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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01M
管理番号 1263240
審判番号 不服2011-9732  
総通号数 155 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-05-09 
確定日 2012-09-11 
事件の表示 特願2001-522612「充電可能な電気化学セル」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 3月15日国際公開、WO01/18890、平成15年 3月11日国内公表、特表2003-509818〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成12年9月4日(パリ条約による優先権主張 平成11年9月9日 イスラエル(IL))を国際出願日とする出願であって、平成22年6月29日付けで拒絶理由が通知され、同年12月24日に拒絶査定がされ、これに対して平成23年5月9日に審判請求がされるとともに同日付けで特許請求の範囲についての手続補正がされ、当審において、同年12月9日付けで前置報告書に基づく審尋をしたところ、平成24年3月12日付けで回答書が提出されたものである。

第2 本願発明
平成23年5月9日付け手続補正により特許請求の範囲についてする補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号に規定する請求項の削除を目的とするものであるから、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成23年5月9日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
充電可能な電気化学セルであって、
該充電可能な電気化学セルが閉鎖ハウジングを有し、
該閉鎖ハウジング中には活性物質においてのみ異なる2つ又はそれ以上のユニットが配され、該ユニットが、平らな電極の伝導性柔軟な構造体及びその構造体両面にパウダー状の活性物質、電解質を包含するイオン伝導性絶縁物質(膜)の平らな柔軟なバッグを有し、前記電極の伝導性柔軟な構造体が電流導入用の外部に導く伝導体で接続され、前記充電可能な電気化学セルがさらに、必要な電気的接触のための細粒から細粒及び細粒から電極の柔軟な構造体への圧力を維持するために備えられる手段を有することを特徴とする充電可能な電気化学セル。」

第3 原査定の理由の概要
原審における本願に対する拒絶査定の理由の1つは、概ね、本願発明は、本願出願前日本国内又は外国において頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

<引用刊行物>
刊行物1 特開平10-188938号公報
刊行物2 特開平8-83595号公報

第4 刊行物1、2の記載事項
上記刊行物1、2には、以下の記載がある。
1 刊行物1
[1a]「【0003】・・・充電して繰り返して利用可能な二次電池をこれら電子機器等に搭載する場合には電子機器或いは充電機器等への脱着を容易にするために単数或いは複数の二次電池等を1つのケースに納めた電池装置が使用されている。この電池装置は例えば図にしない樹脂材料などからなるおおむね直方体状に形成される電池容器と電池容器内に収納される単数或いは複数の充電放電可能な二次電池からなっている。このような電池装置は電子機器等や充電用機器などに搭載するために陽極端子と陰極端子を有しており、電子機器などに接続されたときには二次電池に蓄えられた電力を陽極端子と陰極端子とから電子機器などへ供給する。
【0004】この二次電池は図1に示すように、正極板(11)と負極板(12)とをセパレータ(13)で袋詰めして交互に重ね合わせることによって形成される。そしてこの正極板(11)と負極板(12)とを袋状のセパレータ(13)からなる積層体を概ね長方体のバッテリーケースに挿入して電解液を注入するか又はポリマー電解質を正極板(11)と負極板(12)の間に形成することによって二次電池として機能するようにする。
【0005】この正極板(11)としては例えば図2に示すように矩形の厚さ20ミクロン程度のアルミニウム箔からなる集電体(21)の両面にリチウムと遷移金属の複合化合物例えばLiV_(2)O_(5)やLiCoO_(2)を正極活物質(22)として塗布したものである。また、負極板(12)としては例えば同図に示すように矩形の厚さ10ミクロン程度の銅箔からなる集電体(23)の両面にリチウムをドープ、脱ドープ可能なカーボン例えばグラファイト構造を有する炭素や軟黒鉛化炭素材料等の炭素を負極活物質(24)として塗布したものである。また、セパレータ(13)としては例えば25ミクロン厚の多孔性ポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム等を袋状にしている。」

