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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08J
管理番号 1262473
審判番号 不服2010-10440  
総通号数 154 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-05-17 
確定日 2012-08-31 
事件の表示 特願2004-116136「架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シート及び粘着テープ」拒絶査定不服審判事件〔平成16年11月18日出願公開、特開2004-323842〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成16年4月9日(先の出願に基づく優先権主張,平成15年4月11日)の特許出願であって,平成21年9月2日付けで拒絶理由が通知され,同年10月30日に意見書が提出されるとともに手続補正がされ,同年11月19日付けで拒絶理由が通知され,平成22年1月22日に意見書が提出されたが,同年2月9日付けで平成21年11月19日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって拒絶査定がされた。これに対して,平成22年5月17日に拒絶査定不服の審判が請求されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成21年10月30日の手続補正により補正された特許請求の範囲及び明細書の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「重合触媒として四価の遷移金属を含むメタロセン化合物を用いて得られたポリエチレン系樹脂を40重量%以上含有するポリオレフィン系樹脂及び熱分解型発泡剤からなる発泡性樹脂組成物を押出機に供給して溶融混練し押出機から押出して得られた発泡性樹脂シートを架橋させた上で発泡,延伸させてなる架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートであって,架橋度が5?60重量%であり,且つ,シート押出方向の平均気泡径とシート厚さ方向の平均気泡径との比(シート押出方向の平均気泡径/シート厚さ方向の平均気泡径)が2.5?7であると共に,シート押出方向の平均気泡径とシート幅方向の平均気泡径との比(シート押出方向の平均気泡径/シート幅方向の平均気泡径)が2?6であることを特徴とする架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シート。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,要するに,本願発明は,下記引用文献1に記載された発明(以下「引用発明」という。)及び下記引用文献2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。(なお,原査定の拒絶の理由は,上述のほか,本願の請求項2に係る発明は上記規定により特許を受けることができないという理由も含む。)
引用文献1: 特開平9-157601号公報
引用文献2: 特開平11-92583号公報

第4 合議体の認定,判断
1 引用発明
(1) 査定の理由に引用された本願の優先日前に頒布された上記引用文献1には,次の記載がある。(下線は審決で付記。以下同じ。)
「重合触媒として4価の遷移金属を含むメタロセン化合物を用いて得られたポリエチレン系樹脂を架橋させ発泡させてなり,見掛け密度が0.02?0.33g/cm^(3) ,ゲル分率が12?70重量%の架橋ポリエチレン系樹脂発泡体からなる粘着テープ基材。」(【請求項1】)
「この発明は,上記の問題を解決するもので,その目的とするところは,臭気がなく柔軟性や機械的強度に優れ,しかも耐溶剤性に優れた架橋ポリエチレン系樹脂発泡体からなる粘着テープ基材を提供することにある。」(【0005】)
「この発明で使用するポリエチレン系樹脂は,重合触媒として4価の遷移金属を含むメタロセン化合物を用いて,エチレンを単独重合するか,或いはエチレンとα-オレフィンとを共重合して得られたポリエチレン系樹脂である。α-オレフィンとしては,プロピレン,1-ブテン,1-ペンテン,1-ヘキセン,4-メチル-1-ペンテン,1-ヘプテン,1-オクテン等が挙げられる。」(【0007】)
「この発明の粘着テープ基材に用いる架橋ポリエチレン系樹脂発泡体を製造するには,例えば,次のような方法が好適に採用される。先ず,上記のポリエチレン系樹脂に,熱分解型発泡剤を配合し,発泡剤が分解しない温度で溶融混練して発泡性シートを成形し,これに電離性放射線を照射して樹脂を架橋させた後,加熱し発泡させる方法により製造される。」(【0028】)
「ここで,発泡性シートの架橋度は,ゲル分率で12?70重量%,好ましくは20?60重量%,さらに好ましくは20?45重量%に調節される。ゲル分率が12重量%未満であると,発泡時の樹脂の粘度が低すぎて発泡性が悪くなり,逆にゲル分率が70重量%を超えると,発泡時の樹脂の伸びが不足して発泡性が悪くなる。ゲル分率の調節は,主に電離性放射線の照射線量或いは有機過酸化物の配合量の調節によって行われる。
なお,上記発泡性シートのゲル分率は,この発泡性シートを用いて得られる発泡体においても同じ値を示す。このような発泡性シート及び発泡体のゲル分率は,具体的には,発泡性シート又は発泡体(0.2g)を精密に秤量し,これを120℃のキシレン50ml中に24時間浸漬し,その後200メッシュの金網で濾過し,金網上の不溶解分を真空乾燥し,この不溶解分の重量を上記発泡性シート又は発泡体(0.2g)の精密な秤量に対する重量百分率で表した値で示される。」(【0033】?【0034】)
「…実施例1
重合触媒としてメタロセン化合物を用いて得られたポリエチレン系樹脂(エクソン・ケミカル社製のEXACT3027)(密度が0.900g/cm^(3),重量平均分子量/数平均分子量が2.0)100重量部に,発泡剤としてアゾジカルボンアミド5重量部を混合し,これを押出装置により170℃で溶融混練し発泡性のシートに押出成形した。
上記発泡性のシートに2.6Mradの線量の電子線を照射して,ポリエチレン系樹脂を架橋させた。この架橋シートを250℃のオーブン中を連続的に通して加熱発泡させて,厚さ約1mmの架橋ポリエチレン系樹脂発泡シートを得た。得られた発泡シートは柔軟で均一な独立気泡を有するものであった。
この発泡シートについて,JIS K6767により見掛け密度,引張強さ,伸びを測定した。その結果を表1に示す。さらに,ゲル分率,臭気,耐溶剤性を表1に示す。耐溶剤性は,30℃のトルエン中に24時間浸漬した後の外観を目視で判定した。」(【0037】?【0039】)

