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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由)(定型) G06N |
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管理番号 | 1262539 |
審判番号 | 不服2010-27603 |
総通号数 | 154 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-10-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-12-06 |
確定日 | 2012-08-27 |
事件の表示 | 特願2007-508732「環境状態解析」拒絶査定不服審判事件〔平成17年11月 3日国際公開、WO2005/104028、平成19年11月22日国内公表、特表2007-534068〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
本願は、2004年(平成16年)4月21日を国際出願日とする出願であって、「環境状態解析」に関するものと認める。 これに対して、平成24年 3月 9日付けで、本願は、その明細書と図面の記載が不備で特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない旨の拒絶理由を通知したが、依然として上記の拒絶理由で指摘した不備の点は解消していない。 したがって、本願は、上記の拒絶理由によって拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 平成24年 3月 9日付けで通知した拒絶理由は以下のとおりである。 「[理由1]この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備であり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 記 (1)請求項1について (1-1)請求項1記載の発明特定事項「環境状態モデル化ユニット」は「包含関係を用いて、環境状態を表現するコンテキストエントリオブジェクトに関する情報の取得を実行する」と明記されている。 他方、発明の詳細な説明に記載された環境解析装置の備えるユニットについて、 「【0056】 図3は、上で簡単に説明した原理を、本発明によるコンテキストアウェアアプリケーションを支援する環境状態解析のための装置に適用した様子を示している。 【0057】 図3に示されているように、本発明に基づく環境状態解析のための装置は、環境状態解析推論ユニット12と、例えばコンテキスト空間ツリーグラフ構造、関連するパス表現および利用可能な情報に関する推論結果といった環境状態情報を記憶するためのキャッシュメモリ14とを備えている。」、及び 「【0111】 上述したことを考慮すると、図6は、図3に示されている環境状態解析のための装置の詳細な図である。 【0112】 図6に示されているように、環境状態解析推論ユニット12は、環境状態取得解析ユニット12-1と、パス表現およびコンテキスト空間ツリーグラフ構造変換ユニット12-2と、論理推論ユニット12-3とを備えている。 【0113】 図6に示されているように、様々なサブユニット12-1?12-3は、対応するデータベース、すなわち、環境状態データベース14-1と、パスパターンデータベース14-2と、推論データベース14-3とにそれぞれ接続されている。」と記載されている。 すなわち、発明の詳細な説明に記載された環境解析装置の備えるユニットは、上記のとおり、「環境状態解析推論ユニット12」、「環境状態取得解析ユニット12-1」、「パス表現およびコンテキスト空間ツリーグラフ構造変換ユニット12-2」、及び「論理推論ユニット12-3」が記載されているに過ぎない。 しかしながら、請求項1記載の発明特定事項「環境状態モデル化ユニット」が、発明の詳細な説明に記載された前記どのユニットを意味するのか不明であり、この点で前記請求項1記載の「環境状態モデル化ユニット」は、発明の詳細な説明に記載されたものでない。 