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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01M
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01M
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01M
審判 査定不服 特37 条出願の単一性( 平成16 年1 月1 日から) 特許、登録しない。 H01M
管理番号 1262097
審判番号 不服2011-17217  
総通号数 154 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-08-09 
確定日 2012-08-23 
事件の表示 特願2004-301731「燃料電池」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 4月27日出願公開、特開2006-114387〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成16年10月15日を出願日とする出願であって、平成21年3月5日付けで拒絶理由が通知され、同年4月27日付けで特許請求の範囲及び明細書についての手続補正がされ、平成22年4月20日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年6月25日付けで特許請求の範囲及び明細書についての手続補正がされたが、平成23年5月6日付けで、当該平成22年6月25日付けの手続補正が却下されるとともに、拒絶査定がなされ、これに対して、同年8月9日に審判請求がされるとともに、特許請求の範囲及び明細書についての手続補正がされたものである。
その後、当審において、平成24年2月2日付けで前置報告書に基づく審尋がされ、同年4月4日付けで回答書が提出されている。

第2 平成23年8月9日付けの手続補正についての補正の却下の決定
【補正の却下の決定の結論】
平成23年8月9日付けの手続補正を却下する。

【理由】
I.補正の内容
平成23年8月9日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1の記載を、以下の(A)から(B)とする補正事項aを含む。

(A)「【請求項1】
電解質膜を有する発電セルと、
前記発電セルに対向するセパレータとを備え、
前記セパレータの前記発電セル側の面に、燃料ガスまたは酸化剤ガスが同一方向に流動する複数の溝状の流路がストライプ状に形成されたガス流路が形成され、
前記溝状の流路の少なくとも一部の断面積は、前記溝状の流路の長さ方向へ連続的に増加または減少し、隣り合う前記溝状の流路の断面積変化が逆であることを特徴とする燃料電池。」

(B)「【請求項1】
電解質膜を有する発電セルと、
前記発電セルに対向するセパレータとを備え、
前記セパレータの前記発電セル側の面に、燃料ガスまたは酸化剤ガスが同一方向に流動する複数の溝状の流路がストライプ状に形成されたガス流路が形成され、
前記溝状の流路の少なくとも一部の断面積は、前記溝状の流路の長さ方向へ連続的に増加または減少し、隣り合う前記溝状の流路の断面積変化が逆であり、前記溝状の流路の断面積は、前記溝状の流路の深さが変化することにより、増加または減少し、
前記セパレータは、導電性プレートからなり、
前記ガス流路は、前記導電性プレートをプレスすることにより形成されたことを特徴とする燃料電池。」

II.当審の判断
上記の補正事項は、補正前の請求項1に記載の「前記溝状の流路の少なくとも一部の断面積は、前記溝状の流路の長さ方向へ連続的に増加または減少」することについて、「前記溝状の流路の断面積は、前記溝状の流路の深さが変化することにより、増加または減少」するとの限定を付加するとともに、補正前の請求項1に記載の「セパレータ」について、「導電性プレートからなり、」との限定を、「ガス流路」について、「前記導電性プレートをプレスすることにより形成された」との限定をそれぞれ付加するものであって、これらの限定の付加によっても、産業の利用分野及び解決しようとする課題は同一のままであるから、上記の補正事項を含む本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正により特許請求の範囲が減縮された請求項1に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

III.独立特許要件
1 本件補正発明
本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)は、上記Bに記載された事項により特定されるとおりのものである。

2 刊行物及びその記載事項
原査定、及び、前置報告書に基づく審尋にて示した、本願の出願前に頒布された刊行物である米国特許第6586128号明細書(以下、「引用文献1」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている(「…」は記載の省略を表す。)。

