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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 C09K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C09K
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 C09K
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C09K
管理番号 1262720
審判番号 不服2009-9570  
総通号数 154 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-05-07 
確定日 2012-09-05 
事件の表示 特願2002-507953「CMPのためのシラン含有研磨組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成14年1月10日国際公開、WO02/02707、平成16年1月29日国内公表、特表2004-502824〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、2001年6月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2000年7月5日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成18年9月22日付けの拒絶理由に対し、平成19年3月23日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成21年1月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月7日に審判が請求され、同年5月21日に手続補正書が提出され、平成23年3月30日付けで特許法第164条第3項に基づく報告書を引用した審尋がなされ、同年9月21日に回答書が提出されたものである。

第2 平成21年5月21日付けの手続補正の適否について
1 補正の内容及び適否について
平成21年5月21日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について、補正前の請求項1を削除し、補正前の請求項2?45の項番を請求項1?44とするものである。
そうであれば、本件補正は、平成18年法律第55号に係る改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる改正(以下、「平成18年改正」という。)前の特許法第17条の2第4項第1号に掲げる「請求項の削除」を目的とするものである。
してみると、本件補正は平成18年改正前特許法第17条の2第3項に適合し、かつ同条第4項第1号に掲げる事項を目的としているといえるから、本件補正は適法になされたものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
この出願の請求項1?44に係る発明は、平成21年5月21日付けの手続補正により補正された明細書(以下、「本願明細書」という。)の特許請求の範囲の記載からみて、請求項1?44に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものであると認める。

「【請求項1】 溶解状態の少なくとも1種のシラン及び少なくとも1種の研磨材を含有する研磨スラリーであって、前記シランが、式Y-Si-(X_(1)X_(2)R)の化合物、そのダイマー、トリマー及びオリゴマーであり(X_(1)、X_(2)及びYは、各々独立にヒドロキシ基、加水分解性置換基及び非加水分解性置換基から選択され、Rは非加水分解性置換基)、該研磨材はシリカ、アルミナ、ゲルマニア、ジルコニア、セリア、チタニア及びそれらの混合物からなる群より選択される、研磨スラリー。」

2 原査定の理由
原査定は「この出願については、平成18年9月22日付け拒絶理由通知書に記載した理由1、2、3、4によって、拒絶すべきものです」という理由によるものであって、平成18年9月22日付け拒絶理由通知書からみて次の理由を含むものである。

「1.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・・
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・・
引 用 文 献 等 一 覧
・・
2.特開平11-116948号公報
・・
4.特開平9-285956号公報」

3 刊行物に記載された事項
(1)原査定の拒絶の理由において「引用文献2」として引用された本願出願日前に頒布された刊行物である「特開平11-116948号公報」(以下、「刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている。

