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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B
管理番号 1263566
審判番号 不服2010-29588  
総通号数 155 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-12-28 
確定日 2012-09-20 
事件の表示 特願2007-547425「アンテナダイバーシティ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 7月 6日国際公開、WO2006/069858、平成20年 7月10日国内公表、特表2008-524948〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成17年11月22日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2004年12月23日、ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする出願であって、平成22年3月30日付けで拒絶理由が通知され、同年8月9日付けで手続補正書が提出され、同年8月26日付けで拒絶査定され、これに対して同年12月28日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。


2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成22年8月9日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである(以下「本願発明」という)。

「アンテナダイバーシティ装置において、
複数のアンテナ(11,12)と、ダイバーシティアンテナ(11,12)の複数の受信帯域が周波数スペクトルに関して隣接して並置され、共通の伝送媒体(5)、例えば同軸ケーブルを介して伝送されるようにアンテナ(12)の少なくとも1つの受信帯域を変換するアンテナ側の周波数変換器(3)とを有し、
共通の媒体(5)に接続されている受信器(6)の局部発振器信号または該局部発振器信号から導出された信号を周波数変換に使用することを特徴とする、アンテナダイバーシティ装置。」


3.引用例
(1)引用例1について
原査定の拒絶の理由に引用された特表平10-509848号公報(以下、「引用例1」という)には、下記の事項が記載されている。

(ア)「発明の概要
本発明は、1つの態様において、複数のアンテナに必要な帰路ケーブルの本数を最少にするアンテナダイバーシチ用技術を提供する。1つの実施例では、1本のケーブルは、受信機を複数のアンテナに接続し、かつ複数のアンテナからの信号は1本のケーブルに合成される。」(第9頁第21行?同頁第25行)

(イ)「図2の受信機システム120は、空間的に分離されている2本のアンテナ130と131を備え、送信信号113を受信することに応答して、複数のアンテナ信号140と141が、アンテナ130と131によりそれぞれ発生される。アンテナ130と131とは、空間的に分離されているので、それぞれ異なった信号のフェージングとパス損失を受ける。それ故、アンテナ信号140と141とは、振幅と位相が異なり、周波数のわずかの偏移を受ける。
詳細後述するように、アンテナ信号140と141のうちの1つは、一般に、予め定められた周波数オフセット又は偏移を与えられ、かつ2つの信号は、送信のためケーブル152で接続される。ケーブル152の他端では、接続された信号は分離され、かつブランチから周波数オフセットを除去するために、逆の周波数オフセットが、分離された信号の1つのブランチに使われる。結果として受信機は、2つのアンテナ信号140と141とを同時に受信し、かつ各アンテナ信号140と141は、予め定められた周波数オフセットにより分離されている他方の上に重ねられる。予め定められた周波数オフセットは、信号が充分に他から分離されるが受信信号の全帯域幅より充分に小さくなるように選択される。
詳細には、図2の好ましい実施例に示されているように、各アンテナ信号140と141は、周波数F1を有すると仮定する。選択されたアンテナ信号141の周波数F1は、他のアンテナ信号140の周波数からオフセット周波数F0を得る。好ましくは、周波数オフセットF0は、ミキサ(混合器)150を用いてアンテナ信号141に周波数F0を有する信号(例えば、正弦波)を掛けることにより得られる。ミキサ150は好ましくは単側波帯ミキサであり、上記ミキサは、周波数F0と周波数F1を有する入力信号に対して、F1+F0又はF1-F0のいずれかの周波数を有する出力信号をそれぞれ発生するが、同時には発生しない。」(第12頁第28行?第13頁第22行)

