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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1263643
審判番号 不服2009-9597  
総通号数 155 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-05-07 
確定日 2012-09-19 
事件の表示 特願2000-557803「悪臭を低減させるか又は防止する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年1月13日国際公開、WO00/01356、平成14年7月2日国内公表、特表2002-519368〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成11年7月6日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1998年7月7日、英国(GB))を国際出願日とする出願であって、平成12年8月16日に特許協力条約第34条補正の翻訳文が提出され、平成19年12月26日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、平成20年7月15日付けで手続補正がなされるとともに、同日に意見書が提出されたが、平成21年1月27日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年5月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年7月30日付けで審判請求書の請求の理由の手続補正書(方式)が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?4に係る発明は、平成20年7月15日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、その請求項1に係る発明は以下のとおりのものである。
「【請求項1】コリネバクテリアを含む体の悪臭を生じさせる微生物を選択的に不活性化することができる活性作用物質を含む組成物を人の皮膚に局所的に塗布することによって、体の悪臭を低減させるか又は防止する美容方法であって、前記悪臭がヒトにおける腋の下の悪臭であり、活性作用物質が脂肪酸を異化することができるコリネバクテリアを不活性化することができる香料成分であり、(Z)-3,4,5,6,6-ペンタメチルヘプタ-3-エン-2-オン、ジエチル-シクロヘキサ-2-エン-1-オンとジメチル-シクロヘキサ-2-エン-1-オンの混合物、2-メチル-3-(4-(1-メチルエチル)フェニル)プロパナール、(2-(メチルオキシ)-4-プロピル-1-ベンゼノール)、ジフェニルメタン、4-(4-メチル-3-ペンテニル)シクロヘキサ-3-エン-1-カルバルデヒド、3-(4-メチル-3-ペンテニル)シクロヘキサ-3-エン-1-カルバルデヒド、3-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-2-メチルプロパナール、α-イオノンとβ-イオノンの混合物、4-(4-ヒドロキシ-4-メチルペンチル)シクロヘキサ-3-エンカルバルデヒド、3-(4-ヒドロキシ-4-メチルペンチル)シクロヘキサ-3-エンカルバルデヒド、メチルイソ-オイゲノール、2-(1,1-ジメチルエチル)シクロヘキシルエタノエート、4-メチル-2-(2-メチルプロパ-1-エニル)テトラヒドロピランの少なくとも1つを含むことを特徴とする、方法。」(以下、「本願発明」という。)

第3 引用刊行物
1 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前である平成6年6月28日に頒布された刊行物である「特開平6-179610号公報」(拒絶理由の引用文献L。以下、「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。

