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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A01B
管理番号 1262549
審判番号 不服2010-27860  
総通号数 154 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-12-09 
確定日 2012-09-13 
事件の表示 特願2005-155082「農作業機」拒絶査定不服審判事件〔平成18年12月7日出願公開、特開2006-325499〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,平成17年5月27日の出願であって,平成22年9月30日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年12月9日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに,同時に提出された手続補正書により特許請求の範囲及び明細書の補正(以下,「本件補正」という。)がなされたものである。
その後,平成23年5月16日付けで,審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ,同年7月14日に回答書が提出されたものである。

第2.本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1.本件補正後の本願発明
本件補正により,特許請求の範囲の請求項1は,
「走行車に連結され、この走行車の走行により移動しながら作業をする農作業機であって、
前記走行車のPTO軸にジョイントを介して連結される入力軸と、
この入力軸の回転に基づいて作動して発電する発電手段と、
この発電手段による電力で作動する電気部品と、
前記発電手段からの電力を貯えるバッテリと、
前記走行車に連結される中央作業部と、
この中央作業部の左右方向端部に回動軸を中心として回動可能に設けられ、一方向への回動により折畳み非作業状態になり、他方向への回動により展開作業状態になる延長作業部とを備え、 前記中央作業部は、前記入力軸、前記発電手段および前記バッテリを有し、
前記電気部品は、前記バッテリを電源とするもので前記延長作業部を前記回動軸を中心として回動させる電動油圧シリンダである
ことを特徴とする農作業機。」
と補正された(下線は補正前の請求項3(平成22年3月16日付けの手続補正書を参照)の記載から変更された箇所に当審にて付与)。

本件補正のうち,補正前の請求項3に記載された発明を特定するために必要な事項(以下,「発明特定事項」という。)に,「前記」との記載を追加する補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下,「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第4号に規定された明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
また,本件補正のうち,補正前の請求項3に記載された発明特定事項である
・「中央作業部」について,「走行車に連結される」ものであること
・「駆動手段」について,「バッテリを電源とするもので」あって「電動油圧シリンダ」であること
を限定する補正は,同第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

そこで,本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「本願補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用例
(1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である
特開2004-154011号公報(以下,「引用例1」という。)
には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審にて付与)。

(1a)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ロータリ耕耘装置に関するものである。」

(1b)「【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1及び図2において、1はロータリ耕耘装置であり、このロータリ耕耘装置1は、トラクタ等の車両の後部等に、三点リンク機構等を介して着脱自在に連結される機枠2を備えている。この機枠2は、左右方向中央部のギヤケース3から左右両側にサポートアーム4を突設すると共に、左側のサポートアーム4の外端側に伝動ケース5の上部を連結し、且つ右側のサポートアーム4の外端側にサイドフレーム6の上部を連結して、背面視門型状に主構成されている。 【0011】
<略>
【0012】
機枠2のギヤケース3には、トラクタのPTO軸からユニバーサルジョイント等を介してギヤケース3内のベベルギヤ伝動機構11に動力を入力する入力軸12が設けられ、この入力軸12から入力された動力は、ギヤケース3内のベベルギヤ伝動機構11から左側のサポートアーム4内の伝動軸13を介して伝動ケース5内のチェーン伝動機構14に伝達されると共に、このチェーン伝動機構14から爪軸9に伝達されて、該爪軸9が軸心回りに矢示A方向に回転駆動されるようになっている。」