なお、請求項1記載の「環境状態モデル化ユニット」は、「包含関係を用いて、環境状態を表現するコンテキストエントリオブジェクトに関する情報の取得を実行する」ものであるが、請求項2記載の「環境状態モデル化ユニット」は、「環境状態をモデル化するコンテンツオブジェクトと、所定の形の処理を実行する論理オブジェクトと、考慮対象の空間に含まれる部分空間に対する空間オブジェクトとのうちの少なくとも1つを表現するコンテキストエントリオブジェクトによりモデル化された環境内の空間の集合体として環境をモデル化する」ものであり、「環境状態モデル化ユニット」の有する機能が、請求項1と請求項2において異なっており、この点においても、請求項1記載の発明特定事項「環境状態モデル化ユニット」が、発明の詳細な説明に記載された前記どのユニットを意味するのか不明であり、前記請求項1記載の「環境状態モデル化ユニット」は、発明の詳細な説明に記載されたものでない。 (1-2)請求項1記載の発明特定事項「コンテキスト取得ユニット」は「ユーザ対話のための形式的擬似自然言語を用いて、コンテキスト取得の際にユーザの入出力処理を実行する」と明記されている。 しかしながら、上記(1-1)における指摘と同様に、請求項1記載の発明特定事項「コンテキスト取得ユニット」が、発明の詳細な説明に記載された前記どのユニットを意味するのか不明であり、この点で前記請求項1記載の「コンテキスト取得ユニット」は、発明の詳細な説明に記載されたものでない。 なお、請求項1記載の「コンテキスト取得ユニット」は、「ユーザ対話のための形式的擬似自然言語を用いて、コンテキスト取得の際にユーザの入出力処理を実行する」ものであるが、請求項2記載の「コンテキスト取得ユニット」は、「包含関係を用いて環境状態を表現するコンテキストエントリオブジェクトに関する情報を取得する」ものであって、「ユーザ対話のための形式的擬似自然言語を用いてコンテキスト取得の際にユーザの入出力処理を実行するもの」ものである。このように、「コンテキスト取得ユニット」の有する機能が、請求項1と請求項2において異なっており、この点においても、請求項1記載の発明特定事項「コンテキスト取得ユニット」が、発明の詳細な説明に記載された前記どのユニットを意味するのか不明であり、前記請求項1記載の「コンテキスト取得ユニット」は、発明の詳細な説明に記載されたものでない。 (1-3)請求項1における記載 「環境状態モデル化ユニットが、包含関係を用いて、環境状態を表現するコンテキストエントリオブジェクトに関する情報の取得を実行するステップと、 前記コンテキスト取得ユニットが、ユーザ対話のための形式的擬似自然言語を用いて、コンテキスト取得の際にユーザの入出力処理を実行するステップ」からすると、 請求項1に係る発明「環境解析装置を用いた環境解析方法」は、モデル化されたコンテキストエントリオブジェクトの包含関係を用いて、コンテキストエントリオブジェクトに関する情報(「コンテキスト」と同義と解される)を取得する際に、ユーザ対話のための形式的擬似自然言語を用いて、ユーザの入出力処理を実行するものである。 他方、発明の詳細な説明を参照すると、 「【0058】 図3に示されているように、ランタイムにおける環境状態解析推論ユニット12の入力は、コンテキストアウェアアプリケーションのランタイムにおけるサービスに対して提供された会話ステートメントのような状態eである。状態eを解析した後に、コンテキスト空間から取得した空間コンテキストに対する一連のエントリオブジェクトとして、キャッシュメモリ14から状態cを取得する。さらに、状態cを解析した後に、知覚された環境状態に関して得られた特定のオペレーションに関連づけられ、予め記憶されたコンテキスト空間から取得された一連のノードステップパターンCが提供される。さらに、環境状態解析装置10に対してそれまでに提供されたものおよび関連する推論結果を含むコンテキスト空間に対する一連のエントリオブジェクトとして、推論Cがキャッシュメモリ14から取得される。… 【0059】 本発明によれば、以下詳細に説明するように、ユーザがシステムと対話するための擬似自然形式言語を使用することが提案される。ここで自然とは、情報交換を容易にするために、言語の文法および語彙がシステムユーザの直感に追従するように構成されるということを意味している。それにもかかわらず、擬似自然言語の擬似という用語からわかるように、ユーザ対話を自動的に処理するための形式言語でもある。 ・・・(中略)・・・ 【0061】 上記を考慮すると、状態に対応する関連状態Cを特定し、環境状態解析装置により既に推論された、知覚された状態Eと、予め記憶されている状態Cについての関連するパス表現パターンCと、関連する推論結果である推論Cとが得られる。 ・・・(中略)・・・ 【0063】 図3に示されている環境状態解析推論ユニット12によって実行された推論の結果は、例えば擬似自然形式言語において文発話(sentence utterance)として表現される会話ステートメントであり、環境状態解析推論ユニット12によって返却される。さらに、推論の結果は、コンテキスト空間、導かれた会話ステートメントおよびコンテキスト空間に対する推論Dおよび変更された状態Dを考慮して新たに生成された状態情報である状態Dである。典型的な例は、例えば、新たに得られた状態情報である状態Eを考慮して、以下に説明する会話擬似自然言語を用いたユーザ対話により、新たな推論が論理推論において導かれることである。これは、推論結果として結果Rを提供するために、新たな状態およびパス表現パターンDをさらにもたらす。」、 「【0078】 コンテキスト取得とは、コンテキスト空間の階層を考慮したパスマッチングによる、コンテキスト空間内のコンテキストエントリオブジェクトの評価である。パスマッチングは、包含を用いた絶対的なパス表現または相対的なパス表現によって、コンテキストエントリオブジェクトを特定することである。後者の場合、2つのデータ配信モデルすなわち集中化モデルおよび分散化モデルを用いて、空間コンテキストの階層内の空間オブジェクトの間においてピアツーピア形式で、論理オブジェクトを介して特定の動作を共有することができるか、またはコンテンツオブジェクトを介して特徴を共有することができる。したがって、コンテキスト取得は、コンテキスト空間上で実行されているアプリケーションのランタイムにおいて包含を介してコンテキストエントリオブジェクト間で動的な動作を共有することを可能にするパラダイムである。 【0079】 図5に示されているコンテキスト空間に関連する別の側面は、コンテキスト空間表現の様々な要素間のインタフェースである。本発明によれば、これは、アプリケーションメッセージングインタフェースプロトコルを用いてピアツーピア方式で行われる。 【0080】 ここで、ピアツーピアシステムは、リソースを共有するために空間ピアを収集する分散型コンテキスト空間システムを生成するために、明らかにネットワークアドレス指定スキームを使用するシステムのクラスを一般に意味する。コンテキスト空間に参加する空間ピアは通常、対話メッセージを用いて、収集されたその他の空間ピアからのリソースを提供および消費する。典型的なピアツーピアシステムにより、空間ピアは、ピアグループ内で協調し、環境状態解析装置のリソースを発見できるようになる。」、 「【0097】 コンテキスト空間アーキテクチャフレームワーク内のコンテキスト取得は、アプリケーションメッセージングインタフェースメソッドに送られたパスステートメントを介して、含まれている空間オブジェクトから、コンテンツブジェクトを動的に取得するか、または現在の空間オブジェクトに存在しない論理オブジェクトを呼び出すために使用する。 【0098】 アプリケーションメッセージングインタフェースとさらに情報を交換するための別のメカニズムは、上で簡単に説明したように、本発明に係る会話擬似自然言語を適用することである。この会話擬似自然言語は、環境状態解析装置に情報を提供するために使用することができるか、または環境状態解析装置が書き込んだ結果を提供するために使用することができる。」、 「【0104】 本発明によれば、会話擬似自然言語の発話行為は、関連するメソッドにより環境状態解析装置との通信を可能にする。ユーザは、合成(synthesis)を用いて命題Pを発声として生成することにより環境状態装置と対話する。 【0105】 環境状態解析システムは、現在の状況において知覚した発声に基づいて、命題Pの意味を推論することができると考えられる。」、 「【0128】 図7に示されているように、最初にステップS16において、環境状態取得解析ユニット12-1により、考慮対象のコンテキスト空間内の包含関係およびコンテキストエントリオブジェクトの特定が実行される。そして、ステップS18において、発見された知識は、同じユニットによって知識表現言語に変換される。このような変換は、図6に示されているパス表現およびツリー変換ユニット12-2のオペレーションに関連付けることができる。 【0129】 図7に示されているように、コンテキストアウェアアプリケーションのオペレーション中に、コントローラ16は、環境状態取得解析ユニット12-1とともにコンテキストアウェアアプリケーションのランタイム中にさらなる知識または推論のうちのいずれかまたは両方が利用可能となっているかどうかを継続的に評価する。