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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1262298
審判番号 不服2011-9773  
総通号数 154 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-05-10 
確定日 2012-08-22 
事件の表示 特願2007-243818「LEDパッケージの製造方法及び白色光源モジュールの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 4月 3日出願公開、特開2008- 78659〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成19年9月20日(パリ条約による優先権主張 2006年9月21日、大韓民国)の出願であって、平成22年11月26日に手続補正がなされたが、同年12月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年5月10日に拒絶査定不服審判が請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである(以下、平成23年5月10日になされた手続補正を「本件補正」という。)。

第2 本件補正についての却下の決定

1 結論

本件補正を却下する。

2 理由

(1)補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1につき、補正前(平成22年11月26日付けの手続補正後のもの。)の
「LEDチップを封止する樹脂モールディング部を形成する工程と、
スプレーコーティング法で前記樹脂モールディング部の表面に蛍光体含有コーティング剤を塗布して前記樹脂モールディング部の表面上に蛍光体薄膜を形成する工程と、
を含み、
前記蛍光体薄膜を形成する工程は、円錐型の渦状のスプレーパターンで前記蛍光体含有コーティング剤を前記樹脂モールディング部の表面上に噴霧する工程を含むことを特徴とするLEDパッケージの製造方法。」

「LEDチップを封止する樹脂モールディング部を形成する工程と、
スプレーコーティング法で前記樹脂モールディング部の表面に蛍光体含有コーティング剤を塗布して前記樹脂モールディング部の表面上に蛍光体薄膜を形成する工程と、
を含み、
前記蛍光体薄膜を形成する工程は、円錐型の渦状のスプレーパターンで前記蛍光体含有コーティング剤を前記樹脂モールディング部の表面上に噴霧する工程を含み、
前記円錐型の渦状のスプレーパターンは、ノズルの端部から出るコーティング剤のビードに斜めの方向にノズルによって圧縮空気を噴射することにより噴霧される蛍光体含有コーティング剤で形成されることを特徴とするLEDパッケージの製造方法。」
に補正する内容を含むものである。

(2)補正の目的
本件補正は、補正前の請求項1の「円錐型の渦状のスプレーパターン」に関して、「円錐型の渦状のスプレーパターンは、ノズルの端部から出るコーティング剤のビードに斜めの方向にノズルによって圧縮空気を噴射することにより噴霧される蛍光体含有コーティング剤で形成される」との限定を付加するものである。
よって、本件補正による請求項1についての補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(3)独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。
ア 本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は、上記(1)において補正後のものとして記載したとおりのものと認める。

イ 刊行物の記載及び引用発明
(ア)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された特開2004-127988号公報(以下「引用例1」という。)には、以下の記載aないしcがある(下線は審決で付した。以下同じ。)。
a 「【0020】
また、本発明の白色発光装置は、マウントリードのカップ内に配置されたGaN系半導体から成り、紫色の光を発光する発光素子と、前記カップ内に充填され、前記蛍光体が混入された透明樹脂による封止材と、この封止材が充填された前記カップ部分を前記マウントリードの一部と共に透明樹脂で被覆して成るレンズ状のモールド部材と、前記発光素子で発光された光を吸収し、この吸収した光の波長と異なる赤・緑・青各色の波長の光を発光する赤・緑・青各色の蛍光体が混入された蛍光カバーとを有し、この蛍光カバーを前記モールド部材に嵌合して成る白色発光装置において、前記発光素子で発光された光を吸収し、この吸収した光の波長と異なる黄色の波長の光を発光する黄色の蛍光体を、前記蛍光カバーに混入したことを特徴としている。」

