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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1262584
審判番号 不服2011-23358  
総通号数 154 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-10-28 
確定日 2012-09-03 
事件の表示 特願2011-127639「制御装置、制御方法、アクセス装置、アクセス方法、プログラムおよび追記型記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成23年10月 6日出願公開、特開2011-198464〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成16年10月19日(優先権主張平成15年10月20日、平成16年3月2日)に出願した特願2004-304572号の一部を平成21年8月17日に特許出願した特願2009-188719号の一部を平成22年12月22日に特許出願した特願2010-286696号の一部をさらに平成23年6月7日に特許出願したものであって、平成23年7月5日付けの拒絶理由の通知に応答して同年8月31日付けで意見書が提出されたが、同年9月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月28日付けで拒絶査定不服審判が請求されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
複数の記録層を有する追記型情報記録媒体に記録する記録装置であって、
前記記録装置は、レーザを前記追記型情報記録媒体の一方の表面から前記追記型情報記録媒体に照射する光ヘッド装置を備え、
前記追記型情報記録媒体は、前記複数の記録層のそれぞれに、
ユーザデータを記録するためのユーザデータ領域と、
制御パラメータの調整を行うための調整用領域と、
記録レーザパワーの調整を行うためのOPC領域と、
を含み、
前記調整用領域と前記OPC領域とは、前記複数の記録層のそれぞれにおいて、異なる位置にあり、
前記複数の記録層のうちの前記光ヘッド装置に最も近い記録層は、前記レーザを透過し、
かつ、
前記光ヘッド装置に最も近い記録層から前記一方の表面までの距離と、前記光ヘッド装置に最も近い記録層以外の記録層から前記一方の表面までの距離とは、異なる距離であり、
前記追記型情報記録媒体の使用に先立って、前記複数の記録層のそれぞれにおいて、前記調整用領域内の全領域を記録する
ことを特徴とする記録装置。」

3.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-170265号公報(平成14年6月14日公開、以下「引用例1」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。(なお、下線は当審で付与した。)

(1)「【0007】
【課題を解決するための手段】本発明のチルトサーボ装置は、光源から発射されたレーザビームを光記録媒体の記録面に導くとともに光記録媒体の記録面で反射されたレーザビームを分割型の光検出器に導く光学系と、光検出器の分割部毎の出力信号に応じて読取信号を生成する読取信号生成手段と、を備えた光記録媒体記録再生装置のチルトサーボ制御装置であって、光検出器の出力信号の差成分を含むプッシュプル成分信号を算出するプッシュプル成分生成手段と、プッシュプル成分信号に基づいて光記録媒体の記録面のレーザビームの照射位置における法線とレーザビームの光軸方向とのなすチルト角を示すチルトエラー信号を生成するチルトエラー信号生成手段と、チルト角を調整するためのチルト角調整手段と、チルトエラー信号を減少させるようにチルト角調整手段を駆動する駆動手段と、を備えたことを特徴としている。」

