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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B60K
管理番号 1262675
審判番号 不服2011-16285  
総通号数 154 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-07-28 
確定日 2012-09-06 
事件の表示 特願2009-526108号「ハイブリッドドライブ機構の駆動方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 3月 6日国際公開、WO2008/025825、平成22年 3月18日国内公表、特表2010-508187号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成19年8月30日[パリ条約による優先権主張外国庁受理、2006年8月30日、ドイツ国]を国際出願日とする出願であって、平成23年4月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年7月28日に拒絶査定に対する不服の審判請求がなされるとともに、同時に手続補正(前置補正)がなされたものである。

2.平成23年7月28日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年7月28日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)本願補正発明について
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「車両用のパラレルハイブリッドドライブとして構成されたドライブトレインを有するハイブリッドドライブ機構の駆動方法であって、少なくとも1つの内燃機関と少なくとも1つの電気機械装置と制御ユニットとが設けられており、該内燃機関と該電気機械装置とのあいだに分離クラッチが配置されており、駆動方向で見て該電気機械装置は該内燃機関の後方に配置されている、
ハイブリッドドライブ機構の駆動方法において、
慣性走行動作において、
制御ユニットにより、牽引トルクを設定し、設定される牽引トルクが前記電気機械装置によって受容可能な牽引トルク以下である場合に、前記分離クラッチが分離されることを特徴とするハイブリッドドライブ機構の駆動方法。」
と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために上記下線部の限定を付加したものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)原査定の拒絶の理由に引用した文献等の記載

(ア)本願の優先権主張日前に頒布された刊行物1である特開2004-251452号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに次の技術事項が記載されている。(なお、下線部は当審において付与したものである。)

・「【0008】 以下本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。まず図1?図2に本願発明が適用可能なパラレル方式のハイブリッド車両の構成例を示す。図1において、この車両のパワートレインは、モータ1、エンジン2、パウダークラッチ(以下、単に「クラッチ」と言う。)3、モータ4(本発明の回転電機)、無段変速機5、減速装置6、差動装置7および駆動輪8から構成される。モータ1の出力軸、エンジン2の出力軸およびクラッチ3の入力軸は互いに連結されている。モータ1とエンジン2は所定の回転比を有する減速装置(図示せず)を介して相互駆動可能に連結されている。また、クラッチ3の出力軸、モータ4の出力軸および無段変速機5の入力軸が互いに連結されている。 【0009】 クラッチ3締結時はエンジン2とモータ4が車両の推進源となり、クラッチ3開放時はモータ4のみが車両の推進源となる。エンジン2またはモータ4の駆動力は、無段変速機5、減速装置6および差動装置7を介して駆動輪8へ伝達される。無段変速機5には油圧装置9から圧油が供給され、ベルトのクランプと潤滑がなされる。 【0010】 モータ1は主としてエンジン始動と発電に用いられ、モータ4は主として車両の力行と減速時の回生運転に用いられる。また、モータ10は油圧装置9のオイルポンプ駆動用である。ただしクラッチ3締結時には、モータ1を車両の力行と制動に用いることもでき、モータ4をエンジン始動や発電に用いることもできる。 【0011】 モータ1,4,10はそれぞれ、インバータ11,12,13により駆動される。なお、モータ1,4,10に直流電動モータを用いる場合には、インバータの代わりにDC/DCコンバータを用いる。インバータ11?13は共通のDCリンク14を介して強電バッテリ15に接続されており、強電バッテリ15の直流電力を交流電力に変換してモータ1,4,10へ供給するとともに、モータ1,4の交流発電電力を直流電力に変換して強電バッテリ15を充電する。なお、インバータ11?13は互いにDCリンク14を介して接続されているので、回生運転中のモータにより発電された電力を強電バッテリ15を介さずに直接、力行運転中のモータへ供給することができる。 【0012】 16は本発明の制御回路の機能を備えたコントローラであり、マイクロコンピュータとその周辺部品や各種アクチュエータなどを備え、クラッチ3の伝達トルク、モータ1,4,10の回転数や出力トルク、無段変速機5の変速比、エンジン2の燃料噴射量・噴射時期、点火時期などを制御する。」

・「【0016】 以上は本発明が適用可能なハイブリッド車両の基本的な構成例を示したものであり、本発明ではこうしたハイブリッド車両においてパウダークラッチ3の締結または開放動作を適切に制御することにより耐久性や燃費などの諸性能を改善するものである。以下にこのためのコントローラ16の制御内容の実施形態につき図3以下の各図面を参照しながら説明する。」

・「【0020】 上記判定処理において締結可と判定されたときには、次に車両の目標駆動力をスロットル開度センサ28や車速センサ24等からの信号に基づいて演算した結果から、目標駆動力がゼロ以下、つまり減速状態にあるか否かの判定を行う(ステップ503)。」

