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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1263549
審判番号 不服2009-18891  
総通号数 155 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-10-05 
確定日 2012-09-20 
事件の表示 特願2002- 38016「圧電セラミック多層アクチュエーター」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 9月 6日出願公開、特開2002-252386〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成14年2月15日の出願(パリ条約に基づく優先権主張:2001年2月15日、ドイツ連邦共和国)であって、平成20年7月29日に意見書及び手続補正書が提出され、平成21年6月1日付けで拒絶査定がされ、それに対して、同年10月5日に審判が請求されるとともに手続補正書が提出された。その後、平成23年1月20日付けで審尋がなされ、同年7月21日に回答書が提出され、そして、同年8月18日付けで当審により拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、これに対して、平成24年2月24日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。


第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成24年2月24日に提出された手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、本願の特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】 交互にアクチュエーター表面に案内される内部電極(3)を有する圧電セラミック多層アクチュエーター(1)であり、その際活性領域(10)の同じ極性の内部電極(3)が、平行に接続するために、それぞれの外部電極(4,5)に接続され、外部電極(4,5)はアクチュエーター(1)の向かい合う面に配置され、頭部領域(8)および脚部領域(9)が圧電不活性である圧電セラミック多層アクチュエーター(1)であって、その際、活性領域(10)に、それぞれ不活性頭部領域(8)および不活性脚部領域(9)に対する遷移領域(18)が接続され、その収縮および延伸挙動が活性領域(10)の収縮および延伸挙動と不活性領域(8,9)の収縮および延伸挙動の間にあり、かつ遷移領域は電極を有していない圧電セラミック多層アクチュエーターにおいて、不活性頭部領域(8)および不活性脚部領域(9)の間のそれぞれの遷移領域(18)が変性された圧電セラミック材料からなり、その収縮および延伸挙動が活性領域(10)の収縮および延伸挙動の間にあることを特徴とする圧電セラミック多層アクチュエーター。」


第3 引用例の記載と引用発明
1 引用例とその記載内容
当審拒絶理由に引用された、本願の優先権主張日前に日本国内において頒布された刊行物である特開昭63-288074号公報(以下「引用例」という。)には、「積層圧電素子」(発明の名称)について、第1、2図とともに、次の記載がある(下線は当審で付加。以下同じ。)。

(1)従来の技術等
「〔従来の技術〕
積層圧電素子は、第1図、第2図に示すように鉛、ジルコニウム、チタンなどの金属酸化物を主成分とする圧電材料のグリーンシート上に銀を主成分とする導電ペーストからなる内部電極層3を形成したシートを多数積層した圧電層部1,1a,1bと上記内部電極層を形成していない圧電材料からなるグリーンシートを多数積層した保護層部2a,2bから構成されている。圧電層部1は電圧を印加すると、逆圧電現象により電界方向に伸び、電圧を切るともとの位置にもどる。この現象を利用して伸縮運動させて電気エネルギーを機械エネルギーに変換する、いわゆる変換素子として利用する。保護層部2a、2bは、電圧印加するための半田付部5を形成したり、素子の伸縮運動をとり出すための受け側への伝達機能(保護層2a、2b)、あるいは素子の長さがかなり長いとき圧電層部1aおよび1b同志を継なぐための機能(素子中間の保護層部2c)など極めて重要な機能を有する。
従来、圧電層部1のセラミック層8と保護層部2a、2bのセラミック層9とは、鉛、ジルコニウム、チタンなどの金属酸化物を主成分とする圧電材料で構成されたグリーンシートの積層体から形成していた。しかし、圧電層部1には銀を主成分とする導電ペーストからなる内部電極層3を圧電層部1のセラミック層8上に形成したグリーンシートを多数積層している。
〔発明が解決しようとする問題点〕
このような圧電層部1を内部電極層のない保護層部2を第1図や第2図に示すように同一積層体として同1条件で焼結させると、圧電層部1では内部電極層3の銀の拡散によって焼結時での圧電層部1の収縮率が保護層部2の収縮率に比較して大きくなって、焼結後の状態として保護層部2と圧電層部1の界面で亀裂や割れが生じたりした。また、亀裂や割れが生じない場合でも、焼結時の収縮率の大きな相違が内部ストレスとして残留し、素子を駆動させたとき割れが生じたりして品質を著しく劣化させる原因となった。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明の積層圧電素子は、鉛、ジルコニウム、チタンなどの金属の酸化物を主成分とする圧電材料からなるグリーンシートを積層した保護層部と、銀を主成分とする内部電極層を前記グリーンシート上に形成したシートを積層した圧電層部とからなる積層体を焼結して形成される積層圧電素子において、保護層部のグリーンシートを構成する前記圧電材料の中に銀成分を含有することを特徴とする。」(1ページ右下欄2行?2ページ右上欄10行)

