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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H03H
管理番号 1263573
審判番号 不服2011-8064  
総通号数 155 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-04-15 
確定日 2012-09-20 
事件の表示 特願2007-529463「圧電振動デバイスおよびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 2月15日国際公開、WO2007/017992〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2006年(平成18年)6月28日(優先権主張2005年8月10日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成22年10月1日付けの拒絶理由通知に対して、平成22年11月24日付けで手続補正がなされたが、平成23年1月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年4月15日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成23年4月15日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年4月15日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
平成23年4月15日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲のうち、請求項1は、以下のとおりである。
「【請求項1】
ベースとキャップとから内部空間を有するパッケージが構成され、前記内部空間内の前記ベース上に圧電振動片が保持された圧電振動デバイスにおいて、
前記内部空間内における前記圧電振動片の+X軸方向が設定され、
前記圧電振動片は、基部と、この基部から突出した複数本の脚部とから構成され、
前記脚部に、異電位で構成された励振電極が形成され、
前記基部および前記脚部に、前記励振電極を前記基部で外部電極と電気的に接続させるために前記励振電極から引き出された引出電極が形成され、
前記基部の表側主面に、両側面から±X軸方向に沿って溝部が複数形成され、前記複数の溝部は±Y軸方向に沿って形成されることを特徴とする圧電振動デバイス。」

上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項について限定を付加するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かについて以下に検討する。

2.引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された特開2004-15562号公報(以下、「引用文献」という。)には、次の事項が記載されている。

(1)「【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態に係る圧電デバイスの好ましい実施の形態を、添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る圧電デバイスである圧電振動子を説明する斜視図であり、図2は図1のA-A線に沿った断面図であり、図3は音叉型圧電振動片をマウント面側(+Z面側)から見た斜視図である。なお、図2と図3においては、音叉型圧電振動片に形成した電極パターンが省略してある。
【0014】
これらの図において、圧電振動子20は、音叉型圧電振動片22を備えている。音叉型圧電振動片22は、一対の振動腕24、26を有する。これらの振動腕24、26は、基部28と一体に形成してある。この音叉型圧電振動片22は、圧電材料である水晶のいわゆるZ板から従来と同様にして形成される。すなわち、音叉型圧電振動片22の形成は、まず、水晶基板(図示せず)の表面に金属耐食膜をスパッタリングや蒸着によって形成する。さらに、耐食膜の表面にフォトレジストを塗布してレジスト膜を形成し、このレジスト膜をフォトリソグラフィ法によって露光、現像して音叉型にパターニングする。その後、音叉型のレジスト膜をマスクとして耐食膜をエッチングして水晶基板の表面を露出させ、水晶基板をフッ酸系のエッチング液によって音叉型にエッチングすることにより、音叉型圧電振動片を得ることができる。このようにしてフォトリソグラフィ加工によって形成した音叉型圧電振動片22は、長手方向、幅方向、厚さ方向のそれぞれが、図3に示したように水晶のY軸方向、X軸方向、Z軸方向に対応している。
【0015】
そして、音叉型圧電振動片22は、振動腕24、26の先端面が+Y側面、基部28の振動腕24、26が設けられている側と反対側の端面が-Y側面となっている。また、音叉型圧電振動片22は、この実施形態の場合、振動腕24の外側の面(図3の右側の面)が+X側面、振動腕26の外側の面(図3の左側の面)が-X側面であって、図1、図3における下側の面が+Z側面、上側の面が-Z側面となっている。さらに、音叉型圧電振動片22は、後述するように、+Z側面がマウント面となっていて、基部28の+Z側面の端部に、銀ペーストなどからなる一対のマウント材30(30a、30b)が設けてある。ここで、振動腕24を基部28につなぐ股部(基部)に形成されるエッチング残り部16は、マウント面となる下側面においてY方向に長く、振動腕24、26の屈曲振動方向であるX方向においてほとんど存在せず、反対の上側面において振動腕24、26の屈曲振動方向であるX方向に長くなっている。
【0016】
音叉型圧電振動片22の表面には、図1に示したように、電極パターン32が形成してある。電極パターン32は、例えばCr膜からなる下地にAu膜を設けた2層構造によって形成してある。ただし、アルミニウム(Al)膜などによる単層構造であってもよい。そして、電極パターン32は、図1の上面と下面とで対称に形成してある。
【0017】
電極パターン32は、各振動腕24、26の上下の面に形成した表面励振電極部34a、36aと、各振動腕24、26のそれぞれの両側面に形成した側面励振電極部36b、34bと、基部28の上下面に形成したマウント電極部34c、36cとを有している。また、各振動腕24、26の両側面の側面励振電極部36b、34bは、接続電極部36g、34gによって接続されている。そして、上面の各マウント電極部34c、36cは、側面電極部34d、36d(側面電極部34dは図示せず)を介して下面側の対応するマウント電極部34c、36c(図示せず)に電気的に接続してある。
【0018】
さらに、振動腕24の表面励振電極部34aは接続電極部34eを介してマウント電極部34cに接続してあり、振動腕26の両側面に設けた側面励振電極部34bは接続電極部34f、34eを介してマウント電極部34cに接続してある。また、振動腕26に設けた表面励振電極部36aは接続電極部36eによってマウント電極部36cに接続してあり、振動腕24の両側面に設けた側面励振電極部36bは下側面に形成した接続電極部36f、接続電極部36e(図示せず)を介してマウント電極部36cに接続してある。そして、下側面の各マウント電極部34c、36cには、図3に示したように、マウント材30が設けてある。このマウント材30は、図2に示したように、パッケージ40の底板部42に形成したマウント電極44に音叉型圧電振動片22を固着し、音叉型圧電振動片22のマウント電極部34c、36cとパッケージ40のマウント電極44とを電気的に接続する。
【0019】
パッケージ40は、実施形態の場合、パッケージ本体46がセラミックからなるいわゆるセラミックパッケージであって、複数枚(実施形態の場合、3枚)のセラミックシートを積層して箱状に形成してある。そして、パッケージ40は、底板部42の下面に一対の外部電極48が設けてある(図2参照)。これらの外部電極48は、底板部42に形成した貫通孔50を介してマウント電極44に電気的に接続してある。したがって、一対の外部電極48間に電圧を印加することにより、マウント電極44、マウント材30を介して電極パターン32に電圧を印加することができ、各振動腕24、26の表面励振電極部と側面励振電極部との間に電圧が印加され、各振動腕24、26が水晶のX方向に屈曲振動を行なう。
【0020】
パッケージ40は、図1、図2に2点鎖線で示したように、蓋板52を有する。この蓋板52は、例えばガラス板から形成してあって、パッケージ本体46の上面に配置される。そして、蓋板52は、パッケージ本体46に固着され、音叉型圧電振動片22を実装したパッケージ40のキャビティ54を気密に封止し、パッケージ40の内部を真空状態に保持する。」

