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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F28F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F28F
管理番号 1263418
審判番号 不服2011-14647  
総通号数 155 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-07-07 
確定日 2012-09-12 
事件の表示 特願2001-119533号「マニホールドを小型化した自動車用熱交換器」拒絶査定不服審判事件〔平成13年12月21日出願公開、特開2001-349689号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成13年4月18日(パリ条約による優先権主張、2000年4月27日、フランス国)の出願であって、平成23年2月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年7月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、その審判請求と同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成23年7月7日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年7月7日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により請求項1は、次のように補正された。
「フィン付き管の束と、マニホールドとを有する熱交換器であって、
前記マニホールドは、管の束を保持するフランジ付きソケットに接する少なくとも1列に並ぶ複数の孔を有する中央ウェブと、該中央ウェブに折り曲げ縁を介して隣接する底板を有する周縁溝を有しており、前記各フランジ付きソケットが前記折り曲げ縁と接触するようにすることで、前記フランジ付きソケットと前記折り曲げ縁との間隙を極小にしたことを特徴とする熱交換器。」(下線は補正箇所。)

2.補正の目的
本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「複数の孔」について、「管の束を拘束するフランジ付きソケットに構成する」とあったものを「管の束を保持するフランジ付きソケットに接する」として、限定するとともに記載を明確にしたものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3-1.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平6-50695号公報(以下「引用例」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
ア 「【産業上の利用分野】本発明は、熱交換器の収集板に嵌受された、端部で終結する本体からなり、少なくとも1つの管列に配列された管の束(管束)を備える、熱交換器に関する。この収集板(多孔板とも言う)は、管束の一端に装着された、熱交換器のウォータボックスまたはマニホルドの一部を構成しており、該管束の他端は、通常は(必然的ではない)、小型のウォータボックスまたはマニホルドを有している。」(段落【0001】、下線は当審で付与。以下、同様。)
イ 「【実施例】次に、添付図面を参照して、本発明の好適実施例の詳細を説明する。図1に示すように、熱交換器は、2列に配列された、多数本の管(10)からなる管束を備えている。2本の隣接する管は、図示のように、それぞれ各列の一部を構成している。」(段落【0020】)
ウ 「熱交換器の管束は、相互に平行しており、それぞれが、管(10)の本体(12)を収容する2組の孔を有する複数個の冷却フィン(18)を備えている。管端部(14)は、本例では、2連の孔(24)を有するほぼ短形の背部(22)を有する金属板で構成された収集板(20)に嵌合されている。各孔(24)は、対応する管(10)の端部と合致する形状の断面を有しており、フィン(18)に向かって下側に折曲された舌部(26)によって、包囲されている。」(段落【0023】)
エ 「背部(22)は、その全周にわたって、溝を画成するとともに、折曲されて、おおいかぶさるようになっているタブ(30)で終結する、上向フランジ(28)によって包囲されている。」(段落【0024】)
オ 「熱交換器はさらに、収集板フランジ(28)に画成された溝に導入され、図1に示すように、タブ(30)が折曲されて、ウォーターボックスフランジにおおいかぶさる際にガスケットビート(38)を圧縮するようになっているウォーターボックス周フランジ(42)によって画成されたほぼ短形の開枚側部を有している。」(段落【0027】)

上記記載を検討すると、記載アには、熱交換器は管の束(管束)を備えること及びマニホルドを有することが記載されている。また、収集板(多孔板)がマニホルドの一部を構成することが記載されている。記載イには、熱交換器は2列に配列された、多数本の管(10)からなる管束を備えていることが記載されている。
そして、記載ウには、管束は冷却フィン(18)を備えており、管端部(14)は、金属板で構成された収集板(20)に嵌合されるように、収集板(20)の各孔(24)は、対応する管(10)の端部と合致する形状の断面を有しており、フィン(18)に向かって下側に折曲された舌部(26)によって、包囲されていることが記載されている。この舌部(26)によって孔(24)が形成されるのであるから、舌部(26)は孔(24)に接するということができる。
また、記載エ及び図1の図示内容によれば、収集板(20)の背部(22)の孔(24)が形成された部分は収集板(20)の中央部分といえ、その周りに溝が形成されている。そして、その溝は中央部分を形成する折り曲げ部を介して隣接しているといえる。

上記記載事項、認定事項及び図示内容を総合し、本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「冷却フィン(18)を備えている多数本の管(10)からなる管束と、マニホルドとを有する熱交換器であって、
前記マニホルドは、管端部(14)を嵌合する舌部(26)に接する少なくとも1列に並ぶ複数の孔(24)を有する中央部分と、該中央部分に折り曲げ部を介して隣接する溝を有する熱交換器。」