(2)「【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は本発明が適用された光ディスクプレーヤを示している。この光ディスクプレーヤにおいて、ピックアップ10はレーザ光を光ディスク12に照射し、光ディスク12からのその反射光を受光して受光強度に応じた信号を発生する。光ディスク12はモータ14によって回転駆動される。光ディスク12としては、DVD-ROM、DVD-R、DVD-RAM及びDVD-RWのDVD系のディスクと、CD-ROM及びCD-RのCD系のディスクとを用いることができる。DVD-RAMには記録層の1層ディスクと2層ディスクとがある。
【0010】DVD-RWは、図2に示すように、ディスク内周側から外周側に向けて、PCA(Power Calibration Area)、RMA(Recording Management Area)、リードインエリア、データ、リードアウトエリアからなるデータ構造を有している。PCAはレーザビームの記録パワーを決定するときの試し書きを行うエリアであり、RMAは記録に関する管理情報を書き込むエリアである。リードインエリアの一部にはエンボス部が形成されている。エンボス部にはコピー防止等に関する情報が記録されている。
【0011】DVD-Rには、General用とAuthoring用とがある。General用のDVD-Rは、図3に示すように、ディスク内周側から外周側に向けて、PCA、RMA、リードインエリア、データ、リードアウトエリアからなるデータ構造を有している。リードインエリアの一部にはプリライト部が形成されている。プリライト部はDVD-RWのエンボス部と同じ位置に、エンボス部の同様の情報を予め備えている。Authoring用のDVD-Rは、図2におけるエンボス部や図3におけるプリライト部に相当する部分がない。
【0012】DVD-RW及びDVD-Rの記録面の物理構造は、図4に示すように、ディスク基板101上のランド102間に形成された記録用のトラックであるグルーブ103を一定した周期で蛇行(ウォブリング)させたグルーブウォブリング方式に、ランド102の領域にグルーブ103間を繋ぐランドプリピット(LPP)104を組み合わせた構造になっている。情報はグルーブ103にのみ記録される。また、記録面はポリカーボネイト等の保護層105で覆われている。グルーブウォブリングによって得られる信号は主に記録時のディスクの回転制御や記録用マスタークロックの生成や、プリアドレス等のディスクの各種情報の取得に用いられる。例えば、後述する乗算器44の出力信号(プッシュプル信号)の低域成分がグルーブウォブルによって得られる信号(グルーブウォブル)であり、図5に示す如きサイン波形となる。このサイン波形に部分的に生じた短い幅のパルスがLPP成分に相当し、閾値THとの比較によってLPP成分を判別することができる。」

(3)「【0058】Authoring用のDVD-Rの記録制御において、システム制御回路1は、図21に示すように、駆動回路8によってスライダ100を強制的に駆動してピックアップ10をディスク12のPCAエリアへ移動させディスク12を強制的に回転駆動し(ステップS31)、DVD用の半導体レーザ素子21の駆動を指示して650nmの波長のレーザビームを記録パワーで発射させ(ステップS32)、スイッチ92のオンによりディスク12を回転駆動させてスピンドルサーボ回路93によるスピンドル回転制御が行われ、更にスイッチ65のオンによりフォーカスサーボ部53によるフォーカシングが行われ、スイッチ47がオンさせてトラッキングサーボ回路54によるトラッキングが行われる(ステップS33)。そして、ディスクのPCAエリアで試し書きを行ってレーザビームの最適仮記録パワーを設定する(ステップS34)。記録パワーを段階的に変化させて最適仮記録パワーを設定することが行われる。
【0059】システム制御回路1は、ステップS27の実行後、試し書きしたピットに対してDVD用の半導体レーザ素子21の駆動を指示して650nmの波長のレーザビームを再生パワーで発射させ(ステップS35)、フォーカスサーボ53においてオフセット調整によってRF信号の最適なレベルを検出する(ステップS36)。すなわち、フォーカスサーボ53においてフォーカスエラー信号に図示しないバイアス回路からのバイアス電圧を重畳して、そのバイアス電圧を変化させてRF信号レベルが最大となるバイアス電圧を検出することが行われる。なお、これと同時にトラッキングサーボ回路54においても同様のオフセット調整を行ってRF信号の最適レベルを検出しても良い。次いで、チルトサーボ系において液晶パネル13の各領域13a?13cを駆動してRF信号の最適レベルを検出する(ステップS37)。すなわち、チルト補正ROM75の各アドレスに対応して領域13a?13c毎の補正値を読み出し、それら補正値をセレクタ88を介してレジスタ96a?96cに順次供給し、PWM部97a?97cによってチルト駆動信号TIDを生成させて駆動回路28を介して液晶パネル13の各領域13a?13cを駆動し、その中でRF信号レベルが最大となるアドレス値又は3つの補正値を検出することが行われる。
【0060】このようにして最適なRF信号レベルを検出した状態において、加算器69の出力信号のレベルを基準メモリ71に基準信号として記憶させる(ステップS38)。切換スイッチ70はステップS38の実行中には加算器69の出力信号を基準メモリ71に中継するが、ステップS38の終了によって切り換わって加算器69の出力信号、プッシュプルオフセット信号を減算器72に中継する。そして、ディスクのPCAエリアで試し書きを再び行ってレーザビームの最適記録パワーを設定する(ステップS39)。記録動作を開始し(ステップS40)、ステップ29と同様に、DVD-R及びDVD-RW用のチルトサーボ部において算出されたチルトエラー信号に応じた液晶パネル13の各領域13a?13cの駆動を行う(ステップS41)。このステップS41の動作は記録動作の終了まで行われる。
【0061】Authoring用のDVD-Rにはユーザが管理情報等を予め書き込む(プリライト)ことができる。そこで、Authoring用のDVD-Rの記録制御の場合にかかるプリライトを利用すると、図22のように制御することもできる。すなわち、システム制御回路1は、ステップS31?S34の実行後、駆動回路8によってスライダ100を強制的に駆動してピックアップ10をディスク12のプリライト可能なプリライト領域(General用のDVDのプリライト部に対応する領域)へ移動させ(ステップS61)、DVD用の半導体レーザ素子21の駆動を指示して650nmの波長のレーザビームを上記の最適仮記録パワーで発射させ(ステップS62)、ディスクのプリライト領域で最適仮記録パワーで書き込みを行う(ステップS63)。システム制御回路1は、ステップS63の実行後、プリライト領域の書き込みしたピットに対してDVD用の半導体レーザ素子21の駆動を指示して650nmの波長のレーザビームを再生パワーで発射させ(ステップS64)、ステップS36に進んでフォーカスサーボ回路53においてオフセット調整によってRF信号の最適なレベルを検出する。以下、ステップS37?S41が行われる。なお、システム制御回路1は、ステップS39の実行前に駆動回路8によってスライダ100を強制的に駆動してピックアップ10をディスク12のPCAエリアへ移動させる(ステップS65)。」

