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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N |
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管理番号 | 1262463 |
審判番号 | 不服2012-8735 |
総通号数 | 154 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-10-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-05-14 |
確定日 | 2012-08-30 |
事件の表示 | 特願2007-249381「電子機器および録画システム」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 4月16日出願公開、特開2009- 81657〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.経緯 本件出願は、平成19年9月26日の出願であって、平成24年2月6日付けで拒絶査定がなされたものである。 本件は、上記拒絶査定を不服として平成24年5月14日付けで請求された拒絶査定不服審判であって、平成24年5月14日付けで手続補正(明細書、特許請求の範囲又は図面について請求と同時にする補正)がなされたものである。 2.本願発明 本件出願の特許請求の範囲の請求項1ないし11に係る発明は、平成24年5月14日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載されたとおりのものと認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」ともいう)は次のとおりである。 [本願発明](【請求項1】) 撮像部により撮像された人の顔が、予め登録された顔であることを認証可能で、予め登録されていない顔であることを認証可能な画像認証部と、 前記認証結果に応じて前記撮像した画像のデータ量を最適に変更する画像変更部と、 前記画像変更部が変更した画像を記憶する画像記憶部と、 を備えることを特徴とする、電子機器。 3.刊行物1 原査定の理由で示された刊行物1(特開2007-13480号公報)には、図面と共に次の記載がある。 (刊行物1の記載) 「【技術分野】 【0001】 本発明は、監視システム、監視方法、及び監視プログラムに関する。特に、本発明は、撮像画像のデータ量を効率的に低減する監視システム、監視方法、及び監視プログラムに関する。 【背景技術】 【0002】 近年、撮像装置を用いた監視装置が様々な場所に配置され、侵入者の検知等に用いられている。そして、予め撮像領域の基準画像を撮像して、当該基準画像と撮像画像とを比較することにより被写体の変化を検知する。基準画像と撮像画像との比較により、被写体の変化が検知された場合には、撮像装置の撮像領域内において被写体の動きに変化があったとして、撮像する画像の圧縮率を低くする装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。 【特許文献1】特開2002-335492号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0003】 監視装置は、撮像領域内で検知された人物の行動を監視することを目的として、広い領域の画像を取得することが要求される。更に、監視装置は、撮像領域内で検知された人物の特定をするために十分な画質の画像を取得することも併せて要求される。ここで、撮像領域内で検知された人物を特定する場合に、人物を特定するのに十分な高画質の画像で動画を撮像し続けると、動画を記憶するための記憶装置の容量が不足する場合がある。一方、撮像された動画をインターネット等により撮像装置の外部と通信する場合の通信トラフィックの軽減、及び動画を記憶するための記憶装置の容量を節約することを目的として、低画質の動画を撮像すると、撮像領域内で検知された人物を特定できない場合がある。 【0004】 特許文献1に記載の発明においては、撮像領域内において被写体の動きに変化があった場合には、被写体がどのような人物であっても撮像する画像の圧縮率が低く設定される。そして、被写体に動きがある間は、撮像する画像の圧縮率が低く設定されたまま撮像が続行される。