ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K |
---|---|
管理番号 | 1262256 |
審判番号 | 不服2009-7896 |
総通号数 | 154 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-10-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-04-13 |
確定日 | 2012-08-22 |
事件の表示 | 特願2004-503108「骨粗鬆症の治療および予防用のビスホスホン酸」拒絶査定不服審判事件〔平成15年11月20日国際公開、WO03/95029、平成17年 7月28日国内公表、特表2005-522526〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、2003年5月2日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2002年5月10日 (EP)欧州特許庁)を国際出願日とする特許出願であって、拒絶理由通知に応答して平成20年11月17日付けで手続補正書と意見書が提出されたが、平成21年1月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年4月13日に拒絶査定不服審判が請求され、同日付で手続補正書が提出されたものであり、その後、当審において、平成23年12月2日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、平成24年3月6日付けで手続補正書と意見書が提出されたものである。 2.本願発明 本願の請求項1?4に係る発明は、平成24年3月6日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるものと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「骨粗鬆症の予防または治療のための医薬組成物であって、その医薬が、a)150mgのイバンドロン酸または薬学的に許容され得るその塩の有効用量および1以上の薬学的に許容され得るその添加剤を含み;そして b)その医薬が1ヶ月当たり1日で経口投与される、 医薬組成物。」 3.引用例 当審の拒絶の理由に引用され本願優先日前に頒布された、国際公開第01/15703号(以下、「引用例1」という。)及びRoche, GlaxoSmithKline in Drug Pact, CHEMICAL MARKET REPORTER, 2001.12.17発行, 第148頁(以下、「引用例2」という。)には、次のことが記載されている。なお、原文は英語であるため翻訳文で示す。また、下線は当審が付した。 [引用例1] (1-i)「現在の教示では、毎日及び周期的な投与形態は欠点を有しているようであり、これらの欠点を克服する投与形態の開発の必要がある。 本発明では、毎日又は周期的な投与形態に伴い得る胃腸の副作用が、ビスホスホネートを比較的高い単位投与量で、週1回投与、週2回投与、2週に1回投与、及び月2回投与からなるグループから選択される投与間隔を有する継続的スケジュールで投与することにより、最小化され得る。言い換えると、ビスホスホネートを比較的高い投与量で、比較的低い頻度で投与することで、比較的低い投与量で比較的高い頻度での投与に比べて、胃腸、特に食道の副作用が減少する。この結果は、増加するビスホスホネート投与量の関数として胃腸の副作用が増加すると予想されることを示唆する教示に照らして、驚くべきことである。本発明のそのような投与方法は、例えば胃腸逆流症(すなわちGERD)、食道炎、消化不良(すなわち胸焼け)、潰瘍、及び他の関連する疾患などの、上部胃腸疾患にかかっている、又は受けやすいと特定された患者を治療するのに、特に有益である。そのような患者においては、従来のビスホスホネート治療は、そのような上部胃腸疾患を悪化させる又は誘発する可能性があった。」(4頁30?5頁14行) (1-ii)「週1回投与とは、ビスホスホネートの単位投与量(a unit dosage)が週に1回、すなわち、7日間の間に1度、好ましくは各週の同じ日に、投与されることを意味する。週1回投与形態において、単位投与量は通常およそ7日おきに投与される。週1回投与形態の限定されない例は、ビスホスホネートの単位投与量を毎週日曜日に投与するものである。