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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A23G
管理番号 1263647
審判番号 不服2009-19645  
総通号数 155 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-10-14 
確定日 2012-09-18 
事件の表示 特願2004-538755「低水分チューインガム」拒絶査定不服審判事件〔平成16年4月8日国際公開、WO2004/028265、平成18年1月5日国内公表、特表2006-500038〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2002年9月24日を国際出願日とする出願であって、平成21年6月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年10月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成21年10月14日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成年月日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1 補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「少なくとも1種の生分解性ポリマーおよびチューインガム成分を含み、前記少なくとも1種の生分解性ポリマーが、1種以上の環状エステルの開環重合によって得られるポリエステルポリマーであり、前記環状エステルの少なくとも1種が、グリコリド、ラクチド、ラクトン、環状カーボネートまたはそれらの混合物から選択され、前記チューインガム成分が、軟化剤、甘味料、香料、活性成分、充填剤、およびそれらの混合物からなる群から選択され、前記チューインガムの0.01?2.0重量%の水を含有するチューインガム。」(下線は、補正箇所を示す。)
と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「少なくとも1種の生分解性ポリマー」について、「1種以上の環状エステルの開環重合によって得られるポリエステルポリマーであり、前記環状エステルの少なくとも1種が、グリコリド、ラクチド、ラクトン、環状カーボネートまたはそれらの混合物から選択され」ることを限定したものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 引用刊行物とその記載事項
本願優先日前に頒布された刊行物であり原査定の拒絶の理由に引用された以下の刊行物1(原査定の引用文献1)には、以下の事項が記載されている。下線は当審で付した。

刊行物1:特開平8-196214号公報の記載事項
(1a)「【請求項5】1種または2種以上のチューインガム成分と、ガム基剤として高々37℃のガラス転移温度を有する少なくとも1種のポリエステルとを含有して成ることを特徴とする生分解性チューインガム。
【請求項6】ポリエステルがラクチド、グリコリド、TMCおよびε-カプロラクトンのような1種または2種以上の環状エステルに基づく請求項5記載のチューインガム。
【請求項7】ポリエステルがラクチドおよびε-カプロラクトンの共重合体である請求項6記載のチューインガム。
【請求項8】ポリエステルがラクチドおよびε-カプロラクトンのブロック共重合体、またはラクチドポリマとε-カプロラクトンポリマとの混合物である請求項5?7のいずれかに記載のチューインガム。
【請求項9】賦形剤、抗酸化剤、可塑剤、甘味剤、風味剤、着色剤、薬剤および口腔調整剤から成る群より選ばれる1種または2種以上の成分が添加剤として存在する請求項1?8のいずれかに記載のチューインガム。
【請求項10】ガム基剤が5?95重量%の量存在し、添加剤がさらに5?95重量%の量存在する請求項1?9のいずれかに記載のチューインガム。」

(1b)「【0005】さらに詳しくは、本発明は、1種または2種以上の公知のチューインガム成分と、ガム基剤に含まれる高々37℃のガラス転移温度を有し、かつポリマ鎖中に化学的不安定な化合物を含有する少なくとも1種のポリマとを含有して成ることを特徴とする生分解性(すなわち、環境中で分解する)チューインガムに関する。このような化学的不安定な化合物は、好適には、光の影響で、または加水分解的に分解され、好ましくは水溶性および非毒性の成分となる。」

(1c)「【0006】本発明に従えば、生分解性チューインガムは1種または2種以上の公知のチューインガム成分と、ガム基剤として高々37℃のガラス転移温度を有する少なくとも1種のポリエステルとを含有する。このようなポリエステルはさらに好適には、たとえばラクチド、グリコリド、トリメチレンカーボネート(TMC)、γ-バレロラクトン、β-プロピオラクトンそしてε-カプロラクトンのような1種または2種以上の環状エステルの重合生成物に基づくものである。このようなポリエステルは、たとえば、ブロック共重合体の形状として、あるいは2種またはそれ以上のホモポリマおよび/または共重合体の混合物として使用することができる。ラクチドと、たとえば、グリコリド、トリメチレンカーボネート、δ-バレロラクトン、β-プロピオラクトンそしてε-カプロラクトンのような1種または2種以上の別の環状エステルとの共重合体またはブロックまたはグラフト共重合体(ここでポリマの少なくとも1種はラクチドを含んでいるが)を基にするガム基剤を使用することが好ましい。この好適な実施の形態においては、ラクチド単位をポリマの全量を基準にして少なくとも50重量%含み、さらに好適には、少なくとも80重量%含む系を使用することが好ましい。」

