• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1262828
審判番号 不服2011-5270  
総通号数 154 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-03-08 
確定日 2012-09-05 
事件の表示 特願2004-291198「ホストベースド印刷システム向けにデータを前処理する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 4月28日出願公開、特開2005-115949〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成16年10月4日(パリ条約による優先権主張 2003年(平成15年)10月6日 アメリカ合衆国)の出願であって、平成22年11月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年3月8日に審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。

第2.本願発明について
1.本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成23年3月8日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、次のとおりのものである。

「印刷方法であって、
ホストマシン上の第1のアプリケーションにより、1プレーン1ピクセル当り予め定められたビットを有するページ・データを生成するステップと、
前記ページ・データのピクセルを個別にまたは隣接ピクセルとの関係において、前記ホストマシン上の第2のアプリケーションを用いて調べるステップと、
前記ページ・データを調べた結果に基づき前記ホストマシンによって、印刷データの全体サイズが低減されるべく1プレーン1ピクセル当りのマルチビットの値と印刷エンジンを制御可能な印刷エンジン制御情報とを含む中間データへレンダリングするステップと、
前記中間データを印刷装置へ転送するステップと、
前記印刷装置において、前記中間データからパルス符号を生成するステップと、
前記パルス符号からハードコピー画像をレンダリングするステップと、
を有し、
前記印刷エンジン制御情報は、トナー節約またはトナー飛散の品質問題を扱う情報を含む、印刷方法。」

2.刊行物の記載事項
これに対し、原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開2000-108462号公報(以下、「刊行物1」という)には、次の(1)ないし(6)の事項が記載されている。
(1)「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プリンタ及びデータ作成装置間でデータの送受信を行う印刷方法、制御方法、表示方法、それらの方法を実施するためのデータ作成装置、プリンタ、並びにコンピュータに、それらの方法を実施させるプログラムコードが記録されている記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】データ作成装置であるパーソナルコンピュータ(以下パソコンという)とプリンタとを接続し、パソコンで得られた画像及び/又は文字を示すデータをプリンタへ送信し、プリンタにて画像及び/又は文字を印刷するようにした印刷システムが広く利用されている。」

(2)「【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら昨今のパソコン及びプリンタ間のデータ転送速度、並びにパソコンの処理能力は著しく向上しており、パソコン及びプリンタ間のデータ転送速度が全体のスループットを決定する要因にはなり得なくなってきている。その反面、このような通信に関するシステムが各所で導入されるに伴い、システム全体のコストダウンに対する要望が強くなっている。
【0011】そしてシステム全体のコストダウンを考える際に生じる問題の一つとして、プリンタが高価であるという問題があり、これはプリンタにおいてラスタライズ処理、文字コードの変換、及びパネル表示データの生成等の処理を行うために、プリンタが備えなければならないハードウエア及びソフトウエアが多いということが原因である。」

(3)「【0014】
【課題を解決するための手段】第1発明に係る印刷方法は、応用プログラムを起動させることが可能なデータ作成装置に接続されたプリンタを用いる印刷方法において、データ作成装置にてプリンタで変換せずに印刷できる形式の印刷データを作成し、データ作成装置からプリンタへ印刷データを送信し、プリンタにより印刷することを特徴とする。」

(4)「【0030】そして印刷ヘッドを駆動し、印刷ヘッドに備えられたノズルからシアン、マゼンダ、イエロー、及びブラックのインクを、機構制御部14から送られたビットマップデータのビット毎に規定された色に見える比率で、紙送り用ローラにより所定の速度で送り出される用紙の規定された位置に吹き付けて、文字及び/又は画像を印刷する。」

(5)「【0037】パソコン1ではステータス情報を受信して(S108)、用紙に問題が無いと判断した場合、パソコン1で起動された画像処理プログラム及び文書作成プログラム等の応用プログラム上に展開されたデータを印刷すべくパソコン1からプリンタ11へ印刷する文字及び/又は画像のビットマップデータを作成し(S109)、プリンタ11へ送信する(S110)。プリンタ11ではビットマップデータを受信し(S209)、通信制御部12のメモリに一時的に記憶させる。」

