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審決分類 審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  H01L
審判 全部無効 2項進歩性  H01L
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  H01L
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01L
管理番号 1262620
審判番号 無効2011-800211  
総通号数 154 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-10-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-10-19 
確定日 2012-09-05 
事件の表示 上記当事者間の特許第2540791号発明「p型窒化ガリウム系化合物半導体の製造方法。」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 事案の概要
本件は、請求人が、被請求人が特許権者である特許第2540791号(以下「本件特許」という。平成3年12月24日出願(優先日平成3年11月8日)、平成8年7月25日登録、後記第2、1の、平成9年9月24日付け訂正請求による訂正の前後を通じて請求項の数は4である。)の請求項1ないし4に係る発明についての特許を無効とすることを求める事案である。

第2 手続の経緯
1 本件特許の訂正に係る経緯は以下のとおりである。

平成9年4月7日?9日 特許異議の申立(9件、平成9年異議第71558号)
平成9年9月24日 訂正請求
平成10年2月18日 異議決定
上記異議決定の結論は、
「 訂正を認める。
特許第2540791号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。」
というものである。

2 本件審判の経緯は、以下のとおりである。

平成23年10月19日 審判請求
平成24年1月10日 審判事件答弁書提出(被請求人)
平成24年3月21日 口頭審理陳述要領書提出(被請求人)
平成24年3月22日 口頭審理陳述要領書提出(請求人)
平成24年4月4日 口頭審理

第3 本件発明
本件特許の請求項1ないし4に係る発明(以下、請求項1ないし4に記載された発明を、それぞれ、「本件発明1」ないし「本件発明4」といい、これらを総称して「本件発明」ということがある。なお、上記第2、1の訂正後のものである。)は、次の各請求項に記載されたとおりのものと認められる。
「【請求項1】 気相成長法により、p型不純物がドープされた窒化ガリウム系化合物半導体を成長させた後、実質的に水素を含まない雰囲気中、400°C以上の温度でアニーリングを行い、上記p型不純物がドープされた窒化ガリウム系化合物半導体層から水素を出すことを特徴とするp型窒化ガリウム系化合物半導体の製造方法。
【請求項2】 前記アニーリングは、そのアニーリング温度における窒化ガリウム系化合物半導体の分解圧以上に加圧した窒素雰囲気中で行うことを特徴とする請求項1に記載のp型窒化ガリウム系化合物半導体の製造方法。
【請求項3】 前記p型不純物をドープした窒化ガリウム系化合物半導体の上に、さらにキャップ層を形成した後、前記アニーリングを行うことを特徴とする請求項1ないし2に記載のp型窒化ガリウム系化合物半導体の製造方法。
【請求項4】 前記キャップ層はGa_(X)Al_(1-X)N(但し0≦X≦1)、Si_(3)N_(4)、SiO_(2)より選択されたいずれか一種の材料よりなることを特徴とする請求項3に記載のp型窒化ガリウム系化合物半導体の製造方法。」

第4 請求人の主張の概要及び証拠方法
1 無効理由
(1)無効理由1
本件発明1ないし4は、本件特許の出願前に頒布された甲第1号証に記載された発明と同一であるか、同号証に記載された発明及び本件特許出願時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号又は第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明1ないし4に係る特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

(2)無効理由2
本件発明1ないし4は、本件特許の出願前に頒布された甲第2号証に記載された発明と同一であるか、同号証に記載された発明及び本件特許出願時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号又は第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明1ないし4に係る特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

(3)無効理由3
本件発明1ないし4は、本件特許の出願前に頒布された甲第3号証に記載された発明と同一であるか、同号証に記載された発明及び本件特許出願時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号又は第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明1ないし4に係る特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

(4)無効理由4
本件発明1ないし4は、当業者が容易に実施することができない。また(旧特許法第36条4項)。本件特許の請求項1ないし請求項4に係る発明は不明確であるとともに、特許請求の範囲における記載が発明者の「推察」に基づく記載では、当業者が課題を解決できるとは限らないから、本件特許出願は、平成6年法律第116号による改正前の特許法(以下「旧特許法」という)第36条第4項、同条第5項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていないものであり、本件発明1ないし4に係る特許は旧特許法第123条第1項第4号の規定により無効とすべきものである。

2 甲号証
請求人が提出した甲号証は、以下のとおりである。

(1)甲第1号証 特開昭51-117199号公報
(2)甲第2号証 特開平2-111016号公報
(3)甲第3号証 特開平2-257679号公報
(4)甲第4号証 M.Glade et al.「Activation of Zn and Cd acceptors in InP grown by metalorganic vapor phase epitaxy」Applied Physics Letters Vol.54 No.24 1989年6月12日発行、2411?2413頁
(5)甲第5号証 D.M.Kozuch et al.「Hydrogen in carbon-doped GaAs grown by metalorganic molecular beam epitaxy」Applied Physics Letters Vol.57 No.24 1990年12月10日発行、2561?2563頁
(6)甲第6号証 G.R.Antell et al.「Passivation of zinc acceptors in InP by atomic hydrogen coming from arsine during metalorganic vapor phase epitaxy」Applied Physics Letters vol.53 No.9 1988年8月29日発行、758?760頁
(7)甲第7号証 A.Jalil et al.「Hydrogen neutralization of acceptors in highly doped GaInAs:Zn」Applied Physics Letters vol.57 No.26 1990年12月24日発行、2791?2793頁
(8)甲第8号証 J.I.Pankove et al.「Neutralization of Shallow Acceptor Levels in Silicon by Atomic Hydrogen」Physical Review Letters Vol.51 No24 1983年12月12日発行、2224?2225頁
(9)甲第9号証 J.Chevallier et al.「Neutralization of Defects and Dopants in III-V Semiconductors」Hydrogen in Semiconductors SEMICONDUCTORS AND SEMIMETALS Vol.34 Chapter13 447?449頁
(10)甲第10号証 特開昭62-150714公報
(11)甲第11号証 特開昭63-190329号公報
(12)甲第12号証 特開昭61-201425号公報
(13)甲第13号証 特開平2-129914号公報
(14)甲第14号証 特開昭54-71589号公報
(15)甲第15号証 特開昭64-82619号公報
(16)甲第16号証 M IShikawa et al.「Passivation and diffusion behaviour of Zn in MOCVD grown InGaAlP and its effect on the device cheracteristics of visible lasers」Institute of Physics Conference Series No106:Chapter8,Paper presented at International Symposium GaAs and Related Compounds,Karuizawa,Japan,1989 1990年発行、575?580頁
(17)甲第17号証 平木昭夫監修「高輝度青色発光のための電子材料技術」株式会社サイエンスフォーラム、1991年(平成3年)12月30日発行、41頁
(18)甲第18号証 特開昭57-136335号公報
(19)甲第19号証 G.Lulli et al.「ELECTRON BEAM ANNEALING OF SEMICONDUCTORS BY MEANS OF A SPECIFICALLY DESIGND ELECTRON GUN」Materials Chemistry and Physics,9 1983年発行、285?294頁
(20)甲第20号証 L.Dori et al.「RAPID ISOTHERMAL ANNEALING OF ION IMPLANTED SILICON DEVICES BY UNIFORM LARGE AREA IRRADIATION WITH A NEW ELECTRON BEAM SYSTEM」Journal de Physique、Colloque C5、1983年10月発行 415?419頁
(21)甲第21号証 Shuji Nakamura et al.「Thermal Annealing Effects on P-Type Mg-Doped GaN Films」Japanese Journal of Applied Physics Vol.31 No.2B pp.L8-L11 1992年2月15日発行、L139?L142頁
(22)甲第22号証 トリケップス編「半導体プロセス技術」株式会社トリケップス、昭和60年1月21日発行、63?64頁
(23)甲第23号証 前田和夫「最新LSIプロセス技術」株式会社工業調査会、1985年5月25日発行、385頁
(24)甲第24号証 先端電子材料事典編集委員会編「先端電子材料事典」株式会社シーエムシー、1991年3月15日発行、81?82頁、650?651頁
(25)甲第25号証 欧州特許EP0,541,373特許公報
(26)甲第26号証 特許庁編、特許・実用新案審査基準 第I部明細書 第1章 明細書の記載要件 3.特許請求の範囲 3.3 特許法第36条第5項第2号「3.3.1特許法第36条第5項第2号違反の類型」

第5 被請求人の主張の概要
1 各無効理由に対して
(1)本件発明は、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明と同一ではないし、これら発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(2)記載不備に関する請求人の主張には理由がない。

2 乙号証
被請求人が提出した乙号証は、以下のとおりである。

(1)乙第1号証 「技術速報I NIKKEI ELECTRONICS 734号19頁、1999年1月11日発行
(2)乙第2号証 中村修二「輝度を100倍改善した青色LEDフルカラーのディスプレイが可能に」NIKKEI MICRODEVICES 1994年4月号
(3)乙第3号証 Japanese Journal of Applied Physics 28 (1989) L2112
(4)乙第4号証 特開平3-218625号公報
(5)乙第5号証 「GaNpn接合青色・紫外線発光ダイオード」応用物理60巻2号(1991)
(6)乙第6号証 「電子線照射によるGaNの青色発光強度変化特性」電子情報通信学会技術研究報告(1988年2月17日)
(7)乙第7号証 「III-V族化合物半導体」(1994年5月20日)
(8)乙第8号証 平成9年異議第71558号の異議決定