しかしながら、特許文献1に記載の発明においては、被写体が誰であるかにかかわらず、また、被写体の人物を認証した後においても、被写体の動きがある間は撮像画像の圧縮率が低く設定されたままなので、撮像画像を通信により外部の装置に送信する場合における通信トラフィックが軽減されないという課題がある。更には、画像の圧縮率が低く設定されたままなので、撮像画像のデータ量を効率的に低減させることが困難な場合がある。 【0005】 そこで本発明は、上記課題を解決することができる監視システム、監視方法、及び監視プログラムを提供することを目的とする。この目的は特許請求の範囲における独立項に記載の特徴の組み合わせにより達成される。また従属項は本発明の更なる有利な具体例を規定する。」 「【発明を実施するための最良の形態】 【0017】 以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。 【0018】 図1は、本発明の一実施形態に係る監視システム100の概要を示す。監視システム100は、撮像装置12、画像出力装置72、及び人物認証装置200を備える。本実施形態に係る監視システム100は、撮像領域に含まれる人物の追従、及び当該人物の認証をすると共に、撮像された人物の認証後において、撮像画像のデータ量を低減させて、撮像画像を画像出力装置72、及び人物認証装置200等に送信する場合における、通信トラフィックを軽減することを目的とする。更には、監視システム100は、撮像画像のデータ量を低減させて、撮像画像を格納する容量を節約することを目的とする。 【0019】 監視システム100は、まず、撮像領域に人物900等の被写体が含まれているか否かを判断する。そして、監視システム100は、撮像領域に被写体が含まれていない場合においては、撮像されたフレーム画像のデータ量を低減させて格納する。監視システム100が、撮像領域に人物900が含まれていると判断した場合には、監視システム100は、人物900の人物認証をする。そして、監視システム100は、人物900が撮像されているフレーム画像のデータ量を低減させて格納する。また、監視システム100は、撮像装置12により撮像された人物900を含むフレーム画像が、人物認証装置200によって人物900を認証するために十分なフレーム画像であるか否かを判断する。人物認証装置200によって人物900を認証するために十分なフレーム画像が撮像された場合には、当該フレーム画像を格納して、人物認証装置200における人物認証に供してよい。一方、監視システム100は、当該フレーム画像に連続して撮像されている、人物900が含まれるフレーム画像のデータ量を低減して格納する。 【0020】 本実施形態に係る監視システム100によれば、撮像領域に人物900が含まれていない場合に、人物900が含まれていないフレーム画像のデータ量を低減できる。また、撮像領域に含まれる人物900の認証をした後に、認証後の人物900が含まれるフレーム画像のデータ量を低減できる。これにより、監視システム100は、フレーム画像のデータ量を低減できるので、フレーム画像を画像出力装置72、及び人物認証装置200に送信する場合の通信トラフィックを軽減できる。更に、監視システム100は、フレーム画像を格納する容量を効率的に低減しつつ、人物900の行動の監視、及び人物900の認証ができる。 【0021】 図2は、本実施形態に係る監視システム100の機能構成の一例を示す。また、図3は、本実施形態に係る監視システム100のデータ量低減フレーム選択部30の機能構成の一例を示す。監視システム100は、撮像部10、人物有無判断部20、データ量低減フレーム選択部30、データ量変換部40、フレーム画像置換部50、画像格納部60、及び画像出力部70を備える。また、データ量低減フレーム選択部30は、人物認証部302、及び認証画像格納部304を有する。 【0022】 撮像部10は、複数のフレーム画像を含む動画を撮像する。撮像部10は撮像された複数のフレーム画像を、画像格納部60に供給する。画像格納部60は、撮像部10から受け取った複数のフレーム画像を、フレーム画像を一意に識別できるフレーム画像識別子に対応づけて格納する。画像格納部60は、フレーム画像識別子、及びフレーム画像を、人物有無判断部20、データ量低減フレーム選択部30、及びデータ量変換部40に供給する。なお、撮像装置12は、撮像部10の一例である。 【0023】 人物有無判断部20は、撮像部10において撮像された複数のフレーム画像のそれぞれに人物が含まれるか否かを判断する。人物有無判断部20は、輪郭抽出処理、及び色分布分析処理等の画像処理により、フレーム画像に含まれる被写体を検出する。