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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) E03C
管理番号 1262833
審判番号 不服2011-7955  
総通号数 154 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-10-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-04-14 
確定日 2012-09-05 
事件の表示 特願2000-142461号「浄水機能付きシャワーヘッド」拒絶査定不服審判事件〔平成13年11月22日出願公開、特開2001-323528号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成12年5月15日の出願であって,平成22年12月28日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成23年4月14日に拒絶査定不服審判がされると共に,同時に手続補正がなされた。
その後,平成23年7月19日付けで,審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ,同年8月30日付けで回答書が提出され,さらに,平成24年2月22日付けで,当審における拒絶理由が通知され,同年4月27日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。


2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は,平成24年4月27日付けの手続補正で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。
「円筒形状に形成したシャワーヘッドの把持部内に収容される浄水機能付きシャワーヘッドの水質浄化用カートリッジであって、
水の水質を浄化する水質浄化材からなるカートリッジ本体と、
内部へ通水可能にこのカートリッジ本体を包囲するとともに、下流側には内部で浄化された水を下流に導出する接続口を穿設した接続端を有し、この接続端を把持部のカートリッジ受けに差し込み固定するカートリッジカバーとからなり、
上記カートリッジカバーが、上流側で、把持部底部の水流入口の周縁近傍に設けられた突起物に当接してカートリッジ本体を軸方向に位置固定し、上記水流入口から上記カートリッジカバーの外周側流路への流路を形成するとともに、
上記把持部内に、水が上記カートリッジカバーの外周側流路から上記内部へ流入し上記水質浄化材により水質を浄化されて吐出される浄水流路と、水が上記水質浄化材で浄化されずに上記外周側流路を通過して吐出される原水流路とを形成することを特徴とする浄水機能付きシャワーヘッドの水質浄化用カートリッジ。」(以下,「本願発明」という。)


3.刊行物に記載された発明
(1)刊行物1
当審における拒絶の理由に引用され,本願出願前に頒布された刊行物である,特開平11-333328号公報(以下,「刊行物1」という。)には図面と共に,次の記載がある。(下線は,当審にて付与。)
(1a)「【請求項1】 シャワーノズルを有するヘッド部、頸部、及び前流端がホースに接続されるグリップ部とからなるシャワーヘッド本体を備え、前記グリップ部の内部に、原水のみが通過する第1流路と、原水との接触により溶出可能或いは離脱可能な浄化剤の充填された浄化処理部を有する第2流路とが並列して配されており、原水及び浄水の切換え機構を備えてなる浄水機能付シャワーヘッドにおいて、前記切換え機構は前記頸部内に配され、前記第1及び第2流路の後流側にあって、原水又は浄水を前記頸部の周方向から選択的に導入し軸方向へと導出する構造を有してなることを特徴とする浄水機能付シャワーヘッド。」

(1b)「【0029】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。図1は本発明の第1実施例であるシャワーヘッドの正面図、図2は同シャワーヘッドの縦断面図である。本発明のシャワーヘッド1は、シャワーヘッド本体10と、同シャワーヘッド本体10内に収納された浄水カートリッジ20と、原水及び浄水の切換え機構30とを備えている。
【0030】・・・前記本体10はヘッド部11、頸部12及びグリップ部13とを有している。前記ヘッド部11は内部が中空で、多数の吐水孔を有するシャワーノズル11aがボルト11bにより取り付けられている。また、グリップ部13の基端にはパッキン13aが外側から嵌め込まれ、ホースと連結したアダプターが液密に接続される。更に、前記グリップ部13は前記頸部12側から基端にかけてその径を漸減させる円筒状に形成されている。前記シャワーヘッド本体10は、前記頸部12とグリップ部13との間で2分割され、両者はパッキン14を介してネジ嵌合により一体化される。・・・
【0031】前記グリップ部13の内部には本発明による浄水カートリッジ20が着脱可能に収納されている。同浄水カートリッジ20の断面図を図3に示す。同浄水カートリッジ20は前記グリップ部13と同様にその径を漸減させる略円筒形状をなすケース体21と、同ケース体21の軸中心に配されたパイプ22とを備えている。・・・前記パイプ22は原水のみが通過する第1流路23とし、前記ケース体21とパイプ22との間には浄化用の薬剤を充填して浄化処理部からなる第2流路24を形成する。」

