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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1262683
審判番号 不服2011-21296  
総通号数 154 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-10-03 
確定日 2012-09-06 
事件の表示 特願2006-191676号「弾球遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成20年1月31日出願公開、特開2008-18000号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本件に係る出願(以下「本願」という。)は、平成18年7月12日の出願であって、平成23年6月29日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年7月5日)、これに対し、同年10月3日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、その審判の請求と同時に手続補正がなされたものである。

2 本願発明について
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成23年10月3日の手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その補正前の請求項4に相当するものであって、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「第1,第2変動開始条件が成立することに基づいて取得される第1,第2検出情報を所定の上限個数を限度として順次記憶する第1,第2検出情報記憶領域(63a)(63b)と、前記第1,第2検出情報記憶領域(63a)(63b)に記憶された前記第1,第2検出情報に基づいて第1,第2特別図柄を変動表示する第1,第2特別図柄表示手段(23a)(23b)と、該第1,第2特別図柄表示手段(23a)(23b)の変動後の停止図柄が抽選により予め定められた大当たり態様となることに基づいて第1,第2利益状態を発生させる第1,第2利益状態発生手段(65a)(65b)と、前記第1,第2利益状態の発生後の所定期間に特別遊技状態を発生させる特別遊技状態発生手段(67)とを備えた弾球遊技機において、前記第2利益状態の方が前記第1利益状態よりも遊技者が得られる平均利益が大きくなるように設定され、第1,第2特別図柄始動手段(14a)(14b)に遊技球が入賞することにより前記第1,第2変動開始条件が成立するように構成され、前記第2特別図柄始動手段(14b)は、普通始動手段(13)が遊技球を検出することに基づいて行われる普通抽選で当たりとなった場合に入賞可能な開状態となる開閉式入賞手段により構成され、前記特別遊技状態中以外の通常遊技状態中よりも前記特別遊技状態中のほうが前記第2特別図柄始動手段(14b)の開放時間及び/又は開放回数が大となり、遊技領域(11)の左右方向略中央に可変表示手段(12)が配置され、前記普通始動手段(13)は、前記可変表示手段(12)の左右方向一方側を流下する遊技球を検出する確率の方が左右方向他方側を流下する遊技球を検出する確率よりも高くなるように設けられ、前記第1特別図柄始動手段(14a)は、前記左右方向他方側を流下する遊技球を検出する確率の方が前記左右方向一方側を流下する遊技球を検出する確率よりも高くなるように設けられており、前記第1,第2特別図柄表示手段(23a)(23b)の何れか一方の図柄変動中には他方の図柄変動を開始しないように構成され、前記第1,第2検出情報の記憶個数が共に1以上である場合には、前記第1特別図柄表示手段(23a)の図柄変動よりも前記第2特別図柄表示手段(23b)の図柄変動を優先して行うように構成されていることを特徴とする弾球遊技機。」

3 刊行物について