[1b]「【図1】



2 刊行物2
[2a]「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、積層される複数の平板電極を均一に密着させることにより蓄電量の向上を図った単電池に関する。
【0002】・・・
【0003】・・・
【0004】・・・平角型の単電池においては、剛体ケース内に複数の平板電極を単に挿入して積層した構造であることから、平板電極間の密着性が悪く、充分な容量が得られないと同時にサイクル特性が著しく低下してしまう不具合を生じる。そこで、これを防止するために、従来においては、単電池の積層電極を加圧して積層電極間の密着性を向上させる電極加圧用のバネを単電池ケースに内蔵することが行なわれている。」

[2b]「【0011】
【実施例】・・・本実施例の単電池1は、図1に示すように、単電池ケース3と、このケース内に収納された積層電極体5と、電極加圧用のバネ7とから構成されている。
【0012】・・・
【0013】・・・前記下ケース11内には積層電極体5が収納されている。この前記積層電極体5は、多数の負極電極5bおよび正極電極5aと、これらの電極間に介装されたポリエチレンフィルム5cにより構成されている。すなわち、本実施例では、前記負極電極bは、不活性ガス気流中で焼成した後、粉砕して得られた平均粒径20μmの炭素を90重量部とし、結着材としてフッ化ビニリデン樹脂を10重量部とし、これらをN-メチルピロリドンに分散したスラリーを、厚さ10μmの銅箔の集電体の両面に塗布することにより、厚さ180μmの電極原板を作製し、この電極原板の一部に負極のリード部29となる未塗布部を残して・・・形成されている。
【0014】前記正極電極5aは、平均粒径15μmのLiCoO_(2) 粉末を91重量部とし、導電材としてグラファイトを6重量部とし、結着材としてフッ化ビニリデン樹脂を3重量部とし、これらをN-メチルピロリドンに分散したスラリーを、銅箔の集電体の両面に塗布することにより、厚さ150μmの電極原板を作製し、この電極原板の一部に正極のリード部31となる未塗布部を残して・・・形成されている。」

第5 当審の判断
1 刊行物1に記載された発明
刊行物1には、[1a]の【0003】によれば、電池容器と、電池容器内に収納される複数の充電放電可能な二次電池からなる電池装置に関して、電池装置が陽極端子と陰極端子を有することが記載され、[1a]の【0004】によれば、前記二次電池が正極板と負極板とをセパレータで袋詰めして交互に重ね合わされた積層体により形成され、この積層体をバッテリーケース、すなわち電池容器に装入して電解液を注入することが記載され、[1a]の【0005】によれば、前記正極板が20ミクロン程度のアルミニウム箔からなる集電体の両面に正極活物質を塗布したものである一方、負極板が10ミクロン程度の銅箔からなる集電体の両面に負極活物質を塗布したものであり、正極活物質と負極活物質が異なる材料であること、セパレータが多孔性ポリエチレンフィルム等を袋状にしていることが記載されている。
ここで、電解液が注入されることで、多孔性ポリエチレンフィルムからなる袋状のセパレータ内部に電解質が侵入していると認められるから、セパレータ、これによって袋詰めされた正極板又は負極板、及びセパレータ内部に侵入した電解質を1つのユニットと見ることにすると、正極板を含むユニットと負極板を含むユニットとは、活物質及び集電体の材料のみが異なっているといえる。また、上記電池装置に設けられる陽極端子と陰極端子とは、[1a]【0003】に記載されるように二次電池に蓄えられた電力を電子機器などへ供給するのであるから、それぞれ、正極板と負極板を構成する集電体に接続していると認められる。
したがって、以上の記載及び認定を本願発明の記載ぶりに沿って整理すると、刊行物1には以下の発明が記載されているといえる。

「充電可能な電池装置であって、
該充電可能な電池装置が電池容器を有し、
該電池容器には活物質及び集電体においてのみ異なる2つ又はそれ以上のユニットが配され、該ユニットが、アルミニウム箔又は銅箔からなる集電体及びその集電体両面に正極活物質又は負極活物質、電解質を包含する多孔性ポリエチレンフィルムからなる袋状のセパレータを有し、前記集電体が前記電池装置の電力を外部の電子機器などへ導くための陽極端子と陰極端子で接続される、充電可能な電池装置。」(以下、「引用発明」という。)