(2)実施例
「〔実施例〕
次に、本発明の実施例について図面を参照して説明する。図面は前述した第1図および第2図を使用する。
本実施例で用いた圧電材料は、酸化鉛、酸化ニッケル、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム、酸化チタンをそれぞれ適量混合したのち約900℃で約4時間焼成し、その後粉砕して生成する。圧電材料の組成は、最終の化学式としてPb{(Ni_(1/2)Nb_(2/3))_(0.5)Zr_(0.35)Ti_(0.15))O_(3)が得られるように原材料の配分比で混合する。このようにして生成した圧電材料の粉体に対する重量比で銀粉体を0,0.1,0.5,1.5,10wt%になるよそれぞれ上記圧電粉体に添加し、充分混合する。この混合粉体にそれぞれ、有機高分子からなるバインダーとビヒクルを加え充分混合したのちスリップキャステング成膜法により約120μmのセラミックグリーン・シートを生成する。銀粉体が添加されていない(0wt%)グリーンシートには内部電極となる金属導電ペーストを印刷する。金属導電ベーストは、銀粉体、パラジウム粉体を重量比で70.30wt%で混合したのち、これに有機溶剤などからなる有機物のビヒクルを加え充分混練して生成する。
内部電極層が形成した銀粉体の無添加なグリーンシートと、銀粉体が前述した重量比で添加されたグリーンシート(これには内部電極は形成されていない)を同一形状になるよう多数切断し、それぞれのシートを積層する。積層の構成は第2図のようになるようにした。すなわち、内部電極層が形成された銀無添加のグリーンシートを約100層積層したものが圧電層部1aおよび1bとなり、内部電極層が形成されていない前記銀添加量のグリーンシートをそれぞれ15層、30層、15層積層し、これを第2図の保護層部2の2a,2c,2bになるようにした。積層したのち、温度120℃、圧力300Kg/cm^(2)の条件下で熱プレスする。このようにして形成したプレス成形体を温度約400℃の恒温槽中に入れプレス成形体中に含有している有機物を焼きとばす。次に、焼結炉に移し入れ、温度約1200℃まで徐々に昇温し、約2時間焼結する。焼結体をカッターで切断し、第2図のような断面図から亀裂や割れが生じているかどうかを目視で観察して効果の判定をした。その結果、保護層部2a,2b,2cに銀の添加量が0wt%、すなわち銀粉体が無添加の場合は保護層部2と圧電層部1の界面で亀裂や割れが観察されたが、銀粉体が添加された場合には、亀裂や割れが観察されなかった。・・・
本実施例については、圧電材料として1種類、また素子形状としては第2図についてのみ述べたが、その他船、ジルコニウム、チタンなどの金属酸化物を主成分とするいくつかの圧電材料、およびその他の素子形状、例えば第1図のような場合についても本実施例と同一の結果を得、本発明による効果が同様に認められた。」(2ページ左下欄1行?3ページ右上欄6行)

(3)上記(2)の実施例において、積層圧電素子は、「内部電極層が形成された銀無添加のグリーンシートを約100層積層したものが圧電層部1aおよび1bとなり、内部電極層が形成されていない前記銀添加量のグリーンシートをそれぞれ15層、30層、15層積層し、これを第2図の保護層部2の2a,2c,2bになるようにした」(2ページ右下欄10行?16行)ものであって、「本実施例については、圧電材料として1種類、また素子形状としては第2図についてのみ述べたが」、「例えば第1図のような場合についても本実施例と同一の結果を得、本発明による効果が同様に認められた。」(3ページ左上欄最下行?右上欄6行)と記載されていることから、技術常識を勘案すれば、引用例には、第1図の素子形状を有し、内部電極層が形成された銀無添加のグリーンシートを積層したものが圧電層部1となり、内部電極層が形成されていない前記銀添加量のグリーンシートをそれぞれ積層し、これを保護層部2a,2bになるようにした積層圧電素子が記載されているといえる。