(2) 上記(1)のとおり,引用文献1には,その請求項1に記載された架橋ポリエチレン系樹脂発泡体からなる粘着テープ基材について,当該テープ基材は,【0028】に記載の如く,発泡性シートを成形することを経て製造されるものであることなどを総合すると,引用発明は次のとおりのものと認める。
「重合触媒として4価の遷移金属を含むメタロセン化合物を用いて得られたポリエチレン系樹脂に熱分解型発泡剤を配合したものを溶融混練し押出成形した発泡性シートを架橋させ発泡させてなり,見掛け密度が0.02?0.33g/cm^(3) ,ゲル分率が12?70重量%の架橋ポリエチレン系樹脂発泡体からなるシート」

2 対比
本願発明と引用発明を対比すると,引用発明の「ポリエチレン系樹脂」は重合触媒として4価の遷移金属を含むメタロセン化合物を用いて得られたものであるから(【請求項1】,【0007】),本願発明の「重合触媒として四価の遷移金属を含むメタロセン化合物を用いて得られたポリエチレン系樹脂を40重量%以上含有するポリオレフィン系樹脂」に相当するものであるといえ,また,「ポリエチレン系樹脂に熱分解型発泡剤を配合したもの」は「ポリオレフィン系樹脂及び熱分解型発泡剤からなる発泡性樹脂組成物」に相当する。
また,引用発明の「ゲル分率」は,引用文献1の【0033】,【0034】によれば,発泡体の架橋度の一指標であると解されること,さらに,同【0034】では当該ゲル分率が定義されているところ,この定義は本願発明の架橋度の定義(本願明細書の【0028】)と異ならないことからすると,引用発明の「ゲル分率」は本願発明の「架橋度」に相当し,両者は12?60重量%の範囲で重複するといえる。
そうすると,本願発明と引用発明との一致する点(一致点),相違する点(相違点1及び2)はそれぞれ次のとおりである。
・ 一致点
「重合触媒として四価の遷移金属を含むメタロセン化合物を用いて得られたポリエチレン系樹脂を40重量%以上含有するポリオレフィン系樹脂及び熱分解型発泡剤からなる発泡性樹脂組成物を押出機に供給して溶融混練し押出機から押出して得られた発泡性樹脂シートを架橋させた上で発泡させてなる架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シート」
・ 相違点1
「本願発明は押出成形した発泡性樹脂シートを架橋させた上で発泡,延伸させてなることを特定するものであるのに対し,引用発明は延伸させてなることを特定しない点」
・ 相違点2
「本願発明はシート押出方向の平均気泡径とシート厚さ方向の平均気泡径との比(シート押出方向の平均気泡径/シート厚さ方向の平均気泡径)が2.5?7であると共に,シート押出方向の平均気泡径とシート幅方向の平均気泡径との比(シート押出方向の平均気泡径/シート幅方向の平均気泡径)が2?6であることを特定するものであるのに対し,引用発明はそのような特定がない点」(以下,「シート押出方向の平均気泡径/シート厚さ方向の平均気泡径」を「MD/ZD平均気泡径比」,「シート押出方向の平均気泡径/シート幅方向の平均気泡径」を「MD/CD平均気泡径比」,これら2つの平均気泡径比をあわせて単に「平均気泡径比」という場合がある。)

