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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1262259
審判番号 不服2009-21115  
総通号数 154 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-10-30 
確定日 2012-08-22 
事件の表示 特願2005-353828「データ整理のための方法及びシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 6月29日出願公開、特開2006-172452〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年7月14日(パリ条約による優先権主張平成11年7月20日、平成11年10月6日、平成12年7月14日、アメリカ合衆国)に出願した特願2001-511599号の一部を平成17年12月7日に新たな特許出願としたものであって、平成20年4月16日付けで拒絶理由が通知され、同年10月22日付けで手続補正がなされ、同年11月20日付けで拒絶理由が通知され、平成21年6月2日付けで手続補正がなされたが、同年6月23日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年10月30日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成21年10月30日付けの手続補正書により補正された、特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「【請求項1】
コンピュータにより実行される、情報を処理するための方法であって、前記情報は、複数の英数文字によって表わされ、前記複数の英数文字の各々は、10個の数字“0”-“9”と、26個のケースインセンシィティブなアルファベット文字“A”-“Z”とを含む一組の英数文字の要素であり、前記方法は、
コンピュータによって前記一組の英数文字における前記英数文字の各々を、番号システムにおける一組の数の対応する数に割り当てることであって、前記番号システムは、36よりも大きいかあるいは36に等しく、40よりも小さいかあるいは40に等しい基数をもち、前記10個の数字“0”-“9”はそれぞれ、前記番号システムにおける数0-9に割り当てられ、前記26個のケースインセンシィティブなアルファベット文字“A”-“Z”はそれぞれ、前記番号システムにおける数A-Zに割り当てられ、前記割り当て処理において、前記コンピュータは、前記一組の英数文字における前記複数の英数文字の各々と、前記一組の数の前記対応する数間の関係を前記コンピュータのメモリ内に生成することと、
コンピュータによって前記複数の英数文字を前記番号システムにおける表記をもつ数値に変換することであって、前記番号システムにおける前記数値は、前記複数の英数文字の各々に関する数字(digit)をもち、該数字は、前記複数の英数文字の各々が割り当てられる、前記番号システムにおける前記数の1つに対応し、前記変換処理において、前記コンピュータは、前記複数の英数文字の各々に関して前記メモリから前記対応する数を検索し、前記検索された数と、前記番号システムとに基づいて前記数値を算出することによって、前記番号システムにおける前記数値を生成することと、
コンピュータによって前記情報を処理するためにコンピュータ内で前記数値に関して演算を行なうことであって、前記演算処理において、前記コンピュータは、前記情報を処理するために、前記数値と、少なくとも1つの他の数値とを比較することと、
を具備する方法。」

3.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-62004号公報(以下、「引用例」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

あ.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、プリント基板など多品種におよぶワークを識別するため、これに貼付けられるバーコードラベルへの印字と読取とを行うバーコードシステムに関する。なお、このバーコードシステムはワークの生産指示や検査結果のデータ管理等に利用される。」

い.「【0012】
【実施例】
<第1実施例>以下、本発明の第1実施例を図面に基づいて説明する。バーコードシステムは、図4に示した従来例と同様に、ワークとしての例えばプリント基板mの品種データと、各基板mを区別するための基板番号情報(ワーク番号情報)とを付加してデータ伝送するホストコンピュータ1と、伝送されてきた品種データと基板番号情報とをバーコードおよびキャクタコードに変換してバーコードラベルに印字しプリント基板mに貼付けるバーコードラベル貼付け装置2と、貼付けられたバーコードを読取ってプリント基板mの品種データと基板番号情報とを得るバーコードリーダー3とを備えて構成されている。
【0013】バーコードラベル貼付け装置2の概略構成を図1のブロック図に示す。受信用バッファ4はホストコンピュータ1からデータ通信路5を介して送信されてくるプリント基板の品種データと基板番号情報とを一時的に蓄える。品種データはオペレータによってホストコンピュータ1に付属のキーボード6から入力され、ホストコンピュータ1がこれに基板番号情報を付加して送信する。このときの基板番号情報は10進数をビット化したものとして、また、品種データは例えばアルファベット文字をビット化したものとして表される。」

