• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B
管理番号 1262277
審判番号 不服2010-22813  
総通号数 154 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-10-08 
確定日 2012-08-22 
事件の表示 特願2004-541737「無線通信システム用のスロット構造」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 4月15日国際公開、WO2004/032381、平成18年 1月12日国内公表、特表2006-501771〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,平成15年9月24日(優先権主張 2002年9月30日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって,平成20年12月26日付けで拒絶の理由が通知され,平成21年4月13日付けで意見書とともに手続補正書の提出がなされ,平成22年5月28日付けで拒絶査定され,同年10月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。


第2 補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成22年10月8日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本願補正発明
平成22年10月8日付け手続補正(以下「本件補正」という。)により請求項1の記載は次のように変更された。

【請求項1】
繰り返し時分割フレームのスロット内で、情報シーケンスの受信のために使用する、知られているシーケンスの第1のトレーニング・シーケンスを送信し、
前記スロット内の前記第1のトレーニング・シーケンスの後に、受信側装置へ伝える情報を含む情報シーケンスを送信し、
前記スロット内の前記情報シーケンスの後に、前記情報シーケンスの受信のために使用するとともに制御シーケンスを含む、知られているシーケンスの第2のトレーニング・シーケンスを送信することを含む方法。
(下線は,請求人が付与。)

そして,上記の変更は,本件補正の前の特許請求の範囲を減縮することを目的とする補正である。
よって,本件補正による本願の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は,上記の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そこで,本願補正発明が,特許出願の際独立して特許を受けることができるか(平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するか否か)について検討する。

2.引用発明及び周知技術
(当審注 以下の引用刊行物,周知例1,2の摘記において,下線は当審が付与。)

(1)引用刊行物
原査定の理由に引用された本願の優先権主張の日の前に頒布された米国特許出願公開第2002/0009065号明細書(2002年1月24日公開,以下「引用刊行物」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。


BACKGROUND OF THE INVENTION
[0001] The present invention relates to radio communication systems using a time division channel multiplex on a carrier frequency.

(当審訳
[0001]本発明は,キャリア周波数に時分割多重チャネルを用いた無線通信システムに関する。)


[0008] Accordingly, the invention proposes a method time-division multiplex radio communication method, wherein a transmitter transmits radio signal bursts destined for at least one receiver in time slots allocated to a channel on a carrier frequency, wherein the radio signal of each burst consists of a block of digital symbols including training symbols provided for an estimation of demodulation parameters by the receiver and information symbols to be estimated by the receiver by a demodulation using the estimated parameters. According to the invention, the training symbols comprise a first sequence of symbols placed at the start of the block from which each radio signal burst is formed and a second sequence of symbols placed at the end of said block. Each radio signal burst comprises an initial portion in which the radio signal rises in power up to a range of transmission power, a central portion in which the radio signal is transmitted within said power range and a final portion in which the radio signal decreases in power from said power range, so that at least one of the first and second sequences of training symbols gives rise to a modulation of the radio signal of the burst outside the central portion.

(当審訳
[0008]従って,本発明は,時間分割多重無線通信方式の方法を提案し,この方法は,送信機が搬送波周波数のチャネルに割り当てられたタイムスロットに少なくとも一つの受信機宛の無線信号のバーストを送信し,各バーストの無線信号は,受信機によって復調パラメータを推定するために提供されるトレーニングシンボルと,推定されたパラメータを基に受信機によって推定される情報シンボルを含む1ブロックのデジタルシンボルとで構成する。本発明によれば,トレーニングシンボルは,各無線信号のバーストが形成されるブロックの先頭に配置されるシンボルの第1のシーケンスと,前記ブロックの最後に配置されるシンボルの第2のシーケンス,で構成される。各無線信号のバーストは,無線信号が送信電力の範囲にまで電力を上昇する最初の部分,無線信号が前記電力の範囲内で送信される中央部分及び無線信号が前記電力の範囲から電力が減少する最後の部分から構成され,それゆえ,トレーニングシンボルの第1と第2のシーケンスの少なくとも一つは中央部分の外側バーストの無線信号の変調を生じさせる。)


図2(FIG.2)には,2つのガードタイム(GUARD TIME)の間に2つのトレーニングシーケンスを備え,さらに該2つのトレーニングシーケンスの間に情報(INFORMATION)を備えたバーストフォーマットが記載されている。