(6)「【0039】このように本発明は、プリンタの印刷等の制御をパソコンで行うことにより、プリンタが備えなければならないハードウエア及びソフトウエアを極力少なくするようにしたものである。」

以上の記載から、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1発明」という)が記載されている。

画像処理プログラム及び文書作成プログラム等の応用プログラムを起動させることが可能なデータ作成装置(パソコン)に接続されたプリンタを用いる印刷方法において、パソコンで起動された応用プログラム上に展開されたデータを印刷すべくパソコンからプリンタへ印刷する文字及び/又は画像のビットマップデータを作成し、パソコンからプリンタへビットマップデータを送信し、プリンタで印刷ヘッドを駆動し、印刷ヘッドに備えられたノズルからシアン、マゼンダ、イエロー、及びブラックのインクを、ビットマップデータのビット毎に規定された色に見える比率で、用紙の規定された位置に吹き付けて、文字及び/又は画像を印刷する印刷方法であって、プリンタが備えなければならないハードウエア及びソフトウエアを極力少なくするようにした印刷方法。

また、原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開2002-247360号公報(以下、「刊行物2」という)には、次の(7)ないし(12)の事項が記載されている。

(7)「【0002】
【従来の技術】カラープリンタやカラーコピー等の電子写真装置は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)のトナーを利用してカラー画像の再生を行うものである。カラープリンタの中でも、特に、レーザビームによって感光体ドラム上に静電潜像を形成し、帯電したトナーにより現像し、現像されたトナーによる画像を転写紙に転写し、定着することによってカラー画像再生を行うカラーレーザプリンタは、レーザビームの照射領域をドット内において種々変更することができ、単位面積当たりのドット数が少ない場合でも、より高解像度で且つより高い階調のカラー画像を再現することを可能にする。
【0003】そのようなカラーレーザプリンタによりカラー画像再生を行う場合の画像処理の工程の概略を図7を参照して説明すると次のようである。画像データはデータ解釈される(ステップS1)。データ解釈とは、画像データがどのような構造を有しているかを解釈することである。例えば、カラースキャナで読み込まれた画像データはビットマップデータであるが、それがそのままビットマップ形式で保存されることもあり、JPEG等の適宜な圧縮方式によりデータ圧縮されて保存される場合もある。この場合にはデータ圧縮された画像データはビットマップ形式とは異なるものとなる。また、図形作成ツール等のアプリケーションプログラムによって作成された画像のデータは、ページ・ディスクリプション・ランゲージ(page description language:PDL)等のビットマップ形式ではない形式のデータとなされる。このように画像データのデータ構造は種々であるので、画像データがどのような構造のものであるのかを解釈するのである。そして、データ解釈の工程で解釈された画像データのデータ構造は、それ以降の工程の処理に反映される。なお、データ解釈の手法は周知であるので詳細な説明は省略する。
【0004】次に、画像データに対して解像度変換が施され(ステップS2)、ラスタオペレーションにより画像データはビットマップ化される(ステップS3)。解像度変換は、画像データの解像度を、指定された画像再生の解像度に変換するものである。そして、ラスタオペレーションによって、RGBの3つのビットマッププレーン(以下、単にプレーンと称す)が生成される。なお、解像度変換及びラスタオペレーションの手法は周知であるので詳細な説明は省略する。
【0005】次に、色変換によって、RGBの3色は、YMCKの4色に変換される(ステップS4)。これによって、YMCKの4つのプレーンが生成される。この色変換も周知の手法を用いればよい。
【0006】次に、YMCKのそれぞれのプレーンに対してハーフトーン処理が行われる(ステップS5)。」

