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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B65D |
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管理番号 | 1262393 |
審判番号 | 不服2011-25313 |
総通号数 | 154 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-10-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-11-24 |
確定日 | 2012-09-18 |
事件の表示 | 特願2001-136248「耐衝撃性に優れた合成樹脂製複合容器蓋」拒絶査定不服審判事件〔平成14年11月22日出願公開、特開2002-332056、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は、平成13年5月7日の出願であって、平成22年12月21日付けの拒絶理由通知に対し、平成23年2月28日付けで手続補正がなされたが、平成23年8月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年11月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同時に手続補正がなされたものである。 2 平成23年11月24日付けの手続補正(以下、「本件手続補正」という。)について (1)補正前の本願発明 補正前の特許請求の範囲の記載は、以下のとおりである。 「【請求項1】 容器口部に嵌合固定される合成樹脂製の中栓と、容器口部に嵌合固定された合成樹脂製の中栓を覆うように容器口部の外面に螺子締結される合成樹脂製の上蓋とから成り、前記中栓は、天板と、天板の外周縁から間隔をおいて且つ天板下面に形成されたインナーリングとから形成され、前記インナーリングの外壁面が容器口部内に嵌め込まれて容器口部の内面に密着して容器口部をシールすると共に、前記上蓋は、頂板部と、頂板部の外周縁端部から下方に延びており且つ容器口部の外面と螺子係合する螺条を備えたスカート壁とから形成され、前記中栓の天板の前記インナーリングよりも外方部分を前記上蓋の頂板部の下面と容器口部の上端面との間に挟んで、前記中栓を容器口部に保持固定する複合容器蓋において、 前記中栓の天板の上面周縁部及び/又は前記上蓋の頂板部の下面周縁部には、先端にフラットな面を有する扁平状突部が周方向に形成されており、この扁平状突部の先端面の内径は、前記インナーリングの付け根部の内径よりも大きく、容器口部に装着された状態において、少なくともインナーリングの内壁面付け根部の上方に対応する部分では、天板上面と頂板部下面とが離隔していることを特徴とする複合容器蓋。 【請求項2】 前記扁平状突部の先端面の内径は、前記インナーリングの付け根部の外径よりも大きく、容器口部に装着された状態において、インナーリングの外壁面付け根部の上方に対応する部分では、天板上面と頂板部下面とが離隔している請求項1に記載の複合容器蓋。 【請求項3】 前記扁平状突部により、容器口部に装着された状態において、インナーリングの外壁面付け根部の上方に対応する部分では、天板上面と頂板部下面との間隔が、0.5mm以上に設定されている請求項2に記載の複合容器蓋。 【請求項4】 前記扁平状突部は、中栓の天板の上面周縁部と前記上蓋の頂板部の下面周縁部との両方に形成されている請求項1乃至3の何れかに記載の複合容器蓋。 【請求項5】 前記頂板部上面の周縁部は、容器口部に嵌め込まれたインナーリングの外壁面付け根部の上方よりも外方に位置する部分に段差が形成される様に、その中央部よりも高くなっている請求項1乃至4の何れかに記載の複合容器蓋。 【請求項6】 前記中栓の天板の外周縁は、容器口部に嵌め込まれた状態で、上蓋のスカート壁内面とは離隔している請求項1乃至5の何れかに記載の複合容器蓋。 【請求項7】 前記中栓の天板の下面には、前記インナーリングとは間隔をおいて、下方に延びている小突起が周方向に形成されており、該小突起とインナーリングとの間の空間に容器口部が嵌め込まれる請求項1乃至6の何れかに記載の複合容器蓋。 【請求項8】 前記中栓の天板の上面の周縁部には、該天板の外周縁に向かってテーパ状に下方に傾斜した傾斜面が形成されている請求項1乃至7の何れかに記載の複合容器蓋。 【請求項9】 前記傾斜面の傾斜角θは、10度以上である請求項10に記載の複合容器蓋。 