスタのPC0(補正後の請求項1記載の「負荷制御装置」に相当)に関して、 「【0035】 PC0用プログラム41は、…(中略)…、インデックス通知手段44、…(中略)…などから構成されるものである。」、 「【0038】 インデックス通知手段44は、計算量算出手段43で算出した計算量に対応したインデックス(処理量)を、各CPU0?CPU5・・・に通知するものである。」、 「【0052】 図4において、S31は、PC0(制御)がプログラムの実行を開始する。…(後略)」、 「【0055】 S35は、インデックスの通知を行う。これは、S34でPC0、PC1?にパフォーマンス値に対応した計算量をもとに、計算範囲を表すインデックスをPC0,PC1?にそれぞれ通知する。」、 と記載されているように、 「PC0」が、「計算範囲を表すインデックスをPC0,PC1?にそれぞれ通知する」態様は記載されているものの、PC0のもとでスレーブとして動作するPC1?(補正後の請求項2記載の「複数の計算機」に相当)に関しては、 「【0043】 PC1?用プログラム41は、PC0のもとでスレーブとして動作するPC1?が各種制御を行うためのプログラムを格納するものであって、…(中略)…、インデックス受信手段54、…(中略)…などから構成されるものである。」、 「【0045】 インデックス受信手段54は、PC0の計算量算出手段43で算出した計算量に対応したインデックス(処理量)を、各CPU0?CPU5・・・で受信するものである。」、 「【0060】 図4において、S51は、PC1がプログラムの実行を開始する。…(後略)」、 「【0062】 S55は、インデックスの受信を行う。これは、既述したS34でPC0がPC1のパフォーマンス値に対応した計算量をもとに、計算範囲を表すインデックスをPC1にS35で送信するので、それを受信する。」、 と記載されるように、「PC1?」が(PC0が通知した)「インデックスの受信を行う」態様は記載されているものの、PC1?が、計算範囲を表すインデックスをPC0、PC1?(補正後の請求項2記載の「各計算機」に相当)に通知(補正後の請求項2記載の「配分」に相当)する態様は記載されていない。 そして、当初明細書等のいずれの箇所を見ても、「複数の計算機それぞれは、」「計算範囲を表すインデックスを各計算機に配分」する態様は、記載も示唆もされていない事項であり、また、このことは、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであると認められる。 以上のように、補正後の請求項2に記載された前記(b)の含む態様(すなわち、「複数の計算機それぞれは、」「計算範囲を表すインデックスを各計算機に配分」する態様)は、当初明細書等には、記載も示唆もなく、また自明な事項でもないから、上記事項を追加する本件補正は、当初明細書等に記載した範囲内でしたものではない。 (3)小括 したがって、補正前の請求項1及び補正前の請求項2についてする補正は、当初明細書等に記載した範囲内でしたものではないから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 2-2.特許法第17条の2第4項に規定する要件についての検討 次に、本件補正が特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮(請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の請求項に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるもの)を目的とするものであるかどうかについて以下に検討する。 (1)「複数の計算機のそれぞれ」について 本件補正は、補正前の請求項1に記載された 「前記複数の計算機のそれぞれは、 該複数の計算機のそれぞれで実行されるベンチマークプログラムが出力するパフォーマンス値を測定する手段と、 測定された前記パフォーマンス値を前記負荷制御装置に送信する手段と、 を備え、」 を、補正後の請求項1に記載された 「前記複数の計算機のそれぞれは、 該複数の計算機のそれぞれで実行されるベンチマークプログラムが出力するパフォーマンス値を測定する手段と、 測定された前記パフォーマンス値を前記負荷制御装置に送信する手段と、 配分されたインデックスに対応した処理を実行する計算手段と、 を備え、」 に補正することを含むものである。 ここで、補正後の請求項1に記載された前記「前記複数の計算機のそれぞれは、」「該複数の計算機のそれぞれで実行されるベンチマークプログラムが出力するパフォーマンス値を測定する手段と、」「測定された前記パフォーマンス値を前記負荷制御装置に送信する手段と、」「配分されたインデックスに対応した処理を実行する計算手段と、」「を備え、」は、その記載からして、 (c)「配分されたインデックスに対応した処理を実行する計算手段」 を含んでいるといえる。 しかしながら、前記(c)「配分されたインデックスに対応した処理を実行する計算手段」は、補正前の請求項1が含むいずれの手段の下位概念ではなく、新たな構成を追加した補正であるものと認められる。 