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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01G
管理番号 1262426
審判番号 不服2010-14387  
総通号数 154 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-06-30 
確定日 2012-08-30 
事件の表示 特願2005-506912「電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法、電解コンデンサ電極用アルミニウム材、電解コンデンサ用電極材の製造方法およびアルミニウム電解コンデンサ」拒絶査定不服審判事件〔平成16年12月23日国際公開、WO2004/112066〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本件特許出願は、平成16年6月3日(優先権主張 平成15年6月3日 日本国)を国際出願日とする出願であって、平成21年10月26日付けで通知した拒絶の理由に対して、平成22年1月7日付けで意見書が提出されたが、平成22年3月24日付けで拒絶すべき旨の査定がされ、これに対し、平成22年6月30日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで特許請求の範囲について手続補正がされたものである。
その後、当審において、審査官の作成した前置報告書(特許法164条3項)を利用した審尋を行ったところ、平成23年12月12日付けで回答書の提出があった。

2.本願発明
そして、本件特許出願の請求項1ないし20に係る発明は、平成22年6月30日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし20に記載されたとおりのものであると認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】
冷間圧延を施したアルミニウム材の表面を、硫酸、塩酸、リン元素を含む酸の中から選ばれる1種または2種以上の酸を含む酸水溶液に接触させ、その後450?600℃にて不活性な雰囲気中で焼鈍することを特徴とする電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。」

3.引用例

これに対し、原査定の拒絶の理由で引用された国際公開第03/15112号(2003(平成15)年2月20日公開。以下、「引用例」という。)には、以下の技術事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。

(a)
「 技術分野
この発明は、電解コンデンサ用アルミニウム材の製造方法、電解コンデンサ電極用アルミニウム材、電解コンデンサ用電極材の製造方法及びアルミニウム電解コンデンサに関する。」
(1頁17行?20行〔注:行のカウントに空白行は含めない。以下同様。〕)

(b)
「この発明は、アルミニウムスラブに熱間圧延、冷間圧延、最終焼鈍を順次実施して電解コンデンサ電極用アルミニウム材を製造するに際し、前記熱間圧延以後の工程で、アルミニウム材を加熱体との接触により加熱する工程を含むことを特徴とする電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法にある。」(4頁18行?21行)

(c)(第3の実施形態)に関して、以下の記載がある。
(C-1)
「この実施形態は、前記冷間圧延後に、アルミニウム材をアルミニウムを熔解しうる液で洗浄した後、最終焼鈍前に、前記アルミニウム材の加熱体との接触加熱工程を行う場合である。」(18頁3行?5行)
(C-2)
「以下に、本発明に用いられる電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法を説明する。
本製造方法に用いられるアルミニウム材の純度は電解コンデンサ電極用に使用される範囲であれば特に限定されないが、純度99.9%以上のものが好ましく、特に99.95%以上が好ましい。なお、本発明においてアルミニウム材の純度は100%からFe,Si, Cu, Mn, Cr, Zn, TiおよびGaの合計濃度(質量%)を差し引いた値とする。
また、アルミニウムを溶解しうる液で洗浄されるアルミニウム材は、一般には、アルミニウム材料の溶解・成分調整・スラブ鋳造、均熱処理、熱間圧延、冷間圧延、中間焼鈍、仕上冷間圧延(低圧下圧延)、最終焼鈍、接触加熱の順に実施されるが、アルミニウム材のエッチング条件との関係で、アルミニウム材の製造工程条件は適宜変更してもよい。
なお、圧延工程の途中において、前工程の圧延により生じたアルミニウム材の結晶組織の歪みを解消する目的で焼鈍(中間焼鈍)を実施しても良い。また、中間焼鈍以前の工程において、表面の不純物や油分を除去する目的で酸水溶液、アルカリ水溶液もしくは有機溶剤を用いて洗浄を実施しても良い。
アルミニウム材の表層に均質で安定な酸化皮膜を生成させ、最終焼鈍時にエッチピットとなる結晶性酸化物粒子をアルミニウム材表面に分散性良く生成させるため、最終圧延後のアルミニウム材をアルミニウムを溶解しうる液で洗浄し、その後接触加熱を行う。
アルミニウムを溶解しうる液としては、酸、アルカリ、アンモニア、アミン類からなる群より選ばれた少なくとも1種を含んだ水溶液等が挙げられ、最終圧延後アルカリ洗浄または酸洗浄の少なくともどちらかの洗浄を行うことが好ましい。」(18頁21行?19頁17行)
(C-3)
「一方、酸洗浄に用いる酸洗浄液の酸としては、特に限定されるものではないが、ルイス酸が使用でき、例えば塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、ホウ酸、フッ化水素酸等の無機酸及び酢酸、シュウ酸、クエン酸等の有機酸を例示でき、これら酸を少なくとも1種類以上含む水溶液を洗浄液として用いることができる。」(20頁6行?9行)
(C-4)
「次に、アルミニウムを溶解しうる液での洗浄を施したアルミニウム材を、加熱体との接触により加熱する。」(21頁3行?4行)
(C-5)
「接触加熱後、アルミニウム材の結晶組織の方位を(100)方位に整えてエッチング特性を向上させることを主目的とし最終焼鈍がなされる。」(21頁24行?25行)
(C-6)
「この最終焼鈍における処理雰囲気は特に限定されるものではないが、酸化皮膜の厚さを増大させすぎないように、水分および酸素の少ない雰囲気中で加熱するのが好ましい。具体的には、アルゴン、窒素等の不活性ガス中あるいは0.1Pa以下の真空中で加熱することが好ましい。」(22頁4行?7行)