3 相違点についての判断
上記相違点について,以下検討する。
(1) 本願発明における延伸(相違点1に係る構成)と平均気泡径比(相違点2に係る構成)との関連性について
ア 本願明細書の記載,特に実施例1?2,比較例1?3,【0063】,【0064】の記載を総合すると,本願発明の平均気泡径比は,発泡性樹脂シートを発泡炉に供給する速度と発泡炉から出てきた発泡シートを巻き取る速度との比(速度比),すなわち,発泡シートのシート押出方向(MD)への延伸により制御,調整されるものであると解される(このことは,例えば,MD延伸倍率(速度比)が大きくなればなるほどMD/ZD平均気泡径比とMD/CD平均気泡径比とがともに大きくなること(実施例1?2,比較例1),同じ延伸倍率のときには同じ平均気泡径比を呈すること(実施例1,比較例3)からも明らかである。)。
また,発泡シートをMD方向へ延伸したとき,シート内部の気泡形状がZD,CD方向よりもMD方向に伸びた形状となるのは,技術常識である。
そうすると,本願発明において,どの程度の倍率で延伸したときに平均気泡径比の値がどの程度となるか定かでないが,本願発明は,MD延伸の程度を,その倍率ではなく,平均気泡径比で特定したにすぎないものであるといえる。
イ 以下,上記アのとおり,本願発明の相違点1に係る構成と相違点2に係る構成とが密接に関連するものであることに鑑み,相違点1と相違点2とを併せて検討する。

(2) 引用文献2の記載
引用文献2には,以下の記載がある。
「脂肪族ポリエステル系樹脂発泡体の一軸延伸物からなり,その長手方向の引張破断強度が0.5?5.0g/dであり,その密度が0.06?0.4g/cm^(3)であり,その断面積が1?100mm^(2)であることを特徴とする紐状物,糸状物又はテープ状物。」(【請求項1】)
「自然環境中に廃棄されたり土中に埋立てられた場合に,微生物によって分解減容化されるプラスチックとしては,脂肪族ポリエステル系樹脂が知られているが,これらの用途は主に非発泡のフィルムやブロー成形品等である。その発泡体に関しては,緩衡材,断熱剤,食品容器等としての用途に止まり,機械的強度の不十分さ等の点から,高い引張強度等を要する紐状物,糸状物又はテープ状物への利用は未だ行われていない。」(【0003】)
「本発明は,引張り強度に優れるとともに,高クッション性と生分解性を兼ね備えた紐状物,糸状物又はテープ状物,並びにそれを用いてなるシート状物を提供することをその課題とする。」(【0004】)
「本発明の紐状物等は,前記脂肪族ポリエステル系樹脂発泡体を加熱し,一軸延伸して製造される。延伸装置としては通常の一軸延伸装置を用いることができる。加熱装置としては,加熱ロール,加熱板,熱風循環炉,輻射加熱ヒーター,加熱槽(エチレングリコール,グリセリン等使用)等いずれをも用いることができる。延伸は加熱装置の前後に設けられた低速及び高速のロール間でその速度差に基づいて行われる。この場合ロールの速度差を変えることによって任意の延伸倍率が得られる。延伸は,前記樹脂発泡体の製造工程に連結させてオンラインで行ってもよく,あるいは一度巻き取った後オフラインで行ってもよい。…」(【0010】)
「本発明の紐状物等を前記のようにして製造する場合,その紐状物等の長手方向の引張り破断強度を0.5?5.0g/d(デニール),好ましくは0.8?2.0g/dの範囲に調節する。この強度の調節は,発泡体を一軸延伸する場合の延伸倍率により行うことができ,延伸倍率を高くすることにより,その強度を向上させることができる。その延伸倍率は,通常,2?10倍,好ましくは3?6倍であるが,前記引張破断強度が得られるように,適宜選定する。前記紐状物等の長手方向の引張破断強度が前記範囲より小さいときには,強度が不足して好ましくなく,一方,前記範囲よりも大きくなると,脂肪族ポリエステル系樹脂の分子配向が強くなりすぎて,その生分解性が悪化するので好ましくない。」(【0012】)