(1d)「【0007】本発明に従えば、生分解性チューインガムには、賦形剤、抗酸化剤、可塑剤、甘味剤、風味剤、着色剤、薬剤および口腔調整剤から成る群より選ばれる1種または2種以上の成分が添加剤として存在していてもよい。ガム基剤として使用するこのようなポリマの合成は、通常の方法、たとえば適当な触媒の存在下で開環重合化反応によって行われる。これらの触媒は、GRAS(一般的に安全と認識されている)基準を有することが好ましい遷移金属化合物に基づくものである。驚くべきことに、このような生分解性ポリマを用いると、公知の、非分解性エラストマに基づくチューインガムの特性に匹敵する構造ならびにチューイング特性を有するチューインガムを得られることが見出された。これは、このようなチューインガムが石あるいはそれに類するものから労力少なくして取り除くことができることを意味する。所望ならば、本発明に従うチューインガムは、すでに記述した生分解性エラストマ成分に加えて、共に水不溶性のチューイングできるガム基剤を形成する1種または2種以上の別の生分解性ガム基剤成分を含有してもよい。さらに、チューインガムは、一般的に水溶性部分および水不溶性の風味成分を含有する。これら2種の成分は、一般的にチューイング中(噛む間)に口の中で吸収され、水不溶性風味成分がガム基剤から水溶性成分とともに拡散する。適当な補助ガム基剤成分は、たとえば前記欧州特許公開566,174に記載されているたとえば完全に硬化したステアリン(stearine)成分である。ガム基剤は、さらに、また別のたとえば乳化剤およびガム基剤溶媒のような生分解性成分を含有することができる。乳化剤として適当なものは、たとえばレシチンおよび脂肪酸モノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリド等である。」

(1e)「【0008】ガム基剤は、さらにたとえば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、リン酸三カルシウム(tricalcium phosphate)等、同様にそれらの混合物のような賦形剤を含むことができる。賦形剤の量は、一般的にガム基剤の10?15%である。」

(1f)「【0009】好適には、チューインガムの5?95重量%、さらに好適には10?50重量%であるチューインガムの水溶成分は、たとえば、可塑剤、甘味剤およびそれらの混合物から成る。可塑剤(または軟化剤とも言うが)は、ガムの噛みやすさあるいは口腔での感じを改善するためにチューインガムに添加される。可塑剤または軟化剤は、一般的にチューインガムの0.5?15重量%を占める。代表的な化合物としては、グリセリン、レシチンおよびそれらの混合物が挙げられる。水溶成分は、たとえば、ソルビトール、水素化された澱粉加水分解物、砂糖きびシロップおよびこれらの混合物、同様にチューインガムに通常用いられる糖類含有成分すなわち砂糖、デキストロース、マルトース、デキストリン、乾燥転化糖、フルクトース、レブロース、ガラクトース等を単独または複数で含有する。砂糖なし(シュガーフリー)甘味剤は、甘味特性を有するが、既知の砂糖が含まれていない成分から成り、そしてこれらはたとえばソルビトール、マンニトール、キシリトール、水素化された澱粉加水分解物、マルチトールなどのような糖アルコール、同様に、アスパルテーム、スクロース、アセスルフェイム(acesulfame)および糖類から、これら単独あるいは配合されて成る。」

(1g)「【0010】チューインガムはさらに、好適には、チューインガムの0.1?10重量%である風味剤を含むことができる。適当な風味剤は、一般的に知られている食品に添加することが許可されている風味剤、たとえば植物および果物のオイル、具体的には柑橘類のオイル、果物抽出物、ペパーミントオイル、クローブオイル、アニスオイル等である。人工的な風味剤を添加することもまた可能である。」