したがって、本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定したものではなく、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮(請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の請求項に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるもの)を目的とするものとは認められない。 (2)「負荷制御装置」について 本件補正は、補正前の請求項1に記載された 「前記負荷制御装置は、 前記複数の計算機のそれぞれで測定された前記パフォーマンス値を収集する手段と、 ある計算対象について、収集された前記パフォーマンス値をもとに前記複数の計算機のそれぞれで計算する計算範囲を算出し、算出した計算範囲を前記複数の計算機にそれぞれ配分する手段と、 を備えた、」 を、補正後の請求項1に記載された 「前記負荷制御装置は、 前記複数の計算機のそれぞれで測定された前記パフォーマンス値を収集する手段と、 ある計算対象について、収集された前記複数の計算機のそれぞれの前記パフォーマンス値をもとに前記複数の計算機のそれぞれで計算する計算範囲を表すインデックスを算出し、算出した計算範囲を表すインデックスを前記複数の計算機にそれぞれ配分して前記計算手段に実行させる手段と、 を備えた、」 に補正することを含むものである。 ここで、補正後の請求項1に記載された前記「前記負荷制御装置は、」「前記複数の計算機のそれぞれで測定された前記パフォーマンス値を収集する手段と、」「ある計算対象について、収集された前記複数の計算機のそれぞれの前記パフォーマンス値をもとに前記複数の計算機のそれぞれで計算する計算範囲を表すインデックスを算出し、算出した計算範囲を表すインデックスを前記複数の計算機にそれぞれ配分して前記計算手段に実行させる手段と、」「を備えた、」は、その記載からして、 (d)「算出した計算範囲を表すインデックスを」「前記計算手段に実行させる」態様 を含んでいるといえる。 しかしながら、前記(d)「算出した計算範囲を表すインデックスを」「前記計算手段に実行させる」態様は、補正前の請求項1の「ある計算対象について、収集された前記パフォーマンス値をもとに前記複数の計算機のそれぞれで計算する計算範囲を算出し、算出した計算範囲を前記複数の計算機にそれぞれ配分する」のいずれの態様の下位概念ではなく、新たな構成を追加した補正であるものと認められる。 したがって、本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定したものではなく、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮(請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の請求項に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるもの)を目的とするものとは認められない。 (3)特許法第17条の2第4項の他の各号について 補正前の請求項1についてする補正を含む本件補正は、特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除、第3号の誤記の訂正、第4号の明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)に該当するものではない。 (4)小括 以上のとおり、補正前の請求項1についてする補正を含む本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.独立特許要件 以上のように、補正前の請求項1についてする補正は、前記「2-2.特許法第17条の2第4項に規定する要件についての検討」で指摘したとおり、特許法第17条の2第4項第2号の限定的減縮に該当せず、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであるが、仮に、本件補正が、特許法第17条の2第4項第2号の限定的減縮に該当すると仮定した場合に、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)検討する。 3-1.本願補正発明 本件補正により、本願補正発明は、前記「1.補正の内容」の補正後の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。 「負荷制御装置と複数の計算機とがネットワークにより接続された計算機システムにおいて、 前記複数の計算機のそれぞれは、 該複数の計算機のそれぞれで実行されるベンチマークプログラムが出力するパフォーマンス値を測定する手段と、 測定された前記パフォーマンス値を前記負荷制御装置に送信する手段と、 配分されたインデックスに対応した処理を実行する計算手段と、 を備え、 前記負荷制御装置は、 前記複数の計算機のそれぞれで測定された前記パフォーマンス値を収集する手段と、 ある計算対象について、収集された前記複数の計算機のそれぞれの前記パフォーマンス値をもとに前記複数の計算機のそれぞれで計算する計算範囲を表すインデックスを算出し、算出した計算範囲を表すインデックスを前記複数の計算機にそれぞれ配分して前記計算手段に実行させる手段と、 を備えた、 ことを特徴とする計算機システム。」 3-2.