3-2.対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、各文言の意味、機能または作用等からみて、引用発明の「冷却フィン(18)を備えている多数本の管(10)からなる管束」は、本願補正発明の「フィン付き管の束」に相当し、以下同様に、
「マニホルド」は「マニホールド」に、
「管端部(14)を嵌合する舌部(26)」は「管の束を保持するフランジ付きソケット」に、
「孔(24)」は「孔」に、
「中央部分」は「中央ウェブ」に、
「折り曲げ部」は「折り曲げ縁」に、
「溝」は「底板を有する周縁溝」に、それぞれ相当する。

そこで、本願補正発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。
(一致点)
「フィン付き管の束と、マニホールドとを有する熱交換器であって、
前記マニホールドは、管の束を保持するフランジ付きソケットに接する少なくとも1列に並ぶ複数の孔を有する中央ウェブと、該中央ウェブに折り曲げ縁を介して隣接する底板を有する周縁溝を有する熱交換器。」

そして、両者は次の点で相違する。
(相違点)
本願補正発明では「前記各フランジ付きソケットが前記折り曲げ縁と接触するようにすることで、前記フランジ付きソケットと前記折り曲げ縁との間隙を極小にした」ものであるのに対して、引用発明では「舌部(26)」と「折り曲げ部」は接触するものではない点。

3-3.相違点の判断
本願補正発明や引用発明と同様なフランジ付きソケットの形状をしたものにおいて、フランジ付きソケットと折り曲げ縁との間隙は、例えば、引用例に記載されたものより広いように記載されているもの(実願昭60-83718号(実開昭61-198896号)のマイクロフィルム(第6図))や狭いように記載されているもの(特開平10-18844号公報(図2))があるように、この間隙は管を取り付けるマニホールド板(コアプレート、ヘッダープレート)、管(チューブ、熱交換チューブ)の大きさに基づいて当業者が適宜設定するものといえる。そして、熱交換器のチューブの束の端部を嵌合保持するソケット部分をマニホールドを形成するためマニホールドチャンバを結合する部分である周縁部分まで極めて近くに配置することが、例えば、実公昭63-39584号公報(第7図)、実公平7-20522号公報(第3,4図)に示されているように、熱交換器において従来周知の構造である。
してみると、フランジ付きソケットと折り曲げ縁との間隙を極小として、前記相違点に係る本願補正発明の発明特定事項のようにすることは、フランジ付きソケットと折り曲げ縁との間隙を小さくすることが、技術的に極めて困難であるとか、熱交換器として不都合を生じる等の特段の事情もないことから、当業者が設計事項として容易に想到し得たことといわざるをえない。

そして、本願補正発明による効果も、引用発明から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

なお、請求人は、回答書において、フィンの1枚が、マニホールドの周縁溝の部分で底板に直接に接していることを特定した補正案を提示しているが、フィンをマニホールドの周縁溝の部分で底板に接するように配置することは、例えば、特公昭53-36178号公報(5欄31?41行、Fig20,21参照)に記載されているように、特別な配置ではなく、フィンと周縁部の関係を特定しても進歩性を肯定することはできない。

したがって、本願補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3-4.むすび
以上のとおり、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成22年12月8日の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「フィン付き管の束と、マニホールドとを有する熱交換器であって、前記マニホールドは、管の束を拘束するフランジ付きソケットを構成する少なくとも1列に並ぶ複数の孔を有する中央ウェブと、該中央ウェブに折り曲げ縁を介して隣接する底板を有する周縁溝を有しており、前記各フランジ付きソケットが前記折り曲げ縁と接触するようにすることで、前記フランジ付きソケットと前記折り曲げ縁との間隙を極小にしたことを特徴とする熱交換器。」

2.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及び、その記載事項は、前記「第2」「3-1.」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記「第2」「1.」の本願補正発明において、「複数の孔」についての限定を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含むものに相当する本願補正発明が、前記「第2」「3-3.」に記載したとおり、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-04-11 
結審通知日 2012-04-17 
審決日 2012-05-02 
出願番号 特願2001-119533(P2001-119533)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F28F)
P 1 8・ 121- Z (F28F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 千壽 哲郎久保 克彦山崎 勝司  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 長浜 義憲
森川 元嗣
発明の名称 マニホールドを小型化した自動車用熱交換器  
代理人 竹沢 荘一  

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