(8)「【0012】このようにして、パターンマトリクスとガンマテーブルを用いたハーフトーン処理をYMCKの全てのプレーンについて行うと、次に、そのハーフトーン処理の結果得られたYMCK4色についての各画素の画像再生情報をパルス幅変調方式(PWM)により変調してレーザ駆動パルスを生成する(ステップS6)。そしてその後、このレーザ駆動パルスでレーザダイオードを駆動し、レーザービームを感光ドラムに照射する。これにより、一つ一つの画素に対応した静電潜像形成領域内の、画像再生情報のパルス位置によって定められた右側または左側に、画像再生情報のパルス幅によって定められた面積領域だけにレーザービームが照射され、トナーが付着される。そして、印刷用紙への転写、定着が行われて画像再生が行われることになる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】ところで、図7に示す画像再生時の画像処理は、全てカラーレーザプリンタ側で行われることもあり、一部はホストコンピュータで行われることもある。前者においては、画像データを蓄積しているホストコンピュータからカラーレーザプリンタに転送し、カラーレーザプリンタ側でステップS1のデータ解釈以降の全ての画像処理を行うことになり、後者の場合としては、例えばホストコンピュータ側でステップS3のラスタオペレーションまで行うものとすると、ホストコンピュータからラスタオペレーションの結果得られるRGBの3色のプレーンをカラーレーザプリンタに転送し、カラーレーザプリンタ側でステップS4の色変換以降の処理を行うことになる。勿論、ホストコンピュータ側でステップS4の色変換まで行ったり、ステップS5のハーフトーン処理まで行ったりすることも可能である。
【0014】しかし、何れにせよ、従来では、画像再生を行う場合には、その都度、図7に示す画像処理を行わなければならず、画像再生に時間を要するという問題がある。また、例えば、ホストコンピュータ側でラスタオペレーションあるいは色変換まで行うものとすると、前者の場合にはRGBの3色のプレーン、後者の場合にはYMCKの4色のプレーンのデータをカラーレーザプリンタに転送しなければならず、そのデータ転送に時間を要するという問題もある。
【0015】そこで、本発明は、画像再生あるいはホストコンピュータ側からカラーレーザプリンタへのデータ転送を従来より短時間で行うことができる画像処理方法及び画像処理装置を提供することを目的とするものである。」

(9)「【0023】以下、具体的に説明する。図1は本発明に係る画像処理方法の工程の一実施形態を示す図である。図1のステップS11のデータ解釈からステップS14の色変換までの処理は、図7のステップS1からステップS4までの処理と同じである。ステップS14の色変換の処理が終了すると、色変換の処理によって生成されたYMCKの4色の各プレーンの画像データに対して第1ハーフトーン処理が施される(ステップS15)。
【0024】この第1ハーフトーン処理では、パターンマトリクスと、階調値対パルス幅テーブルを用いる。この階調値対パルス幅テーブルは、図8(b)に示すガンマテーブルからパルス位置の情報を除いたものであり、パターンマトリクスの各参照番号について、画像データの画素の階調値に対するパルス幅のみが書き込まれたものである。階調値対パルス幅テーブルの例を図2に示す。図2(a)、図2(b)に示す階調値対パルス幅テーブルは、何れもパターンマトリクスを3×3のマトリクスとした場合のものであり、図2(a)はパルス幅を128 段階(7ビット)で表す場合の階調値対パルス幅テーブルの例であり、図2(b)はパルス幅を16段階(4ビット)で表す場合の階調値対パルス幅テーブルの例である。実用上は、パルス幅値は1画素当たり2?4ビット構成で十分であり、高品質な画像再生が望まれる場合には、1画素あたりのパルス幅を6ビットあるいは7ビットとすればよい。」

(10)「【0028】第1のハーフトーン処理の結果得られたYMCKの4色の第1ハーフトーンデータは、そのまま、あるいはデータ圧縮(ステップS16)されて保存されたり、転送されたりする。」