第6 本件発明の技術的意義
1 本件特許の願書に添付した明細書(前記第2、(1)の訂正後のもの。以下「本件特許明細書」という。なお、上記訂正の前後を通じて、発明の詳細な説明の記載は変更されていない。)には、以下の記載がある(下線は当審で付した。以下同じ。)。

(1)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は紫外、青色発光レーザーダイオード、紫外、青色発光ダイオード等の発光デバイスに利用されるp型窒化ガリウム系化合物半導体の製造方法に係り、詳しくは、気相成長法によりp型不純物をドープして形成した窒化ガリウム系化合物半導体層を低抵抗なp型にする方法に関する。
【0002】
【従来の技術】青色発光素子は、II-VI族のZnSe、IV-IV族のSiC、III-V族のGaN等を用いて研究が進められ、最近、その中でも窒化ガリウム系化合物半導体[Ga_(X)Al_(1-X)N(但し0≦X≦1)]が、常温で、比較的優れた発光を示すことが発表され注目されている。その窒化ガリウム系化合物半導体を有する青色発光素子は、基本的に、サファイアよりなる基板の上に一般式がGa_(X)Al_(1-X)N(但し0≦X≦1)で表される窒化ガリウム系化合物半導体のエピタキシャル層が順にn型およびi型、あるいはp型に積層された構造を有するものである。
【0003】窒化ガリウム系化合物半導体を積層する方法として、有機金属化合物気相成長法(以下MOCVD法という。)、分子線エピタキシー法(以下MBE法という。)等の気相成長法がよく知られている。・・・
【0005】しかしながら、窒化ガリウム系化合物半導体を有する青色発光デバイスは未だ実用化には至っていない。なぜなら、窒化ガリウム系化合物半導体が低抵抗なp型にできないため、ダブルへテロ、シングルへテロ等の数々の構造の発光素子ができないからである。気相成長法でp型不純物をドープした窒化ガリウム系化合物半導体を成長しても、得られた窒化ガリウム系化合物半導体はp型とはならず、抵抗率が10^(8)Ω・cm以上の高抵抗な半絶縁材料、即ちi型となってしまうのが実状であった。このため現在、青色発光素子の構造は基板の上にバッファ層、n型層、その上にi型層を順に積層した、いわゆるMIS構造のものしか知られていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】高抵抗なi型を低抵抗化してp型に近づけるための手段として特開平2-257679号公報において、p型不純物としてMgをドープした高抵抗なi型窒化ガリウム化合物半導体を最上層に形成した後に、加速電圧6kV?30kVの電子線をその表面に照射することにより、表面から約0.5μmの層を低抵抗化する技術が開示されている。しかしながら、この方法では電子線の侵入深さのみ、即ち極表面しか低抵抗化できず、また電子線を走査しながらウエハー全体を照射しなければならないため面内均一に低抵抗化できないという問題があった。」

(2)「【0007】従って本発明の目的は、p型不純物をドープした窒化ガリウム系化合物半導体を低抵抗なp型とし、さらに膜厚によらず抵抗値がウエハー全体に均一であり、発光素子をダブルへテロ、シングルへテロ構造可能な構造とできるp型窒化ガリウム系化合物半導体の製造方法を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明のp型窒化ガリウム系化合物半導体の製造方法は、気相成長法により、p型不純物をドープした窒化ガリウム系化合物半導体層を形成した後、400°C以上の温度でアニーリングを行うことを特徴とするものである。
【0009】アニーリング(Annealing:焼きなまし)はp型不純物をドープした窒化ガリウム系化合物半導体層を形成した後、反応容器内で行ってもよいし、ウエハーを反応容器から取り出してアニーリング専用の装置を用いて行ってもよい。アニーリング雰囲気は真空中、N_(2)、He、Ne、Ar等の不活性ガス、またはこれらの混合ガス雰囲気中で行い、最も好ましくは、アニーリング温度における窒化ガリウム系化合物半導体の分解圧以上で加圧した窒素雰囲気中で行う。なぜなら、窒素雰囲気として加圧することにより、アニーリング中に、窒化ガリウム系化合物半導体中のNが分解して出て行くのを防止する作用があるからである。
【0010】例えばGaNの場合、GaNの分解圧は800°Cで約0.01気圧、1000°Cで約1気圧、1100°Cで約10気圧程である。このため、窒化ガリウム系化合物半導体を400°C以上でアニーリングする際、多かれ少なかれ窒化ガリウム系化合物半導体の分解が発生し、その結晶性が悪くなる傾向にある。従って前記のように窒素で加圧することにより分解を防止できる。
【0011】アニーリング温度は400°C以上、好ましくは700°C以上で、1分以上保持、好ましくは10分以上保持して行う。1000°C以上で行っても、前記したように窒素で加圧することにより分解を防止することができ、後に述べるように、安定して、結晶性の優れたp型窒化ガリウム系化合物半導体が得られる。
【0012】また、アニーリング中の、窒化ガリウム系化合物半導体の分解を抑える手段として、p型不純物をドープした窒化ガリウム系化合物半導体層の上にさらにキャップ層を形成させたのち、アニーリングを行ってもよい。キャップ層とは、即ち保護膜であって、それをp型不純物をドープした窒化ガリウム系化合物半導体の上に形成した後、400°C以上でアニーリングすることによって、加圧下はいうまでもなく、減圧、常圧中においても、窒化ガリウム系化合物半導体を分解させることなく低抵抗なp型とすることができる。
【0013】キャップ層を形成するには、p型不純物をドープした窒化ガリウム系化合物半導体層を形成した後、続いて反応容器内で形成してもよいし、また、ウエハーを反応容器から取り出し、他の結晶成長装置、例えばプラズマCVD装置等で形成してもよい。キャップ層の材料としては、窒化ガリウム系化合物半導体の上に形成できる材料で、400°C以上で安定な材料であればどのようなものでもよく、好ましくはGa_(X)Al_(1-X)N(但し0≦X≦1)、Si_(3)N_(4)、SiO_(2)を挙げることができ、アニーリング温度により材料の種類を適宜選択する。また、キャップ層の膜厚は通常0.01?5μmの厚さで形成する。0.01μmより薄いと保護膜としての効果が十分に得られず、また5μmよりも厚いと、アニーリング後、キャップ層をエッチングにより取り除き、p型窒化ガリウム系化合物半導体層を露出させるのに手間がかかるため、経済的ではない。」

(3)「【0014】
【作用】図1は、p型不純物をドープした窒化ガリウム系化合物半導体層がアニーリングによって低抵抗なp型に変わることを示す図である。これは、MOCVD法を用いて、サファイア基板上にまずGaNバッファ層を形成し、その上にp型不純物としてMgをドープしながらGaN層を4μmの膜厚で形成した後、ウエハーを取り出し、温度を変化させて窒素雰囲気中でアニーリングを10分間行った後、ウエハーのホール測定を行い、抵抗率をアニーリング温度の関数としてプロットした図である。
【0015】この図からわかるように、400°Cを越えるあたりから急激にMgをドープしたGaN層の抵抗率が減少し、700°C以上からはほぼ一定の低抵抗なp型特性を示し、アニーリングの効果が現れている。なお、アニーリングしないGaN層と700°C以上でアニーリングしたGaN層のホール測定結果は、アニーリング前のGaN層は抵抗率2×105Ω・cm、ホールキャリア濃度8×10^(10)/cm^(3)であったのに対し、アニーリング後のGaN層は抵抗率2Ω・cm、ホールキャリア濃度2×10^(17)/cm^(3)であった。また、この図はGaNについて示した図であるが、同じくp型不純物をドープしたGa_(X)Al_(1-X)N(0≦X<1)においても同様の結果が得られることが確かめられた。
【0016】さらに、700°Cでアニーリングした上記4μmのGaN層をエッチングして2μmの厚さにし、ホール測定を行った結果、ホールキャリア濃度2×10^(17)/cm^(3)、抵抗率3Ω・cmであり、エッチング前とほぼ同一の値であった。即ちp型不純物をドープしたGaN層がアニーリングによって、深さ方向均一に全領域にわたって低抵抗なp型となっていた。
【0017】また、図2は、同じくMOCVD法を用いて、サファイア基板上にGaNバッファ層とMgをドープした4μmのGaN層を形成したウエハーを用い、1000°Cで窒素雰囲気中20分間のアニーリングを行い、20気圧の加圧下で行ったウエハー(a)と、大気圧で行ったウエハー(b)のp型GaN層にそれぞれHe-Cdレーザーを励起光源として照射し、そのフォトルミネッセンス強度で結晶性を比較して示す図であり、そのフォトルミネッセンスの450nmにおける青色発光強度が強いほど、結晶性が優れていると評価することができる。
【0018】図2に示すように、1000°C以上の高温でアニーリングを行った場合、GaN層が熱分解することにより、その結晶性が悪くなる傾向にあるが、加圧することにより熱分解を防止でき、優れた結晶性のp型GaN層が得られる。
【0019】また、図3は、同じくサファイア基板上にGaNバッファ層とMgをドープした4μmのGaN層を形成したウエハー(c)と、さらにその上にキャップ層としてAlN層を0.5μmの膜厚で成長させたウエハー(d)とを、今度は大気圧中において、1000°C、窒素雰囲気で20分間のアニーリングを行った後、エッチングによりキャップ層を取り除いて露出させたp型GaN層の結晶性を、同じくフォトルミネッセンス強度で比較して示す図である。
【0020】図3に示すように、キャップ層を成長させずにアニーリングを行ったp型GaN層(c)は高温でのアニーリングになるとp型GaN層の分解が進むため、450nmでの発光強度は弱くなってしまう。しかし、キャップ層(この場合AlN)を成長させることにより、キャップ層のAlNは分解するがp型GaN層は分解しないため、発光強度は依然強いままである。
【0021】アニーリングにより低抵抗なp型窒化ガリウム系化合物半導体が得られる理由は以下のとおりであると推察される。
【0022】即ち、窒化ガリウム系化合物半導体層の成長において、N源として、一般にNH_(3)が用いられており、成長中にこのNH_(3)が分解して原子状水素ができると考えられる。この原子状水素がアクセプター不純物としてドープされたMg、Zn等と結合することにより、Mg、Zn等のp型不純物がアクセプターとして働くのを妨げていると考えられる。このため、反応後のp型不純物をドープした窒化ガリウム系化合物半導体は高抵抗を示す。
【0023】ところが、成長後アニーリングを行うことにより、Mg-H、Zn-H等の形で結合している水素が熱的に解離されて、p型不純物をドープした窒化ガリウム系化合物半導体層から出て行き、正常にp型不純物がアクセプターとして働くようになるため、低抵抗なp型窒化ガリウム系化合物半導体が得られるのである。従って、アニーリング雰囲気中にNH_(3)、H_(2)等の水素原子を含むガスを使用することは好ましくない。また、キャップ層においても、水素原子を含む材料を使用することは以上の理由で好ましくない。」