(1h)「【0014】実施例1
80モル%L-ラクチドおよび20モル%D-ラクチドの無定形、非結晶性共重合体が0.1重量%のチンオクテート(tin octate)触媒存在下、溶融状態で開環重合され、製造された。このポリマに、20重量%の量のε-カプロラクトンが添加され、その後、窒素雰囲気下そして機械的撹拌を継続しながら混合物は150℃に加熱された。この均一な混合物に再び、0.1重量%のチンオクテート触媒が添加され、そしてその後重合が完了された。
【0015】得られたポリマはガラス転移温度(DSC、加熱速度10℃/分)15℃を有していた。チューイングの間、ポリマ物質は公知のチューインガムの噛み心地に非常によく似ている噛み心地を提供した。この共重合体の分解生成物はL-乳酸、D-乳酸およびω-ハイドロキシヘキサン酸であり、これらはすべて非毒性で、および水溶性化合物である。
【0016】このポリマを基剤として、通常の添加方法および製造方法に従いチューインガムが製造された。
【0017】実施例2
実施例1の共重合体をガム基剤として次の組成を有するいくつかの種類のチューインガムが製造される。
(a)64重量%の砂糖および甘味剤(ソルビトール、キシリトールおよびサッカリン)、1重量%のアロマおよび35重量%のガム基剤ならびに乳化剤。
(b)40重量%の砂糖、2重量%のアロマおよび58重量%のガム基剤、ならびに乳化剤。
(c)35重量%の砂糖、3重量%のアロマおよび62重量%のガム基剤、ならびに乳化剤。」

3 対比・判断
刊行物1の上記記載事項(特に上記(1a)(1b))から、刊行物1には、
「1種または2種以上のチューインガム成分と、ガム基剤として、生分解性ポリマである、高々37℃のガラス転移温度を有する少なくとも1種のポリエステルを含有し、前記ポリエステルが、ラクチド、グリコリド、TMCおよびε-カプロラクトンのような1種または2種以上の環状エステルであり、賦形剤、抗酸化剤、可塑剤、甘味剤、風味剤、着色剤、薬剤および口腔調整剤から成る群より選ばれる1種または2種以上の添加剤を含有して成る生分解性チューインガム」の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。

そこで、本願補正発明と刊行物1発明とを対比する。
(ア)刊行物1発明の「生分解性ポリマである、高々37℃のガラス転移温度を有する少なくとも1種のポリエステル」は、「ラクチド、グリコリド、TMCおよびε-カプロラクトンのような1種または2種以上の環状エステル」であり、刊行物1に「トリメチレンカーボネート(TMC)」(上記(1c))と記載され、環状エステルは、開環重合により得られること(上記(1d)(1h))が記載されているから、本願補正発明の「1種以上の環状エステルの開環重合によって得られるポリエステルポリマーであり、前記環状エステルの少なくとも1種が、グリコリド、ラクチド、ラクトン、環状カーボネートまたはそれらの混合物から選択され」る「生分解性ポリマー」に相当する。
(イ)刊行物1発明の「賦形剤」は、刊行物1(上記(1e))に、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、リン酸三カルシウム等であることが記載され、本願補正発明の「充填剤」は、本願明細書段落【0026】に、炭酸マグネシウム等であることが記載されているから、両者は相当関係にある。
刊行物1発明の「可塑剤」は、刊行物1に「可塑剤(または軟化剤とも言うが)」(上記(1f))と記載されており、本願補正発明の「軟化剤」に相当する。
刊行物1発明の「甘味剤」は、本願補正発明の「甘味料」に相当することは明らかである。
刊行物1発明の「風味剤」は、刊行物1に「風味剤、たとえば植物および果物のオイル」(上記(1g))と記載され、本願補正発明の「香料」は、本願明細書段落【0016】に「天然植物成分、精油、エッセンス、抽出物、粉末の形の天然および合成の香味」と記載されているから、両者は相当関係にある。
本願補正発明の「活性成分」は、本願明細書段落【0021】に各種薬剤が記載されており、刊行物1発明の「薬剤」は、本願補正発明の「活性成分」に相当する。
そうすると、刊行物1発明の「賦形剤、抗酸化剤、可塑剤、甘味剤、風味剤、着色剤、薬剤および口腔調整剤から成る群より選ばれる1種または2種以上の添加剤」は、本願補正発明の「軟化剤、甘味料、香料、活性成分、充填剤、およびそれらの混合物からなる群から選択され」る「チューインガム成分」に相当する。

