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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性  H01J
管理番号 1263323
審判番号 無効2011-800056  
総通号数 155 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-11-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-04-07 
確定日 2012-05-09 
事件の表示 上記当事者間の特許第4185962号発明「試料作製装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第4185962号に係る発明についての手続の概要は次のとおりである。
平成 9年10月 1日 原出願(特願平9-268363号)
平成16年 6月 7日 第1分割出願(特願2004-167933
号)
平成18年 6月 8日 第2分割出願(特願2006-159234
号)
平成20年 3月 7日 本件分割出願(特願2008-58689号)
平成20年 9月12日 特許権の設定登録(請求項の数26)
平成23年 4月 7日 無効審判請求(請求人)(甲第1?10号証)
平成23年 7月 8日 答弁書提出(被請求人)(乙第1?3号証)
平成23年11月 4日 審理事項通知書(当審)
平成23年11月28日 口頭審理陳述要領書(請求人)
平成23年11月28日 口頭審理陳述要領書(被請求人)(乙第4?
7号証)
平成23年12月 7日 上申書(請求人)
平成23年12月12日 上申書(被請求人)
平成23年12月12日 口頭審理・審理終結

第2 請求人の主張の及び証拠方法
(1)請求人の主張
請求人は、特許第4185962号の請求項15に係る発明を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、無効審判請求、口頭審理(口頭審理陳述要領書及び第1回口頭審理調書を含む)において、下記「(2)証拠方法」において示した甲第1号証?甲第10号証を提出し、次に示す無効理由を主張している。

(無効理由)
特許第4185962号の請求項15係る発明(以下、「本件発明15」という。)は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、又は、甲第1?3号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許が受けることができないものであり、その本件発明に係る特許は同法第123条第1項第2号の規定に該当し、無効とすべきである。

(2)証拠方法
甲第1号証 :特開平5-52721号公報
甲第2号証 :特開平9-199069号公報
甲第3号証 :特開平6-232238号公報
甲第4号証 :特開平1-187826号公報
甲第5号証 :「NEW APPLICATIONS OF FOCUSED ION BEAM TECHNIQUE
TO FAILURE ANALYSIS AND PROCESS MONITORING OF
VLSI[集束イオンビーム技術の故障解析の新用途
及びVLSIのプロセスモニタリング]」
(K. Nikawa 1989
,International Reliability Physics Symposium
, 43-52)
甲第6号証 :特開平2-15648号公報
甲第7号証 :特開平3-284826号公報
甲第8号証 :特開平2-294644号公報
甲第9号証 :「Cross-sectional transmission electron microscopy
of precisely selected regions from semiconductor
devices [半導体デバイスの正確に選択した領域の
断面透過型電子顕微鏡]」
(ECG Kirk他、Inst.Phys.Conf.Ser. No100:
Section 7 ,1989, 501-506)
甲第10号証:「Micromachining and Device Transplantation Using
Focused Ion Beam[集束イオンビームを
使用するマイクロマシニング及び
デバイス移植]」(Tohru Ishitani 他、Japanese
Journal of Applied Physics, Vol. 29, No. 10,
October, 1990, pp. 2283-2287)

(3)証拠等の記載
(3-1)甲第1号証
請求人が提出した本件特許の出願日前に頒布された甲第1号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は、当審で付与したものである。以下、同様である。)

(甲1-1)「【0002】
【従来の技術】従来技術としてマイクロスコピー・オブ・セミコンダクティング・マテリアルズ・コンファレンス、オックスフォ-ド大学(1989年)、501?506頁(Microscopy of Semiconducting Materials Conference,Oxford,(1989)pp.501-506)に開示される技術がある。この文献では、透過型電子顕微鏡(TransmissionElectron Microscope :略してTEM)分析が可能な薄膜試料を集束イオンビーム(Focused Ion Beam :略してFIB)を利用して切り出した例が述べられている。
【0003】上記文献の開示内容によれば、図7に示すように、半導体集積回路から長さ数mmで幅100 ?500 μmのチップ71をダイアモンド・ソーを用いて切出し、銅製のグリッド72( TEM観察用標準グリッド)に固定し、その後、FIBを利用してチップ71に薄膜試料73を加工・形成し、その薄膜試料73を電子ビーム74を用いてTEM観察している。図中、75は矩形開口部である。」

(甲1-2)「【0008】
【課題を解決するための手段】本発明に係る試料の分離方法及び分析方法は、上記目的を達成するため、次のように構成される。
1. 本発明に係る試料の分離方法は、試料の表面に対し、少なくとも2つの異なる角度の方向から集束イオンビームを照射し、試料を集束イオンビームで加工し、試料の一部を分離するもので、試料の一部を分離する前に、外部から導入されたプローブを、分離される試料の一部に接続し、当該分離試料をプローブで支持し、任意の位置に分離試料を搬送し、また分離試料の姿勢を任意の姿勢にするものである。
2. 前記分離方法において、好ましくは、試料の一部とプローブの接続を、集束イオンビーム加工により発生したスパッタ粒子による再付着膜により、又はガス雰囲気中での集束イオンビーム照射により形成したビーム誘起堆積膜により行う。
3. 前記の各分離方法において、好ましくは、集束イオンビーム加工が、反応ガス雰囲気中でのガス支援エッチングである。
4. 前記の分離方法において、好ましくは、試料は半導体ウェハーであり、またプローブは半導体製造プロセスを利用して製造される。
5. 本発明に係る試料の分析方法は、試料の表面に対し、少なくとも2つの異なる角度の方向から集束イオンビームを照射して試料を集束イオンビーム加工し、試料の一部を分離して分析する方法であり、試料の一部を分離する前に、外部から導入されたプローブを、分離される一部に接続し、試料の一部を支持し、プローブによるこの支持状態で、観察手段を用いて、分離された試料の一部の断面を像観察するものである。
6. 本発明に係る更なる試料の分析方法は、試料の表面に対し、少なくとも2つの異なる角度の方向から集束イオンビームを照射して試料を集束イオンビーム加工し、試料の一部を分離して分析する方法であり、試料の一部を分離する前に、外部から導入されたプローブを、分離される一部に接続し、試料の一部を支持し、更に、試料の一部を分離する最中又は分離した後に部分的に薄膜化し、この薄膜部を透過型電子顕微鏡で像観察するものである。
・・・
【0009】
【作用】本発明では、試料基板表面に対し少なくとも二種類の角度からFIB加工することで、試料基板と分析部を含む微小試料とが機械的に分離するように構成される。またこの試料の一部分離の際において、別個に外部から導入したプローブに分離試料を機械的に接続しておくことで、分離試料が保持でき、プローブの移動により試料を任意の位置に運搬することができる。プローブに保持された分離試料は元の試料基板とは別個に、多種の分析装置に搬入して測定することが可能であり、分析に適した形状に再加工することも可能である。・・・」

(甲1-3)「【0010】
【実施例】以下に、本発明の実施例を図1?図6を参照して説明する。図3は、本実施例で用いられるFIB装置の基本構成を示す。液体金属イオン源100から放出したイオンは、コンデンサレンズ101と対物レンズ106によりFIB1となって試料2上に集束される。2つのレンズ101,106の間には、可変アパーチャ102、アライナ・スティグマ103、ブランカ104、デフレクタ105が配置されている。可変アパーチャ102には絞り駆動部102aが、ブランカ104にはブランキング・アンプ104aが、デフレクタ105には偏向制御部105aが、それぞれ付設されている。
【0011】試料2は、2軸(X,Y)方向に移動可能なステージ108上において、このステージ108に装着された試料回転装置120の回転軸に固定されている。ステージ108の移動は、ステージ制御部108aに基づきX及びYの各駆動部を介して行われる。この実施例で、試料回転装置120の回転軸はステージ108と平行に設定されている。
【0012】107はガス源で、ガス源107から発生したガス(W(CO)_(6 ))は、ガスノズル8によりFIB1の試料照射部の近傍に導かれる。ガス源107はガス源制御部107aにより制御される。FIBの照射により試料2の表面から発生した二次電子は、二次電子検出器109により検出される。二次電子検出器109からの二次電子信号をA/D変換し、FIBの偏向制御と同期してコンピュータ110の画像メモリに取り込むことにより、CRT110a上に走査イオン顕微鏡(Scanning Ion Microscope: 略してSIM) による像が表示される。
【0013】マニピュレータ112は、図4に示すように、3枚のバイモルフ型圧電素子30を90°ずつ方向を回転して接続し、X,Y,Zの3軸の駆動を可能としたものである。マニピュレータの先端には、金属製のプローブ31を装着している。プローブ31の先端部は、板状に加工されている。更に具体的に、プローブ31は、50μm以上の厚みを有するホルダー部と、このホルダー部の片面に先端から突出して設けられた10μm以下の厚みを有するプローブヘッドから構成されることが望ましい。図3に示すように、マニピュレータ112は、マニピュレータ制御部112aを備えている。」