(1c)「【0019】
<略>
図3?図7において、左側のサポートアーム4内に前記伝動軸13が設けられ、右側のサポートアーム4内に動力取出軸61が設けられ、動力取出軸61の内端側はベアリング62を介してサポートアーム4に回転自在に支持され、動力取出軸61の外端側は、サイドフレーム6を挿通孔63を介して左右方向に貫通して、サイドフレーム6外側方に突出し、支持筒64及びベアリング65を介してサイドフレーム6に軸廻り回転自在に支持されている。而して、動力取出軸61、ベアリング62,65及び支持筒64等によって、入力軸12の動力をサイドフレーム6側に取り出す動力取出機構67が構成されている。【0020】
ベベルギヤ伝動機構11と伝動軸13と動力取出軸61との間に、動力伝達切換機構(クラッチ機構)69が設けられている。動力伝達切換機構69は、支持筒軸70とスライド軸71と操作手段72とを備える。伝動軸13と動力取出軸61とに小径の突出軸13A,61Aが互いに対向するように突設され、この突出軸13A,61A間に、支持筒軸70が遊転自在に外嵌されている。伝動軸13と動力取出軸61と支持筒軸70とに、スライド軸71が軸方向に移動自在に外嵌され、スライド軸71はベベルギヤ伝動機構11のベベルギヤ11aとスプライン嵌合されている。スライド軸71の右端部外周に係合凹部73が設けられている。
【0021】
伝動軸13の左端部、動力取出軸61の右端部、支持筒軸70の外周にスプライン13a,61a,70aが形成され、スライド軸71の内周面の左端部に、伝動軸13、動力取出軸61及び支持筒軸70の各スプライン13a,61a,70aに選択的にスプライン嵌合するスプライン71aが形成されている。
即ち、スライド軸71を、図3に示す如く左側(左位置)に移動すると、スライド軸71が伝動軸13にスプライン嵌合して、入力軸12の動力は、ベベル伝動機構11からスライド軸71を介して伝動軸13に伝達され(耕耘部駆動状態)、スライド軸71を、図4に示す如く左右方向中央(ニュートラル位置)に移動すると、スライド軸71が支持筒軸70にスプライン嵌合して、入力軸12の動力は、ベベル伝動機構11からスライド軸71を介して支持筒軸70に伝達され、スライド軸71を、図5に示す如く右側(右位置)に移動すると、スライド軸71が動力取出軸61にスプライン嵌合して、入力軸12の動力は、ベベル伝動機構11からスライド軸71を介して動力取出軸13に伝達される(動力取出状態)ようになっている。」

(1d)「【0055】
<略>
図31は他の実施形態を示し、発電機243が、右側のサポートアーム4やサイドフレーム6にステー等を介して固定して設けられ、この発電機243に動力取出軸61の突出端部を組み込むように装着して、動力取出軸61の回転駆動により、発電機243から電力を取り出すようにしている。発電機243に、プラス側とマイナス側のリード線(ハーネス)244,245を介してカプラー246が設けられている。その他の点は、前記図1?図18の実施形態又は図19?図26の実施形態の場合と同様の構成であり、図示省略の動力伝達切換機構69によって、入力軸12の動力が伝動軸13に伝達される耕耘部駆動状態と、入力軸12の動力が動力取出軸61に伝達される動力取出状態と、入力軸12の動力が、伝動軸13と動力取出軸61との両方に伝達される両者駆動状態又は伝動軸13と動力取出軸61との両方に伝達されなくなる停止状態とに切り換えることができるようになっている。【0056】
上記実施の形態の場合、動力取出軸61の回転を利用することにより、発電機243を駆動してロータリ耕耘装置1側で電力を取り出すことができるので、例えば、ロータリ耕耘装置1に播種機や施肥機を取り付けて、モータでこれらを駆動する場合、トラクタ側からハーネスを引いて電力を供給する必要がなくなって、ロータリ耕耘装置1側の発電機243から播種機や施肥機のモータに電力を供給できるようになり、便利である。
<略>」

また,上記摘記事項(1b)の「機枠2は,…左右両側にサポートアーム4を突設すると共に、…右側のサポートアーム4の外端側にサイドフレーム6の上部を連結して、背面視門型状に主構成されている。」との記載,及び,摘記事項(1d)の「発電機243が、右側のサポートアーム4やサイドフレーム6にステー等を介して固定して設けられ」との記載から,「機枠2」が「発電機243」を有することは明らかである。
さらに,「ロータリ耕耘装置1」が,トラクタの走行により移動しながら作業をすることは自明である。
これらの記載事項及び図示内容並びに自明な事項を総合すると,引用例1には以下の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「トラクタに連結され,このトラクタの走行により移動しながら作業をするロータリ耕耘装置1であって,
前記トラクタのPTO軸にユニバーサルジョイントを介して動力を入力する入力軸12と,
この入力軸12の動力が伝達される動力取出軸61の回転駆動により電力を取り出す発電機243と,
この発電機243からの電力で駆動する播種機や施肥機のモータと,
前記トラクタに連結される機枠2とを備え,
前記機枠2は,前記入力軸12及び前記発電機243を有する
ロータリ耕耘装置1。」

(2)引用例2
審尋において引用された本願出願前に頒布された刊行物である
特開2004-57026号公報(以下,「引用例2」という。)
には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審にて付与)。

(2a)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、延長作業体を折り畳むことができる折畳み式の農作業機に関する。」