[1a]「A schematic diagram of a typical solid polymer fuel cell stack is depicted in FIG. 1 . For simplicity, FIG. 1 shows only one cell in the fuel cell stack. Stack 1 comprises a membrane electrode assembly consisting of solid polymer electrolyte membrane 2 sandwiched between cathode 3 and anode 4 . (The materials are depicted schematically and not drawn to scale.) Cathode 3 comprises porous fluid diffusion layer 5 and catalyst layer 7 . Anode 4 comprises porous fluid diffusion layer 6 and catalyst layer 8 . Fluid diffusion layers 5 , 6 serve as electrically conductive backings and mechanical supports for catalyst layers 7 , 8 . Fluid diffusion layers 5 , 6 also serve to distribute fluid reactants from flow field plates 9 , 10 to catalyst layers 7 , 8 . During operation, oxidant (typically air) and fuel (typically hydrogen) are supplied to flow field plates 9 and 10 respectively at inlets 11 and 13 respectively. The oxidant and fuel streams exhaust from stack 1 at outlets 12 and 14 respectively. During operation, power is delivered to a load depicted as resistor 15 . 」(第5欄第42?59行)(当審仮訳:典型的な固体高分子型燃料電池スタックの概略図を図1に示す。説明の簡単化のために、図1には、燃料電池スタック内の1つのセルのみを示している。スタック1は、カソード3とアノード4の間に挟まれた固体高分子電解質膜2からなる、膜電極接合体を備えている(各部材は概略的に描かれており、縮尺通りに描かれてはいない。)。カソード3は、多孔質の流体拡散層5と触媒層7を含む。アノード4は、多孔質の流体拡散層6と触媒層8を含む。流体拡散層5,6は、触媒層7,8に対する、導電性裏打と機械的支持体として機能する。流体拡散層5,6は、また、流れ場プレート9,10から触媒層7,8へ反応性流体を分配する機能も果たしている。動作中、酸化剤(通常は空気)と燃料(通常は水素)が、それぞれ、入口11と13で流れ場プレート9と10のそれぞれに供給される。酸化剤と燃料は、出口12と14のそれぞれで、スタック1から排出される。動作中、電力は抵抗15として描かれる負荷に供給される。)

[1b]「Flow fields are incorporated in flow field plates 9 , 10 with fluid distribution channels 16 , 18 which deliver reactants directly to surfaces of diffusion layers 5 , 6 . Flow field plates also comprise landings 17 , 19 which form the walls of channels 16 , 18 and which mechanically support diffusion layers 5 , 6 . The surfaces on diffusion layers 5 , 6 that contact landings 17 , 19 are not in direct contact with the reactants in flow field plates 9 , 10 . Thus, to some extent, the reactant distribution in diffusion layers 5 , 6 in the vicinity of landings 17 , 19 are non-uniform. In certain circumstances, fuel cell performance may be improved by improving the reactant distribution in these regions. Also, to some extent, water may tend to accumulate in these regions resulting in blockage. In particular, product water may tend to accumulate near landings 17 in diffusion layer 5 . In certain circumstances, fuel cell performance may be improved by removing water more effectively in these regions. 」 (第5欄第60行?第6欄第9行)(当審仮訳:流れ場は、流れ場プレート9,10において、拡散層5,6の表面に直接的に反応物を供給する流体流通チャネル16,18に組み込まれている。流れ場プレートには、また、チャネル16,18の壁を形成し、拡散層5,6を機械的に支持しているランド17,19が構成されている。ランド17,19と接触している、拡散層5,6の表面部は、流れ場プレート9,10の反応物と直接的な接触はしていない。したがって、ランド17,19近傍の拡散層5,6における反応物分布は、均一ではない。これらの領域での反応物分布の改善によって、燃料電池の性能は向上するであろう。また、これらの領域では水が溜まる傾向もある。特に、生成水は、拡散層5のランド17の近くに溜まる傾向にある。これらの領域でのより効率的な水の除去によって、燃料電池の性能は向上するであろう。)