そうすると、両者の間には、以下の一致点及び相違点がある。
(一致点)
少なくとも1種の生分解性ポリマーおよびチューインガム成分を含み、前記少なくとも1種の生分解性ポリマーが、1種以上の環状エステルの開環重合によって得られるポリエステルポリマーであり、前記環状エステルの少なくとも1種が、グリコリド、ラクチド、ラクトン、環状カーボネートまたはそれらの混合物から選択され、前記チューインガム成分が、軟化剤、甘味料、香料、活性成分、充填剤、およびそれらの混合物からなる群から選択されるチューインガムである点。

(相違点)
本願補正発明は、「チューインガムの0.01?2.0重量%の水を含有する」のに対し、刊行物1発明では、水分の含有量が明らかでない点。

そこで、上記相違点について検討する。
刊行物1(上記(1h))には、実施例1の共重合体をガム基剤として、以下の組成(a)、(b)及び(c)のチューインガムを製造したことが記載されている。
(a)64重量%の砂糖および甘味剤(ソルビトール、キシリトールおよびサッカリン)
1重量%のアロマ
35重量%のガム基剤ならびに乳化剤
(b)40重量%の砂糖、
2重量%のアロマ
58重量%のガム基剤ならびに乳化剤
(c)35重量%の砂糖
3重量%のアロマ
62重量%のガム基剤ならびに乳化剤
上記組成の各成分を合計すると、それぞれ100重量%となり、「水」は添加されていない。
そして、上記組成(b)及び(c)のうち、「砂糖」は、上白糖で水分量は100g中0.8g、中白糖で1.6g、三温糖で1.7g(四訂 食品性分表,1994,女子栄養大学出版部発行,第70頁)である。また、「アロマ」は、「風味剤」を意味するといえ、刊行物1(上記(1g))には、植物や果実のオイルであることが記載されているから、水分は含有されていないといえる。「ガム基剤」は、実施例1の共重合体であって、水分が含有されないことは明らかである。「乳化剤」は、刊行物1(上記(1d))に「たとえばレシチンおよび脂肪酸モノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリド」と記載されており、水分を含有しないといえる。そうすると、上記組成(b)及び(c)のチューインガムの水分は砂糖に起因するものだけであり、砂糖含有量が多い組成(b)について、水分含有量の多い三温糖として計算すると、1.7%×0.4=0.68%となり、本願補正発明の「チューインガムの0.01?2.0重量%の水を含有する」に包含される。
さらに、刊行物1(上記(1b))には、生分解性ポリマーは、加水分解的に分解されることが記載されているから、生分解性ポリマーを他成分と配合する場合は、チューインガムを食する以前に加水分解することを避けるために、水分含量はできるだけ少なくすべきことは、当業者が当然に考慮すべきことであるといえる。
そして、生分解性樹脂を含有する組成物の水分量が多いと、混合、成形、保存時に、樹脂の加水分解がおこり強度が低下する等の不都合があるため、できるだけ組成物中の成分の含水量を少なくする必要があることは、以下の周知例にも示されるとおり、本願優先日前の周知技術である。
・特開2001-192577号公報(【0038】)に、生分解性樹脂組成物の各成分に含まれる水分量は、少なければ少ないほど好ましく、水分量が多い場合、各種成分の混合時、混合後の生分解性樹脂組成物の成型時、混合後の生分解性樹脂組成物の保存時に、生分解性樹脂の分子量低下が起こり、機械的強度が低下することが記載されている。
・特開2002-18727号公報(「【0016】)に、水分含有量の高い生分解性樹脂を用いた場合、混練時に生分解性樹脂の加水分解が起こり性能に悪影響を及ぼすことが記載されている。
一方、本願補正発明の水分量の数値範囲0.01?2.0重量%の技術的意義について、本願明細書段落【0001】に「本発明の目的は、チューインガムを噛む以前において、生分解性ポリマーまたはポリマー類の分解が、最小化されたチューインガムを得ることにある。」、【0002】に「チューインガム中では、少量の水または水分(moisture)にすることが、非常に望まれている。」、【0007】に「本発明によれば、低い水分含有量は、最初の受容できるテクスチャーと共に得られた。本発明の一実施形態において、チューインガムは、チューインガムの約2重量%より少ない水を含有する。 本発明の一実施形態において、チューインガムは、チューインガムの約0.01?約2.0重量%の水を含有する。」、【0008】に「 本発明の一実施形態によれば、分解性に関して一定の安定性を有している、受け入れることができるチューインガムは、チューインガムの2.0重量%程度が水であることを示す、約1.0重量%程度の水が水分含有量として適用される場合に得ることができることが、分解性試験から明らかになった。」と記載され、上記水分量の範囲の技術的意義は、ガムのテクスチャーが許容される範囲で生分解性ポリマー分解を最小限にした水分量であるといえる。そして、【0047】には、1.5%及び0.5%の実施例が記載されており、水分量の下限値及び上限値が格別臨界的なものであるということもない。
そうすると、生分解性樹脂を含有する組成物の水分量できるだけ少なくする必要があるという上記の周知技術を勘案すれば、公知の非分解性ポリマーを用いたチューインガムに匹敵する噛み心地の生分解性チューインガムを得ることを目的とした(上記(1d))刊行物1発明において、許容される噛み心地を得ることができる範囲で、水の含有量が極力少なくなるようにし、0.01?2.0重量%にすることは容易になし得たことといえる。