【請求項10】 前記中栓の天板の下面は、前記小突起よりも外側部分において下方に屈曲している請求項7に記載の複合容器蓋。」 (2)補正後の本願発明 補正後の特許請求の範囲の記載は、以下のとおりである。 「【請求項1】 容器口部に嵌合固定される合成樹脂製の中栓と、容器口部に嵌合固定された合成樹脂製の中栓を覆うように容器口部の外面に螺子締結される合成樹脂製の上蓋とから成り、前記中栓は、天板と、天板の外周縁から間隔をおいて且つ天板下面に形成されたインナーリングとから形成され、前記インナーリングの外壁面が容器口部内に嵌め込まれて容器口部の内面に密着して容器口部をシールすると共に、前記上蓋は、頂板部と、頂板部の外周縁端部から下方に延びており且つ容器口部の外面と螺子係合する螺条を備えたスカート壁とから形成され、前記中栓の天板の前記インナーリングよりも外方部分を前記上蓋の頂板部の下面と容器口部の上端面との間に挟んで、前記中栓を容器口部に保持固定する複合容器蓋において、 前記中栓の天板の上面周縁部及び/又は前記上蓋の頂板部の下面周縁部には、先端にフラットな面を有する扁平状突部が周方向に形成されており、この扁平状突部の先端面の内径は、前記インナーリングの付け根部の外径よりも大きく、容器口部に装着された状態において、インナーリングの内壁面付け根部の上方に対応する部分及びインナーリングの外壁面付け根部の上方に対応する部分では、天板上面と頂板部下面とが離隔しており、 前記中栓の天板の外周縁は、容器口部に嵌め込まれた状態で、上蓋のスカート壁内面とは離隔しており、 前記中栓の天板の上面の周縁部には、該天板の外周縁に向かってテーパ状に下方に傾斜した傾斜面が形成されていることを特徴とする複合容器蓋。 【請求項2】 前記中栓の天板の下面には、前記インナーリングとは間隔をおいて、下方に延びている小突起が周方向に形成されており、該小突起とインナーリングとの間の空間に容器口部が嵌め込まれる請求項1に記載の複合容器蓋。 【請求項3】 前記中栓の天板の下面は、前記小突起よりも外側部分において下方に屈曲している請求項2に記載の複合容器蓋。 【請求項4】 前記傾斜面の傾斜角θは、10度以上である請求項1乃至3の何れかに記載の複合容器蓋。 【請求項5】 前記扁平状突部により、容器口部に装着された状態において、インナーリングの外壁面付け根部の上方に対応する部分では、天板上面と頂板部下面との間隔が、0.5mm以上に設定されている請求項1乃至4の何れかに記載の複合容器蓋。 【請求項6】 前記扁平状突部は、中栓の天板の上面周縁部と前記上蓋の頂板部の下面周縁部との両方に形成されている請求項1乃至5の何れかに記載の複合容器蓋。」 (3)補正の目的 本件手続補正は、補正前の請求項1に請求項2、請求項6及び請求項8の限定事項を追加し、また、補正前の請求項7を請求項2に、補正前の請求項10を請求項3に、補正前の請求項9を請求項4に、補正前の請求項3を請求項5に、補正前の請求項4を請求項6にして請求項の項番を整理し、さらに、補正前の請求項5を削除するものである。 したがって、本件手続補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第1号及び第2号に掲げる請求項の削除及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そして、補正後の請求項1に記載される発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が異なるものではない。 そこで、補正後の上記請求項1?6に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明1?6」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。 (4)引用文献の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である実願昭48-115114号(実開昭50-59144号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献1」という。)には、次の記載がある。 a「本案は中栓組込用キャップの改良に係り、キャッピングトルクを減少し、キャッピングマシンの負担を少くし、又締め不足をなくすることを目的とするものである。」(第1ページ第10行?第13行) b「図面につき本案の実施例を説明すれば、外キャップ1の内側壁2のアンダーカット3に係止せしめた中栓4は、その側壁5とインナーリング6との間にボトル7のノズル部8を挟持せしめ、そのボトルノズル部8の外側アンダーカット9に、中栓側壁5の内側下部のアンダーカット10を係脱せしめるものとする。 