(a)「【請求項1】A)汗及び人体皮膚菌相に安定な以下の各群
A-1)シトロネロール,ゲラニオール,テトロヒドロゲラニオール,ファルネソール及びフェニルエチルジメチルカービノールから選ばれた少なくとも1種のアルコール類
A-2)酢酸ジメチルベンジルカービニル,酢酸シトロネリル,酢酸トリクロロメチルフェニルカービニル,ブラシル酸エチレン,サルチル酸シス-3-ヘキセニル,サリチル酸シクロヘキシル,クマリン及びγ-デカラクトンから選ばれた少なくとも1種のエステル類及び/又はラクトン類
A-3)シス-ジャスモン,ヘリオトロピン,ムスクケトン及びメチルノニルアセトアルデヒドから選ばれた少なくとも1種のケトン類,アルデヒド類とそれらのケタール類及び/又はアセタール類
A-4)4-(4-ヒドロキシ-4-メチルペンチル)-3-シクロヘキセンカルバルデヒド,ジヒドロジャスミン酸メチルから選ばれた少なくとも1種の複数官能基を有する化合物類
のうちから選ばれる1種以上の香料混合物と
B)汗及び人体皮膚菌相存在下で香気がマッチングする上記A群の香料混合物以外の以下の各群
B-1)ジヒドロミルセノール,ジヒドロリナロール,ターピネオール,ネロール,オイゲノール,イソボルニルシクロヘキサノール,2,6-ジメチル-2-ヘプタノール,5-(2,2,3-トリメチルシクロペンテ-3-イル)-2-ブテン-1-オール,2-エチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン)-2-ブテノールから選ばれた少なくとも1種のアルコール類
B-2)酢酸ゲラニル,酢酸イソボルニル,酢酸セドリル,酢酸ベンジル,酢酸スチアリル,酢酸ジメチルベンジルカルビニル,プロピオン酸ベンジル,サルチル酸イソアミル,γ-ノナラクトン,アセチル化セドレン及び酢酸フェニルエチルから選ばれた少なくとも1種のエステル類及び/又はラクトン類
B-3)ヨノン,γ-メチルヨノン,シトラール,バニリン,α-n-アミルシンナミックアルデヒド,α-メチル-3,4-メチレンジオキシヒドロシンナミックアルデヒド,ガラクソリッド,p-t-ブチル-α-メチルヒドロシンナミックアルデヒド,2-アセチル-2,3,8,8-テトラメチルオクタリン(イソEスーパー)から選ばれた少なくとも1種のケトン類,アルデヒド類とそれらのケタノール類,アセタノール類及び/又はエーテル類
B-4)4-(p-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノン,インドール,イソブチルキノリン,スカトール,ヒドロキシジメチルレゾルシン酸メチル,ローズ油,ジャスミン油,イランイラン油,ガルバナム油,クローブバッド油,エストラゴン油,アルモイス油,ガルダモン油,ベチバー油,サンダルウッド油,クラリーセージ油,スペアーミント油,ゲラニウム油,ペチグレン油,オークモス,バニラから選ばれた少なくとも1種の精油類及び/又は複数官能基を有する化合物類
のうちから選ばれる1種以上の香料混合物と
C)汗及び人体皮膚菌相存在下で不安定で香気が変質してしまう以下の各群C-1)d-リモネン,β-ピネン,p-サイメン,ベルガモット油,ライム油,レモン油,オレンジ油,グレープフルーツ油,マンダリン油,バージル油,パインニードル油,アンジエリカルート油,アンジェリカシード油,シュニパーベリー油,ローズマリー油及びカストリウムアブソリュートから選ばれた少なくとも1種のハイドロカーボン類及び/又は精油類
C-2)メントール,リナロール及びフェニルエチルアルコールから選ばれた少なくとも1種のアルコール類
C-3)酢酸リナリル,酢酸シス-3-ヘキセニル及びアントラニル酸メチルから選ばれた少なくとも1種のエステル類
C-4)ヒドロキシシトロネラールジエチルアセタール,デカナール及びウンデシレニックアルデヒドから選ばれた少なくとも1種のアルデヒド類,ケトン類とこれらのケタール類,アセタール類
から選ばれる1種以上の香料混合物の3群からなり、A群とB群の香料混合物の総和が75重量%以上であり、C群の香料混合物の総和が25重量%以下であることを特徴とする香料組成物。」(【特許請求の範囲】)

(b)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、香料組成物に関し、詳しくは汗及び体臭関連微生物の存在下でも香調が変質することがなく、更に汗臭及び体臭をマスキングすることができる香料組成物に関する。」