上記摘示事項及び図面の記載を参酌すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

「DVD-Rの記録面に記録する記録再生装置であって、
前記記録再生装置は、レーザビームを前記DVD-Rに照射するピックアップを備え、
前記DVD-Rは、ディスク内周側から外周側に向けて、
レーザビームの最適記録パワーを設定するためのPCAエリアと、
リードインエリアと、
データエリアと、
を含み、
前記リードインエリアの一部にフォーカスサーボ回路のオフセット調整を行うためのプリライト領域が形成され、
前記プリライト領域で書き込みを行った後、記録動作を開始する記録再生装置。」

同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-231588号公報(平成9年9月5日公開、以下「引用例2」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。
(なお、下線は当審で付与した。)

(4)「【0039】第2の実施の形態
第2の実施の形態は、請求項3と請求項4の発明に対応している。先の第1の実施の形態では、グルーブ部とランド部に記録情報を有するメディアの場合を説明した。この第2の実施の形態では、図13に示したような片側読み取り方式の2層メディアについて、メディアの各記録層(レイヤ)でそれぞれ制御オフセット値を最適化することにより、高品質の記録再生を可能にする点(請求項3の発明)、また制御オフセット値を測定する点(請求項3の発明)に特徴を有している。
【0040】片側読み取り方式の2層メディアにおいても、オフセット量は照射する記録層(レイヤ0とレイヤ1)によって違いが発生する。このオフセット量の違いは、メディアの溝形状の違い、基板厚の違い等が原因である。具体的にいえば、先の図14で説明したようなトラッキング誤差信号の位相ズレ量や、次の図4で説明するように、フォーカスの最適フォーカスオフセット値は、メディアの基板厚によって変化する。
【0041】図4は、図13に示した片側読み取り方式の2層メディアについて、メディアの基板厚とオフセットの変化状態の一例を示す図である。図の横軸は基板厚、縦軸はフォーカスオフセット値(F_(O))を示す。
【0042】この図4に示すように、先の図13の2層メディアでは、基板厚が0.6mmのとき、最適なフォーカスオフセット値(F_(O))が得られる。一般的にいえば、このオフセット値は、メディアの溝形状のアンバランスの度合い、メディアの厚みの違いなどの原因で、メディアの記録層(レイヤ)毎に異なっている。そこで、この第2の実施の形態では、2層メディアの各レイヤについて、それぞれ制御オフセットを測定して、それぞれの測定値を記憶し、対物レンズの光スポットの照射されている記録層(レイヤ)によって制御オフセット値を切り替えるようにしている(請求項3の発明)。」