(2)上記(1)の記載を総合すれば、引用文献には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「蓋板52を有するパッケージ40の底板部42に形成したマウント電極44に音叉型圧電振動片22を固着した圧電振動子20において、
前記音叉型圧電振動片22は、幅方向が、水晶のX軸方向に対応しており(ここで、+X軸方向と-X軸方向とは区別されている)、
前記音叉型圧電振動片22は、基部28と、この基部28と一体に形成した一対の振動腕24、26を有し、
各振動腕24、26の上下の面に形成した表面励振電極部34a、36aと、各振動腕24、26のそれぞれの両側面に形成した側面励振電極部36b、34bと、基部28の上下面に形成したマウント電極部34c、36cとを有しており、
振動腕24の表面励振電極部34aは接続電極部34eを介してマウント電極部34cに接続してあり、振動腕26の両側面に設けた側面励振電極部34bは接続電極部34f、34eを介してマウント電極部34cに接続してあり、また、振動腕26に設けた表面励振電極部36aは接続電極部36eによってマウント電極部36cに接続してあり、振動腕24の両側面に設けた側面励振電極部36bは下側面に形成した接続電極部36f、接続電極部36eを介してマウント電極部36cに接続してあり、
該マウント電極部34c、36cとパッケージ40のマウント電極44とを電気的に接続し、底板部42に形成した貫通孔50を介してマウント電極44に電気的に接続した外部電極を有する圧電振動子20」

3. 対比・判断
(1)本願補正発明と引用発明との対比
引用発明の「パッケージ40」、「蓋板52」、「音叉型圧電振動片22」は、それぞれ本願補正発明の「ベース」、「キャップ」、「圧電振動片」に相当し、引用発明の「パッケージ40」と「蓋板52」とにより構成される箱体が、本願補正発明の「パッケージ」に相当する。
そして、前記箱体の内部空間内の「パッケージ40」の「底板部42に形成したマウント電極44」に「音叉型圧電振動片22」が固着されている。
それゆえ、本願補正発明と引用発明とは、「ベースとキャップとから内部空間を有するパッケージが構成され、前記内部空間内の前記ベース上に圧電振動片が保持された圧電振動デバイス」である点で一致する。

引用発明は、内部空間内に配置されている「音叉型圧電振動片22は、幅方向が、水晶のX軸方向に対応」しているものであって、+X軸方向と-X軸方向とは区別がされているものであるから、内部空間内における「音叉型圧電振動片22」の+X軸方向が設定されているということができる。
それゆえ、本願補正発明と引用発明とは、「内部空間内における圧電振動片の+X軸方向が設定」されている点で一致する。