[1c]「FIG. 2a shows a prior art flow field plate 20 comprising a plurality of straight parallel reactant distribution channels 21 separated by landings 25 with uniform cross section. The inlet ends of channels 21 are connected to inlet manifold 22 and the outlet ends are connected to outlet manifold 23 . The resistance to reactant flow is essentially constant over the channel length since the channel cross section is essentially constant throughout. The pressure in each channel essentially remains isobaric with adjacent channels from inlet to outlet. The pressure in each channel along any plane normal to the flow direction (for example, the plane represented by line 24 in FIG. 2a ) is constant and thus there is essentially no pressure drop between channels along normal planes. A qualitative plot of the pressure drop in a channel 21 as a function of channel length from inlet to outlet is shown in FIG. 3b. (This pressure plot is also denoted 21 .) A disadvantage of straight channel flow fields is that, without a substantial pressure differential between adjacent channels, reactant distribution and water management may not be desirable in regions of a diffusion layer contacting the landings in the flow field plate. 」(第6欄第10?31行)(当審仮訳:図2aは、一様な断面のランド25によって区切られた、複数の直線状に並行に反応物を分布させる、チャネル21からなる従来の流れ場プレート20を示す。チャネル21の入口端部は、入口マニホールド22に接続され、出口端部は、出口マニホールド23に接続される。チャンネル断面が本質的に全体に均等であるため、反応物の流れ抵抗は、チャンネルの長さ方向にわたって本質的に均等である。各々のチャネル内の圧力は、入口から出口まで、隣接するチャネルとは等圧のままである。流れ方向に垂直な任意の平面(例えば、図2aにおける線24で代表される平面)に沿った各々のチャネル内の圧力は、均等であり、したがって、本質的に、垂直な任意の平面でのチャネル間の圧力降下はない。チャネル21内での、入口から出口までのチャネル長さ方向の関数としての、圧力降下のプロットは、図3bに示されている(この圧力プロットは、21と表示されている。)。流れ場の直線的なチャネルの欠点は、隣接するチャネルとの間に実質的な圧力差がなく、流れ場プレートにおけるランドに接触する拡散層の領域での反応物分布と水管理には望ましくないということであろう。)

[1d]「FIG. 3a shows an embodiment in accordance with the present improved flow fields in which flow field plate 50 comprises a plurality of fluid distribution channels 51 , 52 with varying cross section. As shown in FIG. 3a, the width of channels 51 decreases monotonically from inlet manifold 53 to outlet manifold 54 . (The variation in cross section has been exaggerated in FIG. 3a for purposes of illustration.) The width of channels 52 however increases monotonically from inlet manifold 53 to outlet manifold 54 . In flow field plate 50 , channels 51 alternate with channels 52 and thus each channel 51 is adjacent to channel/s 52 and vice versa (except for channels to the far left or right). 」(第6欄第47?58行)(当審仮訳:図3aは、断面が変化する複数の流体分布チャネル51,52からなる流れ場プレート50を含む、改良された流れ場の実施形態を示す。図3aに示されるように、チャネル51の幅は、入口マニホールド53から出口マニホールド54へ単調に減少する。(説明の都合上、断面の変化は図3aでは誇張されている。)一方、チャネル52の幅は、入口マニホールド53から出口マニホールド54へ単調に増加する。流れ場プレート50においては、チャネル51はチャネル52と交互であり、各々のチャネル51は複数のチャネル52と隣接し、各々のチャネル52は複数のチャネル51と隣接する(最も左側と右側のチャネルは除く)。)

[1e]「The channels 51, 52 in flow field plate 50 are not uniform in cross section and thus the resistance to flow varies with channel length. In a channel, the smaller the cross section, the faster the relative fluid velocity. … FIG. 3b shows an estimated qualitative plot of the difference in pressure between adjacent channels 51 and 52 (also denoted 51 and 52 respectively). As shown in FIG. 3b , there is a pressure differential between adjacent channels over their entire length. Within certain limits, this differential can be engineered such that the higher pressure differentials occur where it is most desired. Compared to the prior art flow field in FIG. 2a, cross channel convective flow is thus enhanced thereby improving reactant distribution and/or water removal in regions around the flow field landings. 」(第6欄第59行?第7欄第19行)(当審仮訳:流れ場プレート50におけるチャネル51,52は、断面が均一ではないので、チャネル長さにわたって流れ抵抗が変化する。チャネル内では、断面積が小さくなるほど、相対的な流体速度は速くなる。…図3bは、隣接するチャネル51と52(それぞれ、51と52と表されている)の間の圧力の違いのプロットが示されている。図3bに示されているように、隣接するチャネルの間には、それらの全長にわたって、圧力差がある。一定の範囲内で、この差は、望ましい圧力差が生じるように設計される。チャネルを横断する流れは、図2aに示されている従来の流れ場に比べて、反応物分布の改善および/または流れ場付近の領域における水の除去が強化する。)