そして、人物有無判断部20は、予め人物の顔に固有の特徴量を格納してよい。人物の顔に固有の特徴量は、例えば、顔の輪郭、目、鼻、口、眉、及びこれらの顔に含まれる部位間の距離等であってよい。人物有無判断部20は、フレーム画像に含まれる被写体から、人物の顔に固有の特徴量をマッチング等により検出して、被写体が人物であるか否かを判断してよい。人物有無判断部20は、人物が含まれていると判断されたフレーム画像のフレーム画像識別子を、データ量低減フレーム選択部30に供給する。一方、人物有無判断部20は、人物が含まれていないと判断されたフレーム画像のフレーム画像識別子を、データ量変換部40に供給する。 【0024】 データ量低減フレーム選択部30は、人物有無判断部20から受け取ったフレーム画像識別子、及び画像格納部60から受け取った複数のフレームに基づいて、データ量を低減させるフレーム画像を選択する。データ量低減フレーム選択部30は、人物認証部302、及び認証画像格納部304を有していてよい。認証画像格納部304は、人物の顔画像を一意に識別できる識別子に対応づけて、人物の顔画像を予め格納する。人物の顔画像は、人物を正面から捉えた画像、及び人物の横顔の画像等であってよい。認証画像格納部304は、人物の顔画像を人物認証部302に供給する。人物認証部302は、人物有無判断部20から受け取ったフレーム画像識別子に対応付けられるフレーム画像を、画像格納部60から受け取る。 【0025】 そして、人物認証部302は、画像格納部60から受け取ったフレーム画像に含まれる人物の顔画像と、認証画像格納部304から受け取った人物の顔画像とを比較して、フレーム画像に含まれる人物が予め登録されているか否かを判断する。人物認証部302は、例えば、画像格納部60から受け取ったフレーム画像から、人物の顔画像を、肌色抽出等の画像処理により抽出する。そして、人物認証部302は、フレーム画像から抽出された人物の顔画像と、認証画像格納部304から受け取った人物の顔画像とをマッチングして、人物認証をしてよい。人物認証部302は、撮像部10において撮像された複数のフレーム画像のそれぞれに含まれる人物が、予め登録された人物であると認証した場合には、当該人物が含まれるフレーム画像識別子を選択して、データ量変換部40へ供給する。 【0026】 データ量変換部40は、撮像部10において撮像されたフレーム画像に含まれる人物が、人物認証部302によって認証された場合に、当該フレーム画像のデータ量を低減させる。一方、データ量変換部40は、人物有無判断部20から人物が含まれていないと判断されたフレーム画像のフレーム画像識別子を受け取った場合には、当該フレーム画像識別子に対応するフレーム画像のデータ量を低減させる。データ量変換部40は、人物認証部302から受け取ったフレーム画像識別子に対応するフレーム画像、及び人物有無判断部20から受け取ったフレーム画像識別子に対応するフレーム画像を、画像格納部60から受け取る。そして、データ量変換部40は、画像格納部60から受け取ったフレーム画像のデータ量を低減させる処理をする。 【0027】 データ量変換部40は、フレーム画像の階調を下げる、フレーム画像の圧縮率を上げる、及びフレーム画像の解像度を下げること等によりフレーム画像のデータ量を低減してよい。また、データ量変換部40は、撮像部10において撮像されたフレーム画像に含まれる人物の画像領域を、予め定められたテンプレート画像に置き換えてもよい。データ量変換部40は、人物の画像領域を、例えば、予め定められた色が施されたテンプレート画像に置換してよい。データ量変換部40は、データ量を低減させたフレーム画像、及び当該データ量を低減させたフレーム画像に対応する、データ量を低減させる前のフレーム画像に対応付けられたフレーム画像識別子を、フレーム画像置換部50に供給する。 【0028】 フレーム画像置換部50は、撮像部10において撮像された複数のフレーム画像のうち、人物認証部302において人物認証が成立したフレーム画像を、データ量変換部40がデータ量を低減させたフレーム画像に置き換える。すなわち、フレーム画像置換部50は、データ量変換部40から受け取ったデータ量を低減させたフレーム画像と、データ量変換部40から受け取ったフレーム画像識別子に対応する、画像格納部60に格納されているフレーム画像とを置き換える。そして、画像格納部60は、データ量を低減させたフレーム画像を、当該フレーム画像を一意に識別できるフレーム画像識別子に対応づけてフレーム画像を格納する。続いて、画像格納部60は、フレーム画像を画像出力部70に供給する。