(1c)「【0033】また、前記ケース体21は前記シャワーヘッド本体10のグリップ部13の径よりも僅かに小径に形成され、外周には長手方向にリブ状突起が突設されており、それにより同浄水カートリッジ20のケース体21と前記シャワーヘッド本体10のグリップ部13との間に形成される僅かな隙間は、原水のみが通過する第3流路27を構成する。かかる第3流路27を形成することにより、グリップ部13の基端から導入された原水の圧力損失を低減させることができる。なお、前記リブ状突起に代えて、前記ケース体21の外周にポイント状の突起を形成してもよい。或いは、前記浄水カートリッジ20ではなく、前記シャワーヘッド本体10におけるグリップ部13の内面にリブ状又はポイント状の突起を突設して、両者の間に第2原水流路を形成することも可能である。」

(1d)「【0034】更に浄水カートリッジ20の後流側端部には、前記第1流路23及び第2流路24と後述する切換え機構30の原水室36及び浄水室37とをそれぞれ区画して連通する区画部26が固着されている。前記区画部26は前記浄水カートリッジ20のケース体21の端縁に固着される薄板状のリング部26aと、前記パイプ22と連通する円筒部26bとを有し、同円筒部26bの外周にはパッキン26cが取り付けられている。また、前記リング部26aの表面の一部に前記第3流路27と連通する凹溝26dが形成されており、前記リング部26aと円筒部26bとの間の浄水用開口スペースは混合部26eを構成し、第2流路24を通過した浄水と前記第3流路27からの原水とが混合される。同混合部26eでは前記第3流路27からの原水が前記第2流路24を通過して浄化処理がなされた浄水中に含まれている未反応の薬剤と反応して浄化されるため、薬剤の無駄をなくすことができる。」

(1e)「【0037】前記シャワーヘッド本体10の頸部12には原水及び浄水の切換え機構30が内蔵されている。同切換え機構30の分解斜視図を図4に示す。前記切換え機構30は、円筒ケース体31、フランジ付有底円筒体32、切換ドラム33、パッキン34、及び操作杆35を備えている。
【0038】前記円筒ケース体31は前記頸部12に密嵌する円筒形状をなすケース本体31aと、円筒嵌着部31bと、仕切板31dとを備えている。前記ケース本体31aの外周にはパッキン嵌着溝31hが形成されており、同溝31h内にパッキン16を嵌着し、前記頸部12に対するシール性を高めている。前記円筒嵌着部31bは前記ケース本体31aの前流部に形成され、前記浄水カートリッジ20の円筒部26bが嵌着し、同嵌着部31bの内部が原水導入口31cとなっている。更に、前記仕切板31dは前記円筒嵌着部31bの後流側端縁とケース体31bとの間を半周にわたって閉塞し、開口している残りの半周が浄水導入口31eとなっている。更に前記浄水導入口31eの端縁に沿って後流側に突条31fが突設されている。・・・ 」

(1f)【図1】及び【図11】には、シャワーヘッド本体10は円筒形状である点が図示されている。

上記記載事項(1a)乃至(1f)及び図面の記載から,刊行物1には,次の発明が記載されているものと認められる。
「円筒形状に形成したシャワーヘッド本体10内に収納される浄水機能付きシャワーヘッド1の浄水カートリッジ20であって,
略円筒形状をなすケース体21と同ケース体21の軸中心に配されたパイプ22とを備えていて,
パイプ22は原水のみが通過する第1流路23とし,
前記ケース体21とパイプ22との間には浄化用の薬剤を充填した浄化処理部からなる第2流路24を形成するとともに,
後流側端部には,薄板状のリング部26aと円筒部26bとを有し,前記リング部26aと円筒部26bとの間の浄水用開口スペースは,前記第1流路23及び第2流路24と頸部12に密嵌する切換え機構30の円筒ケース31の仕切板31dの浄水導入口31eとなる開口と連通するようになっており,前記パイプ22と連通している円筒部26bは,前記円筒ケース31の原水導入口31cとなる円筒嵌着部31bに嵌着されるようになっていて,切換え機構30の原水室36及び浄水室37とにそれぞれ区画して連通する区画部26が固着されている浄水機能付きシャワーヘッドの浄水カートリッジ。」(以下,「刊行物1記載の発明」という。)