(1-ア)「【0015】
【発明が解決しようとする課題】本発明はタングステンを高速で洗浄し、且最小の蝕刻及び/又は腐蝕する化学機械的ポリシング組成物に関する。更に、本発明の化学機械的ポリシング組成物は、良好な均一面を有するタングステン層を、コントロールされた速度で洗浄することができるものである。」
(1-イ)「【0024】本発明の一つの態様は、タングステンを蝕刻できる化合物及び少なくとも一つのタングステンの蝕刻抑制剤を含む化学機械的組成物である。本発明の化学機械的組成物は、タングステンを含む金属層を洗浄する化学機械的ポリシングスラリーとした場合に有用である。ここで開示した組合せは、化学機械的ポリシングスラリーにした場合及び単独の場合の研磨パッドを用いてタングステン、チタン、窒化チタン、銅、アルミニウム、タンタル、窒化タンタル、これらの混合物及びこれらの組合せを含む金属並びに金属ベースの成分を洗浄するのに有用である。」
(1-ウ)「【0037】・・有用なアミノアルキル蝕刻抑制剤は、アミノプロピルシラノール、アミノプロピルシロキサン・・が含まれ・・
【0038】好ましいアルキルアンモニウムイオン官能基を含むタングステンの蝕刻抑制剤は、OSI社製のSILQUEST A-1106 シランである。SILQUEST A-1106は約60重量%の水、約30重量%のアミノプロピルシロキサン及び約10重量%のアミノプロピルシラノールの混合物である。・・」
(1-エ)「【0046】本発明の化学機械的組成物は、少なくとも一つの研磨剤と組合せて化学機械的ポリシングスラリーを製造することができる。研磨剤は一般的には金属酸化物研磨剤である。金属酸化物研磨剤は、アルミナ、チタニア、ジルコニア、ゲルマニア、シリカ、セリア及びこれらの混合物を含む群から選ばれる。」
(1-オ)「【0060】本発明の化学機械的ポリシング組成物は、チタン(Ti)に対して良好な洗浄速度を示すと共に、タングステン(w)に対して高速な洗浄速度を示すことがここに新たに本発明者によって見い出された。更に、この化学機械的ポリシング組成物は、誘電絶縁層に対しては所望とされる遅い洗浄速度を示す。」
(1-カ)「【0061】・・本発明の組成物は、一般に任意の順序で各成分を混ぜ合せて製造することができる。
【0062】例えば一つの方法として、タングステンを蝕刻できる化合物及びタングステンの蝕刻抑制剤を脱イオン水又は蒸留水の如き水性媒中に混ぜ合せ、各成分が媒体に完全に溶解まで低剪断の条件のもとで所定の濃度に混合する。ヒュームドシリカの如き金属酸化物研磨剤の濃縮分散液を媒体に任意に加え、そして最終の化学機械的ポリシングスラリーにおける所望のレベルにまで研磨剤に関して希釈する。更に、任意の触媒及び1つ以上の安定剤の如き添加剤を、水性媒体中に本発明の金属触媒化合物を加えことができる方法に従って、スラリーに加えることができる。この得られたスラリーは、通常使用前にロ過して汚染物、不純物等を除去する。」

(2)原査定の拒絶の理由において「引用文献4」として引用された本願出願日前に頒布された刊行物である「特開平9-285956号公報」(以下、「刊行物2」という。)には、以下の事項が記載されている。

(2-ア)「【0014】研磨組成物は、また、ワークピース、例えば半導体表面の研磨や平面化にも用いられ得る。この研磨組成物は、(1)研磨メディアを有し、(2)フィルム形成バインダであって、このフィルム形成バインダは、研磨メディア粒子を懸濁させるとともに、ワークピースの表面にテンポラリーフィルムを形成し、このテンポラリーフィルムは、その後に行われる研磨洗浄において溶解可能であり、これによって、研磨メディア粒子が自由状態となって、研磨対象の基体の研磨が可能となり、(3)上記研磨メディア粒子を上記フィルム形成バインダに懸濁させることで上記テンポラリー・フィルムの形成を容易化するための溶媒を有し、(4)ワークピース表面上の組成物の湿潤性を向上させるためのウェッティングエージェント即ち湿潤剤を有すること、を特徴とする。
【0015】好ましくは、研磨メディア粒子は、シリカ、アルミニウムトリオキシド等の酸化アルミニウム、酸化カルシウム、窒化珪素、炭化珪素、酸化セシウム、合成又は天然ダイヤモンド、酸化タングステン、チタニウムニトライド即ち窒化チタン、二酸化珪素、二酸化珪素よりも硬いその他の材質、れらの任意混合物等が用いられる。フィルム形成バインダは、好ましくはポリオルガノシロキサンであり、湿潤剤は、好ましくは、オルガノファンクショナルなシラン、即ち有機官能基を有するシランである。上記溶剤としては、研磨メディア粒子をフィルム形成バインダに懸濁し得るものであればよく、好ましくは、水、酸類、アルコール類及びこれらの任意混合物等が用いられる。」
(2-イ)「【0028】溶液中のポリマーは、研磨される基体において、ある材質を他の材質とを区別する研磨選択性の制御にも用いられ得る。主に炭素からなる主構造を有するポリマーは、金属に対する二酸化珪素の研磨レートを低く抑え得る。CeOポリマーの主構造もまた、研磨される金属の研磨作用の促進や抑制に用いることができる。ポリマーの主構造へと任意に付加される基(以下、R基と記載する)もまた、研磨される金属の研磨作用を促進または抑制し得る。このようなR基としては、CH_(X)基の他に、NH_(2),F,Br,Cl,I,OH,NO,CeOその他の基が挙げられる。」