ここで,上記イの記載によれば,第1のシーケンス及び第2のシーケンスはトレーニングシンボルを構成するものであり,該イの記載と図2の記載を総合すると,該「第1のシーケンス」は「第1のトレーニングシーケンス」と,該「第2のシーケンス」は「第2のトレーニングシーケンス」と,さらに図2の「情報(INFORMATION)」は「情報シンボル」と呼べることは当然である。

以上から,引用刊行物には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

各バーストの無線信号は,受信機によって復調パラメータを推定するために提供されるトレーニングシンボルと,推定されたパラメータを基に受信機によって推定される情報シンボルとを含む1ブロックのデジタルシンボルで構成し,
トレーニングシンボルは,各無線信号のバーストが形成されるブロックの先頭に配置されるシンボルの第1のトレーニングシーケンスと,前記ブロックの最後に配置されるシンボルの第2のトレーニングシーケンスで構成され,
情報シンボルは,2つのトレーニングシーケンスの間に配置される
時間分割多重無線通信方式の方法。

(2)周知例
ア 周知例1
原査定の理由で提示された国際公開第99/65171号(1999年12月16日国際公開。以下「周知例1」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている(当審訳として,該国際公開公報に対応する特表2002-518877号公報(平成14年6月25日公表。以下「対応日本語公報」という。)を参考する。)。

(ア)
Although the examples described above involve embedding power control information in pilot symbols in a wireless communication system, the invention can also be used for embedding in pilot symbols other types of control information such as frame rate information, voice codec information, chip rate information, commands to update position coordinates, etc. Furthermore, the above-described techniques of the invention are also applicable in wireline communications systems. Many conventional wireline communications systems such as, for example, modems utilize signaling called training sequences. These training sequences are used in wireline systems to perform transmission channel evaluation functions analogous to those for which pilot symbols are used in wireless systems. Thus, the training sequences are similarly available to have embedded therein other control information used in wireline systems.
(公報第10ページ第24行?第11ページ第3行)

(当審訳
無線通信システムにおいてパイロットシンボルに電力制御シンボルを埋め込む例が示されたが、本発明は、フレームレート情報、音声符号化情報、チップレート情報、位置登録の更新のための命令など、他の制御信号をパイロットシンボルに埋め込んでもよい。さらに、本発明の上述した技術思想は、有線通信にも適用可能である。例えば、モデムなど、数多くの従来の有線通信システムのレーニングシーケンスと呼ばれる信号処理に適用してもよい。これらのトレーニングシーケンスは通信回線の推定機能として動作させるため有線通信において使用されるものであり、無線通信におけるパイロット信号に対応するものである。従って、トレーニングシーケンスは、有線通信において使用される他の制御信号の埋め込みにも同様に有効である。
(対応日本語公報第17ページ【0030】))

上記のとおり,周知例1には,トレーニングシーケンスに制御信号を埋め込むことが記載されている。そして,トレーニングシーケンスに該埋め込まれる制御信号が,シーケンスの構造を有し,さらに埋め込まれることにより該トレーニングシーケンスに含まれるものとなることは明白である。

イ 周知例2
特表2000-516780号公報(平成12年12月12日公表。以下「周知例2」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。