画像出力部70は、画像格納部60から受け取ったフレーム画像を、例えば、モニタ等に出力する。なお、画像出力装置72は、画像出力部70の一例である。 【0029】 本実施形態に係る監視システム100によれば、撮像されたフレーム画像に含まれる人物が予め登録された人物であると判断された場合に、当該人物が撮像されたフレーム画像のデータ量を低減して、既に格納したフレーム画像と置き換えることができる。これにより、監視システム100は、フレーム画像に含まれる人物の行動の監視、及び当該人物の認証ができると共に、フレーム画像を画像出力装置72等に送信する場合の、通信トラフィックを軽減できる。更に、監視システム100は、フレーム画像を格納する容量を効率的に低減できる。」 (刊行物1の記載、以上) 以上の記載によると、刊行物1には、 「監視装置は、撮像領域内で検知された人物の行動を監視することを目的として、広い領域の画像を取得することが要求される。更に、監視装置は、撮像領域内で検知された人物の特定をするために十分な画質の画像を取得することも併せて要求される。ここで、撮像領域内で検知された人物を特定する場合に、人物を特定するのに十分な高画質の画像で動画を撮像し続けると、動画を記憶するための記憶装置の容量が不足する場合がある。一方、撮像された動画をインターネット等により撮像装置の外部と通信する場合の通信トラフィックの軽減、及び動画を記憶するための記憶装置の容量を節約することを目的として、低画質の動画を撮像すると、撮像領域内で検知された人物を特定できない場合がある。」(【0003】) 「特許文献1に記載の発明においては、撮像領域内において被写体の動きに変化があった場合には、被写体がどのような人物であっても撮像する画像の圧縮率が低く設定される。そして、被写体に動きがある間は、撮像する画像の圧縮率が低く設定されたまま撮像が続行される。しかしながら、特許文献1に記載の発明においては、被写体が誰であるかにかかわらず、また、被写体の人物を認証した後においても、被写体の動きがある間は撮像画像の圧縮率が低く設定されたままなので、撮像画像を通信により外部の装置に送信する場合における通信トラフィックが軽減されないという課題がある。更には、画像の圧縮率が低く設定されたままなので、撮像画像のデータ量を効率的に低減させることが困難な場合がある。」(【0004】) ことを課題として「監視システム100」に関する発明が記載されており、図2の「データ量低減フレーム選択部30」に図3の構成を採用した一実施形態を刊行物1に記載された発明(以下、「刊行物1発明」ともいう)として認定する。 [刊行物1発明] 刊行物1の「監視システム100」は、 「撮像領域に含まれる人物の追従、及び当該人物の認証をすると共に、撮像された人物の認証後において、撮像画像のデータ量を低減させて、撮像画像を画像出力装置72、及び人物認証装置200等に送信する場合における、通信トラフィックを軽減することを目的とする。更には、監視システム100は、撮像画像のデータ量を低減させて、撮像画像を格納する容量を節約することを目的とする。」(【0018】) 「撮像されたフレーム画像に含まれる人物が予め登録された人物であると判断された場合に、当該人物が撮像されたフレーム画像のデータ量を低減して、既に格納したフレーム画像と置き換えることができる。これにより、監視システム100は、フレーム画像に含まれる人物の行動の監視、及び当該人物の認証ができると共に、フレーム画像を画像出力装置72等に送信する場合の、通信トラフィックを軽減できる。更に、監視システム100は、フレーム画像を格納する容量を効率的に低減できる。」(【0029】) そして、 「まず、撮像領域に人物900等の被写体が含まれているか否かを判断する。そして、監視システム100は、撮像領域に被写体が含まれていない場合においては、撮像されたフレーム画像のデータ量を低減させて格納する。監視システム100が、撮像領域に人物900が含まれていると判断した場合には、監視システム100は、人物900の人物認証をする。そして、監視システム100は、人物900が撮像されているフレーム画像のデータ量を低減させて格納する。」(【0019】) 刊行物1の「監視システム100」は、 「撮像部10、人物有無判断部20、データ量低減フレーム選択部30、データ量変換部40、フレーム画像置換部50、画像格納部60、及び画像出力部70を備える。また、データ量低減フレーム選択部30は、人物認証部302、及び認証画像格納部304を有する。」(【0021】、図2、図3) 「撮像部10は、複数のフレーム画像を含む動画を撮像する。