(c)「【0002】
【従来の技術】体臭あるいは汗臭等の原因については未だ十分に解明されていないが、皮脂腺,アポクリン腺,エクリン腺などの汗腺からの分泌物が酸化したり、微生物の作用を受けて原因物質が生じると考えられている。体臭などの予防又は低減を意図する製品は従来より多数あり、これらの多くは通常、制汗剤,殺菌剤,有臭成分のマスキング剤などが配合されている。制汗剤は発汗量を抑制するもので、そのような制汗剤としては、殆どが収斂剤であるアルミニウム化合物を主成分としており、通常、アルミニウムクロライドが用いられている。また、上記殺菌剤は体臭などの原因となる微生物の増殖を抑制するもので、そのような殺菌剤としてはヘキサクロロフェン及び種々の第4級アンモニウム化合物が用いられている。更に、有臭成分のマスキング剤としては、オイゲノール等の快香を有する物質が主に用いられている。
・・・
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
・・・
【0005】更に、上記殺菌剤は安全性の問題が指摘されており、その効果が十分に発現する濃度で配合できないという欠点がある。その上、殺菌剤によってすべての皮膚寄生菌を駆逐してしまい、皮膚表面での自然状態の崩壊を伴う。また、上記マスキング剤は体臭などと混ざり合い、かえって不快な匂いを発生する場合がある。
【0006】したがって、本発明の目的は汗や微生物そのものを抑制するのではなく、それからの存在下でも香調が変化することなく安定で、かつ体臭や汗臭をマスキングする効果をもつ香料組成物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的を達成すべく極めて多くの単品香料をスクリーニングした結果、ある種の選ばれた香料が体臭関連微生物に対して抗菌性を持ち、また汗及び体臭関連微生物の存在下でも安定であることを知見した。本発明は上記知見に基づきなされたもので、これら安定性香料からなる香料組成物を提供するものである。本発明の香料組成物は、その目的に応じて特許請求の範囲に記載してある化合物であれば適宜任意の割合で混合して調製することができ、各種の調合香料に広く利用することができる。」

(d)「【0011】本発明の香料組成物は、汗及び人体皮膚菌叢存在下で香りが変質しないという特色がある。」

(e)「【0012】1)汗に対する安定性は、日本人の成人男性及び女性から採取した汗を膜フィルター(ミリポア社製)0.22μmで処理し、内部標準試料としてジベンジルを入れ、香料混合液とポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルRM-1060の界面活性剤(1:1)可溶化液にさらにスタフィロコッカス・アウレウス,スタフィロコッカス・エピダーミディス,コリネバクテリウム・ミニュティシミマム,アルスロバクター属の微生物よりなる供試菌液を加え、37℃で24?48時間振盪培養し、培養液を膜フィルター(ミリポア社製)0.22μmで処理後、ジエチルエーテルで抽出し、脱水後、濃縮してガスクロマトグラフィー分析を行い、組成%の変化から安定性を測定して安定性香料A群を選抜する。
【0013】2)香調の変化,マッチング度の評価は、香料可溶化液+汗と香料可溶化液+汗+混合菌液を37℃で24時間振盪培養したものを、直前に香料可溶化液を汗又は汗と混合菌液に加えたものをコントロールとして専門パネラー4人により次の評価基準により行った。なお、酸臭,汗臭については特筆すべき事項のみを記した。
【0014】香調 0:変化なし,1:やや変化あり,2:変化あり,3:かなり変化あり,4:非常に変化あり
マッチング度 ×:全くない,△:僅かにある,〇:ある,◎:かなりある
酸臭・汗臭 +:コントロールより強い,-:コントロールより低い」

(f)「【0020】
【表1】



(g)「【0025】実施例1?6
前述の試験結果を参考にしてフローラル調,ムスキーウッディー調,シトラス調,ジャスミン調,ローズ調の以下の処方を調製し、従来のものと比較検討した結果を第3表の後に第4?9表として示す。
・・・
【0029】
【表6】

