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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
平成23行ケ10254審決取消請求事件 判例 特許
平成25行ケ10172審決取消請求事件 判例 特許
平成24行ケ10299審決取消請求事件 判例 特許
無効2008800115 審決 特許
無効2011800064 審決 特許

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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A23F
管理番号 1262639
審判番号 不服2009-22494  
総通号数 154 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-11-18 
確定日 2012-09-06 
事件の表示 平成11年特許願第169048号「新規なコーヒー飲料及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年12月26日出願公開、特開2000-354455〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成11年6月16日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成24年6月11日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認められる。

「メジャー粒子が12メッシュのふるいを通過し14メッシュのふるいに残留するサイズであり、かつ、抗酸化剤が添加された中煎りの粉砕コーヒー豆を使用し、40℃付近で低温抽出することを特徴とするコーヒー飲料の製造方法。」(以下、「本願発明」という。)

2 引用刊行物とその記載事項
当審の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物1ないし7には、以下の事項がそれぞれ記載されている。

(1)刊行物1:特開平2-168910号公報
(1a)「発明が解決しようとする課題
しかしながら上記のような従来の水出しコーヒー抽出器による低温抽出の場合、コーヒー粉粒体と水の濡性が極端に低下するとともに、滴下水温、コーヒー粉粒体の粒度、焙煎度により抽出状況は大きく影響を受ける。なお、これらの諸条件と抽出状態との関係を実験により求めたのが第15図(a)、(b)である。第15図(a)は、中煎りコーヒー粉粒体の粒度がメディアムファイングラインドとファイングラインドのものの冷蔵品(0?10℃)を、室温5℃、抽出時間2?4時間で供給水温度を変えて抽出し、得られる抽出液のコーヒー濃度(%)を求めた結果を示し、また第15図(b)は、焙煎程度が異なる中煎り、深煎り、アイスコーヒー用の3種のコーヒー粉粒体のメディアムファイングラインドのものの冷蔵品(0?10℃)を室温5℃、抽出時間2?4時間で供給水温度を変えて抽出し、得られる抽出液のコーヒー濃度(%)を求めた結果を示すものである。これらの結果から、適正にコーヒーが抽出できるのは非常に限られた範囲である。供給水温度が15℃以下や、コーヒー粉粒体の粒度がメディアムファイングラインド(中細挽)より細かく、また中煎り以上に強く焙煎されたものの場合、うまく抽出できなかった。しかし最も抽出が難しいアイスコーヒー用のコーヒー粉粒体でも、約35℃以上の供給水温度の場合には、適正なコーヒーの抽出が可能であった(この約35℃を抽出可能限界温度という)。」(第1頁右下欄14行?第2頁右上欄1行)

(1b)「課題を解決するための手段
上記の課題を解決するために本発明の水出しコーヒー抽出器は、水容器と、コーヒー粉粒体を収容して水により抽出する濾過室と、前記水容器と濾過室との間に設けた供給水流路と、前記供給水流路に設けた加熱板を有する供給水加熱装置と、抽出液を収容する抽出液容器とを備え、前記加熱板が傾斜面と供給水の流出口を設けた凹部を有するものであり、また加熱板が前記供給水流路に設けた供給水量調節装置の吐出口部に対応する部分に小孔を有するものである。
作用
上記の構成により、コーヒー粉粒体の焙煎程度や粒度などがどのような条件であっても、濾過室へ供給する水を供給水加熱装置によりコーヒー粉粒体の条件に応じて必要温度に加熱し、場合によっては抽出可能限界温度(約35℃)以上に加熱して常に適正なコーヒー抽出を行なうことができ、特に加熱板が傾斜面と流出口を設けた凹部を有していることにより、この凹部の傾斜面で供給水を受けて加熱しつつ流出口へ流すことができて、極めて効率的に加熱することができ、さらにまた前記加熱板が供給水流路に設けた供給水量調節装置の吐出口部に対応する部分に小孔を有していることにより、前記小孔から針などを挿入して供給水量調節装置に発生した目詰まりなどを容易に排除できる。」(第2頁右上欄11行?左下欄17行)

(1c)

(第9頁第15図(a)、(b))

(2)刊行物2:特開平6-133691号公報
(2a)「【0005】
【開発を試みた技術的事項】本発明はこのような背景に鑑みなされたものであって、冷水抽出において抽出時間の短縮を図り、効率のよい抽出を実現するとともに、コーヒー豆に含まれる炭酸ガス中の香気成分をも冷水中に溶出できるような新規なコーヒーの抽出法の開発を試みたものである。」

