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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  H01S
管理番号 1262479
審判番号 無効2011-800243  
総通号数 154 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-10-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-11-25 
確定日 2012-08-29 
事件の表示 上記当事者間の特許第2898643号発明「量子井戸半導体レーザ素子」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2898643号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯の概要
本件特許第2898643号に係る手続の経緯は以下のとおりである。

昭和63年11月11日 本件出願(特願昭63-285549号)
平成 8年11月 5日 手続補正書
平成 9年 4月21日 拒絶査定
平成 9年 7月10日 拒絶査定不服審判請求(平成9年審判第11553号)
平成 9年 8月11日 手続補正書
平成10年12月11日 手続補正書
平成10年12月24日 審決(原査定取消し、特許査定)
平成11年 3月12日 設定登録
平成11年 6月 2日 特許公報発行
平成11年12月 2日 異議申立(平成11年異議74467号)
平成12年 2月24日 異議の決定(特許維持)
平成23年 9月21日 訂正審判請求(訂正2011-390110)
平成23年11月25日 無効審判請求(本件審判)
平成24年 1月10日 審決(訂正は認められない)
平成24年 2月13日 審判事件答弁書
平成24年 2月27日 無効理由通知
平成24年 3月30日 意見書(被請求人)
平成24年 4月20日 審尋
平成24年 6月27日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
平成24年 7月11日 口頭審理

第2 本件発明
本件特許第2898643号の請求項に係る発明は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「InP基板上に、量子井戸層とバリア層からなる活性層を含むIII-V族化合物半導体層を有する量子井戸半導体レーザ素子において、量子井戸層はその格子定数がInPの格子定数よりも大きい膜厚2.5nm?30nmのGa_(x1)In_(1-x1)As_(y1)P_(1-y1)(0<_(x1,y1)<1)であり、バリア層はその格子定数がInPの格子定数よりも小さいGa_(x2)In_(1-x2)As_(y2)P_(1-y2)(0<_(x2,y2)<1)であることを特徴とする1.3?1.55μm用量子井戸半導体レーザ素子。」(以下「本件発明」という。)

第3 請求人の主張する無効理由の概要
平成9年8月11日付け手続補正書によりなされた本件明細書の補正は明細書の要旨を変更するものであるから、本件特許出願は、平成5年法律第26号附則2条2項により本件特許権について適用されうる同法による改正前の特許法40条により、同手続補正書が提出された平成9年8月11日にされたものとみなされる。この繰り下がり出願日を基準とするとき、本件特許の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内において頒布された甲第2号証に記載された発明と同一であるか、甲第2号証に記載された発明と周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり(無効理由1)、また、その出願前に日本国内において頒布された甲第3号証に記載された発明と同一であるか、甲第3号証に記載された発明と周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものである(無効理由2)から、特許法第29条第1項第3号・第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

[証拠方法]
甲第1号証:特許公報(特許第2898643号・本件特許公報)
甲第2号証:特開平2-130988号公報
甲第3号証:Dana Varga他 "LOW THRESHOLD、HIGH QUANTUM EFFICIENCY、HIGH SPEED STRAIN COMPENSATED MULTI QUANTUM WELL LASERS"(「低閾値、高量子効率で高速な歪み補償型多重量子井戸レーザ」)IPRM'94 WP22 pp.473-475(1994年3月27日発行)
甲第4号証の1:特許願(特願昭63-285549)及び添付明細書
甲第4号証の2:手続補正書(平成8年11月5日付)
甲第4号証の3:手続補正書(平成9年8月11日付)
甲第4号証の4:手続補正書(平成10年12月11日付)
甲第5号証:Electronics Letters Vol.22 No.5 (27^(th) Feb 1986)表紙、249頁?250頁
甲第6号証:"Growth and characterization of In_(x)Ga_(1-x)As/In_(y)Ga_(1-y)As strained-layer superlattice on InP substrate" J. Appl. Phys. 59(7)、2447頁?2450頁
甲第7号証:見解書(弁理士小林武作成)
甲第8号証:「半導体レーザの基礎」栖原敏明著(1998年3月25日
共立出版株式会社発行)
甲第9号証:「半導体レーザ」応用物理学会編、伊賀健一著、平成6年10月25日株式会社オーム社発行

第4 当審において通知した無効理由の概要
平成24年2月27日付けで通知した無効理由の概要は、「本件発明は、引用文献1?3に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件請求項1に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。」というものである。
平成24年2月27日付けで通知した無効理由において引用された文献は、以下のとおりである。

