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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B28C |
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管理番号 | 1262260 |
審判番号 | 不服2009-24335 |
総通号数 | 154 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-10-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-12-09 |
確定日 | 2012-08-22 |
事件の表示 | 特願2002-587185「繊維コンクリートの製造中に補強繊維を混合サイロに添加する方法及びその装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年11月14日国際公開、WO02/90074、平成16年10月14日国内公表、特表2004-531410〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続きの経緯 本願は、2002年4月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2001年5月4日 ベルギー国)を国際出願日とする出願であって、平成20年2月21日付けで拒絶理由が通知され、同年5月26日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成21年8月6日付けで拒絶査定されたので、同年12月9日付けで拒絶査定不服審判が請求されると共に手続補正書により明細書が補正され、平成23年10月17日付けで特許法第164条3項に基づく報告書を引用した審尋がなされ、平成24年2月7日に回答書が提出されたものである。 2 平成21年12月9日付けの手続補正(以下「本件補正」という)について 本件補正は、特許請求の範囲についてするものであって、(a)請求項2、3、4、5、6、10、11、13、14、15の「サック」を「前記サック」に、(b)請求項2、4、5、6、11、12、13、14の「補強繊維」を「前記補強繊維」に、(c)請求項2の「鎖状包装体」を「前記鎖状包装体」に、(d)請求項8の「多数のサック」を「複数のサック」に、(e)請求項9の「鎖状鎖包装体」を「鎖状包装体」に補正するものである。 そして、これらの補正のうち、上記(a)?(c)は特許請求の範囲の限定的減縮を目的とし、(e)(d)の補正は誤記の訂正と認められる。 したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項で規定する事項を目的とするものである。そして 同法第17条の2各項で規定する他の要件も充足しているので、本件補正は適法になされたものであると認める。 3 本願発明 したがって、本願発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という)は、次のとおりのものである。 「繊維コンクリートの製造中に補強繊維を混合サイロに添加する方法において、前記添加する方法は、前記補強繊維を含む複数のサック(2)からなる鎖状包装体(1)に内蔵された形で前記補強繊維を前記コンクリートに供給するステップを含み、前記サック(2)は全体として前記混合サイロの内容物に加えられ、前記サック(2)は前記コンクリート内で分解可能な材料によって形成されることを特徴とする方法。」 4 刊行物に記載された発明 (1) 引用例1について ア 引用例1の記載事項 本願優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由で引用された特開平3-272808号公報(以下「引用例1」という)には、次の事項が記載されている。 (ア)「容器中にセメント混和材(剤)料を内包した包装体を、セメントスラリー中に投入し、セメントスラリーとともに撹拌して容器を開口せしめ、セメントスラリー中に混和材(剤)料を添加することを特徴とするセメント混和材(剤)料の添加方法。」(特許請求の範囲の請求項1) (イ)「流動化剤の投入に際しては、メーカーより派遣された専門家が、まずベースコンクリートのスランプを目視計測後、前もって検討された実験式により、所定スランプまで流動化するのに必要な流動化剤の投入量を算出し、・・・投入していた。 しかし、このような流動化システムでは、流動化剤の投入量の計算、計量および投入までの操作が煩雑であるため必ず投入の専門家が必要となり、一般の人では対応できないという問題があった。」