特許法第36条に規定する要件についての検討 (1)補正後の請求項1記載の「ある計算対象について、収集された前記複数の計算機のそれぞれの前記パフォーマンス値をもとに前記複数の計算機のそれぞれで計算する計算範囲を表すインデックスを算出し、算出した計算範囲を表すインデックスを前記複数の計算機にそれぞれ配分して前記計算手段に実行させる手段」において、 (1-1)「インデックス」について、 本願の発明の詳細な説明には、 「【0038】 インデックス通知手段44は、計算量算出手段43で算出した計算量に対応したインデックス(処理量)を、各CPU0?CPU5・・・に通知するものである。」、 「【0039】 メモリ量算出・チェック手段45は、インデックスからメモリ量を算出するものである。」、 「【0045】 インデックス受信手段54は、PC0の計算量算出手段43で算出した計算量に対応したインデックス(処理量)を、各CPU0?CPU5・・・で受信するものである。」、 「【0046】 メモリ量算出・チェック手段45は、インデックスからメモリ量を算出するものである。」、 「【0055】 S35は、インデックスの通知を行う。これは、S34でPC0、PC1?にパフォーマンス値に対応した計算量をもとに、計算範囲を表すインデックスをPC0,PC1?にそれぞれ通知する。」、 「【0056】 S36は、インデックスから必要メモリ量を算出する。…(後略)」、 「【0058】 …(中略)…S40は、メモリOKか判別する。YESの場合には、現在配布した計算量(インデックス)で計算するときに必要なメモリ量が足りると判明したので、S41に進む。…(後略)」、 「【0062】 S55は、インデックスの受信を行う。これは、既述したS34でPC0がPC1のパフォーマンス値に対応した計算量をもとに、計算範囲を表すインデックスをPC1にS35で送信するので、それを受信する。」、 「【0063】 S56は、インデックスから必要メモリ量を算出する。…(後略)」、 「【0065】 …(中略)…S60は、メモリOKか判別する。YESの場合には、現在配布した計算量(インデックス)で計算するときに必要なメモリ量が足りると判明したので、S61に進む。…(後略)」 と記載されている。 上記記載からすると、「インデックス」とは、“計算量に対応し、計算範囲を表すものであり、配布され、(必要)メモリ量を算出するもととなるものである”ことは読み取れる。 しかしながら、「インデックス」が、どのようなデータであるのか不明であり、よって、「計算範囲」をどのような指標により表しているのか不明である。(第36条第6項第2号違反) さらに、このため、本願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていないものであり(第36条第4項第1号(実施可能要件)違反)、しかも、請求項1に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が十分に記載されておらず、特許法第36条第4項第1号の経済産業省令で定めるところによる記載がされていないものでもある(第36条第4項第1号(委任省令要件)違反)といえる。 (1-2)「インデックスを算出」することについて、 前記「2-1.特許法第17条の2第3項に規定する要件についての検討」の「(1)請求項1について」で検討したように、「インデックスを算出」する態様は、本願の発明の詳細な説明には記載されていない(第36条第6項第1号違反)。 また、本願の発明の詳細な説明の段落【0038】に「計算量に対応したインデックス(処理量)」、段落【0055】に「計算量をもとに、計算範囲を表すインデックス」との記載はあるが、計算量から「インデックス」をどのように「算出」するのか不明である(第36条第6項第2号違反)。 さらに、このため、本願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていないものであり(第36条第4項第1号(実施可能要件)違反)、しかも、請求項1に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が十分に記載されておらず、特許法第36条第4項第1号の経済産業省令で定めるところによる記載がされていないものでもある(第36条第4項第1号(委任省令要件)違反)といえる。 (2)補正後の請求項1記載の(「複数の計算機のそれぞれ」が備える)「配分されたインデックスに対応した処理を実行する計算手段」において、 本願の発明の詳細な説明には、 「【0045】 インデックス受信手段54は、PC0の計算量算出手段43で算出した計算量に対応したインデックス(処理量)を、各CPU0?CPU5・・・で受信するものである。」、 「【0046】 メモリ量算出・チェック手段45は、インデックスからメモリ量を算出するものである。」、 「【0049】 実計算手段48は、配分された処理を実際に計算するものである。…(後略)」、 「【0055】 S35は、インデックスの通知を行う。これは、S34でPC0、PC1?にパフォーマンス値に対応した計算量をもとに、計算範囲を表すインデックスをPC0,PC1?にそれぞれ通知する。」、 「【0056】 S36は、インデックスから必要メモリ量を算出する。…(後略)」、 「【0058】 …(中略)…S40は、メモリOKか判別する。