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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
管理番号 1263565
審判番号 不服2010-25821  
総通号数 155 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-11-16 
確定日 2012-09-20 
事件の表示 特願2007-309328「液晶表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 4月17日出願公開、特開2008- 90324〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続きの経緯
本願は優先権主張
特願2001-143219号 優先日 平成13年 5月14日
特願2001-243272号 優先日 平成13年 8月10日
特願2001-275031号 優先日 平成13年 9月11日
特願2002-109550号 優先日 平成14年 4月11日
を伴う
原出願 特願2002-126353号
(原出願日 平成14年 4月26日)の分割出願であって、
平成19年11月29日に出願され、
平成22年 5月24日付けで通知された拒絶理由に対して、
同年 7月22日付けで手続補正書が提出されたが、
同年 8月12日付けで拒絶査定され、これに対し、
同年11月16日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、
同日付けで手続補正書が提出された後、
平成23年 7月20日付けで当審の審尋に対する回答書が提出され、
平成24年 1月17日付けで平成22年11月16日付け手続補正が却下され、
同年 2月21日付けで通知された当審による拒絶理由に対して、
同年 4月27日付けで手続補正書が提出されたものである。

第2.本願発明
本願の請求項1?4に係る発明は、平成24年 4月27日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項によって規定されるとおりのものであり、このうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は以下のとおりである。

「【請求項1】
液晶ディスプレイパネルと、
該液晶ディスプレイパネルの観察者側に配置されるとともに、複数の単位レンズを一次元又は二次元方向に形成した光拡散シートと、を備え、
前記光拡散シートの前記単位レンズはその断面形状が略台形であり、前記台形の下底を入光部、上底を出光部とするとともに、所定の屈折率N1を有する材料にて形成されており、
隣接する前記単位レンズの間の断面形状三角形の部分は、N1より低い屈折率N2を有する透明樹脂材料中に平均粒径が5μm?8μmである着色樹脂からなる光吸収粒子が添加されて形成され、
前記台形斜辺が前記出光部の法線となす角度をθとした場合、
sin(90°-θ)>N2/N1
かつ
N1<1/sin2θ
なる関係を有し、
前記光拡散シートは前記液晶ディスプレイパネルに接着されていることを特徴とする液晶表示装置。」

第3.引用刊行物
3-1.引用刊行物1
本願の優先日前に頒布された特開2000-352608号公報(平成24年 2月21日付けの当審による拒絶理由における引用刊行物1、以下「引用刊行物1」という。)には以下の事項が記載されている。下線は当審にて付与した。

「【特許請求の範囲】
【請求項1】厚さ方向に透過する光を拡散させる光拡散層を備えた光拡散シートにおいて、前記光拡散層の観察面に、断面略V字状の複数の溝を1次元方向及び2次元方向のいずれかに並列に形成したことを特徴とする光拡散シート。
【請求項2】請求項1において、前記溝の断面形状は、前記V字の2辺の長さが等しいことを特徴とする光拡散シート。
【請求項3】請求項1又は2において、前記溝を構成する両壁と、前記両壁の各々に連続する前記観察面とのなす角度が、95度乃至105度であることを特徴とする光拡散シート。
【請求項4】請求項1、2又は3において、前記溝には、気体、液体及び固体のいずれかであって前記光拡散層より低い屈折率となる物質が充填されていることを特徴とする光拡散シート。」

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、コンピュータやテレビジョン等に用いるCRTディスプレイ装置、液晶表示装置やプラズマ表示装置、CRTや液晶ライトバルブを用いた背面投射型表示装置等に用いて好適な光拡散シート、この光拡散シートを用いた透過型スクリーン、透過型表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、液晶表示装置やCRTディスプレイ装置、各種プロジェクションディスプレイ装置等においては、観察者の視認性を高めるためスクリーンに光拡散シートを用いたものが知られている。」