4 当審の判断
(1)刊行物1に記載された発明
刊行物1には、「タングステンを高速で洗浄し、且最小の蝕刻及び/又は腐蝕する化学機械的ポリシング組成物」であって、「良好な均一面を有するタングステン層を、コントロールされた速度で洗浄することができるもの」(摘示(1-ア))について、「タングステンを蝕刻できる化合物及び少なくとも一つのタングステンの蝕刻抑制剤を含」み、「タングステンを含む金属層を洗浄する化学機械的ポリシングスラリーとした場合に有用である」こと(摘示(1-イ))、「少なくとも一つの研磨剤と組合せて化学機械的ポリシングスラリーを製造することができる」こと(摘示(1-エ))、「有用なアミノアルキル蝕刻抑制剤は、アミノプロピルシラノール、アミノプロピルシロキサン・・が含まれ・・好ましいアルキルアンモニウムイオン官能基を含むタングステンの蝕刻抑制剤は、OSI社製のSILQUEST A-1106 シランで・・SILQUEST A-1106は約60重量%の水、約30重量%のアミノプロピルシロキサン及び約10重量%のアミノプロピルシラノールの混合物である」こと(摘示(1-ウ))、「研磨剤は一般的には金属酸化物研磨剤で・・金属酸化物研磨剤は、アルミナ、チタニア、ジルコニア、ゲルマニア、シリカ、セリア及びこれらの混合物を含む群から選ばれる」こと(摘示(1-エ))が記載されている。
したがって、刊行物1には、
「タングステンを蝕刻できる化合物及び少なくとも一つのタングステンの蝕刻抑制剤を含む化学機械的組成物を少なくとも一つの研磨剤と組合せて製造した化学機械的ポリシングスラリーであって、タングステンの蝕刻抑制剤は、アミノプロピルシロキサン、アルミノプロピルシラノール等の混合物であるOSI社製のSILQUEST A-1106 シランであり、研磨剤は、アルミナ、チタニア、ジルコニア、ゲルマニア、シリカ、セリア及びこれらの混合物を含む群から選ばれる金属酸化物研磨剤である、化学機械的ポリシングスラリー」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

(2)対比
本願発明と引用発明を対比する。
引用発明における「OSI社製のSILQUEST A-1106 シラン」は、本願発明における「少なくとも1種のシラン」に相当し、引用発明における「研磨剤」であって「アルミナ、チタニア、ジルコニア、ゲルマニア、シリカ、セリア及びこれらの混合物を含む群から選ばれる」ものは、本願発明における「少なくとも1種の研磨材」であって「シリカ、アルミナ、ゲルマニア、ジルコニア、セリア、チタニア及びそれらの混合物からなる群より選択される」ものに相当し、引用発明における「化学機械的ポリシングスラリー」は、「ポリシング」が「polishing」の訳語であって、「研磨」を意味する技術用語であることは当業者に明らかであるから、本願発明の「研磨スラリー」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明は、
「少なくとも1種のシラン及び少なくとも1種の研磨材を含有する研磨スラリーであって、該研磨材はシリカ、アルミナ、ゲルマニア、ジルコニア、セリア、チタニア及びそれらの混合物からなる群より選択される、研磨スラリー」
という点で一致し、以下の点で一応相違する。

相違点
シランが、本願発明においては、「溶解状態」であり、「式Y-Si-(X_(1)X_(2)R)の化合物、そのダイマー、トリマー及びオリゴマー(X_(1)、X_(2)及びYは、各々独立にヒドロキシ基、加水分解性置換基及び非加水分解性置換基から選択され、Rは非加水分解性置換基)」であるのに対し、引用発明においては、「OSI社製のSILQUEST A-1106 シラン」である点