(1)原査定の拒絶理由において引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開2005-304739号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
ア 「【請求項1】
遊技盤に設ける第1始動口及び第2始動口、
前記第1始動口への入球に基づいて大当たりの抽選をする第1抽選手段、 前記第2始動口への入球に基づいて大当たりの抽選をする第2抽選手段、 前記第1抽選手段での大当たりの当選を前提とした所定条件下、前記第2始動口への入球をアシストするアシスト手段、
前記第1抽選手段の作動を契機とした所定条件下、前記アシスト手段の作動を停止させるアシスト停止手段、
を含むことを特徴とする弾球遊技機。
【請求項2】
前記第1抽選手段は、この第1抽選手段による大当たり後に該第1抽選手段で再度大当たりし易い特典遊技に突入させる特典大当たりと、前記特典遊技への突入のない通常大当たりの抽選を含み、
前記第1抽選手段での特典大当たりに基づいて前記アシスト手段を作動させ、前記第1抽選手段での通常大当たりに基づいて前記アシスト停止手段を作動させる請求項1記載の弾球遊技機。
【請求項3】
前記第2抽選手段は、この第2抽選手段による大当たり後に該第2抽選手段で再度大当たりし易い特典遊技に突入させる特典大当たりの抽選を含む請求項1又は2記載の弾球遊技機。」(【特許請求の範囲】)
イ 「この種の遊技機は、始動口・図柄表示装置・大入賞口のユニットを一つ備え、始動口への入球により大当たりの抽選をし、その当否結果を図柄変動を経て導出して、大当たり時には大入賞口を所定態様で開く大当たり遊技に移行させるのが通例である。特許文献1記載のものは、始動口・図柄表示装置・大入賞口のユニットを遊技盤の左・中・右に3組配置し、遊技者の好みのユニットで大当たりを引けるようにしたり、一定期間内で複数のユニットで大当たりを引くことを条件に大当たり遊技に移行させたり、一のユニットで確率変動遊技への突入が付帯した特典大当たりを引くと、他のユニットで確率変動遊技を実行させたりし、新たな遊技性を打ち出すようにしている。
【特許文献1】特開2003-310925号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、単ユニットのものは勿論、上記文献記載の複数ユニットのものでも、各ユニットの独立性が強いと共に、各ユニットで獲得する利益の単独又は単純な組合せによる利益を付与できるに止まり、面白味に欠ける。尚、上記文献記載のものは、ユニット別始動口の他に共用始動口を付加し、好みのユニット以外のユニットからも大当たりが発生する偶然性を付与するが、顕著な面白味を喚起するまでには至らない。
本発明では、あるユニットでの遊技が他のユニットにおいて時に有利となり、時に不利となるスリリングな遊技性をつくり出し、斬新な面白味を喚起できる弾球遊技機を提供することを課題とする。」(段落【0002】?【0004】)
ウ 「図1は、本発明を適用するパチンコ遊技機1であり、遊技枠10に本体11を開扉可能に支持している。本体11の前面上部には、丸窓12にガラス13を嵌めたフロント扉14を有し、その内方に遊技盤2(図2)を備える。本体11の前面下部には、貸球及び賞球を受止める受皿3、遊技盤2に球を打出す発射装置40の発射ハンドル4、効果音等を出音する左右スピーカ51,52を備える。受皿3には、遊技機1に隣接して設置する図示しないカードユニットと連携して球貸しする球貸ボタン31、カード返却ボタン32等を備える。フロント扉14には、飾りランプ61,62、飾りLED63,64、賞球払出等の各種表示ランプ65,66を具備する。
【実施例1】
図2に示すように、遊技盤2には、次の主遊技部品を備える。
1)第1特別電動役物ユニットU1
左側の第1図柄表示領域D1に動画と共に「0」?「9」の10種の数字から成る左・中・右3桁の特別図柄を変動及び停止させるカラー液晶ディスプレイから成る第1図柄表示装置71、第1図柄表示領域D1での図柄変動及び大当たり抽選を起動する遊技盤中央やや下の第1始動口C1、その大当たり時に手前に開く球受部材81をもつ第1大入賞口B1。