2 上記1によれば、本件特許明細書には、本件発明の技術的意義に関して、概略、以下の事項が記載されていることが認められる。

(1)本件発明は、気相成長法によりp型不純物をドープして形成した窒化ガリウム系化合物半導体層を低抵抗なp型にする方法に関するもので、気相成長法でp型不純物をドープした窒化ガリウム系化合物半導体を成長しても、得られた窒化ガリウム系化合物半導体はp型とはならず、抵抗率が10^(8)Ω・cm以上の高抵抗な半絶縁材料、即ちi型となってしまうのが実状であった。高抵抗なi型を低抵抗化してp型に近づけるための手段として特開平2-257679号公報において、p型不純物としてMgをドープした高抵抗なi型窒化ガリウム化合物半導体を最上層に形成した後に、加速電圧6kV?30kVの電子線をその表面に照射することにより、表面から約0.5μmの層を低抵抗化する技術が開示されているが、この方法では電子線の侵入深さのみ、即ち極表面しか低抵抗化できず、また電子線を走査しながらウエハー全体を照射しなければならないため面内均一に低抵抗化できないという問題があった。従って本件発明の目的は、p型不純物をドープした窒化ガリウム系化合物半導体を低抵抗なp型とし、さらに膜厚によらず抵抗値がウエハー全体に均一であり、発光素子をダブルへテロ、シングルへテロ構造可能な構造とできるp型窒化ガリウム系化合物半導体の製造方法を提供するものである。

(2)図1は、MOCVD法を用いて、サファイア基板上にまずGaNバッファ層を形成し、その上にp型不純物としてMgをドープしながらGaN層を4μmの膜厚で形成した後、ウエハーを取り出し、温度を変化させて窒素雰囲気中でアニーリングを10分間行った後、ウエハーのホール測定を行い、抵抗率をアニーリング温度の関数としてプロットした図である。図1からわかるように、アニーリング温度が400°Cを越えるあたりから急激にMgをドープしたGaN層の抵抗率が減少し、700°C以上からはほぼ一定の低抵抗なp型特性を示し、アニーリングの効果が現れており、p型不純物をドープしたGa_(X)Al_(1-X)N(0≦X<1)においても同様の結果が得られることが確かめられた。
アニーリング温度は400°C以上、好ましくは700°C以上で、1分以上保持、好ましくは10分以上保持して行う。アニーリングを1000°C以上で行っても、窒素で加圧することにより、安定して、結晶性の優れたp型窒化ガリウム系化合物半導体が得られる。

(3)上記(1)の理由としては、窒化ガリウム系化合物半導体層の成長中にN源として一般に用いられるNH_(3)が分解してできた原子状水素が、アクセプター不純物としてドープされたMg、Zn等と結合するとMg、Zn等のp型不純物がアクセプターとして働くのを妨げて高抵抗を示すが、成長後アニーリングを行うことにより、Mg-H、Zn-H等の形で結合している水素が熱的に解離されてp型不純物をドープした窒化ガリウム系化合物半導体層から出て行き、正常にp型不純物がアクセプターとして働くようになるため、低抵抗なp型窒化ガリウム系化合物半導体が得られると推察される。従って、アニーリング雰囲気中にNH_(3)、H_(2)等の水素原子を含むガスを使用することは好ましくない。また、キャップ層においても、水素原子を含む材料を使用することは以上の理由で好ましくない。

3 上記2によれば、本件発明における「実質的に水素を含まない雰囲気中、400°C以上の温度でアニーリングを行い、p型不純物がドープされた窒化ガリウム系化合物半導体層から水素を出す」との要件は、低抵抗なp型窒化ガリウム系化合物半導体を得るという技術的意義を生じるための構成であるものと解される。

第7 無効理由についての当審の判断
1 無効理由4について
事案にかんがみて、無効理由4についてまず検討する。

(1)請求人は、本件発明1の構成要件「p型不純物がドープされた窒化ガリウム系化合物半導体層から水素を出すこと」について、
ア 上記構成要件に関して、本件明細書においては、発明者の「推察」という不明確な記載しかないため、当業者が容易に実施することができない(旧特許法第36条4項)、
イ 上記構成要件は、アニーリングを行うことによる「作用」に過ぎず、同構成要件は、発明者の「推察」に基づく記載であるため、発明が不明確になっており、本件特許の特許請求の範囲には、「発明の構成に欠くことができない事項」以外の作用(しかも発明者の「推察」に基づくもの)に関する記載があるため、旧特許法第36条第5項第2号に違反している、
ウ 旧特許法第36条5項1号は、いわゆるサポート要件を定めているところ、特許請求の範囲における記載が発明者の「推察」に基づく記載では、当業者が課題を解決できるとは限らないから、サポート要件にも違反している
旨主張する(審判請求書50頁?51頁)。
しかるに、上記第6、2(2)のとおり、本件発明は、MOCVD法を用いて、サファイア基板上にまずGaNバッファ層を形成し、その上にp型不純物としてMgをドープしながらGaN層を4μmの膜厚で形成した後、ウエハーを取り出し、温度を変化させて窒素雰囲気中でアニーリングを10分間行った後、ウエハーのホール測定を行うと、アニーリング温度が400°Cを越えるあたりから急激にMgをドープしたGaN層の抵抗率が減少し、700°C以上からはほぼ一定の低抵抗なp型特性を示すという知見に基づくものであって、本件発明の発明者らは、そのような作用が生じる理由を、成長後アニーリングを行うことにより、Mg-H、Zn-H等の形で結合している水素が熱的に解離されてp型不純物をドープした窒化ガリウム系化合物半導体層から出て行き低抵抗なp型窒化ガリウム系化合物半導体が得られることによるものと推察し、本件発明は、かかる推察に基づく「p型不純物がドープされた窒化ガリウム系化合物半導体層から水素を出す」との構成を要件としたものと認められる。
そして、上記の推察に格別不合理な点は見受けられないから、本件発明においては、本件発明1の構成要件である「400°C以上の温度でアニーリング」を行うことによりp型不純物がドープされた窒化ガリウム系化合物半導体層が低抵抗なp型特性を示すものとなっていれば、「p型不純物がドープされた窒化ガリウム系化合物半導体層から水素を出す」との構成を備えることになるものと解することができる。
してみれば、上記構成を含む本件発明が明確でないとはいえないし、本件発明が本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されていないともいえない。また、当業者が本件発明を実施することができないとはいえない。
よって、請求人の上記主張は、採用できない。

(2)請求人は、本件発明1の構成要件「実質的に水素を含まない雰囲気」について、特許請求の範囲の記載からは、どのような構成の雰囲気であれば「実質的に水素を含まない」といえ、どのような構成の雰囲気であれば、「実質的に水素を含まない」とはいえないのか不明となっている旨主張する(審判請求書52頁)。
しかるに、上記第6、2(3)のとおり、p型不純物をドープした窒化ガリウム系化合物の成長後、アニーリングを行うことにより、Mg-H、Zn-H等の形で結合している水素が熱的に解離されてp型不純物をドープした窒化ガリウム系化合物半導体層から出て行き、正常にp型不純物がアクセプターとして働くようになるため、低抵抗なp型窒化ガリウム系化合物半導体が得られると推察されるところ、アニーリング雰囲気中にNH_(3)、H_(2)等の水素原子を含むガスを使用することは好ましくないとされていることに照らして、本件発明においては、アニーリングにより低抵抗なp型窒化ガリウム系化合物半導体を得ることの妨げにならない程度に水素を含まない雰囲気であることを要件とするものと解されるところであって、かかる雰囲気であることを「実質的に水素を含まない」としたものと理解できるから、本件発明1の構成要件「実質的に水素を含まない雰囲気」がどのような構成の雰囲気であるのか不明であるということはできない。
よって、請求人の上記主張は、採用できない。