本案の特徴とするところは、前記中栓4の内側アンダーカット部10の反対側の外側に、肉抜の凹陥環状部11を形成することにある。 尚図面において、12は外キャップ1の内底面13に設けた中栓4の天板部14に対設せしめたコンタクトリング部、15は中栓リブ、16は中栓天板部14に設けた注出孔、17は外キャップ1の内側壁2下部に設けたボトル螺部18に螺合せしめる螺部である。」(第1ページ第14行?第2ページ第11行) c「内容物のもれ止として、中栓側壁と中栓インナーリングとで挟持する」(第3ページ第8行?第10行) そして、図面には、外キャップ1が中栓4を覆う点、インナーリング6が天板部14の外周縁から間隔をおいて天板部14下面に形成される点、外キャップ1が頂板部と頂板部の外周縁端部から下方に延びるスカート壁とから形成される点、中栓4の天板部14のインナーリング6よりも外方部分を外キャップ1の頂板部の内底面13とボトル7のノズル部8の上端面との間に挟んで中栓4を保持固定する点、外キャップ1の頂板部の内底面13周縁部に形成されたコンタクトリング部12が先端にフラットな面を有する点、コンタクトリング部12のフラットな先端面の内径がインナーリング6の付け根部の外径よりも大きい点、インナーリング6の内壁面付け根部の上方に対応する部分及びインナーリング6の外壁面付け根部の上方に対応する部分で天板部14の上面と頂板部の内底面13とが離隔する点、中栓4の天板部14の外周縁が外キャップ1の内側壁2と離隔する点が、それぞれ図示されている(なお、「天板」とは、一般的に上面の板を意味することから、図面において、中栓4のうちコンタクトリング部12及びノズル部8よりも径方向外側にあって、水平方向ではなく上下方向に延びる部分及び中栓リブ15は、側壁5に含まれると認められる。)。 また、上記b及びcにおいて中栓4が側壁5とインナーリング6との間にボトル7のノズル部8を挟持していること並びに図面より、中栓4のインナーリング6の外壁面はボトル7のノズル部8に嵌め込まれて固定されるものと認められる。 また、引用文献1に記載された発明のコンタクトリング部12は、「リング部」であることから、周方向に形成されたものと認められる。 以上の記載及び図面によれば、引用文献1には、次の発明が記載されていると認められる。 「ボトル7のノズル部8に嵌合固定される中栓4と、ボトル7のノズル部8に嵌合固定された中栓4を覆うようにボトル7のノズル部8の外面に螺合される外キャップ1とから成り、中栓4は、天板部14と、天板部14の外周縁から間隔をおいて且つ天板部14下面に形成されたインナーリング6と、側壁5とから形成され、インナーリング6の外壁面がボトル7のノズル部8内に嵌め込まれてボトル7のノズル部8の内面に密着してボトル7のノズル部8をもれ止すると共に、外キャップ1は、頂板部と、頂板部の外周縁端部から下方に延びており且つボトル7のノズル部8の外面と螺合する螺部17を備えたスカート壁とから形成され、中栓4の天板部14のインナーリング6よりも外方部分を外キャップ1の頂板部の内底面13とボトル7のノズル部8の上端面との間に挟んで、中栓4をボトル7のノズル部8に保持固定する中栓組込用キャップにおいて、 外キャップ1の頂板部の内底面13周縁部には、先端にフラットな面を有するコンタクトリング部12が周方向に形成されており、このコンタクトリング部12の先端面の内径は、インナーリング6の付け根部の外径よりも大きく、ボトル7のノズル部8に装着された状態において、インナーリング6の内壁面付け根部の上方に対応する部分及びインナーリング6の外壁面付け根部の上方に対応する部分では、天板部14の上面と頂板部の内底面13とが離隔しており、 中栓4の天板部14の外周縁は、ボトル7のノズル部8に嵌め込まれた状態で、外キャップ1の内側壁2とは離隔している中栓組込用キャップ」 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である実願昭55-117527号(実開昭57-43212号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献2」という。)には、次の記載がある。 d「従来ボトルに中栓を打栓し、液漏防止を行うキャップの嵌合方式においては…」(第1ページ第10行?第11行) e「本案は、塩ビ積層ボトル等において、外キャップとボトル口縁との間に中栓を保持せしめるようにした容器において、そのボトル口縁のコーナー部にアール仕上げを施したことを特徴とするプラスチック容器を考案要旨とするものである。」(第1ページ第18行?