(ウ)「アンテナ信号140とミキサ150の出力は、加算器151によって合成される。加算器151から出力された合成された信号(以下、帰路信号という。)は、帰路ケーブル152により送信される。ケーブル152による送信の前に、1つ又はそれ以上のミキサ、フィルタ、増幅器又はエレクトロニクスを用いて、好ましくは、帰路信号は中間周波数又はベースバンド周波数にダウンコンバージョンされるように周波数変換され、かつ受信機端末(図示せず。)において適当なIFに再変換される。例えば帰路信号は、同軸ケーブル、光ファイバによる通信、又は当業者に公知の技術を用いた他のタイプの送信媒体に適している。とって代わって、アンテナ信号140と141を中間周波数又はベースバンド周波数に変換するための回路は、さらに追加的又は可能な限り重複したハードウエアを出費して、各アンテナのアップストリーム(上流側)に配置されてもよい。
ケーブル152による送信後に、合成された信号は信号分割器160により2つの同じ信号166と167に分離される。信号166は、以後の処理のために受信機164のポート162(例えば基地局の)に入力される。周波数F0(すなわち、ミキサ150への同一周波数F0の入力)を有する信号(例えば、正弦波)は、ミキサ161に入力される。ミキサ150と同様に、ミキサ161は、好しくは単側波帯ミキサであるが、ミキサ150と同様に、相補的演算処理実行する。このようにして、ここで記述された実施例では、ミキサ161は、F0とF1の周波数を有する入力信号に対して、それぞれF1-F0の周波数を有する出力信号を発生する。」(第14頁第5行?同頁第24行)

よって、上記(ア)乃至(ウ)及び図2の記載から、引用例1には、実質的に下記の発明(以下、「引用発明」という)が記載されている。

「アンテナダイバーシチ装置において、
2つのダイバーシチアンテナと、
一方の前記ダイバーシチアンテナが受信した信号に周波数F_(0)を有する信号を掛けて周波数オフセットを与えるミキサとを有し、
他方の前記ダイバーシチアンテナが受信した信号と前記ミキサが出力した信号を合成し、合成した信号を同軸ケーブルを介して受信機へ伝送するアンテナダイバーシチ装置。」


(2)引用例2について
原査定の拒絶の理由に引用された特開平2-13020号公報(以下、「引用例2」という)には、下記の事項が記載されている。

(エ)「第2図に示す衛星通信受信装置において、コンバータ2には第1図のコンデンサ18とAGC回路13との間にパルス幅復調回路11に変えて中間周波信号を阻止するインダクタ19が挿入されている。また、受信機4は第1図のAGC信号発生回路9およびパルス幅変調回路10が取り除かれ、局部発振回路7が増幅・復調回路6と直接接続されている。
このような構成において、パラボラアンテナ1によって受信された受信信号はコンバータ2において約1GHzの中間周波信号に変換かつ増幅され、出力信号f_(0)となり、同軸ケーブル3を介して受信機4に伝送される。次に、伝送された信号f'_(0)は増幅・復調回路6によって増幅・復調されてコンピュータ5に送られて処理される。一方、受信機4からは所定のレベルの局部発振信号f_(1)が同軸ケーブル3を介してコンバータ2に伝送される。この伝送された信号f'_(1)は、逓倍回路12において逓倍され混合回路15に入力されると共に、AGC回路13に入力される。」(第4頁右上欄第20行?同頁左下欄第20行)

よって、上記(エ)及び図2の記載から、引用例2には、下記の事項(以下、「引用例2記載事項」という)が記載されている。

「アンテナ側に設けられたコンバータが同軸ケーブルを介して受信機に接続された受信装置において、
受信機の局部発振回路の局部発振信号を同軸ケーブルを介してコンバータへ伝送し、混合回路において受信信号と混合されること。」


4.対比
(1)本願発明と引用発明との対応関係について
あ.引用発明の「アンテナダイバーシチ装置」、「2つのダイバーシチアンテナ」、「同軸ケーブル」は、本願発明の「アンテナダイバーシティ装置」、「複数のアンテナ(11,12)」、「共通の伝送媒体(5)」に相当している。

い.引用発明の「ミキサ」は、受信機から見てアンテナ側に設けられたものであり、かつ、周波数オフセットを与えるものであるから、本願発明の「アンテナ側の周波数変換器(3)」に相当している。