(甲1-4)「【0015】次に、上記構成を有するFIB装置を用いて試料2を加工する。図1は、試料2から分析対象部を含む試料の一部を分離する工程(a)?(g)を示した斜視図である。この実施例で、試料2はシリコン基板であり、分離された試料の一部を、以下「分離試料」という。以下に、分離の手順を工程(a)?(g)に従って説明する。
【0016】(a) 試料2の表面に対しFIB1が直角に照射するように試料2の姿勢を保ち、試料2上でFIB1を矩形に走査させ、試料表面に所要の深さの角穴3を形成する。
(b) 試料2の表面に対するFIB1の軸が約70°傾斜するように、試料2を傾斜させ、底穴4を形成する。試料2の傾斜角の姿勢変更は、試料回転装置120によって行われる。
(c) 試料2の姿勢を変更し、試料2の表面がFIB1に対し再び垂直になるように試料2を設置し、切欠き溝5を形成する。
(d) マニピュレータ112を駆動し、プローブ31の先端を、試料2の分離する部分に接触させる。接触したか否かについての判定方法については、後述される。
(e) ガスノズル6からW(CO)_(6 )ガス7を供給し、FIB1を、プローブ31の先端部を含む領域に局所的に照射し、堆積膜8を形成する。接触状態にある試料2の分離部分とプローブ31の先端は、堆積膜8で接続される。試料2の分離部分とプローブ31の接続については、ガス雰囲気中での集束イオンビーム照射により形成したビーム誘起堆積膜により、又は集束イオンビーム加工により発生したスパッタ粒子による再付着膜により行うことができる。
(f) FIB1で残りの部分を切欠き加工し、試料2から分離試料9を切り出す。切り出された分離試料9は、接続されたプローブ31で支持された状態になる。
(g) マニピュレータ112を駆動し、分離試料9を所要の箇所に移動させる。
上記実施例において、FIB1の加工エリアを指定する際、予め加工エリアを含む領域をFIB1でラスタ走査し、試料2の表面から発生した二次電子(代表的な二次粒子)の信号量を輝度信号として画像化したSIM像を利用した。二次電子の検出は、二次電子検出器109によって行われる。SIM像を利用した試料表面の方向(X,Y軸方向)における加工エリアの設定は比較的簡単に行うことができる。しかし、プローブ31と試料2との接触に関する判定は、Z軸方向の情報が必要であるため、困難である。すなわち、FIB1のフォーカス状態の違いによりZ軸方向に関するある程度の情報が得られるが、ミクロンレベルの判定は困難である。」

(甲1-5)「【0018】切り出した分離試料9は、その後、その断面を再びFIB加工(微細ビームによる仕上げ加工)し、断面構造をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察した。・・・
【0019】図2は、前記実施例と同様の手法で試料2の一部を分離し、その分離試料9をTEM観察する目的で薄膜化した実施例を示す斜視図である。工程(a)に示されるように分離試料9の一部9aの肉厚が予め薄くされる。更に工程(b)で、分離試料9は、薄肉部9aをFIB1で薄膜化される。分離試料9の一部9aが、TEMの試料になる。本実施例によれば、試料2の任意の場所からTEM試料を容易に取り出すことができる。従って、試料2である基板を割る必要がない。」

(甲1-6)「【0022】図6(a)?(b)は、本発明による分離方法を、トランジスタ素子の移植方法に利用する実施例を説明するための工程図である。移植しようとするトランジスタ素子は、予め本発明による分離方法を利用してチップから分離しておく。以下に、移植の手順を述べる。
【0023】(a) 移植先の基板部分に角穴61をFIB加工する。
(b) 加工角穴61に、分離試料63(例えばトランジスタ等)をマニピュレータを駆動して運搬し、プローブヘッドをFIBにより切断して分離試料63を角穴61内に残す。
(c) 分離試料63上の電極とチップ基板上の配線60を、移植配線62により電気的に接続する。移植配線62は分離試料63と同様にマニピュレータにより運搬し、接続はW(CO)_(6) ガス雰囲気でのFIB局所照射によるW堆積膜で行う。
【0024】以上のように、本発明による分離方法を利用すれば、別のチップ内に形成されたデバイスを容易に分離し、運搬し、他のチップ内の所要の箇所に融合させることができる。」

(3-2)甲第2号証
請求人が提出した本件特許の出願日前に頒布された甲第2号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(甲2-1)「【0004】また、他の従来例として、メッシュに試料を貼り付けた上で該メッシュをFIB装置の試料台に貼り付けるタイプがあるが、非常に小さい試料を接着剤を用いてメッシュに貼り付ける際に、接着剤が回り込んで観察面に付着する等の不具合が発生し易い為、作業性が悪かった。また、作製した試料を貼り付けたメッシュを試料台に固定する場合、メッシュ自体が薄い為、試料台上に垂直に立てることが難しい。メッシュ自体が傾倒していてもその分試料台を傾けることにより垂長方向(ビームが直交する方向)に位置決めすることは可能であるが、良いTEM試料を作製する為には、FIB装置からのエッチング用のイオンビームの回り込み等を考慮し、垂直姿勢から数度傾けてFIB装置によるエッチングを受け得るようにする必要がある。つまり、この従来例は、メッシュを用いる為、接着剤を付する位置が試料の観察部分に回り込み易く、またメッシュ自体が薄いので傾倒し易く、FIB装置の試料台上に所望の角度で固定することが難しいという問題があった。
【0005】本発明は上記に鑑みてなされたものであり、試料ホルダ-を装置取付部と試料作製台とから構成し、切り出した小片試料をこの試料作製台に取り付けたままFIB装置による加工が行なえ、加工終了後に装置取付部と試料作製台とを容易に合体させることができる試料ホルダーを提供することを目的としている。これにより試料を何度も付け外しする必要がなくなり、作業が容易に短時間で行なえ、試料作製歩留りも向上する。また、試料作製台への試料の取り付けは、そのまま接着剤などにより行えるため、別部材としてのメッシュを使う必要がなくなる。従って、薄いメッシュを使う場合の不具合がなくなる。」

(甲2-2)「【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明のTEM用試料ホルダーについて説明する。図1(a) (b) は本発明の一形態例の試料ホルダーの構成図、図2(a) (b) 及び(c) は試料取付け状態説明図、試料加工後の状態説明図、及び試料を保持した試料作成台と装置取付部とを合体させた状態図である。本発明のTEM用試料ホルダ-10は、試料作製台11と装置取付部12とにより構成され、両者は組立分解自在となっている。図1(a) が本発明のTEM用試料ホルダ-の組立状態の全体図である。この試料ホルダ-10は、図1(b) のように試料作製台11と装置取付部12とに分解することができる。図2(a) に示す様に、試料13を試料作製台1の端面中央部に接着剤等によりを取り付け、この状態で図2(b) のように図示しないFIB装置により試料13を加工する。符号14はFIB装置による加工後のTEM観察部を示す。」

(甲2-3)「【0009】本発明では、従来例の様にメッシュを用いないので、接着剤を付する位置が、試料の観察部分の反対側となり、また試料は厚い試料作製台11に固定されるので、その後のFIB装置の試料台への垂直固定も容易となり、加工精度を高めることができる。TEMを用いた試料の観察方法自体は容易であるが、それに先立つ試料作製作業が極めて困難であり、本発明により初めて試料作製作業性と、作製後の試料をホルダーに保持する作業性を向上したものである。」

(3-3)甲第3号証
請求人が提出した本件特許の出願日前に頒布された甲第3号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(甲3-1)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、半導体、磁性体、超電導体材料などの極薄膜構造から成る製品デバイスを初めとする各種試料を、各作製工程における処理直後の状態を正確に保ったまま、もしくは自由な環境下において複数の処理装置間で搬送し、その場動的に任意方向より原子レベルで多角的にかつ迅速にオンライン検査を初めとする処理装置における各種処理を行なうための試料処理装置および試料処理方法に関する。」