2)第2特別電動役物ユニットU2
右側の第2図柄表示領域D2に動画と共に「0」?「9」の10種の数字から成る左・中・右3桁の特別図柄を変動及び停止させるカラー液晶ディスプレイから成る第2図柄表示装置72、第2図柄表示領域D2での図柄変動及び大当たり抽選を起動する遊技盤右上の第2始動口C2、その大当たり時に手前に開く球受部材82をもつ第2大入賞口B2。
3)普通電動役物ユニットU3
第2始動口C2への入球路を拡げる開状態と入球路を狭める閉状態とに切換可能な花弁91,92をもつチューリップ式普通電動役物9、その花弁91,92を開状態とするか否かの普通図柄の抽選及び普通図柄の変動を起動するゲートG、普通図柄を変動及び停止させて普通図柄の抽選結果を導出する普通図柄表示領域Dを画する7セグメントLEDから成る普通図柄表示装置7。
図2中、21,22は略円形の遊技領域20を区画し且つ発射ハンドル4により打出す球を導くレール、23?26は一般入賞口、27a?dは風車、28aは球止め、28bは球戻り防止片、29はアウト口である。図示は適宜省略したが、遊技領域20には独特のゲージに従い、多数の釘Nが打たれている。第1始動口C1の球入口には平行状に釘Nが打たれ、中央やや下の第1始動口C1の設置位置と相俟ち、所定割合で比較的容易に入賞が期待できる。一方、遊技領域20の右上方で且つゲートGの直下に位置する第2始動口C2の球入口には、三角状に釘Nが打たれ、右打ちに変え且つ普通図柄の当選により電動役物9の花弁91,92が開かれない限り入賞は困難である。
第1始動口C1への入賞球一個当たりの賞球は例えば4個、第2始動口C2及び各大入賞口B1,B2のそれは例えば15個、一般入賞口23?26のそれは例えば10個に設定している。X1?4は第1始動口C1への入球に基づく図柄変動待ちの保留玉表示器、Y1?4は第2始動口C2への入球に基づく図柄変動待ちの保留玉表示器である。それぞれ、保留玉が最大4個貯まって空きができないうちに更に追加的に生じる入球は、賞球の払出し対象になるも、大当たり抽選及び図柄変動の対象外となる。表示器の図示は省略したが、同様に、ゲートGに対する通過球による普通図柄の変動待ちも最大4個まで保留し、空きができないうちに更に追加的に生じる通過球は、普通図柄抽選及び普通図柄変動の対象外となる。
各始動口C1,C2への入球を契機にそれぞれ独立に抽選する大当たりの当選確率は何れも例えば300分の1、通常大当たりと特典大当たりである確率変動遊技への移行が付帯した確変大当たりとの振分け率は何れも例えば2分の1に設定している。各始動口C1,C2への入球時、例えば、0?299の範囲で変化する大当たり抽選用乱数、0?9の範囲で変化する停止図柄抽選用乱数を各取得し、大当たり抽選用乱数が例えば7であると大当たりの当選、大当たりの当選を前提に停止図柄抽選用乱数が例えは奇数であると確変大当たりの当選・これ以外は通常大当たりの当選としている。確変大当たり時には1,3,5,7,9何れかの奇数数字の三つ揃いが導出され、通常大当たり時には0,2,4,6,8,何れかの偶数数字の三つ揃いが導出される。
確変大当たり時は、確変大当たりを得た特別電動役物ユニットについて、大当たり遊技終了後に確率変動遊技に突入し、所定の確変維持回転数(図柄変動を伴う所定の実抽選回数)を上限に、大当たり抽選用乱数の当選値を例えば7,57,107,157,207,257の6種類とし、大当たり当選確率を50分の1に高める。同時に、図柄変動時間を総じて短縮し、保留玉の消化を促して時間効率を高める。通常大当たりでは、通常大当たりを得た特別電動役物ユニットについて、大当たり遊技終了後に大当たり当選確率を通常の300分の1に戻し、図柄変動時間を通常に戻す。尚、二つの特別電動役物ユニットU1,U2で大当たりが同時併存する場合は、保留玉の中に複数の大当たりが同時併存する場合と同様、何れか一の大当たりの導出及び大当たり遊技後に、同時併存の他の大当たりが導出されて大当たり遊技に移行する。従って、大入賞口B1,B2が二つ同時に開くことはない。