4.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「記録面」及び「DVD-R」は、本願発明の「記録層」及び「追記型情報記録媒体」にそれぞれ相当し、引用発明の「記録再生装置」は、DVD-Rに記録するものであるから、本願発明の「記録装置」と共通する。すると、引用発明と本願発明とは、「記録層を有する追記型情報記録媒体に記録する記録装置」で共通する。
(2)引用発明の「レーザビーム」は、本願発明の「レーザ」に相当する。そして、引用発明の「ピックアップ」は、「レーザビームを前記DVD-Rに照射する」ものであり、レーザビームをDVD-Rの一方の表面から照射することは明らかであるから、本願発明の「光ヘッド装置」に相当する。
(3)引用発明の「データエリア」は、本願発明の「ユーザデータ領域」に相当する。
(4)引用発明の「プリライト領域」は、「フォーカスサーボ回路のオフセット調整を行うための」領域であり、本願発明の「制御パラメータの調整を行うための」「調整用領域」に相当する。
(5)引用発明の「PCAエリア」は、「レーザビームの最適記録パワーを設定するための」エリアであるから、本願発明の「記録レーザパワーの調整を行うための」「OPC領域」に相当する。
(6)引用発明の「プリライト領域」と「PCA」とが、異なる位置に設けられていることは明らかであるから、引用発明と本願発明とは、「前記調整用領域と前記OPC領域とは、前記」「記録層」「において、異なる位置にあり」で共通する。
(7)引用発明は、プリライト領域への書き込みを行った後、記録動作を開始するものであるから、DVD-Rの使用に先立って、プリライト領域を記録しているといえ、引用発明と本願発明とは、「前記追記型情報記録媒体の使用に先立って、前記」「記録層」「において、前記調整用領域内の」「領域を記録する」で共通する。

そうすると、本願発明と引用発明との<一致点><相違点>は以下のとおりである。

<一致点>
「記録層を有する追記型情報記録媒体に記録する記録装置であって、
前記記録装置は、レーザを前記追記型情報記録媒体の一方の表面から前記追記型情報記録媒体に照射する光ヘッド装置を備え、
前記追記型情報記録媒体は、前記記録層に、
ユーザデータを記録するためのユーザデータ領域と、
制御パラメータの調整を行うための調整用領域と、
記録レーザパワーの調整を行うためのOPC領域と、
を含み、
前記調整用領域と前記OPC領域とは、前記記録層において、異なる位置にあり、
前記追記型情報記録媒体の使用に先立って、前記記録層において、前記調整用領域内の領域を記録する記録装置。」の点。

<相違点>
(a)「追記型情報記録媒体」について、本願発明は、「複数の」記録層を有すると共に前記「複数の」記録層の「それぞれに」ユーザデータを記録するためのユーザデータ領域と、制御パラメータの調整を行うための調整用領域と、記録レーザパワーの調整を行うためのOPC領域とを含み、前記調整用領域と前記OPC領域とは、前記「複数の」記録層の「それぞれにおいて」異なる位置にあり、「前記複数の記録層のうちの前記光ヘッド装置に最も近い記録層は、前記レーザを透過し、かつ、前記光ヘッド装置に最も近い記録層から一方の表面までの距離と、前記光ヘッド装置に最も近い記録層以外の記録層から前記一方の表面までの距離とは、異なる距離であ」るのに対し、引用発明は、そのようなものではない点。

(b)本願発明は、前記追記型情報記録媒体の使用に先立って、「複数の」記録層の「それぞれにおいて」、前記調整領域内の「全」領域を記録するのに対し、引用発明は、そのようなものではない点。