(甲3-2)「【0013】
【実施例】(実施例1)以下、本発明の実施例を説明する。図1は本発明の一実施例を示す試料搬送装置の基本構成図である。本実施例においては処理装置として成膜装置(スパッタ装置)と評価装置(TEM)を取り上げた。また制御する環境としては試料温度を取り上げた。試料搬送装置は、試料ホルダ本体1、トランスファロッド9、チャック10、トランスファチャンバ23、バッテリー、または太陽電池駆動の可搬型イオンポンプ24、液体窒素シュラウド(shroud)25、チャンバ電流導入端子26、リード線27、リード線を巻き取るためのリール28、中間排気室30、ゲートバルブ31から構成されている。前記構成部品は図8に示す台車53および架台54に搭載される。トランスファチャンバ23と成膜装置29あるいは評価装置は、成膜装置29あるいは評価装置側のゲートバルブ32と中間排気室30の間で連結される。中間排気室30は連結部にコンフラットフランジを備えており、該フランジ径はゲートバルブ32の径に合わせて変換される。中間排気室30は高速排気を可能とするためできる限り小体積なものとし、ここにターボ分子ポンプ等の排気容量の大きい粗引きポンプを接続する。トランスファロッド9により試料ホルダ本体1をトランスファチャンバ23と成膜装置29あるいは評価装置との間で移動させる。またトランスファロッド9の先端にあるチャック10により、試料ホルダ本体1とトランスファロッド9との物理的かつ電気的着脱を行なう。チャンバ電流導入端子26は外部温度制御回路と接続され、試料ホルダ本体1に設置される試料加熱用ヒータ或いは冷却用素子に通電される。バッテリー駆動の可搬型イオンポンプ24と液体窒素シュラウド25は、試料搬送装置を成膜装置29あるいは評価装置と連結している時、および成膜装置29と評価装置間で移動している時のトランスファチャンバ23内の真空排気を行なう。
【0014】試料ホルダ及びトランスファロッドとの接続部の詳細を、図2と図3にそれぞれ断面図と平面図で示す。試料は試料台6上に固定される。この試料ホルダは2軸傾斜機構および試料温度制御手段を持つ。2軸傾斜機構では、試料台6が試料台軸周りと、それに直交する軸周りに回転することによって2軸傾斜が成される。先ず、試料台軸周りの傾斜動作を以下に示す。試料ホルダ本体1には、軸2とそれに連動したバネ3及び傾斜板4が付けられており、軸受け5を矢印A方向に押すと、軸2と傾斜板4が軸受け5に押され、バネ3が伸びる。試料およびヒータを載せる試料台6が傾斜板4と接触する部分は曲率を持っており、傾斜板4が軸2と共に矢印Aの方向に押されると試料台6は矢印B方向に回転し傾斜する。この時試料台6は、傾斜用バネ7の弾性力を受けている試料台押さえ8によって下側から矢印Bの逆方向への復元力を受ける。そこで、軸受け5を試料ホルダ本体1から離すと、つまり矢印Aの逆方向に動かすと、バネ3により傾斜板4が矢印Aの逆方向に引っ張られ、試料台押さえ8により試料台6の傾斜が元に戻る。もう1つの前記とは直交する軸方向の傾斜は、ピン11を図3の紙面に垂直方向に押して試料ホルダ本体1を回転することにより成される。前記2軸傾斜機構のうち、試料台6、傾斜用バネ7、試料台押さえ8は、後述のように試料台6上に固定されるヒータへの温度制御用電流導入機構と兼用されるので、従来の試料加熱ホルダで用いられたような電流導入線は無い。従って、試料台6のスムーズな傾斜動作が可能である。」

(甲3-3)「【0035】(実施例6)本発明をSi-ULSI等の真空一貫プロセスラインに適用した場合の実施例を図9を用いて以下に示す。試料であるSiウエハは、ウエハテスト室46、ウエハ前処理室47、薄膜形成室48、不純物導入室49、パターン形成室50から成る真空一貫プロセスラインで各プロセスを受けることにより、DRAM、BiCMOS等のデバイスの形態に加工される。前記各プロセス室におけるプロセス条件の仕様からのずれ、あるいはプロセス不良発生の有無をチェックすることは、最終的なデバイス形態での不良を未然に防ぐために必要不可欠である。各プロセスにおけるウエハ状態を正確に評価するために、本発明の試料搬送装置を以下のように用いる。各プロセス室には試料搬送装置40が接続する共通ポートを設けておき、該ポートからウエハを抜き取る。この時、試料搬送装置のトランスファロッドの先端には、実施例1で用いた2軸傾斜試料加熱ホルダではなく、Siウエハ対応の試料ホルダを設置しておく。次に、試料搬送装置で評価装置52へ搬送する。場合によっては試料をウエハ加工装置51に搬送し、劈開やイオンシニング等によってウエハを評価可能な形状に加工できるものとする。これは装置によっては規格の大きさのウエハを挿入することができないことがあるからである。またTEMでは、ウエハ状態では厚すぎて観察できないのでイオンシニングによって薄膜化する必要があることもある。また試料薄膜の積層構造を走査電子顕微鏡(SEM)やオージェ電子分光装置で分析する場合には、ウエハの断面を劈開により作り、観察する。評価装置がTEMである場合には、ウエハ加工装置51内に備えられたマニピュレータによって、加工された試料をSiウエハ対応の試料ホルダから実施例1で用いた2軸傾斜試料加熱ホルダに載せ替える。但しこうしたウエハ加工工程を経ることにより、一部の環境を連続的に維持することができなくなることもあり得るが、なお他の環境は維持可能である。上記加工や試料の載せ替えが不要な場合は、ウエハ加工装置51を経由せず直接評価装置52へ搬送する。」

(甲3-4)「【0039】
【発明の効果】本発明を用いることにより、真空度、温度等の環境を制御しながら目的の試料を複数の処理装置間で搬送可能となる。更に例えばスパッタ、CVD、MBE等の各種の成膜装置で作製した試料における、結晶構造、元素組成、結合状態などを作製直後の状態を保ったまま、その場動的に透過電子顕微鏡、2次イオン質量分析装置、光電子分光装置等の各種の評価装置により多角的に分析することができる。さらに、本発明は各種のプロセス装置および評価装置にフレキシブルに連結可能なので、Si-ULSIを始めとする製品デバイスの作製プロセスラインにおけるプロセス条件のオンライン検査に用いることもできる。」

(3-4)甲第4号証
請求人が提出した本件特許の出願日前に頒布された甲第4号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(甲4-1)「2.特許請求の範囲
(1)試料に集束イオンビームを照射するイオンビーム照射系と、試料をX-Y-Z方向に駆動する試料台、そして、イオンビーム照射位置に金属有機化合物ガスを吹き付けるガス銃と、二次電子検出器を備えたイオンビーム加工装置において、試料上に配置された単数又は複数の深針を、試料室外から自由にX-Y-Z方向に駆動することができることを特徴としたイオンビーム加工装置。」(1頁左下欄4?12行)

(甲4-2)「本発明の基本構成は、第1図(当審注:「第2図」は「第1図」の誤記)のイオンビーム加工装置であり、図中、14はICソケット付ホルダー、15はパターンジェネレータ、16は深針、17はXYZポジショナである。イオン源lより引き出され、加速されたイオンビーム12は、対物レンズ8により集束され、XYデフレクタ9でIC試料上を走査する。イオン励起二次電子は、検出器11で検出され、CRT27で像観察し、加工場所の位置出しをする。加工領域を設定し、イオンビームエツチングと、イオンビームCVDで配線の変更を行い、動作解析場所へ、ブロービングバットを形成する。次に、CRT27で像観察をしながら、IC試料上の深針16を、概ブロービングパソトへ接触させる。そして、ICソケット付ホルダー14に取り付けたIC試料13へ、外部のパターンジェネレータ15から信号を入力し、深針16の信号を観測することにより、動作解析することができる。」(2頁右下欄最下行?3頁左上欄16行)

(甲4-3)第1図には、探針16を備えたXYZポジショナをイオンビーム加工装置の試料室の壁に設けることが記載されている。

(3-5)甲第5号証:
請求人が提出した本件特許の出願日前に頒布された甲第5号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(甲5-1)「The apparatus used is the SMI8100 focused ion beam system for IC development, manufactured by Seiko Instruments Inc.[1,2] ... A schematic diagram of the system is shown in Fig.2. ... The sample stage has five axes - X,Y,Z, tilt and rotation. [日本語訳: 使用された装置は、セイコーインスツル株式会社製のIC開発用SMI8100集束イオンビームシステムである[1,2]。・・・このシステムの模式図を図2に示す。・・・試料ステージは、X,Y,Z,傾斜及び回転の5つの軸を有している。](43頁右欄3行?44頁左欄15行)

(3-6)甲第6号証
請求人が提出した本件特許の出願日前に頒布された甲第6号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(甲6-1)「位置決めステージ3は、観察試料4を載置し、垂直面内で傾き角を自由に設定できるチルトステージ3a,チルトステージ3aを載置し、水平面内で自由に回転角を設定可能なθステージ3b,θステージ3bを載置し、垂直上下方向に自由に位置を設定可能なZステージ3c,Zステージ3cを載置し、水平面内で一軸方向に任意に位置決め可能なXステージ3dおよび、Xステージ3dと水平面内で直交する方向に任意に位置決め可能なYステージ3eの5軸から構成されている。・・・また位置決めステージ3は、搬送ステージ5に載置され、レール6上をスライド可能な構造となっている。」(2頁右下欄16行?3頁左上欄9行)

(甲6-2)「真空室1の一部には、微小加工手段として集束イオンビーム加エユニット7、加工断面観察手段として走査型電子顕微鏡ユニツト8が取付けられている。搬送ステージ5は、これら集束イオンビーム加工ユニット7、および走査型顕微鏡ユニット8の作用位置間をレール6によってスライドできる。」(3頁左上欄18行?右上欄4行)

(3-7)甲第7号証
請求人が提出した本件特許の出願日前に頒布された甲第7号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(甲7-1)「集束イオンビーム加工装置90は第3図に示す構造である。イオン銃41からでたイオンビーム42はイオン光学系43により、集束イオンビーム44に集束され、試料1の加工位置または加工位置近傍を走査しながら照射する。試料1は試料ホルダ2に保持されており、さらに試料ホルダ2は集束イオンビーム装置の加工試料ステージ40に載置されている。加工試料ステージ40は3次元的(XYZ)に移動可能になってまり、外部からの移動データにより移動可能になっている。」(3頁右上欄6?16行)