(2b)「【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の農作業機の一実施の形態の構成を図面を参照して説明する。
【0012】
図1ないし図3において、1は農作業機で、この農作業機1は、例えば走行車としての牽引車であるトラクタTに装着して使用する牽引式の折畳み式の代掻き機等で、トラクタTの牽引により圃場を前方に移動しながら、所定の農作業である代掻作業(例えば耕耘作業および整地作業)および土引き作業等を行うものである。
【0013】
この農作業機1は、例えば3分割式のもので、常に水平状の中央作業体である作業機本体2を備えている。
【0014】
この作業機本体2の左右両端部には、作業機本体2の作業幅を延長するための左右一対の延長作業体3が略前後方向の回動中心軸4を中心とする上方回動(例えば約150°)により例えば上斜め後方側に折畳み可能に設けられている。
【0015】
また、作業機本体2の両端部には、延長作業体3を回動中心軸4を中心として上下方向に回動させる例えば電動式の左右一対の駆動手段6が設けられている。なお、駆動手段6は、シリンダ等を用いた油圧式のものでもよく、また、駆動手段6を設けることなく、延長作業体3を人力で手動回動するような構成でもよい。
【0016】
さらに、作業機本体2の両端部には、延長作業体3を上方に付勢して駆動手段6による延長作業体3の上方回動を補助するとともに、延長作業体3の下方回動の速度を減少させる左右一対の回動補助兼速度減少手段としてのガススプリング7が作業機本体2と延長作業体3とを跨ぐように設けられている。」

(2c)「【0018】
ここで、中央の作業機本体2は、耕耘作業をするロータリ等の耕耘体11を有し、この耕耘体11の上方がカバー体を兼ねた機枠12にて覆われている。この機枠12の後端部には、耕耘体11の後方位置に上下方向に回動可能に位置して整地作業をする略板状の整地体13が設けられている。
【0019】
そして、機枠12の中央部には連結手段15が設けられ、この連結手段15にトラクタTの3点リンク機構等の作業機昇降用支持装置が連結されている。また、機枠12の中央部には入力軸16が回転可能に設けられ、この入力軸16にトラクタTのPTO軸がユニバーサルジョイント等を介して連結されている。」

(2d)「【0040】
次に、上記一実施の形態の動作等を説明する。
【0041】
例えば最大の作業幅で代掻作業をする場合、左右両側の延長作業体3を展開状態にするとともに、左右両側の補助整地体31を使用展開状態にし、かつ、互いに連結されて一体化した整地体13および延長整地体23を作業待機姿勢にする。その後、農作業機1全体を作業機昇降用支持装置にて所望位置まで下降させて、代掻作業を行う。
【0042】
また、例えば中央の作業機本体2のみで作業をする場合、或いは、中央の作業機本体2と左右いずれか一方の延長作業体3とで作業をする場合は、延長作業体3を折畳状態に切り換える必要がある。」

また,上記摘記事項(2c)の「中央の作業機本体2は、…機枠12にて覆われている。」との記載と,「機枠12の中央部には連結手段15が設けられ、この連結手段15にトラクタTの3点リンク機構等の作業機昇降用支持装置が連結されている。」との記載とから,「作業機本体2」が「トラクタT」に「連結」されていることは明らかである。
同様に,上記摘記事項(2c)の「中央の作業機本体2は、…機枠12にて覆われている。」との記載と,「機枠12の中央部には入力軸16が回転可能に設けられ」との記載とから,「作業機本体2」が「入力軸16」を有することも明らかである。

これらの記載事項及び図示内容並びに自明な事項を総合すると,引用例2には以下の発明(以下,「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「走行車であるトラクタTに牽引される農作業機1であって,
前記トラクタTのPTO軸にユニバーサルジョイントを介して連結される入力軸16と,
前記トラクタTに連結される作業機本体2と,
この作業機本体2の左右両端部に回動中心軸4を中心として駆動手段6により回動可能に設けられ,上方回動により折畳状態になり,下方回動により展開状態になる延長作業体3とを備え,
前記作業機本体2は,前記入力軸16を有し,
前記駆動手段6は,電動式又はシリンダ等を用いた油圧式のものである
農作業機1。」