(11)「【0034】更に、第1ハーフトーンデータを転送する場合にはラスタ形式で行えばよい。つまり、第1ハーフトーンデータは、値はパルス幅ではあるがビットマップ形式のデータであるので、ビットマップ形式のデータの転送において通常行われているラスタ形式で転送を行うことができる。例えば、第1ハーフトーンデータが図3(b)のようである場合には、第1ラインの先頭であるH1,1 から順次H1,nまで転送し、次に第2ラインのパルス幅値、その次に第3ラインのパルス幅値というように、第1ラインの先頭から順次ラスタを構成するパルス幅値を転送していけばよい。
【0035】メモリから読み出された第1ハーフトーンデータ、あるいは転送された第1ハーフトーンデータに対しては、第2ハーフトーン処理が施される(ステップS18)。なお、第1ハーフトーンデータがデータ圧縮されている場合には、第2ハーフトーン処理に先立って圧縮の解凍(ステップS17)が行われる。
【0036】第2ハーフトーン処理では、第1ハーフトーンデータに基づいてパルス位置の情報が生成され、そのパルス位置情報がパルス幅値に付加され、対となされて出力される。第2ハーフトーン処理では、第1ハーフトーンデータに基づいてパルス位置情報を生成するために、パターンマトリクスと、パルス幅値対パルス位置テーブルを用いる。そして、第1ハーフトーンデータの各パルス幅値に対してパターンマトリクスを当てはめる際に、画素カウンタにより、いま注目しているパルス幅値が、1頁の画像内のどの位置の画素に対応するものであるかを判断する。」

(12)「【0043】このようにして、第2ハーフトーン処理によって、パルス幅値から、少なくともパルス位置情報が生成され、そのパルス位置情報はパルス幅値と対となされてPWMに供給される(ステップS19)。その後は従来と同じである。なお、パルス幅値対パルス位置テーブルが図4(b)に示すようにパルス位置とパルス幅が書き込まれたものである場合には、このパルス幅値対パルス位置テーブルに書き込まれているパルス幅値とパルス位置とが対となされて出力される。」

以上の記載から、刊行物2には次の発明(以下、「刊行物2発明」という)が記載されている。

画像データがデータ解釈され、次に、画像データに対して解像度変換が施され、ラスタオペレーションにより画像データはビットマップ化されRGBの3つのビットマッププレーンが生成され、次に、色変換によって、RGBの3色は、YMCKの4色に変換され、これによって、YMCKの4つのプレーンが生成され、色変換の処理によって生成されたYMCKの4色の各プレーンの画像データに対して第1ハーフトーン処理が施され、この第1ハーフトーン処理では、パターンマトリクスと、階調値対パルス幅テーブルを用い、第1のハーフトーン処理の結果得られたYMCKの4色の第1ハーフトーンデータは転送され、転送された第1ハーフトーンデータに対しては、第2ハーフトーン処理が施され、第2ハーフトーン処理では、第1ハーフトーンデータに基づいてパルス位置の情報が生成され、そのパルス位置情報がパルス幅値に付加され、対となされて出力され、第2ハーフトーン処理によって、パルス幅値から、少なくともパルス位置情報が生成され、そのパルス位置情報はパルス幅値と対となされてPWMに供給され、パルス幅変調方式(PWM)により変調してレーザ駆動パルスを生成し、このレーザ駆動パルスでレーザダイオードを駆動し、レーザービームを感光ドラムに照射し、これにより、一つ一つの画素に対応した静電潜像形成領域内の、画像再生情報のパルス位置によって定められた右側または左側に、画像再生情報のパルス幅によって定められた面積領域だけにレーザービームが照射され、トナーが付着されて、印刷用紙への転写、定着が行われて画像再生が行われる画像処理方法。

3.対比
本願発明と刊行物1発明とを対比する。

刊行物1発明の「パソコン」、「応用プログラム」は、それぞれ、本願発明の「ホストマシン」、「アプリケーション」に相当するから、刊行物1発明の「パソコンで起動された(画像処理プログラム及び文書作成プログラム等の)応用プログラム」は、本願発明の「ホストマシン上のアプリケーション」に相当する。また、刊行物1発明の「応用プログラム上に展開されたデータ」は、応用プログラムにより生成されたデータである。
したがって、本願発明と刊行物1発明とは、「ホストマシン上のアプリケーションにより、データを生成するステップ」を有する点で共通する。