(甲7-2)「集束イオンビーム加工は真空状態になっている真空チャンバー31内で行われる。試料1の出し入れは真空チャンバー31に設けられた試料出し入れ口32のドアを開けておこなわれる。試料出し入れ口32の大気側には予備真空チャンバー49が取り付けられている。予備真空チャンバー49には試料1の出し入れのための開閉窓50と試料1を保持している試料ホルダ2を真空チャンバー31内の加工試料ステージ40を載置する移動装置34が備えられている。」(3頁左下欄8?18行)

(3-8)甲第8号証
請求人が提出した本件特許の出願日前に頒布された甲第8号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(甲8-1)「6.上記の運搬工程は、試料を搭載したステージ機構と、予め作製しておいたデバイスを保持して移送するマニピュレーターとを組合せ使用することにより、試料の任意場所にデバイスを運搬することからなることを特徴とする特許請求の範囲第1項から第5項のいずれかに記載のデバイス移植方法。」(2頁左上欄3?9行)

(甲8-2)「第1図(a)はFIB1の照射によるスパッタリング加工の様子を示したもので、参考のためその上面図を第1図(e)に示す。・・・また、移植デバイス5の位置ずれを緩和するため、移植デバイスの落とし込み穴4を開けておく。これは、試料表面の絶縁膜の浅いスパッタリング加工である。第1図(b)は、移植デバイス5を落とし込み穴4上に運搬する手法を示したものである。・・・移植テバイス5はデバイス・フレームキャリア6に細いアーム21を介して固定されている。このフレーム6は第2図中の3軸マニピュレーター109によって保持されている。従って、マニピュレーター109及びステージ111を駆動することで、移植デバイス5を所望場所(ここでは落とし込み穴4)上に運搬することができる。運搬後、FIB1をアーム21に照射し、キャリアフレーム6からデバイス5を切り難し,穴4中に定置させる。」(4頁右上欄15行?右下欄10行)

(甲8-3)「基板上での移植場所及び基板面に対する移植方向を変更したい場合には、フレームキャリア6のアーム21と移植デバイスとを両者間に堆積膜を形成することにより再び機械的に接続し,ついで移植デバイスを基板に密着させている堆積膜7をFIB照射によるスパッタリングにより除去せしめることにより,再びマニピュレーターによる移植デバイスの移動を可能とし,再度基板上の新しい位置での新しい向きでの移植を行うことができる。
上記実施例は、微細なデバイスを試料上の任意の場所に任意の向きに移植できることを示しており、例えば,検出すべき物理量を電気信号に変換して検出するセンサー素子を測定用プローブの先端に移植せしめたり、直接被測定試料上の測定点近傍に移植せしめることが可能となるため,被測定試料上の物理量の測定精度及び検出感度の向上が期待できる。」(6頁右上欄18行?左下欄15行)

(甲8-4)第2図又は第11図には、ステージ111はステージ制御で駆動され、マニピュレーター109は3軸マニピュレーター制御で駆動されることが描かれている。

(3-9)甲第9号証
請求人が提出した本件特許の出願日前に頒布された甲第9号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(甲9-1)「2. SPECIMEN PREPARATION
The first stage in specimen preparation for TEM is to select the region of interest on the wafer or clip using an optical microscope or scanning electron microscope. A slice containing the electronic device selected for analysis is then cut from the using a low speed, low deformation diamond wafering saw. The slices are a few mm long, and 100-500μm wide. Thinner slices are preferred because the subsequent milling time in the SIM is less.
The slice is then cut to a length of approximately 2 mm for mounting on a 3 mm diameter copper slot grid. It is mounted using epoxy resin with the region of interest over the slot and lying perpendicular to the grid plane, as shown in Fig.2. These steps are performed under a low power binocular microscope.
The specimen is mounted in the scanning ion microscope so that the ion beam impinges normal to the original surface of the circuit. The surface is imaged to locate the precise region of interest. Trenches are cut inwards from both edges of the slice to within a few microns on either side of the selected device resulting a bar of material bisecting a trench spanning the specimen. [日本語訳:2.試料調製
TEM用試料調製の第一段階は光学顕微鏡又は走査型電子顕微鏡を使用するウエハ又はチップ上の問題となる領域の選択である。次いで、低速、低変形のダイヤモンド・ウエハ・ソウを使用して、分析のために選択した電子デバイスを含むスライスがチップから切り出される。スライスは数mm長、100-500μm幅である。後続のSIMにおけるミリングの時間を減らすため、スライスは薄い方が好ましい。
次に、スライスを3mm径の銅スロット・グリッドへ載置させるため、約2mmの長さに切断する。スライスは、図2に示すとおり、問題の領域がスロット上を横切るように、また、グリッド平面に垂直に、エポキシ樹脂を使用して載置する。これらの工程は、低倍率双眼顕微鏡下で行う。
試料は、イオンビームが回路の元の表面に対し垂直に衝突するように、走査型イオン顕微鏡中に載置される。表面を画像化し、問題の領域に正確に位置決めする。選択したデバイスの各面において、スライスの両端から内部へ向けて数ミクロンに至る溝を作り、これにより試料全体にわたる溝を二等分する材料のバーができる。]」(503頁1?16行)

(3-10)甲第10号証
請求人が提出した本件特許の出願日前に頒布された甲第6号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(甲10-1)「§3. Device Transplantation(TP)
3.1 Device TP process and its feasibility experiment
Device TP comprises three processes : (i) TP -device fabrication , (2) TP-device manipulation . i.e., the TP-device is transferred to any desired place on the substrate, and (3) the attachment of the TP-device to the substrate . Here , mechanical or electrical connections between the device and substrate are carried out .
A feasibility experiment on device TP was performed . A schematic diagram of the experimental process is shown in Fig . 5 . Let us think of the end tip as a dummy device , which should be transplanted on the substrate . First , the dummy TP-device is transferred to the desired place on the substrate . A simple xyz micromaipulator composed of three bimorph-type piezoelectric actuators was used for TP-device transfer . Second , the substrate area near the TP-device is bombarded by a slow-speed scanning FIB . Here , the y-component of the FIB scanning direction is opposite to the device side wall . This enable most of the sputtered atoms to be directed toward the TP-device side wall. Redeposition is used to attach the TP-device to the substrate .[日本語訳:§3.デバイス移植(TP)
3.1 デバイスTPのプロセス及びその実施可能性の実験
デバイスTPは次の3つのプロセスから成る。(1)TP-デバイスの製作、(2)TP-デバイスの操作、つまり、TP-デバイスの基板上の望ましい場所への移転、及び(3)TP-デバイスの基板への付着である。ここで、デバイスと基板との間の機械的又は電気的接続が行われる。
デバイスTPの実施可能性の実験が行われた。実験のプロセスの模式図を図5に示す。先端部を、基板に移植されるべきダミーのデバイスと考える。第一にダミーのTP-デバイスが基板上の望ましい場所に移植される。3つのバイモルフ型の圧電アクチュエーターから成る単純なxyzマイクロマニピュレーターがTP-デバイスの移転に使用された。第二に、TP-デバイス付近の基板の領域を低速のスキャニングFIBによって照射する。ここで、FIBのスキャニング方向のy-コンポーネントはデバイスの側壁と反対方向である。このことにより、スパッタされた原子の殆どをTP-デバイスの側壁へと向かわせることができる。TP-デバイスを基板に付着させるために再堆積が使用される。」(2584頁右欄下から9行?2285頁左欄13行)

第4 被請求人の主張及び証拠
(1)被請求人の主張
本件無効審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担するとの審決を求め、無効審判請求、口頭審理(口頭審理陳述要領書及び第1回口頭審理調書を含む)において、下記「(2)証拠方法」に示した証拠を提出して、本件発明15は、請求人の提出した甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、又は、甲第1?3号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許が受けることができないものではなく、本件特許に無効理由は存在しない。

(2)証拠方法
乙第1号証 :特許第2774884号公報
乙第2号証 :「精密工業会誌Vol.67,2001年
12月号」の「2001年度(第21回)
精密工学会技術賞受賞業績の紹介」欄の
「10μmレベルの微小片を直接摘出する
電子顕微鏡用マイクロサンプリング技術の
開発」平成13年12月5日
社団法人精密工学会発行
乙第3号証 :「先端計測技術分野 科学技術・研究開発の
国際比較 2008版」の表紙、88、奥付、
平成20年2月、独立行政法人 科学技術振興機構
研究開発戦略センター発行
乙第4号証 :電波新聞 1999年2月27日発行
乙第5号証 :特開平5-290787号公報
乙第6号証 :特開平6-176729号公報
乙第7号証 :特開平6-162982号公報

