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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47J 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A47J |
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管理番号 | 1263594 |
審判番号 | 不服2012-724 |
総通号数 | 155 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-11-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-01-13 |
確定日 | 2012-09-20 |
事件の表示 | 特願2009-13128号「電磁誘導加熱調理器」拒絶査定不服審判事件〔平成21年4月16日出願公開、特開2009-78190号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成17年8月22日(優先権主張平成16年8月31日)に出願した特願2005-239684号の一部を平成19年6月25日に新たな特許出願とした特願2007-166297号の一部を、さらに平成21年1月23日に新たな特許出願としたものであって、平成23年10月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成24年1月13日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がされたものである。 第2 平成24年1月13日の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成24年1月13日の手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「本体と、 前記本体内に着脱自在に収納され、食品を加熱調理する鍋状容器と、 前記本体の下部に配置され、前記鍋状容器に渦電流を誘起して前記鍋状容器を加熱する加熱コイルとを備える電磁誘導加熱式調理器において、 前記鍋状容器は、炭素95%?100%の焼結体を基材として構成すると共に、抵抗率を7.2×10-7Ωm以上とし、 前記鍋状容器の鍋外底面で前記加熱コイルと対向した位置に、 他部よりも板厚が薄いリング状に形成された連続凹部からなる溝部を形成したことを特徴とする電磁誘導加熱調理器。」と補正された。 上記請求項1に係る補正は、発明を特定するための事項である、溝部に関し、「リング状に形成された連続凹部からなる」と限定するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。(なお、請求項1における抵抗率についての「7.2×10-7Ωm」との記載は、明細書の段落【0014】の記載や技術常識から、「7.2×10^(-7)Ωm」の誤記と認められる。) そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 2.引用刊行物 (1)引用刊行物1 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された特開平9-75211号公報(以下「引用刊行物1」という。)には、図1?7とともに以下の事項が記載されている。 ア.「【請求項1】 調理器本体に載置される鍋と、 この鍋の外底面部または外周面部に対向するように設けられ前記鍋を誘導加熱する誘導加熱コイルと、 この誘導加熱コイルを通電制御する制御手段とを備え、 前記鍋を黒鉛から構成したことを特徴とする誘導加熱調理器。 【請求項2】 鍋を構成する黒鉛は、カーボンの純度が99.9%以上であることを特徴とする請求項1記載の誘導加熱調理器。 【請求項3】 鍋は、黒鉛化されたブロック材を切削加工することにより形成されていることを特徴とする請求項1記載の誘導加熱調理器。 ・・・(中略)・・・ 【請求項9】 ブロック材は、粉体状コークスとピッチとを混練した混練材をCIP成形または押出成形することによりブロック状成形物を成形し、このブロック状成形物をピッチ含浸を繰り返しながら800?1000℃で加熱して一次焼成物を焼成し、この一次焼成物を2500?3000℃で加熱することにより黒鉛化されていることを特徴とする請求項3記載の誘導加熱調理器。」(特許請求の範囲) イ.「本発明者は、誘導加熱したときに渦電流が発生し易く、且つ、熱伝導率が高い物質であって、鍋を構成することが可能な物質を捜した。その結果、黒鉛(グラファイト)が上記物質として好適することを発見した。即ち、本発明者の実験によれば、黒鉛を誘導加熱すると渦電流が発生し易く、その渦電流の損失により熱が十分発生し、そして、黒鉛は熱伝導率が高い物質であり、その上、黒鉛は鍋を構成することが十分可能な材料であることが確かめられた。」(段落【0008】) ウ.「炊飯器の概略全体構成を示す図2において、炊飯器本体1の内部には内ケース2が配設されており、この内ケース2内に黒鉛製の鍋3が上方から着脱可能に収容されている。