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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61H
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61H
管理番号 1263593
審判番号 不服2011-28284  
総通号数 155 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-12-28 
確定日 2012-09-20 
事件の表示 特願2006-342102「微細気泡発生装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 7月 3日出願公開、特開2008-149038〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成18年12月20日の出願であって、平成22年4月21日付けで拒絶理由が通知され、同年6月2日付けで手続補正がなされ、平成23年2月8日付けで拒絶理由が通知され、同年4月5日付けで手続補正がなされ、同年10月31日付けで、平成23年4月5日付けでした上記補正が却下され、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成23年12月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。
そして、当審において、平成24年3月15日付けで審査官により作成された前置報告書について、同年5月9日付けで審尋を行ったところ、審判請求人は同年5月31日付けで回答書を提出した。

第2 平成23年12月28日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
本件補正により、特許請求の範囲の記載が、補正前には
「【請求項1】
液体中に気体が加圧溶解された気液溶解流体を減圧手段で圧力開放して、微細気泡を発生させながら吐出ノズルから噴射吐出させる微細気泡発生装置であって、
前記吐出ノズルに前記減圧手段が設けられ、この減圧手段と吐出ノズルの吐出口との間で、減圧手段と一定間隔を隔てて金網状体でなるメッシュが配置されて、減圧手段とメッシュとの間に、メッシュの流通抵抗による圧力維持空間が形成されていることを特徴とする微細気泡発生装置。
【請求項2】
前記減圧手段は、ベンチュリ管若しくはベンチュリ管群であることを特徴とする請求項1に記載の微細気泡発生装置。
【請求項3】
前記減圧手段は、ディスクノズルであることを特徴とする請求項1に記載の微細気泡発生装置。」
であったものが、補正後には
「【請求項1】
液体中に気体が加圧溶解された気液溶解流体を減圧手段で圧力開放して、微細気泡を発生させながら吐出ノズルから噴射吐出させる微細気泡発生装置であって、
前記吐出ノズルに前記減圧手段が設けられ、この減圧手段と吐出ノズルの吐出口との間で、減圧手段と一定間隔を隔てて金網状体でなるメッシュが配置されて、減圧手段とメッシュとの間に、メッシュの流通抵抗による圧力維持空間が形成され、
前記減圧手段の先端部とメッシュとの間には、流路の径が拡大する部分を有し、この流路の径が拡大する部分と減圧手段の先端部との間の部位は管径が一定であり、流路の径が拡大する部分とメッシュとの間の部位も管径が一定であることを特徴とする微細気泡発生装置。
【請求項2】
前記減圧手段は、管径が一定のノズル本体に設けられ、このノズル本体の前端に、流路の径が拡大するとともに管径が一定のメッシュホルダーが固定され、このメッシュホルダーの先端と、前記吐出口を有するノズルカバーの後端との間に前記メッシュを挟み込んで保持することを特徴とする請求項1に記載の微細気泡発生装置。
【請求項3】
前記減圧手段は、ベンチュリ管若しくはベンチュリ管群であることを特徴とする請求項1に記載の微細気泡発生装置。
【請求項4】
前記減圧手段は、ディスクノズルであることを特徴とする請求項1に記載の微細気泡発生装置。」
と補正された。

2.補正却下の理由1
補正後の請求項2は、補正前のいずれの請求項にも対応しないから、新たに追加したものと認められ、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、あるいは明りょうでない記載の釈明の何れを目的としたものにも該当しない。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、単に「改正前特許法」という。)第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.補正却下の理由2
審判請求人は、回答書において、平成23年4月5日付けでした補正が却下されたことに対する不服を申し立て、上記補正後の請求項2を削除する補正(補正後の特許請求の範囲は、平成23年4月5日付けの手続補正によるものと同じになる。)を希望する旨述べているから、請求項1の補正についての判断を以下に示すこととする。

請求項1についての本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「圧力維持空間」について、「前記減圧手段の先端部とメッシュとの間には、流路の径が拡大する部分を有し、この流路の径が拡大する部分と減圧手段の先端部との間の部位は管径が一定であり、流路の径が拡大する部分とメッシュとの間の部位も管径が一定である」との限定を実質上付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-280771号公報(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「【0021】まず始めに、本実施例の気泡発生装置の構成について、図1に基づいて説明する。
【0022】本実施例における気泡発生装置は、装置本体10と、浴槽12から浴用水を吸い上げる汲み上げ口14と、汲み上げ口14から取り込まれた浴用水を装置本体10に供給するための給水管16と、後記循環ポンプ22により空気を溶解された浴用水を再び浴槽12へ戻す吐出口18と、その吐出口18と装置本体10とを連通する配水管20とから構成されている。これにより、浴槽12内の浴用水が汲み上げ口14から給水管16を通って装置本体10に供給され、再び配水管20を介して吐出口18より浴槽12に戻って循環するようになっている。
【0023】ところで、上記吐出口18は、図2に示すように、排水管20が連結される吐出口18の入口側に、空気を溶解した浴用水の流速を落とすための目の粗い多孔質の減速部材18aが配設され、出口側には目の細かい金網18bが配設されており、空気を溶解した浴用水の流速や水圧を減速・減圧し、キャビテーション効果による微細気泡を確実に発生できる構成になっている。また、汲み上げ口14には、図示しない目の粗いフィルタが設置されている。」