利用可能であれば、ステップS22において、知識表現または推論表現のうちのいずれかまたは両方は拡張され、それに続いてコントローラ16により、コンテキストアウェアアプリケーションを終了するかについての判断が行われる。終了しない場合、手順は分岐してコンテキストアウェアアプリケーションを続行し、そうでない場合、コンテキストアウェアアプリケーションは終了する。」、 「【0131】 上述したことを考慮すれば、本発明は、環境状態解析装置およびコンピュータシステム内に実装される、関連する方法を提供することが明らかとなる。この環境状態解析装置および関連する方法は、知覚された環境の状態および設定に関連した取得、変換および推論を用いて環境状態を解析することで、アプリケーションランタイム動作の適応および変更のためのコンテキストアウェアアプリケーションを発展させることができる。」 と記載されているように、本件発明の「コンテキスト空間アーキテクチャフレームワーク内のコンテキスト取得」の一つのメカニズムとして、コンテキストウェアアプリケーションから、アプリケーションメッセージングインタフェースメソッドに送られたパスステートメントを介して、含まれている空間オブジェクトから、コンテンツブジェクトを動的に取得する方法と、前記アプリケーションメッセージングインタフェースとは別のメカニズムである会話擬似自然言語を用いたユーザ対話により、新たな推論が論理推論において導かれて、推論結果として結果Rを提供するとともに、新たな状態およびパス表現パターンを知識ベースにもたらす方法とが開示されている。 このように、発明の詳細な説明に開示された仕様は、モデル化されたコンテキストエントリオブジェクトの包含関係を用いて、コンテキストエントリオブジェクトに関する情報(「コンテキスト」と同義と解される)を取得することと、会話擬似自然言語を用いたユーザ対話により、新たな推論が論理推論において導かれて、推論結果として結果Rを取得することとが、記載されているに過ぎず、請求項1に記載されたような、モデル化されたコンテキストエントリオブジェクトの包含関係を用いて、コンテキストエントリオブジェクトに関する情報(「コンテキスト」と同義と解される)を取得する際に、ユーザ対話のための形式的擬似自然言語を用いて、ユーザの入出力処理を実行するものではない。 よって、この点において、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものでない。 (2)請求項2について (2-1)請求項2記載の発明特定事項「環境状態モデル化ユニット」は「環境状態をモデル化するコンテンツオブジェクトと、所定の形の処理を実行する論理オブジェクトと、考慮対象の空間に含まれる部分空間に対する空間オブジェクトとのうちの少なくとも1つを表現するコンテキストエントリオブジェクトによりモデル化された環境内の空間の集合体として環境をモデル化する」と明記されている。 しかしながら、上記(1-1)における指摘と同様に、請求項2記載の発明特定事項「環境状態モデル化ユニット」が、発明の詳細な説明に記載された前記どのユニットを意味するのか不明であり、この点で前記請求項2記載「環境状態モデル化ユニット」は、発明の詳細な説明に記載されたものでない。 なお、請求項2記載の「環境状態モデル化ユニット」は、「環境状態をモデル化するコンテンツオブジェクトと、所定の形の処理を実行する論理オブジェクトと、考慮対象の空間に含まれる部分空間に対する空間オブジェクトとのうちの少なくとも1つを表現するコンテキストエントリオブジェクトによりモデル化された環境内の空間の集合体として環境をモデル化する」ものであるが、請求項1記載の「環境状態モデル化ユニット」は、「包含関係を用いて、環境状態を表現するコンテキストエントリオブジェクトに関する情報の取得を実行する」ものであり、「環境状態モデル化ユニット」の有する機能が、請求項2と請求項1において異なっており、この点においても、請求項2記載の発明特定事項「環境状態モデル化ユニット」が、発明の詳細な説明に記載された前記どのユニットを意味するのか不明であり、前記請求項2記載の「環境状態モデル化ユニット」は、発明の詳細な説明に記載されたものでない。 (2-2)請求項2記載の発明特定事項「コンテキスト取得ユニット」は、「包含関係を用いて環境状態を表現するコンテキストエントリオブジェクトに関する情報を取得する」ものであって、「ユーザ対話のための形式的擬似自然言語を用いてコンテキスト取得の際にユーザの入出力処理を実行するもの」と明記されている。 