(第2頁左上欄8?20行) (ウ)「現在、セメント混和材(剤)料としては、流動化剤の他に、・・・補強材等が使用されでいるが、その使用に当たっては、コンクリート、モルタル等のセメント配合物の標準調合に合わせて、セメント混和材(剤)料を所定量計算して添加する必要があるため、これら混和材(剤)料についても上記の流動化剤と同様の問題点があった。」(第2頁右上欄7?16行) (エ)「補強材としては、曲げ、引張強度を補強する目的で、・・・ポリプロピレン等の合成繊維、・・・ガラス繊維、・・・ステンレス、スチール等の金属繊維が挙げられる。これらの繊維は、分散形状、ミキシングにより容易に繊維状に分散するロール形状、パネル形状等で使用される。」(第3頁右下欄9?17行) (オ)「包装体の容器の材質や形状は・・・種々の変形が可能であり、アジテイターやその他ミキサー等によるセメントスラリー中での撹拌により、開口して混和材(剤)料を放出するものであればいずれでもよく、できるだけ細かく容器が解砕ないしは溶解され、ベースコンクリート、ベースモルタル等のセメント配合物になじんで分散、一体化されるものが望ましい。容器の開口は、ミキサー、アジテイター等による撹拌時に、セメントスラリーに含まれる砂、砂利等の剪断力や摩擦力により、容器が破損、解砕、分散したり、セメントスラリー中に含まれる水分やアルカリ分の作用で容器が溶解、水解、分散することにより行われる。」(第4頁左上欄3?16行) (カ)「本発明によれば、容器中にセメント混和利(剤)料を内包した包装体を、セメントスラリー中に投入して撹拌し、混和材(剤)料をセメントスラリー中に添加、混合することにより、パッケージ化された混和材(剤)料の個数で添加量を調整でき、計量、投入等の煩雑な操作を必要とせず、特別の専門家でない一般の人にも容易に操作できる。」(第5頁左下欄13?20行) イ 引用例1に記載された発明 記載事項(ア)によれば、引用例1には、セメント混和材料を内包した包装体を、セメントスラリー中に投入して撹拌することからなる、セメント混和材料の添加方法が記載されている。これは、同(イ)(ウ)によれば、補強材を含むセメント混和材料をセメントスラリー中に添加するに際しては、投入量の計算や投入操作が煩雑という問題があったが、この問題を解決することを目的とするものである。 そして、同(オ)によれば、セメント混和材料を内包した包装体は、コンクリートのミキサーに投入され、セメントスラリー中での撹拌により溶解して一体化される材質のものとすることができる。さらに、同(エ)によれば、当該セメント混和材料として、ガラス繊維や金属繊維等の補強材を使用することができる。 これにより、同(カ)によれば、パッケージ化されたセメント混和材料の個数で添加量を調整できるので、計量、投入等の煩雑な操作を必要とせず容易に操作できる。 したがって、引用例1には次の発明(以下「引用例1発明」という。)が記載されているとすることができる。 「ガラス繊維や金属繊維等の補強材をセメントスラリーに添加するにあたり、セメントスラリー中で溶解する材質からなる包装体に補強材を内包し、これをコンクリートミキサー中のセメントスラリーに投入する方法。」 (2)引用例2について ア 引用例2の記載事項 同じく、実願昭47-80108号(実開昭49-38680号)のマイクロフィルム(以下「引用例2」という)には、次の事項が記載されている。 (サ)「近時洗剤、糊剤、染剤、農薬またはその他の各種薬品等を単位量づつ水溶性フィルムで密閉包装して、使用時には包装のまま必要個数を水中に投入し、内容物を包装のフィルムごと水に溶解または分散させて用いることが行われている。このいわゆるユニット包装によれば、使用時に一々計量する手間が省けるのみならず、手を汚染したりすることもないという利点がある。」(第1頁9?17行) (シ)「包装袋の形状については必要に応じて任意に選択されうるが、第1図に示す如く1個ずつ独立した形状のものの他に、第2図に示す如く小袋が連続した帯状に構成して、必要個数ずつ切り取って使用する如くしてもよい。」(第5頁20行?第6頁4行) (ス)図1と2にはユニット包装袋が例示されており、図1は包装袋が1個づつ独立した形状のものであり、図2は、複数個の小袋が連続した形状のものである。 イ 引用例2に記載された発明 記載事項(サ)によれば、引用例2には、各種薬品等を単位量ずつ密閉包装し、使用時に包装のままで水中に投入して、当該薬品等を水中に分散させる、いわゆるユニット包装が記載されている。これは、使用時に個別に計量する手間を省くことができるというメリットを有する。 そして、同(シ)(ス)によれば、当該ユニット包装の形態として、包装袋が1個づつ独立したものでも、あるいは複数個の小袋が連続した帯状としたものでも良いとされ、これは、必要に応じて任意に選択される。 したがって、引用例2には、次の発明(以下「引用例2発明」という)が記載されている。 