大当たり遊技では、該当する大入賞口B1又はB2が、例えば最大30秒か、例えば最大10球入賞を限度に開く。この間に大入賞口内に設ける特定領域に球通過があった場合、大入賞口を一旦閉じた後、所定のインターバルを経て再び大入賞口を開く。特定領域への球通過がなかったか、最終の例えば16ラウンドを経ると、いわゆる役物連続作動装置の作動が終了し、一の大当たり遊技が終わる。16ラウンドの満了により、2000個程の大量出玉が得られる。
第1特別電動役物ユニットU1側で確変大当たりがあった場合は、第2特別電動役物ユニットU2側の第2始動口C2に付帯する普通電動役物9の開状態を通常よりも相対的に多くするアシスト手段Aをも作動させる。すなわち、普通図柄の当選時に、花弁91,92を開放させる最大開放時間を通常の例えば0.5秒から例えば6秒に延長する。この間に第2始動口C2に1球でも入賞すると最大開放時間の満了前に花弁91,92は閉じるが、6秒もの開放延長機能の発動下では、右打ちに変更する限り、ゲートGへの球通過による普通図柄の当選を得て、その開かれた花弁91,92に球を流し、第2始動口C2に容易に入球できる。
このため、アシスト手段Aの作動下では、第2図柄表示領域D2での図柄変動及び大当たり抽選を頻繁に起動できる。アシスト手段Aの作動は、第1特別電動役物ユニットU1側で、図柄変動が確変維持回転数を越えた場合又は通常大当たりがあった場合に、アシスト停止手段Kにより停止される。ところで、普通図柄の当選確率は、例えば100分の99という殆どの場合に当たる仕様にしており、その当たり時は普通図柄表示領域Dに例えば数字7を導出し、外れ時は例えば数字0を導出するようにしている。」(段落【0023】?【0031】)
エ 「図7-1)?3)に示すように、大当たり前の初期状態以後、先ず、遊技領域20の中央からやや左寄りの上方位置から球を流す通常の発射球の打出しにより、第1始動口C1への入球を狙い、第1図柄表示領域D1を変動させて、第1大入賞口B1を開放させる大当たりを勝ち取る。奇数数字の三つ揃いによる確変大当たりを引き、その大当たり遊技が終了するまでは、基本的に打ち方を変える必要はない。
図8-1)に示すように、確変大当たりに基づく第1大入賞口B1での大当たり遊技が終了すると、第1図柄表示領域D1には確率変動遊技である旨の表示がされ、第1始動口C1を狙うと、再度の大当たりに到達し易くなる。しかし、ここはあえて第1始動口C1は狙わず、普通電動役物9の開放延長によるアシスト手段Aが作動される第2始動口C2を狙う。すなわち、遊技領域20の右寄り上方位置から球を流す右打ちに変更する。ゲートGへの球通過により普通図柄を変動させ、100分の99の確率で当たりを得た後、花弁91,92が最大6秒開放される。開放状態にある普通電動役物9が付帯した第2始動口C2には容易に入球が得られ、第2図柄表示領域D2を頻繁に変動させることができる。しかも、第2始動口C2の賞球数は15個と多いため、手持ちの球をあまり減らさずに大当たりの抽選を受け続けることができる。」(段落【0047】?【0048】)
オ 上記ウの記載事項及び【図2】の図示内容によると、第1図柄表示装置71は、遊技領域20の左右方向の中央左寄りに配置され、第2図柄表示装置71は、遊技領域20の左右方向の中央右寄りに配置されることが示されている。

上記ア?エの記載事項、上記オの認定事項、及び、図面の図示内容を総合勘案すると、刊行物1には次の発明が記載されているものと認められる。
「各始動口C1,C2への入球を契機にそれぞれ独立に抽選された大当たり抽選用乱数が取得され、各保留玉表示器(X1?4、Y1?4)には、それぞれ図柄変動待ちの保留玉数が最大4個まで表示され、
特別図柄を変動及び停止させる、第1図柄表示装置71及び第2図柄表示装置72を備え、
第1図柄表示装置71または第2図柄表示装置72が図柄変動を行い、その停止図柄が大当たり当選すると大入賞口B1,B2が開き特典大当たりを発生させる大当たり遊技を行い、
大当たり遊技終了後、所定の確変維持回転数を上限とする確率変動遊技に突入させる弾球遊技機において、
大当たり遊技では、大入賞口B1またはB2への入賞により、2000個程の大量出玉が得られ、
第1始動口C1または第2始動口C2への入球を契機にそれぞれ独立に抽選され、
