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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L
管理番号 1262443
審判番号 不服2011-7512  
総通号数 154 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-04-11 
確定日 2012-08-30 
事件の表示 特願2007- 48270「通信システム、通信機器及びそれらに用いる対向装置存在確認方法並びにそのプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 9月11日出願公開、特開2008-211693〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成19年2月28日の出願であって、平成22年7月7日付けで拒絶理由が通知され、同年8月30日付けで手続補正されたが、平成23年1月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月11日に拒絶査定不服の審判が請求されたものである。

第2 本願発明
特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年8月30日付けで手続補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「対抗する通信機器間で主信号及び存在確認パケット送受信を行う通信システムであって、
前記通信機器の送信側に、前記存在確認パケット分のバッファと、予め設定された時間内に送出する主信号が無い場合に前記存在確認パケットを送出する送出手段とを有し、
前記通信機器の送信側において、前記送出手段から前記存在確認パケットを送出することで最長無信号時間を保証し、前記存在確認パケットの送出中に前記送出する主信号が発生した場合に当該主信号を前記バッファに滞留させることで主信号ワイヤレートを保証するとともに、前記存在確認パケット分のバッファを持つことで前記主信号ワイヤレートに影響なく、対向装置の存在を確認することを特徴とする通信システム。」

第3 引用発明
原審の拒絶理由に引用された特開2003-173299号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、複数の計算機をネットワークで接続した計算機クラスタにより構成される情報処理システムの異常処理に関するもので、特に情報処理システムに余分な負荷を与えずに、ネットワークや計算機に発生した異常を短時間に検出し、異常原因を切り分け、その異常に対処する処理を行う技術に関するものである。」(4頁6欄)

ロ.「【0025】
【発明の実施の形態】実施の形態1.以下、この発明の実施の形態1を図にしたがって説明する。図1はこの発明の実施の形態1による計算機クラスタの構成図である。ここでは、入出力装置などから入力データを得る計算機と、演算を行う計算機が異なり、計算機間で送受されるデータが一方向でかつ連続的もしくは周期的に送信されるようなシステムを想定している。図中の101、102?10nは、主として演算を行う受信側計算機である。111、112?11nは、主としてデータを生成する送信側計算機である。全ての計算機はネットワークスイッチ121により接続され、計算機間のデータ送受を可能とする。なお、受信側計算機は、データ受信装置に相当し、送信側計算機はデータ送信装置に相当する。」(8頁13欄)

ハ.「【0050】実施の形態6.以下は、この発明の実施の形態6を図に従って説明する。実施の形態6では、実施の形態2に加えて、送信側計算機111が図17に示すような構成を持つ。なお、図17では例として送信側計算機111の内部構成を示しているが、他の送信側計算機も同様の構成となっている。601はネットワークからデータを送信する送信処理部である。611は送信データを一時的に保持するネットワーク送信バッファである。621は、受信側と同様に送信を行うアプリケーションに対して、通信コネクションごとにソフトウェアインタフェースを提供するソケットである。631は通信コネクションごとの送信データをおくソケット毎送信キューである。641はソケット毎送信タイマである。ソケット毎送信タイマ641はソケットごとに用意するタイマで、各ソケットから送信する時間間隔を監視し、特定の受信側計算機へのデータ送信間隔が、所定の制限時間を超える場合にハートビートパケットの送信を指示する。651は所定の場合にハートビートパケットを生成し、送信する送信側ハートビート処理部である。ここで、ネットワークコントローラ201、202は、データ送信部に相当し、ソケット毎送信タイマ641は送信間隔監視部に相当し、送信側ハートビート処理部651はハートビートデータ生成送信部に相当する。実施の形態6の目的は、送信側計算機に一時的に送信データがない状態が生じた場合、その状態を検出して、ハートビートパケットを送信することにより、受信側計算機が誤った異常処理動作を行わないようにすることである。
【0051】送信側ハートビート処理部651の動作を図18のフローチャートにしたがって説明する。送信側ハートビート処理部651は、通信コネクションに一定時間送信データがなくなった場合に動作させる。ハートビートパケットの送信は、特定の受信側計算機へのデータ送信間隔が所定の制限時間を経過しソケット毎送信タイマ641でタイムアウトが発生した場合に、ソケット毎送信タイマ641が送信側ハートビート処理部651を呼び出し、ハートビートパケットの送信を指示することにより実現する。具体的には、ソケット毎送信タイマ641でタイムアウトが発生すると、ソケット毎送信タイマ641からハートビート送信指示が送られ、送信側ハートビート処理部651は、ハートビート送信指示を取得することで、ソケット毎送信タイマ641でのタイムアウトの発生を検出する(S1101)。次にS1102で、ハートビートパケットを生成するとともに、対応する通信コネクションの受信側計算機へハートビートパケットを送信する。これをS1103で対応するソケットに送信データがない間、繰り返す。ソケット毎送信タイマのタイムアウト時間の値は、受信側計算機のソケット毎受信タイマのタイムアウト時間よりも短い値にすることにより、受信側計算機が異常処理動作を行うことがなくなる。すなわち、受信側計算機101?10nでは、一定間隔でハートビートパケットを受信している限りは、ネットワーク受信タイマ及びソケット毎受信タイマは受信タイムアウトと判断しないため、受信側計算機が異常処理動作を行わない。」(11頁20欄?12頁21欄)