b 「【0075】
(第4の実施の形態)
図8は、本発明の第4の実施の形態に係る白色LEDランプの構成を示す断面図である。但し、この図8に示す第4の実施の形態において図4の各部に対応する部分には同一符号を付す。
【0076】
この図8に示す白色LEDランプ110は、発光素子から発光された光を波長変換してレンズ型の樹脂封止体外部に放射するものであり、リードフレーム64,65と、メタルステム62と、紫色LED19と、マウント21と、ボンディングワイヤ23,24と、赤緑青黄蛍光体28?31を含まない封止材26と、外部樹脂69と、カップ17aとを含む構成の他に、外部樹脂69の外面に密着して包囲し且つ赤緑青黄蛍光体28?31を含有する透光性の蛍光カバー112を備えて構成されている。・・・
【0078】
また、蛍光カバー112は、外部樹脂69の外面に密着する形状、即ち円筒形状のカバー上部に半球形状のカバーが一体形成された形状を成しており、外部樹脂69に着脱自在に取り付けられている。また、蛍光カバー112は、赤緑青黄蛍光体28?31による光散乱を小さくするため薄いフィルム状とするのが好ましい。さらに、蛍光カバー112は、赤緑青黄蛍光体28?31を含有する樹脂の射出成形により所定の形状に形成した後、外部樹脂69に密着すると比較的簡単に完成できるが、外部樹脂69と蛍光カバー112との間に空気層が形成されないようにするため、赤緑青黄蛍光体28?31を含む樹脂原料を外部樹脂69に直接噴霧した後、硬化させて蛍光カバー112を形成してもよい。」

c 「【0079】
このように構成された白色LEDランプ110において、紫色LED19からの出射光は、封止材26及び外部樹脂69を介して蛍光カバー112に入射される。この入射光の一部が赤緑青黄蛍光体28?31により吸収され、同時に波長変換されて外部へ出射される。これによって蛍光カバー112の外面から観測される発光色は、それらの光を合成した色となり、例えば前述の原理から白色となる。
【0080】
このように、第4の実施の形態の白色LEDランプ110によれば、紫色LED19の樹脂封止体である封止材26及び外部樹脂69には赤緑青黄蛍光体28?31を含有しないが、外部樹脂69の外面を被覆する蛍光カバー112に赤緑青黄蛍光体28?31を含有させたので、図4に示した白色LEDランプ60と同様に青・緑・黄・赤の各色の光を発光させることができ、同様に演色性を向上させることができる。
【0081】
また、封止材26及び外部樹脂69では、赤緑青黄蛍光体28?31を含有しないので、赤緑青黄蛍光体28?31による光散乱が生じない。また、蛍光カバー112は薄いフィルム状を成すので、赤緑青黄蛍光体28?31による光散乱は比較的小さい。このため、外部樹脂69のレンズ部の形状を任意形状(上記実施の形態では半球状)とすることによって所望の光指向性が得られ、波長変換に伴う輝度の低下を最小限に抑制することができる。」

d 上記bに「蛍光カバーは、外部樹脂と蛍光カバーとの間に空気層が形成されないようにするため、赤緑青黄蛍光体を含む樹脂原料を外部樹脂に直接噴霧した後、硬化させて形成した」と記載されていることに照らして、引用例1には、「白色LEDランプの製造方法」に関して、「外部樹脂と蛍光カバーとの間に空気層が形成されないようにするため、赤緑青黄蛍光体を含む樹脂原料を外部樹脂に直接噴霧」する工程の後、「硬化させて蛍光カバーを形成」する工程を有する白色LEDランプの製造方法の発明が記載されているといえる。

e 引用発明1
上記aないしdによれば、引用例1には、次の発明が記載されているものと認められる。
「発光素子から発光された光を波長変換してレンズ部の形状を半球状としたレンズ型の樹脂封止体外部に放射するものであり、リードフレームと、メタルステムと、紫色LEDと、マウントと、ボンディングワイヤと、赤緑青黄蛍光体を含まない樹脂封止体である封止材と、レンズ状のモールド部材である外部樹脂と、カップとを含む構成の他に、外部樹脂の外面に密着して包囲し且つ赤緑青黄蛍光体を含有する透光性の蛍光カバーを備えて構成されている白色LEDランプの製造方法であって、
蛍光カバーは、外部樹脂と蛍光カバーとの間に空気層が形成されないようにするため、赤緑青黄蛍光体を含む樹脂原料を外部樹脂に直接噴霧した後、硬化させて形成した白色LEDランプの製造方法。」(以下「引用発明1」という。)