(ア)
対応的に、本発明の無線システムに使用される受信器の構造体の重要な部分が図4のブロック図に示されている。この受信器は、無線接続108?112から信号を受信するためのアンテナ400を備え、この信号は高周波部分402へ送られ、中間周波に変換される。高周波部分から、信号は変換手段404に送られ、信号がアナログからデジタル形態に変換される。デジタル信号は処理手段406へ送られ、ここで、信号は、例えば、フィルタされ、復調され、そのチャンネルインパルス応答及びエネルギーが推定され、そしてチャンネル上で歪んだ信号がオリジナルデータ流へと回復される。次いで、信号は手段408へ送られ、これにより、信号におけるトレーニングシーケンス204を識別することができる。識別されたトレーニングシーケンス204は処理手段410へ送られ、これにより、そこから、本発明の方法に基づき、送信された情報をデコードすること
ができる。次いで、手段410は、当該信号送信によって達成されるべきオペレーションの実行を開始する。これらのオペレーションは、例えば、汎用又は信号プロセッサにより実施することもできるし、或いは個別のロジックにより実施することもできる。
上述した本発明の効果的な使用は、上記の方法に基づいて信号送信を行うように加入者ターミナル102?106の制御を実行することである。この場合に、ベースステーション100と加入者ターミナル102?106との間の接続108?112に対して2つのトレーニングシーケンス204が与えられる。トレーニングシーケンス204の一方は、加入者ターミナル102?106にその送信電力を減少するよう指令するためにベースステーション100により使用され、そしてその他方は、それを増加するように使用される。手段310は、与えられた2つのトレーニングシーケンス204のどちらを手段308に適用するか決定するのに必要な推定ロジックを含み、手段308では、送信されるべき信号にトレーニングシーケンスが組み込まれる。同様に、加入者ターミナル102?106が信号を受信すると、それが手段408に送られ、信号における識別されたトレーニングシーケンス204を分離することができる。手段410は、識別されたトレーニングシーケンス204が送信電力増加コマンドを意味するか減少コマンドを意味するかを知るための必要な推定ロジックを含む。
又、上記の好ましい実施形態は、送信電力の特定レベルの制御コマンドを各々表わす2つ以上の異なるトレーニングシーケンス204を使用することによっても実施できることが指摘される。例えば、8つの異なるトレーニングシーケンス204が1つの接続108?112に指定され、従って、1つのバーストにおいて3つの情報ビットを転送することができ、即ちトレーニングシーケンス1は、ビット組合わせ000に対応し、トレーニングシーケンス2は、ビット組合わせ001に対応し、トレーニングシーケンス3は、ビット組合わせ010に対応し、トレーニングシーケンス4は、ビット組合わせ011に対応し、トレーニングシーケンス5は、ビット組合わせ100に対応し、トレーニングシーケンス6は、ビット組合わせ101に対応し、トレーニングシーケンス7は、ビット組合わせ110に対応し、そしてトレーニングシーケンス8は、ビット組合わせ111に
対応する。
2つ以上の異なるトレーニングシーケンス204を使用する別の方法は、各トレーニングシーケンス204に、絶対的な送信電力ではなく、相対的な電力制御値を与えることである。例えば、4つの異なるトレーニングシーケンス204が使用される場合には、トレーニングシーケンス1は、「1単位の電力の増加」を意味し、トレーニングシーケンス2は、「3単位の電力の増加」を意味し、トレーニングシーケンス3は、「1単位の電力の減少」を意味し、そしてトレーニングシーケンス4は、「3単位の電力の減少」を意味する。
(公報第10ページ第21行?第12ページ第13行。なお,行数は,記載のある行の数。)

上記の記載によれば,周知例2は,ビットの組合わせによって,トレーニングシーケンスに送信電力を制御する機能を含ませる技術を開示している。そうすると,送信電力の減少又は増加を指示するビットの組合せは,制御シーケンスといえ,さらにトレーニングシーケンスに含まれるものであることは明白である。

3.補正の却下に関する当審の判断
(1)対比
本願補正発明と引用発明を比較する。

・引用発明の「ブロック」,「情報シンボル」,「受信機」は,それぞれ本願補正発明の「スロット」,「情報シーケンス」,「受信側装置」に相当し,該「情報シンボル」が受信機に伝える情報を含むことは当然である。
ここで,本願補正発明の「第1のトレーニング・シーケンス」の後に「情報シーケンス」が送信される点において該「第1のトレーニング・シーケンス」は引用発明の「第1のトレーニングシーケンス」と一致し,本願補正発明の「第2のトレーニング・シーケンス」は「情報シーケンス」の後に送信される点において引用発明の「第2のトレーニングシーケンス」と一致する。また,引用発明において「トレーニングシンボル」及び「情報シンボル」が「ブロック」内にあることは明らかである。
さらに,引用発明の「第1のトレーニングシーケンス」も「第2のトレーニングシーケンス」もともに「受信機によって復調パラメータを推定するために提供される」のであるから,本願補正発明と同様「受信のために使用する」ものであることは当然である。
そして,通信技術の分野において,「トレーニングシンボル」が「既知」すなわち「知られている」ていること,また「シンボル」が「シーケンス」とも呼ばれることは,それぞれ引用例を示すまでもなく周知である(「シンボル」が「シーケンス」とも呼ばれることは,引用刊行物に記載からも明らかである。)。