(2)刊行物2
当審における拒絶の理由に引用され,本願出願前に頒布された刊行物である,実願平4-90245号(実開平6-48881号)のCD-ROM(以下,「刊行物2」という。)には,次の記載がある。(下線は,当審にて付与。)
(2a)「【請求項1】 微細な濾過孔を多数穿設した円筒形の電鋳製フィルタの中心に取水管を挿通し、この取水管の周壁に通水孔を穿設すと共に、取水管と電鋳製フィルタとの間の筒状の空間に活性炭を充填し、さらに該電鋳製フィルタの上下の開放部分を閉鎖し、取水管の下端に出水管を直結しこの出水管の周壁にはフィルタケース側貫通孔を穿設し、
次に、水道の蛇口に接続すべき流入管を本体ケースの上部に取付けると共に、本体ケースの底部にはフィルタケースの出水管の外径とその内径が等しい流出管を取付け、
そして該フィルタケースを本体ケース内に装着して出水管を流出管に挿入するとともに、フィルタケースに連結した切替レバーによりフィルタケースが上下動自在となり、
このフィルタケースの上下動により前記フィルタケース側貫通孔が流出管の上端より出没自在にのぞませることを特徴とする浄水器。」

(2b)「【0008】
図1は本考案第1実施例の浄水器の斜視図であり、図2はその断面図である。1は円筒形の本体ケースであり、上部に流入管2、下部に流出管3を有する。本体ケース1は、本体ケース上部1aと本体ケース下部1bよりなり、この本体ケース上部1aと本体ケース下部1bはそれぞれに設けたネジ部で螺合し開閉自在である。
4は流入管2に連結して設けられた蛇口取付部であり、この蛇口取付部4に取付けた固定用ネジ5および本体取付用パッキン6で浄水器を水道の蛇口7に固定する。
8は本体ケース1の流出管3の上部に設けた溝部に回動自在に嵌合した切替レバーである。
フィルタケース9は円筒形であり、上面には下部に入水孔11を有する回転止めリブ12を固着し、下面には出水管10を取付ける。出水管10はフィルタケース9に内蔵された通水孔を多数穿設した取水管17と連結し、取水管17と出水管10との接合部分にフィルタケース側貫通孔16を設ける。
フィルタケース9の周面は電鋳製フィルタ13で形成する。電鋳製フィルタ13は従来公知の電鋳法により作製したフィルタで、1?2ミクロンの濾過孔が多数明いている。そして、電鋳製フィルタ13が腐食して飲料水となる水を汚濁しないように、電鋳製フィルタ13の表面を金メッキする。
そして、取水管17と電鋳製フィルタ13の間の空間部分に活性炭14を充填する。
【0009】
以上のようにしてなるフィルタケース9を本体ケース1内に収容する。収容は、本体ケース1を開けて、流出管3に出水管10を切替レバー8と螺合させつつ挿入して行う。
そして、切替レバー8の回動により螺合した出水管10を上下動し、フィルタケース9はこれに伴い昇降する。
さらに本体ケース上部1aと本体ケース下部1bの螺合部分やフィルタケース9の下部などにゴム製のパッキン15を取付けて漏水防止をする。
【0010】
フィルタケース9が下降するとフィルタケース9の下部に取付けたパッキン15が本体ケース下部1bに密着しフィルタケース側貫通孔16が塞がれて、流入管2から電鋳製フィルタ13を通り、さらに活性炭14を通り、取水管17の通水孔を通って出水管10より出水する浄水路が形成される。フィルタケース9が上昇するとフィルタケース側貫通孔16が開いて、流入管2からフィルタケースに穿設したフィルタケース側貫通孔16を通り出水管10より出水する通常水路が形成される。 切替レバー8を右側に回すとフィルタケース9が下降して、切替レバ-8により浄水路が選択される。水道水は、電鋳製フィルタ13を通り、さらに活性炭14を通って浄化され、取水管17の通水孔を通って出水管10より出する。
【0011】
切替レバー8を左側に回すとフィルタケース9が上昇して、切替レバ-8により通常水路が選択される。流入管2から入水し、入水孔11を通った水はフィルタケース側貫通孔16を通り出水管10より出水する。この際、電鋳製フィルタ13を通り浄水される水もありうるが、電鋳製フィルタ13を通るよりフィルタケース側貫通孔16を通るほうが極めて容易であるので、水は電鋳製フィルタ13をほとんど通らず、浄化されない水がそのまま出水管10より出る。」

(2c)上記記載事項(2b)を参照して特に図2をみると,電鋳製フィルタ13は取水管17との間の空間部分に充填された活性炭14の周面を包囲しており,フィルタケース9の下面には活性炭14で浄化された水を導出する取水管17と連通する孔を設けることが明らかである。