1.イアン・マーガットロイドほか、「歪超格子1.3μm GaInAsP/InP MQWレーザのしきい値電流の低減化についての計算」第49回応用物理学会学術講演会講演予稿集 5P-ZC-12(1988年[昭和63年]10月), p.861(以下「引用文献1」という。)
2.Dutta et al.,「Long wavelength InGaAsP(λ?1.3μm)modified multiquantum well laser」、Appl. Phys. Lett.,46(11) 1 June,1985, pp.1036-1038
3.Quillec et al., 「Growth and characterization of InxGa1-xAs/InyGa1-yAs strained-layer superlattice on InP substrate」、J.Appl. Phys. 59(7), 1 April、1986、pp.2447-2450(以下「引用文献3」という。)

第5 被請求人の主張の概要
1 請求人主張の無効理由に対して
平成9年8月11日付け手続補正書によりなされた補正は、要旨変更に該当するということはできず、これが要旨変更に該当するとして、出願日の繰り下がりを認め、本件発明の新規性又は進歩性を否定する無効理由1、2は、以下の理由により、いずれも理由がない。
(1)特許請求の範囲の一義的に明瞭な記載に基づけば平成9年8月11日付け手続補正書によりなされた補正は要旨変更に該当しない。
(2)本件当初明細書のその余の記載を参酌しても平成9年8月11日付け手続補正書によりなされた補正は要旨変更に該当しない。

2 当審において通知した無効理由に対して
本件発明は、以下の理由により、引用文献1?3に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないということはできず、本件特許が特許法第123条第1項第2項の規定により無効とされることはない。
(1)引用文献1に記載の発明において、引用文献3に記載の技術を適用することが容易でないこと(その1)
ア 引用文献1に記載された発明は、井戸層に歪みを入れたことに満足して、それ自体で完結しており、そこから新たに解決すべき課題を読み取ることはできない。引用文献1は、量子井戸層に圧縮歪を加えた場合に歪による転位の発生という課題があることを示唆するものではなく、引用文献1に接した当業者が引用文献3と組み合わせることに動機づけられることはない。
イ 引用文献1には、井戸層に歪を入れると特性が良くなるという、引用文献3における転位の発生という課題とは逆の示唆があるのであって、引用文献1に記載の発明において、当業者が、本件発明が解決した歪による転位の発生という課題を認識することはなく、これに、ミスマッチ転位の問題を克服する引用文献3に記載の発明を組み合わせようとすることはない。

(2)引用文献1に記載の発明において、引用文献3に記載の技術を適用することが容易でないこと(その2)
ア 引用文献3には、そもそも「量子井戸層」、「バリア層」が記載されておらず、したがって「バリア層の格子定数に関しては、井戸層に圧縮歪を入れた場合に生じうるミスマッチ転位等の問題を解決する手段として、バリア層に反対方向の歪(引張歪)を入れること」が記載されていない。
引用文献3には、ミスフィツト転位に関する記載があるが、かかる知見はGaInAsという3元系組成物からなる歪超格子におけるミスフィツト転位の問題であり、引用文献1の発明に係る歪量子井戸半導体レーザの量子井戸はInGaAsPという4元系組成物からなるのであるから、GalnAsP半導体レーザである引用文献1記載の発明において、引用文献3におけるミスフィツト転位が等しく生じることを示すものでもない。
よって、引用文献3に記載された課題解決手段を、引用文献1に記載の発明に適用することに当業者が想到することは容易でない。
イ 現に、半導体レーザの活性層として用いる歪量子井戸において、バリア層に量子井戸層と逆方向の歪(引張歪)を導入すれば、単に歪量子井戸槽内の歪が緩和され、転位の発生が防がれるという効果が生じるのみには止まらず、発止波長の変動や量子効果の変動などの影響をも生じるため、全体として本件発明の目的が達成されるか否かは、現実に半導体レーザを作成してその評価を行うという試行錯誤を経なければ明らかにすることはできない。本件発明に係る構成要件の組合せにより、転位防止の観点からはさしたる効果がなく、圧縮歪量子井戸層の効果を引張歪バリア層により減殺してしまうかも知れなかった。さらには、発振波長の変動や、量子効果の変動がレーザ特性に予想だにしない影響を与える懸念もあった。
したがって、「引用文献1に記載の発明において、引用文献3に記載の技術を適用し、その結果、・・・上記相違点に係る本件発明の構成となることは、当業者が容易に想到できたことであるといえる。」との無効理由は、このような当業者の試行錯誤による発明の創作活動を全く無視するものであって、理由がない。
ウ 本件発明は、量子井戸層とバリア層の双方の歪状態に着目して、量子井戸層に圧縮歪を加えることの利点と、バリア層に引張歪を入れることの利点とを両立させるという革新的なものである。引用文献1に記載の発明におけるレーザとして未知の構成である量子井戸層圧縮歪とバリア層引張歪の組合せが圧縮歪量子井戸の効果を維持したまま転位だけを抑制することは、本件発明によって開示されたものである。
本件無効理由は、InP/InGaAsP系の半導体レーザに関して、量子井戸のみに歪を入れた構造の利用でさえも困難視された1988年の時点であるにも拘わらず、「引用文献1に記載の発明において、引用文献3に記載の技術を適用し、その結果、・・・上記相違点に係る本件発明の構成となることは、当業者が容易に想到できたことであるといえる。」などとするが、これは、本件発明が開示した技術思想を見たうえでしか起こり得ない典型的な後知恵である。