・・・
【0034】
【表11】



2 引用例の上記(b)によると、引用例の香料組成物は、汗及び体臭関連微生物の存在下でも香調が変質することがなく、更に汗臭及び体臭をマスキングすることができるものである。
また、上記(g)の記載によると、実施例5には複数の香料からフローラル調の香料組成物を調合したことが記載されている。
そして、上記(a)の記載から、前記実施例5の複数の香料は、汗及び人体皮膚菌相に安定な香料、汗及び人体皮膚菌相存在下で香気がマッチングする香料、及び汗及び人体皮膚菌相存在下で不安定で香気が変質してしまう香料からなる香料組成物である。
これらのことから、引用例1には、
「以下の香料を調合したフローラル調の香料組成物を用いて、汗及び体臭関連微生物の存在下でも香調が変質することがなく、更に汗臭及び体臭をマスキングする方法。
汗及び人体皮膚菌相に安定な香料
フェニルエチルジメチルカルビノール 180.00
シトロネロール 50.00
ファルネソール 50.00
テトラヒドロゲラニオール 80.00
ブラシル酸エチレン 30.00
クマリン 5.00
酢酸トリクロロメチルフェニルカルビニル 20.00
サルチル酸シス-3-へキセニル 10.00
シス-ジャスミン 1.00
ヘリオトロピン 100.00
4-(4-ヒドロキシ-4-メチル 10.00
ペンチル)-3-シクロヘキセンカルバルデヒド
汗及び人体皮膚菌相存在下で香気がマッチングする香料
2-アセチル-2,3,8,8- 200.00
テトラメチルオクタン
酢酸フェニルエチル 100.00
γ-メチルヨノン 100.00
サンダルウッド油 25.00
汗及び人体皮膚菌相存在下で不安定で香気が変質してしまう香料
レモン油 10.00
ライム油 20.00
ベルガモット油 10.00
アントラニル酸メチル 4.00
フェニルエチルアルコール 90.00
合計 1000.00
」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

第4 対比・判断
1 引用例には、従来技術として「体臭あるいは汗臭等の原因については未だ十分に解明されていないが、皮脂腺,アポクリン腺,エクリン腺などの汗腺からの分泌物が酸化したり、微生物の作用を受けて原因物質が生じると考えられている。体臭などの予防又は低減を意図する製品は従来より多数あり、これらの多くは通常、制汗剤,殺菌剤,有臭成分のマスキング剤などが配合されている。」(上記(c))と記載されている。
そして、アポクリン腺は、体臭の中でも特に腋の下の悪臭に関係するものであり、分泌物が微生物により分解されて悪臭を発することは、本出願前周知の事項である(日本化粧品技術者会編、最新化粧品科学-改訂増補II-、平成4年7月10日、株式会社薬事日報社、456頁、「不快な腋臭の主な原因は,とくに腋の下の部分に,多くは毛のう中に開口しているアポクリン汗腺(epitrichial glands)からの分泌物が微生物の汚染により分解されて悪臭を発することによるものである。」参照)。
そうしてみると、引用例において問題としている汗臭や体臭は、人の腋の下の悪臭も意図していると考えるのが自然であり、汗臭や体臭をマスキングすることは、これらの臭いを低減することに含まれ、美容方法ということができる。
また、引用例には、「本発明の香料組成物は、汗及び人体皮膚菌叢存在下で香りが変質しないという特色がある。」(上記(d))と記載されているように、香料組成物を人の皮膚に直接適用することも意図しており、人の腋の下の悪臭などの予防又は低減を意図する製品は、局所的に塗布する方法で用いられることも当業者に自明なことである。
一方、本願発明の「活性作用物質」は香料から選択されるものである。

以上のことから、引用発明の「以下の香料を調合したフローラル調の香料組成物を用いて、汗及び体臭関連微生物の存在下でも香調が変質することがなく、更に汗臭及び体臭をマスキングする方法」と、本願発明の「コリネバクテリアを含む体の悪臭を生じさせる微生物を選択的に不活性化することができる活性作用物質を含む組成物を人の皮膚に局所的に塗布することによって、体の悪臭を低減させるか又は防止する美容方法であって、前記悪臭がヒトにおける腋の下の悪臭であり」とは、香料を含む組成物を人の皮膚に局所的に塗布することによって、体の悪臭を低減させるか又は防止する美容方法であって、前記悪臭がヒトにおける腋の下の悪臭である点で共通している。