引用発明の「基部28」、「一対の振動腕24、26」は、それぞれ本願補正発明の「基部」、「基部から突出した複数本の脚部」に相当する。
それゆえ、本願補正発明と引用発明とは、「圧電振動片は、基部と、この基部から突出した複数本の脚部とから構成」されている点で一致する。

引用発明の「表面励振電極部34a、36aと側面励振電極部34b、36b」は、本願補正発明の「励振電極」に相当し、引用発明の「各振動腕24、26」に形成した「接続電極部34e、36e、34f、36f」及び「基部28」に形成した「マウント電極部34c、36c」は、本願補正発明の「引出電極」に相当する。
そして、引用発明は、「マウント電極部34c、36c」と「マウント電極44」とが電気的に接続され、「マウント電極44」と「外部電極」とが電気的に接続されており、前記「表面励振電極部34a」と「表面励振電極部36a」とに、あるいは前記「側面励振電極部34b」と「側面励振電極部36b」とに対して、「外部電極」から異電位が印加されることは明らかである。
結局のところ、本願補正発明と引用発明とは、「前記脚部に、異電位で構成された励振電極が形成され、前記基部および前記脚部に、前記励振電極を前記基部で外部電極と電気的に接続させるために前記励振電極から引き出された引出電極が形成され」た点で一致する。

したがって、本願補正発明と引用発明とは、以下の点で一致し、相違する。
[一致点]
「ベースとキャップとから内部空間を有するパッケージが構成され、前記内部空間内の前記ベース上に圧電振動片が保持された圧電振動デバイスにおいて、
前記内部空間内における前記圧電振動片の+X軸方向が設定され、
前記圧電振動片は、基部と、この基部から突出した複数本の脚部とから構成され、
前記脚部に、異電位で構成された励振電極が形成され、
前記基部および前記脚部に、前記励振電極を前記基部で外部電極と電気的に接続させるために前記励振電極から引き出された引出電極が形成される圧電振動デバイス。」

[相違点]
本願補正発明は、基部の表側主面に、両側面から±X軸方向に沿って溝部が複数形成され、前記複数の溝部は±Y軸方向に沿って形成されるのに対して、
引用発明は、そのような複数の溝部が形成されていない点。

(2)相違点に対する判断
本願補正発明において、(ア)「基部の表側主面に、両側面から±X軸方向に沿って溝部が形成される」点と、(イ)溝部が複数であって、そのような「複数の溝部は±Y軸方向に沿って形成される」点とは、それぞれ、その構成に基づく効果が異なるものである。

本願明細書を参酌すると、上記構成(ア)「基部の表側主面に、両側面から±X軸方向に沿って溝部が形成される」ことによる効果は、本願明細書の段落【0059】によれば、「基部23の表側主面241に、両側端231、232から±X軸方向に沿って溝部233が形成されているので、衝撃時の周波数変動を抑えるのに好適である。」こと、及び「溝部233によって、第1、2脚部221、222から基部23へ伝わる振動漏れを抑制することが可能となる。」ことである。
また、上記構成(イ)「複数の溝部は±Y軸方向に沿って形成される」ことによる効果は、本願明細書の段落【0060】によれば、「溝部233が±Y軸方向に沿って8つ形成されるので、1つの溝部233が形成された場合と比較して、第1、2脚部221、222から基部23を介して外部へ伝わる振動漏れを抑制するのに好ましい。」ことであり、また、「溝部233が±Y軸方向に沿って8つ形成されるので、1つの溝部233が形成された場合と比較して、本実施例では各溝部233の±Y軸方向の寸法は短くなるように設定されることが想定される。この場合、1つの溝部233が形成された場合と比較して、本実施例にかかる水晶振動片2の基部23の強度を上げることが可能となる。」ことである。

また、平成22年11月24日付けの意見書には、上記構成(ア)と構成(イ)とにより、基部の中央部分に伝わる必要な振動を阻害させることなく、脚部から基部を介して外部に伝わる側面部分の不要な振動漏れを防ぐこと、及び、参考図Bを示して、構成要件(1-2)及び(1-4)を有しない構成に比べて、構成要件(1-2)のみを有しない構成(構成要件(1-4)を有する構成)では、落下後の周波数変化が少ないことを主張している。なお、構成要件(1-4)とは、上記構成(ア)及び(イ)のことである。
(意見書中の参考図B)

これらを整理すると、本願明細書の記載によれば、
上記構成(ア)によって、衝撃時の周波数変動を抑える効果と、脚部から基部へ伝わる振動漏れを抑制する効果とが得られ、
上記構成(イ)によって、脚部から基部を介して外部へ伝わる振動漏れを抑制する効果と、基部の強度を上げる効果とが得られるものであり、