YESの場合には、現在配布した計算量(インデックス)で計算するときに必要なメモリ量が足りると判明したので、S41に進む。…(後略)」、 「【0059】 S41は、実計算を行う。…(後略)」、 「【0062】 S55は、インデックスの受信を行う。これは、既述したS34でPC0がPC1のパフォーマンス値に対応した計算量をもとに、計算範囲を表すインデックスをPC1にS35で送信するので、それを受信する。」、 「【0063】 S56は、インデックスから必要メモリ量を算出する。…(後略)」、 「【0065】 …(中略)…S60は、メモリOKか判別する。YESの場合には、現在配布した計算量(インデックス)で計算するときに必要なメモリ量が足りると判明したので、S61に進む。…(後略)」 「【0066】 S61は、実計算を行う。…(後略)」、 と記載されている。 上記記載からすると、受信した(配布された)インデックスから、“(必要)メモリ量を算出する”ことや、“実計算を行う”ことは読み取れる。 しかしながら、各計算機が、「インデックス」をどのように用いて「インデックスに対応した処理」を実行するのか不明である(第36条第6項第2号違反)。 さらに、このため、本願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていないものであり(第36条第4項第1号(実施可能要件)違反)、しかも、請求項1に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が十分に記載されておらず、特許法第36条第4項の経済産業省令で定めるところによる記載がされていないものでもある(第36条第4項第1号(委任省令要件)違反)といえる。 (3)小括 したがって、本願補正発明は、特許法第36条第4項第1号並びに第6項第1号及び第2号に規定にする要件を満たしていないため、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 3-3.特許法第29条第2項に規定する要件についての検討 以上のように、本願補正発明は、上記「3-2.特許法第36条に規定する要件についての検討」で指摘したとおり、特許法36条第4項第1号並びに第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていないものであるが、仮に、本願補正発明が、特許法第36条の規定を満たすものであると仮定した場合に、本願補正発明が、特許法第29条第2項の規定に適合するものであるか、以下に検討する。 (1)引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定 本願の出願前に頒布され、原審の拒絶の査定の理由である上記平成22年10月27日付けの拒絶理由通知において引用された、特開2003-6175号公報(平成15年1月10日出願公開。以下、「引用文献」という。)には、図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。 A 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、複数プロセッサを有する計算機システムにおけるプロセススケジューリング方式に関し、特にプロセス実行時のプロセッサ又はシステム動作特性を動的に採取しこれを基にスケジューリングを行うプロセススケジューリング方法及びこれを用いた計算機システムに関する。」 B 「【0017】図1の計算機クラスタシステムは、計算機1(110-1)、計算機2(110-2)、…、計算機m(110-m)がネットワーク(100)により接続された構成を採る。各計算機(110-1、…、110-m)上では、各々1つのオペレーティングシステム(160-1、…、160-m)及び複数のプロセス(170-11?170-1L1、170-21?170-2L2、…、170-m1?170-mLm)が動作する。ここでプロセスとは、アプリケーションプログラムをプロセッサに割り当て可能な単位に分割した実行単位である。…(後略)」 C 「【0020】各オペレーティングシステム(160-1?160-m)のスケジューリング機能は、後述する協調動作により計算機間にまたがったプロセス移送を伴う動的負荷分散を行う。本実施の形態例ではこれを実現するため、計算機1(110-1)のオペレーティングシステム1(160-1)にクラスタスケジューラ(150)、各計算機(110-1、…、110-m)のオペレーティングシステム(160-1、…、160-m)にクラスタノードスケジューラ(140-1、…、140-m)を設ける。」 D 「【0021】クラスタスケジューラ(150)は、計算機クラスタシステム内で実行される各プロセスをいずれかの計算機(110-1?110-m)に割り当てる機能を持つ。この割り当ての決定においては、従来のプロセススケジューラの一般的なアルゴリズムに加え、プロセス実行時に性能測定手段(130-11?130-mNm)を使用して採取したプロセス(170-11?170-mLm)毎のプロセス動作特性を考慮する。」 E 「【0022】クラスタノードスケジューラ(140-1、…、140-m)は、クラスタスケジューラ(150)が対応する計算機(110-1、…、110-m)に割り当てた各プロセスを当該計算機(110-1、…、110-m)内のいずれかのプロセッサ(120-11?120-1N1、…、120-m1?120-mNm)に割り当てる機能を持つ。