(3) 具体的検討
ア 上記(2)によると,引用文献2には,樹脂発泡シートについて,これをMD方向へ一軸延伸することで引張り強度といった機械的強度を向上させる技術思想が開示されている。そして,引用発明は,引用文献1の記載によれば(例えば,【0005】,【0039】),引張り強さといった機械的強度に優れた架橋ポリエチレン系樹脂発泡性シートを提供することを解決課題とするものであるところ,引用発明について,このような課題を解決しつつさらに優れた機械的強度(引張り強度)を奏するものとするべく,引用発明と同じ樹脂発泡シートの技術分野における引用文献2に開示の技術思想を引用発明に適用すること,すなわち,引用発明において架橋,発泡させた上でさらにMD方向への一軸延伸を施すようにすることは,当業者であれば想到容易である。
引用文献1には,樹脂発泡性シートを延伸させる旨の記載はないが,だからといって,引用発明のシートを延伸することができないことにはならない。引用発明に引用文献2の技術の適用を阻害する事由はみあたらない。
イ さらに,上記適用にあたっては,一軸延伸の倍率を設定すべきところ,所期の課題解決を図ることができる程度にその下限値を設定すること(延伸倍率が低すぎると,延伸による機械的強度の向上を達成することができない。引用文献2の【0012】),また,シート製造工程における延伸によるシート破断が起きない程度にその上限値を設定することは,当業者にとって通常の創作能力の発揮にすぎないといえるのであって,上記(1)アで述べたとおり,これら下限値及び上限値を設定することは,平均気泡径比の下限値及び上限値を設定することにほかならない。
そして,MD/ZD平均気泡径比の下限値を「2.5」に,MD/CD平均気泡径比の下限値を「2」にすることは,引用発明に引用文献2に開示の技術思想を適用することで奏する有利な効果の範囲の下限値を単に設定したにすぎない設計的事項である。(なお,本願明細書の記載(例えば,【0029】,【0030】,【表1】)から,本願発明の上記下限値に臨界的意義を見いだすことはできない。)
同じく,上限値をそれぞれ「7」,「6」に設定することもまた,上述の如く,延伸によるシート破断が発生しない程度の範囲で当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎないものである。(なお,本願明細書の記載からは,同様に,本願発明の上記上限値に臨界的意義を見いだすことができないし,そもそも本願発明は「物」の発明であるから,シート破断が発生するかどうかといった製造プロセス上の意義は,本願発明の解決課題とは何ら関係がないともいえる。)
ウ 請求人は,審判請求書などにおいて,引用文献2に一軸延伸により引張り強度やクッション性が向上することが開示されているからといって,ただちに本願発明の解決課題である柔軟性や圧縮回復性の向上までを予見できるものでない旨主張する。
しかし,上記主張は,採用の限りでない。
すなわち,樹脂発泡性シートは一軸延伸されることでその柔軟性や圧縮回復性が向上することは,本願の優先日において当業者に周知の技術事項である(要すれば,例えば,特開平3-169622号公報(特に請求項2,2頁左上欄下から3行?同左下欄1行,3頁左下欄下から7行?同右下欄下から5行)を参照できる。)。
そうすると,確かに,引用文献2には一軸延伸による柔軟性や圧縮回復性の向上についての明示的記載はないが,本願の優先日当時の技術常識を踏まえれば,当業者は,引用文献2は一軸延伸により引張り強度の向上とともに柔軟性や圧縮回復性の向上を図る技術を開示するものであると理解する。よって,本願発明の奏する柔軟性や圧縮回復性の向上といった作用効果は,引用文献1ないし2から予測しうる程度のものであるといわざるを得ない。

4 むすび
したがって,本願発明は,引用発明及び引用文献2の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると,本願の請求項2に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-06-25 
結審通知日 2012-06-27 
審決日 2012-07-17 
出願番号 特願2004-116136(P2004-116136)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C08J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加藤 幹  
特許庁審判長 蔵野 雅昭
特許庁審判官 加賀 直人
須藤 康洋
発明の名称 架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シート及び粘着テープ  
代理人 山本 拓也  
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