以上から,本願補正発明と引用発明は次の点で一致・相違する。

<一致点>
スロット内で,情報シーケンスの受信のために使用する,知られているシーケンスの第1のトレーニング・シーケンスを送信し,
前記スロット内の前記第1のトレーニング・シーケンスの後に,受信側装置へ伝える情報を含む情報シーケンスを送信し,
前記スロット内の前記情報シーケンスの後に,前記情報シーケンスの受信のために使用する,知られているシーケンスの第2のトレーニング・シーケンスを送信することを含む方法。

<相違点1>
「スロット」に関し本願補正発明では「繰り返し時分割フレーム」のものであるのに対して,引用発明にはそのような記載がない点。

<相違点2>
「第2のトレーニング・シーケンス」に関し本願補正発明では「制御シーケンスを含む」のに対して,引用発明にはそのような記載がない点。

(2)検討
・<相違点1>について
ア 「繰り返し時分割フレーム」の技術的意味
本願補正発明において,該「繰り返し時分割フレーム」の技術的意味が明確であるとはいえない。
そこで,本願の当初の明細書の翻訳文の記載で確認する(当審注 本件出願に係る拒絶査定不服審判請求の日までに誤訳訂正書の提出はなされてない。)。

(ア)
【0002】
本発明は、基地局とユーザ端末との間の時分割通信で使用される繰り返しフレーム内のスロット構造、特に、異なる種類のメッセージを同じスロット内で入れ替えて送信できるようにするスロット構造に関する。
【背景技術】
【0003】
携帯電話データや音声無線システムなどの時分割移動無線通信システムは、通常、特定の目的のために割り当てられたスロットを含む繰り返しフレームを使用する。周波数分割TDMA(時分割多重接続)システムでは、繰り返しフレームは一組のダウンリンク・スロットを含む。一組のアップリンク・スロットは異なる周波数で他のフレーム内にある。ブロードキャスト、ランダム・アクセス、制御チャネル・メッセージは、それぞれ、異なるフレーム構造を使用する特定の周波数を割り当てられる。それぞれのフレーム内で、メッセージの種類毎にスロットを、効率の高いメッセージの種類に合わせて最適化することができる。TDD(時分割複信)システムでは、アップリンクとダウンリンクのスロットは同じフレーム内にある。場合によっては、そのフレーム内の特定の複数のスロットが何らかの複数の制御メッセージを持つことがある。しかし、制御チャネルとアクセス・チャネルは、通常、別々のフレーム内の特別に最適化されたスロット内にある。

(イ)
【0005】
一実施態様では、本発明は、第1のトレーニング・シーケンス、第1のトレーニング・シーケンスの後の情報シーケンス、情報シーケンスの後の第2のトレーニング・シーケンスとともに繰り返し時分割フレーム内にスロットを含む。いくつかの実施態様では、第1又は第2のトレーニング・シーケンスは、ランダム・アクセス・チャネル・メッセージ及びトラフィック・チャネル・メッセージ、コンフィギュレーション・メッセージ、チャネル割り当てメッセージ、又はデータ・トラフィック・メッセージなどの情報シーケンスの種類を示す。

(ウ)
【0019】
BSloadは、ランダム・アクセス・メッセージを送信する頻度を決定するためにユーザ端末で使用される基地局の負荷である。BSloadは、基地局が持つ未使用容量を示す指標である。加入者は、異なるトラフィック容量を要求する可能性があるため、これは、アクティブな登録済み加入者の数と異なることがある。BSloadは、最大可能負荷に対して測定された数分という期間における基地局の各モデムの送受信ビット・レートを表す。一実施形態では、BCHチャネルは、無線通信システム内のすべての基地局により共有される。7ビットBSCCを使用すると、最大128個の基地局に対応できる。BCHは、繰り返しフレームを持つ時分割複信チャネルである。チャネルは、アップリンクとダウンリンクに使用される単一RF搬送周波数である。高ノイズ環境では、又はロバスト性を高めるために、BCHは所定のスキームに応じて周波数をホップするか、又は複数の異なる周波数で繰り返すことができる。繰り返しフレームは、表3に示されているように、BS1などのラベルが付いている、各基地局に対するダウンリンクBCHを含む。次のフレームは、CR1などのラベルが付いているアップリンクのコンフィギュレーション要求CR、及びCM1などのラベル付いているダウンリンクのコンフィギュレーション・メッセージCMを含む。
【0020】
それぞれのフレームは、さらに、以下で空のボックスとして示されている、多数の予約スロットを含む。これらのスロットは、ブロードキャスト・チャネルがさらに他の制御メッセージにも使用される場合に、データ・トラフィックに使用したり、又はネットワーク内の他のチャネルの干渉を低減するために予約しておくことができる。これらのフレームは、後述のようにスーパーフレームを構築するためにそれぞれの基地局1から128について繰り返される。最後のCMである、CM128の後、スーパーフレームが繰り返され、再び次のスーパーフレーム及び基地局1に対するBCHから始まる。