[1f]「An alternative flow field plate (not shown) in which the depth of the channels varies instead of the width could provide similar benefits as that of the flow field plate depicted in FIG. 3a. For instance, channels whose depth decreases monotonically from the inlet to outlet manifold could be used instead of channels 51 , and channels whose depth increases monotonically could be used instead of channels 52 . Such a flow field plate would be characterized by a similar pressure versus channel length relationship as that of the flow field plate in FIG. 3a. 」(第7欄第20?29行)(当審仮訳:チャネルの深さを、チャネルの幅の代わりに、変化させた、代替流れ場プレート(図示せず)によっても、図3aに示した流れ場プレートと同様の利点を提供できる。例えば、入口から出口マニホールドまで、深さが単調に減少するチャネルを、チャネル51の代わりに使用でき、深さが単調に増加するチャネルを、チャネル52の代わりに使用できる。そのような流れ場プレートは、図3aの流れ場プレートのそれと同様の、チャンネル長さに対する圧力の関係で特徴付けられる。)

[1g]図1には、燃料電池スタック1で発電された電力は、流れ場プレート9,10を介して、負荷15に供給されることが記載されている。

3 引用文献1に記載された発明
ア [1a]には、固体高分子型燃料電池スタックがカソード3とアノード4の間に挟まれた固体高分子電解質膜2からなる膜電極接合体を備え、カソード3は、多孔質の流体拡散層5と触媒層7を含み、アノード4は、多孔質の流体拡散層6と触媒層8を含み、流体拡散層5,6は、流れ場プレート9,10から触媒層7,8へ反応性流体を分配していることが記載されている。
また、[1b]には、上記拡散層5,6の表面に直接的に反応物を供給する流体流通チャネル16,18が上記流れ場プレート9,10に組み込まれており、上記流れ場プレート9,10には、チャネル16,18の壁を形成し、上記拡散層5,6を機械的に支持しているランド17,19が構成され、上記拡散層5,6は、上記流れ場プレート9,10の上記ランド17,19と接触していることが記載され、[1c]?[1f]には、上記チャネルは、上記ランドによって、複数の直線状に並行に区切られ、上記チャネルの入口端部は、入口マニホールドに接続され、上記チャネルの出口端部は、出口マニホールドに接続され、隣接するチャネルの間に圧力差を生じさせて、反応物分布の改善および/または流れ場付近の領域における水の除去の強化のために、入口から出口マニホールドまで、深さが単調に減少するチャネルと、深さが単調に増加するチャネルとを隣接させることが記載されている。

イ したがって、引用文献1には、以下の発明が記載されていると認められる。

「カソードとアノードの間に挟まれた固体高分子電解質膜からなる膜電極接合体を備え、上記カソードは、多孔質の流体拡散層と触媒層を含み、上記アノードは、多孔質の流体拡散層と触媒層を含み、上記拡散層の表面に直接的に反応物を供給する流体流通チャネルが流れ場プレートに組み込まれており、その流れ場プレートには、上記チャネルの壁を形成し、上記拡散層を機械的に支持しているランドが構成され、上記拡散層は、上記流れ場プレートの上記ランドと接触しており、上記チャネルは、上記ランドによって、複数の直線状に並行に区切られ、上記チャネルの入口端部は、入口マニホールドに接続され、上記チャネルの出口端部は、出口マニホールドに接続され、入口から出口マニホールドまで、深さが単調に減少するチャネルと、深さが単調に増加するチャネルとを隣接させた、固体高分子型燃料電池スタック。」
(以下、「引用発明1」という。)