好ましくは、単位投与量は連続した日に投与されないが、週1回投与形態は、単位投与量が、2つの異なる週に属する、連続した2日間に投与されることを含みうる。」(11頁13?20行) (1-iii)「月2回投与とは、ビスホスホネートの単位投与量(a unit dosage)が1ヶ月のカレンダー期間に2回、すなわち、2度投与されることを意味する。月2回の形態では、投与は好ましくは各月の同じ2つの日に与えられる。月2回投与形態において、各単位投与量は通常およそ14日ないし16日おきに投与される。2週に1回の(当審注:月2回の誤記と認める。)投与形態の限定されない例は、ビスホスホネートの単位投与量を、月の第1日頃、及び月の中ほどである第15日頃に投与することを必要とするだろう。好ましくは、単位投与量(the unit dasages)は同じ又は連続した日に投与されないが、月2回投与形態は、単位投与量(the unit dasages)が、ひとつの月の期間又は2つの異なる月の期間に属する、連続した2日間に投与されることを含みうる。」(12頁5?15行) (1-iv)「BM-210955、ベーリンガー-マンハイム(イバンドロネート)としても知られる、1-ヒドロキシ-3-(N-メチル-N-ペンチルアミノ)プロピリデン-1,1-ビスホスホン酸は、1990年5月22日に発行された米国特許第4927814に記載され、参照として全体がここに組み込まれる。」(16頁8?11行) (1-v)「医薬組成物 本発明で有用な組成物は、薬学的に有効な量のビスホスホネートからなる。ビスホスホネートは典型的に、経口投与、すなわちタブレット、カプセル、エリキシル、シロップ、発泡組成物、粉末などに関して適切に選択された適切な薬学的希釈剤、賦形剤又は担体、ここではまとめて「担体物質」という、との混合物で、従来の薬学的実務に整合して、投与される。例えば、タブレット、カプセル又は粉末の形態での経口投与では、活性成分は、ラクトース、でんぷん、スクロース、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、ソルビトール、クロスカルメロースナトリウムなどのような、経口の非毒性の薬学的に許容可能な不活性担体と混合される。」(17頁6?17行) (1-vi)「ビスホネート(当審注:原文のbisphonateは、bisphosphopnate(ビスホスホネート)の誤記と認める。)の正確な用量は投与スケジュール、選択された特定のビスホスホネートの経口有効性、年齢、大きさ、性別及び哺乳類又はヒトの状態、治療される疾患の性質や重さ、及び他の関連する医学的及び物理的要因によって変化するだろう。そこで、正確な薬学的有効量は前もっては特定できず、介護者や臨床医によって容易に決定できる。適切な量は、動物モデル及びヒト臨床研究から日常の(routine)実験によって決定される。」(17頁34行?18頁5行) (1-vii)「週1回投与では、経口単位投与量は、アレンドロン酸の活性重量ベースで約17.5mg?約70mgのアレンドロネート化合物からなる。骨粗鬆症の予防に有用な毎週の経口投与量の例は、約35mgのアレンドロネート化合物からなり、骨粗鬆症の治療に有用な毎週の経口投与量の例は、約70mgのアレンドロネート化合物からなる。」(18頁26?31行) (1-viii)「週2回投与では、経口単位投与量は、アレンドロン酸の活性重量ベースで約8.75mg?約35mgのアレンドロネート化合物からなる。骨粗鬆症の予防に有用な週2回の経口投与量の例は、約17.5mgのアレンドロネート化合物からなり、骨粗鬆症の治療に有用な週2回の経口投与量の例は、約35mgのアレンドロネート化合物からなる。」(18頁32行?19頁2行) (1-ix)「2週に1回又は月2回の投与では、経口単位投与量は、アレンドロン酸の活性重量ベースで約35mg?約140mgのアレンドロネート化合物からなる。骨粗鬆症の予防に有用な2週に1回又は月2回の経口投与量の例は、約70mgのアレンドロネート化合物からなり、骨粗鬆症の治療に有用な2週に1回又は月2回の経口投与量の例は、約140mgのアレンドロネート化合物からなる。」(19頁3?8行) (1-x)「週1回投与では、経口単位投与量は、イバンドロン酸の活性重量ベースで、すなわち、対応する酸をベースに計算して、約7mg?約100mgのイバンドロネート化合物からなる。骨再吸収の阻害、骨粗鬆症の治療及び予防に有用な、毎週の経口投与量の例は、35mg、40mg、45mg、又は50mgからなる群から選ばれる単位投与量を含む。」(19頁9?14行) (1-xi)「週1回投与では、経口単位投与量は、レセドロン酸の活性重量ベースで、すなわち、対応する酸をベースに計算して、約7mg?