撮像部10は撮像された複数のフレーム画像を、画像格納部60に供給する。画像格納部60は、撮像部10から受け取った複数のフレーム画像を、フレーム画像を一意に識別できるフレーム画像識別子に対応づけて格納する。画像格納部60は、フレーム画像識別子、及びフレーム画像を、人物有無判断部20、データ量低減フレーム選択部30、及びデータ量変換部40に供給する。」(【0022】) 「人物有無判断部20は、撮像部10において撮像された複数のフレーム画像のそれぞれに人物が含まれるか否かを判断する。・・・人物有無判断部20は、人物が含まれていると判断されたフレーム画像のフレーム画像識別子を、データ量低減フレーム選択部30に供給する。一方、人物有無判断部20は、人物が含まれていないと判断されたフレーム画像のフレーム画像識別子を、データ量変換部40に供給する。」(【0023】) 「データ量低減フレーム選択部30は、人物有無判断部20から受け取ったフレーム画像識別子、及び画像格納部60から受け取った複数のフレームに基づいて、データ量を低減させるフレーム画像を選択する。データ量低減フレーム選択部30は、人物認証部302、及び認証画像格納部304を有していてよい。認証画像格納部304は、人物の顔画像を一意に識別できる識別子に対応づけて、人物の顔画像を予め格納する。・・・認証画像格納部304は、人物の顔画像を人物認証部302に供給する。人物認証部302は、人物有無判断部20から受け取ったフレーム画像識別子に対応付けられるフレーム画像を、画像格納部60から受け取る。」(【0024】) 「人物認証部302は、画像格納部60から受け取ったフレーム画像に含まれる人物の顔画像と、認証画像格納部304から受け取った人物の顔画像とを比較して、フレーム画像に含まれる人物が予め登録されているか否かを判断する。・・・人物認証部302は、撮像部10において撮像された複数のフレーム画像のそれぞれに含まれる人物が、予め登録された人物であると認証した場合には、当該人物が含まれるフレーム画像識別子を選択して、データ量変換部40へ供給する。」(【0025】) 「データ量変換部40は、撮像部10において撮像されたフレーム画像に含まれる人物が、人物認証部302によって認証された場合に、当該フレーム画像のデータ量を低減させる。一方、データ量変換部40は、人物有無判断部20から人物が含まれていないと判断されたフレーム画像のフレーム画像識別子を受け取った場合には、当該フレーム画像識別子に対応するフレーム画像のデータ量を低減させる。データ量変換部40は、人物認証部302から受け取ったフレーム画像識別子に対応するフレーム画像、及び人物有無判断部20から受け取ったフレーム画像識別子に対応するフレーム画像を、画像格納部60から受け取る。そして、データ量変換部40は、画像格納部60から受け取ったフレーム画像のデータ量を低減させる処理をする。」(【0026】) 「データ量変換部40は、フレーム画像の階調を下げる、フレーム画像の圧縮率を上げる、及びフレーム画像の解像度を下げること等によりフレーム画像のデータ量を低減してよい。・・・データ量変換部40は、データ量を低減させたフレーム画像、及び当該データ量を低減させたフレーム画像に対応する、データ量を低減させる前のフレーム画像に対応付けられたフレーム画像識別子を、フレーム画像置換部50に供給する。」(【0027】) 「フレーム画像置換部50は、撮像部10において撮像された複数のフレーム画像のうち、人物認証部302において人物認証が成立したフレーム画像を、データ量変換部40がデータ量を低減させたフレーム画像に置き換える。すなわち、フレーム画像置換部50は、データ量変換部40から受け取ったデータ量を低減させたフレーム画像と、データ量変換部40から受け取ったフレーム画像識別子に対応する、画像格納部60に格納されているフレーム画像とを置き換える。そして、画像格納部60は、データ量を低減させたフレーム画像を、当該フレーム画像を一意に識別できるフレーム画像識別子に対応づけてフレーム画像を格納する。続いて、画像格納部60は、フレーム画像を画像出力部70に供給する。画像出力部70は、画像格納部60から受け取ったフレーム画像を、例えば、モニタ等に出力する。」(【0028】) 3.対比 本願発明と刊行物1発明とを対比する。 (1)「撮像部により撮像された人の顔が、予め登録された顔であることを認証可能で、予め登録されていない顔であることを認証可能な画像認証部」 刊行物1発明は、 「人物有無判断部20は、撮像部10において撮像された複数のフレーム画像のそれぞれに人物が含まれるか否かを判断する。」 