「【0026】本発明の実施の形態の第1例に係る光拡散シート10は、図1に示されるように、透明基材シート12と、光拡散層14と、透光性シート16と、を光源側からこの順に積層して構成される。
【0027】前記透明基材シート12は透明な樹脂シート、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)シートからなり、光源からの出射光(映像光)が入射面12Aから入射し、厚さ方向に透過可能とされている。
【0028】この透明基材シート12に積層される前記光拡散層14は紫外線硬化型の透明樹脂からなり、この光拡散層14の観察面14Aには、断面がV字状となる複数の溝18が1次元方向(図1において左右方向)に並列形成されている。
【0029】前記観察面14Aを覆うように配置される前記透光性シート16は、前記透明基材シート12と同様にPETシート等の透明な樹脂シートからなり、この透光性シート16における前記溝18に対向する表面には、黒色に着色された低屈折率の樹脂からなる光吸収層20が設けられている。なお、前記溝18の残りの空間は空気で充填されている。
【0030】前記溝18は、前記断面V字状のV字の2辺の長さが等しくなるように形成されており、又、このV字の各辺に対応する溝の両壁18Aと、この両壁18Aの各々に連続する前記観察面14Aとのなす角度αが、各々95度≦α≦105度となるようにされている。
【0031】従って前記角度αが100度の場合は、図2(A)に示されるように、前記入射面12Aに対して垂直に入射した入射光Nは、前記壁18Aに対して10度の傾斜角を有しており、この壁18Aにおいて全反射する。全反射した光は観察面14Aの直角方向に対して約20度の傾斜角をなして出射し、前記透光性シート16で多少屈折されて観察者側への出射光Sとなる。又、前記壁18Aに反射せず、各溝18と溝18との間を透過した入射光Nは、屈折されることなく直線的に観察者側に出射する。
【0032】又同様に、図2(B)に示されるように、入射光Nが前記入射面12Aの直角方向に対して±15度の範囲で拡散されるように設定した場合は、前記壁18Aにより全反射する光と、前記壁18Aで反射せず、各溝18と溝18との間を透過した光を含めて約±30度?約±40度の拡散角度範囲となって出射する。
【0033】又、図2の点線で示されるように、外光によって生じた拡散光や、他の要因によって生じた迷光等は、前記壁18Aに進入する角度が大きいため全反射せず、溝18内に屈折させられて前記光吸収層20に吸収される。」

「【0041】前記光拡散シート10は、図2に示されるように、前記溝18が形成される方向に対して直角方向に指向性がある光拡散特性を有する。従って、前記溝18が鉛直方向となるように、この光拡散シート10をディスプレイに設置すると、入射光(映像光)が主として水平方向に拡散されるため、観察者にとって大変見やすいディスプレイとなる。」

「【0045】更に、上記の性質は、前記光拡散シート10を液晶ディスプレイ装置に用いる場合にも有効である。即ち、外光が液晶素子に対して常に略垂直方向に入射する結果、観察者の視角変化による色調変化を抑制することが可能となる。」

「【0051】前記光拡散シート10、10Aにおいては、前記溝18に空気が充填されている場合を示したが、本発明はこれに限定されるものでない。この溝18には前記光拡散層14よりも低い屈折率となる物質(気体、液体、固体いずれも可能)を充填することが好ましく、更に望ましくは、前記物質を黒色に着色し、光吸収層及びBSの役目を兼ねさせるようにしても良い。
【0052】又、光拡散シート10、10Aの製造時の便利のため、前記物質を微細な粒子状固体とし、前記溝18内部に敷き詰めるようにしてもよい。このようにすれば、界面が空気となるので、前記物質の屈折率を自由に設定することが可能となり、又、この物質を黒色に着色するのに好ましい状況となる。」

「【0060】次に、図6に示される実施の形態の第4例に係る透過型表示装置48について説明する。
【0061】この透過型表示装置48は、実施形態の第1例で示したものと同様な2枚の第1及び第2光拡散シート50、50Aと、第1偏光シート52と、液晶パネル54と、第2偏光シート52Aと、バックライト装置56と、を最観察者側から順に配置して構成されている。なお、前記液晶パネル54は、カラーフィルタ層、透明電極層、液晶層等が所定の順に積層して構成される。
【0062】前記バックライト装置56は、アレイ状プリズムシート等によって、光源光が等方性の約±15度の拡散角度範囲となるように設定されている。又、前記第1及び第2光拡散シート50、50Aは、互いに溝18の方向が垂直となるように90度ずらして配置されている。
【0063】前記透過型表示装置48によれば、各偏光シート52、52A、液晶パネル54を通過した約±15度の拡散範囲の映像光が、第1及び第2光拡散シート50、50Aにより、2次元方向に各々約±30度?約±40度の範囲で拡散されて出射する。
【0064】従って、高コントラストで、且つ、広視野角となる視認性に優れた透過型表示装置48を得ることが可能となる。」