これら記載事項(2a)乃至(2c)及び図面の記載から,刊行物2には,次の発明が記載されているものと認められる。
「円筒形の本体ケース1内に収容されるフィルタケース9であって,
周面は内部へ通水可能な濾過孔が多数明いている電鋳製フィルタ13で形成し,中央部に通水孔を多数穿設した取水管17を設けて円筒形とし,取水管17と電鋳製フィルタ13の間の空間部分には活性炭14が充填されて電鋳製フィルタ13は活性炭14の周面を包囲しており,上面には,下部に入水孔11を有する回転止めリブ12を固着し,下面には,内部で浄化された水を導出する取水管17と連通する孔を設けるとともに出水管10が連結されて取付けられており,
上記入水孔11を通った水が,フィルタケース9の電鋳製フィルタ13の外周側を通過し,浄化されない水がそのまま出水管10から出る通常水路と,
外周側から電鋳製フィルタ13を通って内部へ流入し,活性炭14を通り,中央部の取水管17の通水孔を通って出水管10から出水する浄水路とを形成する浄水器のフィルタケース。」(以下,「刊行物2記載の発明」という。)


4.対比
本願発明と刊行物1記載の発明とを対比すると,
刊行物1記載の発明の「浄水カートリッジ」が,本願発明の「水質浄化用カートリッジ」に相当しており,以下同様に,
「浄化用の薬剤」が「水の水質を浄化する水質浄化材」に,
「後流側」が「下流側」に,
「浄水用開口スペース」が「内部で浄化された水を下流に導出する接続口」に,
「薄板状のリング部26aと円筒部26bとを有する区画部26」が「カートリッジカバー」の「接続端」に,
「円筒部26bは,前記円筒ケース31の原水導入口31cとなる円筒嵌着部31bに嵌着される」が「接続端を把持部のカートリッジ受けに差し込み固定する」に,
「原水のみが通過する第1流路23」が「水質浄化材で浄化されずに吐出される」「原水流路」に,それぞれ相当している。
また,刊行物1記載の発明の「第2流路24」は原水が浄化処理部を通過し、浄化されて浄水になるものであるから,本願発明の「浄水流路」に実質的に相当する。
そして、刊行物1記載の発明の「シャワーヘッド本体10内に」,「原水のみが通過する第1流路23と」,「浄化用の薬剤を充填した浄化処理部からなる第2流路24を形成する」ことは,本願発明の「把持部内に」,「水質浄化材により水質を浄化されて吐出される浄水流路と」,「水が上記水質浄化材で浄化されずに」,「吐出される原水流路とを形成する」ことに実質的に相当する。

したがって,両者は,以下の点で一致している。
「円筒形状に形成したシャワーヘッドの把持部内に収容される浄水機能付きシャワーヘッドの水質浄化用カートリッジであって,
水の水質を浄化する水質浄化材からなるカートリッジ本体と,
下流側には内部で浄化された水を下流に導出する接続口を穿設した接続端を有し,この接続端を把持部のカートリッジ受けに差し込み固定するカートリッジカバーとからなり,
上記把持部内に,水が上記水質浄化材により水質を浄化されて吐出される浄水流路と,水が上記水質浄化材で浄化されずに吐出される原水流路とを形成する浄水機能付きシャワーヘッドの水質浄化用カートリッジ。」

そして,以下の点で相違している。
(相違点1)
本願発明は,カートリッジカバーが,「内部へ通水可能に」水質浄化材からなる「カートリッジ本体を包囲するとともに」「接続端を有し」,「水が上記カートリッジカバーの外周側流路から上記内部へ流入し上記水質浄化材により水質を浄化されて吐出される浄水流路と,水が上記水質浄化材で浄化されずに上記外周側流路を通過して吐出される原水流路とを形成する」のに対して,
刊行物1記載の発明は,カートリッジカバーが接続端は有しているが,内部へ通水可能に水質浄化材を包囲しておらず,水が上記カートリッジカバーの外周側流路から上記内部へ流入し上記水質浄化材により水質を浄化されて吐出されるようになっていない点。
(相違点2)
本願発明は,「カートリッジカバーが、上流側で、把持部底部の水流入口の周縁近傍に設けられた突起物に当接してカートリッジ本体を軸方向に位置固定し、上記水流入口から上記カートリッジカバーの外周側流路への流路を形成する」のに対して,
刊行物1記載の発明は,そのようになっていない点。