「人物有無判断部20は、人物が含まれていると判断されたフレーム画像のフレーム画像識別子を、データ量低減フレーム選択部30に供給する。」 「データ量低減フレーム選択部30は、人物有無判断部20から受け取ったフレーム画像識別子、及び画像格納部60から受け取った複数のフレームに基づいて、データ量を低減させるフレーム画像を選択する。データ量低減フレーム選択部30は、人物認証部302、及び認証画像格納部304を有していてよい。認証画像格納部304は、人物の顔画像を一意に識別できる識別子に対応づけて、人物の顔画像を予め格納する。」 「認証画像格納部304は、人物の顔画像を人物認証部302に供給する。人物認証部302は、人物有無判断部20から受け取ったフレーム画像識別子に対応付けられるフレーム画像を、画像格納部60から受け取る。」 「人物認証部302は、画像格納部60から受け取ったフレーム画像に含まれる人物の顔画像と、認証画像格納部304から受け取った人物の顔画像とを比較して、フレーム画像に含まれる人物が予め登録されているか否かを判断する。」 「人物認証部302は、撮像部10において撮像された複数のフレーム画像のそれぞれに含まれる人物が、予め登録された人物であると認証した場合には、当該人物が含まれるフレーム画像識別子を選択して、データ量変換部40へ供給する。」 「データ量変換部40は、撮像部10において撮像されたフレーム画像に含まれる人物が、人物認証部302によって認証された場合に、当該フレーム画像のデータ量を低減させる。」 「フレーム画像置換部50は、撮像部10において撮像された複数のフレーム画像のうち、人物認証部302において人物認証が成立したフレーム画像を、データ量変換部40がデータ量を低減させたフレーム画像に置き換える。」 ここで、認証についてみると、 「人物が含まれていると判断された」「フレーム画像に含まれる人物の顔画像と、認証画像格納部304から受け取った人物の顔画像とを比較して、フレーム画像に含まれる人物が予め登録されているか否かを判断」し、「撮像部10において撮像された複数のフレーム画像のそれぞれに含まれる人物が、予め登録された人物であると認証した場合には、当該人物が含まれるフレーム画像識別子を選択して、データ量変換部40へ供給」し、その後、「人物認証部302において人物認証が成立したフレーム画像を、データ量変換部40がデータ量を低減させたフレーム画像に置き換え」ている。 この認証で「人物が含まれていると判断された」「フレーム画像」に「予め登録された人物であると認証した」「人物認証が成立した」場合、「データ量を低減」及びそれに続く特定の動作が行われ、このことは「予め登録された人物であると認証」「人物認証が成立」の判断を成しているといえるから、「撮像部により撮像された人の顔が、予め登録された顔であることを認証」するといえる。 刊行物1は、刊行物1発明の説明に、「予め登録された人物でない」場合について、直接説明していないが、刊行物1発明が、 「監視装置は、撮像領域内で検知された人物の特定をするために十分な画質の画像を取得することも併せて要求される。ここで、撮像領域内で検知された人物を特定する場合に、人物を特定するのに十分な高画質の画像で動画を撮像し続けると、動画を記憶するための記憶装置の容量が不足する場合がある。一方、撮像された動画をインターネット等により撮像装置の外部と通信する場合の通信トラフィックの軽減、及び動画を記憶するための記憶装置の容量を節約することを目的として、低画質の動画を撮像すると、撮像領域内で検知された人物を特定できない場合がある。」 「特許文献1に記載の発明においては、撮像領域内において被写体の動きに変化があった場合には、被写体がどのような人物であっても撮像する画像の圧縮率が低く設定される。そして、被写体に動きがある間は、撮像する画像の圧縮率が低く設定されたまま撮像が続行される。しかしながら、特許文献1に記載の発明においては、被写体が誰であるかにかかわらず、また、被写体の人物を認証した後においても、被写体の動きがある間は撮像画像の圧縮率が低く設定されたままなので、撮像画像を通信により外部の装置に送信する場合における通信トラフィックが軽減されないという課題がある。」 を課題とし、 「低画質の動画を撮像すると、撮像領域内で検知された人物を特定できない」「被写体がどのような人物であっても撮像する画像の圧縮率が低く設定される」ことを解決するために、「人物が含まれていると判断された」「フレーム画像」に「予め登録された人物であると認証した」「人物認証が成立した」場合、「データ量を低減」しているから、「被写体がどのような人物」であるかの「どのような」を「予め登録された人物」「予め登録された人物でない(人物)」として判断するものと認められる。 