第2ページ第3行) f「図面につき本案の実施例を説明すれば、第1図において、ボトル口部1に対し外キャップ2との間に中栓3を介在せしめたもので、ボトル口部1の口縁4は鍔状をなしており、ボトルの製品重量、大きさ、形状、鍔の厚味(H)、鍔の段差(C)等により最適な形状に設定する。 図面におけるA寸法が最低で径は0.5mmで、中栓3の打栓時の疵及び打栓不良防止の最小限度の隙間(B)を示すものとする。」(第2ページ第4行?第12行) そして、第1図には、それぞれ複合容器蓋を構成する外キャップ2が中栓3を覆う点、ボトル口部1と外キャップ2とが螺子締結される点、中栓3が天板と天板の外周縁から間隔をおいて且つ天板下面に形成されたインナーリングとから形成される点、インナーリングの外壁面がボトル口部1内に嵌め込まれてボトル口部1の内面に密着してボトル口部1の液漏防止を行う点、外キャップ2が頂板部と頂板部の外周縁端部から下方に延びたスカート壁とから形成される点、中栓3の天板のインナーリングよりも外方部分を外キャップ2の頂板部の下面とボトル口部1の上端面との間に挟んで中栓3を保持固定する点、外キャップ2の頂板部の下面周縁部に先端にフラットな面を有する扁平状突部が形成される点、インナーリングの内壁面付け根部の上方に対応する部分で天板上面と頂板部下面とが離隔する点、中栓3の天板の外周縁が外キャップ2のスカート壁内面とは離隔する点、中栓3の天板の上面の周縁部に天板の外周縁に向かってテーパ状に下方に傾斜した傾斜面が形成される点が、それぞれ図示されている。 また、上記dの記載及び第1図より、インナーリングの外壁面は、ボトル口部1内に嵌め込まれてボトル口部1の内面に密着してボトル口部1の液漏防止を行うものと認められる。 以上の記載及び第1図によれば、引用文献2には、次の発明が記載されていると認められる。 「ボトル口部1に打栓される中栓3と、ボトル口部1に打栓された中栓3を覆うようにボトル口部1の外面に螺子締結される外キャップ2とから成り、中栓3は、天板と、天板の外周縁から間隔をおいて且つ天板下面に形成されたインナーリングとから形成され、インナーリングの外壁面がボトル口部1内に嵌め込まれてボトル口部1の内面に密着してボトル口部1の液漏防止を行うと共に、外キャップ2は、頂板部と、頂板部の外周縁端部から下方に延びており且つボトル口部1の外面と螺子係合する螺条を備えたスカート壁とから形成され、中栓3の天板のインナーリングよりも外方部分を外キャップ2の頂板部の下面とボトル口部1の上端面との間に挟んで、中栓3をボトル口部1に保持固定する複合容器蓋において、 外キャップ2の頂板部の下面周縁部には、先端にフラットな面を有する扁平状突部が形成されており、ボトル口部1に装着された状態において、インナーリングの内壁面付け根部の上方に対応する部分では、天板上面と頂板部下面とが離隔しており、 中栓3の天板の外周縁は、ボトル口部1に嵌め込まれた状態で、外キャップ2のスカート壁内面とは離隔しており、 中栓3の天板の上面の周縁部には、天板の外周縁に向かってテーパ状に下方に傾斜した傾斜面が形成されている複合容器蓋」 (5)対比 本願補正発明1と引用文献1に記載された発明とを対比すると、引用文献1に記載された発明の「ボトル7」、「ノズル部8」、「中栓4」、「螺合」、「外キャップ1」、「天板部14」、「インナーリング6」、「シールする」、「螺部17」、「頂板部の内底面13」、「中栓組込用キャップ」、「コンタクトリング部12」、「内側壁2」は、それぞれ本願補正発明1の「容器」、「口部」、「中栓」、「螺子締結」及び「螺子係合」、「上蓋」、「天板」、「インナーリング」、「もれ止する」、「螺条」、「頂板部の下面」、「複合容器蓋」、「扁平状突部」、「スカート壁内面」に相当する。 さらに、引用文献1に記載された発明の中栓と、本願補正発明1の中栓とは、「天板と、天板の外周縁から間隔をおいて且つ天板下面に形成されたインナーリング」を含む限りにおいて共通している。 そうすると、両者は、 「容器口部に嵌合固定される中栓と、容器口部に嵌合固定された中栓を覆うように容器口部の外面に螺子締結される上蓋とから成り、中栓は、天板と、天板の外周縁から間隔をおいて且つ天板下面に形成されたインナーリングとを含み、インナーリングの外壁面が容器口部内に嵌め込まれて容器口部の内面に密着して容器口部をシールすると共に、上蓋は、頂板部と、頂板部の外周縁端部から下方に延びており且つ容器口部の外面と螺子係合する螺条を備えたスカート壁とから形成され、中栓の天板のインナーリングよりも外方部分を上蓋の頂板部の下面と容器口部の上端面との間に挟んで、中栓を容器口部に保持固定する複合容器蓋において、 上蓋の頂板部の下面周縁部には、先端にフラットな面を有する扁平状突部が周方向に形成されており、この扁平状突部の先端面の内径は、インナーリングの付け根部の外径よりも大きく、容器口部に装着された状態において、インナーリングの内壁面付け根部の上方に対応する部分及びインナーリングの外壁面付け根部の上方に対応する部分では、天板上面と頂板部下面とが離隔しており、 中栓の天板の外周縁は、容器口部に嵌め込まれた状態で、上蓋のスカート壁内面とは離隔している複合容器蓋」 である点で一致し、次の点で相違する。 