・「【0032】
一方、上記ステップ703にて目標駆動力がゼロ以下の減速状態を判定したときには、実車速Vspが目標開放車速の上限値cnvspmax以下であること、目標駆動力が回生可能トルク以上であること、無段変速機5の入力側回転数Nprが基準値Npro以下であることのすべての条件が成立した状態が所定時間以上継続したときにクラッチ開放を行い(ステップ712,710,711)、前記条件が成立しなかったときにはクラッチ開放要求は行わない(ステップ713)。前記の目標駆動力とはこの場合は減速時のエンジンブレーキに相当する負のトルクを意味している。クラッチ締結状態では実際のエンジンブレーキ作用をそのまま利用するが、クラッチ開放したときには車両の慣性力によりモータ4を駆動して発電させる回生動作を原則として行い、このときの発電負荷(回生トルク)をエンジンブレーキのように利用する。ただし、もしも減速時にモータ4によって得られる回生トルクの最大値が、適度な減速性能を付与すべき目標駆動力に満たないとき、つまり回生動作によっては適度な減速を行えないときには、クラッチ開放を見合わせることにより減速感の変動を防止するようにしている。」

・図1には、パラレル方式のハイブリッド車両の構成とその制御線が示されている。

・上記の事項及び図面の記載から勘案すると、引用例1に記載のパラレル方式のハイブリッド車両の駆動装置の制御の構成からみて、パラレル方式のハイブリッド車両の駆動装置の制御方法及びエンジン2とモータ(回転電機)4とコントローラ16とが設けられており、該エンジン2と該モータ(回転電機)4とのあいだにパウダークラッチ3が配置されており、駆動方向で見て該モータ(回転電機)4は該エンジン2の後方に配置されていることが明らかである。

上記の記載事項及び【図1】に示された内容を総合すると、引用例1には、以下の発明が記載されていると認められる。

「車両用のパラレル方式ハイブリッド駆動として構成されたパワートレインを有するハイブリッド車両の駆動装置の制御方法であって、エンジン2とモータ(回転電機)4とコントローラ16とが設けられており、該エンジン2と該モータ(回転電機)4とのあいだにパウダークラッチ3が配置されており、駆動方向で見て該モータ(回転電機)4は該エンジン2の後方に配置されている、
パラレル方式のハイブリッド車両の駆動装置の制御方法において、
エンジンブレーキ動作において、
コントローラ16により、(i)実車速Vspが目標開放車速の上限値cnvspmax以下,(ii)スロットル開度センサ28や車速センサ24等からの信号に基づいて、コントローラ16により演算した目標駆動力が、前記モータ(回転電機)4によって得られる回生トルクの最大値や回生可能トルク以下,(iii)無段変速機5の入力側回転数Nprが基準値Npro以下及び(iv)上記すべての条件が成立した状態が所定時間以上継続した場合に、前記パウダークラッチ3が分離されるパラレル方式のハイブリッド車両の駆動装置の制御方法。」(以下「引用発明」という。)

(3)対比
本願補正発明と引用発明を対比する。
引用発明の「パラレル方式のハイブリッド車両の駆動装置の制御方法」は、本願補正発明の「ハイブリッドドライブ機構の駆動方法」に相当し、以下同様に、「パワートレイン」は「ドライブトレイン」に、「エンジン2」は「少なくとも1つの内燃機関」に、「モータ(回転電機)4」は「少なくとも1つの電気機械装置」に、「コントローラ16」は「制御ユニット」に、「パウダークラッチ3」は「分離クラッチ」に、「エンジンブレーキ動作」は「慣性走行動作」に、「目標駆動力」は「牽引トルク」に、「回生トルクの最大値,回生可能トルク」は「受容可能な牽引トルク」にそれぞれ相当する。
また、コントローラ16(制御ユニット)によりパウダークラッチ3(分離クラッチ)が分離される条件として、引用発明の「 (i)実車速Vspが目標開放車速の上限値cnvspmax以下,(ii)スロットル開度センサ28や車速センサ24等からの信号に基づいて、コントローラ16により演算した目標駆動力が、前記モータ(回転電機)4によって得られる回生トルクの最大値や回生可能トルク以下,(iii)無段変速機5の入力側回転数Nprが基準値Npro以下及び(iv)上記すべての条件が成立した状態が所定時間以上継続した場合」の「(ii)スロットル開度センサ28や車速センサ24等からの信号に基づいて、コントローラ16により演算した目標駆動力が、前記モータ(回転電機)4によって得られる回生トルクの最大値や回生可能トルク以下の場合」は、本願補正発明の「牽引トルクが前記電気機械装置によって受容可能な牽引トルク以下である場合」に対応し、ともに本願補正発明の文言で表現すると「制御ユニットにより、分離クラッチが分離される」という点で共通している。