しかしながら、上記(1-1)における指摘と同様に、請求項2記載の発明特定事項「コンテキスト取得ユニット」が、発明の詳細な説明に記載された前記どのユニットを意味するのか不明であり、この点で前記請求項2記載の「コンテキスト取得ユニット」は、発明の詳細な説明に記載されたものでない。 さらに、請求項2記載の「コンテキスト取得ユニット」は、「包含関係を用いて環境状態を表現するコンテキストエントリオブジェクトに関する情報を取得する」ものであって「ユーザ対話のための形式的擬似自然言語を用いてコンテキスト取得の際にユーザの入出力処理を実行するもの」ものであるのに対して、請求項1記載の「コンテキスト取得ユニット」は、「ユーザ対話のための形式的擬似自然言語を用いて、コンテキスト取得の際にユーザの入出力処理を実行する」ものである。このように、「コンテキスト取得ユニット」の有する機能が、請求項2と請求項1において異なっており、この点においても、請求項2記載の発明特定事項「コンテキスト取得ユニット」が、発明の詳細な説明に記載された前記どのユニットを意味するのか不明であり、前記請求項2記載の「コンテキスト取得ユニット」は、発明の詳細な説明に記載されたものでない。 (2-3)請求項2における記載 「包含関係を用いて環境状態を表現するコンテキストエントリオブジェクトに関する情報を取得するコンテキスト取得ユニットと を備えており、前記コンテキスト取得ユニットは、ユーザ対話のための形式的擬似自然言語を用いてコンテキスト取得の際にユーザの入出力処理を実行するものであり…」からすると、請求項2に係る発明「環境解析装置」は、モデル化されたコンテキストエントリオブジェクトの包含関係を用いて、コンテキストエントリオブジェクトに関する情報(「コンテキスト」と同義と解される)を取得する際に、ユーザ対話のための形式的擬似自然言語を用いて、ユーザの入出力処理を実行するものである。 しかしながら上記(1-3)における指摘と同様に、発明の詳細な説明に開示された仕様は、モデル化されたコンテキストエントリオブジェクトの包含関係を用いて、コンテキストエントリオブジェクトに関する情報(「コンテキスト」と同義と解される)を取得することと、会話擬似自然言語を用いたユーザ対話により、新たな推論が論理推論において導かれて、推論結果として結果Rを取得することとが、記載されているに過ぎず、請求項2に記載されたような、モデル化されたコンテキストエントリオブジェクトの包含関係を用いて、コンテキストエントリオブジェクトに関する情報(「コンテキスト」と同義と解される)を取得する際に、ユーザ対話のための形式的擬似自然言語を用いて、ユーザの入出力処理を実行するものではない。 よって、この点において、請求項2に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものでない。 [理由2]この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 記 (1)請求項1について (1-1)請求項1記載の「環境は、環境状態をモデル化するコンテンツオブジェクトと、所定の形の処理を行う論理オブジェクトと、考慮対象の空間に含まれる部分空間に対する空間オブジェクトとのうちの少なくとも1つを表現するコンテキストエントリオブジェクトによってモデル化された環境内の空間の集合体であり」について、前記「モデル化された環境内の空間の集合体」とは、具体的に、どこに、どのような形態で物理的または論理的に構築されているのか、不明であるとともに、請求項1記載の「環境解析装置」との物理的な位置関係や包含関係も不明であり、発明が明確でない。 (1-2)また、発明の詳細な説明を参照しても、段落【0045】、【0067】?【0078】、及び【0084】に、環境状態をモデル化するコンテンツオブジェクトと、所定の形の処理を行う論理オブジェクトと、考慮対象の空間に含まれる部分空間に対する空間オブジェクトコンテキストとは、コンテキスト空間内に記憶されている旨が明記されているように、「コンテキスト空間」が、環境状態をモデル化するコンテンツオブジェクトと、所定の形の処理を行う論理オブジェクトと、考慮対象の空間に含まれる部分空間に対する空間オブジェクトコンテキストとを格納するものである。 このように、請求項1記載の「環境」と発明の詳細な説明に記載された「コンテキスト空間」との関係も不明であり、発明が明確でない。 (1-3)請求項1記載の「環境状態モデル化ユニットが、包含関係を用いて、環境状態を表現するコンテキストエントリオブジェクトに関する情報の取得を実行する」について、具体的に「環境状態モデル化ユニット」は、どのような構成により、何を入力として、何のどのような「包含関係」をどのように用いて、どのコンテキストエントリオブジェクトに関する情報を取得するのか、「環境状態モデル化ユニット」の技術的態様が不明であり、発明が明確でない。 (1-4)請求項1記載の「コンテキスト取得ユニットが、ユーザ対話のための形式的擬似自然言語を用いて、コンテキスト取得の際にユーザの入出力処理を実行する」について、具体的に「コンテキスト取得ユニット」は、前記「環境状態モデル化ユニット」が「包含関係を用いて、環境状態を表現するコンテキストエントリオブジェクトに関する情報の取得を実行する」際に、いつ、どのタイミングで、ユーザ対話のための形式的擬似自然言語を用いて、どのような「ユーザの入出力処理」を実行するのか、不明であるとともに、「ユーザの入出力処理」と前記「包含関係を用いて」「環境状態を表現するコンテキストエントリオブジェクトに関する情報」を取得する処理との論理的な関係も不明であり、発明が明確でない。 (1-5)請求項1記載の「擬似自然言語は、知識空間と、文法と、語彙と、環境を解析するための論理処理アルゴリズムとを構成要素として含む」における「知識空間」とは、具体的に何に関する知識空間であるのか、知識の内容が不明であるとともに、前記「環境」(または、「コンテキスト空間」)との対応関係も不明りょうであり、発明が明確でない。 (1-6)請求項1記載の「入出力処理が、コンテキストクエリと、コンテキストアサーションと、コンテキスト表現とのうちの少なくとも1つに関してコンテキスト取得の際に実行される」について、「コンテキストクエリ」、「コンテキストアサーション」、「コンテキスト表現」と、前記「包含関係を用いて」「環境状態を表現するコンテキストエントリオブジェクトに関する情報」を取得する処理との論理的な関係が不明であり、発明が明確でない。 (2)請求項2について (2-1)請求項2記載の「環境は、環境状態をモデル化するコンテンツオブジェクトと、所定の形の処理を行う論理オブジェクトと、考慮対象の空間に含まれる部分空間に対する空間オブジェクトとのうちの少なくとも1つを表現するコンテキストエントリオブジェクトによりモデル化された環境内の空間の集合体であり」、及び請求項2記載の「環境状態をモデル化するコンテンツオブジェクトと、所定の形の処理を行う論理オブジェクトと、考慮対象の空間に含まれる部分空間に対する空間オブジェクトとのうちの少なくとも1つを表現するコンテキストエントリオブジェクトによりモデル化された環境内の空間の集合体」としてモデル化された環境について、前記「モデル化された環境内の空間の集合体」とは、具体的に、どこに、どのような形態で物理的または論理的に構築されているのか、不明であるとともに、請求項2記載の「環境解析装置」との物理的な位置関係や包含関係も不明であり、発明が明確でない。 (2-2)また、発明の詳細な説明を参照しても、段落【0045】、【0067】?【0078】、及び【0084】に、環境状態をモデル化するコンテンツオブジェクトと、所定の形の処理を行う論理オブジェクトと、考慮対象の空間に含まれる部分空間に対する空間オブジェクトコンテキストとは、コンテキスト空間内に記憶されている旨が明記されているように、「コンテキスト空間」が、環境状態をモデル化するコンテンツオブジェクトと、所定の形の処理を行う論理オブジェクトと、考慮対象の空間に含まれる部分空間に対する空間オブジェクトコンテキストとを格納するものである。 このように、請求項2記載の「空間の集合体」と発明の詳細な説明に記載された「コンテキスト空間」との関係も不明であり、発明が明確でない。 (2-3)請求項2記載の「環境状態モデル化ユニット」は、どのような構成により、どのような処理を行うことで、「環境状態をモデル化するコンテンツオブジェクトと、所定の形の処理を実行する論理オブジェクトと、考慮対象の空間に含まれる部分空間に対する空間オブジェクトとのうちの少なくとも1つを表現するコンテキストエントリオブジェクトによりモデル化された環境内の空間の集合体」として「環境をモデル化する」のか、「環境状態モデル化ユニット」の具体的な構成が不明であり、発明が明確でない。 (2-4)請求項2記載の「コンテキスト取得ユニット」が、「包含関係を用いて、環境状態を表現するコンテキストエントリオブジェクトに関する情報の取得する」について、具体的に「コンテキスト取得ユニット」は、どのような構成により、何を入力として、何の何のどのような「包含関係」をどのように用いて、どのコンテキストエントリオブジェクトに関する情報を取得するのか、「コンテキスト取得ユニット」の具体的な構成が不明であり、発明が明確でない。 (2-5)請求項2記載の「コンテキスト取得ユニット」が、「ユーザ対話のための形式的擬似自然言語を用いて、コンテキスト取得の際にユーザの入出力処理を実行する」について、具体的に「コンテキスト取得ユニット」は、「包含関係を用いて、環境状態を表現するコンテキストエントリオブジェクトに関する情報の取得する」際に、いつ、どのタイミングで、ユーザ対話のための形式的擬似自然言語を用いて、どのような「ユーザの入出力処理」を実行するのか、不明であるとともに、「ユーザの入出力処理」と前記「包含関係を用いて」「環境状態を表現するコンテキストエントリオブジェクトに関する情報」を取得する処理との論理的な関係も不明であり、発明が明確でない。 (2-6)請求項2記載の「擬似自然言語は、知識空間と、文法と、語彙と、環境を解析するための論理処理アルゴリズムとを構成要素として含む」における「知識空間」とは、具体的に何に関する知識空間であるのか、知識の内容が不明であるとともに、前記「環境」(または、「空間の集合体」、「コンテキスト空間」)との対応関係も不明りょうであり、発明が明確でない。 (2-7)請求項2記載の「コンテキストクエリと、コンテキストアサーションと、コンテキスト表現とのうちの少なくとも1つに関してコンテキスト取得の際に入出力処理を実行する」について、「コンテキストクエリ」、「コンテキストアサーション」、「コンテキスト表現」と、前記「包含関係を用いて」「環境状態を表現するコンテキストエントリオブジェクトに関する情報」を取得する処理との論理的な関係が不明であり、発明が明確でない。 (3)請求項1及び請求項2について (3-1)請求項1においては「環境状態モデル化ユニット」が、「包含関係を用いて、環境状態を表現するコンテキストエントリオブジェクトに関する情報の取得を実行する」ものであるのに対して、請求項2においては「環境状態モデル化ユニット」は、「環境状態をモデル化するコンテンツオブジェクトと、所定の形の処理を実行する論理オブジェクトと、考慮対象の空間に含まれる部分空間に対する空間オブジェクトとのうちの少なくとも1つを表現するコンテキストエントリオブジェクトによりモデル化された環境内の空間の集合体として環境をモデル化する」ものであり、「環境状態モデル化ユニット」の有する機能が、請求項1と請求項2において異なっており、この点において、請求項1及び請求項2記載の発明特定事項「環境状態モデル化ユニット」が具体的にどのようなユニットを意味するのか、発明の詳細な説明を参照しても不明であり、発明が明確でない。 (3-2)請求項1においては「コンテキスト取得ユニット」は、「ユーザ対話のための形式的擬似自然言語を用いて、コンテキスト取得の際にユーザの入出力処理を実行する」ものであるが、請求項2においては「コンテキスト取得ユニット」は、「包含関係を用いて環境状態を表現するコンテキストエントリオブジェクトに関する情報を取得する」ものであって、「ユーザ対話のための形式的擬似自然言語を用いてコンテキスト取得の際にユーザの入出力処理を実行するもの」ものである。このように、「コンテキスト取得ユニット」の有する機能が、請求項1と請求項2において異なっており、この点において、請求項1及び請求項2記載の発明特定事項「コンテキスト取得ユニット」が具体的にどのようなユニットを意味するのか、発明の詳細な説明を参照しても不明であり、発明が明確でない。 」 |
審理終結日 | 2012-06-26 |
結審通知日 | 2012-06-29 |
審決日 | 2012-07-13 |
出願番号 | 特願2007-508732(P2007-508732) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WZF
(G06N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 北川 純次、長谷川 篤男 |
特許庁審判長 |
長島 孝志 |
特許庁審判官 |
殿川 雅也 石井 茂和 |
発明の名称 | 環境状態解析 |
代理人 | 有原 幸一 |
代理人 | 河村 英文 |
代理人 | 深川 英里 |
代理人 | 奥山 尚一 |
代理人 | 松島 鉄男 |
代理人 | 広瀬 幹規 |