(3)請求人は、本件発明1においては、「400°C以上の温度で」アニーリングを行うことが構成要件となっているが、「400°C以上の温度で」という下限だけを示すような数値限定を用いた表現を用いており、いかなる温度範囲をもって「400°C以上の温度で」と記載しているのか不明となっている旨、及び、図1を見る限り、400°Cにおいてはいまだ抵抗率は高い状態にあり、400°C以上の温度のうち、いかなる温度範囲において「低抵抗なp型」となるのか、明らかではない旨主張する(審判請求書52頁、53頁)。
しかるに、上記第6、1(3)によれば、本件特許明細書には、アニーリングを10分間行った図1からわかるように、アニーリング温度が400°Cを越えるあたりから急激にMgをドープしたGaN層の抵抗率が減少し、700°C以上からはほぼ一定の低抵抗なp型特性を示し、アニーリングの効果が現れており、p型不純物をドープしたGa_(X)Al_(1-X)N(0≦X<1)においても同様の結果が得られること、アニーリングを1000°C以上で行っても、窒素で加圧することにより、安定して、結晶性の優れたp型窒化ガリウム系化合物半導体が得られることが記載されているものと認められるところであり、本件発明において、アニーリング温度の上限が特定されるべき事情があるものとは認められない、また、400°C以上の温度のうち、どのような温度において「低抵抗なp型」とするのかについても、アニーリングを行う時間なども含めて当業者が設計上適宜定めるべき事項と認められるから、400°C以上の温度のうち、いかなる温度範囲において「低抵抗なp型」となるのかが明らかにされなければならないものとは認められない。
よって、請求人の上記主張は、採用できない。

(4)請求人は、本件発明1の構成要件「アニーリング」について、
ア 気相成長法による結晶成長を終えた後、温度を400°C以上に維持すること(400°C以上での結晶成長後、室温に冷却する途中において、400°C未満になるまでの間の状態を含む)が「アニーリング」にあたるのか、それとも一度400°C未満に冷却後に再加熱する必要があるのか、いかなる工程をもって「アニーリング」と記載しているのか不明となっている、
イ レーザや電子ビームなどの各種の加熱源により試料の熱処理を行うことをアニールというものと定義されている(甲第22号証ないし甲第24号証)とおり、「アニーリング」は、多くの手法が含まれる多義的な用語であって、このうちいかなるものが本件発明1の「アニーリング」に含まれるのか、明らかではない、
旨主張する(審判請求書52頁?53頁)。
しかるに、上記第6、1(3)のとおり、本件特許明細書に、アニーリング温度は400°C以上、好ましくは700°C以上で、1分以上保持、好ましくは10分以上保持して行うことの記載があることに照らして、本件発明における「実質的に水素を含まない雰囲気中」で行われる「アニーリング」は、p型不純物がドープされた窒化ガリウム系化合物半導体を成長させた後、p型不純物がドープされた窒化ガリウム系化合物半導体層から水素を出す、すなわち、低抵抗なp型特性を示すように、実質的に水素を含まない雰囲気中において400°C以上の温度で一定時間以上保持することをいうものと解することができ、その技術的な意味内容が明確でないということはできない。
よって、請求人の上記主張は、採用できない。

(4)小括
以上によれば、本件特許に係る出願が旧特許法第36条第4項、同条第5項第1号ないし第2号に規定する要件を満たしていないものということはできない。

2 無効理由1について
(1)甲号証の記載
ア 甲第1号証
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第1号証(特開昭51-117199号公報)には、以下の記載がある。

(ア)「本発明は開放反応器においてハロゲン化ガリウムと担体ガス中のアンモニアとを反応させて窒化ガリウムを合成する間に蒸気相から基板上に結晶を成長させることにより窒化ガリウムを主成分とする単結晶を製造する方法に関するものである。」(2頁左上欄4行?8行)

(イ)「よく知られているように、大部分の古典的窒化ガリウム合成方法では820?1100°Cにおいてガス状塩化ガリウムと担体ガス、例えば水素、ヘリウム、アルゴン又は窒素により供給されるアンモニアとを反応させ、適当な基板例えばコランダム又はスピネル上に堆積させる。
この反応の間に直ちに堆積する窒化ガリウムのほかに、水素が放出されると共に塩化水素酸が生成する。かかる2種のガスは担体により搬送される。・・・
本発明者等は窒化ガリウムを主成分とする単結晶格子を成長させる多数の実験を行い、成長の間に品質の優れた結晶が得られる条件を明らかにしようと努力した。この結果反応検および堆積圏に特に高温において多量の遊離塩化水素酸を導入することが常に重要で、かつ必須条件になることが多いことを確かめた。
本発明はかかる知見に基く。
本発明においては、開放反応器においてハロゲン化ガリウムと担体ガス中のアンモニアとを反応させて窒化ガリウムを合成する間に蒸気相から基板上に結晶を成長させることにより窒化ガリウムを主成分とする単結晶を製造するに当り、前記結晶成長の少なくとも一部分の間に全圧の2?50%の分圧化に遊離塩化水素酸を反応圏および堆積圏に導入することを特徴とする。」(2頁右下欄6行?3頁左上欄15行)

(ウ)「本発明の方法は、結晶格子の原子の内にある原子または他の原子がある複数個の位置において、ヘリウム原子、例えばハロゲン化物特に塩化インジウムの形態で導入されるインジウム原子またはアルミニウム原子あるいはドーピング物、特に反応器内にハロゲン化物特に塩化物の形態または金属蒸気の形態で導入することができる亜鉛、カドミウム、マグネシウム、リチウム、ベリリウム、で置換されている堆積物に適用される。」(3頁右下欄5行?13行)

(エ)「更に、種々の性質の基板上に窒化ガリウムの単結晶を成長させることにより生ずる機械的応力を抑制するには、前記単結晶を再加熱する必要がある。この再加熱は800°C(600?1000°C)で実施する。水素は有害で単結晶格子に球形ガリウムを生成させるので、再加熱雰囲気には水素を全く含有させてはならない。従って、例えば窒素を使用する。」(4頁左下欄5行?12行)

イ 甲第4号証
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第4号証(「Activation of Zn and Cd acceptors in InP grown by metalorganic vapor phase epitaxy」)には、以下の記載がある。

「We have investigated the activation by post-deposition annealing of Zn and Cd acceptors incorporated in InP during epitaxial growth using metalorganic vapor phase epitaxy.」(2411頁要約欄1行?2行。和訳:「我々は、有機金属気相成長を用いたエピタキシャル成長中にInPに導入されたZn及びCdアクセプタの堆積後のアニーリングによる活性化を研究した。」)、
「Post-epitaxial annealing in a N_(2) atmosphere at temperatures in the range of 370-470°C leads to complete activation of the acceptors.」(2411頁要約欄4行?6行。和訳:「370?470°Cの温度範囲でN_(2)雰囲気におけるエピタキシャル後のアニーリングはアクセプタの完全な活性化をもたらした。」)、
「It was recently reported that the incorporation of acceptors during the growth of InP by metalorganic vapor phase epitaxy (MOVPE) shows anomalous behavior. The carrier concentration in p-type InP was always found to be lower than the dopant concentration measured by secondary-ion mass spectroscopy when cooling the samples in a group V hydride after growth.」(2411頁左欄1行?7行。和訳:「最近、有機金属気相成長(MOVPE)によるInPの成長中におけるアクセプタの導入が特異な振る舞いを示すことが報告された。成長後のV族水素化物中のサンプルを冷却するとき、p型InPの中のキャリア濃度は、二次イオン質量分析法で計測されたドーパント濃度よりも常に低いことが判明した。」)、
「Further investigation revealed that in most cases a considerable amount of hydrogen is contained in those samples. It appears likely that hydrogen plays an important role in the deactivation phenomenon. Full activation of the acceptor can be obtained by post-epitaxial annealing in N_(2).」(2411頁左欄9行?12行。和訳:「さらなる研究により、ほとんどの場合において、かなりの量の水素がそれらのサンプルに含まれていることが判明した。明らかに、水素が不活性化現象において重要な役割を果たしているようだ.N_(2)中でのコニピタキシャル後のアニーリングにより、アクセプタの完全な活性化が得られる。」)、
「Post-epitaxial annealing was carried out at temperatures between 370 and 470°C in a N_(2) atmosphere.」(2411頁左欄下2行?末行。和訳:「エピタキシャル後のアニーリングは、N_(2)雰囲気中において370?470°Cの温度で実行された。」)

ウ 甲第5号証
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第5号証(「Hydrogen in carbon-doped GaAs grown by metalorganic molecular beam epitaxy」)には、以下の記載がある。

