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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C22C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C22C
管理番号 1263233
審判番号 不服2010-23708  
総通号数 155 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-10-21 
確定日 2012-09-11 
事件の表示 特願2000-621101「粉末冶金組成物の改良された製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年12月 7日国際公開、WO00/73001、平成15年 1月 7日国内公表、特表2003-500538〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、2000年3月2日(パリ条約による優先権主張1999年5月26日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成22年1月15日付けで拒絶理由通知がなされ、同年6月11日付けで拒絶査定がなされたものである。
そして、本件審判は、この査定を不服として、同年10月21日に請求がなされたものであり、同日付けで願書に添付した明細書の特許請求の範囲について手続補正もなされている。

2.補正の却下の決定

2-1.結論

平成22年10月21日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

2-2.理由

2-2-1.補正の内容と目的

本件補正は、特許請求の範囲について以下の補正事項を有する。

(補正前)

・・・(前略)・・・

【請求項12】(a)予備合金粉末中の合金化添加剤の量が予備合金粉末の全重量基準で少なくとも約0.10重量パーセントである、鉄と一つあるいはそれ以上の合金化添加剤を含んでなる予備合金粉末を準備し;(b)この予備合金粉末と約60ミクロンあるいはそれ以下の重量平均粒子サイズを持つ銅含有粉末及び約20ミクロンあるいはそれ以下の重量平均粒子サイズを持つニッケル含有粉末を混合し;そして(c)この銅含有粉末、ニッケル含有粉末、及び予備合金粉末を結合剤の存在下で結合して、少なくとも約0.5重量パーセントの銅、少なくとも約0.5重量パーセントのニッケル、及び少なくとも約83重量パーセントの予備合金粉末を含んでなる冶金粉末組成物を形成するステップを含んでなる冶金粉末組成物を製造する方法。

・・・(後略)・・・

(補正後:下線部は補正箇所)

・・・(前略)・・・

【請求項11】(a)予備合金粉末中の合金化添加剤の量が予備合金粉末の全重量基準で少なくとも0.10重量パーセントである、鉄と一つあるいはそれ以上の合金化添加剤を含んでなる予備合金粉末を準備し;(b)この予備合金粉末と20ミクロンあるいはそれ以下の重量平均粒子サイズを持つ銅含有粉末及び20ミクロンあるいはそれ以下の重量平均粒子サイズを持つニッケル含有粉末を混合し;そして(c)この銅含有粉末、ニッケル含有粉末、及び予備合金粉末を結合剤の存在下で結合して、少なくとも0.5重量パーセントの銅、少なくとも0.5重量パーセントのニッケル、及び少なくとも83重量パーセントの予備合金粉末を含んでなる冶金粉末組成物を形成するステップを含んでなる冶金粉末組成物を製造する方法。

・・・(後略)・・・

以上のとおり、補正後の請求項11は、補正前の請求項12について、各数値限定における「約」を削除するとともに、銅含有粉末の重量平均粒子サイズを、「60ミクロンあるいはそれ以下」から「20ミクロンあるいはそれ以下」へと変更したものと認められる。
してみると、上記補正事項は、その目的において、いわゆる特許請求の範囲の限定的減縮を含む。
そこで次に、補正後の請求項11に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるか否かについて検討する。

2-2-2.独立特許要件

2-2-2-1.引用例及び引用発明

原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先権主張の基礎とされた先の出願前に日本国内又は外国において頒布された、
特開平6-10001号公報 (以下、「引用例1」という。)
特開平6-145701号公報 (以下、「引用例2」という。)
には、それぞれ以下の記載がある。

○引用例1の記載事項

摘記1-1:
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、鉄をベースとする粉末と、少量の少なくとも1種の合金化粉末と、鉄をベースとする粉末及び合金化粉末のための有機結合剤とを含んで成る改良された冶金粉末組成物であって、該結合剤の少なくとも40重量%が、一般式、
【0011】
【化2】
R

HO?(CH_(2)CH?O)n?H
式中、Rは、H、CH_(3)又はC_(2)H_(5)であり、そしてnは、少なくとも約7,000の数平均分子量を与えるのに十分な反復オキシアルキレン単位の平均数である、のポリアルキレンオキシドであることを特徴とする組成物を提供する。