第5 当審の判断
(1)本件発明
本件無効審判請求の対象となった本件発明15は、その特許請求の範囲からみて、次の技術的事項により特定されるものである。

「【請求項15】
3次元方向に移動でき、試料基板を載置できる試料ステージと;
集束イオンビーム照射領域にデポジション膜を形成する元材料ガスを供給するデポガス源と;
試料基板から摘出された試料片をデポジション膜により固定でき、試料ステージの移動により集束イオンビーム照射領域内に移動する試料ホルダと;
デポジション膜により試料片と接続できるプローブを有し、試料室壁に設置され、試料基板から摘出された試料片を試料ホルダに移し変える移送手段と;
試料基板、及び試料ホルダに固定された試料片に対して集束イオンビームを照射し、前記試料基板、及び前記試料片を加工する照射光学系と;
試料ステージ、試料ホルダ、及びプローブを、真空状態である内部に設置する試料室と、を備え;
デポジション膜により試料ホルダに固定され、集束イオンビーム照射による薄壁加工を施された試料片を作製する試料作製装置。」

(2)甲第1号証記載の発明
上記摘記事項(甲1-1)?(甲1-6)の記載を参照すると、甲第1号証には、
「試料2が固定される試料回転装置120が装着され、2軸(X,Y)方向に移動可能なステージ108と、
集束イオンビーム(FIB)1の試料照射部の近傍に導かれ、堆積膜8を形成するガス7を供給するガス源107と、
試料2から切り出された分離試料9と堆積膜8で接続されるプローブ31と、
先端にプローブ31を装着し、プローブ31と接続された分離試料9を所要の箇所に移動させるマニピュレータ112と、
試料2、及び試料2から切り出された分離試料9に、液体金属イオン源100から放出したイオンを集束して集束イオンビーム(FIB)1を照射するコンデンサレンズ101と対物レンズ106とを備え、
分離試料9の薄肉部9aを集束イオンビーム(FIB)1で薄膜化するFIB装置。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

(3)本件発明15と引用発明との対比
(i)上記甲第1号証の摘記事項(甲1-2)に「【0009】・・・本発明では、試料基板表面に対し少なくとも二種類の角度からFIB加工することで、試料基板と分析部を含む微小試料とが機械的に分離するように構成される。」と記載されていることから、引用発明の「試料2」が、本件発明15の「試料基板」に相当する。
そうすると、引用発明の「試料2が固定される試料回転装置120が装着され、2軸(X,Y)方向に移動可能なステージ108」と、本件発明15の「3次元方向に移動でき、試料基板を載置できる試料ステージ」とは、ともに、「複数方向に移動でき、試料基板を載置できる試料ステージ」である点で共通する。

(ii)例えば、特開平8-83785号公報に、
「【0025】次に、図2に示すように、レジストパターン9をマスクとして導電膜30をエッチングしてゲート電極3を形成する。このとき、エッチングガスにCHF_(3)やHBrなどのガスを混ぜることによりエッチング中に発生する堆積物からなるデポジション膜6をゲート電極3およびレジストパターン9の側壁に500?1000オングストローム程度形成する。」と記載されているように、引用発明の「堆積膜8」は「デポジション膜」を意味することから、引用発明の「集束イオンビーム(FIB)1の試料照射部の近傍に導かれ、堆積膜8を形成するガス7を供給するガス源107」が、本件発明15の「集束イオンビーム照射領域にデポジション膜を形成する元材料ガスを供給するデポガス源」に相当する。

(iii)引用発明の「試料2から切り出された分離試料9と堆積膜8で接続されるプローブ31」は、その構成・機能からみて、本件発明15の「デポジション膜により試料片と接続できるプローブ」に相当する。
そして、引用発明の「マニピュレータ112」は、先端にプローブ31を装着し、プローブ31と接続された分離試料9を所要の箇所に移動させることから、引用発明の「先端にプローブ31を装着し、プローブ31と接続された分離試料9を所要の箇所に移動させるマニピュレータ112」と本件発明15の「移送手段」とは、「デポジション膜により試料片と接続できるプローブを有し、試料基板から摘出された試料片を移動させる移送手段」である点で共通する。

(iv)上記甲第1号証の摘記事項(甲1-4)に、
「【0016】(a) 試料2の表面に対しFIB1が直角に照射するように試料2の姿勢を保ち、試料2上でFIB1を矩形に走査させ、試料表面に所要の深さの角穴3を形成する。
(b) 試料2の表面に対するFIB1の軸が約70°傾斜するように、試料2を傾斜させ、底穴4を形成する。試料2の傾斜角の姿勢変更は、試料回転装置120によって行われる。
(c) 試料2の姿勢を変更し、試料2の表面がFIB1に対し再び垂直になるように試料2を設置し、切欠き溝5を形成する。
・・・
(f) FIB1で残りの部分を切欠き加工し、試料2から分離試料9を切り出す。・・・」と記載され、さらに同摘記事項(甲1-5)に、
「【0018】切り出した分離試料9は、その後、その断面を再びFIB加工(微細ビームによる仕上げ加工)し、断面構造をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察した。・・・
【0019】図2は、前記実施例と同様の手法で試料2の一部を分離し、その分離試料9をTEM観察する目的で薄膜化した実施例を示す斜視図である。工程(a)に示されるように分離試料9の一部9aの肉厚が予め薄くされる。更に工程(b)で、分離試料9は、薄肉部9aをFIB1で薄膜化される。」と記載されていることから、引用発明の「コンデンサレンズ101と対物レンズ106」は、試料2、及び試料2から切り出された分離試料9に、液体金属イオン源100から放出したイオンを集束した集束イオンビーム(FIB)1を照射し、試料2、及び試料2から切り出された分離試料9を加工をしていることは明らかである。
そうすると、引用発明の「試料2、及び試料2から切り出された分離試料9に、液体金属イオン源100から放出したイオンを集束して集束イオンビーム(FIB)1を照射するコンデンサレンズ101と対物レンズ106」と、本件発明15の「照射光学系」とは、「試料基板、及び試料片に対して集束イオンビームを照射し、前記試料基板、及び前記試料片を加工する照射光学系」である点で共通する。

(v)上記甲第6号証の摘記事項(甲6-2)に、
「真空室1の一部には、微小加工手段として集束イオンビーム加エユニット7、加工断面観察手段として走査型電子顕微鏡ユニツト8が取付けられている。搬送ステージ5は、これら集束イオンビーム加工ユニット7、および走査型顕微鏡ユニット8の作用位置間をレール6によってスライドできる。」と記載され、また、上記甲第7号証の摘記事項(甲7-2)に、
「集束イオンビーム加工は真空状態になっている真空チャンバー31内で行われる。試料1の出し入れは真空チャンバー31に設けられた試料出し入れ口32のドアを開けておこなわれる。試料出し入れ口32の大気側には予備真空チャンバー49が取り付けられている。予備真空チャンバー49には試料1の出し入れのための開閉窓50と試料1を保持している試料ホルダ2を真空チャンバー31内の加工試料ステージ40を載置する移動装置34が備えられている。」と記載されているように、FIB装置の真空室に、試料用のステージを設けることは技術常識であり、さらに、引用発明のFIB装置は、ステージ108の試料回転装置120に、試料2が固定され、プローブ31と接続された分離試料9の薄肉部9aを集束イオンビーム(FIB)1で薄膜化することから、引用発明のFIB装置の真空室に、ステージ108とプローブ31が設けられていることは自明な事項である。
そうすると、引用発明の「FIB装置」と、本件発明15の「試料作製装置」とは、「試料ステージ、及びプローブを、真空状態である内部に設置する試料室」を備えている点で共通する。

(vi)引用発明のFIB装置は、分離試料9の薄肉部9aを集束イオンビーム(FIB)1で薄膜化することから、引用発明の「FIB装」と、本件発明15の「試料作製装置」とは、「集束イオンビーム照射による薄壁加工を施された試料片を作製する試料作製装置」である点で共通する。

そうすると、本件発明15と引用発明とは、
「複数方向に移動でき、試料基板を載置できる試料ステージと;
集束イオンビーム照射領域にデポジション膜を形成する元材料ガスを供給するデポガス源と;
デポジション膜により試料片と接続できるプローブを有し、試料基板から摘出された試料片を移動させる移送手段と;
試料基板、及び試料片に対して集束イオンビームを照射し、前記試料基板、及び前記試料片を加工する照射光学系と;
試料ステージ、及びプローブを、真空状態である内部に設置する試料室と、を備え;
集束イオンビーム照射による薄壁加工を施された試料片を作製する試料作製装置。」
である点で一致し、次の相違点(あ)?相違点(か)で相違する。

・相違点(あ)
複数方向に移動でき、試料基板を載置できる試料ステージが、本件発明15では、「3次元方向に移動でき、試料基板を載置できる試料ステージ」であるのに対して、引用発明では、試料2が固定される試料回転装置120が装着され、2軸(X,Y)方向に移動可能なステージ108である点。

・相違点(い)
本件発明15では、「試料基板から摘出された試料片をデポジション膜により固定でき、試料ステージの移動により集束イオンビーム照射領域内に移動する試料ホルダ」を備えているのに対して、引用発明では、そのような構成を備えていない点。

