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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H03D |
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管理番号 | 1262735 |
審判番号 | 不服2010-3796 |
総通号数 | 154 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-10-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-02-22 |
確定日 | 2012-09-05 |
事件の表示 | 特願2003-544896「マルチアナログおよびディジタルダウンコンバージョン」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 5月22日国際公開、WO03/43180、平成17年 4月14日国内公表、特表2005-510106〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成14年11月8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2001年11月9日、米国、2002年3月29日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成20年6月6日付けで拒絶理由が通知され、同年12月8日付けで手続補正書が提出され、平成21年1月29日付けで拒絶理由(最後)が通知され、同年10月9日付けで拒絶査定され、これに対して平成22年2月22日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正書が提出されたものである。 2.本願発明 本願の請求項1に係る発明は、平成22年2月22日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである(以下「本願発明」という)。 「【請求項1】 受信信号をダウンコンバートする方法であって、 第1の周波数範囲および第1の周波数解像度を有する第1の生成ソースから第1の周波数を有するアナログキャリヤ信号を、パルス密度変調器と低域フィルタとを用いて発生させることと、 第2の周波数範囲および第2の周波数解像度を有する第2の生成ソースから第2の周波数を有するディジタルキャリヤ信号を発生させることであって、前記第1の周波数範囲が前記第2の周波数範囲より大きく、前記第1の周波数解像度が前記第2の周波数解像度未満であることと、 前記アナログキャリヤ信号と前記ディジタルキャリヤ信号で前記受信信号を乗算することと、 を備える方法。」 3.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-335959号公報(以下、「引用例」という)には、下記の事項が記載されている。 (ア)「【0044】 【実施例】 (実施例1)図1は、本発明の第1の実施例の復調装置510である。図1で、図35と同じ構成要素には同じ参照番号を付している。 【0045】選局回路110は、周波数変換器111、VCO112、可変分周器113、基準発振器114、位相比較器115、ループフィルタ116、およびマイクロプロセッサ117から構成される。選局回路110では、マイクロプロセッサ117に入力された選局情報により可変分周器113の分周比が設定され、この設定された分周比でVCO112の周波数が分周される。そして、可変分周器113の出力信号と基準発振器114の出力信号との間の位相のずれ(位相誤差)が位相比較器115で検出される。検出された位相誤差は、ループフィルタ116で平滑化された後にVCO112の制御信号として帰還される。このようにして、VCO112は、基準発振器114の整数倍(可変分周器113の分周比に対応する)の周波数で安定に発振する。 【0046】選局回路110に入力されたQPSK変調信号は、周波数変換器111によってIF信号に周波数変換され、BPF118により不要なスプリアスが除去されてから、直交検波器1に入力される。直交検波器1に入力されたIF信号は、固定発振器2からの出力信号に基づいて、お互いに直交するI,Qベースバンド信号に変換される。アナログ信号として生成されたI,Qベースバンド信号は、A/D変換器3及び4により、ディジタル値のI,Qベースバンド信号に変換される。ディジタル化されたI,Qベースバンド信号は、周波数変換機能を有する複素乗算器5に入力される。複素乗算器5には、局部発振機能を有するDVCO6が接続されており、ディジタルI,Qベースバンド信号はDVCO6の動作周波数だけ周波数変換を受ける。その後に、ディジタルI,Qベースバンド信号はDTF7及び8により波形整形されて、搬送波再生回路9に入力される。」 (イ)「【0050】AFC回路20は、周波数誤差検出器21、AFCループフィルタ22、およびラッチ回路23から構成される。周波数誤差検出器21は、位相検波器12で得られた位相差信号から、IF信号の中心周波数と固定発振器2の発振周波数との周波数誤差を検出する。この周波数誤差はAFCループフィルタ22で平滑化され、ラッチ回路23を介して制御信号としてDVCO6に入力される。これによってDVCO6の動作周波数が制御されて、周波数誤差が補償される。検出される周波数誤差が基準値以下になれば、周波数誤差検出器21からラッチ回路23に対してAFCホールド信号が供給される。これによって、DVCO6の発振周波数を制御するデータがラッチ回路23で保持され、DVCO6は一定の発振周波数で動作する。一方、検出される周波数誤差が基準値以下になれば、周波数誤差検出器21からPLLループフィルタ13に対してAFC/PLLループ切替信号が供給されて、PLLループフィルタ13が動作する。これによって、搬送波再生回路9は、AFC回路20が取り除けなかった周波数誤差を引き込んで、それを補償するように動作する。それと同時に位相同期が確立され、再生I,Q出力信号が出力される。AFCループが動作しているがPLLループが動作していないときには、DVCO14の動作周波数は一定周波数、通常はゼロ周波数に保持されている。」 (ウ)上記(ア)には、ディジタルI,Qベースバンド信号が、複素乗算器5によりDVCO6の動作周波数だけ周波数変換を受けることが記載されている。 よって、上記(ア)乃至(ウ)及び関連図面から、引用例には、 「QPSK変調信号をダウンコンバートする方法であって、 VCOの出力信号を発生させることと、 DVCOの出力信号を発生させることと、 周波数変換器に前記VCOの出力信号と前記QPSK変調信号を入力して周波数変換を行うことと、 複素乗算器に前記DVCOの出力信号とディジタルI、Qベースバンド信号を入力して周波数変換を行うことと、 を備える方法。」 の発明(以下、「引用発明」という)が記載されている。 4.対比 (1)本願発明と引用発明との対応関係について あ.引用発明の「VCO」、「DVCO」は、本願発明の「第1の生成ソース」、「第2の生成ソース」に相当している。 い.引用例の段落【0001】には、受信機で使用する復調装置が、ディジタル変調信号の周波数ドリフトを補償するものであることが記載され、段落【0002】には、ディジタル放送ではディジタル信号の変調が行われることが記載されているので、ディジタル変調信号の1つであるの引用発明の「QPSK変調信号」は、受信機が受信した「受信信号」と呼び得るものである。 う.本願発明の「アナログキャリヤ信号」は、第1の生成ソースから発生させられ、かつ、受信信号と乗算させられるものである。一方、引用発明の「VCOの出力信号」は、VCOから発生させられ、受信信号であるQPSK変調信号を周波数変換するものであるが、一般に周波数変換器は2つの信号の乗算を行うことにより周波数変換を実現していることを考慮すれば、引用発明のVCOの出力信号はQPSK変調信号と乗算させらるものである。 よって、引用発明の「VCOの出力信号」は、本願発明の「アナログキャリヤ信号」に相当している。 え.本願発明の「ディジタルキャリヤ信号」は、第2の生成ソースから発生させられ、かつ、受信信号と乗算させられるものである。一方、引用発明の「DVCOの出力信号」は、DVCOから発生させられ、受信信号であるディジタルI、Qベースバンド信号と複素乗算させられるものである。 よって、引用発明の「DVCOの出力信号」は、本願発明の「ディジタルキャリヤ信号」に相当している。 お.引用発明の「VCO」及び「DVCO」は、それぞれ所定の周波数範囲および所定の周波数解像度を有し、所定の周波数を出力するものであり、また、引用発明の「VCOの出力信号」はRF帯の信号の周波数変換を行うものであるのに対し、引用発明の「DVCOの出力信号」はベースバンド帯の信号の周波数変換を行うものであるから、VCOの周波数範囲はDVCOの周波数範囲より大きく、VCOの周波数解像度はDVCOの周波数解像度未満であることは自明である。 (2)本願発明と引用発明の一致点と相違点について 上記の対応関係から、本願発明と引用発明は、下記の点で一致し、また相違している。 [一致点] 「受信信号をダウンコンバートする方法であって、 第1の周波数範囲および第1の周波数解像度を有する第1の生成ソースから第1の周波数を有するアナログキャリヤ信号を発生させることと、 第2の周波数範囲および第2の周波数解像度を有する第2の生成ソースから第2の周波数を有するディジタルキャリヤ信号を発生させることであって、前記第1の周波数範囲が前記第2の周波数範囲より大きく、前記第1の周波数解像度が前記第2の周波数解像度未満であることと、 前記アナログキャリヤ信号と前記ディジタルキャリヤ信号で前記受信信号を乗算することと、 を備える方法。」 [相違点] 本願発明は、「パルス密度変調器と低域フィルタ」を用いて、第1の生成ソースからアナログキャリヤ信号を発生させているのに対し、引用発明は「パルス密度変調器と低域フィルタ」を用いてVCOから出力信号を発生させてはいない点。 5.当審の判断 制御電圧によって出力周波数を制御できるVCOにおいて、VCOへの制御電圧を生成するために、「パルス密度変調器」と「低域フィルタ」を用いることは、特開平11-261522号公報(段落【0038】及び【0039】には、周波数誤差データをPDMへ入力してPDM波形データを生成し、生成したPDM波形データをLPFへ入力して直流分を抽出し、抽出された直流分をVCXOの制御電圧として供給することで、VCXOの発信周波数が変化させられることが記載されている)、特表平6-511124号公報(第8頁右上欄28行?左下欄22行には、パルス密度変調器とループフィルタを介してクロックパルス発生機構へ制御電圧を供給するディジタル位相同期ループが記載されている)に記載されているように周知技術である。 してみると、引用発明に上記周知技術を適用し、「パルス密度変調器」と「低域フィルタ」を用いてVCOから周波数が制御された出力信号を発生させることは、当業者が容易に想到しえたものである。 また、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 6.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-03-28 |
結審通知日 | 2012-04-03 |
審決日 | 2012-04-16 |
出願番号 | 特願2003-544896(P2003-544896) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H03D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 上田 智志、甲斐 哲雄 |
特許庁審判長 |
小曳 満昭 |
特許庁審判官 |
本郷 彰 飯田 清司 |
発明の名称 | マルチアナログおよびディジタルダウンコンバージョン |
代理人 | 白根 俊郎 |
代理人 | 山下 元 |
代理人 | 勝村 紘 |
代理人 | 河野 直樹 |
代理人 | 蔵田 昌俊 |
代理人 | 村松 貞男 |
代理人 | 竹内 将訓 |
代理人 | 峰 隆司 |
代理人 | 砂川 克 |
代理人 | 市原 卓三 |
代理人 | 福原 淑弘 |
代理人 | 佐藤 立志 |
代理人 | 岡田 貴志 |
代理人 | 中村 誠 |
代理人 | 幸長 保次郎 |
代理人 | 野河 信久 |
代理人 | 堀内 美保子 |
代理人 | 河野 哲 |