第2始動口C2には、第2始動口C2への入球路を拡げる開状態と入球路を狭める閉状態とに切換可能な花弁91,92を持つチューリップ式普通電動役物9が付帯し、
第1特別電動役物ユニットU1側で確変大当たりがあった場合は、第2特別電動役物ユニットU2側の第2始動口C2に付帯する普通電動役物9の花弁91,92を開放させる最大開放時間を通常の例えば0.5秒から6秒に延長し、
第1図柄表示装置71は、遊技領域20の左右方向の中央左寄りに配置され、第2図柄表示装置71は、遊技領域20の左右方向の中央右寄りに配置され、
遊技盤右上の第2始動口C2の直上に位置するゲートGは、第2始動口C2を狙う、遊技領域20の右寄り上方位置から球を流す右打ちにより、球が通過し、
遊技盤中央やや下の第1始動口C1は、遊技領域20の中央からやや左寄りの上方位置から球を流す通常の発射球の打出しにより、入球を狙うことが可能であり、
二つの特別電動役物ユニットU1,U2で大当たりが同時併存する場合は何れか一の大当たりの導出及び大当たり遊技後に、同時併存の他の大当たりが導出されて大当たり遊技に移行する弾球遊技機。」

(2)原査定の拒絶理由において引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開2006-136544号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面と共に次の技術事項が記載されている。
ア 「【技術分野】
この発明は、入賞すると図柄表示装置が図柄の変動表示を開始することとなる始動口を複数備えたパチンコ機に関する。」(段落【0001】)
イ 「そこでこの発明は、上述の従来の諸問題を解決するためになされたものであり、複数の第1種始動口を備えたパチンコ機の遊技性を新しい特徴のあるものにすることを目的とする。また、第1種始動口の活用が一部の第1種始動口に偏ってしまうことのないようにすることを目的とする。」(段落【0006】)
ウ 「図5は、メインCPU112が参照するRAM116の記憶領域の一部を説明する説明図である。RAM116の記憶領域の一部には、記憶領域A、Bが設定されており、各記憶領域には、1?4の4つの格納領域がそれぞれ設定されている。記憶領域Aは第1始動口14aに対応しており、記憶領域Bは第2始動口18bに対応する。記憶領域Aには、遊技球が第1始動口14aに入賞し、第1始動口スイッチ28により検出されたときにメインCPU112が大当りカウンタC1、大当り図柄カウンタC2、リーチ選択カウンタC3、リーチ図柄選択カウンタC4およびハズレ図柄カウンタC5からそれぞれ取得したカウント値が格納される。記憶領域Bには、遊技球が第2始動口18bに入賞し、第2始動口スイッチ29により検出されたときにメインCPU112が大当りカウンタC6、大当り図柄カウンタC2、リーチ選択カウンタC7、リーチ図柄選択カウンタC4およびハズレ図柄カウンタC5からそれぞれ取得したカウント値が格納される。」(段落【0050】)
エ 「また、優先フラグがオンしていない、つまり通常遊技状態であると判定した場合は(S29:N)、第2保留数U2が1以上になっているか否かを判定し(S34)、1以上になっていると判定すると(S34:Y)、第2保留数U2から1を減算する(S35)。また、第2保留数U2が1以上になっていないと判定した場合は(S34:N)、第1保留数U1が1以上になっているか否かを判定し(S36)、1以上になっていると判定した場合は(S36:Y)、第1保留数U1から1を減算する(S37)。
つまり、パチンコ機1は、第1始動口14aの下方に普通電動役物18が配置された構成であり、第2始動口18bは、常時開口している第1始動口14aと異なり、普通図柄が当りにならなければ開口しないし、その開口時間も短いため、第2保留数U2は第1保留数U1よりも増加し難い。このため、増加の早い第1保留数を優先して減少させると、第1保留数が0になり難くなるため、第2保留数U2が減少され難くなる。
そこで、遊技状態が通常遊技状態に変化している期間は、第2始動口18bに対する第2保留数U2を第1始動口14aに対する第1保留数U1に優先して減少させることにより、第2保留数U2が減少され易くする。」(段落【0057】)