5.判断
(相違点1について)
刊行物2の記載の発明の「フィルタケース」は,本願発明の「水質浄化用カートリッジ」に,「活性炭14」が「水質浄化材からなるカートリッジ本体」に相当する。次に,刊行物2の記載の発明では,「電鋳製フィルタ13は活性炭14の周面を包囲しており,(フィルタケースの)上面には,下部に入水孔11を有する回転止めリブ12を固着し,下面には,内部で浄化された水を導出する取水管17と連通する孔を設けるとともに出水管10が連結されて取付けられて」いることから,「電鋳製フィルタ」と「フィルタケースの上面及び下面」の組み合わせが,本願発明の「カートリッジカバー」に相当する。
また,刊行物2の記載の発明においても,「入水孔11を通った水が,フィルタケース9の電鋳製フィルタ13の外周側を通過し,浄化されない水がそのまま出水管10から出る通常水路と,外周側から電鋳製フィルタ13を通って内部へ流入し,活性炭14を通り,中央部の取水管17の通水孔を通って出水管10から出水する浄水路とを形成する」ので,「通常水路」及び「浄水路」が,本願発明の「原水流路」及び「浄水流路」に相当する。
以上のことから,刊行物2には,相違点1に係る「カートリッジカバーが,内部へ通水可能に水質浄化材からなるカートリッジ本体を包囲するとともに接続端を有し,水が上記カートリッジカバーの外周側流路から上記内部へ流入し上記水質浄化材により水質を浄化されて吐出される浄水流路と,水が上記水質浄化材で浄化されずに上記外周側流路を通過して吐出される原水流路とを形成する」発明が記載されている。
そして,刊行物1記載の発明の浄水カートリッジも,刊行物2記載の発明のフィルタケースも,いずれも,流入してきた原水を,そのまま原水として使用可能とする流路と,水質浄化した浄水として使用可能とする流路とを形成する浄化装置に用いられるカートリッジであるから,刊行物1記載の発明の浄水カートリッジの流水経路を,刊行物2記載の発明のフィルタケースのように変更して,上記相違点に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易になし得たことである。
また,本願発明の作用効果は,刊行物1及び2記載の発明から当業者が予測し得る程度のことである。

(相違点2について)
本願発明の「カートリッジカバーが、上流側で、把持部底部の水流入口の周縁近傍に設けられた突起物に当接してカートリッジ本体を軸方向に位置固定し、上記水流入口から上記カートリッジカバーの外周側流路への流路を形成する」点の,「把持部底部の水流入口の周縁近傍に設けられた突起物」は,カートリッジカバーの構成要素ではない。他方,刊行物1記載の発明の浄水カートリッジにおいても,例えば刊行物1の図2で,カートリッジ下面とグリップ部13下方の内周側に突出した部分とが当接して,軸方向の位置固定がなされている様に,何らかの位置固定手段を有していることは自明であるので,この点にカートリッジとしての相違は認められない。よって,相違点2としたものは本願発明と刊行物1記載の発明との相違点とはならない。

したがって,本願発明は刊行物1及び2記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

なお,本願発明の「カートリッジ」の構成とは認められないとした「カートリッジカバーが、上流側で、把持部底部の水流入口の周縁近傍に設けられた突起物に当接してカートリッジ本体を軸方向に位置固定し、上記水流入口から上記カートリッジカバーの外周側流路への流路を形成する」という事項について言及すると,上流側で,把持部底部の水流入口の周縁近傍に設けられた突起物に当接してカートリッジを軸方向に位置固定するとともに外周側流路への流路を形成することは,特開2000-116560号公報に記載されている。また,カートリッジ側にではあるが,水流入口の周縁近傍となる位置にリブを設けてカートリッジの軸方向の位置固定及び外周側流路への流路を形成することは,査定時の拒絶理由に引用されている特開昭59-80310号公報にも記載されており,かつ,位置固定や流路形成のためのリブをカートリッジ側ではなくセットされる側に設けることは,特開昭61-238391号公報や上記刊行物1にも記載されており,適宜なし得ることにすぎない。


6.むすび
以上のとおり,本願発明は特許を受けることができないから,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-06-27 
結審通知日 2012-07-03 
審決日 2012-07-17 
出願番号 特願2000-142461(P2000-142461)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (E03C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森次 顕下井 功介  
特許庁審判長 高橋 三成
特許庁審判官 鈴野 幹夫
中川 真一
発明の名称 浄水機能付きシャワーヘッド  
代理人 土橋 皓  

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