(4)第1図について
上記(1)、(2)の記載及び技術常識を勘案すると、第1図から、圧電層部1のセラミック層8と保護層部2a,2bのセラミック層9からなり、交互に圧電層部1のセラミック層8の表面に案内される内部電極層3を有する積層圧電素子であり、圧電層部1の同じ極性の内部電極層3が、それぞれの外部電極層4に平行に接続され、外部電極層4は積層圧電素子の向かい合う面に配置されていることが、それぞれ見てとれる。

2 引用発明
上記(1)?(4)によれば、引用例には、次の発明が記載されているといえる(以下、この発明を「引用発明」という。)。

「圧電層部1のセラミック層8と保護層部2a,2bのセラミック層9からなり、交互に圧電層部1のセラミック層8の表面に案内される内部電極層3を有する積層圧電素子であり、圧電層部1の同じ極性の内部電極層3が、それぞれの外部電極層4に平行に接続され、外部電極層4は積層圧電素子の向かい合う面に配置された積層圧電素子であって、内部電極層が形成された銀無添加のグリーンシートを積層したものが圧電層部1となり、内部電極層が形成されていない銀粉体が添加されたグリーンシートをそれぞれ積層し、これを保護層部2a,2bになるようにした、積層圧電素子。」


第4 対比
1 本願発明と引用発明とを対比すると、
ア 引用例の「圧電層部1は電圧を印加すると、逆圧電現象により電界方向に伸び、電圧を切るともとの位置にもどる。この現象を利用して伸縮運動させて電気エネルギーを機械エネルギーに変換する、いわゆる変換素子として利用する。」(1ページ右下欄10?15行)との記載から、引用発明の「積層圧電素子」は、アクチュエーターの機能を有していることは明らかであり、また、内部電極層3を有する「圧電層部1」は、本願発明の「活性領域(10)」に相当する。
そして、引用発明の「圧電層部1のセラミック層8の表面」は、本願発明の「アクチュエーター表面」に相当するといえる。

イ 引用発明の「内部電極層3」、「外部電極層4」は、それぞれ、本願発明の「内部電極」、「外部電極」に相当する。

ウ 引用発明の「積層圧電素子」は、「圧電層部1のセラミック層8と保護層部2a,2bのセラミック層9」からなるので、上記アを参酌すれば、本願発明の「圧電セラミック多層アクチュエーター」に相当することが分かる。

エ 引用例の第1図を参酌すれば、引用発明の「保護層部2a,2b」は、ともに、「内部電極層3」が形成されていないから、圧電不活性であることが分かる。
よって、本願発明の「頭部領域(8)および脚部領域(9)が圧電不活性である」ことと、引用発明の「保護層部2a,2bのセラミック層9」を備えることとは、活性領域以外が圧電不活性であることにおいて共通する。

2 したがって、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりとなる。

〈一致点〉
「交互にアクチュエーター表面に案内される内部電極を有する圧電セラミック多層アクチュエーターであり、その際活性領域の同じ極性の内部電極が、平行に接続するために、それぞれの外部電極に接続され、外部電極はアクチュエーターの向かい合う面に配置され、活性領域以外が圧電不活性である圧電セラミック多層アクチュエーター。」

〈相違点〉
本願発明では、「活性領域に、それぞれ不活性頭部領域および不活性脚部領域に対する遷移領域が接続され、その収縮および延伸挙動が活性領域の収縮および延伸挙動と不活性領域の収縮および延伸挙動の間にあり、かつ遷移領域は電極を有していない圧電セラミック多層アクチュエーターにおいて、不活性頭部領域および不活性脚部領域の間のそれぞれの遷移領域が変性された圧電セラミック材料からなり、その収縮および延伸挙動が活性領域の収縮および延伸挙動の間にある」のに対し、引用発明は、そのような構成がない点。