(エ)
【0023】
さらにBCHのデータ・レートを最小にするため、BSCCとBSloadをBCHバーストから除去することができる。その後、BCHバーストは、トレーニング又は同期及びBSTxPwrのみを含み、これはハンドオーバー決定に直接関係する唯一の情報である。ユーザ端末は、それでも、受信したBCHバーストのタイミングに基づき選択とハンドオーバー決定について異なる基地局を区別し、比較することができる。ユーザ端末では、さらに、タイミングに基づき表3に示されているようにそのCRメッセージを特定の基地局に送ることができる。単一基地局システムでは、BStxPwrビットも削除することができる。1つの基地局しかない場合、経路損失を評価する必要はなく、信号を受信できるかどうかのみを評価すればよい。ネットワーク情報の残りは、後述のように、登録に基づいて学習することができる。それとは別に、BCHはBSCCを含むので、BSCCを読み取り、共通のBSCCを含むBCHバーストが同じ基地局からのバーストであると仮定するようにユーザ端末をプログラムすることができる。このようにして、ユーザ端末は、短くされたフレーム繰り返し間隔を学習し、システムへの登録に要する時間を短縮することができる。

(オ)
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明の一実施形態による標準的なアップリンク・スロット構造の例を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態による標準的なダウンリンク・スロット構造の例を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態による繰り返しフレーム構造の例を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態を実装することができる基地局の簡略化されたブロック図である。
【図5】本発明の一実施形態を実装することができる遠隔端末のブロック図である。

以上の記載によれば,本願補正発明において「繰り返し時分割フレーム」とは,時分割通信で使用され,さらに基地局からユーザ端末に繰り返し送信されるフレームを意味するものと解される。


上記した「繰り返し時分割フレーム」の技術的意味を基に,相違点1の検討をする。
時分割多重通信無線通信において,スロットを含む繰り返しフレームを利用して,基地局と移動局(ユーザ端末)の間の通信を行うことは引用例を示すまでもなく周知(上記(ア)の【0003】にも記載されている。)である。
そして,引用発明は時間分割多重無線通信方式,すなわち「時分割多重通信」であるから,引用発明に周知技術を適用し相違点1のように「スロット」を「繰り返し時分割フレーム」のものとすることは,当業者に容易になし得た事項にすぎない。

・<相違点2>について
周知例1,2等に開示されているように,「トレーニングシーケンス」に「制御シーケンスを含む」ようにすることは周知である。
そして,「情報シーケンス」の前後にそれぞれある「第1のトレーニングシーケンス」と「第2のトレーニングシーケンス」のどちらに制御シーケンスを含ませるかは,当業者が適宜選択しうる事項すぎず,また本願補正発明において「第2のトレーニングシーケンス」に「制御シーケンス」を含ませたことに格別な技術的意義を見いだすこともできない。
よって,引用発明に周知技術を適用し,<相違点2>のように構成することは当業者が容易になし得たものである。


そして,本願補正発明のように構成したことによる効果も,引用発明及び周知技術から,当業者が予測できる程度のものである。
したがって,本願補正発明は,引用発明及び周知技術を基に,当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)本件補正による請求項5,6に係る発明に対する補足的判断
当審から通知した平成23年7月15日付け審尋に対する,平成23年10月26日付け回答書において,請求人は本件補正の請求項5,6に補正する用意があると述べている。
そこで,該請求項5,6に係る発明(以下,それぞれ「本件補正第5発明」,「本件補正第6発明」という。)について,補足的に判断する。

ア 本件補正第5発明及び本件補正第6発明
本件補正(平成22年10月8日付け手続補正)による請求項5,6の記載はそれぞれ次のとおりである。

【請求項5】
前記第1と第2のトレーニング・シーケンスのうちの1つが前記情報シーケンスの種類を示す請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記情報シーケンスの前記種類がランダム・アクセス・チャネル・メッセージ、コンフィギュレーション・メッセージ、チャネル割り当てメッセージ、トラフィック・チャネル・メッセージのうちの1つから選択される請求項5に記載の方法。