「【0035】ここで、使用者が選択スイッチ48により発泡モードを選んだ場合・・・(中略)・・・これにより、循環ポンプ22の吸引力により外気が空気導入口30から浴用水が流れる流路中へ引き込まれるようになる。この後空気は、循環ポンプ22内で浴用水と共に加圧圧縮され浴用水中に溶解する。このとき、循環ポンプ22から加圧して送り出される浴用水は、空気を溶解した浴用水と、浴用水に溶解せずに残った余剰空気との混合体である。
【0036】・・・(中略)・・・一方、空気を溶解した浴用水は、排水管20を介して、浴槽12に設置された吐出口18に圧送される。この吐出口18において、空気を溶解した浴用水は、まず吐出口18の入口に設置された目の粗い多孔性の減速部材18aにより、その流速が落とされると共に減圧される。更に、吐出口18の出口に設置された目の細かい金網18bを通過することによりキャビテーションが充分に生じ、数μmから数10μmの微細な気泡が浴用水中に発生し、浴槽12内の浴用水が乳白化した状態となる。」

「【0048】以上説明したことから明かなように本発明の気泡発生装置によれば、循環ポンプ22によって浴槽12内の浴用水を汲み上げ口14より汲み上げられた浴用水は、浄化槽24にて微細な異物等が除去され、その後、気体導入口30から導入された外部の気体を、循環ポンプ22の圧力によって前記浴用水に加圧溶解させ、アキュムレータ28によって余剰気体が排除された浴用水は、吐出口18に設けられた減速部材18aによる減圧によって、吐出口18から浴槽中に微細な気泡を発生させるため、減速部材18aの目詰まりを防ぐことができ、かつ減速部材18aの手入れを軽減することができる。」

「【図2】


図2より、減速部材18aから金網18bに向かって、流路の径が徐々に拡大している様子が見て取れる。
よって、これらの記載によれば、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「気体導入口30から導入された外部の気体を、循環ポンプ22の圧力によって浴用水に加圧溶解させ、空気を溶解した浴用水は、吐出口18の入口に設置された目の粗い多孔性の減速部材18aにより、その流速が落とされると共に減圧され、更に、吐出口18の出口に設置された目の細かい金網18bを通過することによりキャビテーションが充分に生じ、数μmから数10μmの微細な気泡が浴用水中に発生する気泡発生装置であって、
吐出口18の入口側に、空気を溶解した浴用水の流速を落とすための目の粗い多孔質の減速部材18aが配設され、出口側には目の細かい金網18bが配設され、
減速部材18aから金網18bに向かって、流路の径が徐々に拡大している気泡発生装置。」

(2)対比
引用発明の「浴用水」、「空気を溶解した浴用水」は、それぞれ、本願補正発明の「液体」、「気液溶解流体」に相当する。
引用発明の「減速部材」は、流速を落とすと共に減圧する機能も備えるから、本願補正発明の「減圧手段」に相当し、引用発明の「減圧され」は、本願補正発明の「圧力開放して」に相当する。
引用発明の「吐出口18」は、本願補正発明の「吐出ノズル」に相当し、引用発明の「空気を溶解した浴用水は」「吐出口18の出口に設置された目の細かい金網18bを通過することによりキャビテーションが充分に生じ、数μmから数10μmの微細な気泡が浴用水中に発生する」は、本願補正発明の「微細気泡を発生させながら吐出ノズルから噴射吐出させる」に相当する。
引用発明の「目の細かい金網18b」は、本願補正発明の「金網状体でなるメッシュ」に相当し、引用発明の「吐出口18の入口側に減速部材18aが配設され、出口側には目の細かい金網18bが配設され」は、本願補正発明の「吐出ノズルに前記減圧手段が設けられ、この減圧手段と吐出ノズルの吐出口との間で、減圧手段と一定間隔を隔てて金網状体でなるメッシュが配置され」に相当する。
引用発明の「気泡発生装置」は、本願補正発明の「微細気泡発生装置」に相当する。
よって、本願補正発明と引用発明との一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「液体中に気体が加圧溶解された気液溶解流体を減圧手段で圧力開放して、微細気泡を発生させながら吐出ノズルから噴射吐出させる微細気泡発生装置であって、
前記吐出ノズルに前記減圧手段が設けられ、この減圧手段と吐出ノズルの吐出口との間で、減圧手段と一定間隔を隔てて金網状体でなるメッシュが配置された微細気泡発生装置。」

[相違点1]
本願補正発明は、「減圧手段とメッシュとの間に、メッシュの流通抵抗による圧力維持空間が形成され」るのに対し、引用発明は、このような圧力維持空間が形成されることにつき特定されていない点。

[相違点2]
本願補正発明は、「減圧手段の先端部とメッシュとの間には、流路の径が拡大する部分を有し、この流路の径が拡大する部分と減圧手段の先端部との間の部位は管径が一定であり、流路の径が拡大する部分とメッシュとの間の部位も管径が一定である」のに対し、引用発明は、「減速部材18aから金網18bに向かって、流路の径が徐々に拡大している」点。