3.対比
本願補正発明と引用発明1とを対比すると,引用発明1の「トラクタ」は,本願補正発明の「走行車」に相当し,以下同様に,
・「ロータリ耕耘装置1」は,「農作業機」に,
・「ユニバーサルジョイント」は,「ジョイント」に,
・「動力を入力する」ことは,「連結される」ことに,
・「入力軸12の動力が伝達される動力取出軸61の回転駆動により電力を取り出す」ことは,「入力軸の回転に基づいて作動して発電する」ことに,
・「発電機243」は,「発電手段」に,
・「発電機243からの電力で駆動する」ことは,「発電手段による電力で作動する」ことに,
・「播種機や施肥機のモータ」は,「電気部品」に,
それぞれ相当する。
また,引用発明1の「トラクタに連結される機枠2」と本願補正発明の「走行車に連結される中央作業部」とは,いずれも「走行車に連結される作業部」という概念において共通する。

してみると,両発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「走行車に連結され,この走行車の走行により移動しながら作業をする農作業機であって,
前記走行車のPTO軸にジョイントを介して連結される入力軸と,
この入力軸の回転に基づいて作動して発電する発電手段と,
この発電手段による電力で作動する電気部品と,
前記走行車に連結される作業部とを備え,
前記作業部は,前記入力軸及び前記発電手段を有する
農作業機。」

[相違点1]
「走行車に連結される作業部」について,本願補正発明では,農作業機の「中央作業部」であって,「この中央作業部の左右方向端部に回動軸を中心として回動可能に設けられ、一方向への回動により折畳み非作業状態になり、他方向への回動により展開作業状態になる延長作業部とを備え」るのに対して,引用発明1では,「延長作業部」を備えない農作業機の「作業部」である点。

[相違点2]
本願補正発明の農作業機は,「発電手段からの電力を貯えるバッテリ」を備え,当該「バッテリを電源とする」電気部品を有するのに対して,引用発明1の農作業機は,バッテリを備えておらず,また,その結果,「走行車に連結される作業部」が,本願補正発明では,「入力軸、発電手段」に加え「バッテリ」も有するのに対し,引用発明では,「入力軸、発電手段」は有するものの「バッテリ」を有しない点。

[相違点3]
「電気部品」について,本願補正発明では,「延長作業部を回動軸を中心として回動させる電動油圧シリンダである」のに対して,引用発明1では「播種機や施肥機のモータ」である点。

4.判断
上記各相違点について以下に検討する。

(1)[相違点1]について
引用発明2には,「トラクタT(本願補正発明の「走行車」に相当。以下,本欄において,括弧内は同じ。)に連結される作業機本体2(「中央作業部」に相当)」と,「この作業機本体2の左右両端部に回動中心軸4(「回動軸」に相当)を中心として駆動手段6により回動可能に設けられ,上方回動(「一方向への回動」に相当)により折畳状態(「折畳み非作業状態」に相当)になり,下方回動(「他方向への回動」に相当)により展開状態(「展開作業状態」に相当)になる延長作業体3(「延長作業部」に相当)」とからなる作業部が開示されている。
引用発明1及び2は,いずれも走行車の走行により移動しながら作業をする農作業機に関する発明である点で共通しているから,引用発明1の「走行車に連結される作業部」として引用発明2の「中央作業部」及び「延長作業部」とからなる作業部の構造を採用することによって,上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得た事項である。

(2)[相違点2]について
作業車又は農作業機の技術分野において,エンジンの動力により発電機を駆動し,発電された電気を発電機が搭載された機器と同じ機器に搭載されたバッテリに蓄電して,蓄電した電力をこれらの機器に備え付けられた電動アクチュエータに供給する技術は,原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である,例えば,下記の公知文献に開示されるように周知技術である。

A.特開2004-166546号公報
(特に,段落【0050】及び【0051】の記載を参照。同文献には,エンジン17の動力により芝刈り作業車1に搭載された発電機26を駆動し,発電された電気を芝刈り作業車1に搭載されたバッテリ71に蓄電して,蓄電した電力を芝刈り作業車1に備え付けられた電動モータ53などに供給する技術が開示されている。)
B.特開2001-310748号公報
(特に,段落【0007】?【0012】の記載を参照。同文献には,エンジン13の動力により乗用施肥田植機1に搭載された発電機15を駆動し,発電された電気を乗用施肥田植機1に搭載されたバッテリ16に蓄電して,蓄電した電力を乗用施肥田植機1に備え付けられたモータ56に供給する技術が開示されている。)