2 本願発明と引用発明との対比
引用発明の「電池装置」、「電池容器」、「正極活物質又は負極活物質」及び「電池装置の電力を外部の電子機器などへ導くための陽極端子と陰極端子」は、その機能を考慮すれば、それぞれ本願発明の「電気化学セル」、「閉鎖ハウジング」、「活性物質」及び「電流導入用の外部に導く伝導体」に相当する。
また、引用発明の「アルミニウム箔又は銅箔からなる集電体」は、薄い箔であるから平らで柔軟なものと認められ、また、「多孔性ポリエチレンフィルムからなる袋状のセパレータ」も、[1b]の図1も参照すれば、平らで柔軟であるものと認められるから、引用発明の「アルミニウム箔又は銅箔からなる集電体」、「多孔性ポリエチレンフィルムからなる袋状のセパレータ」は、それぞれ、本願発明の「平らな電極の伝導性柔軟な構造体」、「イオン伝導性絶縁物質(膜)の平らな柔軟なバッグ」に相当する。
そうすると両者は、
「充電可能な電気化学セルであって、
該充電可能な電気化学セルが閉鎖ハウジングを有し、
該閉鎖ハウジング中には2つ又はそれ以上のユニットが配され、該ユニットが、平らな電極の伝導性柔軟な構造体及びその構造体両面に活性物質、電解質を包含するイオン伝導性絶縁物質(膜)の平らな柔軟なバッグを有し、前記電極の伝導性柔軟な構造体が電流導入用の外部に導く伝導体で接続される、充電可能な電気化学セル。」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:
本願発明は、ユニットが活性物質においてのみ異なるのに対して、引用発明は活物質及び集電体においてのみ異なる点。

相違点2:
本願発明は、活性物質がパウダー状であるのに対して、引用発明は活物質の形状が特定されていない点。

相違点3:
本願発明は、電気化学セルが、必要な電気的接触のための細粒から細粒及び細粒から電極の柔軟な構造体への圧力を維持するために備えられる手段を有するのに対して、引用発明はそのような手段を設けることが特定されていない点。

3 相違点についての判断
3-1 相違点1について
刊行物1の[1a]の【0005】には、正極の集電体がアルミニウム箔、正極活物質がLiCoO_(2)である一方、負極の集電体が銅箔、負極活物質が炭素であるリチウムイオン二次電池が記載されているところ、刊行物2の[2b]の【0013】、【0014】には、上記リチウムイオン二次電池と同じ活物質の組合せに対して、集電体材料を共通の銅箔とすることが記載されている。
したがって、引用発明の集電体をアルミニウム箔に代えて銅箔として、ユニット内の集電体を共通のものとすることで上記相違点1を解消することは、当業者が容易になし得るものである。
また、そのことによって、本願発明において格別顕著な効果を奏したものであるということもできない。

3-2 相違点2について
刊行物1の[1a]の【0005】には、活性物質に相当する正極活物質及び負極活物質を集電体に塗布することが記載されている。
ここで、集電体に活物質を塗布するために、粉末状、すなわちパウダー状の活物質を用いることは、例えば刊行物2の[2b]の【0013】、【0014】にも記載されているように、電池の技術分野における本願の優先日前の周知かつ慣用の技術である。
したがって、引用発明の活性物質としてパウダー状のものを用いることによって上記相違点2を解消することは、当業者が容易になし得るものである。
また、そのことによって、本願発明において格別顕著な効果を奏したものであるということもできない。