摘記1-2:
【0022】本発明の粉末組成物に使用される鉄をベースとする粒子は、標準粉末冶金学的方法に使用する他の合金化材料の粒子と混合することができる鉄粒子又は鉄含有(鋼を包含する)粒子のいずれかである。鉄をベースとする粒子の例は、純粋又は実質的に純粋な鉄の粒子、他の元素(例えば、鋼製造性元素)と予備合金化された(pre-alloyed)鉄の粒子及びこのような他の元素が拡散結合された(diffusion-bonded)鉄の粒子である。

・・・(中略)・・・

【0024】予備合金化された鉄をベースとする粉末の例は、モリブデン(Mo)で予備合金化された鉄であり、その好ましいバージョンは、Mo約0.5重量%-約2.5重量%を含有する実質的に純粋な鉄の溶融物を微粉化する(atomizing)ことにより製造することができる。このような粉末は、HoeganaesANCORSTEEL 8.5HP鋼粉末として商業的に入手可能であり、このものは、Mo0.85重量%、マンガン、クロム、ケイ素、銅、ニッケル又はアルミニウムのような他の材料を合計で約0.4重量%未満及び炭素約0.02重量%未満を含む。他の商業的に入手可能な予備合金化された鉄をベースとする粉末には、ヘガネスのANCORSTEEL 150HP、2000及び4600V微粉化鋼粉末が包含される。

摘記1-3:
【0026】上記の種類の鉄をベースとする粒子と混合される合金化材料は、最終焼結製品の強度、焼き入れ性、電磁的性質又は他の望ましい性質を高めるための冶金学の分野で知られている合金化材料である。鋼生成性元素は、中でもこれらの材料の最も良く知られたものである。合金化材料の特定の例には、元素状モリブデン、マンガン、クロム、ケイ素、銅、ニッケル、錫、バナジウム、コロンビウム(ニオビウム)、冶金学てく炭素(グラファイト)、リン、アルミニウム、イオウ及びそれらの組み合わせが包含されるが、これらに限定されるものではない。他の好適な合金化材料は、銅と錫又はリンとの2成分系合金、マンガン、クロム、ホウ素、リン又はケイ素のフェロアロイ、炭素と、鉄、バナジウム、マンガン、クロム及びモリブデンの2種又は3種との低融点3成分系及び4成分系共晶、タングステン又はケイ素の炭化物、窒化ケイ素及びマンガン又はモリブデンの硫化物である。
【0027】合金化材料は、それらが混合される鉄をベースとする材料の粒子より一般に小さなサイズの粒子の形態で組成物において使用される。合金化材料粒子は、一般に、約100ミクロン以下、好ましくは約75ミクロン以下、更に好ましくは約30ミクロン以下、最も好ましくは約5-20ミクロンの範囲の重量平均粒径を有する。

摘記1-4:
【0036】
【実施例】下記実施例の各々においては、鉄をベースとする粉末、合金化粉末、滑剤及び結合させていない対照混合物を除いては、結合剤、の混合物を、下記の如くして製造した。鉄粉末(ヘガネスANCORSTEEL 1000鉄粉末)をステアリン酸亜鉛1.0重量%又は0.75重量%と完全に混合することにより、2つの異なる鉄/滑剤ブレンドを先ず製造した。次いで、この予め滑剤を加えた鉄粉末を、標準実験室94びん混合装置中で15-30分間合金化粉末とドライブレンドし、約5ポンドの量で混合された粉末組成物の一連のバッチを製造した。これらのバッチのいくらかを、実施例1に現れる結合させていない対照混合物として使用するために取っておく。合金化粉末のダスティングを回避するために完全に注意を払った。通常の食品ミキサーの適当なサイズのボウル中で、下記の実施例に記載の如く種々の結合剤と残りの粉末混合物を一緒にすることにより、結合剤が含有混合物を製造した。結合剤をアセトン中の溶液の形態で粉末混合物に加え、これは混合物が均一な湿潤した外観を持つまでスパチュラで粉末とブレンドされた。