(3)引用文献1に記載の発明において、歪補償構造を採用することに阻害要因があること
ア 乙第13号証(「III-V族半導体混晶」永井治男等、昭和63年10月25日初版発行)によれば、本件出願当時、lnGaAsP系において、引張り歪を加える方向に不安定領域(組成上、熱力学的に不安定な領域)が存在することが知られていた。したがって、引用文献1に記載の発明を出発点としても、歪補償構造に着想することには、上記の阻害要因とも言いえる事項を克服する強い動機付けが必要であるというべきである。
イ 乙第14号証("Elimination of wavy layer growth phenomena in strain-compensated GaInAsP/GaInAsP multiple quantum well stacks" R.W.Glew、1994年発行)は、本件特許出願から6年経過後に発行された刊行物であるが、本件特許出願から6年後においてもなお、4元GalnAsPの歪補償多層構造体を多数周期成長させるのが困難であったことが述べられている。

(4)引用文献1に記載の発明において、引用文献3に記載の技術を適用しても、本件発明が得られないこと
引用文献3は、歪超格子において、二つの層の平均格子定数を基板の格子定数を一致させることのみを開示しているところ、本件発明は活性層の平均格子定数をInPの格子定数に等しくすることを前提とするものではなく、引用文献1に記載の発明に引用文献3に記載の発明を組み合わせて、「平均格子定数を基板の格子定数に等しくしない」本件発明に至る動機付けは存在しない。
乙第15号証(「光通信素子工学」米津宏雄、昭和61年12月15日3版発行)の記載から、レーザ素子(特に、lnGaAsP系レーザ素子)の技術分野においては、基板の格子定数と活性層等各層の格子定数とを一致させることを必須の条件とすることが本件出願当時の技術水準であったことがわかる。

[証拠方法]
乙第1号証:東京地裁平成20年(ワ)第8086号判決写し
乙第2号証:三村意見書
乙第3号証:牧野等意見書
乙第4号証:特開平6-350198号公報
乙第5号証の1:特開平5-63291号公報
乙第5号証の2:拒絶理由通知書(乙5の1についての2回目のもの)
乙第5号証の3:意見書(乙5の2に対するもの)
乙第5号証の4:拒絶理由通知書(乙5の1についての1回目のもの)
乙第6号証の1:特許第3204969号公報
乙第6号証の2の1:特許異議申立書(乙6の1に対するもの)
乙第6号証の2の2:特開平2-130988号公報(乙6の2の1の添付甲1)
乙第6号証の2の3:1990年(平成2年)秋季第51回応用物理学会学術講演会講演予稿集第3分冊、第958頁、28a-R-1論文(乙6の2の1の添付甲2)
乙第6号証の2の4:1990年(平成2年)秋季第51回応用物理学会学術講演会講演予稿集第3分冊、第959頁、28a-R-3論文(乙6の2の1の添付甲3)
乙第6号証の2の5:特開昭62-188390号公報(乙6の2の1の添付甲4)
乙第6号証の2の6:Journal of Lightwave Technology, vol.LT-4, No.5, p504-p506、翻訳文(乙6の2の1の添付甲5)
乙第6号証の2の7:光通信素子工学、第244頁、表4.2(乙6の2の1の添付甲6)
乙第6号証の2の8:特開平4-152583号公報(乙6の2の1の添付甲7)
乙第6号証の3:特許異議意見書
乙第7号証の1:特公平7-118571号公報
乙第7号証の2:特許異議申立書(乙7の1に対するもの)
乙第7号証の3の1:特許異議理由補充書(乙7の2を補充するもの)
乙第7号証の3の2:特開平2-130988号公報(乙7の3の1の添付甲1)
乙第7号証の3の3:特開平3-21093号公報(乙7の3の1の添付甲2)
乙第8号証の1:特開平5-41564号公報
乙第8号証の2:拒絶理由通知書(乙8の1についてのもの)
乙第8号証の3:意見書(乙8の2に対するもの)
乙第9号証の1:「特許・実用新案審査基準」の抜粋
乙第9号証の2:「特許・実用新案審査基準」の抜粋
乙第9号証の3:「特許・実用新案審査基準」の抜粋
乙第10号証:鑑定意見書(米津宏雄)
乙第11号証:鑑定意見書(榊裕之)
乙第12号証:平成9年9月22日付け提出の審判請求理由補充書
乙第13号証:「III-V族半導体混晶」永井治男等、昭和63年10月25日初版発行
乙第14号証の1:"Elimination of wavy layer growth phenomena in strain-compensated GaInAsP/GaInAsP multiple quantum well stacks" R.W.Glew、1994年発行
乙第14号証の2:乙第14号証の1の翻訳文
乙第15号証:「光通信素子工学」米津宏雄、昭和61年12月15日3版発行