(3)相違点についての検討
新規性について
刊行物1には、「OSI社製のSILQUEST A-1106 シラン」について、「SILQUEST A-1106は約60重量%の水、約30重量%のアミノプロピルシロキサン及び約10重量%のアミノプロピルシラノールの混合物」(摘示(1-ウ))であることが記載されている。
また、商品名「A-1106」のシランカップリング剤が、γ-アミノプロピルトリヒドロキシシランの脱水縮合物であることは周知である(例えば、特開昭63-181234号公報には、「γ-アミノプロピルトリヒドロキシシランの脱水縮合生成物(日本ユニカ-製シランカップリング剤、商品名A-1106)」(第3頁右上欄第15?18行)と記載されている。)。
そこで検討すると、「アミノプロピルトリヒドロキシシラン」は、一般式:SiH_(4)で示されるシラン(化学大辞典編集委員会編,「化学大事典4 縮刷版」,縮刷版第32刷,共立出版株式会社,1989年8月15日,863?864頁,「シラン」を参照)において、Siに直接結合するHの一つをアミノプロピル基、残りの三つをヒドロキシ基で置換した構造を有するものであるし、一般式:H_(n)Si(OH)_(4-n)で表されるシラノール(化学大辞典編集委員会編,「化学大事典4 縮刷版」,縮刷版第32刷,共立出版株式会社,1989年8月15日,862頁,「シラノール」を参照)において、Siに直接結合するHを一つ(n=1)とし、さらにそのHをアミノプロピル基で置換した構造を有する、アミノプロピルシラノールであるともいえる。
また、シラノールのヒドロキシ基が脱水縮合して、一般式:(-H_(2)SiO-)_(n)で表されるシロキサンが生成されることは周知であるから(化学大辞典編集委員会編,「化学大事典4 縮刷版」,縮刷版第32刷,共立出版株式会社,1989年8月15日,894頁,「シロキサン」を参照)、「γ-アミノプロピルトリヒドロキシシラン」のヒドロキシ基が脱水縮合して、アミノプロピルシロキサンが生成されることは当業者にとって明らかである。
そうであれば、刊行物1に記載の「OSI社製のSILQUEST A-1106 シラン」における「アミノプロピルシラノール」及び「アミノプロピルシロキサン」は、「γ-アミノプロピルトリヒドロキシシラン」及びその脱水縮合物であるといえる。
そして、γ-アミノプロピルトリヒドロキシシランは構造式で表すと、Si(OH)_(3)R(Rはアミノプロピル基)であり、本願発明の「式Y-Si-(X_(1)X_(2)R)の化合物」において、X_(1)、X_(2)及びYがヒドロキシ基、Rが非加水分解性置換基であるアミノプロピル基であるものに相当する。

なお、特開昭63-181234号公報に記載された「日本ユニカ-製シランカップリング剤、商品名A-1106」が、刊行物1に記載された「OSI社製のSILQUEST A-1106 シラン」と同一の商品であることは、ユニオンカーバイド社のオルガノシリコン製品等事業がOSI社に引継がれていること(例えば、米国特許第5439609号明細書には、「OSi Specialties, Inc.(Danbury,Conn., formerly Union Carbide Organo Silicon Products, Systems and Services).」(第2欄第44?46行)(当審の仮訳:OSIスペシャリティーズ社(ダンブリー,コネティカット州、元ユニオン・カーバイド・オルガノシリコン・プロダクト・システム・サービス))と記載されている。)、また、日本ユニカ-株式会社が、東燃化学株式会社と米国ユニオンカーバイド社の合弁による化学メーカーであることが知られていることからして、当業者に明らかであるといえる。

次いで、「OSI社製のSILQUEST A-1106 シラン」の「アミノプロピルシラノール」及び「アミノプロピルシロキサン」が「溶解状態」であるか否かについて検討する。
刊行物1には、化学機械的ポリシングスラリーを製造する方法について、「タングステンを蝕刻できる化合物及びタングステンの蝕刻抑制剤を脱イオン水又は蒸留水の如き水性媒中に混ぜ合せ、各成分が媒体に完全に溶解まで低剪断の条件のもとで所定の濃度に混合する。ヒュームドシリカの如き金属酸化物研磨剤の濃縮分散液を媒体に任意に加え、そして最終の化学機械的ポリシングスラリーにおける所望のレベルにまで研磨剤に関して希釈する。更に、任意の触媒及び1つ以上の安定剤の如き添加剤を、水性媒体中に本発明の金属触媒化合物を加えことができる方法に従って、スラリーに加えることができる。この得られたスラリーは、通常使用前にロ過して汚染物、不純物等を除去する」こと(摘示(1-カ))が記載されている。
そして、「タングステンの蝕刻抑制剤・・成分が、媒体に溶解されるまで低剪断の条件のもとで混合する」と記載されている以上、タングステンの蝕刻抑制剤成分である「OSI社製のSILQUEST A-1106 シラン」の「アルミノプロピルシラノール」及び「アルミノプロピルシロキサン」が、化学機械的ポリシングスラリーに「溶解状態」で含まれることは当業者にとって明らかである。
してみると、上記(2)で示した相違点は実質的な相違点ではない。