刊行物1発明において、「応用プログラム上に展開されたデータを印刷すべくパソコンからプリンタへ印刷する文字及び/又は画像のビットマップデータを作成」することは、データをレンダリングすることといえ、レンダリングされたビットマップデータは、画像を色のついた点(ドット)の羅列として表現したデータであって、プリンタにおけるパルス符号となる前の中間データといえるから、本願発明と刊行物1発明とは、「前記データを中間データへレンダリングするステップ」を有する点で共通する。

刊行物1発明における「パソコンからプリンタへビットマップデータを送信」することは、本願発明の「前記中間データを印刷装置へ転送するステップ」に相当する。

刊行物1発明は、プリンタで印刷ヘッドを駆動し、印刷ヘッドに備えられたノズルからシアン、マゼンダ、イエロー、及びブラックのインクを、ビットマップデータのビット毎に規定された色に見える比率で、用紙の規定された位置に吹き付けて、文字及び/又は画像を印刷するものであり、このときの4色のインクの比率や用紙の規定された位置は、本願発明の「パルス符号」に相当し、また、文字及び/又は画像を印刷することは、本願発明の「ハードコピー画像をレンダリングする」ことに相当するものである。
したがって、本願発明と刊行物1発明とは、「前記印刷装置において、前記中間データからパルス符号を生成するステップと、前記パルス符号からハードコピー画像をレンダリングするステップと、」を有する点で一致する。

以上をまとめると、本願発明と刊行物1発明の一致点、相違点は次のとおりである。

[一致点]
印刷方法であって、
ホストマシン上のアプリケーションにより、データを生成するステップと、
前記データを中間データへレンダリングするステップと、
前記中間データを印刷装置へ転送するステップと、
前記印刷装置において、前記中間データからパルス符号を生成するステップと、
前記パルス符号からハードコピー画像をレンダリングするステップと、
を有する印刷方法。

[相違点1]
ホストマシン上のアプリケーションにより、データを生成するステップが、本願発明では、「1プレーン1ピクセル当り予め定められたビットを有するページ・データを生成する」のに対し、刊行物1発明では、応用プログラム上に展開されたデータの形式は特定されていない点。

[相違点2]
本願発明は、「前記ページ・データのピクセルを個別にまたは隣接ピクセルとの関係において、前記ホストマシン上の第2のアプリケーションを用いて調べるステップ」と、「前記ページ・データを調べた結果に基づき前記ホストマシンによって、印刷データの全体サイズが低減されるべく1プレーン1ピクセル当りのマルチビットの値と印刷エンジンを制御可能な印刷エンジン制御情報とを含む中間データへレンダリングするステップ」とを有し、「前記印刷エンジン制御情報は、トナー節約またはトナー飛散の品質問題を扱う情報を含む、」のに対し、刊行物1発明は、前記データを中間データへレンダリングするステップに相当するステップは有しているが、レンダリングの詳細な内容は特定されていない点。

4.当審の判断
上記各相違点について検討する。

(1)相違点1について
パソコンで起動された画像処理プログラムや文書作成プログラム等の応用プログラム上に展開されたデータの形式として、1プレーン1ピクセル当り予め定められたビットを有するページ・データはごくありふれたものであり、刊行物1発明のデータの形式として当業者が適宜採用し得るものにすぎない。