ニ.「【0067】また、本発明によるデータ受信装置は、データ受信の合間にデータ送信装置に対してハートビートデータを送信するようにしたので、データ送信装置は、本来のデータ通信を妨げられることなく、データ受信装置に発生した障害を検出することが可能となり、障害に対する処理を迅速に実施することが可能となる。」(13頁24欄)

上記引用例の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記摘記事項イ.、ロ.の【0025】における「図中の101、102?10nは、主として演算を行う受信側計算機である。111、112?11nは、主としてデータを生成する送信側計算機である。全ての計算機はネットワークスイッチ121により接続され、計算機間のデータ送受を可能とする。なお、受信側計算機は、データ受信装置に相当し、送信側計算機はデータ送信装置に相当する。」との記載、及び図1によれば、情報処理システムは、送信側計算機及び受信側計算機間でデータを送受するものである。
また、上記摘記事項ハ.の【0050】における「601はネットワークからデータを送信する送信処理部である。611は送信データを一時的に保持するネットワーク送信バッファである。621は、受信側と同様に送信を行うアプリケーションに対して、通信コネクションごとにソフトウェアインタフェースを提供するソケットである。631は通信コネクションごとの送信データをおくソケット毎送信キューである。641はソケット毎送信タイマである。」との記載、及び図17によれば、送信側計算機は、ソケット毎送信キュー(631)と、ソケット毎送信タイマ(641)と、ネットワーク送信バッファ(611)と、送信側ハートビート処理部(651)、及びネットワークコントローラ(201、202)を備えている。
また、上記摘記事項ハ.の【0050】における「ネットワークコントローラ201、202は、データ送信部に相当し、ソケット毎送信タイマ641は送信間隔監視部に相当し、送信側ハートビート処理部651はハートビートデータ生成送信部に相当する。実施の形態6の目的は、送信側計算機に一時的に送信データがない状態が生じた場合、その状態を検出して、ハートビートパケットを送信する」との記載、及び図17によれば、ネットワークコントローラ(201、202)、ソケット毎送信タイマ(641)、及び送信側ハートビート処理部(651)は、送信側計算機に一時的に送信データがない状態が生じた場合、その状態を検出して、ハートビートパケットを送信している。ここで、上記摘記事項ハ.の【0050】における「ソケット毎送信タイマ641はソケットごとに用意するタイマで、各ソケットから送信する時間間隔を監視し、特定の受信側計算機へのデータ送信間隔が、所定の制限時間を超える場合にハートビートパケットの送信を指示する。」との記載によれば、前述のハートビートパケットを送信するタイミングは、データ送信間隔が、所定の制限時間を超える場合である。すなわち、所定の制限時間内に送信する送信データがない場合にハートビートパケットを送信していることが読み取れる。
また、前述の情報処理システムが、送信側計算機及び受信側計算機間で送受するデータは、前述の送信データ及びハートビートパケットである。

したがって、引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「送信側計算機及び受信側計算機間で送信データ及びハートビートパケットを送受する情報処理システムであって、
前記送信側計算機に、ソケット毎送信キュー(631)と、所定の制限時間内に送信する送信データがない場合に前記ハートビートパケットを送信するネットワークコントローラ(201、202)、ソケット毎送信タイマ(641)、及び送信側ハートビート処理部(651)とを有する情報処理システム。」

第4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
a.引用発明の「送信側計算機及び受信側計算機」は、上記引用例の上記摘記事項ロ.の【0025】における「図中の101、102?10nは、主として演算を行う受信側計算機である。111、112?11nは、主としてデータを生成する送信側計算機である。全ての計算機はネットワークスイッチ121により接続され、計算機間のデータ送受を可能とする。なお、受信側計算機は、データ受信装置に相当し、送信側計算機はデータ送信装置に相当する。」との記載、及び図1によれば、本願発明の「対抗する通信機器」に相当する。
b.引用発明の「送信データ及びハートビートパケット」は、本願発明の「主信号及び存在確認パケット」に相当する。
c.引用発明の「送受する」は、「送受信を行う」ということができる。
d.引用発明の「ソケット毎送信キュー(631)」と、本願発明の「存在確認パケット分のバッファ」は、いずれも、「特定の記憶装置」という点で一致する。
e.引用発明の「所定の制限時間」は、上記引用例の上記摘記事項ハ.の【0051】における「具体的には、ソケット毎送信タイマ641でタイムアウトが発生すると、ソケット毎送信タイマ641からハートビート送信指示が送られ」との記載、及び図18によれば、ソケット毎送信タイマ(641)が、タイムアウトする時間であるから、「予め設定された時間」ということができる。
f.引用発明の「ネットワークコントローラ(201、202)、ソケット毎送信タイマ(641)、及び送信側ハートビート処理部(651)」は、本願発明の「送出手段」に相当する。
g.引用発明の「情報処理システム」は、送信データ及びハートビートパケットを送受するから、「通信システム」の一種である。

したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違する。

<一致点>
「対抗する通信機器間で主信号及び存在確認パケット送受信を行う通信システムであって、
前記通信機器の送信側に、特定の記憶装置と、予め設定された時間内に送出する主信号が無い場合に前記存在確認パケットを送出する送出手段とを有する通信システム。」

<相違点1>
「特定の記憶装置」に関し、
本願発明は、「前記存在確認パケット分のバッファ」であるのに対し、引用発明は、「ソケット毎送信キュー(631)」である点。

<相違点2>
「通信機器の送信側」における「存在確認パケットを送出する」機能に関し、
本願発明は、「前記通信機器の送信側において、前記送出手段から前記存在確認パケットを送出することで最長無信号時間を保証し」ているのに対し、引用発明は、その様な機能を備えるか不明な点。

<相違点3>
「通信機器の送信側」における「特定の装置」の機能に関し、
本願発明は、「前記存在確認パケットの送出中に前記送出する主信号が発生した場合に当該主信号を前記バッファに滞留させることで主信号ワイヤレートを保証するとともに、前記存在確認パケット分のバッファを持つことで前記主信号ワイヤレートに影響なく、対向装置の存在を確認する」のに対し、引用発明は、その様な機能を備えるか不明な点。

第5 判断
そこで、まず、上記相違点2について検討する。
上記引用例の上記摘記事項ハ.の【0051】における「送信側ハートビート処理部651は、通信コネクションに一定時間送信データがなくなった場合に動作させる。ハートビートパケットの送信は、特定の受信側計算機へのデータ送信間隔が所定の制限時間を経過しソケット毎送信タイマ641でタイムアウトが発生した場合に、ソケット毎送信タイマ641が送信側ハートビート処理部651を呼び出し、ハートビートパケットの送信を指示することにより実現する。具体的には、ソケット毎送信タイマ641でタイムアウトが発生すると、ソケット毎送信タイマ641からハートビート送信指示が送られ、送信側ハートビート処理部651は、ハートビート送信指示を取得することで、ソケット毎送信タイマ641でのタイムアウトの発生を検出する(S1101)。次にS1102で、ハートビートパケットを生成するとともに、対応する通信コネクションの受信側計算機へハートビートパケットを送信する。これをS1103で対応するソケットに送信データがない間、繰り返す。」との記載、及び図18によれば、送信側ハートビート処理は、ソケット毎送信タイマ(641)が所定の制限時間でタイムアウトした場合には、ハートビートパケット(存在確認パケット)が送信され(S1102)、送信データ(主信号)がある場合には送信データ(主信号)が送信される(S1103)ものである。ここで、所定の制限時間は、最長の送信間隔(無信号時間)になることは明らかであるから、本願発明のように「前記通信機器の送信側において、前記送出手段から前記存在確認パケットを送出することで最長無信号時間を保証し」ているということができることは当然である。

次に、上記相違点1及び3について検討する。
上記引用例の上記摘記事項ハ.の【0051】における前述の記載、及び図18によれば、送信データ(主信号)は、ハートビートパケット(存在確認パケット)の送信後、ソケットに送信データ(主信号)があるまで(S1103)待つことになるから、送信データ(主信号)が発生した場合、ソケット毎送信キュー(631)に滞留されることは自然なことであり、そして、上記引用例の上記摘記事項ニ.の【0067】における「データ送信装置は、本来のデータ通信を妨げられることなく」との記載を考慮すれば、送信データの本来のデータ通信(ワイヤレート)を妨げられないことが示唆されているから、本願発明のように「前記存在確認パケットの送出中に前記送出する主信号が発生した場合に当該主信号を前記バッファに滞留させることで主信号ワイヤレートを保証する」ことは当業者が容易になし得ることである。その際、引用発明は、「ソケット毎送信キュー(631)」であるところ、その容量について、ハートビートパケット(存在確認パケット)の大きさを勘案すれば、「前記存在確認パケット分のバッファ」とし、「主信号ワイヤレートを保証するとともに、前記存在確認パケット分のバッファを持つことで前記主信号ワイヤレートに影響なく、対向装置の存在を確認する」ことは当業者が適宜なし得ることである。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明から当業者が容易に予測できる範囲のものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-06-27 
結審通知日 2012-07-03 
審決日 2012-07-18 
出願番号 特願2007-48270(P2007-48270)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森谷 哲朗  
特許庁審判長 石井 研一
特許庁審判官 矢島 伸一
萩原 義則
発明の名称 通信システム、通信機器及びそれらに用いる対向装置存在確認方法並びにそのプログラム  
代理人 ▲柳▼川 信  

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