(2b)「【0009】また本発明において冷水とは、コーヒーの香気成分の変質や揮散を生じるような熱水に対する意義であり、0?30℃の水のほか、それ以上の温度であってもコーヒーの香気成分の変質や揮散を生じない温度帯であれば冷水の概念に含むものとする。」

(2c)「【0013】<実施例1>コーヒー豆(コロンビア、スプレモ L値24)を粉砕し、コーヒー粒径を0.8mm以上の荒びきとした。ここでコーヒー粒径を荒びきとした理由は、コーヒー豆組織中の香気を回収することを目的としたためで、細びきにより粉砕作業中にコーヒー豆組織からの香気成分を失うことをおさえるためである。」

(3)刊行物3:特開平3-155747号公報
(3a)従来技術の項目に
「上述の熱湯を用いる抽出方法においては、コーヒー中に含まれる酸化成分や渋味等の、本来飲用には不要な成分が抽出され、これら不要抽出成分によりコーヒー液の保存性が悪くなり易くなるという問題点があった。
このような問題点を解決する一手段として、水出しコーヒーが周知である。この水出しコーヒーは焙煎後粗挽きしたコーヒー粉をカラムに充填し、水を少しずつ一定速度でコーヒー粉上に滴下して、熱をかけずにコーヒーを抽出するものであり、低温でコーヒーを抽出するために渋味が少なく、こくのあるコーヒーを得ることができる。」(第1頁右下欄16行?第2頁左上欄8行)

(3b)「味について」として、「酸味」、「苦味」、「渋み」及び「あと味」と記載されている。(第3頁右上欄下から6行?最終行)

(4)刊行物4:特開平2-126815号公報の記載事項
(4a)「産業上の利用分野
本発明は、粉砕したコーヒー豆の上に水を滴下させ、コーヒーを抽出する水出しコーヒー抽出器に関するものである。」(第1頁左下欄14?17行)

(4b)「この実験でのコーヒーの抽出条件は次の通りである。即ち、コーヒー豆と使用する水の量の比つまり豆/水比が一定であること、また使用したコーヒー豆は同一ロットとして粉砕されたもので、その平均粒径は1mmであることである。以上の条件で、コーヒーの抽出時間を変えてコーヒー抽出液の濃度を測定すると第2図に示すような結果が得られたものである。つまり、水出しコーヒーのコーヒー抽出時間は1時間以上あれば一定のコーヒー抽出液の濃度が得られること、又1時間でコーヒー抽出液の濃度がほぼ飽和することがわかる。」(第2頁左下欄6?16行)

(5)刊行物5:特開平5-85568号公報の記載事項
(5a)「【0004】焙煎コーヒー本来の純粋な味わいは、冷水透過式によってのみ引き出すことが出来る。コーヒー豆に熱の影響を与えないためである。」

(5b)「【0013】ここでコーヒー微粉末2は、出来るだけ細かく、例えば2mm以下の粉粒に挽き、冷水による濾液抽出の効率を高める。このコーヒーバッグ1は、急ぐ場合等、短時間抽出を行うときには熱湯抽出も可能であるが、先に述べたように冷水抽出による純粋な味わいの確保を必要とするケースが多いと考えられるため、粉粒を細かくし、水による抽出効率を向上させておく。勿論、豆の種類や焙煎の度合いは問わない。」

(6)刊行物6:特開平11-32680号公報の記載事項
(6a)「【請求項1】コーヒー豆を焙煎した後、2週間以内にアスコルビン酸ナトリウム及び/またはエルソルビン酸ナトリウムの粉末を添加してコーヒー豆を粉砕し、粉砕後2週間以内にこれを40?90℃の湯で抽出することを特徴とするコーヒー飲料の製法。
【請求項2】コーヒー豆を焙煎し、2週間以内にこれを粉砕した後、2週間以内に粉砕したコーヒー豆にアスコルビン酸ナトリウム及び/またはエルソルビン酸ナトリウムの粉末を添加し、2週間以内にこれを40?90℃の湯で抽出することを特徴とするコーヒー飲料の製法。」

(6b)「【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、渋みがなく、かつ後味が良くて従来にない風味の良い品質を持ち、更に高温保存時、特にコインベンダーのホット販売時に風味の劣化、pHの低下が抑制され、コーヒー本来の風味を維持し、高品質のコーヒー飲料の製法を提供する点にある。」