「To determine whether the H was introduced into the as-grown layers by the TMGa or AsH_(3) sources, samples that had been grown from TMGa and a solid As source were examined. The spectrum shown in Fig.2 labeled (b) is for a sample grown with AsH_(3), whereas the spectrum labeled (c) was grown with solid As. Similar infrared absorption features due to C-H complexes appear for both samples showing that the H can be introduced into the epitaxial layers by the TMGa precursor alone. Hence, we have found still another means by which hydrogen can be introduced unintentionally into semiconductors.
Annealing experiment have been undertaken to determine range in which the C-H complexes dissociate. We find the surprising result that the 2635 cm^(-1) vibrational band is present, even in samples annealed in forming gas at 900°C for 5 min.」(2563頁左欄下13行?右欄3行。和訳:「HがTMGa又はAsH_(3)源により成長したままの層に導入されたかどうかを決定するために、TMGa及び固体砒素源から成長させたサンプルが実験された、(b)と表示された図2中に示されたスペクトラムは、AsH_(3)により成長したサンプルについてのものであり、一方(c)と表示されたスペクトラムは固体砒素により成長させたものである。C-H複合による赤外線を吸収する類似の特徴が、両サンプルに現れ、このことは、HがTMGa前駆体だけでエピタキシャル層に導入され得ることを示している。したがって、我々は水素が半導体に意図せずに導入され得るもう一つ別の方法を発見した。
アニーリング実験はC-H複合が解消する温度範囲を決定するために実行された。我々は、900°Cのフォーミングガス中で5分間アニールされたサンプルにおいてさえ、2635cm^(-1)の振動バンドが存在するという驚くべき結果を発見した。」)

エ 甲第2号証
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第2号証(特開平2-111016号公報)には、以下の記載がある。

「水素を優先的に除き、所望ドーパントのはるかに減少した補償、したがってはるかに低い抵抗率を有する半導体が達成される。」(5頁右上欄8行?11行)、
「所望のアクセプタ又はドナー不純物を半導体中に残しながら、補償水素を選択的に除く若干の方法が知られている。例えば、同一温度で第1ドーパントの外への拡散の速度に比べて材料からの水素の比較的早い外への拡散を起こすのに十分な温度に材料を加熱することができる。約100?500°C、いっそう、好ましくは約150?450°Cの温度が一般に有効である。実際の好ましい温度は、使用する特定の第1ドーパント種を含む多くの因子に依存する。水素の高い移動度により、水素は、それより移動度の低い第1ドーパントが半導体内に残ることができるようにしながら拡散して出る。」(5頁右下欄下から8行?6頁左上欄4行)

オ 甲第6号証
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第6号証(「Passivation of zinc acceptors in InP by atomic hydrogen coming from arsine during metalorganic vapor phase epitaxy」)には、以下の記載がある。

「The passivation of zinc acceptors in InP has been observed, originally in zinc-doped InGaAs/InP heterostructures. Evidence is presented to show that hydrogen, which has been detected by secondary ion mass spectrometry, is responsible for the phenomenon and that source of atomoc hydrogen is the arsine used in the epitaxial process.」(758頁要約欄1行?4行。和訳:「InP中における亜鉛アクセプタの不活性化は、もともと亜鉛がドープされたInGaAs/InPヘテロ構造において観測されていた。二次イオン質量分析法で検知された水素がその現象の原因であること、及び、水素原子の源は、エピタキシャル過程において使用される砒化水素であることを示す証拠が存在する。」)、
「The passivation of acceptors by hydrogen in GaAs and Si has been known for some time and would appear to be a genenal effect in many semiconductors.」(758頁左欄1行?3行。和訳:「GaAs及びSiにおける水素によるアクセプタの不活性化は、長い間知られており、多くの半導体において一般的な効果であると見受けられる。」)、
「The structure consisted of an n-type InP substrate on which was grown a series of layers starting with 1μm of p-type InP, then 1μm of Si-doped n-type InP followed by a further layer of p-type InP identical to the first and this was capped by a p-type InGaAs layer. The growth, by metalorganic vapor phase epitaxy (MOVPE), took place at 650°C at atmospheric pressure using of heating.」(758頁左欄18行?25行。和訳:「その構造は、n型InP基板と、その上に成長した、1μmのp型InPに始まって、次のSiがドープされた1μmのn型InP及びこれに続く最初の層と同じさらなるp型InPという一連の層から成り、p型InGaAs層でキャップされた。成長は、有機金属気相成長(MOVPE)によって、加熱装置を使用した650°C、大気圧雰囲気で行われた。」)、
「A part of the same sample which was used to generate Fig.1 was subjected to thermal pulse annealing (TPA) at 800°C for 5 s and reexamined by SIMS. This time only a uniform hydrogen background signal was observed throughout the InP (the zinc concentration profile was unchanged). Carrier concentration profiling showed that the acceptor level in the p-type InP layer adjacent to the substrate was little changed and that the acceptor concentration in the previously passivated layer was now equally high.」(758頁右欄下から9行?末行。和訳:「図1を作成するために使用した同じサンプルの一部は800°Cで5秒の熱パルスアニーリングを受け、SIMSで再検査された、今回InPを通して、一定の水素の背景信号のみが観測された(亜鉛濃度の分析結果は変わらなかった)。キャリア濃度分析によると、基板に隣接したp型InP層におけるアクセプタレペルはほとんど変化せず、そして先に不活性化された層におけるアクセプタ濃度の高さは今回と同じであった。」)、
「Measurements on other samples indicate that this high-temperature anneal restores full acceptor activity where passivation has taken place. This result is consistent with the known behavior of hydrogen in GaAs and Si where the hydrogen is removed by heating at 600°C.」(759頁左欄1行?5行。和訳:「他のサンプルの測定によると、この高温でのアニールが、不活性化か起こっていたアクセプタ活性を完全に回復させたことが示された。この結果は600°Cの加熱によって水素が取り除かれたGaAs及びSiにおける水素の周知の振る舞いと一致した。」)

カ 甲第7号証
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第7号証(「Hydrogen neutralization of acceptors in highly doped GaInAs:Zn」)には、以下の記載がある。

「For this study, we have used a series of zinc-doped Ga_(0.47)In_(0.53)As layers grown by liquid phase epitaxy.」(2791頁左欄23行?24行。和訳:この研究において、我々は液相成長法によって成長した亜鉛がドープされたGa_(0.47)In_(0.53)As層を使用した。」)、
「Annealing experiments have also been performed on hydrogenated samples. First, we have noticed that within the limits of experimental errors, the effects of hydrogenation are reversible. A 10 min annealing at 375°C in an argon ambient of a hydorogen of a hydrogenated sample restores the original electronic transport properties of the as-grown layer. In that sample, it has been checked by SIMS measurements that such an annealing produces full out-diffusion of hydrogen, since no deuterium concentration is detectable in the material after annealing (detection limit for deuterium≒10^(15)cm^(-3))。」(2793頁左欄4行?14行。和訳:「アニーリング実験は水素化されたサンプルにおいても実施された。最初に、我々は実験誤差の限度内で水素化の効果が可逆的なものであることを発見した。水素化されたサンプルの375°Cアルゴン雰囲気での10分間のアニーリングは、成長した状態の層の本来の導電特性を回復する。このサンプルにおいて、SIMS計測により、アニーリング後の素材において重水素濃度が観測されなかったことから(重水素の発見限界は10^(15)cm^(-3))、そのようなアニーリングが水素の完全な排出を引き起こしたことが確認された。」)

キ 甲第8号証
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第8号証(「Neutralization of Shallow Acceptor Levels in Silicon by Atomic Hydrogen」)には、以下の記載がある。

「This experiment consisted in measuring the change in resistivity of a B-doped Si single crystal after exposure to atomic hydrogen at various temperatures for about 1 h.」(2224頁左欄15行?18行。和訳:「この実験は、約1時間さまざまな温度で水素原子にさらされたBがドープされたSi単結晶の抵抗の変化を計測することから成る。」)、
「Heating a treated sample at 500°C for 1 h [to dehydrogenate it (Ref.9 and 10)] resulted in the recovery of a flat resistivity profile at nearly the initial bulk value, thus confirming that the change in resistivity is due to the presence of hydrogen.」(2224頁右欄7行?11行。和訳:「[水素を除くため(Ref9及び10)]処理されたサンプルを500°Cで1時間加熱した結果、最初のバルク値にほぼ近い低い抵抗値を回復した。よって抵抗値の変化は水素の存在によるものであることを確認した。」)

ク 甲第9号証
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第9号証(「Neutralization of Defects and Dopants in III-V Semiconductors」)には、以下の記載がある。

「The first direct evidence of electrical neutralization of dopants was reported by Pankove et al(1983) for boron in silicon and by Chevallier et al.(1985) for donors in gallium arsenide, and it has been extended later on to other dopants and to other semiconductors. The loss of electrical activity can be explained by the formation of a neutral complex involving hydrogen and the dopant atom. This process was termed “neutralization” or “passivation” by opposition to the global compensation mechanism where the dopant atom remains isolated. One feature of the neutralization or passivation is that the presence of hydrogen in the close proximity of the dopant modifies its electronic energy state.」(449頁12行?21行。和訳:「ドーパントの電気的中性化の最初の直接の証拠は、シリコン中のホウ素についてはPankove他(1983年)により報告され、ガリウム砒素中のドナーについては、Chevallier他(1985年)により報告され、そして、他のドーパントや他の半導体にその後拡がっていった。電気活性の損失は、水素とドーパント原子の関わる中性複合の形成によって説明できる。この過程は、ドーパント原子が絶縁化された状態で残る広範囲の補償メカニズムに対比されて「中性化」又は「不活性化」と呼ばれている。中性化又は不活性化の一つの特徴は、ドーパントと間近に近接した水素の存在が、その電気エネルギー状態を変えることである。」)