(3)判断
ア.相違点1について
引用発明において、減速部材18aと金網18bとの間に空間が形成されていることは明らかである。
そして、本願補正発明において、「減圧手段とメッシュとの間に、メッシュの流通抵抗による圧力維持空間が形成され」と特定されていることから、「圧力維持空間」はメッシュの流通抵抗によって形成されるものと認められるところ、引用発明においても、吐出口18の出口に目の細かい金網18bが設置されている以上、金網18bの流通抵抗が存在することは明らかであり、減速部材18aと金網18bとの間に、金網18bの流通抵抗による圧力維持空間が形成されているといえる。
よって、相違点1は実質的な相違点ではない。
仮に、実質的な相違点であるとしても、引用発明の金網18bは、浴用水中に微細気泡を確実に発生して浴槽12内の浴用水を乳白化した状態とするために設けたものであるから(引用文献【0023】、【0036】参照)、当該目的に適うように、金網18bの目の細かさを適宜に調整し、減速部材18aと金網18bとの間に、本願補正発明のごとき圧力維持空間が形成されるようにすること、すなわち、相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到しえたことである。

イ.相違点2について
微細気泡を含む液体の流路において、流路の径が段差を有して拡大し、段差の前後ではそれぞれ径が一定であるような構成を備えることは、登録実用新案第3125083号公報(【図4】、【図5】の段差部625)、特開平5-212083号公報(【図1】の符号10が指す部分の左方)に示されるように、周知技術である。
そして、引用発明は、減速部材18aから金網18bに向かって、流路の径が徐々にではあるが拡大していることからみて、この部分を、同じく流路の径が拡大する上記周知技術の構成に変更することは、当業者が適宜になし得ることといえる。
よって、相違点2に係る本願補正発明の構成は、引用発明における減速部材18aと金網18bの間の流路について、径が徐々に拡大している構成を、上記周知技術に基いて、流路の径が段差を有して拡大し、段差の前後ではそれぞれ径が一定であるような構成に変更することにより、当業者が容易に想到し得たものである。

ウ.まとめ
本願補正発明の効果も、引用発明及び周知技術から予測できる範囲内のものであって格別顕著なものとはいえない。
請求人は、本願補正発明が「b)流路の径が拡大する部分とメッシュとの間の部位は管径が一定であるから、流路が急拡大することで減速されて、微細気泡の合体が確実に阻止されるようになる。 c) 流路が急拡大する拡大部とメッシュとの組み合わせで、気泡が成長するための距離を短くすることができるから、コンパクトなノズル構成となる。」という特有の作用効果を奏する旨主張するが、そのような作用効果は本願の明細書には記載されていないし、そのような作用効果を確認できるデータ等が示されているわけでもない。また、引用発明における減速部材18aと金網18bの間の流路の構成を、周知技術に基いて変更すれば、流路の径が急拡大することとなるのであるから、本願補正発明と同様の作用効果を奏することとなる。よって、本願補正発明が、引用発明及び周知技術から予測できない格別顕著な作用効果を奏すると認めることはできない。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年6月2日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「液体中に気体が加圧溶解された気液溶解流体を減圧手段で圧力開放して、微細気泡を発生させながら吐出ノズルから噴射吐出させる微細気泡発生装置であって、
前記吐出ノズルに前記減圧手段が設けられ、この減圧手段と吐出ノズルの吐出口との間で、減圧手段と一定間隔を隔てて金網状体でなるメッシュが配置されて、減圧手段とメッシュとの間に、メッシュの流通抵抗による圧力維持空間が形成されていることを特徴とする微細気泡発生装置。」

第4 引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献、および、その記載事項は、前記「第2[理由]3.(1)」に記載したとおりである。

第5 対比・判断
本願発明は、前記「第2[理由]3.」で検討した本願補正発明から「前記減圧手段の先端部とメッシュとの間には、流路の径が拡大する部分を有し、この流路の径が拡大する部分と減圧手段の先端部との間の部位は管径が一定であり、流路の径が拡大する部分とメッシュとの間の部位も管径が一定である」との限定事項を省いたものである。
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、両者の一致点、相違点は、前記「第2[理由]3.(2)」で示した本願補正発明と引用発明との[一致点]および[相違点1]と同じである。
そして、相違点1についての判断は、前記「第2[理由]3.(3)」に示したとおりであり、実質的な相違点ではないか、引用発明に基いて、当業者が容易に想到し得たものである。
したがって、本願発明は、引用発明である、または、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。または、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-07-20 
結審通知日 2012-07-24 
審決日 2012-08-07 
出願番号 特願2006-342102(P2006-342102)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61H)
P 1 8・ 121- Z (A61H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 北村 英隆  
特許庁審判長 仁木 浩
特許庁審判官 栗林 敏彦
紀本 孝
発明の名称 微細気泡発生装置  
代理人 小谷 悦司  
代理人 小谷 昌崇  
代理人 大西 裕人  

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