オ 「<第3実施形態>
次に、この発明の第3実施形態について説明する。この実施形態のパチンコ機は、遊技球が第1始動口14aおよび第2始動口18bのどちらに入賞した場合でも大当り確率は同じであるが、大当りが、第1始動口14aおよび第2始動口18bのどちらに入賞したときに発生したかにより、大当り遊技において遊技者が獲得可能な賞球数が異なるように設定されていることを特徴とする。なお、その設定以外は、第1実施形態と同じ構成および機能であるため、同じ部分の説明を簡略化または省略し、同じ構成については同じ符号を用いる。
この実施形態では、大当り遊技において遊技者が獲得可能な賞球数は、遊技球が第1始動口14aに入賞したときに大当りが発生したときが2000個であり、第2始動口18bに入賞したときに大当りが発生したときが3000個に設定されている。」(段落【0071】)

4 対比
本願発明と刊行物1に記載された発明とを対比する。
まず、刊行物1に記載された発明の「各始動口C1,C2への入球を契機に、それぞれ独立に抽選された大当たり抽選用乱数が取得され、各保留玉表示器(X1?4、Y1?4)には、それぞれ図柄変動待ちの保留玉数が最大4個まで表示され」ることと、本願発明の「第1,第2変動開始条件が成立することに基づいて取得される第1,第2検出情報を所定の上限個数を限度として順次記憶する第1,第2検出情報記憶領域(63a)(63b)」とを対比する。
刊行物1に記載された発明において、抽選により取得される「大当たり抽選用乱数」は、二つの特別電動役物ユニットU1,U2で大当たりが同時併存する場合において、特別図柄の変動及び停止による何れか一の大当たりの導出及び大当たり遊技後まで、他の大当たりの特別図柄の導出に用いられないものである。そうすると、各始動口C1,C2への入球を契機とする抽選が実行されてから、特別図柄が導出されるまでの間、「大当たり抽選用乱数」等の抽選結果は、何らかの記憶手段に記憶保持されていることは当業者にとって自明である。さらに、各保留玉表示器(X1?4、Y1?4)には、導出待ちの抽選結果が最大4つまで表示可能であることから、上記した抽選結果を記憶手段に記憶保持するに際して、記憶手段の各保留玉表示器(X1?4、Y1?4)に対応させて形成された記憶領域に記憶保持させるものであることも、当業者にとって自明である。
したがって、刊行物1に記載された発明の「各始動口C1,C2への入球を契機にそれぞれ独立に抽選された大当たり抽選用乱数が取得され、各保留玉表示器(X1?4、Y1?4)には、それぞれ図柄変動待ちの保留玉数が最大4個まで表示され」ることは、本願発明の「第1,第2変動開始条件が成立することに基づいて取得される第1,第2検出情報を所定の上限個数を限度として順次記憶する第1,第2検出情報記憶領域(63a)(63b)」を「備える」ことに相当する。
なお、本願発明の抽選の結果として得られる第1,第2検出情報を第1,第2検出情報記憶領域に順次記憶させることは、例えば、刊行物2の上記摘記事項ウに記載されているように本願出願前に周知の技術事項でもある。
そして、刊行物1に記載された発明の「特別図柄を変動及び停止させる、第1図柄表示装置71及び第2図柄表示装置72」を「備え」ることは、上記で検討したことを勘案すると、本願発明の「第1,第2検出情報記憶領域(63a)(63b)に記憶された第1,第2検出情報に基づいて第1,第2特別図柄を変動表示する第1,第2特別図柄表示手段(23a)(23b)」を「備える」ことに相当し、以下同様に、
「第1図柄表示装置71または第2図柄表示装置72が図柄変動を行い、その停止図柄が大当たり当選すると、大入賞口B1,B2が開き特典大当たりを発生させる大当たり遊技を行」うことは、「第1,第2特別図柄表示手段(23a)(23b)の変動後の停止図柄が抽選により予め定められた大当たり態様となることに基づいて第1,第2利益状態を発生させる第1,第2利益状態発生手段(65a)(65b)」を「備える」ことに、
「大当たり遊技終了後、所定の確変維持回転数を上限とする確率変動遊技に突入させる」ことは、「第1,第2利益状態の発生後の所定期間に特別遊技状態を発生させる特別遊技状態発生手段(67)」「を備え」ることに、