う.「【0019】次に、図2のバーコードシンボルを読取るバーコードリーダーについて、図3の簡単化したブロック図を参照しながら説明する。バーコードリーダーはプリント基板mに貼付けられたバーコードラベルbに光源20からの光を照射し、その反射光をCCDカメラ21で走査して電気信号に変換する。電気信号はOPアンプ22で増幅されたのちA/D変換器23でテジタル化されてデコード処理部24に与えられる。
【0020】デコード処理部24はデジタル信号の繰り返し性に基づいて、バーコードシンボルで表現された文字や数値などを解読するプロセッサである。本例のバーコードシンボルは図2に示したように、プリント基板の品種データと基板番号情報とをセンタバーで区切ったのもの(審決注:原文ママ)であるため、スタートコードからセンタバー間の情報を品種データとして解読したのちデータ出力部25に出力し、センタバー以降の残りの情報を基板番号情報であるとして解読したのち数値逆変換テーブル26に対し、その読み出しアドレスとして出力する。解読された基板番号情報は、圧縮された情報、すなわち、36進数で表された数値データである。
【0021】数値逆変換テーブル26は、図1に示した数値変換テーブル8とは逆の変換となる、36進数を10進数に変換するテーブルである。例えば、上記例のように、36進数としての「ZZZ」がデコード処理部24から読み出しアドレスとして与えられると、そのアドレスに予め格納されている10進数としての「46655」を出力する。また、データ出力部25は、解読された品種データ「AB」と、解読されて上記の数値逆変換が施された基板番号情報「46655」とを、例えばデータ管理用のコンピュータ(図示せず)などに送信するために通信可能な形に加工して出力する。」

え.「【0023】<第2実施例>この第2実施例は、上記の第1実施例の構成を次のように変えて実施する。
・・・中略・・・
【0025】バーコードリーダは、前記印字されたバーコードを読み取ってデコード処理部24で解析した後、これをホストコンピュータ1に送信する。ホストコンピュータ1は受信したデータのうち多進数で表現されている基板番号情報を数値逆変換テーブル26を用いて10進数に変換し元の基板番号情報を得る。」

ここで、上記各記載事項を各種常識に照らせば、以下のことがいえる。
(あ)上記記載事項中の「バーコードラベル」に印字された「バーコードシンボル」は、基板番号情報等が印字された「情報」であって、各々が10個の数字“0”?“9”と26個のケースインセンシティブな英文字“A”?“Z”を含む一組の英数文字に対応する独立した「シンボル」によって表されている情報であるから、該「バーコードシンボル」は、その各々が10個の数字“0”?“9”と26個のケースインセンシティブな英文字“A”?“Z”を含む一組の英数文字に対応する複数のシンボルによって表される「情報」とも呼び得るものである。
(い)上記記載事項中の「バーコードリーダ」の「デコード処理部」は、上記「バーコードシンボル」で表現された情報を解読するものであって、各「シンボル」を解読して得られた各々の英数文字を、36進数における各桁の数字として扱い、さらに、36進数の数値として扱う変換機能を具備しているから、該「バーコードリーダ」には当然に、各シンボルに対応する英数文字の各々を多進数における一組の対応する数に割り当てるための、「英数文字」とそれに対応する「数」との関係を示す「対応表」とも呼び得るものがメモリ内に生成されている。また該「バーコードリーダ」が解読して得られた英数文字を多進数の数値に変換する際には当然に、該メモリ内に生成されている「対応表」とも呼び得るものを検索して得られる数と、多進数(基数)とに基づいて、数値を生成する。
(う)上記「対応表」とも呼び得るものにおける、英数文字とそれに対応する数との関係は、上記「う.」の第21段落等を参照して明らかなように、解読したシンボルが数字「0?9」であればそれぞれ多進数における数0?9に、解読したシンボルが英字「A?Z」であればそれぞれ多進数におけるA?Z(10進数における10?35)に、割り当てられる関係となっている。
(え)上記記載事項中の「バーコードリーダ」は、解読し変換して得られた36進数の数値に関して、10進数の数値にしたり通信可能な形に加工したりといった何らかの演算処理を行えるから、該「バーコードリーダ」は、情報を処理するためにバーコードリーダ内で得られた数値に関しての「演算」を行っているといえる。