(イ)引用例2
本願の優先日前に頒布された特開平4-4060号公報(以下「引用例2」という。)には、以下の記載aがある。
a 「〔従来の技術〕
従来、ノズル孔から流出する液体又は溶融体のスプレイパターンを圧縮気体の吹き当てによって変形させる方法としては次のようなものがあった。・・・次に、溶融体において最近行なわれているスワール(Swirl)スプレイという方法がある。この方法は、ノズル孔から線状下向きに吐出されてくる溶融体に対して、鎖孔を中心とした円周上に等間隔に設けられた複数個の気体噴出孔(330a、330b、・・・)より、加熱圧縮気体を上記線状溶融体(HB)の外周面にほぼ接するように噴出し(Aa、Ab、・・・)、上記線状溶融体をらせん状(HB_(2)、HB_(2)´)に渦を巻かせ乍ら降下せしめて被塗物面上に塗布(Fic)するものであった(第44図参照)。」(第3頁右下欄第13行?第4頁左上欄第18行)

b 引用発明2
上記aによれば、引用例2には、次の発明が記載されているものと認められる。
「ノズル孔から線状下向きに吐出されてくる溶融体に対して、鎖孔を中心とした円周上に等間隔に設けられた複数個の気体噴出孔より、加熱圧縮気体を上記線状溶融体の外周面にほぼ接するように噴出し、上記線状溶融体をらせん状に渦を巻かせ乍ら降下せしめて被塗物面上に塗布するスワール(Swirl)スプレイという方法。」(以下「引用発明2」という。)

(ウ)引用例3
本願の優先日前に頒布された特開2004-290947号公報(以下「引用例3」という。)には、以下の記載aないしcがある。
a 「【請求項1】
一端が開放面を有した中空立体形状の被塗物にスプレイノズルから液体又は溶融体を該開放面側から該被塗物内面に向けて噴出し該被塗物の内面に塗布する中空立体形状被塗物の内面への液体又は溶融体の塗布方法であって、該スプレイノズルから噴出される液体又は溶融体の塗布パターン幅を該中空立体形状被塗物の軸線方向の内面形状幅にほぼ見合うように間欠的に変化させながら該中空立体形状被塗物の内面に液体又は溶融体を塗布することを特徴とする中空立体形状被塗物の内面への液体又は溶融体の塗布方法。」

b 「【0016】
スプレイガン5には、要部を図2に示すように本体中央部の縦方向に液体供給経路としての、前記液体供給管19に連通した上部の液体供給路8a、シート7及びガン本体に形成された液体通路8bが設けられている。そしてガン本体の下部先端にはエアスプレイノズル10がリテイニングナット5aによって固定保持されて取付けられており、該ノズル10はスワールノズルとして形成されている。即ち、スワールノズル10は、図3にも示すように中央部に液体通路11が形成され、その下端は液体噴出口11aとして開口している。そして、該液体通路11の周囲には、下方斜め方向に指向される(図2参照)と共に平面的には液体通路11の縦中心線をやや外されて指向され(図3参照)、円周方向に略等間隔で複数個(本実施形態では12個)貫通した気体通路12が形成されている。」

c 「【0022】
前記のようにして塗布作業開始準備が整えられた後、液体塗布時に、コーン2は図5(A)に示すように開放面2bを上にした状態で、高さ位置を固定されたスプレイガン5の真下に図示していない搬送装置によって搬送され停止される。このとき、コーン2はその縦軸線AXとスプレイガン5のスワールノズル10の縦軸線を一致させた状態で配置される。その状態で、図4に示したように液体とパターンエア(気体)とを同調させて間欠的(パルス的)にノズル10から噴出させる。・・・
【0026】
しかして、上記のようにして間欠的にスワールノズル10の液体噴出口11aから下方に噴出される液体3の噴出流は、該液体と同じサイクルで間欠的に複数の気体噴出口12aから噴出されるパターンエアPAによって粒子化されると共に旋回される。即ち、該複数の気体噴出口12aから噴出されるそれぞれのパターンエアPAは、スワールノズル10の液体通路11及び液体噴出口11aの縦中心線をやや外された(オフセットされた)方向に噴出されて拡がるので、その少なくとも一部が前記液体噴出口11aから噴出された液体噴出流に衝突乃至接触して該液体噴出流を霧化(粒子化)すると共に該粒子化された液体粒子を旋回(スワール)させ液体粒子の旋回流FWを形成する[図5(a)参照]。
【0027】
そして、そのように旋回しながら噴出される液体粒子旋回流FWは、その噴出パターンISPの幅Wが、液体及びパターンエアの間欠的噴出(供給)とそれらの噴出に同調した液体を霧化するためのパターンエア噴出圧力の間欠的変化によって、図5(A)に示すように、コーン2の縦軸線AXに沿って変化する内面形状幅、即ち、内径、の変化にほぼ対応して変化するように、噴出開始時から噴出終了時にかけて小さい幅から大きい幅へと変化され、このように塗布パターン幅が変化された中空のほぼ截頭円錐状(円錐台状)又はドーナツ状の液体粒子旋回流FWが複数個(本実施形態では5個)間欠的(パルス的)に瞬時に生成される。そして、生成された各々の液体粒子旋回流FWは順次、コーン2の下部の鋭角先端部2cから上方の開放部2bの内面2aに次々と到達し液体粒子が該内面2a表面に塗布され薄膜の塗膜が形成される。」