「第1始動口C1または第2始動口C2への入球を契機にそれぞれ独立に抽選され」ることは、「第1,第2特別図柄始動手段(14a)(14b)に遊技球が入賞することにより第1,第2変動開始条件が成立するように構成され」ることに、
「第2始動口C2には、第2始動口C2への入球路を拡げる開状態と入球路を狭める閉状態とに切換可能な花弁91,92を持つチューリップ式普通電動役物9が付帯」することは、「第2特別図柄始動手段(14b)は、普通始動手段(13)が遊技球を検出することに基づいて行われる普通抽選で当たりとなった場合に入賞可能な開状態となる開閉式入賞手段により構成され」ることに、
「第1特別電動役物ユニットU1側で確変大当たりがあった場合は、第2特別電動役物ユニットU2側の第2始動口C2に付帯する普通電動役物9の花弁91,92を開放させる最大開放時間を通常の例えば0.5秒から6秒に延長」されることは、「特別遊技状態中以外の通常遊技状態中よりも特別遊技状態中のほうが第2特別図柄始動手段(14b)の開放時間」「が大とな」ることに、
「第1図柄表示装置71は、遊技領域20の左右方向の中央左寄りに配置され、第2図柄表示装置71は、遊技領域20の左右方向の中央右寄りに配置され」ることは、「遊技領域(11)の左右方向略中央に可変表示手段(12)が配置され」ることに、
「遊技盤右上の第2始動口C2の直上に位置するゲートGは、第2始動口C2を狙う、遊技領域20の右寄り上方位置から球を流す右打ちにより、球が通過」することは、結果として、右寄り上方位置から流下する球が左寄り上方位置から流下する球よりゲートGを通過しやすいことを意味するから、「普通始動手段(13)は、前記可変表示手段(12)の左右方向一方側を流下する遊技球を検出する確率の方が左右方向他方側を流下する遊技球を検出する確率よりも高くなるように設けられ」ることに、
「遊技盤中央やや下の第1始動口C1は、遊技領域20の中央からやや左寄りの上方位置から球を流す通常の発射球の打出しにより、入球を狙うことが可能」であることは、結果として、中央からやや左寄りの上方位置から流下する球が右寄り上方位置から流下する球より第1始動口C1を通過しやすいことを意味するから、「第1特別図柄始動手段(14a)は、左右方向他方側を流下する遊技球を検出する確率の方が前記左右方向一方側を流下する遊技球を検出する確率よりも高くなるように設けられており、第1,第2特別図柄表示手段(23a)(23b)の何れか一方の図柄変動中には他方の図柄変動を開始しないように構成され」ることに、
「二つの特別電動役物ユニットU1,U2で大当たりが同時併存する場合は何れか一の大当たりの導出及び大当たり遊技後に、同時併存の他の大当たりが導出されて大当たり遊技に移行する」ことは、大当たりの導出は、図柄変動及び停止を伴うものであるから、「第1,第2特別図柄表示手段(23a)(23b)の何れか一方の図柄変動中には他方の図柄変動を開始しないように構成され」ることに、
それぞれ相当する。

したがって、両者の一致点および相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「第1,第2変動開始条件が成立することに基づいて取得される第1,第2検出情報を所定の上限個数を限度として順次記憶する第1,第2検出情報記憶領域と、前記第1,第2検出情報記憶領域に記憶された前記第1,第2検出情報に基づいて第1,第2特別図柄を変動表示する第1,第2特別図柄表示手段と、該第1,第2特別図柄表示手段の変動後の停止図柄が抽選により予め定められた大当たり態様となることに基づいて第1,第2利益状態を発生させる第1,第2利益状態発生手段と、前記第1,第2利益状態の発生後の所定期間に特別遊技状態を発生させる特別遊技状態発生手段とを備えた弾球遊技機において、第1,第2特別図柄始動手段に遊技球が入賞することにより前記第1,第2変動開始条件が成立するように構成され、前記第2特別図柄始動手段は、普通始動手段が遊技球を検出することに基づいて行われる普通抽選で当たりとなった場合に入賞可能な開