第6 当審の判断
以下では、当審において通知した無効理由(上記第4参照。)について検討する。

1 刊行物の記載
(1)引用文献1には、以下の記載がある(訳文をかっこ書で付した。)。

ア 「歪超格子1.3μm GaInAsP/InP MQWレーザのしきい値電流の低減化についての計算
CALCULATION OF REDUCED THRESHOLD CURRENT IN STRAINED LAYER 1.3μm GaInAsP/InP MQW LASERS
古河電工(株) 横浜研究所 イアン・マーガットロイド 牧野俊彦 粕川秋彦
YOKOHAMA R&D LAB., THE FURUKAWA ELECTRIC CO., I. J. MURGATROYD, T. MAKINO and A. KASUKAWA」

イ 「We have performed detailed numerical calculations to model the gain spectrum and the threshold current of 1.3μm GaInAsP semiconductor lasers with strained MQW active lasers. The biaxial compression which arises when an alloy with a larger bulk lattice parameter than the barrier layers is grown to form a quantum well, reduces the valence band effective mass, hence increasing the optical gain and lowering the threshold current, as well as substantially reducing the non-radiative Auger recombination coefficient.^((1)) The gain was calculated assuming quantum wells with finite potential barriers and electron transitions obeying a k.p selection rule with a finite intraband relaxation time, t_(in)=1×10^(-13)s.^((2)) In comparison to the threshold current, Jns, calculated for an unstrained MQW laser (no separate confinement structure), the minimum calculated threshold currents for strained MQW lasers, with mismatches, Δa/a, of 0.011 and 0.04, were 0.32*Jns and 0.30*Jns, respectively. Furthermore, strained MQW lasers are expected to have a higher maximum modulation frequency than unstrained MQW lasers.
(1)A. R. Adams, Electronics Letters 22(5), 249(1985).
(2)M. Asada, A. Kameyama and Y. Suematsu, IEEE J. Quantum Electr. QE-20, 745(1985).」
(歪MQW活性層を有する1.3μmGaInAsP半導体レーザの利得スペクトルと閾値電流のモデルに対して詳細な数値計算を行った。バルクとしてみたときの格子定数がバリア層よりも大きい混晶が量子井戸を形成するように成長させられるときに生じる2軸性の圧縮は、価電子帯の有効質量を減少させるので、非輻射オージェ再結合定数を大幅に減少させるだけでなく、光学利得を増加させ、閾値電流を減少させる。利得は、有限のポテンシャル障壁を有する量子井戸と、有限のバンド内緩和時間、t_(in)=1×10^(-13)sを伴うk・p選択則に従う電子遷移とを仮定して計算した。無歪のMQWレーザ(分離閉じ込め構造無し)の閾値電流Jns と比較して、0.011と0.04の不整合△a/aを有する歪MQWレーザの計算による閾値電流の最小値は、それぞれ0.32*Jns と0.30*Jns であった。さらに、歪MQWレーザは、無歪のMQWレーザに比べて、より高速の最大変調周波数が期待される。)

ウ 「Theshold Current against Well Number for MQW 1.3μm GaInAsP Laser

Well thichkness=100Å」
(MQW1.3μmGaInAsPレーザーの閾値電流対井戸数

井戸厚さ=100Å)

(2)引用文献3には、以下の記載がある(訳文をかっこ書で付した。)。

ア 「The In_(x)Ga_(1-x)As/ln_(y)Ga_(1-y)As strained-layer superlattices can be grown lattice matched toan InP substrate if proper compositions and thicknesses are chosen. Such structures were grown by molecular-beam epitaxy. The wavelength range covered by this material is from 1.6μm to beyond 2μm. Structural (double x-ray diffraction) and optical (absorption) characterizations were performed and quantitatively interpreted; they show the excellent properties of these structures.」(2447頁6?11行)
(In_(x)Ga_(1-x)As/In_(y)Ga_(1-y)Asひずみ超格子は、適切な組成と厚さが選択されれば、InP基板に格子整合して結晶成長できる。このような構造は、分子線エピタキシー法によって形成した。この材料でカバーされる波長範囲は、1.65μmから2μm超にいたる。構造的な(二結晶X線回折)評価および光学的な(吸収)特性評価を実施し、定量的に解釈して、本構造の優れた特性を明らかにした。)