(2)甲第1号証に記載された発明
ア 前記(1)ア及びイによれば、甲第1号証には、「開放反応器においてハロゲン化ガリウムと担体ガス中のアンモニアとを反応させて窒化ガリウムを合成する間に蒸気相から基板上に結晶を成長させることにより窒化ガリウムを主成分とする単結晶を製造するに当り、前記結晶成長の少なくとも一部分の間に全圧の2?50%の分圧化に遊離塩化水素酸を反応圏および堆積圏に導入する、窒化ガリウムを主成分とする単結晶を製造する方法。」に係る発明が記載されているものと認められる。

イ そして、前記(1)ウによれば、同号証には、上記アの発明において、「窒化ガリウムを主成分とする単結晶」が「結晶格子の原子の内にある原子または他の原子がある複数個の位置において、ヘリウム原子、例えばハロゲン化物特に塩化インジウムの形態で導入されるインジウム原子またはアルミニウム原子あるいはドーピング物、特に反応器内にハロゲン化物特に塩化物の形態または金属蒸気の形態で導入することができる亜鉛、カドミウム、マグネシウム、リチウム、ベリリウム、で置換されている」ものであることが記載されているものと認められる。

ウ 以上によれば、甲第1号証には、次の発明が記載されているものと認められる。
「開放反応器においてハロゲン化ガリウムと担体ガス中のアンモニアとを反応させて窒化ガリウムを合成する間に蒸気相から基板上に結晶を成長させることにより窒化ガリウムを主成分とする単結晶を製造するに当り、前記結晶成長の少なくとも一部分の間に全圧の2?50%の分圧化に遊離塩化水素酸を反応圏および堆積圏に導入する、窒化ガリウムを主成分とする単結晶を製造する方法において、前記窒化ガリウムを主成分とする単結晶が、結晶格子の原子の内にある原子または他の原子がある複数個の位置において、ヘリウム原子、例えばハロゲン化物特に塩化インジウムの形態で導入されるインジウム原子またはアルミニウム原子あるいはドーピング物、特に反応器内にハロゲン化物特に塩化物の形態または金属蒸気の形態で導入することができる亜鉛、カドミウム、マグネシウム、リチウム、ベリリウム、で置換されている方法。」(以下「甲1発明」という。)

(3)本件発明1と甲1発明との対比、判断
ア 本件発明1と甲1発明とを対比するに、本件特許明細書の「p型不純物としてはZn、Cd、Be、Mg、Ca、Ba等が挙げられるが、その中でもMg、Znが最もよく知られている。」(【0003】)との記載に照らして、甲1発明における「ドーピング物」である「金属蒸気の形態で導入することができる亜鉛、カドミウム、マグネシウム、リチウム、ベリリウム」は、本件発明の「p型不純物」に相当し、甲1発明は、「開放反応器においてハロゲン化ガリウムと担体ガス中のアンモニアとを反応させて窒化ガリウムを合成する間に蒸気相から基板上に結晶を成長させることにより窒化ガリウムを主成分とする単結晶を製造する」ものであるから、「気相成長法により、p型不純物がドープされた窒化ガリウム系化合物半導体を成長させる窒化ガリウム系化合物半導体の製造方法。」といえる。
よって、両者は、「気相成長法により、p型不純物がドープされた窒化ガリウム系化合物半導体を成長させる窒化ガリウム系化合物半導体の製造方法。」である点で一致し、「本件発明1は、p型不純物がドープされた窒化ガリウム系化合物半導体を成長させた後、実質的に水素を含まない雰囲気中、400°C以上の温度でアニーリングを行い、上記p型不純物がドープされた窒化ガリウム系化合物半導体層から水素を出すp型窒化ガリウム系化合物半導体の製造方法であるのに対して、甲1発明は、そのようなものでない点」(以下「相違点1」という。)で相違する。

イ 相違点1について検討する。
(ア)前記(1)エによれば、甲第1号証には、種々の性質の基板上に窒化ガリウムの単結晶を成長させることにより生じる機械的応力を抑制するには600?1000°Cで前記単結晶を再加熱する必要があること、水素は有害で単結晶格子に球形ガリウムを生成させるので、再加熱雰囲気には水素を全く含有させてはならないことが記載されているものと認められる。
してみれば、甲1発明において、基板上に単結晶を成長させることにより生じる機械的応力を抑制するために、水素を含有しない雰囲気中において600?1000°Cで単結晶を再加熱することは、当業者が必要に応じて適宜なし得ることである。

(イ)しかし、前記第6、3のとおり、本件発明における「実質的に水素を含まない雰囲気中、400°C以上の温度でアニーリングを行い、p型不純物がドープされた窒化ガリウム系化合物半導体層から水素を出す」との要件は、p型窒化ガリウム系化合物半導体を得るという技術的意義を生じるための構成であるところ、機械的応力を抑制するために行う上記イの再加熱により、「実質的に水素を含まない雰囲気中、400°C以上の温度でアニーリングを行い、p型不純物がドープされた窒化ガリウム系化合物半導体層から水素を出す」、すなわち、p型窒化ガリウム系化合物半導体を得るものと当業者が理解できると認めるに足る根拠は、本件各証拠を通じてみても見いだすことはできない。
したがって、相違点1に係る本件発明1の構成である、p型不純物がドープされた窒化ガリウム系化合物半導体を成長させた後、実質的に水素を含まない雰囲気中、400°C以上の温度でアニーリングを行い、上記p型不純物がドープされた窒化ガリウム系化合物半導体層から水素を出すp型窒化ガリウム系化合物半導体の製造方法とすることについて、当業者が容易になし得たことということはできない。また、本件発明1は、p型窒化ガリウム系化合物半導体を得るものであるところ、かかる技術的意義を生じることは、当業者の予測可能な域を超える格別の効果というべきである。

(4)請求人の主張について
ア 請求人は、甲第1号証には、気相成長法により、亜鉛、カドミウム、マグネシウム、リチウム、ベリリウム等のp型不純物がドープされた窒化ガリウムの結晶を成長させる方法が開示されており、また、成長させた窒化ガリウムの結晶を水素を含まない窒素雰囲気中において600°C?1000°Cの温度に再加熱、すなわちアニーリングすることが開示されているから、甲第1号証には、以下の構成を有する発明が明示的に記載されているといえる旨主張する(審判請求書12頁?13頁)。
「1a 気相成長法により、p型不純物がドープされた窒化ガリウムを成長させた後、
1b-1 実質的に水素を含まない窒素雰囲気中、
1b-2 600°C?1000°Cの温度でアニーリングを行うことを特徴とする
1c p型窒化ガリウムの製造方法。」
しかし、甲第1号証には、亜鉛、カドミウム、マグネシウム、リチウム、ベリリウム等のp型不純物がドープされた窒化ガリウムの結晶を水素を含まない窒素雰囲気中において600°C?1000°Cの温度に再加熱することは記載されていないし、p型窒化ガリウムを製造する方法も記載されていない。
よって、請求人の上記主張は採用できない。

イ 請求人は、前記(1)イないしクの各甲号証の記載を引用し、半導体を気相成長させた場合に、水素がドーパント(アクセプタ)とともに半導体に導入され、ドーパント(アクセプタ)が導入された半導体をアニーリングすることで、水素を離脱させる効果があることは本件特許の優先日において周知慣用技術であった旨主張する(審判請求書14頁?21頁)。
しかるに、上記各甲号証には、アニーリングによるアクセプタの活性化と水素の関連についての知見が示されていることが認められるものの、いずれも窒化ガリウムに関する知見を示すものではないから、これら各甲号証の記載をもって、上記(3)イのように、甲1発明において、基板上に単結晶を成長させることにより生じる機械的応力を抑制するために、水素を含有しない雰囲気中において600?1000°Cで単結晶を再加熱すると、「p型不純物がドープされた窒化ガリウム系化合物半導体層から水素を出す」、すなわち、p型窒化ガリウム系化合物半導体を得るものと当業者が理解できると認めるに至らない。
よって、請求人の上記主張は上記(3)の判断を左右するものではない。

(5)小括
以上の検討によれば、本件発明1が、甲第1号証に記載された発明であるということはできず、同発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということもできない。
また、本件発明2ないし4は、本件発明の特定事項をすべて備え、更に他の特定事項を付加したものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明であるということはできず、同発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということもできない。

3 無効理由2について
(1)甲号証の記載
ア 甲第2号証
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第2号証(特開平2-111016号公報)には、以下の記載がある。