したがって、引用例には
「バーコードリーダにより実行される、情報を処理するための方法であって、前記情報は、複数の英数文字に対応するシンボルによって表され、前記複数の英数文字に対応するシンボルの各々は、10個の数字“0”?“9”と26個のケースインセンシティブな英文字“A”?“Z”を含む一組の英数文字に対応する要素であり、前記方法は、
バーコードリーダによって解読された前記一組の英数文字における前記英数文字の各々を、多進数における一組の数の対応する数に割り当てることであって、前記多進数は、36に等しい基数をもち、前記10個の数字“0”?“9”はそれぞれ、多進数における数0?9に割り当てられ、前記ケースインセンシティブな英文字“A”?“Z”はそれぞれ、多進数におけるA?Zに割り当てられ、前記割り当て処理において、前記バーコードリーダは、前記一組の英数文字における前記複数の英数文字の各々と、前記一組の数の前記対応する数間の関係を示す対応表を前記バーコードリーダのメモリ内に有することと、
バーコードリーダによって解読された前記複数の英数文字を前記多進数における表記を持つ数値に変換することであって、前記多進数における前記数値は、前記複数の英数文字の各々に関する数字をもち、該数字は、前記複数の英数文字の各々が割り当てられる、前記多進数における前記数の1つに対応し、前記変換処理において、前記バーコードリーダは、前記複数の英数文字の各々に関して前記対応表から前記対応する数を検索し、前記検索された数と、前記多進数の基数とに基づいて前記数値を算出することによって、前記多進数における数値を算出することと、
バーコードリーダによって前記情報を処理するためにバーコードリーダ内で前記数値に関して演算を行うことと、を具備する方法。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

4.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、以下のことがいえる。
(1)引用発明の「バーコードリーダ」、「英文字」、および「関係を示す対応表」はそれぞれ、本願発明の「コンピュータ」、「アルファベット文字」、および「関係」に相当する。
(2)引用発明の「多進数」は、36に等しい基数をもつシステムであり、本願発明の「番号システム」がもつ基数の「36よりも大きいかあるいは36に等しく、40よりも小さいかあるいは40に等しい」という数値範囲のうちの「36」に相当するから、引用発明の「多進数」は、本願発明の「番号システム」に相当する。
(3)引用発明の「情報」を表す「シンボル」は、バーコードリーダによって英数文字に解読されるものであり、「英数文字」と1対1に対応した「シンボル」であるから、引用発明の「シンボルによって表される情報」と本願発明の「英数文字によって表される情報」とは、「英数文字によって表現され得る情報」である点で共通する。
(4)引用発明の「演算」と本願発明の「演算」とは、得られた数値に関して何らかの演算処理を行う点で共通する。

したがって、本願発明と引用発明との間には、以下の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「コンピュータにより実行される、情報を処理するための方法であって、前記情報は、複数の英数文字によって表現され、前記複数の英数文字の各々は、10個の数字“0”?“9”と26個のケースインセンシティブな英文字“A”?“Z”を含む一組の英数文字の要素であり、前記方法は、
コンピュータによって前記一組の英数文字における前記英数文字の各々を、番号システムにおける一組の数の対応する数に割り当てることであって、前記番号システムは、36に等しい基数をもち、前記10個の数字“0”?“9”はそれぞれ、前記番号システムにおける数0?9に割り当てられ、前記ケースインセンシティブなアルファベット文字“A”?“Z”はそれぞれ、前記番号システムにおけるA?Zに割り当てられ、前記割り当て処理において、前記コンピュータは、前記一組の英数文字における前記複数の英数文字の各々と、前記一組の数の前記対応する数間の関係を前記コンピュータのメモリ内に生成することと、
コンピュータによって前記複数の英数文字を前記番号システムにおける表記を持つ数値に変換することであって、前記番号システムにおける前記数値は、前記複数の英数文字の各々に関する数字をもち、該数字は、前記複数の英数文字の各々が割り当てられる、前記番号システムにおける前記数の1つに対応し、前記変換処理において、前記コンピュータは、前記複数の英数文字の各々に関して、前記メモリ内の関係から前記対応する数を検索し、前記検索された数と、前記番号システムとに基づいて前記数値を算出することによって、前記番号システムにおける数値を算出することと、
コンピュータによって前記情報を処理するためにコンピュータ内で前記数値に関して演算を行うことと、を具備する方法。」