約100mgのリセドロネート化合物からなる。骨再吸収の阻害、骨粗鬆症の治療及び予防に有用な、毎週の経口投与量の例は、35mg、40mg、45mg、又は50mgからなる群から選ばれる単位投与量を含む。」(19頁15?20行) (1-xii)「酸有効ベースで約35mgの、イバンドロネート、薬学的に許容可能な塩又はエステル、及びそれらの混合物から選択されるビスホスホネートからなる医薬組成物。」(クレーム7) [引用例2] (2-i)「アナリストによれば、ロシュは2002年の第2四半期に1日1回製剤(1日おきに飲む)のイバンドロネートを申請予定である。より競争力のある製剤である、経口の1ヶ月に1回又は四半期に1回の製剤が、2003年に申請されるかもしれない。」(3欄2?8行) 4.対比、判断 引用例1に記載された「週1回投与」とは、摘示(1-ii)によると、各週の同じ日に投与することを含むから、1週間当たり1日で投与することを含むものである。 そうすると、上記の摘示(1-ii)、(1-v)、(1-x)及び(1-xii)からみて、引用例1には以下の発明(以下、「引用例1発明」ともいう。)が記載されている。 「イバンドロネートと担体物質との混合物からなり、1週間当たり1日で投与され、毎週の経口投与量がイバンドロン酸の活性重量ベースで35mgである、骨粗鬆症の治療及び予防に有用な医薬組成物。」 そこで、本願発明と引用例1発明を対比する。 引用例1発明の「イバンドロネート」は、1-ヒドロキシ-3-(N-メチル-N-ペンチルアミノ)プロピリデン-1,1-ビスホスホン酸を指す用語であるが(摘示(1-iv)参照)、この化合物は本願明細書において「イバンドロン酸」と呼ばれている化合物である(本願明細書【0001】段落参照)。したがって、引用例1発明の「イバンドロネート」は本願発明の「イバンドロン酸または薬学的に許容され得るその塩」に相当する また、引用例1発明の「担体物質」は、薬学的希釈剤、賦形剤又は担体を指す用語であるが(摘示(1-v)参照)、これが本願発明の「薬学的に許容される添加剤」に相当することは明らかである。 そうすると、両者は 「骨粗鬆症の予防または治療のための医薬組成物であって、その医薬が、 a)イバンドロン酸または薬学的に許容され得るその塩の有効用量および1以上の薬学的に許容され得るその添加剤を含み;そして b)その医薬が経口投与される、 医薬組成物。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> 投与間隔について、本願発明は「1ヶ月当たり1日」であるのに対して、引用例1発明は「1週当たり1日」である点 <相違点2> イバンドロン酸の量について、本願発明は150mgであるのに対して、引用例1発明は35mgである点 そこで、これらの相違点について検討する。 (1)相違点1について 引用例1には、イバンドロネート等のビスホスホネートについて、比較的高い単位投与量で、比較的低い頻度、具体的には週2回投与、週1回投与、2週に1回投与、又は月2回投与の投与形態を採用することで、毎日投与に比べて胃腸、特に食道の副作用が減少することが示唆されている(摘示(1-i)参照)。したがって、引用例1に接した当業者にとって、副作用の低減のために、イバンドロネートを高い単位投与量で投与し、投与間隔を少なくとも月2回(各月の2つの日に投与する形態を含む。摘示(1-iii)参照。)まで延ばす動機付けがあると認められる。 ここで、引用例2には、イバンドロネートの経口製剤について、月1回の投与形態が開発されつつあることが示唆されている(摘示(2-i)参照)。そうすると、引用例1及び2に接した当業者にとって、引用例1発明の月当たり2日の投与間隔を、さらに延ばして1ヶ月当たり1日とすることは、容易に想到し得たことと認められる。 この点について出願人は、引用例1は、同じ日に単位投与量を投与しないのが好ましいと、本願発明の1日投与から離れる記載をしていると主張している。 確かに引用例1には、「好ましくは、単位投与量(the unit dasages)は同じ又は連続した日に投与されないが、月2回投与形態は、単位投与量(the unit dasages)が、ひとつの月の期間又は2つの異なる月の期間に属する、連続した2日間に投与されることを含みうる。」(摘示(1-iii)参照。下線は当審が付した。)と記載されている。しかし、「単位投与量(the unit dasages)」は複数形であるから、上記記載は、2単位以上の単位投与量を同じ日に投与しないことが好ましいと解すべきものであって、1単位の単位投与量を1日で投与することを避ける記載ではない。 