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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47G
管理番号 1262544
審判番号 不服2011-8398  
総通号数 154 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-04-20 
確定日 2012-08-29 
事件の表示 特願2009-88980号「鏡装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年10月28日出願公開、特開2010-240012号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成21年4月1日の出願であって、平成23年2月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成23年4月20日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、その審判請求と同時に手続補正がなされたものである。

第2.平成23年4月20日の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年4月20日付けの手続補正(以下「本件補正」という)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「半透明鏡板と光によってメッセージを表示する表示装置とから成り、前記半透明鏡板を、背面に非透光材を積層して不透光部と透光部に区画し、前記表示装置の、前記メッセージを通し、しかも、前面を構成する透光板を、前記透光部の背面全域を被装する広さのものとすると共に、前記表示装置を、前記透光板において、透光部の前記背面全域を被装した透明シリコン樹脂系粘着剤で、前記半透明鏡板に接着した、鏡装置。」と補正された。

上記の補正は、発明を特定するために必要な事項である「透光部の背面」について、その「全域」であることを限定するものであり、かつ、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明と、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許法第17条の2第5項第2号において規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに相当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という)が、独立して特許を受けることができるものであるかどうか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するかどうか)について以下に検討する。

2.引用刊行物とその記載内容
引用刊行物:実願昭58-60432号(実開昭59-166769号)のマイクロフィルム

原査定の理由に引用され、本願出願前に頒布された引用刊行物には、「液晶式マジックミラー」に関して、以下の記載がある。

ア.「2.実用新案登録請求の範囲
前面に半透過性ミラーを配し、前記半透過性ミラーの後方に液晶表示装置を配設したことを特徴とする液晶式マジックミラー。」(明細書第1ページ第4?7行)(下線は、当審にて付与。以下、同様)

イ.「第2図は本考案の実施例1による液晶式ミラーの断面図である。ガラス又はプラスチック材料より成る上下基板8、9と、該上下基板8、9を所定の間隔を介して封着しているシール材7と、上下基板8、9間に保持された液晶物質6と、上下基板8、9に接着された偏光板11、12より成る液晶表示装置の一方の偏光板11の上に接着されたマジックミラー10より構成されている。」(明細書第2ページ第18行?第3ページ第5行)

ウ.「また、第3図は全面切り換えではなく、ある表示を任意にミラーに表示させたりすることを可能とさせた実施例2である。
上下基板19、20と、該上下基板19、20を所定の間隔を介して封着しているシール材16と、上下基板19、20の間に保持された液晶物質14と、上下基板19、20に接着された偏光板21、22より成るネガ表示式液晶表示装置をマジックミラー17の表示させたい部分の後方に配し、ミラーとしてのみ使用させたい部分にはマジックミラー17の後方に光不透過膜18を接着等により配している。
又必要に応じてバック照明15を液晶表示装置の後方に設けて表示をより鮮明に表示させることも可能である。
従って以上のような構造を取ることによって、ミラーの中に必要な時に表示を浮き出させることが可能となる多用途ミラーとして利用価値の高い物となる。
又、時間の表示を行うようにすれば、女性の場合に化粧用の鏡として時間を見ながらでも化粧を直したりすることが出来る。
又、表示がミラーの中で浮き出て見えるので装飾効果があり装飾用表示装置としても利用出来るものである。
また、第3図における実施例2は、表示部以外はミラー専用となっているが、その部分を第2図に示す鏡面、透過切り換え型の液晶式マジックミラーにしてもよい。」(明細書第4ページ第10行?第5ページ第18行)

エ.「また実施例1、2において、半透過性ミラーの後方に液晶表示装置を配しているが、半透過性ミラーに接着、枠を利用して固定する等の色々な方法が考えられる。」(明細書第6ページ第6?9行)

オ.第3図の実施例2において、上記ウ.の記載「第3図における実施例2は、表示部以外はミラー専用となっている」を併せみると、マジックミラー17の光不透過膜18に被われていない部分が表示部となっている。そして、液晶表示装置の前面には上基板19及び偏光板21が配置されており、それらが表示部の後方を被うように配置されていることが示されている。さらに、上記エ.には、実施例2において、液晶表示装置は、半透過性ミラーに接着により固定されることが記載されている。

以上、ア.ないしエ.の記載、及びオ.の第3図に図示された事項を総合すると、引用刊行物には、次の発明(以下「引用発明」という)が記載されている。

「マジックミラー17と時間の表示を行う液晶表示装置とからなり、液晶表示装置をマジックミラー17の表示部の後方に配し、表示部以外のミラーとしてのみ使用させたい部分にはマジックミラー17の後方に光不透過膜18を接着等により配しており、液晶表示装置の前面に配置された上基板19及び偏光板21を、マジックミラー17における表示部の後方を被うように設けるとともに、液晶表示装置を上基板19及び偏光板21において、マジックミラー17に接着した液晶式マジックミラー。」