(6c)「【0027】実施例3
焙煎したての中煎りコーヒー豆(ブラジル、モカ、マンデリンのブレンド)600gを粉砕した後、5分以内にアスコルビン酸ナトリウム9gを添加し、5分以内に約50℃の湯約10倍量を加えてドリップ抽出し、直ちにこれを冷却して4800mlのコーヒー抽出液を得た。」

(6d)【表1】に、「香りの好み」、「渋みの強さ」及び「後味の良さ」と記載されている。(【0022】)

(7)刊行物7:特開平3-108446号公報の記載事項
(7a)「(1)コーヒー豆の抽出工程時及び/又は抽出液に抗酸化剤を添加することを特徴とするコーヒー飲料の製造法。
(2)抗酸化剤がトコフェロール、L-アスコルビン酸及びポリフェノール化合物の単独もしくは併用であることを特徴とする請求項第(1)項記載のコーヒー飲料の製造法。」(特許請求の範囲請求項1、2)

(7b)「(発明が解決しようとする課題)
上述したようにコーヒーの抽出時の変質を防ぎ殺菌時の加熱臭を抑制し保存性を高める効率的な良い方法は未だ確立されていない。
そこで本発明はコーヒーの抽出時の酸化を阻止し、殺菌時の加熱臭を抑制し風味や香りの変質を防止することにより、風味に優れ、常温で保存可能なコーヒー飲料の製造法を提供することにある。」(第2頁右上欄6?14行)

(7c)「抗酸化剤の添加方法としては、磨砕したコーヒー豆に予め混合しても良いが、好ましくは、抽出する際の水に溶解或いは分散させて抽出するのが良い。」(第2頁左下欄19行?右下欄2行)

(7d)「実施例1
焙煎コーヒー豆(コロンビア、L値=20)を磨砕し、粉末30gをペーパーフィルターに取り、これに0.015g(500ppm)のL-アスコルビン酸ナトリウム、0.015g(ポリフェノール化合物25ppm)のポリフェノール化合物製剤(三共(株)、サンフードR末)及び0.015g(トコフェロールとして100ppの粉末天然抗酸化製剤((株)ホーネンコーポレーション、豊年天然トコフェロール200P)などの抗酸化剤を別々に混ぜ合わせ、各々300m1の熱湯を注ぎ、コーヒー抽出液を得た。」(第2頁右下欄17行?第3頁左上欄7行)

3 対比・判断
(1)刊行物1には、「水出しコーヒー抽出器による低温抽出の場合、コーヒー粉粒体と水の濡性が極端に低下するとともに、滴下水温、コーヒー粉粒体の粒度、焙煎度により抽出状況は大きく影響を受ける」(上記(1a))ことが記載され、「コーヒー粉粒体の焙煎程度や粒度などがどのような条件であっても、濾過室へ供給する水を供給水加熱装置によりコーヒー粉粒体の条件に応じて必要温度に加熱し、場合によっては抽出可能限界温度(約35℃)以上に加熱して常に適正なコーヒー抽出を行なうことができ」ること(上記(1b))が記載されているから、刊行物1には、
「水出しコーヒー抽出器により、コーヒー粉粒体の焙煎程度や粒度などの条件に応じ、35℃以上の必要温度に水を加熱して低温抽出する、水出しコーヒーの製造方法」の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。

(2)そこで、本願発明と、刊行物1発明とを比較する。
ア 刊行物1発明の「コーヒー粉粒体」は、コーヒー豆を所定粒度に粉砕したものであるから、本願発明の「メジャー粒子が12メッシュのふるいを通過し14メッシュのふるいに残留するサイズであり、抗酸化剤が添加された中煎りの粉砕コーヒー豆」とは、粉砕コーヒー豆である点で共通する。

イ 刊行物1発明の「35℃以上の必要温度に水を加熱して低温抽出する」ことと、本願発明の「40℃付近で低温抽出する」こととは、低温抽出する点で共通する。

ウ したがって、両者の間には、以下の一致点及び相違点がある。
(一致点)
粉砕コーヒー豆を使用し、低温抽出するコーヒー飲料の製造方法である点。

(相違点1)
粉砕コーヒー豆が、本願発明は、「メジャー粒子が12メッシュのふるいを通過し14メッシュのふるいに残留するサイズ」で「中煎り」であり、「抗酸化剤」が添加されたものであるのに対して、刊行物1発明は、粒度及び抗酸化剤の添加を規定していない点。

(相違点2)
低温抽出する温度が、本願発明では「40℃付近」であるのに対して、刊行物1発明では、「コーヒー粉粒体の焙煎程度や粒度などの条件に応じた、35℃以上の必要温度」である点。