刊行物1発明では当然に「予め登録された人物」だけでなく「予め登録された人物でない(人物)」が想定され、刊行物1発明はそのような「予め登録された人物でない(人物)」に対して「データ量を低減」しないことで、「人物を特定するのに十分な高画質の画像」を残そうとするものと理解できる。 すなわち、刊行物1発明は「予め登録された人物でない(人物)」に対して「データ量を低減」しない発明と理解できる。このことは、「予め登録された人物でない(人物)」に対して「予め登録された人物でない」との判断を成し、その判断の下に「データ量を低減」しないように動作(「当該人物が含まれるフレーム画像識別子を選択して、データ量変換部40へ供給」しない)すると認められる。 そうであるから、刊行物1発明は「撮像部により撮像された人の顔が、予め登録されていない顔であることを認証」するといえる。 以上のように理解されるから、刊行物1発明は、「撮像部により撮像された人の顔が、予め登録された顔であることを認証可能で、予め登録されていない顔であることを認証可能な画像認証部」を備えるといえる。 (2)「前記認証結果に応じて前記撮像した画像のデータ量を最適に変更する画像変更部」 本願発明は、「画像変更部」で「前記撮像した画像のデータ量を最適に変更する」のを、「撮像部により撮像された人の顔が、予め登録された顔であることを認証可能で、予め登録されていない顔であることを認証可能な画像認証部」での「前記認証結果に応じて」行う。 そして、「撮像部により撮像された人の顔が、予め登録された顔であることを認証可能で、予め登録されていない顔であることを認証可能な画像認証部」での「前記認証結果」は、当然に、「予め登録された顔であることを認証」した認証結果と「予め登録されていない顔であることを認証」した認証結果とであると認められ、「画像変更部」での「前記撮像した画像のデータ量を最適に変更」は、「予め登録された顔であることを認証」した認証結果と「予め登録されていない顔であることを認証」した認証結果とで「変更」が成されると認められる。 刊行物1発明は、上記(1)でも述べたように、顔認識によって「データ量を低減」すなわち「データ量の」「変更」が成されるのは、「予め登録された人物であると認証した」「人物認証が成立した」場合であって、本願発明の上記「予め登録された顔であることを認証」した認証結果で「変更」が成されることと同じであるとはいえるところ、 刊行物1発明は、「予め登録された人物でない(人物)」に対しては「データ量を低減」しない、すなわち、「データ量の」「変更」が成されないのであるから、刊行物1発明は、本願発明が「データ量の」「変更」を「予め登録されていない顔であることを認証」した認証結果で成す構成を有さない。 そして、刊行物1発明で「データ量を低減」するのは、当然に低減されるフレームに対して、監視及び格納容量の低減の観点から「最適に」なされるといえる。 このようであるから、本願発明と刊行物1発明とは、 「前記“予め登録された顔であることの”認証結果に応じて前記撮像した画像のデータ量を最適に変更する画像変更部」を備える点で一致するといえる。 そして、 本願発明の「画像変更部」は、“予め登録された顔であることの”認証結果に加えて、“予め登録されていない顔であることの”認証結果でも「データ量を最適に変更」することに対して、 刊行物1発明は、「データ量の」「変更」が成されない点で相違する。 (3)「前記画像変更部が変更した画像を記憶する画像記憶部」 「画像格納部60」は、「撮像部10」からの画像のフレームを格納するが、「データ量変換部40」によってデータ量が変換されたフレームに「フレーム画像置換部50」によって置換され、データ量が変更されて格納される。そして、「画像出力部70」へ出力するのは、データ量が変換されたフレームに変更されて格納されてから出力される。この出力される画像は、出力されるためにそのまま「画像格納部60」に残ると認められるから、監視のための記録として記憶されるのは、この出力される画像であると認められる。すなわち、「画像格納部60」は「前記画像変更部が変更した画像を」置換した画像を「監視のための記録として記憶」するといえ、「前記画像変更部が変更した画像を記憶する画像記憶部」といいうる。 (4)「電子機器」 刊行物1発明の監視システム100は図8に図示されるようにホストコントローラなどを有する構成を有し、「電子機器」といいうる。 (5)一致点相違点 以上の対比によると、本願発明と刊行物1発明との一致点、相違点は次のとおりである。 [一致点] 撮像部により撮像された人の顔が、予め登録された顔であることを認証可能で、予め登録されていない顔であることを認証可能な画像認証部と、 前記“予め登録された顔であることの”認証結果に応じて前記撮像した画像のデータ量を最適に変更する画像変更部と、 前記画像変更部が変更した画像を記憶する画像記憶部と、 を備えることを特徴とする、電子機器。 [相違点] 本願発明の「画像変更部」は、“予め登録された顔であることの”認証結果に加えて、“予め登録されていない顔であることの”認証結果でも「データ量を最適に変更」することに対して、刊行物1発明は、「データ量の」「変更」が成されない点。 4.判断 通常、監視システムで撮像した画像を記録する場合、記録容量を考慮して、監視に必要な画質を確保して、撮像した画像のデータ量を変更して少なくすることは普通に考慮されるものであると共に、その変更も画像の重要性に対応して調整することも周知である。次の文献A、B、C参照。 文献A:特開平4-219090号公報 30フレームの映像信号は、「十分に侵入者の行動を把握できる」3フレームで記録される。【0011】 文献B:特開平8-111859号公報 画像信号の変化が大きい場合は、圧縮率を下げ、変化がない場合は圧縮率を上げる。【0012】 文献C:特開2001-251607号公報 撮像された30フレームの画像は、異常レベルにより、2ないし0.1フレーム(図3)にされる。 監視システムである刊行物1発明では、「予め登録されていない顔であること」の「認証」がなされた場合は、「前記撮像した画像のデータ量」の変更を行わず、「予め登録されていない顔であること」の「認証」がなされたフレームは置換されずそのまま記録され、「予め登録されていない顔であること」の「認証」がなされたフレームは監視において重要なフレームと考えられているところ、 上記のように、監視システムで撮像した画像を記録する場合、記録容量を考慮して、監視に必要な画質を確保して、撮像した画像のデータ量を変更して少なくすることは普通に考慮されるものであると共に、その変更も画像の重要性に対応して調整することも周知であるから、当業者においては、刊行物1発明で重要なフレームと考えられている「予め登録されていない顔であること」の「認証」がなされたフレームについても、記録容量を考慮して、監視の必要性に応じて、更に、撮像した画像のデータ量を変更して少なくすることを容易に想到することができると認められる。 その際、「予め登録されていない顔であること」の「認証」がなされたフレームは監視対象として重要であるから、データ量変換部での変換を「予め登録された顔であること」の「認証」がなされたフレームに対する変換と異ならせ、重要な監視対象に必要な画質が残るよう、「予め登録された顔」に対するデータ量より大きいデータ量となるよう変換するのは自然である。 そのようにすることで、刊行物1発明において、「予め登録されていない顔であること」の「認証」がなされた場合に「前記撮像した画像のデータ量」の変更を行わないところを、記憶容量を考慮して、監視の必要性に応じて「予め登録されていない顔であること」の「認証」がなされた場合においても、「予め登録された顔であること」の「認証」がなされた場合よりも大きいデータ量となるように、「撮影した画像のデータ量を最適に変更」するようにし、本願発明の構成とすることは当業者にとって容易に想到できることである。 また、本願発明の効果も予測できるものと認められる。 したがって、本願発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.むすび 以上のとおり、本件出願の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者か容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、本件出願の請求項2ないし11に係る発明を検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-06-28 |
結審通知日 | 2012-07-03 |
審決日 | 2012-07-17 |
出願番号 | 特願2007-249381(P2007-249381) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 宮下 誠 |
特許庁審判長 |
奥村 元宏 |
特許庁審判官 |
松尾 淳一 藤内 光武 |
発明の名称 | 電子機器および録画システム |
代理人 | 特許業務法人 アクア特許事務所 |