…(中略)…。すなわち、クラスタノードスケジューラ(140-1、…、140-m)がクラスタスケジューラ(150)に自計算機(110-1、…、110-m)上のプロセス(170-11?170-1L1、…、170-m1?170-mLm)のプロセッサ動作特性を渡すことで、クラスタスケジューラ(150)は計算機クラスタシステム全体でのプロセススケジューリングが可能となる。…(後略)」 F 「【0023】本実施の形態例では、クラスタスケジューラ(150)はオペレーティングシステム1(140-1)上に存在するが、本発明はクラスタスケジューラ(150)が計算機クラスタシステム内のどの部分に存在するかに関わりなく実現可能である。なぜなら、クラスタスケジューラ(150)及びクラスタノードスケジューラ(140-1?140-m)も一種のプロセスであり、計算機内又は計算機間にまたがったプロセス間通信は公知の技術で実現されているためである。これにより、例えばクラスタスケジューラ(150)をスケジューラ専用の計算機で実行する方法、あるいは、クラスタスケジューラ(150)自体の機能を計算機クラスタシステム上の複数計算機(110-1?110-m)に分散させて実現する方法も可能である。」 G 「【0028】図2の計算機クラスタシステムは、計算機1?3がネットワーク(200)により接続された構成を採る。」 H 「【0030】各プロセッサ(220-11?220-34)は、当該プロセッサの動作特性を採取可能な性能測定手段(230-11?230-34)を有する。また、計算機1上で動作するオペレーティングシステム(260-1?260-3)はクラスタスケジューラ(250)を、計算機1?3上で動作する各オペレーティングシステム(260-1?260-3)は前述のクラスタノードスケジューラ(250)を有する。」 I 「【0035】…(中略)…、クラスタノードスケジューラ(240-1?240-3)が、計算機クラスタシステムの立ち上げ時若しくは適当なタイミングで図3?図5の特性情報を計測するベンチマークテストを実施する方法を採ることが可能である。この様なベンチマークテストとしては、…(中略)…等公知の技術を適用できる。」 (ア)上記Aの「プロセス実行時のプロセッサ又はシステム動作特性を動的に採取しこれを基にスケジューリングを行う…計算機システム」との記載、上記Bの「図1の計算機クラスタシステムは、計算機1…、計算機2…、計算機m…がネットワーク…により接続された構成を採る」との記載、上記Gの「図2の計算機クラスタシステムは、計算機1?3がネットワーク…により接続された構成を採る」との記載からすると、引用文献には、 計算機1と複数の計算機とがネットワークにより接続された計算機システム が記載されている。 (イ)上記Bの「各計算機…上では、…複数のプロセス…が動作する。ここでプロセスとは、アプリケーションプログラムをプロセッサに割り当て可能な単位に分割した実行単位である」との記載、上記Cの「本実施の形態例ではこれを実現するため、計算機1…にクラスタスケジューラ…、各計算機…にクラスタノードスケジューラ…を設ける」との記載、上記Eの「クラスタノードスケジューラ…は、クラスタスケジューラ…が対応する計算機…に割り当てた各プロセスを当該計算機…内のいずれかのプロセッサ…に割り当てる機能を持つ。…(中略)…。すなわち、クラスタノードスケジューラ…がクラスタスケジューラ…に自計算機…上のプロセス…のプロセッサ動作特性を渡すことで、クラスタスケジューラ…は計算機クラスタシステム全体でのプロセススケジューリングが可能となる」との記載、上記Hの「各プロセッサ…は、当該プロセッサの動作特性を採取可能な性能測定手段…を有する。」との記載、及び上記Iの「クラスタノードスケジューラ…が、計算機クラスタシステムの立ち上げ時若しくは適当なタイミングで…特性情報を計測するベンチマークテストを実施する方法を採ることが可能である」との記載からすると、引用文献には、 計算機1と複数の計算機のそれぞれは、 該計算機1と該複数の計算機のそれぞれで実行されるベンチマークテストが出力する特性情報を計測する手段と、 計測された前記特性情報を(クラスタスケジューラが設けられた)前記計算機1に渡す手段と、 割り当てられたプロセスを実行する実行手段と、 を備えることが記載されている。 (ウ)上記Aの「プロセス実行時のプロセッサ又はシステム動作特性を動的に採取しこれを基にスケジューリングを行う…計算機システム」との記載、上記Bの「各計算機…上では、…複数のプロセス…が動作する」との記載、上記Cの「本実施の形態例ではこれを実現するため、計算機1…にクラスタスケジューラ…、各計算機…にクラスタノードスケジューラ…を設ける」との記載、上記Dの「クラスタスケジューラ…は、計算機クラスタシステム内で実行される各プロセスをいずれかの計算機…に割り当てる機能を持つ。この割り当ての決定においては、従来のプロセススケジューラの一般的なアルゴリズムに加え、プロセス実行時に性能測定手段…を使用して採取した…プロセス動作特性を考慮する」との記載、及び上記Hの「各プロセッサ…は、当該プロセッサの動作特性を採取可能な性能測定手段…を有する。」