(2)相違点2について
本願発明と刊行物2発明とを対比する。

刊行物2発明は、RGBの3つのビットマッププレーン(本願発明の「ページデータ」に相当)の3色をYMCKの4色に色変換して生成されたYMCKの4つのプレーンの画像データに対して、パターンマトリクスと階調値対パルス幅テーブルを用いて第1ハーフトーン処理(本願発明の「レンダリング」に相当)を施すものである。
ここで、パターンマトリクスと階調値対パルス幅テーブルを用いた第1ハーフトーン処理は、YMCKのビットマッププレーンの各ピクセルの位置と階調値に基づいて行うものであるから、この第1ハーフトーン処理は、本願発明の文言を用いると「ページ・データのピクセルを個別にまたは隣接ピクセルとの関係において調べて、その結果に基づき」行う処理といえる。
また、この第1ハーフトーン処理は、印刷データの全体サイズが低減されるべく1プレーン1ピクセル当りのマルチビットの値を含むデータへレンダリングする処理(上記(9)【0024】を参照)であり、該データは後に第2ハーフトーン処理がなされるものであるから、「中間データ」といえる。
さらに、このデータには、印刷の濃度などを制御するガンマテーブルの情報(本願発明の「印刷エンジンを制御可能な印刷エンジン制御情報」に相当)が含まれている。
また、第1ハーフトーン処理はホストコンピュータのアプリケーション(本願発明の「ホストマシン上の第2のアプリケーション」に相当)で行われるものである。
以上をまとめると、刊行物2には、本願発明の「前記ページ・データのピクセルを個別にまたは隣接ピクセルとの関係において、前記ホストマシン上の第2のアプリケーションを用いて調べるステップ」と、「前記ページ・データを調べた結果に基づき前記ホストマシンによって、印刷データの全体サイズが低減されるべく1プレーン1ピクセル当りのマルチビットの値と印刷エンジンを制御可能な印刷エンジン制御情報とを含む中間データへレンダリングするステップ」とを有する印刷方法に相当する技術事項が記載されているといえる。

したがって、刊行物1発明の印刷方法において、レンダリングの詳細な内容として、刊行物2発明のような第1ハーフトーン処理を行うこと、すなわち、「前記ページ・データのピクセルを個別にまたは隣接ピクセルとの関係において、前記ホストマシン上の第2のアプリケーションを用いて調べるステップ」と、「前記ページ・データを調べた結果に基づき前記ホストマシンによって、印刷データの全体サイズが低減されるべく1プレーン1ピクセル当りのマルチビットの値と印刷エンジンを制御可能な印刷エンジン制御情報とを含む中間データへレンダリングするステップ」とを有する印刷方法とすることは当業者が容易に想到し得ることである。

また、トナー節約またはトナー飛散の品質問題を扱う情報により印刷データを制御することは、例を挙げるまでもなく印刷データの画像処理において周知の技術であるから、刊行物1発明において、パソコンで印刷データに対してこのような制御を行うことは必要に応じて適宜なし得る事項にすぎない。

よって、本願発明は、刊行物1に記載された発明、及び、刊行物2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第3.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

第4.付記
請求人は、平成23年9月28日付けで提出した回答書において、中間データが有する印刷エンジン制御情報を、「トナー節約またはトナー飛散の品質問題を扱う情報」から「トナー飛散の品質問題を扱う情報」に限定する補正案を提示しているが、トナー飛散の品質問題を扱う情報を印刷データに含めること自体は周知の技術である。また、従来はプリンタで行っていた印刷のための制御を、ホストマシンで行って、レンダリングされた中間データに制御結果を含ませることについては、上記刊行物1、2に記載されていることである。ホストマシンで行う制御の一つとして、トナー飛散の品質問題を扱う情報による制御を行うことに格別の困難はなく、したがって、回答書で提示された補正案を採用したとしても審決の結論が変わるわけではない。
 
審理終結日 2012-03-28 
結審通知日 2012-04-03 
審決日 2012-04-17 
出願番号 特願2004-291198(P2004-291198)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中田 剛史  
特許庁審判長 吉村 博之
特許庁審判官 板橋 通孝
千葉 輝久
発明の名称 ホストベースド印刷システム向けにデータを前処理する方法  
代理人 龍華国際特許業務法人  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