「【図1】本発明の実施の形態の第1例に係る光拡散シートを示す断面図」
【図1】は次のとおり。


「【図2】同光拡散シートの入射光を拡散する状態を示す模式図」
【図2】は次のとおり。


「【図6】本発明の実施の遺体(当審注:『形態』の誤記)の第4例に係る透過型表示装置を示す斜視図」
【図6】は次のとおり。

これらの記載事項、及び、引用刊行物1の全記載事項から、引用刊行物1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「 光拡散シート10と、第1偏光シート52、液晶パネル54、第2偏光シート52A、バックライト装置56とを、観察者側から順に配置して構成された透過型表示装置48であって、
前記光拡散シート10は、厚さ方向に透過する光を拡散する光拡散層14と、光拡散層の観察面14Aを覆うように配置されたPETシートからなる透光性シート16とを備えており、
当該光拡散層14が紫外線硬化樹脂から形成され、光拡散層の観察面14Aに、断面がV字の2辺の長さが等しい略V字状の複数の溝18が1次元方向又は2次元方向に並列に形成されており、
当該略V字状溝18には、空気と共に、黒色の粒子状固体が充填されており、
略V字状溝18を構成する壁18Aと、両壁18Aの各々に連続する観察面14Aとのなす角度αが100度であり、光拡散シート10の入射面12Aに対して垂直に入射した入射光Nは、壁18Aに対して10度の傾斜角を有しており、この壁18Aにおいて全反射し、全反射した光は観察面14Aの直角方向に対して約20度の傾斜角をなして出射し、透光性シート16で多少屈折されて観察者側への出射光Sとなるよう構成されている、
透過型表示装置48。」

第4.対比・判断
本願発明と引用発明1とを対比すると、
引用発明1の
(i)「第1偏光シート52、液晶パネル54、第2偏光シート52A、バックライト装置56」、
(ii)「光拡散シート10と」「第1偏光シート52、液晶パネル54、第2偏光シート52A、バックライト装置56とを、観察者側から順に配置した」構成、
(iii)「光拡散層14」の「1次元方向又は2次元方向に並列に形成され」「断面がV字の2辺の長さが等しい略V字状の複数の溝18」を除いた部分、及び、溝を除いた部分の光拡散層14の形状、
(iv)「観察面14Aの直角方向に対して、約20度の傾斜角をなして出射」する構成、
(v)「光拡散シート0の入射面12Aに対して垂直に入射した入射光N」が光拡散シート10に入射する構成、
(vi)「光拡散層14」が形成される材料である「紫外線硬化樹脂」、
(vii)「断面がV字状の2辺の長さが等しい略V字状の複数の溝18」、
(viii)「略V字状の溝18」に「充填され」ている「空気」、
(ix)「略V字状の溝18」に「充填され」ている「黒色の粒子状固体」、
(x)「光拡散シート10の入射面12Aに対して垂直に入射した入射光」の「壁18Aに対」する「10度の傾斜角」、
(xi)「透過型表示装置48」、
は、それぞれ、
本願発明の、
(i)「液晶ディスプレイパネル」、
(ii)「液晶ディスプレイパネルの観察者側に配置され」た構成、
(iii)「一次元又は二次元方向に形成」された「複数の単位レンズ」及び「単位レンズはその断面形状が略台形」である形状、
(iv)「台形」の「上底を出光部」とする配置、
(v)「台形の下底を入光部」とする配置、
(vi)「所定の屈折率N1を有する材料」、
(vii)「隣接する(前記)単位レンズの間の断面三角形の部分」、
(viii)「屈折率N2を有する透明」「材料」、
(ix)「隣接する(前記)単位レンズの間の断面三角形の部分」に「添加されて」いる「光吸収粒子」、
(x)「(前記)台形斜辺が(前記)出光部の法線となす角度θ」、
(xi)「液晶表示装置」、に相当する。