d 引用発明3
上記aないしcによれば、引用例3には、次の発明が記載されているものと認められる。
「スプレイガンには、液体通路が設けられ、ガン本体の下部先端にはエアスプレイノズルが取付けられており、該ノズルは液体とパターンエア(気体)とを同調させて間欠的(パルス的)にノズルから噴出させるスワールノズルとして、中央部に液体通路が形成され、その下端は液体噴出口として開口し、該液体通路の周囲には、下方斜め方向に指向されると共に平面的には液体通路の縦中心線をやや外されて指向され、円周方向に略等間隔で複数個貫通した気体通路が形成されて、間欠的にスワールノズルの液体噴出口から下方に噴出される液体の噴出流は、該液体と同じサイクルで間欠的に複数の気体噴出口から噴出されるパターンエアによって粒子化されると共に旋回され、中空のほぼ截頭円錐状(円錐台状)の液体粒子旋回流を形成する液体又は溶融体の塗布方法。」(以下「引用発明3」という。)

ウ 対比
本願補正発明と引用発明1を対比する。
(ア)引用発明1の「発光素子」、「赤緑青黄蛍光体」、「赤緑青黄蛍光体を含む樹脂原料」及び「白色LEDランプ」は、本願補正発明の「LEDチップ」、「蛍光体」、「蛍光体含有コーティング剤」及び「LEDパッケージ」にそれぞれ相当する。

(イ)引用発明1は、「紫色LED」と、「赤緑青黄蛍光体を含まない樹脂封止体である封止材」と、「レンズ状のモールド部材である外部樹脂」と、「外部樹脂の外面に密着して包囲し且つ赤緑青黄蛍光体を含有する透光性の蛍光カバー」を備え、「蛍光カバー」は、「赤緑青黄蛍光体を含む樹脂原料を外部樹脂に直接噴霧した後、硬化させて形成」されるものであるから、「紫色LEDを、赤緑青黄蛍光体を含まない樹脂封止体である封止材で封止し、レンズ状のモールド部材である外部樹脂でモールドする」工程の後に、「赤緑青黄蛍光体を含む樹脂原料を外部樹脂に直接噴霧した後、硬化させて蛍光カバーを形成する」工程を備えるといえる。
また、引用発明1の「(赤緑青黄蛍光体を含まない樹脂封止体である)封止材」及び「(レンズ状のモールド部材である)外部樹脂」は、両者によって紫色LEDを封止しモールドするものであるから、引用発明1の上記「紫色LEDを、(赤緑青黄蛍光体を含まない樹脂封止体である)封止材で封止し、(レンズ状のモールド部材である)外部樹脂でモールドする」工程は、本願補正発明の「LEDチップを封止する樹脂モールディング部を形成する工程」に相当する。