したがって、請求人の上記主張を採用することはできない。 (2)相違点2について 引用例1には、ビスホスホネートの投与量は、投与スケジュールに依存して変化し、日常の(routine)実験によって決定されると記載されているから(摘示(1-vi)参照)、月1回の投与間隔に適した投与量を実験的に決定することは、当業者にとって困難なことではない。 また、引用例1には、ビスホスホネートに属する化合物であるアレンドロネートについて、投与間隔が週2回、週1回、2週に1回の場合に、骨粗鬆予防のための投与量がそれぞれ約17.5mg、約35mg、約70mgであり、骨粗鬆治療のための投与量がそれぞれ約35mg、約70mg、約140mgであることが記載されている(摘示(1-vii)?(1-ix)参照)。このことから、投与間隔を2倍にすると投与量も2倍になるという関係を読み取ることができる。 アレンドロネートもイバンドロネートも、ともにビスホスホネートに属する骨粗鬆症治療剤として引用例1に記載された化合物であるから、投与間隔と投与量の関係について、両者は類似の関係を有すると当業者は期待するはずである。そうすると、引用例1発明において、週1回の場合の投与量35mgに基づいて、月1回の場合の投与量を150mg(=35mg×30/7;1ヶ月は30日、1週間は7日として計算)と決定して、本願発明に想到することは、当業者が容易になし得たことである。 この点について請求人は、文献D1、D46及びD47を根拠に、本願優先日(2002年5月10日)当時、イバンドロネートの最適用量が1日2.5mgであると当業者において広く認められていたと主張している。そして、当業者が月1回の用量を決定する場合には、1日経口用量として1日2.5mg用量を選択し、その累積量として1ヶ月約75mgを決定することが自然であって、悪影響が報告されていた1日5.0mgの累積量となる、引用例1記載の週35mgの投与には懐疑的になると主張している。 そこでこの主張について検討する。 確かに文献D46(Ravn, P. et al., Bone, Vol.19, No.5 (1996), 527-533)には、イバンドロネートを毎日0.25, 0.5, 1.0, 2.5及び5.0mgで投与して投与量決定試験を行い、2.5mgが最も効果的な投与量であり(要約参照)、5.0mgの投与の場合により高い頻度での下痢があったと記載されている(532頁右欄第1段落参照)。また、文献D47(Ravn, P. et al., Osteoporosis International, 9 (1999), 277-283)では、骨粗鬆治療の効果をモニターするにあたり、参考文献9(前記文献D46のことである)及び13にもとづいて、2.5mgのイバンドロネート又は10mgのアレンドロネートで治療された患者を対象としている。すなわち、1996年及び1999年に発行された上記2つの文献においては、イバンドロネートの投与形態として毎日2.5mgの投与を念頭に置いていたと認められる。 しかし、文献D1(Riis. B.J. et al., Journal of Bone and Mineral Research, Vol.16, No.10 (2001), 1871-1878)には、イバンドロネートの毎日2.5mgの連続投与(3ヶ月間で225mg)と、3ヶ月間の最初の24日間は20mgを1日おきに投与し、その後9週間は活性薬を投与しない間欠投与(3ヶ月間で240mg)とを比較した研究において、間欠投与でのBMD(骨ミネラル密度)の増加は、連続投与と等価であったと記載され、この結果から、イバンドロネートの有効性は投与スケジュールよりも合計経口投与量に依存するとの見解を導き、投与頻度の最小化を目指した新しい投与形態の開発が行われるであろうことを示唆している(要約、1872頁右欄第2段落参照)。したがって、文献D1が発行された2001年においては、当業者はもはや毎日2.5mgの投与量に束縛されることはなく、むしろ投与頻度の最小化を目指しつつ、適切な合計経口投与量を新たに開発することを動機づけられていたと認めるのが相当である。 確かに、請求人の主張するとおり、D1では毎日投与量の2.5mgが「2.5mg/日が最大の効果(5mg/日と等しい)を与える最小投与量であることを示した第II相試験に基づいて選択され」(1876頁左欄最終段落参照)ており、また、間欠投与の合計投与量は、連続投与の合計投与量と同程度になるように設定されている。