《相違点1》 本願補正発明1では、中栓が天板とインナーリングとから形成され、中栓の天板の上面の周縁部には、天板の外周縁に向かってテーパ状に下方に傾斜した傾斜面が形成されるのに対し、引用文献1に記載された発明では、中栓が天板とインナーリングと側壁とから形成され、中栓の天板の上面の周縁部には傾斜面がない点。 《相違点2》 本願補正発明1では、中栓及び上蓋が合成樹脂製であるのに対し、引用文献1に記載された発明では、中栓及び上蓋の材料について特定していない点。 本願補正発明1と引用文献2に記載された発明とを対比すると、引用文献2に記載された発明の「ボトル口部1」、「打栓」、「中栓3」、「外キャップ2」、「液漏防止」、は、それぞれ本願補正発明1の「容器口部」、「嵌合固定」、「中栓」、「上蓋」、「シール」に相当する。 そうすると、両者は、 「容器口部に嵌合固定される中栓と、容器口部に嵌合固定された中栓を覆うように容器口部の外面に螺子締結される上蓋とから成り、中栓は、天板と、天板の外周縁から間隔をおいて且つ天板下面に形成されたインナーリングとから形成され、インナーリングの外壁面が容器口部内に嵌め込まれて容器口部の内面に密着して容器口部をシールすると共に、上蓋は、頂板部と、頂板部の外周縁端部から下方に延びており且つ容器口部の外面と螺子係合する螺条を備えたスカート壁とから形成され、中栓の天板のインナーリングよりも外方部分を上蓋の頂板部の下面と容器口部の上端面との間に挟んで、中栓を容器口部に保持固定する複合容器蓋において、 上蓋の頂板部の下面周縁部には、先端にフラットな面を有する扁平状突部が形成されており、容器口部に装着された状態において、インナーリングの内壁面付け根部の上方に対応する部分では、天板上面と頂板部下面とが離隔しており、 中栓の天板の外周縁は、容器口部に嵌め込まれた状態で、上蓋のスカート壁内面とは離隔しており、 中栓の天板の上面の周縁部には、天板の外周縁に向かってテーパ状に下方に傾斜した傾斜面が形成されている複合容器蓋」 である点で一致し、次の点で相違する。 《相違点3》 本願補正発明1では、扁平状突部の先端面の内径は、インナーリングの付け根部の外径よりも大きく、容器口部に装着された状態において、インナーリングの外壁面付け根部の上方に対応する部分では、天板上面と頂板部下面とが離隔しているのに対し、引用文献2に記載された発明では、そのような構成を備えていない点。 《相違点4》 本願補正発明1では、中栓及び上蓋が合成樹脂製であるのに対し、引用文献2に記載された発明では、中栓及び上蓋の材料について特定していない点。 《相違点5》 本願補正発明1では、扁平状突部が周方向に形成されているのに対し、引用文献2に記載された発明では、扁平状突部がどの方向に形成されているかについて特定していない点。 (6)相違点の検討 上記相違点1について検討する。 上記相違点1に係る本願補正発明1の構成は、引用文献1には記載も示唆もされていない。 そして、相違点1に係る本願補正発明1の構成自体は、例えば引用文献2や原査定の拒絶の理由において引用された特開平11-222249号公報の図面に記載されているように周知ではあるが、引用文献1にはこれらの周知例に記載された相違点1に係る本願補正発明1の構成を採用することの動機付けについての記載は存在せず、また、技術常識を参酌しても、相違点1に係る本願補正発明1の構成を採用し得ることが当業者に明らかであったともいえない。 そうすると、引用文献1に記載された発明において、上記周知技術を採用する動機付けが存在せず、また、相違点1に係る本願補正発明1の構成が当業者が適宜なし得た設計的事項であるともいえないので、引用文献1に記載された発明において、相違点1に係る本願補正発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。 そして、本願補正発明1はその構成によって、明細書に記載された作用効果を奏するものと認められる。 したがって、本願補正発明1は、上記相違点2について検討するまでもなく、引用文献1に記載された発明及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 上記相違点3について検討する。 