2 引用発明のフローラル調の香料組成物に調合された香料のうち、汗及び人体皮膚菌相に安定な香料である「4-(4-ヒドロキシ-4-メチルペンチル)-3-シクロヘキセンカルバルデヒド」は、本願発明の「4-(4-ヒドロキシ-4-メチルペンチル)シクロヘキサ-3-エンカルバルデヒド」と同じ物質である。
よって、引用発明の「4-(4-ヒドロキシ-4-メチルペンチル)-3-シクロヘキセンカルバルデヒド」は、本願発明の「活性作用物質が脂肪酸を異化することができるコリネバクテリアを不活性化することができる香料成分であり、(Z)-3,4,5,6,6-ペンタメチルヘプタ-3-エン-2-オン、ジエチル-シクロヘキサ-2-エン-1-オンとジメチル-シクロヘキサ-2-エン-1-オンの混合物、2-メチル-3-(4-(1-メチルエチル)フェニル)プロパナール、(2-(メチルオキシ)-4-プロピル-1-ベンゼノール)、ジフェニルメタン、4-(4-メチル-3-ペンテニル)シクロヘキサ-3-エン-1-カルバルデヒド、3-(4-メチル-3-ペンテニル)シクロヘキサ-3-エン-1-カルバルデヒド、3-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-2-メチルプロパナール、α-イオノンとβ-イオノンの混合物、4-(4-ヒドロキシ-4-メチルペンチル)シクロヘキサ-3-エンカルバルデヒド、3-(4-ヒドロキシ-4-メチルペンチル)シクロヘキサ-3-エンカルバルデヒド、メチルイソ-オイゲノール、2-(1,1-ジメチルエチル)シクロヘキシルエタノエート、4-メチル-2-(2-メチルプロパ-1-エニル)テトラヒドロピランの少なくとも1つを含むこと」に包含される。

3 以上のことから、両発明は、
「香料を含む組成物を人の皮膚に局所的に塗布することによって、体の悪臭を低減させるか又は防止する美容方法であって、前記悪臭がヒトにおける腋の下の悪臭であり、香料が4-(4-ヒドロキシ-4-メチルペンチル)シクロヘキサ-3-エンカルバルデヒドを含む方法。」という点で一致し、
前記香料について、本願発明では、「コリネバクテリアを含む体の悪臭を生じさせる微生物を選択的に不活性化することができる活性作用物質」であり、かつ「活性作用物質が脂肪酸を異化することができるコリネバクテリアを不活性化することができる香料成分」と特定されているのに対し、引用発明では「汗及び人体皮膚菌相に安定な香料」と特定されている点で一応相違する。

しかしながら、引用発明の前記香料と、本願発明の前記香料とは、上記のとおり同じ物質であるから、物質として同じである以上、同じ特性を有しているのは当然のことである。
また、引用例には、引用発明の香料組成物について、酸臭、汗臭が低下していることを実験で確認したことも記載されている(上記(e)、(g)参照)。
そして、引用発明は、本願発明と同じ香料成分を含有する香料組成物を、本願発明と同様にヒトの腋の下の悪臭をマスキング、すなわち低減させるために局所的に塗布する方法といえるから、両者はその適用対象、適用時期、及び適用方法においてかわりがなく、その効果も同様であるため、美容方法として相違するということはできない。
よって、引用発明は、発明の構成及び効果において、本願発明と実質的に何ら相違するものではなく、新規な方法の発明とはいえないのであって、引用発明で既に開示されている汗及び人体皮膚菌相に安定とうい特性以外の、香料に備わった上記特性を技術的特徴として付加したに過ぎないといえる。すなわち、上記特性は、引用発明の方法と相違する新規な技術的特徴の提示とはいえない。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、その他の請求項に係る発明についての判断を示すまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-04-19 
結審通知日 2012-04-24 
審決日 2012-05-09 
出願番号 特願2000-557803(P2000-557803)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平林 由利子胡田 尚則  
特許庁審判長 郡山 順
特許庁審判官 関 美祝
▲高▼岡 裕美
発明の名称 悪臭を低減させるか又は防止する方法  
代理人 山崎 行造  

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