してみると、両者は、
「液晶ディスプレイパネルと、(該)液晶ディスプレイパネルの観察者側に配置されるとともに、複数の単位レンズを一次元又は二次元方向に形成した光拡散シートと、を備え、(前記)光拡散シートの(前記)単位レンズはその断面形状が略台形であり、(前記)台形の下底を入光部、上底を出光部とするとともに、所定の屈折率N1を有する材料にて形成されており、隣接する(前記)単位レンズの間の断面形状三角形の部分は、屈折率N2を有する透明材料で形成されるとともに、光吸収粒子が添加されてなり、(前記)光拡散シートは(前記)液晶ディスプレイパネルに配置されている液晶表示装置」の点で一致し、次の点で一応の相違点を有している。

[相違点1]
本願発明は、「N2」は「N1より低い屈折率」であるという関係を有しているのに対して、引用発明1においてはN1とN2の屈折率の関係について特定がない。
[相違点2]
本願発明は、sin(90-θ)>N2/N1なる関係を有しているのに対し、引用発明1においてはそのような特定はない。
[相違点3]
本願発明は、N1<1/sin2θなる関係を有しているのに対して、引用発明1においてはそのような特定はない。
[相違点4]
本願発明は、光拡散シートが液晶ディスプレイパネルに「接着」されている構成を有しているのに対して、引用発明1においては液晶ディスプレイパネルに配置されてはいるが、接着されているのかどうかは不明である。
[相違点5]
本願発明は、隣接する単位レンズの間の断面形状三角形の部分が、透明「樹脂」材料から形成されているのに対して、引用発明1は空気であって、樹脂ではない。
[相違点6]
本願発明は、隣接する単位レンズの間の断面形状三角形の部分に添加されている光吸収粒子が「平均粒径が5μm?8μmである着色樹脂からなる」粒子であるのに対して、引用発明1においては光吸収粒子の平均粒径と材質については特定がされていない。

以下に[相違点1]?[相違点6]について順次検討する。
[相違点1]について
引用発明1においては、「所定の屈折率N1を有する材料」が「紫外線硬化樹脂」である。また、「屈折率N2を有する透明」「材料」が「空気」であるから、屈折率N2は1.0である。

一般的に、光学部品に使用される紫外線硬化樹脂の屈折率は約1.4?1.6程度の数値を示すものであることが技術常識であって(「スリーボンド・テクニカルニュース Vol.15 昭和61年7月1日発行 紫外線硬化樹脂<<その2>> 第5頁参照。)空気の屈折率である1.0よりも低い屈折率を有する紫外線硬化樹脂は技術常識からあり得ないから、引用発明1における「屈折率N2」は、「屈折率N1」よりも低いと解するのが相当である。
更に、引用刊行物1【0051】には「溝18には前記光拡散層14よりも低い屈折率となる物質(気体、液体、固体いずれも可能)を充填することが好ましい」とも記載されており、このことも引用発明1における「屈折率N2」が「屈折率N1」よりも低いことを示唆している。
そもそも、「屈折率N1」の物質から、「屈折率N2」の物質に光が入射する場合において、N1≦N2の場合(低屈折率側から高屈折率側に入射する場合)には入射角度に因らず全反射が起こらない(臨界角が存在しない。)ことは良く知られた自然法則である。
引用発明1は、入射光Nが「壁18Aにおいて全反射」するように構成されているのであるから、光拡散層14を構成する紫外線硬化樹脂の「屈折率N1」が、溝18の界面を構成する透明材料の「屈折率N2」に対して、少なくともN1>N2の関係を満たすように構成されていること、すなわち、引用発明1が当該[相違点1]の屈折率の関係を満たすことは自明である。
以上により、引用発明1においても、「屈折率N2」は「屈折率N1」よりも「低い」という関係を満たしており、[相違点1]の点で本願発明と引用発明1は相違せず、当該[相違点1]は相違点ではない。