(ア)「1.広禁止帯幅半導体の結晶にドーパントを非平衡的に導入するに当り、移動度の異なる第1及び第2補償ドーパントの存在で結晶を処理し、ほぼ等量の前記2種のドーパントを結晶の少なくとも一部分に導入して、結晶の前記部分中の2種のドーパントのうちの移動度の小さいものの濃度が2種のドーパントのうちの移動度の大きいものの不存在における移動度の小さいドーパントのその中での溶解度を超えるようにし、次いでそれから2種のドーパントのうちの移動度の大きいものを優先的に除き、これにより結晶の前記部分中に移動度の小さいドーパントの非平衡濃度を残す段階をそなえることを特徴とする広禁止帯幅半導体の結晶のドーピング方法。」(1頁左下欄5行?下から2行)

(イ)「この発明に従う方法の説明例において、リチウムに富む溶融物からの液相エピタキシアル成長(LPE)によりセレン化亜鉛層に窒素をp型ドープした。窒素のドーピングは、本質的にフィジカル・レビユー(Physical Review)B、第27巻、第4号、1983年2月15日、2419?2428頁で発表された「セレン化亜鉛中の浅い窒素アクセプタのイオン化エネルギー」と題する論文に記載される仕方でアンモニア(NH_(3))を用いることにより達成することができる。得られた層において、窒素がセレン位置にアクセプタとして置換され、リチウムが間げき位置に導入され、ここでドナーとして作用する。層を、その成長後、インジウム、ガリウム又はタリウム蒸気とともに亜鉛蒸気中約900゜Cの温度に加熱する。この加熱は、拡散がいっそう速いリチウムを層から選択的にゲッタし、これにより、層に主として窒素をドープした状態をもたらし、層を高導電率p型とするのに役立つ。p-n接合を形成する場合、リチウム-窒素エピタキシアル層を成長させる LPE法においてn型セレン化亜鉛結晶を基板として使用する。基板として使用する結晶は、セレン化亜鉛内を徐々に拡散するだけなので、リチウムをゲッタする段階中わずかしか失われない、ヨウ素のようなドナーを支配的ドーパントとして包含するn型であることを有利である。
更に、水素を所望の第1ドーパントとともに同時に導入し、該水素量を、n型かp型かのいずれかの材料をつくる第1ドーパントのセレン化亜鉛中の濃度が第1ドーパント単独の場合の溶解度を超えるようなほぼ等価量とすることができる。水素は、p型ドーパントを補償するドナー不純物として作用するか、n型ドーパントを補償するアクセプタ不純物として作用することができる。いずれの場合でも、所望のドーパントの有効溶解度が増加され、移動度のより大きい水素を優先的に除去した後、半導体塊の抵抗率は、所望ドーパント単独の導入で達成しうる抵抗率より低い。」(3頁右上欄11行?右下欄7行)

イ 甲第17号証
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第17号証(「高輝度青色発光のための電子材料技術」)には、以下の記載がある。

「Ganは禁止帯幅が3.44eVの直接遷移形III-V族化合物半導体である。」(41頁右欄2行?3行)

(2)甲第2号証に記載された発明
ア 前記(1)アによれば、甲第2号証には、「広禁止帯幅半導体の結晶にドーパントを非平衡的に導入するに当り、移動度の異なる第1及び第2補償ドーパントの存在で結晶を処理し、ほぼ等量の前記2種のドーパントを結晶の少なくとも一部分に導入して、結晶の前記部分中の2種のドーパントのうちの移動度の小さいものの濃度が2種のドーパントのうちの移動度の大きいものの不存在における移動度の小さいドーパントのその中での溶解度を超えるようにし、次いでそれから2種のドーパントのうちの移動度の大きいものを優先的に除き、これにより結晶の前記部分中に移動度の小さいドーパントの非平衡濃度を残す段階を備える広禁止帯幅半導体の結晶のドーピング方法。」に係る発明が記載されているものと認められる。

イ そして、前記(1)イによれば、上記アの発明において、「ドーパント」が「p型」のものであることが記載されているものと認められる。

ウ 以上によれば、甲第2号証には、次の発明が記載されているものと認められる。
「広禁止帯幅半導体の結晶にドーパントを非平衡的に導入するに当り、移動度の異なる第1及び第2補償ドーパントの存在で結晶を処理し、ほぼ等量の前記2種のドーパントを結晶の少なくとも一部分に導入して、結晶の前記部分中の2種のドーパントのうちの移動度の小さいものの濃度が2種のドーパントのうちの移動度の大きいものの不存在における移動度の小さいドーパントのその中での溶解度を超えるようにし、次いでそれから2種のドーパントのうちの移動度の大きいものを優先的に除き、これにより結晶の前記部分中に移動度の小さいドーパントの非平衡濃度を残す段階を備える広禁止帯幅半導体の結晶のドーピング方法において、前記ドーパントがp型である方法。」(以下「甲2発明」という。)

(3)本件発明1と甲2発明との対比、判断
ア 本件発明1と甲2発明とを対比するに、両者は、「p型不純物がドープされた化合物半導体の製造方法」である点で一致するものの、「本件発明1は、p型不純物がドープされた窒化ガリウム系化合物半導体を成長させた後、実質的に水素を含まない雰囲気中、400°C以上の温度でアニーリングを行い、上記p型不純物がドープされた窒化ガリウム系化合物半導体層から水素を出すp型窒化ガリウム系化合物半導体の製造方法であるのに対して、甲2発明は、そのようなものでない点」(以下「相違点2」という。)で相違する。

イ 相違点2について検討するに、甲2発明の方法において、広禁止帯幅半導体を窒化ガリウム系化合物半導体として「p型窒化ガリウム系化合物半導体」とすることについて、当業者が容易になし得たことと認めるに足る根拠は、本件各証拠を通じてみても見いだすことはできない。

(4)請求人の主張について
ア 請求人は、甲第2号証には、広禁止帯幅半導体の製造方法に関するものであることが記載され、「高輝度青色発光のための電子材料技術」(甲第17号証)にもあるように、窒化ガリウム(=GaN)系化合物半導体はバンドギャップ(=禁止帯)は「3.44eV」と非常に広く、広禁止帯幅半導体であることが本件特許の優先日当時において知られていたから、甲第2号証には、窒化ガリウム系化合物半導体が開示されているに等しいといえるなどとして、甲第2号証には、以下の構成が実質的に開示されているに等しいものといえる旨主張する(審判請求書31頁?34頁)。
「1a 気相成長法により、p型不純物がドープされた窒化ガリウム系化合物半導体を成長させた後、
1b-2 約100?500℃の温度で加熱を行い、
1b-3 上記p型不純物がドープされた窒化ガリウム系化合物半導体層から水素を出すことを特徴とする
1c p型窒化ガリウム系化合物半導体の製造方法。」

イ しかし、甲2発明の方法において、広禁止帯幅半導体を窒化ガリウム系化合物半導体として「p型窒化ガリウム系化合物半導体」とすることについて、当業者が容易になし得たことと認めるに足る根拠は、本件各証拠を通じてみても見いだすことはできないことは、上記(3)イのとおりであるから、請求人の上記主張は、採用できない。

(5)小括
以上の検討によれば、本件発明1が、甲第2号証に記載された発明であるということはできず、同発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということもできない。
また、本件発明2ないし4は、本件発明の特定事項をすべて備え、更に他の特定事項を付加したものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲第2号証に記載された発明であるということはできず、同発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということもできない。

4 無効理由3について
(1)甲号証の記載
ア 甲第3号証
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第3号証(特開平2-257679号公報)には、以下の記載がある。

(ア)「本発明は水素雰囲気で大気圧に保たれた反応管内に設けられた絶縁体基板上に有機ガリウム化合物、有機III族元素化合物及びアンモニアガスよりなる原料ガスを導入し、気相成長法によりGa_(1-x)Al_(x)N(但し1>x≧0)の単結晶層からなるn型窒化ガリウム系化合物半導体層を形成する第1工程と、原料ガスに有機マグネシウム化合物をガス状で反応管内に導入し絶縁層及び発光層としてマグネシウムを添加したi型の窒化ガリウム系化合物半導体Ga_(1-x)Al_(x)N(但し1>x≧0)の層を形成する第2工程と、このi型の窒化ガリウム系化合物半導体表面の一部を6?30kvの範囲の加速電圧の電子線により試料電流密度が10nA/cm^(2)から10A/cm^(2)の範囲内で試料温度が600゜C以下で電子線照射処理をする第3工程とよりなることを特徴とする窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の作製方法である。」(2頁右上欄8行?左下欄4行)

(イ)「また電子線照射処理時の試料温度は、窒化ガリウム系化合物半導体Ga_(1-x)Al_(x)N
(但し1>x≧0)の昇華温度である600゜C以下である必要がある。」(4頁左下欄6行?9行)、
「(発明の効果)
本発明者らは特に試料作製法として有機金属化合物気相成長法(MOVPE法)により、材料としては窒化ガリウム系化合物半導体
Ga_(1-x)Al_(x)N(但し1>x≧0)を用いた青色発光素子(青色発光ダイオードLED)の実用化を目指し、研究を行い、第一の発明は青色発光ダイオード(LED)の作製に於いて青色発光中心の形成及び絶縁層形成に必要な添加不純物元素として、今まで用いられてきた亜鉛の代りにマグネシウムを用いた点に特徴があり、MOVPE法では初めて試みられたものである。その結果、亜鉛を用いた場合には、発光素子を作製した場合に於いて緑色成分が混ざってしまうため色純度に問題があったがマグネシウムを用いた場合には純青色発光素子の作製が可能であることを初めて知見した。
ところが、発光素子を作製したままの状態では発光強度が小さく実用化には問題がある。
そこで本発明は、マグネシウムを用いた窒化ガリウム系化合物半導体Ga_(1-x)Al_(x)N(但し1>x≧0)による青色発光ダイオード(LED)に於て、発光強度が大きく実用化を可能とするための発光素子の処理方法を提供するため、第1及び第2工程により作製した発光素子に比較的低エネルギーの電子線を照射することにより発光強度を著しく改善したものである。この理由は物理的には闇値エネルギー以下の電子線照射による原子変位効果によるものであり、1?2桁程度の発光強度の増加が可能となった。また処理に必要な時間が十分以内と短いため工業上の応用価値は著しく高いものである。」(4頁右下欄1行?5頁左上欄12行)