状態となる開閉式入賞手段により構成され、前記特別遊技状態中以外の通常遊技状態中よりも前記特別遊技状態中のほうが前記第2特別図柄始動手段の開放時間が大となり、遊技領域の左右方向略中央に可変表示手段が配置され、前記普通始動手段は、前記可変表示手段の左右方向一方側を流下する遊技球を検出する確率の方が左右方向他方側を流下する遊技球を検出する確率よりも高くなるように設けられ、前記第1特別図柄始動手段は、前記左右方向他方側を流下する遊技球を検出する確率の方が前記左右方向一方側を流下する遊技球を検出する確率よりも高くなるように設けられており、前記第1,第2特別図柄表示手段の何れか一方の図柄変動中には他方の図柄変動を開始しないように構成されている弾球遊技機。」

[相違点1]
本願発明では、第2利益状態の方が第1利益状態よりも遊技者が得られる平均利益が大きくなるように設定されているのに対して、刊行物1に記載された発明では、大当たり遊技では、大入賞口B1又はB2への入賞により、2000個程の大量出玉が得られる点。

[相違点2]
本願発明では、第1,第2検出情報の記憶個数が共に1以上である場合には、第1特別図柄表示手段(23a)の図柄変動よりも第2特別図柄表示手段(23b)の図柄変動を優先して行うように構成されているのに対して、刊行物1に記載された発明では、当該発明特定事項を具備するか否か明らかでない点。

5 当審による判断
(1)上記相違点1について
刊行物2の前記摘記事項オには、弾球遊技機の技術分野において、大当り遊技における遊技者が獲得可能な賞球数が、遊技球が第2始動口18bに入賞したときが3000個に設定されているのに対して、遊技球が第1始動口14aに入賞したときが2000個に設定されていることが記載されている。
そして、刊行物1に記載された発明と刊行物2に記載された技術事項とは、第1,第2特別図柄始動手段を備えた弾球遊技機という共通の技術分野に属し、しかも、両者は、2つの始動手段により新たな遊技性をつくり出すという共通の課題を解決するものである。
してみると、刊行物1に記載された発明に、刊行物2に記載された技術事項を適用して、大入賞口B2の出玉個数を大入賞口B1の出玉個数より多くなるように設定して遊技性を付与することは当業者が容易になし得たものである。

(2)上記相違点2について
刊行物2の前記摘記事項エには、「第2始動口18bに対する第2保留数U2を第1始動口14aに対する第1保留数U1に優先して減少させることにより、第2保留数U2が減少され易くする」ことも記載されている。
さらに、各保留玉表示器に対応する図柄変動待ちの抽選結果を同時に消化させると、大当たりが同時に導出される場合が生じ、遊技に混乱を生じさせることとなる。
したがって、保留玉表示器に対応する抽選結果はいずれかを優先して処理せざるを得ないこととなる。
してみると、刊行物1に記載された発明に、刊行物2に記載された技術事項を適用して、各保留玉表示器(X1?4、Y1?4)に表示される保留球数が共に1以上である場合に、第1図柄表示装置71の図柄変動よりも第2図柄表示装置72の図柄変動を優先して行うことは当業者が必要に応じてなし得たものである。

(3)小括
本願発明の奏する効果についてみても、刊行物1に記載された発明及び刊行物2に記載された技術事項から当業者が予測できた効果の範囲内のものである。

6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び刊行物2に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-07-04 
結審通知日 2012-07-10 
審決日 2012-07-23 
出願番号 特願2006-191676(P2006-191676)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森田 真彦  
特許庁審判長 長崎 洋一
特許庁審判官 秋山 斉昭
木村 史郎
発明の名称 弾球遊技機  
代理人 谷藤 孝司  

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