3-3 相違点3について
刊行物2の[2a]には、平板の電極を積層して構成される平角型の単電池に関する従来技術として、容量の確保と、サイクル特性の低下を防止することを目的として、単電池の積層電極を加圧して積層電極間の密着性を向上させる電極加圧用のバネを単電池ケースに内蔵することが記載されるとともに、刊行物2の[2b]には、当該積層電極、及び電極加圧用のバネを有する単電池に関して、当該積層電極を構成する負極電極及び正極電極が、集電体の両面にパウダー状の活性物質である炭素及びLiCoO_(2)を塗布したものであることが記載されている。
そうすると、上記のバネは、パウダー状、すなわち細粒の活性物質同士、及び細粒の活性物質と集電体、すなわち電極の柔軟な構造体との間に、容量の確保とサイクル特性の低下を防止するために必要な電気的接触のための圧力を維持することにより、積層電極間の密着性を向上させるものと認められるから、刊行物2には、必要な電気的接触のための細粒から細粒及び細粒から電極の柔軟な構造体への圧力を維持するために備えられる手段を有する技術が、平角型の単電池に関する公知技術として記載されているといえる。
そして、電池の技術分野において容量の確保やサイクル特性の向上はごく一般的な課題である点を考慮すれば、引用発明における電池装置の容量の確保やサイクル特性の向上を図るべく、刊行物2に記載される、必要な電気的接触のための細粒から細粒及び細粒から電極の柔軟な構造体への圧力を維持するために備えられる手段を有する技術を適用することにより、上記相違点3を解消することは、当業者が容易になし得るものである。
また、そのことによって、本願発明において格別顕著な効果を奏したものであるということもできない。

4 審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書に関する平成23年6月20日付けの手続補正書の「(3)本発明と引用文献記載の発明との対比」の欄、及び平成24年3月12日付けの回答書において、要するに、本願発明の技術的課題である「ファブリックの形態の超軽量及び超強力な伝導及び絶縁物質を基礎とした蓄電池、燃料電池及び電解槽の柔軟な構成により、蓄電池、燃料電池及び電解槽電極の重量を減少し強度を増加すること」は、刊行物1及び2においてまったく認識されていないと主張した上で、本願発明の発明特定事項である、
特徴A「閉鎖ハウジング中には活性物質においてのみ異なる2つ又はそれ以上のユニットが配され、該ユニットが、平らな電極の伝導性柔軟な構造体及びその構造体両面にパウダー状の活性物質、電解質を包含するイオン伝導性絶縁物質(膜)の平らな柔軟なバッグを有し」、および
特徴B「必要な電気的接触のための細粒から細粒及び細粒から電極の柔軟な構造体への圧力を維持するために備えられる手段」を有すること
については、刊行物1及び2に一切記載されておらず、示唆すらもされていない旨主張している。
確かに、発明の詳細な説明の記載によると、請求人の主張する上記本願発明の技術的課題は見て取れる。
しかしながら、本願発明は、電気化学セルを構成する伝導体、あるいは絶縁物質がファブリックの形態を有することや、超軽量及び超強力な素材からなることについて、何ら特定されないものであるから、かかる伝導体、あるいは絶縁物質として、刊行物1、2に記載される、公知の電池素材を使用することを何ら排除するものではない。
したがって、刊行物1、2において本願発明の課題が認識されていなかったからといって、そのことを理由に、電気化学セルを構成する伝導体、あるいは絶縁物質がファブリックの形態を有することや、超軽量及び超強力な素材からなることについて、何らの特定もない本願発明に対する、刊行物1、2の記載に基づく容易想到性が覆るものではない。
また、上記特徴Aが、刊行物1、2の記載に基づいて当業者が容易に想到し得るものであることや、上記特徴Bが、刊行物2に記載されたものであることは、上記「3 相違点についての判断」で述べたとおりである。
以上のとおりであるから、上記審判請求人の主張は採用できない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1、2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-04-12 
結審通知日 2012-04-16 
審決日 2012-05-01 
出願番号 特願2001-522612(P2001-522612)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小川 進  
特許庁審判長 吉水 純子
特許庁審判官 山田 靖
田中 則充
発明の名称 充電可能な電気化学セル  
代理人 清原 義博  
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