(D)〔第3の実施例〕に関して、以下の記載がある。
(D-1)
「この実施例は、第3の実施形態に対応するものである。
最終圧延後のアルミニウム材をアルカリ洗浄もしくは酸洗浄する前に行う有機溶剤洗浄に用いる有機溶剤洗浄液を表11に、アルカリ洗浄液を表12に、酸洗浄液を表13に示す。」(48頁8行?11行)
(D-2)
「(実施例301)
厚さ110μmに圧延された純度99.99%のアルミニウム箔(アルミニウム材)に対し、表11のA102液での洗浄、乾燥、表12のB106液での40秒間の洗浄、水洗、乾燥、表13のC101液での60秒間の洗浄、水洗、乾燥の各工程を順次実施した。
次に、アルミニウム箔を表面温度が250℃のステンレス製加熱板2枚の間に挟み、2秒間接触加熱を行った
ついで、接触加熱後のアルミニウム箔を重ねた状態でアルゴン雰囲気下でアルミニウム箔の実体温度を室温から500℃まで50℃/hで昇温させた後、500℃にて24時間保持させ、次いで冷却した後炉出し、電解コンデンサ電極用アルミニウム箔を得た。」(50頁1行?11行)
(D-3)
表13(49頁参照)を参照すると、酸の種類が記号で表記されており、C101(塩酸)、C102(硫酸)、C104(リン酸)が含まれている。
(D-4)
表14(52頁参照)を参照すると、実施例301について、「工程3:酸洗浄」の「種類」の欄には、「C101」と記載され,工程5:焼鈍(実体温度℃)の欄には「500」と記載されている。
また、実施例303他で酸洗浄にC102(硫酸)を用い、実施例311他で酸洗浄にC104(リン酸)を用い、いずれも焼鈍を500℃または540℃で行うことが記載されている。

上記記載事項及び表13,14を総合勘案すると、上記引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「最終圧延である冷間圧延後のアルミニウム箔を、塩酸、硫酸、またはリン酸を含む水溶液を洗浄液として用いて、酸洗浄し、
洗浄したアルミニウム箔を、水洗、乾燥し、
加熱板に接触加熱し、
アルゴン雰囲気下でアルミニウム箔の実体温度を室温から500℃まで50℃/hで昇温させた後、500℃にて24時間保持させる最終焼鈍を実施する工程を含む、
電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法。」

4.対比判断
引用発明と本願発明とは、いずれも「電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法」に関するものである点で一致している。
引用発明における「最終圧延である冷間圧延後のアルミニウム箔を、塩酸、硫酸、またはリン酸を含む水溶液を洗浄液として用いて、酸洗浄」「する工程」は、「洗浄」する際には対象物の表面に液体が接触するのは当然であるから、本願発明の「冷間圧延を施したアルミニウム材の表面を、硫酸、塩酸、リン元素を含む酸の中から選ばれる1種または2種以上の酸を含む酸水溶液に接触させ」に相当する。
引用例に記載された製造方法では、酸洗浄と最終焼鈍との間に、水洗、乾燥、加熱体へ接触すること(以下、「その他の工程」という。)が入るが、一般に、請求項に記載された発明は、同発明を特定するために必要な事項を含めば十分であって、また、本願発明において、前記その他の工程を積極的に排除する記載があるものでもない。
また、引用発明において、前記その他の工程は、最終焼鈍が酸洗浄の後に実施されるものである点に何ら影響を及ぼすものでもない。
すると、引用発明において、水洗、乾燥、および加熱板への接触加熱の後に実施される「アルゴン雰囲気下でアルミニウム箔の実体温度を室温から500℃まで50℃/hで昇温させた後、500℃にて24時間保持させる最終焼鈍を実施する工程」は、「アルゴン雰囲気」が「不活性な雰囲気」に他ならないから、本願発明の「その後450?600℃にて不活性な雰囲気中で焼鈍すること」に相当する。
以上のことからすると、引用発明は、本願発明の方法を特定するために必要な事項を全て備えており、相違点はない。

5.結び
以上のとおりであるから、本件特許出願の請求項1に記載された発明は、引用例に記載された発明であって、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができないものである。
したがって、本件特許出願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-06-26 
結審通知日 2012-06-27 
審決日 2012-07-17 
出願番号 特願2005-506912(P2005-506912)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (H01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐久 聖子井上 弘亘  
特許庁審判長 山田 洋一
特許庁審判官 馬場 慎
乾 雅浩
発明の名称 電解コンデンサ電極用アルミニウム材の製造方法、電解コンデンサ電極用アルミニウム材、電解コンデンサ用電極材の製造方法およびアルミニウム電解コンデンサ  
代理人 清水 義仁  
代理人 清水 久義  
代理人 高田 健市  
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