(3)上記相違点は、相互に関連するのでまとめて検討する。
ア 本願明細書には、粉砕コーヒー豆の粒度及び抽出温度について、段落【0009】に「40℃付近での低温抽出が、後味がスッキリしていると同時に、薄っぺらい味とはならないことを見出すと共に、抽出に供される粉砕コーヒー豆の粒度を細かくすることによって低温抽出においてコーヒー飲料の味の厚みを補償することが可能になり、低温抽出されたコーヒー飲料が薄っぺらい味となってしまうことが防止できるということを見出し、本発明を完成するに至った。」と記載されていることから、本願発明は、味の厚みを補償するために「抽出に供される粉砕コーヒー豆の粒度を細かくする」という認識のもとに、「メジャー粒子が12メッシュのふるいを通過し14メッシュのふるいに残留するサイズ」としたものであるといえ、後味がスッキリしていると同時に、薄っぺらい味とはならないために、40℃付近での低温抽出としたものであるといえる。

イ そして、本願明細書には、「メジャー粒子」については、段落【0024】に「コーヒー豆の粉砕を行った場合には粉砕コーヒー豆の粒度が均一なものではないという条件の下で粒度分布を考えた場合に、粉砕コーヒー豆中に重量比で最も多く含まれる粉砕コーヒー豆粒子のことを意味する。」と記載され、「メッシュ」については、段落【0025】に、「タイラー(TYLER)規格に則って作成された篩による弁別によって規定される「M」という単位で表記」と記載されており、タイラー(TYLER)規格の12メッシュは1410μm、14メッシュは1190μmであるから、本願発明は、重量比で最も多く含まれる粒子のサイズ、つまり、重量の粒度分布のピークが、1190?1410μmの間にあるといえる。

ウ そして、本願発明の「メジャー粒子」の数値限定の技術的意義について、本願明細書段落【0014】に「 コーヒー飲料の低温抽出法において、抽出温度を低くするに従って、メジャー粒子のサイズが小さい粉砕コーヒー豆を使用することを特徴とするコーヒー飲料の製造方法。」、段落【0018】に「本発明の本質は、「コーヒー飲料の低温抽出にあたって、粉砕コーヒー豆の粒度を細かくすることにより、製造されるコーヒー飲料の味に厚みを付与する方法」と把握することができる。」と記載されているものの、数値限定については、本願明細書には、段落【0027】?【0029】に、唯一の実施例として記載された粉砕コーヒー豆の粒度分布に基づくものであり、その臨界的意義は明らかでない。

エ さらに、本願発明の「中煎り」について、本願明細書には、段落【0027】の実施例で、「中煎りのコーヒー豆」を用いることが記載されるだけであり、その技術的意義は明らかでない。

オ 一方、刊行物1には、第15図(a)に、中煎りのコーヒー粉粒体であり、粒度がメディアムファイングラインドとファイングラインドのものについて、抽出水の温度を変えて、得られる抽出液のコーヒー濃度(%)を求めた結果が示され、第15図(b)には、粒度がメディアムファイングラインドについて、焙煎度を中煎り、深煎り、アイスコーヒー用としものについて、抽出水の温度を変えて、得られる抽出液のコーヒー濃度(%)を求めた結果が示され、コーヒーの適性抽出濃度範囲を1.2?1.6%として、粒度がメディアムファイングラインドより細かいものの場合、また、中煎り以上に強く焙煎されたものの場合、うまく抽出できなかったことが記載(上記(1a))されており、刊行物1のこれらの記載事項から、コーヒー粉粒体の粒度、焙煎度、抽出温度が、コーヒーの抽出濃度に影響し、中煎りの場合、粒度、抽出温度、コーヒー濃度の間に、第15図(a)に示さるような傾向があることが示されているといえる。
そして、刊行物1発明は「コーヒー粉粒体の焙煎程度や粒度などの条件に応じた、35℃以上の必要温度に水を加熱して低温抽出する」ものであり、刊行物1の「メディアムファイングラインド(中細挽)より細かく、また中煎り以上に強く焙煎されたものの場合、うまく抽出できなかった」(上記(1a))いという記載から、焙煎度として、中煎り以下を選択し、粒度として、メディアムファイングラインド以上を選択し、第15図(a)のグラフを作成し、官能試験を行い、好みに応じてコーヒーの適性抽出濃度範囲を決めれば、適性抽出濃度範囲となる水温を決定することができるといえる。