摘記1-5:
【0040】実施例1は、比較の目的で含まれており、そして米国特許第4,834,800号に開示された結合剤の1つで得られる特性を示す。実施例2-4は本発明の結合剤を説明する。実施例においては、特記しない限り、すべての百分率は重量による。
【0041】実施例1
表1.1に示された合金化添加物及び有機添加物との鉄をベースとする粉末混合物5種類を製造し、そして前記の方法に従って試験した。表1.1に示されたように、各場合の合金含有率は、主としてグラファイト1%及び銅2%であった。グラファイトは、4ミクロンの平均粒径を有するロンザグレード(Lonzagrade)KS-6であった。2つの異なる銘柄の銅を混合物を製造するのに使用した。混合物1は、57ミクロンの平均マイクロトラック粒径を有するアルカングレード(Alcan-grade)で製造された。残りの混合物は、すべて、22ミクロンの平均粒径を有するグリーンバックグレード(Greenback-grade)240MDで製造された。

摘記1-6:
【0062】実施例4
本実施例で使用される合金化材料は、1%グラファイト、3%ニッケル及び1%銅であった。グラファイト及び銅添加は実施例1及び2に使用された種類のものであった(即ち、それぞれ、ロンザKS-6及びグリーンバック240MD)ニッケル(“インコ(Inco)123ニッケル、インターナショナル・ニッケル・カンパニー)は、11.4ミクロンの平均マイクロトラック粒径を有していた。混合物への滑剤及び結合剤添加は、表4.1に示される。使用された滑剤は、アクラワックス(Acrawax)C(グリコール・ケミカル社)であった。全部ポリ酢酸ピニルで結合させた先行技術の対照混合物18とは別に、混合物19-22の新規な結合剤は、表4.1に示された如きポリマーのブレンドであった。

・・・(中略)・・・



○引用例2の記載事項

摘記2-1:
【要約】
【目的】合金粉末等の添加物の偏析が少なく、ホッパからの流出性、安定供給性に優れ、成形時の金型からの抜出力が低い粉末冶金用鉄基粉末混合物を提供する。
【構成】平均粒径78μmのアトマイズ鉄粉、16μm未満の合金用電解銅粉、黒鉛粉、MgO、SiO_(2)を主成分とする切削改善剤を、結合剤としてポリビニルブチラール、ナイロン6ともにメタノールに溶解した溶液と5分間常温で混合し、潤滑剤粉末を添加し、2分間混合し、常温にて液体成分を蒸発させた。結合剤は0.05?0.3重量%、潤滑剤は0.5?2.0重量%のとき、好成績を得た。

引用発明の認定

引用例1には、鉄をベースとする粉末と、少量の少なくとも1種の合金化粉末と、鉄をベースとする粉末及び合金化粉末のための有機結合剤とを含んで成る改良された冶金粉末組成物(摘記1-1)の「実施例4の混合物19」として、鉄をベースとする粉末が鉄粉末で、合金化粉末として、重量平均粒径4ミクロンのグラファイト粉末を1重量%、11.4ミクロンのニッケル粉末を3重量%、22ミクロンの銅粉末を1重量%用い、滑剤0.75重量%、結合剤0.25重量%を添加したもの(摘記1-3?1-6)が記載され、当該冶金粉末組成物が、鉄粉末と滑剤のブレンドを先ず製造し、この予め滑剤を加えた鉄粉末を合金化粉末とドライブレンドし、さらに結合剤を溶液の形態でこの粉末混合物に加えブレンドして製造されること(摘記1-4)が記載されている。
すなわち、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「鉄粉末と滑剤のブレンドを先ず製造し、
この予め滑剤を加えた鉄粉末を、合金化粉末である重量平均粒径4ミクロンのグラファイト粉末、11.4ミクロンのニッケル粉末、22ミクロンの銅粉末とドライブレンドし、
さらに、結合剤を溶液の形態でこの粉末混合物に加えブレンドする、
1重量%のグラファイト、3重量%のニッケル、1重量%の銅、0.75重量%の滑剤、0.25重量%の結合剤、残部94重量%の鉄粉末からなる改良された冶金粉末組成物を製造する方法。」