との記載からすると、引用文献には、 計算機1は、 前記計算機1と複数の計算機のそれぞれで計測された特性情報を採取する手段と、 複数のプロセスについて、採取された前記計算機1と前記複数の計算機のそれぞれの前記特性情報をもとに前記計算機1と前記複数の計算機のそれぞれで実行するプロセスを決定し、決定したプロセスを前記計算機1と前記複数の計算機にそれぞれ割り当てて実行させる手段と、 を備えることが記載されている。 以上、(ア)ないし(ウ)で指摘した事項から、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。 計算機1と複数の計算機とがネットワークにより接続された計算機システムにおいて、 前記計算機1と前記複数の計算機のそれぞれは、 該計算機1と該複数の計算機のそれぞれで実行されるベンチマークテストが出力する特性情報を計測する手段と、 計測された前記特性情報を(クラスタスケジューラが設けられた)前記計算機1に渡す手段と、 割り当てられたプロセスを実行する実行手段と、 を備え、 前記計算機1は、 前記計算機1と前記複数の計算機のそれぞれで計測された前記特性情報を採取する手段と、 複数のプロセスについて、採取された前記計算機1と前記複数の計算機のそれぞれの前記特性情報をもとに前記計算機1と前記複数の計算機のそれぞれで実行するプロセスを決定し、決定したプロセスを前記計算機1と前記複数の計算機にそれぞれ割り当てて実行させる手段と、 を備えた、 ことを特徴とする計算機システム。 (2)本願補正発明と引用発明との対比 本願補正発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「計算機1」は、各計算機で実行されるプロセスを割り当てる機能を備えることから、本願補正発明の「負荷制御装置」に相当する。したがって、引用発明と本願補正発明は、「負荷制御装置と複数の計算機とがネットワークにより接続された計算機システム」である点で一致する。 引用発明の「ベンチマークテスト」及び「計測」は、本願補正発明の「ベンチマークプログラム」及び「測定」に相当する。また、引用発明の「特性情報」は、プロセッサの動作特性等を含むものであることから、本願補正発明の「パフォーマンス値」に相当する。したがって、引用発明と本願補正発明は、複数の計算機のそれぞれが、“複数の計算機のそれぞれで実行されるベンチマークプログラムが出力するパフォーマンス値を測定する手段”を備える点で共通する。 引用発明の「渡す」は、各計算機が計算機1にネットワークを介して渡すものであることから、本願補正発明の「送信する」に相当する。したがって、引用発明と本願補正発明は、複数の計算機のそれぞれが、“測定されたパフォーマンス値を負荷制御装置に送信する手段”を備える点で共通する。 引用発明の「割り当てられた」は、本願補正発明の「配分された」に相当する。また、引用発明の「プロセス」は、実行される単位であるから、本願補正発明の(実行される)「処理」に相当する。したがって、引用発明と本願補正発明は、複数の計算機のそれぞれが、“配分された処理を実行する手段”を備える点で共通する。 引用発明の「採取」は、本願補正発明の「収集」に相当する。したがって、本願補正発明と引用発明は、負荷制御装置が、“複数の計算機のそれぞれで測定されたパフォーマンス値を収集する手段”を備える点で共通する。 引用発明の「複数のプロセス」は、各計算機に割り当てられて実行される処理対象であることから、本願補正発明の「ある計算対象」に相当する。また、引用発明の「プロセス」は、「複数のプロセス」の一部であり、各計算機に割り当てられて実行されるものであり、本願補正発明の「計算範囲」も、「ある計算対象」の一部であり、複数の計算機に配分されて実行されるものであるから、引用発明の「プロセス」は、本願補正発明の「計算範囲」に相当するといえる。そして、引用発明の「計算機1と複数の計算機のそれぞれで実行するプロセスを決定し、決定したプロセスを前記計算機1と前記複数の計算機にそれぞれ割り当てて実行させる」と、本願補正発明の「複数の計算機のそれぞれで計算する計算範囲を表すインデックスを算出し、算出した計算範囲を表すインデックスを前記複数の計算機にそれぞれ配分して前記計算手段に実行させる」とは、ともに、複数の計算機のそれぞれで実行させる処理対象を決定し、決定した処理対象を前記複数の計算機にそれぞれ配分して実行させることに他ならない。したがって、引用発明の「複数のプロセスについて、採取された前記計算機1と前記複数の計算機のそれぞれの前記特性情報をもとに前記計算機1と前記複数の計算機のそれぞれで実行するプロセスを決定し、決定したプロセスを前記計算機1と前記複数の計算機にそれぞれ割り当てて実行させる手段」と、本願補正発明の「ある計算対象について、収集された前記複数の計算機のそれぞれの前記パフォーマンス値をもとに前記複数の計算機のそれぞれで計算する計算範囲を表すインデックスを算出し、算出した計算範囲を表すインデックスを前記複数の計算機にそれぞれ配分して前記計算手段に実行させる手段」とは、負荷制御装置が、“ある計算対象について、収集された複数の計算機のそれぞれのパフォーマンス値をもとに前記複数の計算機のそれぞれで実行させる処理対象を決定し、決定した処理対象を前記複数の計算機にそれぞれ配分して実行させる手段”を備える点で共通するといえる。 以上から、本願補正発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、以下の点で相違する。 (一致点) 負荷制御装置と複数の計算機とがネットワークにより接続された計算機システムにおいて、 前記複数の計算機のそれぞれは、 該複数の計算機のそれぞれで実行されるベンチマークプログラムが出力するパフォーマンス値を測定する手段と、 測定された前記パフォーマンス値を前記負荷制御装置に送信する手段と、 配分された処理を実行する手段と、 を備え、 前記負荷制御装置は、 前記複数の計算機のそれぞれで測定された前記パフォーマンス値を収集する手段と、 ある計算対象について、収集された前記複数の計算機のそれぞれのパフォーマンス値をもとに前記複数の計算機のそれぞれで実行させる処理対象を決定し、決定した処理対象を前記複数の計算機にそれぞれ配分して実行させる手段と、 を備えた、 ことを特徴とする計算機システム。 (相違点1) 複数の計算機が実行する処理に関して、本願補正発明が「インデックスに対応した処理」であるのに対して、引用発明が「プロセス」である点。 (相違点2) 負荷制御装置がある計算対象を複数の計算機に実行させる手段に関して、本願補正発明が、「ある計算対象について、収集された前記複数の計算機のそれぞれの前記パフォーマンス値をもとに前記複数の計算機のそれぞれで計算する計算範囲を表すインデックスを算出し、算出した計算範囲を表すインデックスを前記複数の計算機にそれぞれ配分して前記計算手段に実行させる手段」であるのに対して、引用発明は、「複数のプロセスについて、採取された前記計算機1と前記複数の計算機のそれぞれの前記特性情報をもとに前記計算機1と前記複数の計算機のそれぞれで実行するプロセスを決定し、決定したプロセスを前記計算機1と前記複数の計算機にそれぞれ割り当てて実行させる手段」である点。(すなわち、引用発明には、“「プロセス」を「インデックス」により表し、該「インデックス」を複数の計算機に配分する”点について記載されていない。) (相違点3) 負荷制御装置に関して、引用発明の計算機1は、本願補正発明の負荷制御装置が備える手段に加えて、複数の計算機が備える手段、すなわち、「該計算機1と該複数の計算機のそれぞれで実行されるベンチマークテストが出力する特性情報を計測する手段」、「計測された前記特性情報を(クラスタスケジューラが設けられた)前記計算機1に渡す手段」、及び「割り当てられたプロセスを実行する実行手段」を備える点。 (3)当審の判断 上記相違点1ないし相違点3について検討する。 (3-1)相違点1及び相違点2について 前記「3-2.特許法第36条に規定する要件についての検討 」で検討したとおり、本願補正発明に記載されている「インデックス」がどのようなデータであるか不明であるが、「計算範囲を表す」ものであるとして、以下に検討する。 ある処理を分割し、複数のプロセッサに割り当てて処理を実行させる装置において、処理単位である「ブロック」の大きさと範囲を動的に設定する技術は周知技術(必要であれば、特開2003-157243号公報(特に、段落【0118】?【0125】等)参照。)であり、そして、当該「ブロック」の大きさと範囲を動的に設定するにあたり、該「ブロック」の大きさと範囲を何らかの指標(本願補正発明記載の「インデックス」に相当)を用いて表すことについても、当該技術分野において、慣用的に行われている技術にすぎない。 してみれば、引用発明においても、前記周知技術を適用し、計算機1が、複数の計算機に割り当てるプロセス(本願補正発明記載の「計算範囲」に相当)を、「インデックス」のような指標により指定・管理し、当該指標を複数の計算機に配分し、複数の計算機が、配分された当該指標に対応した処理を実行するように構成することは、当業者が容易に想到し得たことである。 よって、相違点1及び相違点2は格別なものではない。 (3-2)相違点3について 上記Fに「本実施の形態例では、クラスタスケジューラ…はオペレーティングシステム1…上に存在するが、本発明はクラスタスケジューラ…が計算機クラスタシステム内のどの部分に存在するかに関わりなく実現可能である。…これにより、例えばクラスタスケジューラ…をスケジューラ専用の計算機で実行する方法…も可能である。」と記載されるように、クラスタスケジューラをスケジューラ専用の計算機で実現する構成は、必要に応じて、当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。 してみれば、引用発明においても、計算機1が備える手段として、プロセスを割り当てる専用の計算機(本願補正発明の「負荷制御装置」に相当)が備える手段に専念させるように構成することは、当業者が容易に想到し得たものである。 よって、相違点3は格別なものではない。 (3-3)小括 上記で検討したごとく、相違点1ないし相違点3は格別のものではなく、そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願補正発明の奏する作用効果は、上記引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 したがって、本願補正発明は、上記引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 3-4.まとめ 以上のように、上記「3-2.特許法第36条に規定する要件についての検討」及び「3-3.