そうすると、両者は次の点で一致し、
「車両用のパラレルハイブリッドドライブとして構成されたドライブトレインを有するハイブリッドドライブ機構の駆動方法であって、少なくとも1つの内燃機関と少なくとも1つの電気機械装置と制御ユニットとが設けられており、該内燃機関と該電気機械装置とのあいだに分離クラッチが配置されており、駆動方向で見て該電気機械装置は該内燃機関の後方に配置されている、
ハイブリッドドライブ機構の駆動方法において、
慣性走行動作において、
制御ユニットにより、前記分離クラッチが分離されることを特徴とするハイブリッドドライブ機構の駆動方法。」

以下の点で相違する。
a:本願補正発明では、「牽引トルク」が「設定される」のに対し、引用発明では「目標駆動力〈牽引トルク〉が、スロットル開度センサ28や車速センサ24等からの信号に基づいて、コントローラ16〈制御ユニット〉により演算した」ものである点。

b:本願補正発明では、「分離クラッチが分離される」のは「牽引トルクが前記電気機械装置によって受容可能な牽引トルク以下」(引用発明における条件(ii)の場合)であるのに対し、引用発明では、「パウダークラッチ3が分離される」のは「(i)実車速Vspが目標開放車速の上限値cnvspmax以下,(ii)スロットル開度センサ28や車速センサ24等からの信号に基づいて、コントローラ16により演算した目標駆動力が、前記モータ(回転電機)4によって得られる回生トルクの最大値や回生可能トルク以下,(iii)無段変速機5の入力側回転数Nprが基準値Npro以下及び(iv)上記すべての条件が成立した状態が所定時間以上継続した場合」である点で相違する。

(4)当審の判断
aの相違点に関しては、本願補正発明の制御ユニットは、本願明細書の【0025】の「制御ユニット2は到来した信号3,4および記憶されている特性マップまたは特性曲線から牽引トルクを計算し、接続線路5を介して出力する。」との記載からみて、要求トルクをマップまたは特性曲線を利用して、牽引トルクを設定するものであると解釈できる。しかしながら、このようなマップまたは特性曲線を利用して牽引トルクを設定することは、パラレル方式のハイブリッド車両の駆動装置の制御方法(ハイブリッドドライブ機構の駆動方法)においては常套手段であるから、引用発明の「演算」に換えて上記常套手段を採用して、上記相違点aに係る本願補正発明のような構成とすることは、当業者なら容易に為し得ることと認められる。

bの相違点に関しては、引用発明の条件(ii)以外の(i)(iii)(iv)の条件は、機種毎に要求される課題を考慮してそれぞれ決定されるものである。そして、その条件(ii)は本願補正発明の条件である「牽引トルクが前記電気機械装置によって受容可能な牽引トルク以下である場合」と技術的にみて同じであるから、引用発明の条件(i)?(iv)の方が本願補正発明の条件より厳しく、引用発明の条件を満たすことは本願補正発明の上記の条件を満足させているものといえるから、上記相違点bは実質的な相違点とはいえない。

そして、本願補正発明により得られる作用効果も,引用発明及び当該分野の常套手段から当業者であれば予測できる程度のものであって,格別のものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用発明と当該分野の常套手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)なお、請求人は、当審における審尋の平成24年2月2日付け回答書において、ドライバーの期待感を加味し、その期待に合致するように牽引トルクが設定される旨、主張しているが、ドライバーの期待感及びマップとの関係に関しては、発明の詳細な説明中に何ら具体的な記載はなく、さらに請求項1の記載からもうかがい知ることができないから、当該主張を採用することはできない。

(6)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成23年7月28日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成23年3月11日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?15に記載された事項により特定されるものと認められるところ、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「車両用のパラレルハイブリッドドライブとして構成されたドライブトレインを有するハイブリッドドライブ機構の駆動方法であって、少なくとも1つの内燃機関と少なくとも1つの電気機械装置とを有しており、該内燃機関と該電気機械装置とのあいだに分離クラッチが配置されており、駆動方向で見て該電気機械装置は該内燃機関の後方に配置されている、
ハイブリッドドライブ機構の駆動方法において、
慣性走行動作において、
牽引トルクを設定し、
設定される牽引トルクが前記電気機械装置によって受容可能な牽引トルク以下である場合に、前記分離クラッチが分離されることを特徴とするハイブリッドドライブ機構の駆動方法。」

(2)刊行物等
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物等、および、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(3)判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から限定された下線部の構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用発明と当該分野の常套手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明と当該分野の常套手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明と当該分野の常套手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-03-23 
結審通知日 2012-03-28 
審決日 2012-04-20 
出願番号 特願2009-526108(P2009-526108)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B60K)
P 1 8・ 575- Z (B60K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 畔津 圭介  
特許庁審判長 川向 和実
特許庁審判官 小関 峰夫
杉浦 貴之
発明の名称 ハイブリッドドライブ機構の駆動方法  
代理人 二宮 浩康  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 篠 良一  
代理人 久野 琢也  
代理人 矢野 敏雄  
代理人 星 公弘  
代理人 高橋 佳大  

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