「必要な薬品等を単位量づつ密閉包装し、使用時に包装のまま水中に投入するユニット包装であって、包装袋が1個づつ独立しているか、あるいは複数の包装袋が連続した帯状であるユニット包装。」 5 対比と判断 (1)対比 本願発明と引用例1発明とを比較する。 本願発明における「複数のサックからなる鎖状包装体」とは、本願明細書の【0012】、【0016】段落の記載によれば、補強繊維を内包し、包装体としてのサックを互いに接合して鎖状包装体としたものである。一方、引用例1発明における包装体は、ガラス繊維や金属繊維等の補強材を内包するので、サックからなる包装袋といえるものの、単独の包装袋である。両者の包装袋は、コンクリート内で分解可能な材料で構成されている点で共通する。 そして、引用例1発明の「ガラス繊維や金属繊維等の補強材」、「コンクリートミキサー」は、本願発明の「補強繊維」、「混合サイロ」に相当するので、両者の一致点と相違点は次のとおりとなる。 ア 一致点 「繊維コンクリートの製造中に補強繊維を混合サイロに添加する方法において、前記添加する方法は、前記補強繊維を含むサックからなる包装体に内蔵された形で前記補強繊維を前記コンクリートに供給するステップを含み、前記サックは全体として前記混合サイロの内容物に加えられ、前記サックは前記コンクリート内で分解可能な材料によって形成される方法。」 イ 相違点 本願発明における「サックからなる包装袋」は、複数のサックが接合された鎖状包装体であるのに対し、引用例1発明における包装袋は、サックが個々に独立した単独の包装袋である点。 (2)判断 ア 相違点について 引用例1発明における単独の包装袋を、接合された鎖状包装袋とすることが容易であるかを検討する。 引用例1発明における補強材を内包した包装体は、補強材をセメントスラリー中に投入するにあたり、その投入量の秤量や投入操作を容易にするために、単位量毎に包装したものである。 一方、引用例2に示されるように、薬品等を単位量ずつ供給するように包装した、いわゆるユニット包装は、従来から知られた技術である。ユニット化することで、使用時に個別に計量する手間が省ける効果がある。そして、引用例2発明では、ユニット包装を、単独の包装袋とすることと連続した帯状の包装袋とすることを、任意に選択できるとしている。 したがって、引用例1発明は引用例2発明と同様の課題を解決するものであるので、引用例1発明に引用例2発明を適用し、単独の包装袋を帯状の包装袋、すなわち接合された鎖状包装袋としてみようとすることは、単に任意に選択しうる別の形態を採用するものに過ぎず、当業者であれば容易に想到するものと認める。 イ 請求人の主張について 請求人は、「繊維の入った単一のサック」と「繊維の入ったサックからなる鎖状包装袋」の相違を主張する。 しかし、引用例2に示されるように、単独の包装袋で使用することと、接合して連続した包装袋として使用することは、単に必要に応じて任意に選択しうる程度の相違である。そして、単独の包装袋であっても連続した包装袋であっても、コンクリートスラリー中へ補強繊維を添加する際の秤量と投入を容易にする点で共通の目的を有し、この秤量と投入を容易にするという作用効果の点で、顕著な相違を有するものではない。 したがって、包装袋を単独とするかと鎖状包装袋とするかを選択することに、技術的に格別の困難性があると認めることができない。 ウ 補正案について 請求人は、新たな特定事項として、「前記添加は、前記鎖状包装袋の長さを測ることによってあるいは供給される複数のサックを数えることによってなされる」ことを加入する補正案を提示する(平成24年2月27日付け回答書)。 しかし、当該特定事項は、鎖状包装袋をセメントスラリー中に投入する際に、その投入量を測る手段として必然的に採用されるものであり、この特定事項をもって従来技術との相違が明確になるとすることはできない。 このため、当該補正案をもってしても、本願発明が従来技術に比して進歩性があるとすることはできない。 6 むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-03-28 |
結審通知日 | 2012-03-30 |
審決日 | 2012-04-11 |
出願番号 | 特願2002-587185(P2002-587185) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(B28C)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 新居田 知生、大橋 賢一 |
特許庁審判長 |
真々田 忠博 |
特許庁審判官 |
中澤 登 斉藤 信人 |
発明の名称 | 繊維コンクリートの製造中に補強繊維を混合サイロに添加する方法及びその装置 |
代理人 | 奥山 尚一 |
代理人 | 松島 鉄男 |
代理人 | 有原 幸一 |