イ 「I. INTRODUCTION
After the early predictions of Esaki and Tsu,^(1) the first realization of a semiconductor superlattice was published in 1974 by Matthews and Blakeslee^(2) in the GaAs/GaAs_(x)P_(1-x) system. It was also the first strained-layer superlattice (SLS). It was epitaxially grown by chemica! vapor deposition. The development of better-suited growth techniques led to a second birth of the subject in I982.^(3-5) Molecularbeam epitaxy (MBE) and metalorganic chemical vapor deposition were used in these works; the systems were InGaAs/GaAs and GaAsP/GaAs. These systems proved of interest for devices such as lasers, field effect transistors, and photodetectors, as shown by a number of recent publications.^(6-9)
Since the sublayers are thin, their lattice mismatch can be accommodated entirely by elastic strain rather than dislocations. The lattice parameter in the direction parallel to the surfacea_(||) is then uniform through the SLS. However, if the equilibrium value a^(e)_(||) for the SLS taken alone is different from the lattice parameter of the substrate a_(s), the mismatch between the SLS as a whole and the substrate may generate misfit dislocations beyond a critical thickness of the SLS.^(3,10)
This difficulty can be overcome in three ways: (i) by keeping the number of periods small enough as to stay below the critical SLS thickness, (ii) by accommodating the mismatch through an intermediate buffer layer, (iii) by choosing a system so that a^(e)_(||) = a_(s). Solution (i) is limited to a small number of periods to stay in the elastic limit; solution (ii) leads to a high density of dislocations in the buffer layer which might be a source of thermal degradation. Solution (iii) should be preferred when possible: Timnons et al.^(11) have successfully grown good quality GaAsP/InGaAs SLS on GaAs by MOCVD in such conditions.
In this paper, we propose a new example, i.e. In_(x1)Ga_(1-x1)As/In_(x2)Ga_(1-x2)As SLS grown on InP so that a^(e)_(||) = a_(s). This system is suitable for optoelectronic devices in the range 1.65-2.1 μm. The use of alternate strained In GaAs layers to cover a wide energy-gap range was already proposed by Osbourn.^(12) Another use of the SLS is as a threading-dislocation barrier as earlier shown by Matthews and Blakeslee.^(13) Alternate strains should be efficient as a way to eliminate threading dislocations in the subsequent layers.」(2447頁左欄)
(I.はじめに
Esaki and Tsu による早期予測を経て、GaAs/GaAs_(x)P_(1-x)結晶系において半導体超格子が初めて実現がされたことが1974年にMatthews and Blakeslee により公表された。この半導体超格子はまた、最初のひずみ超格子(SLS)でもあった。この半導体超格子は、化学気相堆積法によりエピタキシャル成長したものであった。その後のSLS成長により適した結晶成長技術の進展によって、1982年に本テーマが再び誕生することとなった。これらの研究においては分子線エピタキシー法(MBE)と有機金属化学気相堆積法が用いられ、結晶系はInGaAs/GaAsとGaAsP/GaAsであった。最近の多数の刊行物に見られるように、レーザ、電界効果トランジスタ、および光センサのようなデバイスに向けて、関心を集めている。
半導体超格子を形成する各層は薄いため、これらの格子ミスマッチは、転位によってではなく弾性ひずみによって完全に吸収され得る。従って、表面に平行な方向に於ける格子定数a_(||)は、SLSを通して同一である。しかしながら、もしSLSが単独で存在する時の平衡的な格子定数a^(e)_(||)と基板の格子定数a_(s) とが異なる場合には、SLS全体と基板との間の格子ミスマッチがSLSの臨界厚さを超える時に、ミスマッチ転位(審決注:正しくは「ミスフィット転位」と解される。)を発生させる可能性がある。
この問題は三つの方法で克服できる。(i)SLSの限界厚さ以下に留まるように超格子の周期数を十分に少なく保つことによる方法、(ii)中間のバッファ層を通してミスマッチを吸収することによる方法、および(iii)a^(e)_(||)=a_(s)となるような結晶系を選択することによる方法、である。解決策(i)は、弾性限界内に留めるために超格子の周期数は少数に限定される。
解決策(ii)は、バッファ層内での高濃度な転位の発生につながり、熱的な劣化の原因となる恐れがある。解決策(iii)は、可能ならば好ましいものであり、Timmons et al.はこのような条件において、MOCVD法を用いてGaAs上に良質なGaAsP/InGaAs SLSを成長させることに既に成功している。
本論文において、我々は新しい例、つまりa^(e)_(||)=a_(s)となるようにInP上に成長したIn_(x1)Ga_(1-x1)As/In_(x2)Ga_(1-x2)As SLSを提案する。この結晶系は、1.65?2.1μmの波長範囲にある光電子デバイスに適している。交互に繰り返されたひずみ系InGaAs層を用いて広いエネルギー・ギャップの範囲をカバーすることは、既にOsbourn により提案されている。SLSのもう一つの適用例は、Matthews and Blakeslee によって以前に提案された貫通転位バリアのようなものである。交互に繰り返されたひずみ層は、連続した層内の貫通転位を阻止するための手段として有効なはずである。)