カ また、水出しコーヒーに用いる粉砕コーヒーの粒径については、刊行物2ないし5に以下の記載がある。

・刊行物2(上記(2c))には、コーヒーの冷水抽出法が記載され、コーヒー粒径を0.8mm、つまり800μm以上の荒びきとすること
・刊行物3(上記(3a))には、従来技術として、水出しコーヒーは、粗挽きしたコーヒー粉を用いて水で抽出すること
・刊行物4(上記(4b))には、水出しコーヒーの抽出条件として、粉砕されたコーヒーの平均粒径が1mm、つまり1000μmであること
・刊行物5(上記(5b))には、コーヒー微粉末は、出来るだけ細かく、例えば2mm、つまり2000μm以下の粉粒に挽き、冷水による抽出効率を高めること

刊行物2?5の上記記載事項から、水出しコーヒーにおいて、800μm以上、1000μm程度、2000μm以下、つまり、800?2000μmといった、メディアムファイングラインドより粗挽き粉砕したコーヒー粉粒体を用いることは、本願出願前に知られていたことといえる。ここで、粉砕により粒度分布が生じることは技術常識であるから、これらの粒径は、平均粒径或いはピーク粒径であるといえる。

キ そして、コーヒーの味について、本願明細書に評価項目として記載された「苦みの強さ」、「渋みの強さ」、「後味の好み」は、コーヒーの評価項目として、一般的なものであることは、刊行物3(上記(3b))に、「味について」として「酸味」、「苦み」、「渋み」、「あと味」の評価が記載され、刊行物6(上記(6d))に「香の好み」、「渋みの強さ」、「後味の良さ」の評価が記載されれるとおりである。
さらに、コーヒーの濃度と、苦味、渋み、濃厚感等の味の評価とがほぼ相関することは、例えば、特開平1-274062号公報(第2頁右下欄9行?右上欄5行、第4頁第3図?第5図)、特開平1-313018号公報(第2頁左下欄6行?右下欄6行、第5頁第4図?第6図)に記載されるとおり、本願出願前に周知の事項である。
また、コーヒーの濃度や味については、個人により嗜好が異なることは、本願出願前に広く知られていることである。

ク 以上のことから、刊行物1発明において、水出しコーヒーの製造に用いるコーヒー粉粒体を、刊行物1にうまく抽出できると記載される「中煎り」とし、その粒度について、メディアムファイングラインド(通常、300?650μm)より粗挽きであり、上記のとおり水出しコーヒーに用いられることが知られていた800?2000μmの範囲で各種粒度について、刊行物1に記載された第15図(a)を参考に、コーヒー濃度と抽出温度の関係を得、苦味、渋み、濃厚感等の一般的なコーヒーの評価指標に相関するといえるコーヒー濃度の適性範囲を、パネリストによる評価を行って決め、この範囲に基づき、嗜好に応じた好ましい味のコーヒーが得られるように、粒度と抽出温度を最適化し、メジャー粒子が12メッシュのふるいを通過し14メッシュのふるいに残留するサイズで40℃付近で抽出することは、当業者が容易になし得たことといえる。

ケ また、粉砕したコーヒー豆に抗酸化剤を添加して、コーヒーの風味の劣化を防ぐことは、例えば、刊行物6、7に記載されるように、本願出願前の周知技術であるから、刊行物1発明において、コーヒー粉粒体に酸化防止剤を添加することに、格別の困難性があるとすることはできない。

コ そして、本願発明の効果として、本願明細書段落【0027】?【0034】に、実施例として、12?14メッシュがメジャー粒子の粉砕コーヒーを40℃で抽出したこと、比較例として、10メッシュ?12メッシュがメジャー粒子の粉砕コーヒーを40℃で抽出したことが記載され、実施例のコーヒーは比較例のものより、「苦みの強さ」、「渋みの強さ」、「後味の好み」について、パネリスト30人の評価が優れいていることが示されているが、これらの効果は、刊行物1ないし7の記載事項、及びコーヒーの味の好みに応じてた最適化から予測しうるものであり、格別顕著なものとはいえいない。

4 むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、刊行物1ないし7記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-07-05 
結審通知日 2012-07-10 
審決日 2012-07-23 
出願番号 特願平11-169048
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A23F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 三原 健治伊藤 良子  
特許庁審判長 秋月 美紀子
特許庁審判官 菅野 智子
齊藤 真由美
発明の名称 新規なコーヒー飲料及びその製造方法  
代理人 正林 真之  

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