(ウ)上記(イ)で検討したように、引用発明1は「赤緑青黄蛍光体を含む樹脂原料を外部樹脂に直接噴霧した後、硬化させて」「蛍光カバー」を形成する工程を備え、引用発明1の「外部樹脂」は、本願補正発明の「LEDチップを封止する樹脂モールディング部」に相当するから、引用発明1は、「樹脂モールディング部の表面上に赤緑青黄蛍光体を含む樹脂原料を直接噴霧した後、樹脂モールディング部の表面上で硬化させて蛍光カバーを形成する」工程を備えるといえる。
また、樹脂原料を直接噴霧し硬化する工程は、樹脂原料をスプレーコーティング法で塗布する工程を含むから、引用発明1は、「スプレーコーティング法で樹脂モールディング部の表面上に赤緑青黄蛍光体を含む樹脂原料を塗布した後、樹脂モールディング部の表面上に蛍光カバーを形成する」工程を備えるといえる。
したがって、引用発明1は、本願補正発明の「スプレーコーティング法で前記樹脂モールディング部の表面に蛍光体含有コーティング剤を塗布して前記樹脂モールディング部の表面上に蛍光体薄膜を形成する工程」を備える。

以上によれば両者は、
「LEDチップを封止する樹脂モールディング部を形成する工程と、
スプレーコーティング法で前記樹脂モールディング部の表面に蛍光体含有コーティング剤を塗布して前記樹脂モールディング部の表面上に蛍光体薄膜を形成する工程と、
を含むLEDパッケージの製造方法。」で一致し、

「蛍光体薄膜を形成する工程」が、本願補正発明では、「円錐型の渦状のスプレーパターンで前記蛍光体含有コーティング剤を前記樹脂モールディング部の表面上に噴霧する工程を含み、前記円錐型の渦状のスプレーパターンは、ノズルの端部から出るコーティング剤のビードに斜めの方向にノズルによって圧縮空気を噴射することにより噴霧される蛍光体含有コーティング剤で形成される」のに対して、引用発明1では、スプレーパターンが円錐型の渦状のものか否かが明らかではなく、また、そのようなスプレーパターンとするための構成も明らかではない点(以下「相違点1」という。)で相違するものと認められる。

エ 判断
上記相違点1について検討する。
引用発明1の「蛍光カバー」は、上記イ(ア)b及びcに照らして、「赤緑青黄蛍光体28?31による光散乱」を比較的小さくし、「外部樹脂69のレンズ部の形状を任意形状(上記実施の形態では半球状)とすることによって所望の光指向性が得られ、波長変換に伴う輝度の低下を最小限に抑制する」ために、「薄いフィルム状を成す」ものであり、そのための手法として「外部樹脂69と蛍光カバー112との間に空気層が形成されないようにするため、赤緑青黄蛍光体28?31を含む樹脂原料を外部樹脂69に直接噴霧した後、硬化させて蛍光カバー112を形成」するものが良いとするものであるから、半球状の形状を有する外部樹脂のレンズ部に直接噴霧した際に半球状のレンズ部の形状に適した噴霧のパターンで噴霧させることが、更に「所望の光指向性が得られ、波長変換に伴う輝度の低下を最小限に抑制する」ことになると理解できる。
しかるところ、引用発明1のような半球状の形状に適した「噴霧」(スプレーコーティング)のパターンとする方法として、スワール・スプレイ方法、あるいは、スワールノズルを形成した塗布方法は本願の優先日時点で周知であることから(必要なら、引用発明2(上記イ(イ)b)、引用発明3(上記イ(ウ)d)参照)、引用発明1の噴霧を半球状の形状に適した噴霧のパターン(スプレーパターン)とするために、引用発明2のらせん状に渦を巻かせたパターン、あるいは、引用発明3の中空のほぼ截頭円錐状(円錐台状)の液体粒子旋回流のパターンを採用し、その際、上記のような噴霧のパターン(スプレーパターン)を実現するための構成として、引用発明2の「ノズル孔から線状下向きに吐出されてくる溶融体に対して、鎖孔を中心とした円周上に等間隔に設けられた複数個の気体噴出孔より、加熱圧縮気体を上記線状溶融体の外周面にほぼ接するように噴出」する構成、ないしは、引用発明3の「スプレイガンには、液体通路が設けられ、ガン本体の下部先端にはエアスプレイノズル取付けられており、該ノズルは液体とパターンエア(気体)とを同調させて間欠的(パルス的)にノズルから噴出させるスワールノズルとして、中央部に液体通路が形成され、その下端は液体噴出口として開口し、該液体通路の周囲には、下方斜め方向に指向されると共に平面的には液体通路の縦中心線をやや外されて指向され、円周方向に略等間隔で複数個貫通した気体通路が形成」された構成を適用して、相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