4 本件補正発明と引用発明1との対比
本件補正発明と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「カソードとアノードの間に挟まれた固体高分子電解質膜からなる膜電極接合体」、「多孔質の流体拡散層の表面に直接的に反応物を供給する流体流通チャネルが組み込まれている、流れ場プレート」、「ランドによって、複数の直線状に並行に区切られ、入口端部は、入口マニホールドに接続され、出口端部は、出口マニホールドに接続されている、流体流通チャネル」、「入口から出口マニホールドまで、深さが単調に減少するチャネルと、深さが単調に増加するチャネルとを隣接させた」こと、「固体高分子型燃料電池スタック」は、それぞれ、本件補正発明の「電解質膜を有する発電セル」、「前記発電セルに対向するセパレータ」、「前記セパレータの前記発電セル側の面に、燃料ガスまたは酸化剤ガスが同一方向に流動する複数の溝状の流路がストライプ状に形成されたガス流路」、「前記溝状の流路の少なくとも一部の断面積は、前記溝状の流路の長さ方向へ連続的に増加または減少し、隣り合う前記溝状の流路の断面積変化が逆であり、前記溝状の流路の断面積は、前記溝状の流路の深さが変化することにより、増加または減少」すること、「燃料電池」に相当するから、両者は、以下の点で一致し、以下の点で相違する。

<一致点>
電解質膜を有する発電セルと、
前記発電セルに対向するセパレータとを備え、
前記セパレータの前記発電セル側の面に、燃料ガスまたは酸化剤ガスが同一方向に流動する複数の溝状の流路がストライプ状に形成されたガス流路が形成され、
前記溝状の流路の少なくとも一部の断面積は、前記溝状の流路の長さ方向へ連続的に増加または減少し、隣り合う前記溝状の流路の断面積変化が逆であり、前記溝状の流路の断面積は、前記溝状の流路の深さが変化することにより、増加または減少する
燃料電池。

<相違点>
相違点1
本件補正発明では、セパレータは「導電性プレートからなる」のに対して、引用発明1では、セパレータは「プレートからなる」が、「導電性」か否か不明である点
相違点2
本件補正発明では、ガス流路は、「前記導電性プレートをプレスすることにより形成された」のに対して、引用発明1では、ガス流路がどのように形成されたのかが不明である点

5 相違点についての判断
(1)相違点1について
引用文献1の[1a]、[1g]によれば、引用発明1の燃料電池の動作中は、燃料電池で発電された電力は、プレートからなるセパレータを介して、負荷に供給される。
そうすると、引用発明1における、プレートからなるセパレータが「導電性」であることは自明の事項である。
したがって、相違点1は、実質的な相違点でない。

(2)相違点2について
燃料電池において、セパレータの発電セル側面のガス流路を、導電性プレートをプレスすることにより形成することは周知の技術的事項である(必要であれば、特開平10-255824号公報の特許請求の範囲、【0029】?【0052】、【図1】?【図4】、特開2001-6703号公報の【0002】、【0013】、【0017】、【図1】?【図2】、特開2001-176529号公報の【0003】?【0004】、【図12】、特開平2002-352814号公報の【0002】?【0006】、【図6】参照。)。
そうすると、引用発明1において、上記周知の技術的事項を適用して、セパレータの発電セル側面のガス流路を、導電性プレートをプレスすることにより形成することは、当業者が容易になし得ることである。

6 補足 - 回答書の主張に対して
(1)請求人の主張
なお、請求人は、回答書において、「本願発明では、導電性プレートをプレスすることによって形成された溝状のガス流路の深さの変化が隣り合う流路で逆となるという特別な構成を有することによって、ガスの流動方向に断面積が小さくなるガス流路の上にガスの流動方向に断面積が大きくなるガス流路が配置されるようにセパレータを2枚重ねることが可能になり、その結果として、燃料電池の薄型化および位置ずれ防止という、現状の請求項1の記載でも、引用文献1では得られない格別の効果が得られる」旨主張をしている(回答書:「1.」第2段落)。

(2)当審の見解
しかし、請求人の上記主張は、以下の理由により、採用できない。
すなわち、本願明細書【0038】?【0046】に記載されているように、燃料電池におけるセパレータを【図4】(a)記載のように構成し、しかも、そのセパレータの2枚を、【図4】(b)?(c)記載のように、ガスの流動方向に断面積が小さくなる流路の上にガス流動方向に断面積が大きくなる流路が配置されるように重ねた場合にのみ、燃料電池の薄型化および位置ずれ防止という効果を奏するのであるが、本件補正発明は、本願明細書【0048】や【0050】にも記載されているように、単に、「溝状の流路の少なくとも一部の断面積は、前記溝状の流路の長さ方向へ連続的に増加または減少し、隣り合う前記溝状の流路の断面積変化が逆であり、前記溝状の流路の断面積は、前記溝状の流路の深さが変化することにより、増加または減少し、前記セパレータは、導電性プレートからなり、 前記ガス流路は、前記導電性プレートをプレスすることにより形成された」という発明特定事項を含むものであるから、本件補正発明であれば、すべからく、燃料電池の薄型化および位置ずれ防止という効果を奏するわけではない。
よって、請求人の上記主張は妥当性を欠いており、採用できない。