・相違点(う)
デポジション膜により試料片と接続できるプローブを有し、試料基板から摘出された試料片を移動させる移送手段が、本件発明15では、「試料室壁に設置され、」試料基板から摘出された試料片を「試料ホルダに移し変える移送手段」であるのに対して、引用発明では、先端にプローブ31を装着し、プローブ31と接続された分離試料9を所要の箇所に移動させるマニピュレータ112であり、どこに設置されるの不明である点。

・相違点(え)
集束イオンビームを照射し、前記試料基板、及び前記試料片を加工する照射光学系が、本件発明15では、試料基板、及び「試料ホルダに固定された試料片」に対して集束イオンビームを照射するのに対して、引用発明では、試料2、及び試料2から切り出された分離試料9に、集束イオンビーム(FIB)1を照射する点。

・相違点(お)
本件発明15では、真空状態である内部の試料室に、「試料ステージ、試料ホルダ、及びプローブ」を設置するのに対して、引用発明では、ステージ108、及びプローブ31を設置する点。

・相違点(か)集束イオンビーム照射による薄壁加工を施された試料片を作製する試料作製装置が、本件発明15では、「デポジション膜により試料ホルダに固定され、」集束イオンビーム照射による薄壁加工を施された試料片を作製する試料作製装置であるのに対して、引用発明では、プローブ31と接続された分離試料9の薄肉部9aを集束イオンビーム(FIB)1で薄膜化するFIB装置である点。

(4)相違点の検討・判断
・相違点(あ)について、
引用発明のステージ108は、試料2が固定される試料回転装置120が装着され、2軸(X,Y)方向に移動可能なステージであるが、FIB装置において、3次元方向に移動でき、試料基板を載置する試料ステージは、FIB装置の分野において周知である。
たとえば、上記甲第4号証の摘記事項(甲4-1)に、
「試料に集束イオンビームを照射するイオンビーム照射系と、試料をX-Y-Z方向に駆動する試料台、そして、イオンビーム照射位置に金属有機化合物ガスを吹き付けるガス銃と、二次電子検出器を備えたイオンビーム加工装置において、試料上に配置された単数又は複数の深針を、試料室外から自由にX-Y-Z方向に駆動することができることを特徴としたイオンビーム加工装置」と記載されている。
上記甲第5号証の摘記事項(甲5-1)に、
「使用された装置は、セイコーインスツル株式会社製のIC開発用SM8100集束イオンビームシステムである[1,2]。・・・このシステムの模式図を図2に示す。・・・試料ステージは、x、y、z、傾斜及び回転の5つの軸を有している。」と記載されている。
上記甲第6号証の摘記事項(甲6-3)に、
「位置決めステージ3は、観察試料4を載置し、垂直面内で傾き角を自由に設定できるチルトステージ34.チルトステージ3aを載置し、水平面内で自由に回転角を設定可能なθステージ3b、θステージ3bを載置し、垂直上下方向に自由に位置を設定可能なZステージ3c,Zステージ3cを載置し、水平面内で一軸方向に任意に位置決め可能なXステージ3dおよび、Xステージ3dと水平面内で直交する方向に任意に位置決め可能なYステージ3eの5軸から構成されている。・・・また位置決めステージ3は、搬送ステージ5に載置され、レール6上をスライド可能な構造となっている。」と記載され、同(甲6-2)に、
「真空室1の一部には、微小加工手段として集束イオンビーム加エユニット7、加工断面観察手段として走査型電子顕微鏡ユニツト8が取付けられている。搬送ステージ5は、これら集束イオンビーム加工ユニット7、および走査型顕微鏡ユニット8の作用位置間をレール6によってスライドできる。」と記載されている。
上記甲第7号証の摘記事項(甲7-1)に、
「集束イオンビーム加工装置90は第3図に示す構造である。イオン銃41からでたイオンビーム42はイオン光学系43により、集束イオンビーム44に集束され、試料1の加工位置または加工位置近傍を走査しながら照射する。試料1は試料ホルダ2に保持されており、さらに試料ホルダ2は集束イオンビーム装置の加工試料ステージ40に載置されている。加工試料ステージ40は3次元的(XYZ)に移動可能になってまり、外部からの移動データにより移動可能になっている。」と記載され、同(甲7-2)に、
「集束イオンビーム加工は真空状態になっている真空チャンバー31内で行われる。試料1の出し入れは真空チャンバー31に設けられた試料出し入れ口32のドアを開けておこなわれる。試料出し入れ口32の大気側には予備真空チャンバー49が取り付けられている。予備真空チャンバー49には試料1の出し入れのための開閉窓50と試料1を保持している試料ホルダ2を真空チャンバー31内の加工試料ステージ40を載置する移動装置34が備えられている。」と記載されている。
そして、引用発明のFIB装置も上記周知のFIB装置もともに、試料を複数の方向に移動可能なステージを有するFIB装置である点で共通し、さらに、上記甲第5号証及び甲第6号証のFIB装置の試料ステージは、3次元の移動のほかに、試料を回転させる移動も備えていることから、引用発明のステージ108において、試料2が固定される試料回転装置120が装着され、2軸(X,Y)方向に移動可能なステージ108に、周知例の構成を採用して、2軸(X,Y)方向のほかに、Z方向にも移動可能に構成することにより、本件発明のごとく、複数方向に移動でき、試料基板を載置できる試料ステージが、「3次元方向に移動でき、試料基板を載置できる試料ステージ」とすることは当業者であれば容易になし得るものである。