オ 小括
以上の検討によれば、本願補正発明は、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1 本願発明

上記のとおり、本件補正は却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成22年11月26日付けで補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項によって特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2、2(1)において、補正前のものとして示したとおりのものである。

2 刊行物の記載及び引用発明

(1)引用例1及び引用発明1
前記第2、2(3)イ(ア)のとおりである。

(2)引用例4
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された国際公開第2004/081140号(以下「引用例4」という。)には、以下の記載a及びbがある。
a 「(スプレー装置300)
本実施の形態では、図6および図7に示されるように、塗布液を収納する容器301、塗布液の流量を調節するバルブ302、塗布液をノズル201に搬送した後ノズル201から容器に301に搬送する循環ポンプ303、及び、螺旋状に塗布液203を噴出するノズル201が、それぞれ搬送管307、308、309で結ばれたスプレー装置300を用いる。」(第27頁第49行?第28頁第4行)

b 「この装置のノズルの中心には塗布液の噴出口が設けられており、ガスの噴出と同時に塗布液を噴出すると、霧状になった塗布液が、螺旋状の流れ、あるいは竜巻における空気の流れを逆さまにしたようなガスの流れに乗って拡散していく。螺旋状に拡散した噴霧全体の径は、発光素子上方の噴霧開始点から発光素子の表面に近づくにつれて大きい。・・・即ち、霧状の塗布液がノズルから噴出されて空気中で拡散すると、噴射開始点であるノズルの付近では円錐状に噴霧が広がる・・・噴霧が発光素子の表面に吹き付けられたとき、含まれる蛍光体粒子によって発光素子の表面が衝撃を受けることがない。」(第28頁第39行?第29頁第6行)

c 引用発明4
上記a及びbによれば、引用例4には、次の発明が記載されているものと認められる。
「螺旋状に拡散した円錐状に噴霧が広がる、蛍光体粒子を含む霧状の塗布液を発光素子の表面に吹き付けるスプレー装置。」(以下「引用発明4」という。)

3 対比
上記第2、2(3)ウにおける本願補正発明と引用発明1との対比を踏まえて、本願発明と引用発明1を対比すると、両者は、
「LEDチップを封止する樹脂モールディング部を形成する工程と、
スプレーコーティング法で前記樹脂モールディング部の表面に蛍光体含有コーティング剤を塗布して前記樹脂モールディング部の表面上に蛍光体薄膜を形成する工程と、
を含むLEDパッケージの製造方法。」で一致し、

「蛍光体薄膜を形成する工程」が、本願発明では「円錐型の渦状のスプレーパターンで前記蛍光体含有コーティング剤を前記樹脂モールディング部の表面上に噴霧する工程を含」むのに対して、引用発明1では、円錐型の渦状のスプレーパターンであるのか否かが明らかではない点(以下「相違点2」という。)で相違するものと認められる。

4 判断
上記相違点2について検討する。
上記第2、2(3)エで検討したように、引用発明1の「蛍光カバー」に関して、半球状の形状を有する外部樹脂のレンズ部に直接噴霧した際に半球状のレンズ部の形状に適した噴霧のパターンで噴霧させることが、更に「所望の光指向性が得られ、波長変換に伴う輝度の低下を最小限に抑制する」ことになると理解できる。
しかるところ、引用発明1のような半球状の形状に適した「噴霧」(スプレーコーティング)のパターンとする方法として、引用発明1の発光素子と同様の発光素子において、螺旋状に拡散した円錐状に噴霧が広がる、蛍光体粒子を含む霧状の塗布液を発光素子の表面に吹き付けるスプレー装置の発明(引用発明4)は引用例4に記載されているから、引用発明1のスプレーパターンを、引用発明4の螺旋状に拡散した円錐状の噴霧パターンとなして、相違点2に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得ることである。

第4 むすび

以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明及び引用例4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-03-14 
結審通知日 2012-03-27 
審決日 2012-04-10 
出願番号 特願2007-243818(P2007-243818)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 杉田 翠  
特許庁審判長 吉野 公夫
特許庁審判官 北川 創
松川 直樹
発明の名称 LEDパッケージの製造方法及び白色光源モジュールの製造方法  
代理人 加藤 公延  

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