[相違点2]について
引用発明1においては、θ=10度であるから、sin(90-θ)はsin80°(=0.9848・・・)である。
そして、[相違点1]の箇所でも検討したとおり、N1(紫外線硬化樹脂)=約1.4?1.6程度、N2(空気)=1.0であるから、N2/N1=約0.625?0.7142程度である。
そうすると、引用発明1においても、sin(90-θ)>N2/N1を満たしている。

逆に、引用発明1においてsin80(=0.9848・・・)>N2/N1を満たさないとすると、N1≦1.015ということになるが、技術常識から、そのような屈折率を有する紫外線硬化樹脂は考えられないから、引用発明1はsin(90-θ)>N2/N1を満たすものと解するほかはない。

当該[相違点2]の関係式は、本願明細書【0037】及び【図3】において説明されているように、単位レンズの台形斜辺で光が全反射するための臨界条件を、スネルの法則に基づいて数式で表現したものでしかなく、光が全反射するのであれば、当然にこの[相違点2]の関係式を満たすものである。
引用発明1においては、入射光Nが「壁18Aにおいて全反射」するように構成されているものであるから、引用発明1においても[相違点2]の関係式を満たさないということは、自然法則上あり得ない。
したがって、[相違点2]の点で、本願発明と引用発明1とは相違せず、当該[相違点2]は相違点ではない。
また、仮に、引用刊行物1において[相違点2]の式が直接的に記載されていないことを以て、相違点であるとしても、上記検討したとおり、引用刊行物1に記載された事項から、当業者が容易に想起し得る事項である。

[相違点3]について
[相違点1]の箇所でも記載したとおり、引用発明1においては、N1(紫外線硬化樹脂)=約1.4?1.6程度であり、θ=10度である。
そうすると、[相違点3]の関係式は、左辺:N1=約1.4?1.6程度、右辺:1/sin2θ=1/sin20°=2.923・・・となり、N1<1/sin2θは満たすものと解するのが相当である。

逆に、引用発明1が[相違点3]の関係式を満たさないとすると、N1≧2.923ということになるが、技術常識から2.923を超えるような高屈折率を有する紫外線硬化樹脂は存在しないので、引用発明1はN1<1/sin2θ、即ち、[相違点3]の関係式を満たすものと解するほかはない。

この[相違点3]の関係式は、本願明細書【0038】及び【図3】に説明されているように、光拡散シートS(屈折率N1)の出射面から空気(屈折率1.0)側へ出射される条件、即ち、光拡散シートSの出射界面において全反射しない条件をスネルの法則に基づいて数式で表現したものでしかない。なお、最終的に光拡散シートSから外部に光が取り出される出射条件の[相違点3]の関係式は、屈折率N1の単位レンズと空気との間に、別の屈折率を有する材料層が介在する場合であっても、出射条件は、同じく[相違点3]の関係式になる。
そして、引用発明1においても、「観察者側への出射光S」が出射するように構成されているものであるから、[相違点3]の関係式を満たさないことは、自然法則上あり得ないと言うべきである。
したがって、引用発明1は[相違点3]の式を満たしているから、本願発明と引用発明1とは[相違点3]の点で相違せず、当該[相違点3]は相違点ではない。
また、仮に、引用刊行物1において[相違点3]の式が直接的に記載されていないことを以て、相違点であるとしても、上記検討したとおり、引用刊行物1に記載された事項によって、当業者が容易に想起し得る事項である。

[相違点4]について
引用発明1においては、光拡散シートは液晶ディスプレイパネルの観察者側に配置されているが、パネルに「接着」されているかどうかは文言上不明である。しかしながら、光拡散シートを液晶ディスプレイパネルに「接着」して配置することは文献を例示するまでもなく周知技術に過ぎず、当業者が適宜なし得る設計的な事項である。また、引用発明1において光拡散シートが液晶ディスプレイパネルに接着して配置されていることは、記載されているに等しい事項であるとも言える。