進歩性について
上記アで示したとおり、引用発明の「OSI社製のSILQUEST A-1106 シラン」における「アミノプロピルシラノール」及び「アミノプロピルシロキサン」は、「γ-アミノプロピルトリヒドロキシシラン」及びその脱水縮合物であるといえるが、仮に、この「アミノプロピルシラノール」及び「アミノプロピルシロキサン」が「γ-アミノプロピルトリヒドロキシシラン」及びその脱水縮合物であるとまでいえない場合についても一応検討する。
まず、「アミノプロピルシラノール」は、上記アで示した、一般式:H_(n)Si(OH)_(4-n)で表されるシラノールにおいて、Siに直接結合するHの一つをアミノプロピル基で置換した、一般式:H_(n)Si(OH)_(3-n)R(Rはアミノプロピル基、nは1又は2)で表される構造を有するものといえる。
また、刊行物1には、解決しようとする課題として、「化学機械的ポリシング組成物は、良好な均一面を有するタングステン層を、コントロールされた速度で洗浄することができる」ことが記載されており、「化学機械的ポリシング組成物」による「洗浄」が、化学機械的ポリシング、すなわち化学機械的研磨を意味することは明らかであるから、引用発明の化学機械的ポリシングスラリーは、タングステン層の化学機械的研磨の速度制御を課題とするものであると認められる。
さらに、刊行物2には、「半導体表面の研磨や平面化にも用いられ得る・・研磨組成物(摘示(2-ア))において、「溶液中のポリマーは・・ポリマーの主構造への任意に付加される基(以下、R基と記載する)もまた、研磨される金属の研磨作用を促進または抑制し得る。このようなR基としては、CH_(x)基の他に、NH_(2),F,Br,Cl,I,OH,NO,CeOその他の基が挙げられる」(摘示(2-イ))と記載されている。
してみると、引用発明の「OSI社製のSILQUEST A-1106 シラン」における、「アミノプロパノール」(一般式:H_(n)Si(OH)_(3-n)R(Rはアミノプロピル基、nは1又は2))において、タングステン層の化学機械的研磨の速度制御を目的として、Siに直接結合するHに代えて、ヒドロキシ基、F,Br,Cl,I等の加水分解性置換基、又はCH_(x)基等の非加水分解性置換基を適用し、本願発明の「式Y-Si-(X_(1)X_(2)R)の化合物」において、Yがヒドロキシ基、X_(1)、X_(2)がヒドロキシ基、F,Br,Cl,I等の加水分解性置換基、又はCH_(x)基等の非加水分解性置換基、Rが非加水分解性置換基であるアミノプロピル基であるものとすることは、当業者が容易に想到できたことである。
なお、引用発明の「OSI社製のSILQUEST A-1106 シラン」における「アルミノプロピルシラノール」及び「アルミノプロピルシロキサン」が、化学機械的ポリシングスラリーに「溶解状態」で含まれることは、上記アで示したとおりである。