2-2-2-2.対比・判断

本願補正発明と引用発明を対比すると、引用発明においても、結合剤のブレンドにより、粉末混合物中の鉄粉末と各合金化粉末が結合していることは明らかだから、本願補正発明のうち、
「(a)鉄を含んでなる粉末を準備し;(b)この粉末と銅含有粉末及び20ミクロンあるいはそれ以下の重量平均粒子サイズを持つニッケル含有粉末を混合し;そして(c)この銅含有粉末、ニッケル含有粉末、及び鉄を含んでなる粉末を結合剤の存在下で結合して、少なくとも0.5重量パーセントの銅、少なくとも0.5重量パーセントのニッケル、及び少なくとも83重量パーセントの鉄を含んでなる粉末を含んでなる冶金粉末組成物を形成するステップを含んでなる冶金粉末組成物を製造する方法。」の点は、引用発明と一致し、次の点で両者は相違する。

相違点1:鉄を含んでなる粉末が、本願発明では「予備合金粉末中の合金化添加剤の量が予備合金粉末の全重量基準で少なくとも0.10重量パーセントである、鉄と一つあるいはそれ以上の合金化添加剤を含んでなる予備合金粉末」であるのに対し、引用発明では、鉄粉末である点。

相違点2:銅含有粉末が、本願発明では「20ミクロンあるいはそれ以下の重量平均粒子サイズを持つ」のに対し、引用発明では22ミクロンの重量平均粒径である点。

次に、これらの相違点について検討する。

相違点1について:
引用例1には、鉄をベースとする粉末として、純粋な鉄粉末のほかに、例えば、Mo0.85重量%、マンガン、クロム、ケイ素、銅、ニッケル又はアルミニウムのような他の材料を合計で約0.4重量%未満及び炭素約0.02重量%未満を含むような商業的に入手可能な予備合金化された鉄粉末を使用すること(摘記1-2)が記載されているから、引用発明において、鉄粉末に換え、合金化添加剤の量が全重量基準で少なくとも0.10重量パーセントである、鉄と一つあるいはそれ以上の合金化添加剤を含んでなる予備合金粉末を使用することに格別の困難性はない。

相違点2について:
引用例1には、合金化粉末の重量平均粒径について、最も好ましくは約5-20ミクロンの範囲であること(摘記1-3)が記載されているから、合金化粉末である銅粉末を20ミクロン以下のものへ変更する動機づけはあると認められ、一方、引用例2には、粉末冶金用鉄基粉末混合物において、平均粒径16μm未満の合金用電解銅粉を使用すること(摘記2-1)が記載されているから、そのような粒径変更に阻害要因はないと認められる。
してみると、引用発明において、22ミクロンの銅粉末に換え、20ミクロンあるいはそれ以下の重量平均粒子サイズを持つ銅含有粉末を使用することに格別の困難性はない。

すなわち、引用発明において、相違点1,2を解消することは、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易になし得たことである。
したがって、本願補正発明は、その優先権主張の基礎とされた先の出願前に日本国内において、頒布された引用例1,2に記載された発明に基いて、その優先権主張の基礎とされた先の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

2-2-3.まとめ

以上のとおり、上記補正事項を有する本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明の認定

「2-1」で述べたとおり、本件補正は却下されたので、本願の請求項1?21に係る発明(以下、「本願発明1?21」という。)は、願書に最初に添付された明細書の特許請求の範囲において、請求項1?21に記載された事項により特定されたとおりのものと認める。

4.原査定の理由

これに対し、原査定の拒絶の理由の一つは、
「本願発明12は、その優先権主張の基礎とされた先の出願前に日本国内において、頒布された引用例1,2に記載された発明に基いて、その優先権主張の基礎とされた先の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。」
というものである。

5.当審の判断

「2-2-1」で述べたとおり、本願補正発明は、本願発明12の発明特定事項を限定したものに相当する。
してみると、「2-2-2-2」で述べたように、当該限定を有する本願補正発明が、引用例1,2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明12もまた同様に当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

6.むすび

以上のとおり、本願発明12は、引用例1,2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、原査定の理由により拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-03-29 
結審通知日 2012-04-03 
審決日 2012-04-16 
出願番号 特願2000-621101(P2000-621101)
審決分類 P 1 8・ 575- WZ (C22C)
P 1 8・ 121- WZ (C22C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平塚 義三  
特許庁審判長 吉水 純子
特許庁審判官 佐藤 陽一
大橋 賢一
発明の名称 粉末冶金組成物の改良された製造方法  
代理人 特許業務法人小田島特許事務所  

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