特許法第29条第2項に規定する要件についての検討」で指摘したとおり、補正後の請求項1に記載された発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項の規定により準用する特許法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 4.むすび 以上のとおり、本件補正は、上記「2-1.特許法第17条の2第3項に規定する要件についての検討」で指摘したとおり、当初明細書等に記載した範囲内でしたものではないので、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 また、本件補正は、上記「2-2.特許法第17条の2第4項に規定する要件についての検討 」で指摘したとおり、補正前の請求項1についてする補正を含む本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 そして、仮に、本件補正が、特許法第17条の2第4項第2号の限定的減縮に該当すると仮定した場合であっても、本件補正は、上記「3.独立特許要件」で指摘したとおり、補正後の請求項1に記載された発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項の規定により準用する特許法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、補正却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1.本願発明の認定 平成23年4月26日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年12月28日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「負荷制御装置と複数の計算機とがネットワークにより接続された計算機システムにおいて、 前記複数の計算機のそれぞれは、 該複数の計算機のそれぞれで実行されるベンチマークプログラムが出力するパフォーマンス値を測定する手段と、 測定された前記パフォーマンス値を前記負荷制御装置に送信する手段と、を備え、 前記負荷制御装置は、 前記複数の計算機のそれぞれで測定された前記パフォーマンス値を収集する手段と、 ある計算対象について、収集された前記パフォーマンス値をもとに前記複数の計算機のそれぞれで計算する計算範囲を算出し、算出した計算範囲を前記複数の計算機にそれぞれ配分する手段と、 を備えた、 ことを特徴とする計算機システム。」 2.引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定 原査定の拒絶の理由に引用された、引用文献およびその記載事項は、前記「第2 平成23年4月26日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3.独立特許要件」の「3-3.特許法第29条第2項に規定する要件 についての検討」の「(1)引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定」に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、前記「第2 平成23年4月26日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3.独立特許要件」の「3-3.特許法第29条第2項に規定する要件についての検討」で検討した本願補正発明から、「配分されたインデックスに対応した処理を実行する計算手段と、」、「前記複数の計算機のそれぞれの」、「を表すインデックス」、及び「して前記計算手段に実行させる」を削除したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含む本願補正発明が、上記「第2 平成23年4月26日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3.独立特許要件」の「3-3.特許法第29条第2項に規定する要件についての検討」の「(1)引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定」ないし「(3)当審の判断」に記載したとおり、上記引用発明及び上記参考文献等に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、上記引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-06-20 |
結審通知日 | 2012-06-26 |
審決日 | 2012-07-09 |
出願番号 | 特願2007-24932(P2007-24932) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F) P 1 8・ 572- Z (G06F) P 1 8・ 561- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 林 毅 |
特許庁審判長 |
長島 孝志 |
特許庁審判官 |
田中 秀人 殿川 雅也 |
発明の名称 | 計算負荷最適化装置および計算負荷最適化方法 |
代理人 | 岡田 守弘 |