してみると,引用発明1に上記周知技術を適用して,引用発明1の「発電手段」において発電された電力を「バッテリ」に蓄えるようにすることは当業者が適宜なし得た事項である。
また,引用発明1は,上記摘記事項(1d)に「トラクタ側からハーネスを引いて電力を供給する必要がなくなって、ロータリ耕耘装置1側の発電機243から播種機や施肥機のモータに電力を供給できるようになり、便利である。」と記載されるように,走行車と農作業機との間の配線が省略できることを利点とするものであるから,引用発明1において「バッテリ」を設けるようにする場合,「発電手段」が設けられた農作業機側にこれを設けるようにすることは明らかである。
よって,引用発明1に上記周知技術を適用して,「発電手段」において発電された電力を「バッテリ」に蓄えるようにするとともに,当該「バッテリ」を「発電手段」が搭載された「作業部」に搭載し,当該「作業部」に備え付けられた「電気部品」を駆動するようにすることによって,上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得た事項である。

(3)[相違点3]について
引用発明2において,「延長作業部」を回動軸を中心として回動させる「駆動手段6」として,「電動式又はシリンダ等を用いた油圧式」を用いることができるとされているように,延長作業部の駆動手段は,公知のアクチュエータの中から当業者が適宜選択し得たものであり,「電動油圧シリンダ」は特に文献を例示するまでもなく周知なアクチュエータであるから,これを採用することも,当業者が適宜なし得た事項である。
してみると,上記(1)での検討を踏まえて当業者が容易に想到し得た構成の延長作業部を回動させるための手段として「電動油圧シリンダ」を採用し,引用発明1に記載された「播種機や施肥機のモータ」とともに当該「電動油圧シリンダ」をも電力で作動させるようにすることによって,上記相違点3に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得た事項である。

(4)審判請求人の回答書における主張について
(イ)本願発明の一の特徴に係る主張
審判請求人は,回答書において以下の主張をしている。

「本願発明1[当審注:本審決における本願補正発明に対応]は、一の特徴として『走行車のPTO軸からの動力に基づいて発電した電力を貯えるバッテリ』を備えている。
これに対し、引用文献2記載の発明(引用発明2)[当審注:本審決における引用発明1に対応]は電力を貯えるバッテリを備えておらず、また、引用文献1記載の発明(引用発明1)[当審注:本審決における引用発明2に対応]は前提となる発電手段を備えていない。さらに、引用文献3ないし5[当審注:引用例3が本審決における周知例A,引用例4が本審決における周知例Bに各々対応]記載のものは、発電した電力を貯えるバッテリを備えているが、このバッテリは、『自走式作業機(芝刈り作業車、乗用施肥田植機、野菜植付機)のエンジンからの動力に基づいて発電した電力を貯えるバッテリ』であり、本願発明1の『走行車のPTO軸からの動力に基づいて発電した電力を貯えるバッテリ』とは明らかに異なる。
このように、本願発明1の一の特徴に係る『走行車のPTO軸からの動力に基づいて発電した電力を貯えるバッテリ』に関しては、引用文献1ないし5のいずれにも記載および示唆がない。」 (回答書(2)欄)

しかしながら,上記主張は,引用発明1若しくは2又は上記周知技術と,本願補正発明とを個々に対比し,引用発明1及び2並びに上記周知技術のそれぞれが「走行車のPTO軸からの動力に基づいて発電した電力を貯えるバッテリ」を備えるものではない旨を主張するものであって,これらの発明や上記周知技術の組み合わせについて考慮していない主張であるから採用できない。
そして,これらの発明や周知技術の組み合わせにより,「走行車のPTO軸からの動力に基づいて発電した電力を貯えるバッテリ」について当業者が容易想到できることは,上記(2)欄に記載したとおりである。
よって,審判請求人による上記主張は採用できない。

(ロ)周知技術適用の動機付け欠如に係る主張
審判請求人は,回答書において以下の主張をしている。

「そもそも、引用文献3ないし5は、引用文献1や2のような牽引式のものではなく、エンジンを搭載した自走式作業機に関するものであるから、引用文献1および2と引用文献3ないし5とを結び付ける動機付けもない。」(回答書(2)欄)

しかしながら,上記周知技術における発電機とバッテリとを兼備する構成は,エンジンを搭載した自走式作業機にのみ適用可能というものではなく,上記周知例A及びBにも,特定の構成においてのみ適用可能であることを裏付ける記載はないから,引用発明1に上記周知技術を適用することを阻害する要因はない。一方で,発電機はエンジンが駆動している時のみ電力を供給できるものであり,また,農業機械の技術分野において,エンジンが駆動している時以外においても電気部品を利用する必要があることが技術常識であることを考慮すると,むしろ,バッテリを設けることについての動機付けがあるというべきである。
よって,審判請求人による上記主張は採用できない。