・相違点(い)について
(い-1)本件発明15の「試料基板から摘出された試料片をデポジション膜により固定でき、試料ステージの移動により集束イオンビーム照射領域内に移動する試料ホルダ」の構成における「試料ホルダ」は、「試料基板から摘出された試料片をデポジション膜により固定でき」る「試料ホルダ」であり、さらに、本件発明15は、「試料基板を載置できる試料ステージ」の構成、及び「試料ステージ、試料ホルダ、及びプローブを、真空状態である内部に設置する試料室」の構成を有することから、真空状態である試料室の内部を、試料ステージが移動することにより、試料基板、及び試料基板から摘出された試料片をデポジション膜により固定できる試料ホルダが移動することを意味することは明らかである。
(い-2)ところで、甲第1号証の摘記事項(甲1-1)に、
「【0002】従来技術としてマイクロスコピー・オブ・セミコンダクティング・マテリアルズ・コンファレンス、オックスフォ-ド大学(1989年)、501?506頁(Microscopy of Semiconducting Materials Conference,Oxford,(1989)pp.501-506)に開示される技術がある。この文献では、透過型電子顕微鏡(TransmissionElectron Microscope :略してTEM)分析が可能な薄膜試料を集束イオンビーム(Focused Ion Beam :略してFIB)を利用して切り出した例が述べられている。
【0003】上記文献の開示内容によれば、図7に示すように、半導体集積回路から長さ数mmで幅100 ?500 μmのチップ71をダイアモンド・ソーを用いて切出し、銅製のグリッド72( TEM観察用標準グリッド)に固定し、その後、FIBを利用してチップ71に薄膜試料73を加工・形成し、その薄膜試料73を電子ビーム74を用いてTEM観察している。」と記載されている。また、上記甲第2号証の摘記事項(甲2-1)に、
「【0004】・・・作製した試料を貼り付けたメッシュを試料台に固定する場合、メッシュ自体が薄い為、試料台上に垂直に立てることが難しい。メッシュ自体が傾倒していてもその分試料台を傾けることにより垂長方向(ビームが直交する方向)に位置決めすることは可能であるが、良いTEM試料を作製する為には、FIB装置からのエッチング用のイオンビームの回り込み等を考慮し、垂直姿勢から数度傾けてFIB装置によるエッチングを受け得るようにする必要がある。つまり、この従来例は、メッシュを用いる為、接着剤を付する位置が試料の観察部分に回り込み易く、またメッシュ自体が薄いので傾倒し易く、FIB装置の試料台上に所望の角度で固定することが難しいという問題があった。
【0005】本発明は上記に鑑みてなされたものであり、試料ホルダ-を装置取付部と試料作製台とから構成し、切り出した小片試料をこの試料作製台に取り付けたままFIB装置による加工が行なえ、加工終了後に装置取付部と試料作製台とを容易に合体させることができる試料ホルダーを提供することを目的としている。・・・」と記載され、同(甲2-2)に、
「【0007】・・・この試料ホルダ-10は、図1(b) のように試料作製台11と装置取付部12とに分解することができる。図2(a) に示す様に、試料13を試料作製台1の端面中央部に接着剤等によりを取り付け、この状態で図2(b) のように図示しないFIB装置により試料13を加工する。符号14はFIB装置による加工後のTEM観察部を示す。」ことが記載されている。さらに、上記甲第1号証の摘記事項(甲1-1)に、
「【0002】従来技術としてマイクロスコピー・オブ・セミコンダクティング・マテリアルズ・コンファレンス、オックスフォ-ド大学(1989年)、501?506頁(Microscopy of Semiconducting Materials Conference,Oxford,(1989)pp.501-506)に開示される技術がある。」と記載されている技術文献である、上記甲第9号証の摘記事項(甲9-1)に、
「2.試料調製
TEM用試料調製の第一段階は光学顕微鏡又は走査型電子顕微鏡を使用するウエハ又はチップ上の問題となる領域の選択である。次いで、低速、低変形のダイヤモンド・ウエハ・ソウを使用して、分析のために選択した電子デバイスを含むスライスがチップから切り出される。・・・
次に、スライスを3mm径の銅スロット・グリッドへ載置させるため、約2mmの長さに切断する。スライスは、図2に示すとおり、問題の領域がスロット上を横切るように、また、グリッド平面に垂直に、エポキシ樹脂を使用して載置する。これらの工程は、低倍率双眼顕微鏡下で行う。
試料は、イオンビームが回路の元の表面に対し垂直に衝突するように、走査型イオン顕微鏡中に載置される。表面を画像化し、問題の領域に正確に位置決めする。選択したデバイスの各面において、スライスの両端から内部へ向けて数ミクロンに至る溝を作り、これにより試料全体にわたる溝を二等分する材料のバーができる。」と記載されている。
上記の甲第1号証の従来例、甲第2号証、及び甲第9号証の記載事項からすると、上記の甲第1号証の従来例、甲第2号証、及び甲第9号証には、FIB装置において、TEM観察用試料を加工する際に、試料から切り出した試料片を、接着剤等、又はエポキシ樹脂によりTEMグリッドに固定させ、イオンビームによりTEMグリッドに固定された試料片を加工することが記載されており、このTEMグリッドが、試料ホルダに相当するものと認められる。そして、上記甲第6号証の摘記事項(甲6-3)に、
「位置決めステージ3は、観察試料4を載置し、・・・また位置決めステージ3は、搬送ステージ5に載置され、レール6上をスライド可能な構造となっている。」と記載され、同(甲6-2)に、
「・・・搬送ステージ5は、これら集束イオンビーム加工ユニット7、および走査型顕微鏡ユニット8の作用位置間をレール6によってスライドできる。」と記載され、また、上記甲第7号証の摘記事項(甲7-1)に、
「集束イオンビーム加工装置90は第3図に示す構造である。イオン銃41からでたイオンビーム42はイオン光学系43により、集束イオンビーム44に集束され、試料1の加工位置または加工位置近傍を走査しながら照射する。試料1は試料ホルダ2に保持されており、さらに試料ホルダ2は集束イオンビーム装置の加工試料ステージ40に載置されている。」と記載されているように、FIB装置において、試料ホルダを試料ステージで移動させることは技術常識といえるから、上記の甲第1号証の従来例、甲第2号証、及び甲第9号証の、試料ホルダに相当する「TEMグリッド」は、試料ステージで移動できるものと推認できるものの、上記の甲第1号証の従来例、甲第2号証、又は甲第9号証のFIB装置の試料から切り出した試料片は、TEMグリッドに、接着剤等、又はエポキシ樹脂により固定されるものであるから、デポジション膜により試料片をTEMグリッドに固定するものではないし、さらに、接着剤等、又はエポキシ樹脂により固定する際に、真空状態で試料片をTEMグリッドに固定する必要がないことから、試料から切り出した試料片が接着剤等、又はエポキシ樹脂により、真空状態のFIB装置外でTEMグリッドに固定されることは明らかであって、真空状態のFIB装置の内部で試料から切り出した試料片をTEMグリッドに堆積膜で固定するものでない。
(い-3)また、甲第8号証の摘記事項(甲8-2)に、
「1図(a)はFIB1の照射によるスパッタリング加工の様子を示したもので、参考のためその上面図を第1図(e)に示す。・・・また、移植デバイス5の位置ずれを緩和するため、移植デバイスの落とし込み穴4を開けておく。これは、試料表面の絶縁膜の浅いスパッタリング加工である。第1図(b)は、移植デバイス5を落とし込み穴4上に運搬する手法を示したものである。・・・移植テバイス5はデバイス・フレームキャリア6に細いアーム21を介して固定されている。このフレーム6は第2図中の3軸マニピュレーター109によって保持されている。従って、マニピュレーター109及びステージ111を駆動することで、移植デバイス5を所望場所(ここでは落とし込み穴4)上に運搬することができる。運搬後、FIB1をアーム21に照射し、キャリアフレーム6からデバイス5を切り難し,穴4中に定置させる。」と記載され、同(甲8-3)に、
「基板上での移植場所及び基板面に対する移植方向を変更したい場合には、フレームキャリア6のアーム21と移植デバイスとを両者間に堆積膜を形成することにより再び機械的に接続し,ついで移植デバイスを基板に密着させている堆積膜7をFIB照射によるスパッタリングにより除去せしめることにより,再びマニピュレーターによる移植デバイスの移動を可能とし,再度基板上の新しい位置での新しい向きでの移植を行うことができる。」と記載されている。さらに、甲第10号証の摘記事項(甲10-1)の摘記事項(甲10-1)に、
「§3.デバイス移植(TP)
3.1 デバイスTPのプロセス及びその実施可能性の実験
デバイスTPは次の3つのプロセスから成る。(1)TP-デバイスの製作、(2)TP-デバイスの操作、つまり、TP-デバイスの基板上の望ましい場所への移転、及び(3)TP-デバイスの基板への付着である。ここで、デバイスと基板との間の機械的又は電気的接続が行われる。
デバイスTPの実施可能性の実験が行われた。実験のプロセスの模式図を図5に示す。先端部を、基板に移植されるべきダミーのデバイスと考える。第一にダミーのTP-デバイスが基板上の望ましい場所に移植される。3つのバイモルフ型の圧電アクチュエーターから成る単純なxyzマイクロマニピュレーターがTP-デバイスの移転に使用された。第二に、TP-デバイス付近の基板の領域を低速のスキャニングFIBによって照射する。ここで、FIBのスキャニング方向のy-コンポーネントはデバイスの側壁と反対方向である。このことにより、スパッタされた原子の殆どをTP-デバイスの側壁へと向かわせることができる。TP-デバイスを基板に付着させるために再堆積が使用される。」と記載されている。また、甲第3号証の摘記事項(甲3-3)に、
「【0035】・・・評価装置がTEMである場合には、ウエハ加工装置51内に備えられたマニピュレータによって、加工された試料をSiウエハ対応の試料ホルダから実施例1で用いた2軸傾斜試料加熱ホルダに載せ替える。」と記載されている。
上記甲第8号証及び甲第10号証の記載によれば、FIB装置内で、マニュピュレータを用いて移植デバイスを移動させることが記載されており、さらに甲第8号証には、移植デバイスを移動させる際に、マニピュレーター109で保持されるデバイス・フレームキャリア6の細いアーム21と移植デバイスとを堆積膜で固定して、マニピュレーター109を移動させることにより移植デバイスも移動できるようにすることが記載されているものの、広辞苑(第5版)によれば、「試料」とは「試験・検査・分析などに供する物質や生物」と記載されていることから、甲第8号証及び甲第10号証の「デバイス移植」は「試料」を意味しないことは明らかである。さらに、甲第8号証には、移植デバイスを移動させる際に、マニピュレーター109で保持されるデバイス・フレームキャリア6の細いアーム21と移植デバイスとを堆積膜で固定して、マニピュレーター109を移動させることにより移植デバイスも移動できるようにする構成が記載されているが、この構成は、単に、FIB装置内で、マニピュレータを用いて部品を移動させることが記載されてるにすぎず、本件発明15の上記「相違点(い)」のように、「試料基板から摘出された試料片を」「試料ホルダ」に、堆積膜、すなわち「デポジション膜により固定でき」るようにするためのものではない。
また、甲第3号証は、ウエハ加工装置51内に備えられたマニピュレータによって、ウエハ加工装置51内の加工された試料を試料ホルダから、評価装置で使用する2軸傾斜試料加熱ホルダに載せ替える構成が記載されているのみであり、「試料基板から摘出された試料片を」「試料ホルダ」に移動させるものではない。
(い-4)上記(い-1)?(い-3)の検討をまとめると、上記の甲第1号証の従来例、甲第2号証、及び甲第9号証には、FIB装置において、TEM観察用試料を加工する際に、試料から切り出した試料片を、接着剤等、又はエポキシ樹脂によりTEMグリッドに固定させ、イオンビームによりTEMグリッドに固定された試料片を加工することが記載されており、このTEMグリッドが、試料ホルダに相当し、試料ステージで移動できるものと推認できるものの、FIB装置の試料から切り出した試料片は、接着剤等、又はエポキシ樹脂により、真空状態のFIB装置外でTEMグリッドに固定されることは明らかであるといえる。そうすると、上記の甲第1号証の従来例、甲第2号証、及び甲第9号証のように、FIB装置において、TEM観察用試料を加工する際に、試料から切り出した試料片を、接着剤等、又はエポキシ樹脂によりTEMグリッドに固定させ、イオンビームによりTEMグリッドに固定された試料片を加工することが周知であったとしても、甲第1号証?甲第10号証のいずれにも、真空状態のFIB装置の内部で試料から切り出した試料片をTEMグリッドに堆積膜で固定する構成は記載されていないから、上記「(3)本件特許発明15と引用発明との対比」の(v)で検討したように、真空室内で、試料2から切り出された分離試料9と堆積膜8で接続されるプローブ31を、マニピュレータ112で所要の箇所に移動させる引用発明のFIB装置において、FIB装置の内部で試料から切り出した試料片をTEMグリッド、すなわち試料ホルダに堆積膜で固定する構成を得ることはできないし、さらに、引用発明のFIB装置において、試料2から切り出され、プローブ31に接続された分離試料9の薄肉部9aを集束イオンビーム(FIB)1で薄膜化する代わりに、試料2から切り出された分離試料9を堆積膜で固定する試料ホルダに設けて、集束イオンビーム(FIB)1で薄膜化することもできないことは明らかである。
また、甲第8号証及び甲第10号証に、マニピュレーター109用いて、移植デバイスも移動できるようにする構成が周知であったとしても、第1号証?甲第10号証のいずれにも、真空状態のFIB装置の内部で試料から切り出した試料片をTEMグリッドに堆積膜で固定する構成は記載されていないから、引用発明において、試料2から切り出された分離試料9と堆積膜8で接続されるプローブ31を移動させるマニピュレータ112を用いて、TEMグリッドに堆積膜で固定する構成が得られないものである。
さらに、甲第1号証?甲第10号証のいずれにも、真空状態である試料室の内部の試料ステージ上に、試料基板、及び試料基板から摘出された試料片をデポジション膜により固定できる試料ホルダを設けて、試料ステージの移動により、試料基板と試料ホルダを移動させることは、開示も示唆もされていないことから、上記(い-1)で検討したように、本件発明15の「試料基板から摘出された試料片をデポジション膜により固定でき、試料ステージの移動により集束イオンビーム照射領域内に移動する試料ホルダ」の構成は得られないものである。