ウ 「In the elastic limit, the lattice parameter in directions parallel to the surface is kept constant throughout these structures and equal to that of the sabstrate. The compositions and thicknesses are chosen so that the equilibrium value of a_(||) for the SLS taken as a whole is equal to that of the substrate and buffer layer. It can be calculated by minimizing the strain energy in the SLS:^(10)
a_(||) = a(InP) = (L_(1)a_(1)+L_(2)a_(2))/(L_(1)+L_(2)).」(2447頁右欄17?24行)
(弾性限界においては、表面に平行方向の格子定数は、構造全体を通して一定であって、基板の格子定数と等しく保たれる。各層の組成と厚さは、SLS全体として考えた時のa_(||)の平衡値が基板の平衡値とバッファ層の平衡値に等しくなるように選んだ。a_(||)は、次のようにSLSのひずみエネルギーを最小化することにより計算できる。
a_(||)=a(InP)=(L_(1)a_(1)+L_(2)a_(2))/(L_(1)+L_(2)))

2 引用発明
引用文献1の「歪MQW活性層を有する1.3μmGaInAsP半導体レーザ」との記載のうち、「MQW」が多重量子井戸(Multi Quantum Well)を意味することは明らかであるから、「半導体レーザ」とは、多重量子井戸半導体レーザを意味することになる。
また、「1.3μm」との記載がレーザの発振波長を意味することは明らかであるから、「半導体レーザ」は1.3μm用である。
そして、「MQW活性層」が量子井戸層とバリア層とからなることは明らかであり、半導体レーザの発振波長は1.3μmであるから、「GaInAsP」が量子井戸層の材料であることは明らかである。
さらに、量子井戸層の材料である「GaInAsP」は、III-V族化合物半導体層であるから、「半導体レーザ」が量子井戸層とバリア層からなる活性層を含むIII-V族化合物半導体層を有することは明らかである。
このほか、引用文献1の「歪超格子1.3μm GaInAsP/InP MQWレーザ」との記載の「InP」とは、バリア層又は基板を意味するものと解されるところ、小長井誠著「半導体超格子入門」、培風館、昭和62年11月10日初版発行は、表2.4(23頁)において、In_(1-x)Ga_(x)As_(1-y)Pyと格子整合のとれる基板として「InP、GaAs」を挙げている。そして、GaAs基板では、引用文献1における無歪のMQWレーザの発振波長を1.3μmとすることは不可能であるから、「半導体レーザ」は、InP基板を用いているものと解するのが合理的である。

なお、この点をさらに詳説すると、GaAs基板上に無歪MQWを形成するということは、量子井戸層(GaInAsP)の格子定数をGaAs基板の格子定数と整合させることを意味し、無歪MQWの量子井戸層(GaInAsP)を、米津宏雄著「光通信素子工学-発光・受光素子-」工学図書株式会社刊、昭和61年12月15日第3版発行の図2.24(a)(79頁)のGaAs格子整合線上の組成とすれば、GaAs基板と格子整合することとなる。
また、同図において、EgはGaInAsPのバンドギャップ、λgはバンドギャップに対応する波長を表している。
ここで、無歪MQWレーザの発振波長を1.3μmとしようとしても、波長1.3μmに対応する(Eg=約0.95eVの)等バンドギャップ線がGaAs格子整合線とは交差しないことは自明である(例えば、同図において、仮にλg=1.3μmとなる等バンド・ギャップ線(λg=1.24μmの等バンド・ギャップ線とλg=1.55μmの等バンド・ギャップ線の間にあって、これらの等バンド・ギャップ線とほぼ平行な等バンドギャップ線)を記入したとしても、これは、GaAs格子整合線とは全く交差しない。下図参照。)から、無歪MQWレーザを波長1.3μmで発振させることが不可能であることは明らかといえる。


そして、引用文献1の「The biaxial compression which arises when an alloy with a larger bulk lattice parameter than the barrier layers is grown to form a quantum well, ...(訳:バルクとしてみたときの格子定数がバリア層よりも大きい混晶が量子井戸を形成するように成長させられるときに生じる2軸性の圧縮は、…)」及び「...with mismatches, Δa/a, of 0.011...(訳:…0.011…の不整合Δa/aを有する…)」との記載から、引用文献1に記載の「量子井戸層」が1.1%の圧縮歪を有することが明らかである。
このほか、引用文献1の図外に記載されている「Well thickness=100Å(訳:井戸幅=100Å)」とは、量子井戸層の膜厚であることが明らかである。

以上からすれば、引用文献1には、「InP基板上に、量子井戸層とバリア層からなる活性層を含むIII-V族化合物半導体層を有する多重量子井戸半導体レーザにおいて、量子井戸層は圧縮歪(1.1%)を有する膜厚10nm(100Å)のGaInAsPである1.3μm用多重量子井戸半導体レーザ。」(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