本件補正第5発明は,本願補正発明の「第1と第2のトレーニング・シーケンス」対し,いずれか1つが「情報シーケンス」の「種類」を示すとの限定を付すものである。
そして,本件補正第6発明は,本件補正第5発明によって「情報シーケンス」に付された限定である「種類」が,「ランダム・アクセス・チャネル・メッセージ」,「コンフィギュレーション・メッセージ」,「チャネル割り当てメッセージ」,「トラフィック・チャネル・メッセージ」のうちの1つから選択されるとの限定を付すものである。

イ 本件補正第5発明及び本件補正第6発明に対する検討
請求項6は請求項5を引用するものであるから,本件補正第5発明と本件補正第6発明を総合して判断する。

周知例1には,上記で摘記したように「本発明は、フレームレート情報、音声符号化情報、チップレート情報、位置登録の更新のための命令など、他の制御信号をパイロットシンボルに埋め込んでもよい。」,「本発明の上述した技術思想は、有線通信にも適用可能である。例えば、モデムなど、数多くの従来の有線通信システムのレーニングシーケンスと呼ばれる信号処理に適用してもよい。」との記載がある。
この記載によれば,受信機が,トレーニングシーケンスにより,どのような情報を受信したかを判断することができること,すなわち受信機が受信した情報について,「トレーニングシーケンス」がどのような種類の情報であるかを示す技術を周知例1は開示しているといえる。
そして,受信機に対して,「フレームレート情報」,「音声符号化情報」,「チップレート情報」,「位置登録の更新のための命令」などを「情報シーケンス」として送信し,該情報シーケンスがどのような種類の情報であるかを「トレーニングシーケンス」により示すようにすることは,当業者が適宜なし得たものである。
また,時分割通信において,受信機が受信する情報として,「ランダム・アクセス・チャネル・メッセージ」,「コンフィギュレーション・メッセージ」,「チャネル割り当てメッセージ」,「トラフィック・チャネル・メッセージ」はいずれも引用例を示すまでもなく周知である。

以上のとおりであるから,本件補正第5発明,本件補正第6発明の構成とすることは,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易になし得たものである。
したがって,本件補正第5発明及び本件補正第6発明はいずれも,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.まとめ
上記したとおりであるから,本願補正発明(平成22年10月8日付け手続補正による請求項1に係る発明)は,特許法第29条第2項の規定に該当し,特許出願の際独立して特許を受けることができない。
したがって,本件補正は,平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するので,特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明

上記のとおり,平成22年10月8日付け手続補正は却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成21年4月13日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

【請求項1】
繰り返し時分割フレームのスロット内で、情報シーケンスの受信のために使用する第1のトレーニング・シーケンスを送信し、
前記スロット内の前記第1のトレーニング・シーケンスの後に、受信側装置へ伝える情報を含む情報シーケンスを送信し、
前記スロット内の前記情報シーケンスの後に、前記情報シーケンスの受信のために使用するとともに制御シーケンスを含む第2のトレーニング・シーケンスを送信することを含む方法。
(下線は,請求人が付したもの。)


第4 当審の判断

1.引用発明及び周知技術
引用発明及び周知技術は,上記第2 2.引用発明及び周知技術に記載したとおりである。

2.本願発明に対する検討
本願発明は,上記第2 補正却下の決定 で検討した本願補正発明に付された限定を省いたものである。

そうすると,本願発明の構成要件をすべて含み,さらに,限定を付したものに相当する本願補正発明が,上記の第2 3.補正の却下に関する当審の判断 に記載したとおり,上記引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるのだから,本願発明も,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。


第5 むすび

以上のとおり,本願発明(平成21年4月13日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明)は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。

したがって,本願は,他の請求項について論及するまでもなく,拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-03-07 
結審通知日 2012-03-21 
審決日 2012-04-03 
出願番号 特願2004-541737(P2004-541737)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04B)
P 1 8・ 575- Z (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中元 淳二清水 祐樹  
特許庁審判長 水野 恵雄
特許庁審判官 安島 智也
近藤 聡
発明の名称 無線通信システム用のスロット構造  
代理人 西山 修  
代理人 山川 政樹  
代理人 黒川 弘朗  
代理人 山川 茂樹  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