・・・(中略)・・・そして、内ケース2の外底部における平坦部分(温度センサ7を囲む部分)に第1の誘導加熱コイル8が配設され、外周のコーナー部分に第2の誘導加熱コイル9が配設されている。これにより、第1及び第2の誘導加熱コイル8、9は、鍋3の外底面部及び外周面部(コーナー部分)に対向するように配置されている。上記第1及び第2の誘導加熱コイル8、9の下部には、フェライト10がそれら誘導加熱コイル8、9と磁気回路を形成するように配設されている。」(段落【0013】及び【0014】) エ.「このような構成の本実施例によれば、鍋3を黒鉛(具体的には、カーボンの純度が99.9%以上の黒鉛)から構成したので、この鍋3を誘導加熱すると、鍋3に渦電流が発生し易くなり、更に、この発生した渦電流と鍋3(黒鉛)自体の固有抵抗とにより渦電流損失が発生し、熱が十分に発生する。この場合、図2に示すように、鍋3のうちの誘導加熱コイル8、9に対応する部分、即ち、外底面部の平坦部分及び外周面部の下部(コーナー部分)が集中的に発熱するように構成されている。そして、鍋3を構成する黒鉛の熱伝導率が高いから、発生した熱は鍋3全体に均一且つ速やかに伝達するようになる。この結果、鍋3内の食品(米及び水)を加熱むらを生ずることなく、即ち、熱効率を高めて効率良く加熱することができる。」(段落【0026】) オ.「本実施例の鍋3を製造する場合、ブロック材31を黒鉛化すると共に、このブロック材31を切削加工することにより鍋3を製造する構成としたので、従来構成のクラッド材製の鍋とは異なり、製造時に2種類の金属が剥離したり、鍋が傷付いたり、鍋が変形したりすることをなくすことができ、鍋3の品質を向上させることができる。」(段落【0032】) カ.段落【0023】の【表1】に、供試品品種A?Fについて固有抵抗が1500,1300,1200,750,500,400μΩ-cmであることが記載される。 これらの記載事項ア.?カ.及び図面の図示内容を総合すると、上記引用刊行物1には、「炊飯器本体1と、 炊飯器本体1の内部の内ケース2内に着脱可能に収容され、鍋3内の食品(米及び水)を加熱する鍋3と、 内ケース2の外底部における平坦部分に配設される第1の誘導加熱コイル8と、外周のコーナー部分に配設される第2の誘導加熱コイル9を備え、鍋3を誘導加熱して渦電流を発生させて、鍋3のうちの誘導加熱コイル8、9に対応する、外底面部の平坦部分及び外周面部の下部(コーナー部分)が集中的に発熱する誘導加熱調理器において、 鍋3は、カーボンの純度が99.9%以上の黒鉛からなるブロック状成形物を焼成して黒鉛化し切削加工することにより形成されるものであって、固有抵抗が400μΩ-cm以上である、誘導加熱調理器。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 (2)引用刊行物2 同じく引用され、本願の優先日前に頒布された特開平11-76046号公報(以下「引用刊行物2」という。)には、図1?4とともに以下の事項が記載されている。 ア.「本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、電磁誘導加熱によって電磁誘導加熱炊飯器用鍋を発熱させる構成において、電磁誘導加熱炊飯器用鍋内の調理物への効率的且つ均一な熱伝導を実現しつつ、保温効果を向上し、消費電力を節約するものであり、なおかつステンレスへのご飯の非粘着性を維持するものである。」(段落【0006】) イ.「電磁誘導加熱炊飯器本体の誘導加熱コイルに対向する部位のステンレスに複数の凹凸または、溝を設けているため、発熱面積が増加し、被調理物により活発な対流が生じ、均一な加熱が実現することにより、加熱むらが減少する。」(段落【0012】) ウ.「(実施例2)一方、上述のごとき凹凸加工の他、図3(a)の鍋側面図と図3(b)の鍋底面図に示すように、切削等の技術を用いて、鍋外面のフェライト系ステンレス7に溝13をつけることも、より強い発熱、均一加熱、調理性能の長期安定化を図る手段として有効である。図3(c)は電磁誘導加熱炊飯器用鍋4において溝13をつけた部位の断面図であり、外コイル5bとの位置関係も同時に示しているが、溝13の深さ、幅、長さ、形状は特に限定されるものではないことは言うまでもない。」(段落【0022】) エ.図3には、電磁誘導加熱炊飯器用鍋4の底部コーナー部分で、外コイル5bの対向する部位の外面に、リング状の連続した凹溝による溝が、鍋4の他の部分より板厚が薄くなるように設けられる態様が図示される。 3.対比・判断 本願補正発明と引用発明とを対比すると、後者の「炊飯器本体1」はその機能・構造からみて、前者の「本体」に相当し、以下同様に、後者の「炊飯器本体1の内部の内ケース2内に着脱可能に収容され、鍋3内の食品(米及び水)を加熱する鍋3」は前者の「本体内に着脱自在に収納され、食品を加熱調理する鍋状容器」に、後者の「内ケース2の外底部における平坦部分に配設される第1の誘導加熱コイル8と、外周のコーナー部分に配設される第2の誘導加熱コイル9」は前者の「本体の下部に配置され」る「加熱コイル」に、後者の「誘導加熱調理器」は前者の「電磁誘導加熱式調理器」に、後者の「鍋3は、カーボンの純度が99.9%以上の黒鉛からなるブロック状成形物を焼成して黒鉛化し切削加工することにより形成される」ことは前者の「鍋状容器は、炭素95%?100%の焼結体を基材として構成する」ことに、それぞれ相当する。 