5.判断
そこで、上記相違点について検討する。

相違点(a)について
制御パラメータの調整に関して、引用発明及び本願発明と同一の技術分野に属する引用例2には、片側読み取り方式の2層メディアにおいて、2層メディアの各レイヤ(記録層)について、それぞれ制御オフセット値を最適化して高品質の記録再生を可能にする技術思想が記載されている。
一方、片面読み取り方式の2層構造の追記型情報記録媒体は、本願の優先権主張の日前において、周知である(必要であれば、特開2001-126255号公報の【0001】【発明の属する技術分野】の記載等を参照されたい。)。
そうすると、引用発明において、周知の片面読み取り方式の2層構造の追記型情報記録媒体に対して記録層毎に記録再生の最適化を行う上記技術思想を適用して、『「複数の」記録層を有すると共に前記「複数の」記録層の「それぞれに、」ユーザデータを記録するためのユーザデータ領域と、制御パラメータの調整を行うための調整用領域と、記録レーザパワーの調整を行うためのOPC領域とを含み、前記調整用領域と前記OPC領域とは、前記「複数の」記録層の「それぞれにおいて、」異なる位置にあり』とすることは当業者が容易に想到できたものである。
また、片側読み取り方式の2層メディアにおいては、「前記複数の記録層のうちの前記光ヘッド装置に最も近い記録層は、前記レーザを透過し、かつ、前記光ヘッド装置に最も近い記録層から一方の表面までの距離と、前記光ヘッド装置に最も近い記録層以外の記録層から前記一方の表面までの距離とは、異なる距離であ」ることは至極当然のことである。

相違点(b)について
相違点(a)で検討したように、「複数の」記録層を有すると共に前記「複数の」記録層の「それぞれに」制御パラメータの調整を行うための調整用領域を設けることは当業者が容易に想到できたものであり、調整領域内の領域をどの程度記録するかは制御パラメータの調整に係り、当業者が適宜設定し得る設計的事項である。

なお、審判請求人は、請求の理由において、「多層記録媒体の各層のそれぞれの特性を各層に対する制御パラメータに反映できるという予測可能な効果に加えて、記録の対象となる層以外の、記録媒体の表面から記録の対象となる層までのすべての層の特性を、記録対象となる層に対応する制御パラメータに反映できるという予測不可能な効果を奏することとなり、これにより、複数の記録層のそれぞれに対する適切な制御パラメータを初めて正確に求めることができるという本発明における特有の効果が得られます。このように、引用文献1を本発明が得られるように引用文献2に組み合わせることは、決して引用文献1と引用文献2との単純な組み合わせにより達成できるものではなく、従って、本発明の進歩性はこれらの引用文献によって否定されるものではありません。」旨の主張をしている。
しかしながら、引用例2に記載された、片面読み取り方式の2層(多層)メディアを使用した記録信号の再生または情報の記録を行う光ディスクドライブにおいては、光ピックアップから照射されるレーザ光は多層メディアの1つの表面から照射されるのであるから(図13)、記録の対象となる層(レイヤ1)以外の、記録媒体の表面から記録の対象となる層までの層(レイヤ0)の特性を、記録対象となる層に対応する制御パラメータに反映していることは明らかであって、請求人の上記主張は採用することができない。

そして、上記相違点を総合的に判断しても、本願発明が奏する効果は引用例1,2及び周知技術から当業者が十分に予測できたものであって格別なものとはいえない。

6.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用例1,2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願はその余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-07-09 
結審通知日 2012-07-10 
審決日 2012-07-23 
出願番号 特願2011-127639(P2011-127639)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ゆずりは 広行  
特許庁審判長 小松 正
特許庁審判官 関谷 隆一
山田 洋一
発明の名称 制御装置、制御方法、アクセス装置、アクセス方法、プログラムおよび追記型記録媒体  
代理人 大塩 竹志  
代理人 安村 高明  
代理人 山本 秀策  

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