3.発明の対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「マジックミラー17」は、本願補正発明の「半透明鏡板」に相当し、引用発明の「時間の表示を行う液晶表示装置」は、液晶表示は光による表示であることが技術常識から明らかであって、時間の表示は文字や数字等によりメッセージを表示することに他ならないから、本願補正発明の「光によってメッセージを表示する表示装置」に相当し、引用発明の「後方」は、本願補正発明の「背面」に相当し、引用発明の「光不透過膜18」は、本願補正発明の「非透光材」に相当し、引用発明の「接着等により配」することは、本願補正発明の「積層」することに相当し、引用発明の「前面に配置された上基板19及び偏光板21」は、本願補正発明の「メッセージを通し、しかも、前面を構成する透光板」に相当し、引用発明の「表示部」は、本願補正発明の「透光部」に相当し、引用発明の「マジックミラー17の後方に光不透過膜18を接着等により配して」いる部分は、本願補正発明の「不透光部」に相当し、引用発明の「マジックミラー17における表示部」を「被うように設ける」ことは、本願補正発明の「透光部の背面」を「被装」することに相当し、引用発明の「液晶式マジックミラー」は、少なくともミラーとして使用するものであるから、本願補正発明の「鏡装置」に相当する。
そして、引用発明の「表示部以外のミラーとしてのみ使用させたい部分にはマジックミラー17の後方に光不透過膜18を接着等により配」することは、光不透過膜18を設けてミラーとして用いる部分と、それ以外の表示部として利用する部分に区画することに他ならないから、本願補正発明の「半透明鏡板を、背面に非透光材を積層して不透光部と透光部に区画」することに相当する。

したがって、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「半透明鏡板と光によってメッセージを表示する表示装置とから成り、前記半透明鏡板を、背面に非透光材を積層して不透光部と透光部に区画し、前記表示装置の、前記メッセージを通し、しかも、前面を構成する透光板を、前記透光部の背面を被装する広さのものとすると共に、前記表示装置を、前記透光板において、前記半透明鏡板に接着した、鏡装置。」

[相違点1]
本願補正発明においては、「前面を構成する透光板を、透光部の背面全域を被装する広さのものとする」のに対して、引用発明においては、上基板19及び偏光板21がマジックミラー17における表示部の後方を被うにあたって、その「全域」を被うように設けるものか明確でない点。

[相違点2]
本願補正発明においては、「表示装置を、透光板において、透光部の背面全域を被装した透明シリコン樹脂系粘着剤で、半透明鏡板に接着した」のに対して、引用発明においては、その点が明らかでない点。

4.当審の判断

[相違点1について]
引用発明における表示部は、表示部である以上、その全域が表示のために用いられることが望ましいことは、当業者であれば当然認識しうることである。したがって、引用発明の液晶表示装置をマジックミラー17の表示部の後方に配するにあたり、液晶表示装置の前面に配置された上基板19及び偏光板21を、表示部の全域を被うものとすることにより上記相違点1に係る発明特定事項とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

[相違点2について]
光学系の部材同士を接着するにあたって、透明なシリコン系接着剤を用いることは周知(特開平11-142624号公報、段落【0049】の記載/特開平3-51881号公報、公報第3ページ右上欄第11?13行等を参照)であるから、引用発明にこの周知の技術的事項を適用して、液晶表示装置を上基板19及び偏光板21において、マジックミラー17の表示部に接着するにあたって、透明シリコン樹脂系の接着剤を採用すること、その際に、接着強度等を考慮して表示部の後方全域を被うようにすることにより上記相違点2に係る発明特定事項とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

そして、本願補正発明によって得られる効果も、引用発明、及び周知の技術的事項から当業者であれば予測できる程度のものであって、格別なものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用発明、及び周知の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際、独立して特許を受けることができない。

5.結び
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
本件補正は上述のように却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、出願時の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。(以下「本願発明」という)

「半透明鏡板と光によってメッセージを表示する表示装置とから成り、前記半透明鏡板を、背面に非透光材を積層して不透光部と透光部に区画し、前記表示装置の、前記メッセージを通し、しかも、前面を構成する透光板を、前記透光部の背面を被装する広さのものとすると共に、前記表示装置を、前記透光板において、透光部の前記背面全域を被装した透明シリコン樹脂系粘着剤で、前記半透明鏡板に接着した、鏡装置。」

2.引用刊行物とその記載内容
引用刊行物とその記載内容は、上記「第2.2.」に記載したとおりのものである。

3.発明の対比・判断
本願発明は、上記「第2.」で検討した本願補正発明から、「透光部の背面」についての限定を省いたものである。そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに限定を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2.4.」に記載したとおり、引用発明、及び周知の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び周知の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.結び
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許をうけることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-06-29 
結審通知日 2012-07-02 
審決日 2012-07-17 
出願番号 特願2009-88980(P2009-88980)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A47G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川口 真一  
特許庁審判長 横林 秀治郎
特許庁審判官 関谷 一夫
松下 聡
発明の名称 鏡装置  
代理人 江藤 剛  
代理人 泉 克文  
代理人 中島 重雄  

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