また、後者の第1の誘導加熱コイル8及び第2の誘導加熱コイル9について、「鍋3を誘導加熱して渦電流を発生させて、」「発熱する」ことは、前者の加熱コイルについて、「鍋状容器に渦電流を誘起して前記鍋状容器を加熱する」ことに相当する。 さらに、後者の「固有抵抗が400μΩ-cm以上」は、その値について7.2×10^(-7)Ωm以上であることが明らかであるから、前者の「抵抗率を7.2×10^(-7)Ωm以上」と実質的に相違しない。 そうすると、両者は、「本体と、 前記本体内に着脱自在に収納され、食品を加熱調理する鍋状容器と、 前記本体の下部に配置され、前記鍋状容器に渦電流を誘起して前記鍋状容器を加熱する加熱コイルとを備える電磁誘導加熱式調理器において、 前記鍋状容器は、炭素95%?100%の焼結体を基材として構成すると共に、抵抗率を7.2×10^(-7)Ωm以上とする電磁誘導加熱調理器。」である点で一致し、以下の点で相違すると認められる。 相違点:本願補正発明が「鍋状容器の鍋外底面で前記加熱コイルと対向した位置に、他部よりも板厚が薄いリング状に形成された連続凹部からなる溝部を形成し」ているのに対して、引用発明はそのような溝部を形成していない点。 そこで、上記相違点について検討する。 (1)引用刊行物2の溝について 引用刊行物2には電磁誘導加熱炊飯器用鍋において、発熱面積が増加し、より強い発熱で、被調理物により活発な対流が生じ、均一な加熱が実現するように、誘導加熱コイルに対向する部位の外面に、リング状の連続した凹溝による溝を、鍋の他の部分より板厚が薄くなるように設けることが示されている。 引用発明は「鍋3のうちの誘導加熱コイル8、9に対応する、外底面部の平坦部分及び外周面部の下部(コーナー部分)が集中的に発熱する」ものであるから、同じ誘導加熱による炊飯器の鍋の加熱部分の発熱を発熱面積が増加させて大きくする引用刊行物2に示された溝を、引用発明が集中的に加熱する、誘導加熱コイル8、9に対応する、外底面部の平坦部分及び外周面部の下部(コーナー部分)に設けることは当業者にとって容易になし得たことであり、その場合、誘導加熱コイル8に対応する、外底面部の平坦部分の外面に、他部よりも板厚が薄いリング状に形成された連続凹部からなる溝部が形成されることとなる。すなわち、相違点に係る構成となる。 (2)引用刊行物2の電磁誘導加熱炊飯器用鍋の素材が炭素の焼結体を基材とするものではないことについて 上記(1)のとおりであるが、引用刊行物2の電磁誘導加熱炊飯器用鍋の素材が炭素の焼結体を基材とするものではないことについてさらに検討する。 引用発明の鍋3は材質が焼結した黒鉛ではあるものの、その焼結した黒鉛に磁束が通過して渦電流が生じるものである。 引用刊行物2に示される電磁誘導加熱炊飯器用鍋の溝は、誘導加熱される鍋外面の磁束が通過するフェライト系ステンレス7において、発熱面積を増加してより強い発熱を生じるために、その外面に設けられるものである。 そうすると、同じく磁束が通過して渦電流を生じて誘導加熱されるものであり、材質の違いに拘わらず、その磁束が通過する鍋3の外面に、より強い発熱を生じるように発熱面積を増加させる引用刊行物2に示されるような溝を設けることは、当業者が格別の困難性を要することなくなし得たことである。 (3)鍋外底面で加熱コイルに対向した位置に溝部を設けることについて 上記(1)のとおりであるが、鍋外底面で加熱コイルに対向した位置に溝部を設けることについてさらに検討する。 例えば、特開平9-129361号公報には、「炊飯器等の電磁誘導加熱調理器用鍋1に投入した調理物に良好な対流を起こさせるには、」「誘導加熱コイルを、内コイルと外コイルの2段構成にして良好な対流を得る」(段落【0003】)と記載されているように、引用発明と同様に、内コイルと外コイルのそれぞれのコイルの部分を加熱することは当該技術分野において通常のことといえる。さらにいえば上記公報には「内コイル5aに対向する部位には凹凸加工を設けるが、外コイル5bに対向する部位には設けないという構成・・・(中略)・・・も可能である。」(段落【0017】)とも記載されている。 そして、上記公報には「誘導加熱コイルに対向する部位の肉厚を変化させることで対流が変化することは一般に知られている」(段落【0003】)と、凹凸を設けることも示唆しているのであるから、これらのことからも引用発明の誘導加熱コイル8に対応する、外底面部の平坦部分を集中的に発熱させるように、その部分に溝を設けることは当業者にとって容易である。 加えて、特開2001-137108号公報には、電磁誘導加熱式炊飯器において「糊化が始まると水分の粘りが増すため対流が起こりにくくなり、上層部と下層部に加熱ムラが生じ炊きムラとなっていた。より炊きムラの少ない炊飯を行うためには、より均一に加熱を行うことが必要条件であるが、容量が多くなればなるほど全体を均一に加熱することが構造的に難しくなっていた。 ・・・(中略)・・・内釜と加熱コイルとの距離が小さいほど、より強い発熱が得られる特性を利用し内釜の底部形状に部分的に複数個の凸部をコイル方向に設け、上層部と下層部の対流だけでなく径方向にも温度差を生じさせ、更に対流を促進するような構成にしたものである。 ・・・(中略)・・・このような構成としたことにより、内釜底部にコイル径方向に温度差を作り、対流を促進させるので、より炊きムラの少ない炊飯器が可能となるものである。」(段落【0007】?【0010】)と記載されており、図2に示されるような鍋の底において径方向で一定の位置により強い発熱を生じる部分を設けて、より対流を起こして均一に加熱することが示唆されているのであるから、この点からも引用発明の外底面部の平坦部分の誘導加熱コイル8に対応する部分に溝を設けて発熱するようなすことが当業者にとって格別困難であるとはいえない。 そして、本願明細書に記載された凹部溝の上部から大きな対流は形成されるとの効果についても、上記特開2001-137108号公報に記載されるように、当業者が容易に想到し得たことである。 (4)清掃性について 本願明細書に記載される清掃性についても、例えば、特開平11-267011号公報に「鍋5の内面は平滑な状態にあり、したがって炊き上げたご飯をしゃもじで容易にスムーズによそうことができ、また清掃も容易に行なえ、さらに水位目盛線を容易に印刷することができる。」(段落【0042】)と記載されるように、凹溝11を鍋の外面に設けることにより清掃性がよいとの効果も当業者が容易に想到し得たことである。 なお、鍋の厚さを4?10mm、溝の深さをその1/3?1/2(1.3?5mm)と特定しても、上記引用刊行物2に、「溝13の深さ、幅、長さ、形状は特に限定されるものではないことは言うまでもない」(2.(2)ウ.)と記載され、上記特開平11-267011号公報には、下部底面における鍋の厚さを5mmとし溝の深さを0.5?2mmとすること(段落【0016】及び【0018】参照)が例示されているのであるから、当業者が容易になし得たことといえる。 (5)まとめ 以上のとおりであるから、本願補正発明は、引用発明、引用刊行物2に記載の事項及び上記周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、本願補正発明を全体としてみても、明細書に記載の効果が格別なものであるとはいえない。 4.むすび 上記したように、本願補正発明は、引用発明、引用刊行物2に記載の事項及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。 したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成23年6月17日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「本体と、 前記本体内に着脱自在に収納され、食品を加熱調理する鍋状容器と、 前記本体の下部に配置され、前記鍋状容器に渦電流を誘起して前記鍋状容器を加熱する加熱コイルとを備える電磁誘導加熱式調理器において、 前記鍋状容器は、炭素95%?100%の焼結体を基材として構成すると共に、抵抗率を7.2×10^(-7)Ωm以上とし、 前記鍋状容器の鍋外底面で前記加熱コイルと対向した位置に、 他部よりも板厚が薄い溝部を形成したことを特徴とする電磁誘導加熱調理器。」 1.引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物の記載事項は、前記「第2の2.」に記載したとおりである。 2.対比・判断 本願発明は、前記「第2の1.」で検討した本願補正発明を特定するための事項である、溝部に関し、「リング状に形成された連続凹部からなる」との限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2の3.」に記載したとおり、引用発明、引用刊行物2に記載の事項及び上記周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明、引用刊行物2に記載の事項及び上記周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 3.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用刊行物2に記載の事項及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。そうすると、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-07-11 |
結審通知日 | 2012-07-17 |
審決日 | 2012-08-02 |
出願番号 | 特願2009-13128(P2009-13128) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A47J)
P 1 8・ 575- Z (A47J) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中里 翔平 |
特許庁審判長 |
森川 元嗣 |
特許庁審判官 |
長浜 義憲 平上 悦司 |
発明の名称 | 電磁誘導加熱調理器 |
代理人 | 村上 加奈子 |
代理人 | 高橋 省吾 |
代理人 | 中鶴 一隆 |
代理人 | 稲葉 忠彦 |