7 小括
以上のとおり、本件補正発明は引用発明1および周知の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

IV.まとめ
したがって、上記補正事項aを含む本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 原査定の理由についての検討
I.本願発明
本願の平成23年8月9日付けの手続補正は、上記のとおり、却下されることとなる。
したがって、本願の請求項1に係る発明は、平成21年4月27日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その発明は上記「第2 I.(A)」に【請求項1】として示すとおりのものである(以下、本願の請求項1に係る発明を「本願発明」という。)。

II.原査定の理由の概要
原審における拒絶査定の理由の一つは、概略、以下のものである。

本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。


刊行物1:米国特許第6586128号明細書

III.当審の判断
1 刊行物1に記載された発明
刊行物1は、上記「第2 III.2 」に記載した、引用文献1と同一であるから、上記「第2 III.3 」に記載されたとおりである、以下の発明が記載されていると認められる。

「カソードとアノードの間に挟まれた固体高分子電解質膜からなる膜電極接合体を備え、上記カソードは、多孔質の流体拡散層と触媒層を含み、上記アノードは、多孔質の流体拡散層と触媒層を含み、上記拡散層の表面に直接的に反応物を供給する流体流通チャネルが流れ場プレートに組み込まれており、その流れ場プレートには、上記チャネルの壁を形成し、上記拡散層を機械的に支持しているランドが構成され、上記拡散層は、上記流れ場プレートの上記ランドと接触しており、上記チャネルは、上記ランドによって、複数の直線状に並行に区切られ、上記チャネルの入口端部は、入口マニホールドに接続され、上記チャネルの出口端部は、出口マニホールドに接続され、入口から出口マニホールドまで、深さが単調に減少するチャネルと、深さが単調に増加するチャネルとを隣接させた、固体高分子型燃料電池スタック。」
(以下、「引用発明1」という。)

2 本願発明と引用発明1との対比
本願発明と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「カソードとアノードの間に挟まれた固体高分子電解質膜からなる膜電極接合体」、「多孔質の流体拡散層の表面に直接的に反応物を供給する流体流通チャネルが組み込まれている、流れ場プレート」、「ランドによって、複数の直線状に並行に区切られ、入口端部は、入口マニホールドに接続され、出口端部は、出口マニホールドに接続されている、流体流通チャネル」、「入口から出口マニホールドまで、深さが単調に減少するチャネルと、深さが単調に増加するチャネルとを隣接させた」こと、「固体高分子型燃料電池スタック」は、それぞれ、本願発明の「電解質膜を有する発電セル」、「前記発電セルに対向するセパレータ」、「前記セパレータの前記発電セル側の面に、燃料ガスまたは酸化剤ガスが同一方向に流動する複数の溝状の流路がストライプ状に形成されたガス流路」、「前記溝状の流路の少なくとも一部の断面積は、前記溝状の流路の長さ方向へ連続的に増加または減少し、隣り合う前記溝状の流路の断面積変化が逆である」こと、「燃料電池」に相当するから、両者の間には、差異はない。

3 まとめ
したがって、本願発明は、刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、原査定は妥当である。
したがって、本願発明は特許を受けることができないものであるから、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-06-22 
結審通知日 2012-06-26 
審決日 2012-07-10 
出願番号 特願2004-301731(P2004-301731)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01M)
P 1 8・ 65- Z (H01M)
P 1 8・ 113- Z (H01M)
P 1 8・ 575- Z (H01M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山内 達人  
特許庁審判長 吉水 純子
特許庁審判官 野田 定文
小川 進
発明の名称 燃料電池  
代理人 片山 修平  
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