う.引用発明では、2つのダイバーシチアンテナは同じ周波数の信号を受信するものであるところ、「一方のダイバーシチアンテナが受信した信号」は周波数オフセットが与えられて「他方のダイバーシチアンテナが受信した信号」と合成される構成になっているので、引用発明の同軸ケーブルに伝送される信号は、「ダイバーシティアンテナ(11,12)の複数の受信帯域が周波数スペクトルに関して隣接して並置され」たものとなっていることは明らかである。

(2)本願発明と引用発明の一致点及び相違点について
上記の対応関係から、本願発明は下記の点で引用発明と一致し、また相違する。

[一致点]
「アンテナダイバーシティ装置において、
複数のアンテナ(11,12)と、ダイバーシティアンテナ(11,12)の複数の受信帯域が周波数スペクトルに関して隣接して並置され、共通の伝送媒体(5)、例えば同軸ケーブルを介して伝送されるようにアンテナ(12)の少なくとも1つの受信帯域を変換するアンテナ側の周波数変換器(3)とを有することを特徴とする、アンテナダイバーシティ装置。」
の点で一致している。

[相違点]
本願発明は、「共通の媒体(5)に接続されている受信器(6)の局部発振器信号または該局部発振器信号から導出された信号を周波数変換に使用する」ものであるのに対し、引用発明はそのような構成とはなっていない点。


5.当審の判断
引用例1には、上記3.(1)(ウ)に記載されているように、受信機側においても周波数F_(0)を有する信号を用いて周波数変換を行うことが記載され、当該周波数F_(0)を有する信号は受信機側に設けられた局部発振器から生成されたものであることは自明であるものの、受信機側の周波数変換に利用される当該周波数F_(0)を有する信号を、アンテナ側のミキサへ供給することは記載されていない。

一方、受信装置において、アンテナ側に設けられた受信信号の周波数を変換するミキサに入力される信号として、同軸ケーブルに接続されている受信機の局部発振信号から導出された信号を使用することは、引用例2記載事項に、

「アンテナ側に設けられたコンバータが同軸ケーブルを介して受信機に接続された受信装置において、
受信機の局部発振回路の局部発振信号を同軸ケーブルを介してコンバータへ伝送し、混合回路において受信信号と混合されること。」

と記載されているように、公知技術である。
引用例2記載事項のように、受信機の局部発振回路の局部発振信号を同軸ケーブルを介してコンバータへ伝送し、混合回路において受信信号と混合するようにすれば、コンバータ内に独自に局部発振回路を設ける必要がないというメリットがあることは明らかである。また、引用発明において、同軸ケーブルで接続された受信機とミキサのうち、ミキサ側には局部発振回路を設けないようにすることが可能であれば好ましいことは明らかである。

そして、引用発明と引用例2記載事項とは、受信装置である点、アンテナ側に受信信号の周波数を変換する構成を有している点、アンテナ側に設けられた受信信号の周波数を変換する構成と受信機とは同軸ケーブルで接続されている点において共通していることを鑑みれば、引用発明の周波数変換を行う構成に対して引用例2記載事項の技術を適用することに格別の困難性は認められない。

してみると、引用発明に引用例2記載事項を適用し、受信機側に設けられた局部発振器の周波数F_(0)の信号を、同軸ケーブルを介してアンテナ側に設けられたミキサの供給することで、相違点である「共通の媒体(5)に接続されている受信器(6)の局部発振器信号または該局部発振器信号から導出された信号を周波数変換に使用する」ものとすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

また、本願発明の作用効果も、引用発明及び公知技術から当業者が予測できる範囲のものである。


6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び公知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-04-16 
結審通知日 2012-04-19 
審決日 2012-05-07 
出願番号 特願2007-547425(P2007-547425)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石田 昌敏  
特許庁審判長 江口 能弘
特許庁審判官 近藤 聡
飯田 清司
発明の名称 アンテナダイバーシティ装置  
代理人 久野 琢也  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 矢野 敏雄  
代理人 高橋 佳大  
代理人 星 公弘  
代理人 二宮 浩康  
代理人 篠 良一  

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