(い-5)なお、請求人は、審判請求書において、(a)甲第1の従来技術、甲第2号証、及び甲第9号証から、
「FIB装置において、TEM観測試料を加工する際に、試料から切り出した試料片をTEMグリッドに固定させ、さらにTEMグリッドを試料ステージに固定し、試料ステージにより移動可能な状態としてイオンビームによりTEMグリッドに固定された試料片を加工することは周知技術であった」(18頁12行?20頁1行)とし、「上記の通り、試料から切り出した試料片をTEMグリッドに固定させて、さらにTEMグリッドをFIB装置の試料ステージに固定し、試料ステージにより移動可能な状態としてイオンビームにより加工することは周知であったとすれば、甲1発明において、周知技術と同様にTEMグリッドに固定された状態でTEM試料を作製するために、ステージにTEMグリッドを固定し、イオンビームによりTEMグリッドに固定された分離試料を9を薄膜化してTEM試料を作製することは、当業者にとって容易に想到できる事項に過ぎないのである。」(20頁21?28行)と主張している。
さらに、(b)甲1発明、甲第8号証、甲第10号証及び甲第3号証から、「マニュピュレータを有するFIB装置において、試料室内においてマニュピュレータを用いて試料を移動させ、所望の箇所に移し替えることは周知であった。」(20頁2?17行)とし、「マニュピュレータを有するFIB装置において、試料室内においてマニュピュレータを用いて試料を移動させ、所望の箇所に移し替えることも周知技術であったとすれば、分離試料を所望の位置に搬送できるマニュピュレータを用いて、プローブ31に接続された分離試料9をTEMグリッドに移し替えることも、当業者にとって容易に想到できる事項に過ぎないものである。」(20頁最下行?21頁4行)と主張している。
しかしながら、上記(い-4)で検討したように、(a)上記の甲第1号証の従来例、甲第2号証、及び甲第9号証には、真空状態のFIB装置の内部で試料から切り出した試料片をTEMグリッドに堆積膜で固定する構成は記載されていないから、引用発明の真空状態のFIB装置に、試料2から切り出された分離試料9を堆積膜で固定するための試料ホルダを設けることができないことは明らかである。
そして、(b)甲第8号証及び甲第10号証に記載されているように、マニピュレーターを用いて、移植デバイスも移動できるようにする構成が周知であったとしても、第1号証?甲第10号証のいずれにも、真空状態のFIB装置の内部で試料から切り出した試料片をTEMグリッドに堆積膜で固定する構成は記載されていないから、引用発明において、試料2から切り出された分離試料9と堆積膜8で接続されるプローブ31を移動させるマニピュレータ112を用いて、TEMグリッドに堆積膜で固定する構成が得られないものであり、さらに、甲第1号証?甲第10号証のいずれにも、真空状態である試料室の内部の試料ステージ上に、試料基板、及び試料基板から摘出された試料片をデポジション膜により固定できる試料ホルダを設けることは、開示も示唆もされていないことから、本件発明15の「試料基板から摘出された試料片をデポジション膜により固定でき、試料ステージの移動により集束イオンビーム照射領域内に移動する試料ホルダ」の構成を得ることができないことは明らかであり、請求人の上記(a)及び(b)の主張は採用できないものである。

・相違点(う)について
上記甲第4号証の摘記事項(甲4-3)に、
「第1図には、探針16を備えたXYZポジショナをイオンビーム加工装置の試料室の壁に設ける」
と記載されており、この甲第4号証のXYZポジショナは、探針16を移動させるマニピュレータであることは明らかである。
そして、引用発明の、FIB装置のプローブ31と接続された分離試料9を所要の箇所に移動させるマニピュレータ112と、甲第4号証に記載された発明の、イオンビーム加工装置のXYZポジショナとは、ともにFIB装置で使用されるマニュピュレータである点で共通することから、引用発明のFIB装置のマニピュレータ112を、甲第4号証に記載さえた発明の構成を採用し、引用発明のマニピュレータ112をFIB装置の試料室の壁に設けることにより、本件発明15のごとく、デポジション膜により試料片と接続できるプローブを有し、試料基板から摘出された試料片を移動させる移送手段が、「試料室壁に設置され」るように構成することは当業者が容易になし得るものであるが、上記「相違点(い)について」において検討したように、甲第1号証?甲第10号証に記載された技術事項からは、本件特許発明15の「試料基板から摘出された試料片をデポジション膜により固定でき、試料ステージの移動により集束イオンビーム照射領域内に移動する試料ホルダ」の構成は得られないものであるから、相違点(う)の「デポジション膜により試料片と接続できるプローブを有し、試料基板から摘出された試料片を移動させる移送手段が、試料基板から摘出された試料片を「試料ホルダに移し変える移送手段」である構成が得られないことは明らかである。

・相違点(え)?相違点(か)について
さらに、上記相違点(え)?相違点(か)においても、試料ホルダを含む構成が相違点に含まれることから、甲第1号証?甲第10号証に記載された技術事項からは、本件発明15の相違点(え)の、「集束イオンビームを照射し、前記試料基板、及び前記試料片を加工する照射光学系が、、試料基板、及び『試料ホルダに固定された試料片』に対して集束イオンビームを照射する」構成、同じく相違点(お)の、「真空状態である内部の試料室に、『試料ステージ、試料ホルダ、及びプローブ』を設置する」構成、及び、同じく相違点(か)の、「集束イオンビーム照射による薄壁加工を施された試料片を作製する試料作製装置が、『デポジション膜により試料ホルダに固定され、』集束イオンビーム照射による薄壁加工を施された試料片を作製する試料作製装置である」構成を得るこができないことは明らかである。

そして、本件発明15は、上記相違点(い)の、「試料基板から摘出された試料片をデポジション膜により固定でき、試料ステージの移動により集束イオンビーム照射領域内に移動する試料ホルダ」の構成を備えており、さらに、相違点(う)の、デポジション膜により試料片と接続できるプローブを有し、試料基板から摘出された試料片を移動させる移送手段が、「試料室壁に設置され、」試料基板から摘出された試料片を「試料ホルダに移し変える移送手段」である構成を備えていることにより、本件特許明細書の段落【0026】に記載された、
「移送手段全体を試料ステージと独立して設置して、サンプリング位置の大きな移動はステージ移動に分担させた。」効果を生じることは明らかである。

(5)小括
したがって、本件発明15は、甲第1号証に記載された発明、甲第4号証に記載された発明及び周知技術(甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証?甲第10号証)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、請求人の主張する無効理由によっては、本件発明15を無効とすることはできない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠によっては、本件発明15に係る特許を無効とすることができない。また、本件発明15に係る特許を無効とすべき他の理由を発見しない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2011-12-26 
出願番号 特願2008-58689(P2008-58689)
審決分類 P 1 123・ 121- Y (H01J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡▲辺▼ 純也本郷 徹西村 直史  
特許庁審判長 後藤 時男
特許庁審判官 岡田 孝博
横井 亜矢子
登録日 2008-09-12 
登録番号 特許第4185962号(P4185962)
発明の名称 試料作製装置  
代理人 永島 孝明  
代理人 鷺 健志  
代理人 磯田 志郎  
代理人 安國 忠彦  
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