イ 甲第22号証
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第22号証(「半導体プロセス技術」)には、以下の記載がある。

「電子ビームによる処理(アニーリング)が試みられている」(64頁19行)

ウ 甲第23号証
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第23号証(「最新LSIプロセス技術」)には、以下の記載がある。

「アニールはいわば“焼鈍”であり、本来、材料に加熱処理を行なったあと急冷せずに徐冷したり、長時間低温熱処理することによりその物質の構造や物性を安定化させる方法である。」(385頁2行?4行)、
「アニールの方法そのものも多様化しており、レーザ、電子ビーム、ランプ、グラファイトピーク等工夫がされている。」(同頁下から5行?同4行)

エ 甲第24号証
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第24号証(「先端電子材料事典」)には、以下の記載がある。

「レーザーや電子ビーム(EB)などのエネルギービームを用いた局所的、短時間のアニール、いわゆるビームアニール」(81頁右欄下から9行?同6行)、
「電子ビームアニール・・・電子ビームを半導体基板表面に照射して、電子の運動エネルギーを熱に変換し、基板表面に高温短時間の熱処理を施すものである。」(650頁右欄15行?20行)

(2)甲第3号証に記載された発明
前記(1)アによれば、甲第3号証には、「水素雰囲気で大気圧に保たれた反応管内に設けられた絶縁体基板上に有機ガリウム化合物、有機III族元素化合物及びアンモニアガスよりなる原料ガスを導入し、気相成長法によりGa_(1-x)Al_(x)N(但し1>x≧0)の単結晶層からなるn型窒化ガリウム系化合物半導体層を形成する第1工程と、原料ガスに有機マグネシウム化合物をガス状で反応管内に導入し絶縁層及び発光層としてマグネシウムを添加したi型の窒化ガリウム系化合物半導体Ga_(1-x)Al_(x)N(但し1>x≧0)の層を形成する第2工程と、このi型の窒化ガリウム系化合物半導体表面の一部を6?30kvの範囲の加速電圧の電子線により試料電流密度が10nA/cm^(2)から10A/cm^(2)の範囲内で試料温度が600゜C以下で電子線照射処理をする第3工程とよりなる窒化ガリウム系化合物半導体発光素子の作製方法」に係る発明(以下「甲3発明」という。)が記載されているものと認められる。

(3)本件発明1と甲3発明との対比、判断
ア 本件発明1と甲3発明とを対比するに、本件特許明細書の「p型不純物としてはZn、Cd、Be、Mg、Ca、Ba等が挙げられるが、その中でもMg、Znが最もよく知られている。」(【0003】)との記載に照らして、甲3発明における「マグネシウム」は、本件発明の「p型不純物」に相当し、甲3発明の「原料ガスに有機マグネシウム化合物をガス状で反応管内に導入し絶縁層及び発光層としてマグネシウムを添加したi型の窒化ガリウム系化合物半導体Ga_(1-x)Al_(x)N(但し1>x≧0)の層を形成する第2工程」は、本件発明の「気相成長法により、p型不純物がドープされた窒化ガリウム系化合物半導体を成長させ」との構成に相当する。
よって、両者は、
「気相成長法により、p型不純物がドープされた窒化ガリウム系化合物半導体を成長させる窒化ガリウム系化合物半導体の製造方法」
である点で一致し、以下の(ア)及び(イ)の点で相違するものと認められる。

(ア)p型不純物がドープされた窒化ガリウム系化合物半導体を成長させた後の工程が、本件発明1では、実質的に水素を含まない雰囲気中、400°C以上の温度でアニーリングを行い、上記p型不純物がドープされた窒化ガリウム系化合物半導体層から水素を出す」ものであるであるのに対して、甲3発明では、i型の窒化ガリウム系化合物半導体表面の一部を6?30kvの範囲の加速電圧の電子線により試料電流密度が10nA/cm^(2)から10A/cm^(2)の範囲内で試料温度が600゜C以下で電子線照射処理をする第3工程である点(以下「相違点3」という。)、

(イ)製造された窒化ガリウム系化合物半導体が、本件発明1ではp型であるのに対して、甲3発明では、p型であるかどうか不明である点(以下「相違点4」という。)

イ 相違点4はひとまず措き、相違点3について検討する。
(ア)前記第6、2のとおり、本件特許明細書には、高抵抗なi型を低抵抗化してp型に近づけるための手段として特開平2-257679号公報、すなわち甲第3号証において、p型不純物としてMgをドープした高抵抗なi型窒化ガリウム化合物半導体を最上層に形成した後に、加速電圧6kV?30kVの電子線をその表面に照射することにより、表面から約0.5μmの層を低抵抗化する技術が開示されているとした上で、アニーリングを行うことにより、Mg-H、Zn-H等の形で結合している水素が熱的に解離されてp型不純物をドープした窒化ガリウム系化合物半導体層から出て行き、正常にp型不純物がアクセプターとして働くようになるため、低抵抗なp型窒化ガリウム系化合物半導体が得られると推察されること、アニーリング雰囲気中にNH_(3)、H_(2)等の水素原子を含むガスを使用することは好ましくないことが記載されている。
そして、前記第6、3のとおり、本件発明における「実質的に水素を含まない雰囲気中」で行われる「アニーリング」は、p型不純物がドープされた窒化ガリウム系化合物半導体を成長させた後、p型不純物がドープされた窒化ガリウム系化合物半導体層から水素を出す、すなわち、低抵抗なp型特性を示すように、実質的に水素を含まない雰囲気中において400°C以上の温度で一定時間以上保持することをいうものと解されるところである。

(イ)しかるところ、甲第3号証においては、低抵抗化と水素原子との関係に着目することを示す記載は認められず、前記(1)イのとおり、「電子線照射処理時の試料温度は、窒化ガリウム系化合物半導体Ga_(1-x)Al_(x)N(但し1>x≧0)の昇華温度である600゜C以下である必要がある」こと、「処理に必要な時間が十分以内と短い」ことに照らせば、甲3発明における第3工程が、「p型不純物がドープされた窒化ガリウム系化合物半導体層から水素を出す、すなわち、低抵抗なp型特性を示すように、実質的に水素を含まない雰囲気中において400°C以上の温度で一定時間以上保持する」ものである、本件発明における「実質的に水素を含まない雰囲気中」で行われる「アニーリング」に相当するものと認めるには至らないし、同工程を、かかる「アニーリング」に置き換えることについて、当業者が容易になし得たことと認めるに足る根拠は、本件各証拠を通じてみても見いだすことはできない。

(4)請求人の主張について
請求人は、前記(1)イないしエの各甲号証の記載を引用し、甲3発明における「電子線照射」は、本件発明1の「アニーリング」に相当するものであることは明らかである旨主張する(審判請求書46頁?48頁)。
しかし、「アニーリング」一般の意味内容にかかわらず、甲3発明の第3工程が本件発明1の「アニーリング」に相当するものと認めるに至らないことは、上記(3)イ(イ)のとおりであるから、請求人の上記主張は、採用できない。

(5)小括
以上の検討によれば、本件発明1が、甲第3号証に記載された発明であるということはできず、同発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということもできない。
また、本件発明2ないし4は、本件発明の特定事項をすべて備え、更に他の特定事項を付加したものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲第3号証に記載された発明であるということはできず、同発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということもできない。

第7 むすび
以上のとおり、本件発明1ないし4が、甲第1号証、甲第2号証または甲第3号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできないから、本件発明1ないし4についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものということはできず、同法第123条第1項第2号に該当しない。
また、本件特許明細書の記載が、旧特許法第36条第4項、同条第5項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていないものということはできないから、本件発明1ないし4についての特許は、同法第123条第1項第4号に該当しない。
したがって、請求人が主張する理由によって、本件発明1ないし4についての特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2012-04-23 
出願番号 特願平3-357046
審決分類 P 1 113・ 536- Y (H01L)
P 1 113・ 121- Y (H01L)
P 1 113・ 113- Y (H01L)
P 1 113・ 537- Y (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 後藤 時男  
特許庁審判長 服部 秀男
特許庁審判官 松川 直樹
江成 克己
登録日 1996-07-25 
登録番号 特許第2540791号(P2540791)
発明の名称 p型窒化ガリウム系化合物半導体の製造方法。  
代理人 古城 春実  
代理人 加治 梓子  
代理人 門松 慎治  
代理人 牧野 知彦  
代理人 吉村 誠  
代理人 黒田 健二  
代理人 蟹田 昌之  

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