第5 相違点についての検討
(1)相違点について
ア まず、引用例の「圧電層部1では内部電極層3の銀の拡散によって焼結時での圧電層部1の収縮率が保護層部2の収縮率に比較して大きくなって、焼結後の状態として保護層部2と圧電層部1の界面で亀裂や割れが生じたりした。また、亀裂や割れが生じない場合でも、焼結時の収縮率の大きな相違が内部ストレスとして残留し、素子を駆動させたとき割れが生じたりして品質を著しく劣化させる原因となった。」(2ページ左上欄12行?最下行)、「〔問題点を解決するための手段〕 本発明の積層圧電素子は、鉛、ジルコニウム、チタンなどの金属の酸化物を主成分とする圧電材料からなるグリーンシートを積層した保護層部と、銀を主成分とする内部電極層を前記グリーンシート上に形成したシートを積層した圧電層部とからなる積層体を焼結して形成される積層圧電素子において、保護層部のグリーンシートを構成する前記圧電材料の中に銀成分を含有することを特徴とする。」(2ページ右上欄1行?10行)との記載から明らかなように、引用発明は、「圧電層部1」と「保護層部2」との界面の応力緩和を技術課題とするものであることが分かる。

イ 上記技術課題を解決するために、引用発明の「保護層部2a,2b」は、「内部電極層が形成されていない銀粉体が添加されたグリーンシートをそれぞれ積層」したものである。すなわち、引用発明は、圧電不活性である「保護層部2a,2b」全体の収縮率を「圧電層部1」の収縮率に近づけて、界面の応力緩和を図っているといえる。

ウ ここで、圧電多層アクチュエーターにおいて、活性領域と不活性領域との界面の応力を緩和するために、活性領域と不活性領域との間に応力を緩和する領域、すなわち、遷移領域を設けることは、例えば、以下の周知例1、周知例2に記載されているように、本願の優先権主張日前の常套手段である。

周知例1:特開平1-226186号公報(当審拒絶理由に引用した。)
上記周知例1には、第1図とともに、次の記載がある。

「【特許請求の範囲】
1)圧電材料層と電極層とが交互に積層された積層体の両端に電極層を介して圧電材料からなる保護層が設けられ、前記電極層間に電圧が印加されることにより前記圧電材料層が伸縮する積層型圧電素子において、横効果電圧歪定数が比較的小さい圧電材料からなる応力緩和層を保護層に隣接させて設けたことを特徴とする積層型圧電素子。」(特許請求の範囲)
「【産業上の利用分野】
この発明は、電界により圧電材料に誘起される伸縮歪を利用してアクチュエータとして用いられる積層型圧電素子に関する。」(1ページ左下欄下から8行?下から5行)
「この保護層13によるせん断心力集中は、従来の積層型圧電素子における大きな問題点となっている。
この発明は、機械的な破壊の原因となる保護層と圧電材料層との境界面近傍のせん断心力集中を緩和し、寿命信頼性の高い積層型圧電素子を提供することを目的とするものである。」(2ページ左上欄下から8行?下から2行)
「【実施例】
以下、第1図?第3図に基づいてこの発明の詳細な説明する。
第1図はこの発明の実施例の積層型圧電素子の断面を示すものである。この積層型圧電素子は、圧電材料層20,20Aと、電極層21A、21Bとが交互に積層された積層体の両端に電極層21Aを介して圧電材料からなる保護層23を設けて構成され、電極層21A、21Bには一層置きに外部リード22A、22Bが電気的に接続されている。ここで、保護層23に隣接する圧電材料層20Aは、圧電材料層20と同種の材料であるが横効果電圧歪定数が圧電材料層20より小さい値を有する応力緩和層として構成されている。」(2ページ右上欄下から7行?左下欄7行)

周知例1には、積層型圧電素子において、「圧電材料層20」及び「電極層21A、21B」からなる活性領域に、「保護層23」からなる不活性頭部領域および不活性脚部領域に対して、「応力緩和層」である遷移領域を接続する技術が記載されている。