しかし、このことは、間欠投与と連続投与の効果を比較するために、合計投与量を揃えて比較したと認めるのが相当であって、間欠投与等の投与間隔を空けた投与形態の場合にまで、最適な投与量を開発する際に2.5mg/日に基づいて計算すべきであることを示したものではない。 したがって、請求人の上記主張を採用することはできない。 さらに請求人は、引用例1の実施例はアレンドロネートに関するものであり、アレンドロネートに関しては、週1回、週2回、2週1回、月2回の具体的処方量を記載しているのに対し、イバンドロネートに関しては週1回の具体的処方量を記載するだけであり、しかもこのイバンドロネートの記載はリセドロネートとまったく同じ記載であることを指摘して、これらの事実から、引用例1が主にアレンドロネートに関するものであり、イバンドロネートの記載は単にアレンドロネートに合わせて記載したに過ぎないと主張している。 しかし、摘示(1-x)のとおり、引用例1には、イバンドロネートの週1回投与における経口単位投与量の例が4つ挙げられていて、そのひとつが35mgであるから、当業者にとって、引用例1に引用例1発明、すなわち、毎週の経口投与量が35mgのイバンドロネートであり、1週間当たり1日で投与される医薬組成物の発明が記載されていることは明白である。そして、イバンドロネートに関する実施例がないこと、イバンドロネートについて週1回以外の投与頻度の記載がないこと、またはイバンドロネートの記載がリセドロネートとまったく同じ記載であることをもって、引用例1の記載から当業者が引用例1発明を実施可能な発明として把握できないとはいえない。 したがって、請求人の上記主張を採用することはできない。 (3)本願発明の作用効果について 請求人は、2.5mgの毎日投与に比べて、150mgの1ヶ月当たり1日での投与が優れた効果を示すこと、及び、100mgの1ヶ月当たり1日での投与に比べて、150mgの1ヶ月当たり1日での投与が優れた効果を示すことを示す資料を提出し(平成20年11月17日付け意見書の参考資料1?4、平成23年11月10日付け回答書の添付資料8の2.3.12)、本願発明が優れた効果を奏すると主張している。 しかしながら、本願発明が引用例1発明と比較して予測し得ない程優れた作用効果を奏するといえなければ、本願発明に進歩性は見いだせないところ、請求人から、本願発明の医薬組成物と、毎週35mgの投与形態との比較は示されていない。このため、本願発明の医薬組成物が、引用例1発明(35mgを1週間当たり1日投与)と比較して、特に優れた作用効果を奏すると認めることはできない。 また、上記の文献D1には、イバンドロネートの有効性は投与スケジュールよりも合計経口投与量に依存するとの見解が示されている(要約参照)。このことからみても、合計投与量が大きい(1ヶ月に150mg)本願発明の医薬組成物が、合計投与量が小さい(1ヶ月に100mg、又は毎日2.5mg)医薬組成物と比較して、ある程度優れた効果を奏するものであっても、当業者の予測を超えた顕著な効果であると認めることはできない。 (4)まとめ 以上のとおりであり、上記相違点1?2にかかる本願発明の発明特定事項を併せ採用することも格別の創意工夫を要するものとは認められず、それら発明特定事項を併せ採用したことによって予想を超える格別の作用効果を奏しているとも認められない。 よって、本願発明は、引用例1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.むすび 以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、引用例1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願はその余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-03-26 |
結審通知日 | 2012-03-27 |
審決日 | 2012-04-09 |
出願番号 | 特願2004-503108(P2004-503108) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(A61K)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 原口 美和、岩下 直人 |
特許庁審判長 |
横尾 俊一 |
特許庁審判官 |
田名部 拓也 内藤 伸一 |
発明の名称 | 骨粗鬆症の治療および予防用のビスホスホン酸 |
復代理人 | 齋藤 房幸 |
復代理人 | 岡崎 祐一 |
代理人 | 津国 肇 |