上記相違点3に係る本願補正発明1の構成は、引用文献2には記載も示唆もされていない。 そして、相違点3に係る本願補正発明1の構成自体は、例えば引用文献1や原査定の拒絶の理由において引用された実願昭52-42610号(実開昭53-140652号)のマイクロフィルムの図面に記載されているように周知ではあるが、引用文献2にはこれらの周知例に記載された相違点3に係る本願補正発明1の構成を採用することの動機付けについての記載は存在せず、また、技術常識を参酌しても、相違点3に係る本願補正発明1の構成を採用し得ることが当業者に明らかであったともいえない。 そうすると、引用文献2に記載された発明において、上記周知技術を採用する動機付けが存在せず、また、相違点3に係る本願補正発明1の構成が当業者が適宜なし得た設計的事項であるともいえないので、引用文献2に記載された発明において、相違点3に係る本願補正発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。 そして、本願補正発明1はその構成によって、明細書に記載された作用効果を奏するものと認められる。 したがって、本願補正発明1は、上記相違点4及び相違点5について検討するまでもなく、引用文献2に記載された発明及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (7)本願補正発明2?6について 本願補正発明2?6は、本願補正発明1が特定する構成をすべて備えている発明であるので、本願補正発明1について検討したとおりの理由により、引用文献1及び引用文献2に記載された発明並びに上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (8)本件手続補正についての結び 以上のように、本件手続補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第1号及び第2号に掲げる請求項の削除及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明は、引用文献1及び引用文献2に記載された発明並びに上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、特許出願の際独立して特許を受けることができない他の理由もない。 よって、本件手続補正は、適法な補正である。 3 本願発明 「2(8)本件手続補正についてのむすび」で述べたように、本件手続補正は適法になされた補正であるから、本願の請求項1?6に係る発明は、本件手続補正により補正されたとおりのものである(「2(2)補正後の本願発明」参照。以下、「本願発明1?6」という。)。 そして、「2(6)相違点の検討」及び「2(7)本願補正発明2?6について」で述べたとおり、本願発明1?6は、引用文献1及び引用文献2に記載された発明並びに上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、他に本願発明1?6を拒絶すべき理由も発見しない。 なお、平成22年7月30日提出の刊行物等提出書、平成23年6月20日提出の刊行物提出書、平成24年1月27日提出の刊行物提出書、平成24年8月24日提出の刊行物提出書及び平成24年8月30日提出の刊行物提出書において提出された刊行物について付言すると、いずれの刊行物を主引用例としても、その主引用例と本願発明1との相違点について、相違点に係る構成を採用する動機付けが存在しないので、本願発明1?6は、上記刊行物に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 4 むすび 以上のとおり、本願については、原査定の拒絶の理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また、他にこの出願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2012-09-05 |
出願番号 | 特願2001-136248(P2001-136248) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(B65D)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 佐々木 正章、戸田 耕太郎 |
特許庁審判長 |
仁木 浩 |
特許庁審判官 |
▲高▼辻 将人 熊倉 強 |
発明の名称 | 耐衝撃性に優れた合成樹脂製複合容器蓋 |
代理人 | 奥貫 佐知子 |
代理人 | 小野 尚純 |