周知例2:特開平11-274591号公報(当審拒絶理由に引用した。) 上記周知例2には、図4とともに、次の記載がある。

「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、積層型圧電アクチュエータ素子及びその製造方法に係り、特に圧電素子の伸縮時に圧電活性部と保護層との境界で発生する内部応力を緩和し得る素子及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】図4に従来の積層型圧電アクチュエータ素子の断面構造を示す。圧電体層1と内部電極層2とが交互に積層された活性部3の両端に不活性部である保護層4が形成されている。活性部3の両側部において、1層おきに内部電極層2の端面に絶縁体5が形成され、その上から活性部3の側面全面に外部電極6が形成されている。これにより、内部電極層2は絶縁体5が形成されていない端面においてプラス側の外部電極6とマイナス側の外部電極6とに交互に接続されている。
【0003】一対の外部電極6間に電圧を印加すると、隣接する内部電極層2の間に電界が形成され、活性部3は電界方向すなわち積層方向に伸長するが、このとき活性部3全体の体積はほとんど変わらないため、電界方向に直交する方向すなわち内部電極層2に平行な方向に活性部3は収縮する。このため、活性部3と不活性部である保護層4との境界部に内部応力が発生し、素子の破損に至る惧れがある。
【0004】そこで、図4に示されるように、保護層4の付近の3?4層の圧電体層1の厚さ2dを他の部分の圧電体層1の厚さdの2倍にして内部電極層2の間隔を広げた圧電アクチュエータ素子が考案されている。内部電極層2の間隔を2倍に広げることにより電界強度は1/2となり、保護層4の付近での歪みを小さくして活性部3と保護層4との境界部に発生する内部応力を緩和しようとするものである。」

周知例2には、積層型圧電アクチュエータ素子において、「活性部3」の一部からなる活性領域に、「不活性部である保護層4」からなる不活性頭部領域および不活性脚部領域に対して、「保護層4の付近の3?4層の圧電体層1の厚さ2dを他の部分の圧電体層1の厚さdの2倍にして内部電極層2の間隔を広げ」、「活性部3と保護層4との境界部に発生する内部応力を緩和しようとする」遷移領域が接続されている技術が記載されている。

エ 引用発明においては、「保護層部2a,2b」内の全体を「銀」が添加されて、圧電層部1に近い収縮率を有するものとしているが、上記ウの常套手段に接すれば、該「保護層部2a,2b」の大部分が従来と同様の組成及び収縮率を有するものであっても、該「保護層部2a,2b」の「圧電層部1」と接する部分が、該「圧電層部1」に近い収縮率を有していれば、内部応力が十分に緩和できることは、当業者が直ちに理解し得ることである。
オ したがって、引用発明において、上記アの技術課題の解決のための具体的手段として、「保護層部2a,2b」の一部領域である、「圧電層部1」との界面側に応力緩和の領域を設けることは、当業者が容易になし得たことである。

カ そして、その際に、「圧電層部1」に、それぞれ、「保護層部2a,2b」の上記界面側以外の銀を含有しない領域に対して、「銀」を含有することにより変性された圧電セラミック材料からなる、応力を緩和する領域が接続された構成とし、さらに、該領域の収縮および延伸挙動が、「圧電層部1」の収縮および延伸挙動と、「保護層部2a,2b」の上記界面以外の銀を含有しない領域の収縮および延伸挙動との間とすることは、上記エに鑑みれば、当業者が通常行う工夫の範囲内のものであるといえる。

キ したがって、引用発明において、本願発明のごとく「活性領域に、それぞれ不活性頭部領域および不活性脚部領域に対する遷移領域が接続され、その収縮および延伸挙動が活性領域の収縮および延伸挙動と不活性領域の収縮および延伸挙動の間にあり、かつ遷移領域は電極を有していない圧電セラミック多層アクチュエーターにおいて、不活性頭部領域および不活性脚部領域の間のそれぞれの遷移領域が変性された圧電セラミック材料からなり、その収縮および延伸挙動が活性領域の収縮および延伸挙動の間にある」とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(3)以上検討したとおり、本願発明は、常套手段を勘案することにより、引用発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


第6 結言
以上のとおりであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
 
審理終結日 2012-03-30 
結審通知日 2012-04-05 
審決日 2012-05-09 
出願番号 特願2002-38016(P2002-38016)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 河合 俊英  
特許庁審判長 齋藤 恭一
特許庁審判官 松田 成正
小野田 誠
発明の名称 圧電セラミック多層アクチュエーター  
代理人 久野 琢也  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 星 公弘  
代理人 矢野 敏雄  
代理人 二宮 浩康  
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