(5)効果の予測性について
審判請求人は,回答書において,本願補正発明は以下に挙げる格別の作用効果を奏する旨を主張している。

(α)「入力軸の回転に基づいて作動して発電する発電手段と、この発電手段による電力で作動する電気部品とを備える構成であるから、走行車からの外部電源が不要で、走行車から下りて手作業で配線接続をする必要がなく、」
(β)「発電手段からの電力を貯えるバッテリ、つまり走行車のPTO軸からの動力に基づいて発電した電力を貯えるバッテリを備えるため、電力消費の無駄を防止でき、」
(γ)「エンジンを搭載していない牽引式の農作業機であっても、バッテリに貯えられた電力を利用して電気部品を適宜作動させることができ、例えば牽引式の農作業機が走行車から取り外されてPTO軸と入力軸との連結が解除された状態時でも、必要に応じて、バッテリの電力で電気部品を適切に作動させることができ(平成22年3月16日付け意見書参照)、よって例えば走行車から取り外した農作業機を倉庫内で折畳む際に(例えば倉庫の入口が低い場合や狭い場合等に農作業機を倉庫内で折畳むことがある)、PTO軸と入力軸とが連結されていなくても、バッテリに蓄電された折畳みに必要とされる量の電力を利用して電動油圧シリンダ(電気部品)を適切に作動させることができるため、発電手段およびバッテリを有して比較的重量が安定した中央作業部に対して延長作業部を回動させて展開作業状態から折畳み非作業状態に適切かつ安定的に切り換えることができる」

しかしながら,効果(α)は,摘記事項(1d)に「トラクタ側からハーネスを引いて電力を供給する必要がなくなって、ロータリ耕耘装置1側の発電機243から播種機や施肥機のモータに電力を供給できるようになり、便利である。」と記載された引用発明1の効果から,当業者が予測できるものである。
また,効果(β)は,上記周知技術による自明な効果であり,効果(γ)も,引用発明1に引用発明2及び上記周知技術を適用することにより奏される自明な効果である。
よって,本願補正発明の効果は,引用発明1及び2並びに上記周知技術から,当業者が予測できた範囲内のものである。

(6)本件補正の適否の検討
以上のとおり,本願補正発明は,引用発明1及び2並びに上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

(7)むすび
したがって,本件補正は,改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって,補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3.本願発明について
(1)本願発明の認定
本件補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成22年3月16日受付の手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。

「走行車に連結され、この走行車の走行により移動しながら作業をする農作業機であって、
前記走行車のPTO軸にジョイントを介して連結される入力軸と、
この入力軸の回転に基づいて作動して発電する発電手段と、
この発電手段による電力で作動する電気部品と、
前記発電手段からの電力を貯えるバッテリと
を備えることを特徴とする農作業機。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1及び引用例1に開示された引用発明1は,上記第2.[理由]2.(1)欄に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明には,上記第2.[理由]1.欄に記載した本願補正発明から
「走行車に連結される中央作業部と、
この中央作業部の左右方向端部に回動軸を中心として回動可能に設けられ、一方向への回動により折畳み非作業状態になり、他方向への回動により展開作業状態になる延長作業部とを備え、
前記中央作業部は、前記入力軸、前記発電手段および前記バッテリを有し、
前記電気部品は、前記バッテリを電源とするもので前記延長作業部を前記回動軸を中心として回動させる電動油圧シリンダである」
との発明特定事項を削除したものに相当する。

してみると,本願発明と引用発明1との相違点は,以下のとおりである。

[相違点2´]
本願発明の農作業機は,「発電手段からの電力を貯えるバッテリ」を備えるのに対して,引用発明1の農作業機は,バッテリを備えていない点。

そして,上記相違点2´は上記相違点2の一部であり,上記相違点2については,第2.[理由]4.(2)欄に記載したとおり,引用発明1及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるから,上記相違点2´についても,当業者が容易に想到し得たものである。
また,本願発明の効果も,引用発明1及び上記周知技術から,当業者が予測できた範囲内のものである。

よって,本願発明は,引用発明1及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明1及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,その余の請求項について論及するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-09-30 
結審通知日 2011-10-05 
審決日 2011-10-18 
出願番号 特願2005-155082(P2005-155082)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A01B)
P 1 8・ 575- Z (A01B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 上田 泰小野 郁磨木村 隆一  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 仁科 雅弘
宮崎 恭
発明の名称 農作業機  
代理人 樺澤 襄  
代理人 樺澤 聡  
代理人 山田 哲也  
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