[相違点5]について
上記[相違点1]についての検討箇所でも既に言及したが、引用刊行物1【0051】には溝18を充填する材質として空気のほか、「前記光拡散シート10、10Aにおいては、前記溝18に空気が充填されている場合を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。この溝18には前記光拡散層14よりも低い屈折率となる物質(気体、液体、固体いずれも可能)を充填することが好ましく」と記載されており、単位レンズ間の断面形状三角形の部分を、単位レンズ(引用発明1においては光拡散層14)よりも低屈折率である気体、液体、固体の物質にて充填することが示唆されている。このような単位レンズ間の断面形状三角形の部分を低屈折率透明樹脂にて充填することは、例えば、当審による平成24年 2月21日付け拒絶理由通知の予備的見解の欄で例示したように、
特開昭62-108232号公報(以下、「周知例1」という。)、
特開昭62-286030号公報(以下、「周知例2」という。)、
特開昭63-80241号公報(以下、「周知例3」という。)、
にも記載されているとおり、本願出願前に周知の技術であるから、
引用発明1において、単位レンズ間の断面形状三角形の部分を充填する材質として、空気に替えて、透明樹脂を採用することは当業者であれば容易になし得た事項である。

[相違点6]について
引用刊行物1の記載事項からは、引用発明1の「黒色の粒子状固体」の材質を明確に特定することはできないものの、当該「黒色の粒子状固体」の機能は、壁18Aで全反射せずに溝18内に進入した拡散光や迷光等を吸収する(引用刊行物1【0033】、【0051】)というものであるのだから、当該機能を達成することができる限りは、「黒色の粒子状固体」としてどのような材質を用いるのかは、当業者が適宜選択すれば足りる設計事項というべきである。
このことは、前記[相違点5]にて、単位レンズ間の断面形状三角形の部分を低屈折率透明樹脂にて充填することが周知技術であることの例示として挙げた周知例1に、当該低屈折率透明樹脂に添加する光吸収粒子として、中空ガラス球を黒く着色したものを用いる実施例が記載されているとともに、『また、球状体に着色する方法も前記実施例に限らず、もともと黒いガラスあるいはガラス以外の黒色物質を用いてもよい。』(第7頁右上欄第16?18行)と記載されており、
同周知例2に、低屈折率透明樹脂に添加する光吸収粒子として、カーボン球状粒子を用いる実施例が記載されており、
同周知例3に、低屈折率透明樹脂に添加する光吸収粒子について、『添加する微粒子の色は特に問わないが、黒色顔料や黒く染色した微粒子のほうが光吸収性を低下させなので好ましい。黒色染料には一般にカーボンブラック等が顔料として用いられているが、黒く着色したガラスビーズや黒く表面染色したポリマー系ビーズを用いると、・・・(中略)・・・便利である。』(第3頁左下欄第1?8行)と記載されており、
従来の低屈折率透明樹脂に添加する光吸収粒子として、着色樹脂(周知例3)を含む様々な材質のものが用いられていることからも裏付けられる。
よって、引用発明1の「黒色の粒子状固体」の材質として、着色樹脂を用いることは、単なる設計事項でしかない。

また、光吸収粒子の平均粒径は、単位レンズ間の断面形状三角形の部分の三角形の底辺と高さ、つまり断面形状三角形の大きさによって、その上限が制限される数値であるし、また、断面形状三角形部分に充填される低屈折率材料N2と単位レンズN1との間の界面で起こる光の全反射機能を阻害しない程度に低屈折率材料N2中での分散性を担保する必要性もあり、かつ、光吸収粒子自体が有する光吸収性能とのバランスをも勘案して決定されるものである。
ここで、本願明細書の発明の詳細な説明を参酌しても、光吸収粒子の平均粒径を請求項1に規定されるように5μm?8μmの数値範囲に限定したことによって臨界的な効果をもたらすものでもないことから、光吸収粒子の平均粒径範囲は、当業者が技術の具体的適用に伴って適宜決定する程度の設計事項に過ぎない。

以上の[相違点1]?[相違点6]についての検討事項を踏まえると、本願発明は引用刊行物1に記載された発明及び周知技術ならびに技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第5.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-07-12 
結審通知日 2012-07-17 
審決日 2012-08-06 
出願番号 特願2007-309328(P2007-309328)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤岡 善行  
特許庁審判長 木村 史郎
特許庁審判官 磯貝 香苗
清水 康司
発明の名称 液晶表示装置  
代理人 山本 典輝  

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