意見書における主張によれば、
上記構成(ア)によって、基部の中央部に伝わる必要な振動を阻害させることなく、脚部から基部を介して外部に伝わる不要な振動漏れを防ぐ効果が得られ、
上記構成(ア)及び(イ)によって、落下の衝撃時による周波数変動を抑える効果が得られるというものである。

つまり、意見書において主張する、上記構成(ア)及び(イ)によって、落下の衝撃時による周波数変動を抑える効果は、本願明細書に記載された、上記構成(ア)による、衝撃時の周波数変動を抑える効果であって、本願明細書の記載及び意見書における主張を総合しても、上記構成(ア)と(イ)とを組み合わせたことによる新たな効果が得られるというものではなく、せいぜい上記構成(ア)単独による効果が増強される程度のことである。

それゆえ、上記構成(ア)と(イ)とは一体としてとらえるべきものではなく、別々に容易想到性を判断するべきものである。

まず、上記構成(ア)「基部の表側主面に、両側面から±X軸方向に沿って溝部が形成される」点については、次のとおりである。

基部と、この基部から突出した複数本の脚部とから構成される圧電振動片の基部の表側主面に、両側面から±X軸方向に沿って溝部を形成することにより、脚部から基部側への振動漏れを低減することは周知のことである。(周知例として、特開2004-260718号公報(以下、「周知例1」という。)を提示する。)
引用発明において、脚部から基部側への振動漏れを低減するために、該周知の技術を用いることによって、基部の表側主面に、両側面から±X軸方向に沿って溝部を形成することに、何ら困難な点はない。
なお、本願補正発明における、衝撃時の周波数変動を抑えることができる効果は、周知技術のように、圧電振動片の基部の表側主面に、両側面から±X軸方向に沿って溝部を形成することによって、同じ構成に基づいて自ずと奏する効果にすぎない。

次に、上記構成(イ)溝部が複数であって、そのような「複数の溝部は±Y軸方向に沿って形成される」点については、次のとおりである。

基部と、この基部から突出した複数本の脚部とから構成される圧電振動片の基部の表側主面に、複数の溝部を±Y軸方向に沿って形成することにより、脚部から基部側への振動漏れを低減することは周知のことである。(周知例として、実願昭50-58807号(実開昭51-138076号)のマイクロフィルム(以下、「周知例2」という。)を提示する。)
引用発明において、脚部から基部側への振動漏れを低減するために、該周知の技術を用いることによって、複数の溝部を±Y軸方向に沿って形成することに、何ら困難な点はない。

なお、本願の請求項1の記載からは、本願補正発明における、両側面から±X軸方向に沿って形成される溝部が、中央部分で分断されているものであるとは、必ずしも解されず、上記周知例2のように、両側面から±X軸方向全幅にわたって溝部が形成されているものも含まれると解されるが、審判請求書における審判請求人の主張を踏まえて、本願補正発明は、両側面から±X軸方向に沿って形成される溝部が中央部分で分断されているものととらえて判断した。本願補正発明を、両側面から±X軸方向全幅にわたって溝部が形成されているものととらえるならば、上記構成(ア)及び(イ)は、共に周知例2に示されている。

以上のとおりであるから、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.まとめ
したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明の認定
平成23年4月15日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成22年11月24日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりのものである。
「【請求項1】
ベースとキャップとから内部空間を有するパッケージが構成され、前記内部空間内の前記ベース上に圧電振動片が保持された圧電振動デバイスにおいて、
前記内部空間内における前記圧電振動片の+X軸方向が設定され、
前記圧電振動片は、基部と、この基部から突出した複数本の脚部とから構成され、
前記脚部に、異電位で構成された励振電極が形成され、
前記基部および前記脚部に、前記励振電極を前記基部で外部電極と電気的に接続させるために前記励振電極から引き出された引出電極が形成され、
前記基部の表側主面に、少なくとも一つの側面から±X軸方向に沿って溝部が形成されたことを特徴とする圧電振動デバイス。」

2.引用文献
原審拒絶理由に引用された文献、および、その記載事項は、前記第2 2.に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記第2で検討した本願補正発明の限定事項である構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第2 3.に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.まとめ
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-07-18 
結審通知日 2012-07-24 
審決日 2012-08-08 
出願番号 特願2007-529463(P2007-529463)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H03H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 畑中 博幸  
特許庁審判長 吉村 博之
特許庁審判官 小曳 満昭
飯田 清司
発明の名称 圧電振動デバイスおよびその製造方法  
代理人 特許業務法人あーく特許事務所  

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