そして、本願補正発明の、生分解性でありながら、従来のチューインガムの噛み心地に非常によく似ている噛み心地えあるという効果は、刊行物1(上記(1h))に、実施例1で製造したチューイングガムは、チューイングの間、ポリマ物質は公知のチューインガムの噛み心地に非常によく似ている噛み心地を提供したことが記載されていることから予測し得ることであり、格別顕著なものとはいえいない。

(請求人の主張について)
なお、請求人は回答書において、各成分の含有量の数値を限定する補正案を提示しているが、このような数値限定は、刊行物1の記載事項から、当業者が適宜に最適化し得るものである。

したがって、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成21年10月14日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願請求項1ないし41に係る発明は、平成21年3月2日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし41に記載された事項により特定されるとおりのものであり、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「少なくとも1種の生分解性ポリマーおよびチューインガム成分を含み、前記チューインガム成分が、軟化剤、甘味料、香料、活性成分、充填剤、およびそれらの混合物からなる群から選択され、前記チューインガムの0.01?2.0重量%の水を含有するチューインガム。」

2 引用刊行物とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1及びその記載事項は、前記「第2 2」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、前記「第2」で検討した本願補正発明から「少なくとも1種の生分解性ポリマー」の限定事項である、「1種以上の環状エステルの開環重合によって得られるポリエステルポリマーであり、前記環状エステルの少なくとも1種が、グリコリド、ラクチド、ラクトン、環状カーボネートまたはそれらの混合物から選択され」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに構成要件を限定したものに相当する本願補正発明が、前記「第2 3」に記載したとおり、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その他の請求項に係る発明についての判断を示すまでもなく本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2012-04-24 
結審通知日 2012-04-25 
審決日 2012-05-09 
出願番号 特願2004-538755(P2004-538755)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A23G)
P 1 8・ 121- Z (A23G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 今村 玲英子深草 亜子  
特許庁審判長 秋月 美紀子
特許庁審判官 小川 慶子
齊藤 真由美
発明の名称 低水分チューインガム  
代理人 岡部 讓  
代理人 臼井 伸一  
代理人 高梨 憲通  
代理人 齋藤 正巳  
代理人 岡部 正夫  
代理人 藤野 育男  
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