3 対比
本件発明と引用発明を対比する。

(1)本願発明と引用発明とは、いずれも「InP基板上に、量子井戸層とバリア層からなる活性層を含むIII-V族化合物半導体層を有する量子井戸半導体レーザ素子」である点で一致する。

(2)引用発明の「量子井戸層」は、「膜厚10nm(100Å)のGaInAsPである」から、引用発明は、本願発明の「量子井戸層」は「膜厚2.5nm?30nmのGa_(x1)In_(1-x1)As_(y1)P_(1-y1)(0<_(x1,y1)<1)であ」るとの事項を備える。

(3)引用発明は、「1.3μm用多重量子井戸半導体レーザ」であるから、本願発明の「1.3?1.55μm用量子井戸半導体レーザ素子」との事項を備えるものである。

(4)したがって、両者は、
「InP基板上に、量子井戸層とバリア層からなる活性層を含むIII-V族化合物半導体層を有する量子井戸半導体レーザ素子において、量子井戸層は膜厚2.5nm?30nmのGa_(x1)In_(1-x1)As_(y1)P_(1-y1)(0<_(x1,y1)<1)である1.3?1.55μm用量子井戸半導体レーザ素子。」
である点で一致し、
「本件発明では、量子井戸層はその格子定数がInPの格子定数よりも大きく、バリア層はその格子定数がInPの格子定数よりも小さいGa_(x2)In_(1-x2)As_(y2)P_(1-y)2(0<_(x2,y2)<1)であるのに対して、引用発明では、量子井戸及びバリア層の格子定数とInPの格子定数との大小関係が不明であり、また、バリア層の組成も不明である点」(以下、単に「相違点」という。)。
で相違するものと認められる。

4 判断
上記相違点について検討する。
(1)引用発明において、「量子井戸層は圧縮歪(1.1%)を有する」ものであるから、量子井戸の格子定数はバリア層の格子定数よりも大きいものと認められる。
一方、上記1(2)イによれば、引用文献3には、もしひずみ超格子(SLS)が単独で存在する時の平衡的な格子定数a^(e)_(||)と基板の格子定数a_(s)とが異なる場合には、SLS全体と基板との間の格子ミスマッチがSLSの臨界厚さを超える時に、ミスフィット転位を発生させる可能性があることが記載されているとともに、この問題を克服する方法として、a^(e)_(||)=a_(s)となるような結晶系を選択するとの技術が挙げられている。
しかるところ、引用文献3には、「レーザ、電界効果トランジスタ、および光センサのようなデバイスに向けて、関心を集めている。」(上記1(2)イ参照。)として、レーザへの適用が示唆されており、また、小長井誠著「半導体超格子入門」、培風館、昭和62年11月10日初版発行には、「・・・超格子とは、各層厚が薄くサブバンドが形成されるものを指していたが(狭い意味での超格子)、その後、量子井戸や2次元電子ガスを形成するヘテロ構造など、超薄膜積層構造を総称して、超格子と表現するのが一般的になった・・・」(序文2枚目5?8行)と記載されていることに照らせば、量子井戸と超格子とは実質的に違いはないものといえ、引用発明の「多重量子井戸半導体レーザ」も、「量子井戸層とバリア層からなる活性層」の平衡的な格子定数とInP基板の格子定数とが異なる場合に、上記活性層とInP基板との間の格子ミスマッチが上記活性層の臨界厚さを超える時に、ミスフィット転位が発生するという問題を生じ得るものであることは当業者において明らかである。そして、この問題を解決するために、引用発明において、上記活性層の平衡的な格子定数を基板のInPの格子定数と等しくなるように構成しようとすることは、当業者がごく自然に想到しうることである。

(2)また、引用発明の「バリア層」は、「バリア層」として機能するために、「量子井戸層」よりもエネルギーバンドギャップが大きく、また、「量子井戸層は圧縮歪(1.1%)を有する」ことから、「量子井戸層」よりも格子定数が小さいものであるところ、小長井誠著「半導体超格子入門」、培風館、昭和62年11月10日初版発行には、「4元混晶では、格子定数とバンドギャップを独立に変化させることが可能である」こと(22頁下7行?下6行)が記載されており、また、米津宏雄著「光通信素子工学-発光・受光素子-」工学図書株式会社刊、昭和61年12月15日第3版発行の図2.24(a)(79頁、上記2参照。)も、InGaAsPにおいて、格子定数とバンドギャップを独立に変化させることが可能であることを示すものであるから、引用発明において、量子井戸のみならずバリア層にも、格子定数とバンドギャップを独立に変化させることが可能であるGaInAsPを用いることができることは、当業者において明らかである。