(4)効果について
本願明細書の段落【0029】には、本願発明の効果として、「研磨組成物又はスラリー内のシランは、研磨の欠陥を削減でき・・基材構造物の研磨速度を改善でき、また研磨選択性を改善できる」こと、「溶解状態のシランは、研磨組成物が基材構造物を研磨する速度を低下させることができ・・また・・研磨材含有研磨パッドの耐用寿命を改善できる」ことが記載されている。
これに対し、刊行物1には、「本発明の化学機械的ポリシング組成物は、良好な均一面を有するタングステン層を、コントロールされた速度で洗浄することができるものである」こと(摘示(1-ア))、「本発明の化学機械的ポリシング組成物は、チタン(Ti)に対して良好な洗浄速度を示すと共に、タングステン(w)に対して高速な洗浄速度を示すこと・・誘電絶縁層に対しては所望とされる遅い洗浄速度を示す」こと(摘示(1-オ))が記載されている。
そして、「良好な均一面」に研磨できることから、研磨の欠陥が削減されていることは当業者に明らかであり、また、「チタン(Ti)に対して良好な・・速度」で、「タングステン(w)に対して高速な・・速度」で、「誘電絶縁層に対しては所望とされる遅い・・速度」で研磨ができることから、研磨対象に応じた所望の速度で研磨でき、研磨速度選択性に優れることも当業者にとって明らかであると認められる。
また、刊行物1には、「研磨パッドを用い」ること(摘示(1-イ))について記載されているものの、研磨材含有研磨パッドの耐用寿命については何ら記載されていない。
しかしながら、上記のとおり研磨の欠陥が削減され、研磨速度及び研磨速度選択性に優れた化学機械的ポリシング組成物を用いることにより、研磨パッドへの負荷が低減し、耐用寿命が改善されることは、当業者にとって明らかであると認められる。
してみると、上記本願発明の効果は、引用発明と刊行物2に記載された研磨される金属の研磨作用を促進または抑制するための技術を組み合わせて得られる化学的機械的ポリシングスラリーについて、当業者が予測できる範囲内のものである。

(5)まとめ
上記(3)アで示したとおり、上記(2)で示した相違点は実質的な相違点ではないから、本願発明は、刊行物1に記載された発明(引用発明)である。
仮に、上記(2)で示した相違点が実質的な相違点でないとまでいえないとしても、上記(3)イで示したとおり、上記(2)で示した相違点は刊行物1に記載された発明(引用発明)及び刊行物2に記載された発明から当業者が容易に想到できたものであり、上記(4)で示したとおり、その効果も当業者が予測できる範囲内のものである。
したがって、本願発明は、特許法第29条第1項第3号の規定、又は、同法同条第2項の規定に該当し特許を受けることができない。

5 審判請求人の主張について
審判請求人は、平成21年5月7日付けの審判請求書の請求の理由において、「補正により、本発明のシランは、「式Y-Si-(X_(1)X_(2)R)の化合物、そのダイマー、トリマー及びオリゴマーであり(X_(1)、X_(2)及びYは、各々独立にヒドロキシ基、加水分解性置換基及び非加水分解性置換基から選択され、Rは非加水分解性置換基)」に特定されました。引用文献2では、アミノプロピルシラノール、アミノプロピルシロキサンを含むとありますが、本発明のシランを特定しておりません。・・この点で、本願発明は、引用発明とは異なる構成を有しており、新規性を具備します。・・
さらに、平成19年3月23日付けで提出しました意見書(以下、「前回意見書」と称します)での本願出願人の主張に対して、審査官殿は『(1)引用文献2に記載された発明と本願発明とは、目的又は課題が相違するとしても、構成(発明特定事項)が同じである以上、両者は区別することができ・・ない。』と認定されました。
しかしながら、(1)については上述のとおり、引用文献2に記載された発明と本願発明とは、構成(発明特定事項)が異なり、両者は区別可能であります。・・
したがって、審査官殿の理由1、2に基づく認定は本願発明には該当せず、前回意見書で申し述べたとおり、本願発明は新規性進歩性を具備するものと思量いたします。」と主張する。
しかしながら、刊行物1には、シランとして「OSI社製のSILQUEST A-1106 シラン」における「アルミノプロピルシラノール」及び「アルミノプロピルシロキサン」が記載されており、上記3で示したとおり、本願発明のシランと対比しても実質的な相違点は認められず、両者を区別することができない。
してみると、上記審判請求人の主張は採用できない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許を受けることができないものであるから、その余の点について検討するまでもなく、この出願は、拒絶をすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-04-06 
結審通知日 2012-04-10 
審決日 2012-04-23 
出願番号 特願2002-507953(P2002-507953)
審決分類 P 1 8・ 536- Z (C09K)
P 1 8・ 121- Z (C09K)
P 1 8・ 537- Z (C09K)
P 1 8・ 113- Z (C09K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中野 孝一  
特許庁審判長 新居田 知生
特許庁審判官 村守 宏文
木村 敏康
発明の名称 CMPのためのシラン含有研磨組成物  
代理人 石田 敬  
代理人 蛯谷 厚志  
代理人 堂垣 泰雄  
代理人 古賀 哲次  
代理人 青木 篤  
代理人 出野 知  
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