(相違点1)
本願発明が処理する「英数文字によって表現され得る情報」は、「英数文字で表される情報」であるのに対し、引用発明が処理する「英数文字によって表現され得る情報」は、「英数文字で表される情報」ではない点。

(相違点2)
本願発明のコンピュータが行う「演算」は、「情報を処理するために、前記数値と、少なくとも1つの他の数値とを比較する」という処理であるのに対し、引用発明のコンピュータ(バーコードリーダ)が行う「演算」は、「情報を処理するために、前記数値と、少なくとも1つの他の数値とを比較する」という処理ではない点。

5.判断
上記相違点について検討する。

(相違点1)について
情報を処理するコンピュータにどのような入出力機器を用いるかは当業者が設計事項として適宜実施すべき事項にすぎないし、コンピュータが扱う情報をどのような形で表すかも当業者が設計事項として適宜実施すべき事項にすぎないから、引用発明が処理する「英数文字によって表現され得る情報」を、「英数文字で表される情報」とすることは、当業者が容易に推考し得たことというべきである。

(相違点2)について
以下の事情を勘案すると、引用発明が行う「演算」を「情報を処理するために、前記数値と、少なくとも1つの他の数値とを比較する」という処理を含むものとすることは、当業者が容易に推考し得たことというべきである。
(ア)情報処理一般において、処理速度の向上や必要メモリの低減のために、情報を数値に変換して他の数値と比較するという演算処理(例えば、位置情報を数値化して検索を行ったり(例えば特開平8-36217号公報等を参照)、画像情報を数値化して検索を行ったり(例えば特開平11-96368号公報等を参照)、文字列を数値化して検索を行ったり(例えば特開平2-273868号公報等を参照)等)は、通常よく行われている周知の技術である。
(イ)引用発明のコンピュータ(バーコードリーダ)が処理対象としている情報も、指示や管理等を目的とした情報であり、そこにおいても処理速度の向上や必要メモリを低減することで有用な場合があることは当業者に自明であるから、指示や管理等を目的とした情報の処理に上記(ア)のような周知の技術を用いて、情報を変換して得られた数値を他の数値と比較するようにすることが有用な場合があることは当業者に自明であるし、またそのようにできない理由もない。
(ウ)上記(ア)(イ)のことは、取りも直さず、引用発明が行う「演算」を「情報を処理するために、前記数値と、少なくとも1つの他の数値とを比較する」という処理を含むものとすることが、当業者にとって容易であったことを意味している。

(効果について)
本願発明の奏する効果は、引用発明及び上記周知の事項から予測される範囲内のものにすぎず、格別なものということはできない。

(請求人の主張について)
平成21年12月17日付け手続補正書により補正された審判請求書において、請求人は、「本願発明は、(例えば複数の英数文字などの)文字列を単一の数値に変換するための方法に関するものです。そのような変換処理によれば文字列を複数の文字としてではなく単一の数値として処理することが可能になります。」との主張をし、それを根拠に本願発明の進歩性が肯定されるべき旨主張しているが、以下の理由で採用することができない。

(ア)本願請求項1の記載は、「2.」に摘記したとおりの「情報を処理するための方法」であって、その「情報」を「文字列」に限定解釈すべき理由はない。そして、該請求項1の文言上、本願発明は「文字列」以外の情報を処理する方法も当然に含んでおり、そのようなものについては、上記請求人の主張は妥当しない。
(イ)仮に、本願発明を「文字列を処理するための方法」(文字列を数値に変換する方法)に限定解釈できたとしても、上記「5.」の「(相違点2)について」の「(ア)」でも例示したように、文字列を数値に変換して他の数値と比較すること自体周知であるから、上記請求人の主張をもって本願発明の進歩性を肯定することはできない。

6.まとめ
したがって、本願発明は、引用発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

7.むすび
以上のとおり、本願発明は引用発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-03-26 
結審通知日 2012-03-27 
審決日 2012-04-09 
出願番号 特願2005-353828(P2005-353828)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 和樹  
特許庁審判長 長島 孝志
特許庁審判官 小曳 満昭
加内 慎也
発明の名称 データ整理のための方法及びシステム  
代理人 中村 誠  
代理人 野河 信久  
代理人 幸長 保次郎  
代理人 村松 貞男  
代理人 白根 俊郎  
代理人 峰 隆司  
代理人 勝村 紘  
代理人 福原 淑弘  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 河野 哲  

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