(3)以上によれば、引用発明において、量子井戸のみならずバリア層にも、格子定数とバンドギャップを独立に変化させることが可能であるGaInAsPを用いるとともに、ミスフィット転位が発生し得るという問題を解決するために、活性層の平衡的な格子定数を基板のInPの格子定数と等しくなるように構成し、その結果、量子井戸の格子定数がバリア層の格子定数よりも大きいのであるから、量子井戸層の格子定数をInPの格子定数よりも大きく、バリア層の格子定数をInPの格子定数よりも小さいものとなして、上記相違点に係る本件発明の構成とすることは、当業者が容易に想到することができたことである。

5 被請求人の主張について
(1)引用文献1に記載の発明において、引用文献3に記載の技術を適用することが容易でないこと(その1及びその2)(上記第5、2(1)及び(2))について
被請求人の主張のとおり、引用文献1には、量子井戸層に圧縮歪を加えた場合に歪による転位の発生という課題があることは示唆されてはいない。また、引用文献3には、「量子井戸層」、「バリア層」は記載されておらず、引用文献3に記載の知見はGaInAsという3元系組成物からなる歪超格子におけるミスフィット転位の問題であるのに対して、引用文献1に記載された発明に係る歪量子井戸半導体レーザの量子井戸はInGaAsPという4元系組成物からなるものである。しかしながら、引用文献3に記載された技術に照らせば、引用文献1に記載された引用発明も、「量子井戸層とバリア層からなる活性層」の平衡的な格子定数とInP基板の格子定数とが異なる場合に、上記活性層とInP基板との間の格子ミスマッチが上記活性層の臨界厚さを超える時に、ミスフィット転位が発生するという問題を生じ得るものであることは当業者において明らかであるから、引用発明において、引用文献3に記載の技術を適用することが容易であることは、上記4で検討したとおりである。
また、被請求人の「引用文献1に記載の発明におけるレーザとして未知の構成である量子井戸層圧縮歪とバリア層引張歪の組合せが圧縮歪量子井戸の効果を維持したまま転位だけを抑制することは、本件発明によって開示され
たものである。」との主張については、当該事項は本願明細書に記載されたものではなく、本件発明によって奏される効果とは認められない。

(2)引用文献1に記載の発明において、歪補償構造を採用することに阻害要因があること(上記第5、2(3))について
出願人の主張のとおり、乙第13号証には、InGaAsP系において、引張り歪を加える方向に不安定領域(組成上、熱力学的に不安定な領域)が存在することが記載されている。しかし、その根拠である図3.7は計算例であるし(117頁)、乙第13号証の115頁下から2行?117頁3行には、「こうしてみると、大部分のIII-V族混晶は室温付近で不安定領域にあり、相分離を起こす傾向を有するはずである。しかし、固体中での原子の拡散速度が小さいこと、相分離を起こすことで、固体内に生じるひずみエネルギー増加のため、均一相でいるほうが安定であるという事情が背景となって、現実には安定であると考えられる。」との記載に照らせば、乙第13号証の上記記載が、InGaAsP系において歪補償構造を採用することに対する阻害要因となるとはいえない。
また、(本件特許出願後に発行された)乙第14号証の記載も、4元GalnAsPの歪補償多層構造体を多数周期成長させること自体を否定するものではなく、そのように構成することについての着想を妨げるものではないから、InGaAsP系において歪補償構造を採用することに対する阻害要因があったことを示すものではない。

(3)引用文献1に記載の発明において、引用文献3に記載の技術を適用しても、本件発明が得られないこと(上記第5、2(4))について
被請求人は、引用文献1に記載の発明に引用文献3に記載の技術を組み合わせて、「平均格子定数を基板の格子定数に等しくしない」本件発明に至る動機付けは存在しないと主張するが、本件発明は、「平均格子定数を基板の格子定数に等しい」ものを含むものであるから、被請求人の当該主張は、上記の判断を左右するものではない。

6 まとめ
よって、本件発明は、引用文献1に記載の発明及び引用文献3に記載の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 むすび
以上のとおり、本件発明は、引用文献1に記載の発明及び引用文献3に記載の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、他の理由について検討するまでもなく、無効とすべきものである。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2012-07-20 
出願番号 特願昭63-285549
審決分類 P 1 113・ 121- Z (H01S)
最終処分 成立  
前審関与審査官 吉野 三寛門田 かづよ  
特許庁審判長 吉野 公夫
特許庁審判官 江成 克己
北川 創
登録日 1999-03-12 
登録番号 特許第2898643号(P2898643)
発明の名称 量子井戸半導体レーザ素子  
代理人 小林 浩  
代理人 中村 守  
代理人 片山 英二  
代理人 北原 潤一  
代理人 黒川 恵  
代理人 堀籠 佳典  
代理人 古城 春実  
代理人 岩間 智女  
代理人 牧野 知彦  
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